(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101184
(43)【公開日】2023-07-20
(54)【発明の名称】トルクセンサ
(51)【国際特許分類】
G01L 3/10 20060101AFI20230712BHJP
【FI】
G01L3/10 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022001638
(22)【出願日】2022-01-07
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】多田 健
(57)【要約】
【課題】第1突部を第1挿通孔に挿通しつつ、一対の延設部間に検出素子を配置する作業が容易になるトルクセンサを提供する。
【解決手段】トルクセンサ24は、一対の集磁部材43,44と、集磁部材43,44に誘導された磁束を検出する検出素子49が設けられた基板47と、一対の集磁部材43,44を保持するとともに基板47を収容する第2収容部を有するハウジングとを備える。集磁部材43,44はそれぞれ、リングと、リングの外周面の外方において第1方向に延びる延設部62とを有する。検出素子49は、集磁部材43,44のそれぞれの延設部62の間に配置されている。ハウジングは、第2収容部を区画する壁部721の内面721aから集磁部材43,44が並ぶ方向である第2方向に突出する第1突部81を有する。基板47は、第1突部81が挿通される第1挿通孔91を有する。第1挿通孔91は、第1方向に延びる長穴である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の集磁部材と、
前記集磁部材に誘導された磁束を検出する検出素子が設けられた基板と、
前記一対の集磁部材を保持するとともに前記基板を収容する収容部を有するハウジングと、
を備え、
前記集磁部材はそれぞれ、リングと、前記リングの外周面の外方において第1方向に延びる延設部とを有し、
前記検出素子は、前記集磁部材のそれぞれの延設部の間に配置され、
前記ハウジングは、前記収容部を区画する面から前記集磁部材が並ぶ方向である第2方向に突出する第1突部を有し、
前記基板は、前記第1突部が挿通される第1挿通孔を有し、
前記第1挿通孔は、前記第1方向に延びる長穴であることを特徴とするトルクセンサ。
【請求項2】
前記ハウジングは、前記収容部を区画する面から前記第2方向に突出し、かつ前記第1方向に延びる第2突部を有し、
前記基板は、前記第2突部が挿通される第2挿通孔を有し、
前記第2突部の先端面は、前記第1方向において前記集磁部材に近付くにつれて前記収容部を区画する面に近付くように傾斜する傾斜面を有し、
前記第2挿通孔は、前記第1方向に延びる長穴である請求項1に記載のトルクセンサ。
【請求項3】
前記ハウジングは、2つの前記第2突部を含み、
前記第2突部は、前記第1方向及び前記第2方向と直交する方向である第3方向において前記第1突部の両側にそれぞれ位置している請求項2に記載のトルクセンサ。
【請求項4】
前記第1突部は、前記第1方向において前記集磁部材に近い方の端部である第1端部と、前記第1方向において前記集磁部材から離れた方の端部である第2端部とを有し、
前記第2突部は、前記第1方向において前記集磁部材に近い方の端部である第1端部と、前記第1方向において前記集磁部材から離れた方の端部である第2端部とを有し、
前記検出素子が前記集磁部材のそれぞれの延設部の間に配置されたとき、
前記第1突部の第2端部は、前記第1挿通孔を区画する内周面に当接し、
前記第2突部の第1端部は、前記第2挿通孔を区画する内周面に当接する請求項2又は請求項3に記載のトルクセンサ。
【請求項5】
前記基板は、前記第1突部が熱かしめされることにより前記ハウジングに固定されており、
前記第1突部は、前記第1方向に延びるベース部と、前記ベース部の先端面から延びるピン部とを有し、
前記ベース部の先端面は、前記基板と面一である請求項1~4の何れか一項に記載のトルクセンサ。
【請求項6】
前記ハウジングにおいて、一方の前記集磁部材を保持する部分と、他方の前記集磁部材を保持する部分とは、一体形成されている請求項1~5の何れか一項に記載のトルクセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルクセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
トルクセンサは、一対の集磁部材と、検出素子が設けられた基板と、ハウジングとを備えている。各集磁部材は、リングと、リングの外周面の外方において平行に延びる2つの延設部とを有している。検出素子は、集磁部材のそれぞれの延設部の間に配置されている。検出素子は、集磁部材に誘導された磁束を検出する。ハウジングは、一対の集磁部材を保持している。また、ハウジングは、基板を収容する収容部を有している。
【0003】
特許文献1に開示されたセンサ装置において、ハウジングは、収容部を区画する面から集磁部材が並ぶ方向に突出する突部を有している。基板は、丸穴である挿通孔を有している。突部が挿通孔に挿通されることにより、基板はハウジングに位置決めされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一対の集磁部材の延設部同士が対向した状態で基板を組み付ける場合、突部を挿通孔に挿通しつつ、延設部間に検出素子を配置する必要がある。しかしながら、突部を挿通孔に挿通させるために突部の突出方向に沿って基板を移動させると、検出素子が延設部に干渉するために延設部間に検出素子を配置しにくい。一方、一対の延設部間に検出素子を配置するために基板を傾けながら移動させると、例えば、突部が基板に干渉するために突部を挿通孔に挿通させにくい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するためのトルクセンサは、一対の集磁部材と、前記集磁部材に誘導された磁束を検出する検出素子が設けられた基板と、前記一対の集磁部材を保持するとともに前記基板を収容する収容部を有するハウジングと、を備え、前記集磁部材はそれぞれ、リングと、前記リングの外周面の外方において第1方向に延びる延設部とを有し、前記検出素子は、前記集磁部材のそれぞれの延設部の間に配置され、前記ハウジングは、前記収容部を区画する面から前記集磁部材が並ぶ方向である第2方向に突出する第1突部を有し、前記基板は、前記第1突部が挿通される第1挿通孔を有し、前記第1挿通孔は、前記第1方向に延びる長穴である。
【0007】
第1挿通孔は、第1方向に延びる長穴である。このため、第1突部が第1挿通孔に挿通されても、基板は、第1突部が第1挿通孔内を移動可能な範囲で第1方向に移動可能である。よって、第1突部を第1挿通孔に挿通しつつ、一対の延設部間に検出素子を配置する作業が容易になる。
【0008】
上記トルクセンサにおいて、前記ハウジングは、前記収容部を区画する面から前記第2方向に突出し、かつ前記第1方向に延びる第2突部を有し、前記基板は、前記第2突部が挿通される第2挿通孔を有し、前記第2突部の先端面は、前記第1方向において前記集磁部材に近付くにつれて前記収容部を区画する面に近付くように傾斜する傾斜面を有し、前記第2挿通孔は、前記第1方向に延びる長穴であってもよい。
【0009】
第1突部が第1挿通孔に挿通されることに加えて、第2突部も第2挿通孔に挿通される。第2挿通孔は、第1方向に延びる長穴である。このため、第2突部が第2挿通孔に挿通されても、基板は、第1突部が第1挿通孔内を移動可能かつ第2突部が第2挿通孔内を移動可能な範囲で第1方向に移動可能である。よって、第1突部を第1挿通孔に挿通するとともに第2突部を第2挿通孔に挿通しつつ、一対の延設部間に検出素子を配置する作業が容易になる。
【0010】
一対の延設部間に検出素子を挿入し始めるとき、基板は、第1突部及び第2突部に干渉しないように傾けられる。そして、第1突部が第1挿通孔に挿入されるとともに第2突部が第2挿通孔に挿入された後、基板は水平に戻される。第2突部の先端面は、第1方向において集磁部材に近づくにつれて収容部を区画する面に近付くように傾斜する傾斜面を有している。このため、基板が第2突部の傾斜面に沿って移動することにより、基板が傾いた状態から水平に戻るまでの間の基板の姿勢を所望の姿勢にできるため、検出素子が集磁部材と干渉することを抑制することができる。
【0011】
上記トルクセンサにおいて、前記ハウジングは、2つの前記第2突部を含み、前記第2突部は、前記第1方向及び前記第2方向と直交する方向である第3方向において前記第1突部の両側にそれぞれ位置していてもよい。
【0012】
基板は、第2突部によって、第3方向において2点で支持される。このため、第3方向における基板の一端が他端よりも上側又は下側に位置するような基板の傾きが生じにくい。
【0013】
上記トルクセンサにおいて、前記第1突部は、前記第1方向において前記集磁部材に近い方の端部である第1端部と、前記第1方向において前記集磁部材から離れた方の端部である第2端部とを有し、前記第2突部は、前記第1方向において前記集磁部材に近い方の端部である第1端部と、前記第1方向において前記集磁部材から離れた方の端部である第2端部とを有し、前記検出素子が前記集磁部材のそれぞれの延設部の間に配置されたとき、前記第1突部の第2端部は、前記第1挿通孔を区画する内周面に当接し、前記第2突部の第1端部は、前記第2挿通孔を区画する内周面に当接してもよい。
【0014】
上記構成は、基板の第1方向における移動を規制できる。
上記トルクセンサにおいて、前記基板は、前記第1突部が熱かしめされることにより前記ハウジングに固定されており、前記第1突部は、前記第1方向に延びるベース部と、前記ベース部の先端面から延びるピン部とを有し、前記ベース部の先端面は、前記基板と面一であってもよい。
【0015】
ベース部が第1挿通孔内に位置しているため、熱かしめの際に溶けたピン部の一部が第1挿通孔内に流れ込むことを抑制できる。よって、熱かしめによるハウジングに対する基板の固定状態が弱くなることを抑制できる。
【0016】
上記トルクセンサにおいて、前記ハウジングにおいて、一方の前記集磁部材を保持する部分と、他方の前記集磁部材を保持する部分とは、一体形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、第1突部を第1挿通孔に挿通しつつ、一対の延設部間に検出素子を配置する作業が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】トルクセンサが搭載される操舵装置の構成図である。
【
図2】トルクセンサ及び第1ピニオンシャフトの分解斜視図である。
【
図6】組み立て途中のトルクセンサを示す断面図である。
【
図7】組み立て途中のトルクセンサを示す断面図である。
【
図8】組み立て途中のトルクセンサを示す断面図である。
【
図9】組み立て途中のトルクセンサを示す断面図である。
【
図10】組み立て途中のトルクセンサを示す断面図である。
【
図11】組み立て途中のトルクセンサを示す断面図である。
【
図12】組み立て途中のトルクセンサを示す断面図である。
【
図13】組み立て途中のトルクセンサを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、トルクセンサを具体化した一実施形態を
図1~
図13にしたがって説明する。本実施形態のトルクセンサは、車両の操舵装置に適用されている。
<<操舵装置>>
図1に示すように、操舵装置10は、ステアリングホイール11と、ステアリングシャフト12と、第1ピニオンシャフト13と、転舵シャフト14とを有している。
【0020】
ステアリングシャフト12の一端は、ステアリングホイール11に連結されるとともに、ステアリングシャフト12の他端は、第1ピニオンシャフト13に連結されている。転舵シャフト14は、第1ピニオンシャフト13の軸線に対して交わる方向に延びている。第1ピニオンシャフト13の第1ピニオン歯13aは、転舵シャフト14の第1ラック歯14aに噛み合わされている。転舵シャフト14の両端にはそれぞれ、タイロッド15を介して転舵輪16が連結されている。
【0021】
また、操舵装置10は、操舵補助力を生成するための構成として、モータ21と、減速機構22と、第2ピニオンシャフト23と、トルクセンサ24と、制御装置25とを有している。操舵補助力とは、第1ピニオンシャフト13から転舵シャフト14に伝達される力とは別の経路を通じて転舵シャフト14に伝達される力である。
【0022】
<モータ>
モータ21は、操舵補助力の発生源である。モータ21は、例えば、三相のブラシレスモータである。モータ21は、減速機構22を介して第2ピニオンシャフト23に連結されている。第2ピニオンシャフト23の第2ピニオン歯23aは、転舵シャフト14の第2ラック歯14bに噛み合わされている。モータ21の回転は、減速機構22によって減速される。そして、減速された回転力は、操舵補助力として第2ピニオンシャフト23から転舵シャフト14を介して第1ピニオンシャフト13に伝達される。
【0023】
<トルクセンサ>
トルクセンサ24は、第1ピニオンシャフト13に設けられている。具体的には、トルクセンサ24は、転舵シャフト14と共に第1ピニオンシャフト13を収容するギヤハウジングに設けられている。トルクセンサ24は、ステアリングホイール11の回転操作を通じて第1ピニオンシャフト13に加わるトルクを操舵トルクThとして検出する。トルクセンサ24の構成については後述する。
【0024】
<制御装置>
制御装置25は、トルクセンサ24により検出される操舵トルクThを取り込む。また、制御装置25は、車両に設けられる車速センサ26を通じて検出される車速Vを取り込む。制御装置25は、モータ21に対する給電を制御することによって操舵トルクTh及び車速Vに応じた操舵補助力を発生させるアシスト制御を実行する。
【0025】
<<第1ピニオンシャフトの構成>>
図2に示すように、第1ピニオンシャフト13は、入力軸31と、トーションバー32と、出力軸33とを有している。入力軸31と出力軸33とは、トーションバー32を介して互いに連結される。入力軸31、トーションバー32、及び出力軸33は、同一の軸線O上に位置している。
【0026】
<<トルクセンサの構成>>
トルクセンサ24は、永久磁石41と、ヨーク42と、一対の集磁部材43,44と、ハウジング45と、カバー46と、基板47とを有している。
【0027】
<永久磁石>
永久磁石41は、円筒状である。永久磁石41は、周方向に沿ってS極とN極とが交互に着磁されている。永久磁石41は、入力軸31に固定される。
【0028】
<ヨーク>
ヨーク42は、円筒状である。永久磁石41は、ヨーク42の内側に挿入される。ヨーク42は、出力軸33に固定される。ヨーク42は、環状のヨーク本体51,52と、ホルダ53とを有している。
【0029】
ヨーク本体51,52は、磁性体からなる。ヨーク本体51,52の軸線は、第1ピニオンシャフト13の軸線Oに沿って延びている。ヨーク本体51,52は、第1ピニオンシャフト13の軸線Oに沿った方向に沿って並んでいる。ヨーク本体51,52は、複数の歯部51a,52aを有している。複数の歯部51a,52aは、ヨーク本体51,52の周方向に沿って等間隔で設けられている。歯部51a,52aは、ヨーク本体51,52の周方向において交互に位置している。歯部51a,52aは、第1ピニオンシャフト13の軸線Oに沿った方向において互いに反対側へ向けて延びている。
【0030】
ヨーク本体51,52は、合成樹脂材料によってモールドされている。ホルダ53は、ヨーク本体51,52をモールドする合成樹脂材料によって形成されている。ホルダ53は、ヨーク本体51,52の位置関係を保持している。トーションバー32にねじれ変形が生じていない状態において、ヨーク本体51,52の周方向における各歯部51a,52aの中心は、永久磁石41のN極とS極との境界に一致している。
【0031】
<一対の集磁部材>
集磁部材43,44はそれぞれ、C字状のリング61と、リング61の外周面の外方において平行に延びる2つの延設部62とを有している。本実施形態では、リング61と延設部62とは一体形成されている。延設部62は、リング61の外周面から延びている。
【0032】
<ハウジング及びカバー>
ハウジング45は、第1ハウジング構成体71と、第2ハウジング構成体72と、嵌合部73とを有している。第1ハウジング構成体71、第2ハウジング構成体72、及び嵌合部73は、合成樹脂材料により一体形成されている。
【0033】
第1ハウジング構成体71は、中空円柱状である。第1ハウジング構成体71の内部は、永久磁石41、ヨーク42、及び一対の集磁部材43,44のリング61を収容する第1収容部74である。第1ハウジング構成体71は、第1収容部74とハウジング45の外部とを連通させる連通孔75を有している。連通孔75は、第1ハウジング構成体71の軸方向の両端に位置している。
【0034】
第1ピニオンシャフト13は、第1ハウジング構成体71を貫通している。詳しくは、第1ピニオンシャフト13は、連通孔75に挿通されるとともに、第1収容部74に収容されている。第1ハウジング構成体71の軸線は、第1ピニオンシャフト13の軸線Oに沿って延びている。
【0035】
第2ハウジング構成体72は、四角筒状である。第2ハウジング構成体72は、第1ハウジング構成体71の外周面に繋がっている。第2ハウジング構成体72は、第1ハウジング構成体71の軸方向の一端部に位置している。第2ハウジング構成体72の軸線は、第1ピニオンシャフト13の軸線Oに対して交わる方向に延びている。
【0036】
第2ハウジング構成体72の内部は、一対の集磁部材43,44の延設部62及び基板47を収容する収容部としての第2収容部76である。第2収容部76は、第1ハウジング構成体71における第2ハウジング構成体72と繋がる部分において第1ハウジング構成体71の周方向の一部が途切れていることにより、第1収容部74と連通している。第2ハウジング構成体72は、第1ハウジング構成体71とは反対側において開口する開口部72aを有している。カバー46は、第2ハウジング構成体72の開口部72aを閉塞する。
【0037】
嵌合部73は、四角筒状である。嵌合部73は、第2ハウジング構成体72の外周面に繋がっている。詳しくは、嵌合部73は、第2ハウジング構成体72の壁部721の外面に繋がっている。嵌合部73の軸線は、第1ピニオンシャフト13の軸線Oが延びる方向に沿って延びている。
【0038】
嵌合部73の内部には、複数の端子48が収容されている。複数の端子48は、壁部721の内面721aから突出している。壁部721の内面721aは、第2収容部76を区画する面である。複数の端子48の一端部は、第2収容部76に露出している。嵌合部73には、図示しないコネクタが嵌合される。複数の端子48の他端部は、コネクタと接続される。コネクタは、端子48と制御装置25とを電気的に接続する。
【0039】
一対の集磁部材43,44のリング61は、第1ハウジング構成体71の内周面に保持されている。一対の集磁部材43,44は、第1ピニオンシャフト13の軸線Oに沿った方向において並んでいる。各集磁部材43,44の各延設部62は、第2収容部76に向かって延びている。一方の集磁部材43の各延設部62が延びる方向と、他方の集磁部材44の各延設部62が延びる方向は同じである。第2ハウジング構成体72の軸線が延びる方向は、延設部62が延びる方向と一致している。
【0040】
以下、各集磁部材43,44の各延設部62が延びる方向を第1方向とする。集磁部材43,44が並ぶ方向を第2方向とする。第1方向及び第2方向と直交する方向を第3方向とする。一方の集磁部材43の一方の延設部62と、他方の集磁部材44の一方の延設部62とは、第2方向に並んでいる。一方の集磁部材43の他方の延設部62と、他方の集磁部材44の他方の延設部62とは、第2方向に並んでいる。各集磁部材43,44の一方の延設部62と他方の延設部62とは、第3方向に並んでいる。
【0041】
図3~
図5に示すように、第2ハウジング構成体72は、第1突部81と、2つの第2突部82とを有している。第1突部81及び2つの第2突部82はそれぞれ、壁部721の内面721aから第2方向に突出している。第1突部81及び2つの第2突部82は、第1方向において集磁部材43,44と複数の端子48との間に位置している。第2突部82は、第3方向において第1突部81の両側にそれぞれ位置している。一方の第2突部82は、各集磁部材43,44の一方の延設部62と第1方向において並んでいる。他方の第2突部82は、各集磁部材43,44の他方の延設部62と第1方向において並んでいる。
【0042】
図4に示すように、第1突部81は、ベース部83と、ベース部83の先端面83aから延びるピン部84とを有している。ベース部83は、楕円柱状である。ベース部83は、第2方向から見たとき、楕円形状である。ベース部83の長手方向は、第1方向と一致している。ベース部83の短手方向は、第3方向と一致している。壁部721の内面721aからのベース部83の突出量は、基板47の板厚とほぼ同じである。ピン部84は、円柱状である。
【0043】
第1突部81は、第1方向の両端部として第1端部81a及び第2端部81bを有している。第1端部81aは、第1方向において集磁部材43,44に近い方の端部である。第2端部81bは、第1方向において集磁部材43,44から離れた方の端部である。第2端部81bは、第1方向において複数の端子48に近い方の端部である。ピン部84は、第1突部81において第2端部81b側の約半分に設けられている。
【0044】
図5に示すように、第2突部82は、先細り形状である。壁部721の内面721aからの第2突部82の先端までの長さは、基板47の板厚よりも長い。壁部721の内面721aから第2突部82の先端までの長さは、壁部721の内面721aから第1突部81の先端までの長さとほぼ同じである。壁部721の内面721aから各突部81,82の先端までの長さは、端子48における壁部721の内面721aよりも上側に位置する部分の長さよりも長い。
【0045】
第2突部82は、第2方向から見たとき、楕円形状である。第2突部82の長手方向は、第1方向と一致している。第2突部82の短手方向は、第3方向と一致している。第2突部82は、第1方向の両端部として第1端部82a及び第2端部82bを有している。第1端部82aは、第1方向において集磁部材43,44に近い方の端部である。第2端部82bは、第1方向において集磁部材43,44から離れた方の端部である。第2端部82bは、第1方向において複数の端子48に近い方の端部である。
【0046】
壁部721の内面721aからの第2突部82の突出量は、第1方向において第2端部82bから第1端部81aに向かうにつれて少なくなっている。第2突部82の先端面は、第1方向において第2端部82bから第1端部81aに向かうにつれて壁部721の内面721aに近付くように傾斜する傾斜面を有している。言い換えると、第2突部82の先端面は、第1方向において集磁部材43,44に近付くにつれて壁部721の内面721aに近付くように傾斜する傾斜面を有している。
【0047】
本実施形態の第2突部82の先端面は、傾斜面として、第1傾斜面85aと、第2傾斜面85bと、第3傾斜面85cとを有している。第1傾斜面85a、第2傾斜面85b、及び第3傾斜面85cは、第2突部82の先端から基端に向かって、この順に設けられている。第1傾斜面85a、第2傾斜面85b、及び第3傾斜面85cは、第1方向における集磁部材43,43に近づく向きにおいて、この順に並んでいる。壁部721の内面721aに対する各傾斜面85a,85b,85cの傾斜角度は、第3傾斜面85c>第1傾斜面85a>第2傾斜面85bになっている。なお、壁部721の内面721aに対する各傾斜面85a,85b,85cの傾斜角度とは、壁部721の内面721aと各傾斜面85a,85b,85cとがなす角度のうち、小さい方の角度のことである。各傾斜面85a,85b,85cは、第3方向から見たとき、直線状に延びている。
【0048】
第1方向において、集磁部材43,44から第2突部82の第1端部82aまでの距離は、集磁部材43,44から第1突部81の第1端部81aまでの距離よりも長い。第1方向において、集磁部材43,44から第2突部82の第2端部82bまでの距離は、集磁部材43,44から第1突部81の第2端部81bまでの距離よりも長い。第2突部82の第1端部82aは、第1方向において第1突部81の第1端部81aと第1突部81の第2端部81bとの間に位置している。第1突部81の第2端部81bは、第1方向において第2突部82の第1端部82aと第2突部82の第2端部82bとの間に位置している。第1突部81の第2端部81b側の一部と、第2突部82の第1端部82a側の一部とは、第1方向においてオーバーラップしている。第1突部81は、第1方向において第2突部82の傾斜面の低い側に位置している。
【0049】
<基板>
図4及び
図5に示すように、基板47は、第1主面47aと、基板47の板厚方向において第1主面47aの反対側の面である第2主面47bとを有している。基板47は、第1側面47c及び第2側面47dを有している。第1側面47c及び第2側面47dはそれぞれ、基板47の板厚方向と直交する面である。第2側面47dは、第1側面47cの反対側の面である。基板47は、第1側面47cと第2主面47bとを接続する第1角部47eを有している。
【0050】
図3に示すように、基板47は、2つの凹部471を有している。各凹部471は、基板47の第1側面47cから凹んだ部分である。各凹部471は、基板47の板厚方向から見たとき、矩形状である。基板47の第1主面47aには、2つの検出素子49が設けられている。検出素子49は、矩形板状である。検出素子49は、例えば、ホールセンサである。検出素子49は、凹部471を覆うように配置されている。
【0051】
基板47は、第2ハウジング構成体72の壁部721の内面721a上に配置されている。基板47の第2主面47bは、壁部721の内面721aと対向している。一方の検出素子49は、一方の集磁部材43の一方の延設部62と他方の集磁部材44の一方の延設部62との間に配置されている。他方の検出素子49は、一方の集磁部材43の他方の延設部62と他方の集磁部材44の他方の延設部62との間に配置されている。検出素子49は、集磁部材43,44に誘導された磁束を検出する。なお、「検出素子49が集磁部材43,44のそれぞれの延設部62の間に配置される」とは、各延設部62に対する検出素子49の位置が、検出素子49が集磁部材43,44に誘導された磁束を検出する上で設計上求められる規定の位置にあることを指す。一対の集磁部材43,44のうち、第2方向において壁部721に近い方の集磁部材44の延設部62は、基板47の凹部471内に位置している。
【0052】
図3~
図5に示すように、基板47は、第1挿通孔91と、2つの第2挿通孔92と、複数の端子挿通孔93とを有している。第1挿通孔91、2つの第2挿通孔92、及び複数の端子挿通孔93はそれぞれ、基板47を板厚方向に貫通している。第1挿通孔91及び2つの第2挿通孔92は、第1方向において2つの検出素子49と複数の端子挿通孔93との間に位置している。第2挿通孔92は、第3方向において第1挿通孔91の両側に位置している。一方の第2挿通孔92は、一方の検出素子49と第1方向において並んでいる。他方の第2挿通孔92は、他方の検出素子49と第1方向において並んでいる。
【0053】
第1挿通孔91は、長穴である。第1挿通孔91の長手方向は、第1方向と一致している。第1挿通孔91の短手方向は、第3方向と一致している。第1方向における第1挿通孔91の寸法は、第1方向におけるベース部83の寸法よりも大きい。第3方向における第1挿通孔91の寸法は、第3方向におけるベース部83の寸法よりも僅かに大きい。
【0054】
第1挿通孔91は、第1方向の両端として第1端91a及び第2端91bを有している。第1端91aは、第1方向において検出素子49に近い方の端である。第2端91bは、第1方向において検出素子49から離れた方の端である。第2端91bは、第1方向において端子挿通孔93に近い方の端である。基板47は、第1挿通孔91の第2端91bにおいて第1挿通孔91を区画する面と第1主面47aとを接続する第2角部47fを有している。
【0055】
第2挿通孔92は、長穴である。第2挿通孔92の長手方向は、第1方向と一致している。第2挿通孔92の短手方向は、第3方向と一致している。第1方向における第2挿通孔92の寸法は、第1方向における第2突部82の寸法よりも大きい。第3方向における第2挿通孔92の寸法は、第3方向における第2突部82の寸法よりも僅かに大きい。
【0056】
第2挿通孔92は、第1方向の両端として第1端92a及び第2端92bを有している。第1端92aは、第1方向において検出素子49に近い方の端である。第2端92bは、第1方向において検出素子49から離れた方の端である。第2端92bは、第1方向において端子挿通孔93に近い方の端である。基板47は、第2挿通孔92の第1端92aにおいて第2挿通孔92を区画する面と第2主面47bとを接続する第3角部47gを有している。
【0057】
第1方向において、検出素子49から第2挿通孔92の第1端92aまでの距離は、検出素子49から第1挿通孔91の第1端91aまでの距離よりも長い。第1方向において、検出素子49から第2挿通孔92の第2端92bまでの距離は、検出素子49から第1挿通孔91の第2端91bまでの距離よりも長い。第2挿通孔92の第1端92aは、第1方向において第1挿通孔91の第1端91aと第1挿通孔91の第2端91bとの間に位置している。第1挿通孔91の第2端91bは、第1方向において第2挿通孔92の第1端92aと第2挿通孔92の第2端92bとの間に位置している。すなわち、第1挿通孔91の第2端91b側の一部と、第2挿通孔92の第1端92a側の一部とは、第1方向においてオーバーラップしている。
【0058】
端子挿通孔93は、丸穴である。端子挿通孔93の径は、端子48の外径よりも大きい。
第1突部81は、第1挿通孔91に挿通されている。第1突部81は、第1挿通孔91内において第2端91b側に位置している。第1突部81の第1端部81aは、第1挿通孔91を区画する内周面から離れている。第1突部81の第2端部81bは、第1挿通孔91を区画する内周面に当接している。ベース部83は、第1挿通孔91内に位置している。ベース部83の先端面83aは、基板47の第1主面47aと面一である。ピン部84は、基板47の第1主面47aよりも上側に位置している。
【0059】
図3に示すように、基板47は、第1挿通孔91に挿通された第1突部81の先端がかしめられることによって、ハウジング45に固定されている。本実施形態では、基板47は、ピン部84が熱かしめされることによって、ハウジング45に固定されている。ピン部84の熱かしめについては後述する。ハウジング45は、第1突部81の先端がかしめされたかしめ部810を有している。
【0060】
図5に示すように、第2突部82は、第2挿通孔92に挿通されている。第2突部82は、第2挿通孔92内において第1端92a側に位置している。第2突部82の第1端部82aは、第2挿通孔92を区画する内周面に当接している。第2突部82の第2端部82bは、第2挿通孔92を区画する内周面から離れている。第2突部82における第3傾斜面85cよりも先端側に位置する部分は、基板47の第1主面47aよりも上側に位置している。
【0061】
端子48は、端子挿通孔93に挿通されている。端子48の外周面は、端子挿通孔93を区画する内周面から離れている。
<<トルクセンサの組み立て方法>>
トルクセンサ24の組み立て方法について、本実施形態の作用とともに説明する。
【0062】
まず、一対の集磁部材43,44がハウジング45に収容される。リング61は、第2収容部76を通過して第1収容部74に収容される。リング61は、第1ハウジング構成体71の内周面に保持される。延設部62は、第2収容部76に収容される。一方の集磁部材43の一方の延設部62と他方の集磁部材44の一方の延設部62とは、第2収容部76内において第2方向に対向する。一方の集磁部材43の他方の延設部62と他方の集磁部材44の他方の延設部62とは、第2収容部76内において第2方向に対向する。
【0063】
次に、基板47が第2収容部76に収容される。このとき、一方の検出素子49は、一方の集磁部材43の一方の延設部62と他方の集磁部材44の一方の延設部62との間に配置される。他方の検出素子49は、一方の集磁部材43の他方の延設部62と他方の集磁部材44の他方の延設部62との間に配置される。第1突部81は、第1挿通孔91に挿通される。第2突部82は、第2挿通孔92に挿通される。端子48は、端子挿通孔93に挿通される。以下では、各検出素子49が一対の延設部62間に配置されるとともに、第1突部81、第2突部82、及び端子48がそれぞれ、第1挿通孔91、第2挿通孔92、及び端子挿通孔93に挿通されるまでの基板47の動きについて詳述する。
【0064】
まず、
図6に示すように、基板47上に設けられた検出素子49の一部が、一対の延設部62の間に挿入されるとともに、第1突部81のピン部84の先端が、第1挿通孔91に挿入される。第1突部81のピン部84の先端は、第1挿通孔91内において第1端91a側に位置している。
【0065】
このとき、基板47は、壁部721の内面721aに対して傾けられている。詳しくは、基板47は、第2方向における壁部721の内面721aから基板47の第2主面47bまでの距離が、基板47の第1側面47cから第2側面47dに向かうにつれて長くなるように傾けられている。言い換えると、基板47は、第2方向における壁部721の内面721aから基板47の第2主面47bまでの距離が、第1方向において集磁部材43,44から離れるほど長くなるように傾けられている。基板47の第1角部47eは、壁部721の内面721aに接触している。
【0066】
図7に示すように、第2突部82は、第2挿通孔92に挿入されていない。端子48は、端子挿通孔93に挿入されていない。上述したように、基板47における検出素子49に対応する位置には、凹部471が設けられている。このため、基板47が壁部721に近い方の集磁部材44の延設部62に干渉することが回避されている。
【0067】
図8及び
図9に示すように、基板47は、第1方向において集磁部材43,44に近付く向きに移動させられるとともに、第2方向において壁部721に近付く向きに移動させられる。このとき、基板47は、第1角部47eが壁部721の内面721aに接触した状態で移動させられる。
【0068】
すると、一対の延設部62間への検出素子49の挿入量は増大する。第1挿通孔91へのピン部84の挿入量は増大する。第1突部81のピン部84は、第1挿通孔91内において第1端91aから第2端91bに向かって、基板47に対して相対移動する。第2突部82の先端は、第2挿通孔92に挿入される。第2突部82の先端は、第2挿通孔92内において第1端92a側に位置している。基板47の第3角部47gは、2つの第2突部82の第1傾斜面85aに接触する。端子48は、基板47に近付くものの、端子挿通孔93に挿入されていない。
【0069】
第3角部47gが第1傾斜面85aに接触すると、基板47は、第1角部47eが壁部721の内面721aに接触しつつ、第3角部47gが第1傾斜面85aに接触した状態で、第1方向において集磁部材43,44に近付く向きに移動させられる。
【0070】
このため、基板47は、第1角部47eが壁部721の内面721aに支持されるとともに、第3角部47gが第1傾斜面85aに支持された状態で移動させられる。このように基板47が第2方向において2点で支持されることで、例えば、基板47の第1方向における第1側面47c側の端部が壁部721の内面721aから離れるような基板47の傾きが生じにくい。また、基板47は、第3角部47gが2つの第1傾斜面85aに支持された状態で移動させられる。このように基板47が第3方向において2点で支持されることで、第3方向における基板47の一端が他端よりも第2方向において上側又は下側に位置するような基板47の傾きが生じにくい。
【0071】
さらに、基板47は、第1傾斜面85aに沿って移動させられる。このため、基板47の姿勢は、所望の姿勢に保たれやすくなる。例えば、壁部721の内面721aに対する基板47の傾斜角度が、
図8及び
図9における基板47の傾斜角度よりも大きい場合、基板47が第1方向に移動すると、第2方向において壁部721から離れている方の集磁部材43に検出素子49が接触してしまう。したがって、本実施形態では、第1傾斜面85aの傾斜角度は、基板47が第1方向に移動する際に、第2方向において壁部721から離れている方の集磁部材43に検出素子49が接触しないように設定されている。よって、検出素子49が集磁部材43,44に接触することが抑制される。
【0072】
図10及び
図11に示すように、基板47は、第1方向において集磁部材43,44に近付く向きに更に移動させられる。すると、一対の延設部62間への検出素子49の挿入量は増大する。第1挿通孔91へのピン部84の挿入量は増大する。第1突部81のピン部84は、第1挿通孔91内において第1端91aから第2端91bに向かって、基板47に対して相対移動する。第2挿通孔92への第2突部82の挿入量は増大する。第2突部82は、第2挿通孔92内において第1端92aから第2端92bに向かって、基板47に対して相対移動する。基板47の第3角部47gは、2つの第2突部82の第2傾斜面85bに接触する。端子48は、基板47に近付くものの、端子挿通孔93に挿入されていない。
【0073】
第3角部47gが第2傾斜面85bに接触すると、基板47は、第1角部47eが壁部721の内面721aに接触しつつ、第3角部47gが第2傾斜面85bに接触した状態で、第1方向において集磁部材43,44に近付く向きに移動させられる。
【0074】
このため、基板47は、第1角部47eが壁部721の内面721aに支持されるとともに、第3角部47gが第2傾斜面85bに支持された状態で移動させられる。このように基板47が第2方向において2点で支持されることで、例えば、基板47の第1方向における第1側面47c側の端部が壁部721の内面721aから離れるような基板47の傾きが生じにくい。また、基板47は、第3角部47gが2つの第2傾斜面85bに支持された状態で移動する。このように基板47が第3方向において2点で支持されることで、第3方向における基板47の一端が他端よりも第2方向において上側又は下側に位置するような基板47の傾きが生じにくい。
【0075】
さらに、基板47は、第2傾斜面85bに沿って移動させられる。このため、基板47の姿勢は、所望の姿勢に保たれやすくなる。例えば、基板47が第1傾斜面85aに沿って移動するときの壁部721の内面721aに対する基板47の傾斜角度のまま、基板47が第1方向に移動し続けると、第2方向において壁部721から離れている方の集磁部材43に検出素子49が接触してしまう。したがって、本実施形態では、第2傾斜面85bの傾斜角度は、基板47が第1方向に移動する際に、第2方向において壁部721から離れている方の集磁部材43に検出素子49が接触しないように設定されている。基板47が第2傾斜面85bに沿って移動するときの壁部721の内面721aに対する基板47の傾斜角度は、基板47が第1傾斜面85aに沿って移動するときの壁部721の内面721aに対する基板47の傾斜角度よりも小さくなる。よって、検出素子49が集磁部材43,44に干渉することが抑制される。
【0076】
図12及び
図13に示すように、基板47は、第1方向において集磁部材43,44に近付く向きに更に移動させられる。すると、一対の延設部62間への検出素子49の挿入量は増大する。第1挿通孔91へのピン部84の挿入量は増大する。ピン部84は基板47を貫通することで、ピン部84の先端は、基板47の第1主面47aよりも上側に位置する。ベース部83の先端面83a側の一部は、第1挿通孔91に挿入される。第1突部81は、第1挿通孔91内において第1端91aから第2端91bに向かって、基板47に対して相対移動する。ピン部84は、基板47の第2角部47fに当接する。第2挿通孔92への第2突部82の挿入量は増大する。第2突部82は基板47を貫通することで、第2突部82の先端は、基板47の第1主面47aよりも上側に位置する。第2突部82は、第2挿通孔92内において第1端92aから第2端92bに向かって、基板47に対して相対移動する。基板47の第3角部47gは、2つの第2突部82の第3傾斜面85cに接触する。端子48の先端は、端子挿通孔93に挿入される。
【0077】
第3角部47gが第3傾斜面85cに接触すると、基板47は、第1角部47eが壁部721の内面721aに接触しつつ、第3角部47gが第3傾斜面85cに接触した状態で、第1方向において集磁部材43,44に近付く向きに移動させられる。
【0078】
このため、基板47は、第1角部47eが壁部721の内面721aに支持されるとともに、第3角部47gが第3傾斜面85cに支持された状態で移動させられる。このように基板47が第2方向において2点で支持されることで、例えば、基板47の第1方向における第1側面47c側の端部が壁部721の内面721aから離れるような基板47の傾きが生じにくい。また、基板47は、第3角部47gが2つの第3傾斜面85cに支持された状態で移動させられる。このように基板47が第3方向において2点で支持されることで、第3方向における基板47の一端が他端よりも第2方向において上側又は下側に位置するような基板47の傾きが生じにくい。
【0079】
さらに、基板47は、第3傾斜面85cに沿って移動させられる。このため、基板47の姿勢は、所望の姿勢に保たれやすくなる。例えば、基板47が第2傾斜面85bに沿って移動するときの壁部721の内面721aに対する基板47の傾斜角度のまま、基板47が第1方向に移動し続けると、第2方向において壁部721から離れている方の集磁部材43に検出素子49が接触してしまう。したがって、本実施形態では、第3傾斜面85cの傾斜角度は、基板47が第1方向に移動する際に、第2方向において壁部721から離れている方の集磁部材43に検出素子49が接触しないように設定されている。基板47が第3傾斜面85cに沿って移動するときの壁部721の内面721aに対する基板47の傾斜角度は、基板47が第2傾斜面85bに沿って移動するときの壁部721の内面721aに対する基板47の傾斜角度よりも小さくなる。よって、検出素子49が集磁部材43,44に干渉することが抑制される。
【0080】
基板47は、第2方向において壁部721に近付く向きに移動させられる。すると、基板47の第3角部47gが第3傾斜面85cから脱落することで、基板47の姿勢は水平状態になる。
【0081】
すると、
図4及び
図5に示すように、一対の延設部62間への検出素子49の配置が完了する。第1突部81は、第1突部81の基端部まで第1挿通孔91に挿通された状態となる。第1突部81のベース部83全体が第1挿通孔91内に位置する。ベース部83の先端面83aは、基板47の第1主面47aと面一である。第1突部81の第2端部81bは、第1挿通孔91を区画する内周面に当接している。第2突部82は、第2突部82の基端部まで第2挿通孔92に完全に挿通された状態となる。第2突部82の第1端部82aは、第2挿通孔92を区画する内周面に当接している。第1傾斜面85a及び第2傾斜面85bは、第2方向において基板47の第1主面47aよりも上側に位置する。端子48は、基板47を貫通する。端子48の先端部は、第2方向において基板47の第1主面47aよりも上側に位置する。
【0082】
そして、第1突部81のピン部84が熱かしめされる。具体的には、加熱された治具をピン部84の先端面に対して第2方向に押し当てることで、ピン部84を形成する合成樹脂材料を溶融させる。そして、溶融した合成樹脂材料が第1挿通孔91の第2端91bにおいて第1挿通孔91よりも外側まで広がったら、ピン部84に対する治具の押し当てを終了する。溶融した合成樹脂材料は、冷却して固化することにより、かしめ部810となる。基板47は、かしめ部810によってハウジング45に固定される。
【0083】
本実施形態の効果について説明する。
(1)ハウジング45の第1突部81は、基板47の第1挿通孔91に挿通される。第1挿通孔91は、第1方向に延びる長穴である。このため、第1突部81が第1挿通孔91に挿通されても、基板47は、第1突部81が第1挿通孔91内を移動可能な範囲で第1方向に移動可能である。よって、第1突部81を第1挿通孔91に挿通しつつ、一対の延設部62間に検出素子49を配置する作業が容易になる。
【0084】
(2)第1突部81が第1挿通孔91に挿通されることに加えて、ハウジング45の第2突部82も基板47の第2挿通孔92に挿通される。第2挿通孔92は、第1方向に延びる長穴である。このため、第2突部82が第2挿通孔92に挿通されても、基板47は、第1突部81が第1挿通孔91内を移動可能かつ第2突部82が第2挿通孔92内を移動可能な範囲で第1方向に移動可能である。よって、第1突部81を第1挿通孔91に挿通するとともに第2突部82を第2挿通孔92に挿通しつつ、一対の延設部62間に検出素子49を配置する作業が容易になる。
【0085】
一対の延設部62間に検出素子49を挿入し始めるとき、基板47は、第1突部81及び第2突部82に干渉しないように傾けられる。そして、第1突部81が第1挿通孔91に挿入されるとともに第2突部82が第2挿通孔92に挿入された後、基板47は水平に戻される。第2突部82の先端面は、第1方向において集磁部材43,44に近づくにつれて壁部721の内面721aに近付くように傾斜する傾斜面85a,85b,85cを有している。このため、基板47が第2突部82の傾斜面85a,85b,85cに沿って移動することにより、基板47が傾いた状態から水平に戻るまでの間の基板47の姿勢を所望の姿勢にできる。よって、基板47が集磁部材43,44と干渉することを抑制することができる。
【0086】
(3)ハウジング45は、2つの第2突部82を有している。第2突部82は、第3方向において第1突部81の両側にそれぞれ位置している。このため、基板47は、第2突部82によって、第3方向において2点で支持される。よって、第3方向における基板47の一端が他端よりも上側又は下側に位置するような基板47の傾きが生じにくい。
【0087】
(4)検出素子49が集磁部材43,44のそれぞれの延設部62の間に配置されたとき、第1突部81の第2端部81bは、第1挿通孔91を区画する内周面に当接している。各第2突部82の第1端部82aは、第2挿通孔92を区画する内周面に当接している。このため、基板47が第1方向において集磁部材43,44に近付くように移動しようとしても、第2突部82の第1端部82aが第2挿通孔92を区画する内周面に当接しているため、基板47の移動が規制される。また、基板47が第1方向において集磁部材43,44から離れるように移動しようとしても、第1突部81の第2端部81bが第1挿通孔91を区画する内周面に当接しているため、基板47の移動が規制される。よって、基板47の第1方向における移動を規制できる。
【0088】
(5)第1突部81は、第1方向に延びるベース部83と、ベース部83の先端面83aから延びるピン部84とを有している。基板47は、第1突部81のピン部84が熱かしめされることによりハウジング45に固定されている。ベース部83の先端面83aは、基板47の第1主面47aと面一である。ベース部83が第1挿通孔91内に位置しているため、熱かしめの際に溶けたピン部84の一部が第1挿通孔91内に流れ込むことを抑制できる。よって、熱かしめによるハウジング45に対する基板47の固定状態が弱くなることを抑制できる。
【0089】
(6)検出素子49が集磁部材43,44のそれぞれの延設部62の間に配置されたとき、第1突部81の第2端部81bは、第1挿通孔91を区画する内周面と当接している。第2突部82の第1端部82aは、第2挿通孔92を区画する内周面と当接している。このため、基板47は、ハウジング45に対して第1方向に位置決めされている。ピン部84の熱かしめは、基板47がハウジング45に対して第1方向に位置決めされた状態で行われる。したがって、ピン部84を熱かしめする際に、基板47が第1方向に移動することが規制される。その結果、ピン部84を熱かしめする際に一対の延設部62に対する検出素子49の配置がずれることを抑制できる。
【0090】
(7)例えば、集磁部材43,44のリング61と延設部62とが別体である場合、次のような手順で組み付けを行うことができる。まず、延設部62が接続されていないリング61を第1収容部74に収容する。続いて、第1突部81を第1挿通孔91に挿通しながら、基板47を第2収容部76に収容する。そして、一対の延設部62によって検出素子49を挟み込むようにリング61に延設部62を接続する。この場合、第1突部81を第1挿通孔91に挿通しつつ、一対の延設部62間に検出素子49を配置することを回避できる。
【0091】
これに対し、本実施形態の集磁部材43,44は、リング61と、リング61の外周面から延びる延設部62とを有している。すなわち、リング61と延設部62とは一体である。このため、リング61を第1収容部74に収容した時点で、一対の延設部62は第2方向に対向した状態となる。したがって、第1突部81を第1挿通孔91に挿通しつつ、一対の延設部62間に検出素子49を配置する必要がある。よって、リング61と延設部62とが一体である場合には、本発明が効果的である。
【0092】
(8)例えば、ハウジング45において、一方の集磁部材43を保持する部分と、他方の集磁部材44を保持する部分とが別体である場合、次のような手順で組み付けを行うことができる。まず、一方の集磁部材43を保持する部分に形成された第1突部81を基板47の第1挿通孔91に挿通する。続いて、一対の延設部62によって検出素子49を挟み込むように、一方の集磁部材43を保持する部分と他方の集磁部材44を保持する部分とを一体化する。この場合、第1突部81を第1挿通孔91に挿通しつつ、一対の延設部62間に検出素子49を配置することを回避できる。
【0093】
これに対し、本実施形態のハウジング45では、一方の集磁部材43を保持する部分と、他方の集磁部材44を保持する部分とは一体である。このため、一対の延設部62が第2方向に対向している状態で、基板47をハウジング45に収容しなければならない。よって、一方の集磁部材43を保持する部分と他方の集磁部材44を保持する部分とが一体であるハウジング45の場合、本発明が効果的である。
【0094】
(9)例えば、第1突部81の先端を傾斜させることで、第1突部81を第1挿通孔91に挿通しつつ、傾いている基板47の姿勢を水平に戻してもよい。しかしながら、第1突部81の先端を傾斜させると、第1突部81の肉が削られるため、第1突部81の先端をかしめた際にかしめ部810となる部分が少なくなる。よって、ハウジング45に対する基板47の固定状態が弱くなるおそれがある。したがって、第1突部81は円柱状とするとともに、第1突部81とは別の第2突部82に傾斜を設けるのが好ましい。
【0095】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・ハウジング45において、第1突部81と、2つの第2突部82のうちの一方の第2突部82とを省略してもよい。すなわち、ハウジング45は、2つの第2突部82のうちの他方の第2突部82のみを有していてもよい。この場合、他方の第2突部82は、課題を解決するための手段の欄に記載した第1突部に対応する。なお、他方の第2突部82の先端面は、第1方向において集磁部材43,44に近付くにつれて壁部721の内面721aに近付くように傾斜する傾斜面を有していなくてもよい。
【0096】
・ハウジング45は、2つ以上の第1突部81を有していてもよい。
・ハウジング45は、2つの第2突部82を有していなくてもよい。この場合、第1突部81の先端面は、第1方向において集磁部材43,44に近付くにつれて壁部721の内面721aに近付くように傾斜する傾斜面を有していてもよい。
【0097】
・ハウジング45は、2つの第2突部82のうち、何れか一方を有していてもよい。
・ハウジング45は、3つ以上の第2突部82を有していてもよい。
・第2突部82の先端面だけでなく、第1突部81の先端面も、第1方向において集磁部材43,44に近付くにつれて壁部721の内面721aに近付くように傾斜していてもよい。
【0098】
・傾斜面の数は適宜変更されてもよい。
・傾斜面の傾斜角度は、適宜変更されてもよい。傾斜面の傾斜角度は、検出素子49が集磁部材43,44に接触しないように、ハウジング45における集磁部材43,44の配置や基板47の厚みなどを考慮して設定される。
【0099】
・第1突部81は、ベース部83を有していなくてもよい。つまり、第1突部81は、円柱状であってもよい。
・ベース部83の先端面83aは、基板47の第1主面47aよりも上側に位置していてもよいし、基板47の第1主面47aよりも下側に位置していてもよい。
【0100】
・ピン部84は、第2突部82において第1方向における第2端部82b側に位置していなくてもよい。
・「検出素子49が一対の延設部62間に配置されたとき、第1突部81の第2端部71bが第1挿通孔91を区画する内周面に当接し、第2突部82の第1端部82aが第2挿通孔92を区画する内周面に当接する」は、同時に当接している場合に加えて、ハウジング45に対する基板47の僅かな移動を許容する場合も含む。この場合、基板47が第1方向において集磁部材43,44に近付くように移動したときには、第2突部82の第1端部82aが第2挿通孔92を区画する内周面に当接する一方、第1突部81の第2端部81bは第1挿通孔91を区画する内周面に当接しない。基板47が第1方向において集磁部材43,44から離れるように移動したときには、第1突部81の第2端部81bが第1挿通孔91を区画する内周面に当接する一方、第2突部82の第1端部82aは第2挿通孔92を区画する内周面に当接しない。
【0101】
・検出素子49が集磁部材43,44のそれぞれの延設部62の間に配置されたとき、第1突部81の第2端部81bは、第1挿通孔91を区画する内周面に当接せず、かつ第2突部82の第1端部82aは、第2挿通孔92を区画する内周面に当接していなくてもよい。
【0102】
・ハウジング45は、第1ピニオンシャフト13の軸線Oに沿う方向において分割されていてもよい。この場合、ハウジング45は、一方の集磁部材43を保持する第1部材と、他方の集磁部材44を保持するとともに第1部材とは別体の第2部材とが一体化されることにより形成される。この構成においても、第1部材と第2部材とを一体化した後で、基板47をハウジング45に収容しようとすると、第1突部81を第1挿通孔91に挿通しつつ、一対の延設部62間に検出素子49を配置する必要がある。
【0103】
・集磁部材43,44のリング61と延設部62とは別体であってもよい。この構成においても、基板47がハウジング45に収容される前に、リング61に延設部62が接続されている場合、第1突部81を第1挿通孔91に挿通しつつ、一対の延設部62間に検出素子49を配置する必要がある。
【0104】
・ピン部84は、かしめられていなくてもよい。第1突部81は、基板47をハウジング45に固定するための突部でなくてもよい。第1突部81は、例えば、ハウジング45に対して基板47を位置決めするための突部であってもよい。
【0105】
・ピン部84のかしめは、熱かしめに限定されない、例えば、治具によってピン部84を潰すことにより、ピン部84が第1挿通孔91の第2端91bにおいて第1挿通孔91よりも外側に位置するまでピン部84を変形させる。変形後のピン部84は、かしめ部810となる。
【符号の説明】
【0106】
24…トルクセンサ
43…集磁部材
44…集磁部材
45…ハウジング
47…基板
49…検出素子
61…リング
62…延設部
76…第2収容部(収容部)
81…第1突部
81a…第1端部
81b…第2端部
82…第2突部
82a…第1端部
82b…第2端部
83…ベース部
83a…先端面
84…ピン部
85a…第1傾斜面(傾斜面)
85b…第2傾斜面(傾斜面)
85c…第3傾斜面(傾斜面)
91…第1挿通孔
92…第2挿通孔
721a…内面(収容部を区画する面)