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特開2023-101203グラウト注入治具とPCa部材の接続方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101203
(43)【公開日】2023-07-20
(54)【発明の名称】グラウト注入治具とPCa部材の接続方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/12 20060101AFI20230712BHJP
【FI】
E04G21/12 104D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022001674
(22)【出願日】2022-01-07
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】シング ラヴィ
(57)【要約】
【課題】グラウトが充填される全ての被充填空間に対して、グラウトを効率的かつ確実に充填することのできる、グラウト注入治具とPCa部材の接続方法を提供すること。
【解決手段】プレキャストコンクリート製のPCa部材60の備えるシース管63に対して鉄筋65が挿通され、PCa部材60の端面61に臨むシース管63の端面開口63aに位置合わせされてシース管63にグラウトを注入する際に適用される、グラウト注入治具50であり、端面開口63aに当接する第1端面32と、第1端面32の反対側にある第2端面33を備える治具本体30を有し、治具本体30は、第1端面32と第2端面33の間に延びて鉄筋65が貫通される貫通孔31と、貫通孔31に連通してグラウトが注入される注入孔13と、注入孔13に連通し、注入孔13と交差する位置と第1端面32の間を貫通孔31に沿って延びているスリット12とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレキャストコンクリート製のPCa部材の備えるシース管に対して、鉄筋が挿通され、前記PCa部材の端面に臨む前記シース管の端面開口に位置合わせされて前記シース管にグラウトを注入する際に適用される、グラウト注入治具であって、
前記グラウト注入治具は、前記端面開口に当接する第1端面と、前記第1端面の反対側にある第2端面を備える治具本体を有し、
前記治具本体は、
前記第1端面と前記第2端面の間に延びて、前記鉄筋が貫通される貫通孔と、
前記貫通孔に連通して、前記グラウトが注入される注入孔と、
前記注入孔に連通し、前記注入孔と交差する位置と前記第1端面の間を前記貫通孔に沿って延びているスリットとを備えていることを特徴とする、グラウト注入治具。
【請求項2】
前記治具本体は、前記貫通孔を分割する複数の分割本体を備え、
複数の前記分割本体が前記貫通孔を形成するようにして配設され、複数の前記分割本体の周囲が締結バンドにて締結されることを特徴とする、請求項1に記載のグラウト注入治具。
【請求項3】
前記治具本体の前記第1端面には、前記シース管の内部に延びて前記鉄筋を下方から支持し、前記シース管の内部で前記鉄筋を位置合わせするためのスペーサが設けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のグラウト注入治具。
【請求項4】
少なくとも前記治具本体が硬質の樹脂により形成されていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のグラウト注入治具。
【請求項5】
第1端面と、前記第1端面の反対側にある第2端面を備える治具本体を有するグラウト注入治具であって、
前記治具本体は、
前記第1端面と前記第2端面の間に延びて、鉄筋が貫通される貫通孔と、
前記貫通孔に連通して、グラウトが注入される注入孔と、
前記注入孔に連通し、前記注入孔と交差する位置と前記第1端面の間を前記貫通孔に沿って延びているスリットとを備えている、グラウト注入治具を用意する、A1工程と、
プレキャストコンクリート製の第1PCa部材の備えるシース管に対して、第1鉄筋を貫通させ、前記第1PCa部材の第3端面に前記シース管が臨む第3端面開口と、前記第1PCa部材の第4端面に前記シース管が臨む第4端面開口の双方から、前記第1鉄筋を張り出させ、前記第1鉄筋を前記貫通孔に挿通させて前記グラウト注入治具を仮設置し、第2PCa部材の備える第2鉄筋の一端と前記第1鉄筋の一端を機械式継手を介して接続し、前記第3端面開口の位置に前記グラウト注入治具を本設置する、B1工程と、
前記第4端面開口から張り出している前記第1鉄筋を、バッカー材の備えている貫通孔、もしくは、別途の前記グラウト注入治具の前記貫通孔に貫通させながら、前記バッカー材、もしくは、別途の前記グラウト注入治具を前記第4端面開口の位置に本設置する、C1工程と、
一方の前記グラウト注入治具の前記注入孔からグラウトを注入し、前記スリットと前記シース管の内部を流通した前記グラウトが、前記バッカー材の備えるスリット、もしくは他方の前記グラウト注入治具の前記注入孔から吐出したことを確認してグラウト注入を完了とする、D工程と、
前記第1PCa部材と前記第2PCa部材の間に、前記第1鉄筋の一部と前記機械式継手と前記第2鉄筋の一部を埋設するようにしてコンクリートを打設し、前記第1PCa部材と前記第2PCa部材を接続する、E工程と、を有することを特徴とする、PCa部材の接続方法。
【請求項6】
第1端面と、前記第1端面の反対側にある第2端面を備える治具本体を有するグラウト注入治具であって、
前記治具本体は、
前記第1端面と前記第2端面の間に延びて、鉄筋が貫通される貫通孔と、
前記貫通孔に連通して、グラウトが注入される注入孔と、
前記注入孔に連通し、前記注入孔と交差する位置と前記第1端面の間を前記貫通孔に沿って延びているスリットとを備え、
前記治具本体は、前記貫通孔を分割する複数の分割本体により形成される、グラウト注入治具を用意する、A2工程と、
プレキャストコンクリート製の第1PCa部材の備えるシース管に対して、第1鉄筋を貫通させ、前記第1PCa部材の第3端面に前記シース管が臨む第3端面開口と、前記第1PCa部材の第4端面に前記シース管が臨む第4端面開口の双方から、前記第1鉄筋を張り出させ、第2PCa部材の備える第2鉄筋の一端と前記第1鉄筋の一端を機械式継手を介して接続し、前記第3端面開口の位置において、複数の前記分割本体を前記第1鉄筋を挟むように前記貫通孔を形成しながら配設し、複数の前記分割本体の周囲を締結バンドにて締結することにより前記グラウト注入治具を形成して設置する、B2工程と、
前記第4端面開口から張り出している前記第1鉄筋を、バッカー材の備えている貫通孔、もしくは、別途の前記グラウト注入治具の前記貫通孔に貫通させながら、前記バッカー材、もしくは、別途の前記グラウト注入治具を前記第4端面開口の位置に本設置する、C2工程と、
一方の前記グラウト注入治具の前記注入孔からグラウトを注入し、前記スリットと前記シース管の内部を流通した前記グラウトが、前記バッカー材の備えるスリット、もしくは他方の前記グラウト注入治具の前記注入孔から吐出したことを確認してグラウト注入を完了とする、D工程と、
前記第1PCa部材と前記第2PCa部材の間に、前記第1鉄筋の一部と前記機械式継手と前記第2鉄筋の一部を埋設するようにしてコンクリートを打設し、前記第1PCa部材と前記第2PCa部材を接続する、E工程と、を有することを特徴とする、PCa部材の接続方法。
【請求項7】
前記B1工程もしくは前記B2工程では、前記シース管の内部の下方のうち、少なくとも、前記第3端面開口の近傍と前記第4端面開口の近傍にスペーサを設置し、
少なくとも2つの前記スペーサにて前記第1鉄筋を下方から支持し、前記シース管の内部に前記第1鉄筋を位置合わせすることを特徴とする、請求項5又は6に記載のPCa部材の接続方法。
【請求項8】
前記A1工程もしくは前記A2工程では、前記シース管の内部に延びて前記鉄筋を下方から支持し、前記シース管の内部で前記鉄筋を位置合わせするためのスペーサが前記第1端面に設けられている、前記治具本体を用意し、
前記B1工程、前記B2工程、前記C1工程、及び前記C2工程では、2つの前記グラウト注入治具を前記第3端面開口と前記第4端面開口の位置にそれぞれ本設置した際に、前記スペーサが前記シース管の内部に挿入されて前記第1鉄筋を下方から支持することを特徴とする、請求項5又は6に記載のPCa部材の接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラウト注入治具とPCa部材の接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、RC(Reinforced Concrete)造の柱と梁の柱梁接合部を、現場におけるコンクリート打設により施工する場合、工期の長期化が課題としてあり、高層建築物の場合はこの課題が一層顕著になる。そこで、上下の柱と双方の柱を繋ぐ仕口、さらには、仕口の側方にある梁をいずれもプレキャストコンクリート(以下、適宜「PCa」とする)製とし、PCa柱とPCa仕口とPCa梁(いずれもPCa部材に含まれる)を現場に搬送し、PCa柱とPCa仕口を組み付けた後、PCa仕口の左右の側方にそれぞれPCa梁を仮設置し、PCa仕口の備えるシース管に対して一方のPCa梁の端面から側方に張り出す鉄筋を挿通してPCa仕口の他方側へ張り出させ、他方のPCa梁の内部にある機械式継手に対して鉄筋を嵌合させることにより、PCa仕口と、左右のPCa梁とを相互に接続する施工方法が適用される場合がある。
【0003】
この接続方法では、その後、PCa仕口のシース管の内部や、PCa梁の内部にあって鉄筋同士を繋ぐ機械式継手の内部に対してグラウトを注入することにより、鉄筋とシース管や機械式継手との接続を図る必要がある。そこで、例えば機械式継手に対してグラウトの注入孔を設けておき、注入孔から注入したグラウトを、相互に連通する被充填空間に充填させていく方法が適用される。具体的には、機械式継手の内部に充填されたグラウトは、当該機械式継手を備えているPCa梁とPCa仕口の界面にある縦目地空間に流れて充填され、次いでPCa仕口のシース管の内部を流れて充填され、PCa仕口と他方のPCa梁の間の縦目地空間に流れて充填される。この他方のPCa梁には、縦目地空間に連通する排出孔を設けておき、縦目地空間に流れたグラウトが排出孔から外部に排出されたことを確認することにより、各被充填空間に対してグラウトが充填されていると判断することができる。
【0004】
しかしながら、注入孔から注入されたグラウトが、様々な被充填空間を経て注入孔から離れた位置にある排出孔から排出されていることを確認できたとしても、相互に連通する各被充填空間の全ての被充填空間に対して、グラウトが密実に充填されていることが必ずしも保証されるとは言えない。何らかの影響で一部の被充填空間にグラウトが充填されず、あるいはグラウトの充填が不十分な状態でグラウトが排出孔まで流れて排出されることも十分にあり得る。
【0005】
以上のことから、シース管を備えている一方のPCa部材と、端面から鉄筋が張り出している他方のPCa部材を相互に接続するに当たり、グラウトが充填される全ての被充填空間に対して、グラウトを効率的かつ確実に充填することのできる、グラウト注入治具とPCa部材の接続方法が望まれる。
【0006】
ここで、特許文献1には、プレキャスト梁部材とその梁構築法が提案されている。プレキャスト梁部材は、プレキャストコンクリートに多数の剪断補強筋を間隔を置いて埋設するとともに、2つのプレキャストコンクリートの端面の下部間に梁下端主筋を挿通して配筋するための複数の平行なシース管が各プレキャストコンクリートに埋設され、シース管の中央部に添え筋が配筋されて重ね継手形成部が設けられている。プレキャスト梁部材の梁構築法は、梁部材のシース管に梁下端主筋を挿通して柱上部間に順次架設し、梁下端主筋を移動調節して柱上部上のプレキャスト梁部材の端面間に通して配筋し、各梁下端主筋の前端部と後端部を重ね継手形成部内で連設させた後、プレキャスト梁部材の端面間にコンクリートを打設し、各シース管内にグラウト材を充填して構築する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5-247999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載のプレキャスト梁部材の梁構築法では、シース管内にグラウト材を充填して構築すると記載されているに過ぎず、グラウトが充填される全ての被充填空間に対してグラウトを確実に充填する手段や方法を開示するものではない。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、シース管を備えている一方のPCa部材と、端面から鉄筋が張り出している他方のPCa部材を相互に接続するに当たり、グラウトが充填される全ての被充填空間に対して、グラウトを効率的かつ確実に充填することのできる、グラウト注入治具とPCa部材の接続方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成すべく、本発明によるグラウト注入治具の一態様は、
プレキャストコンクリート製のPCa部材の備えるシース管に対して、鉄筋が挿通され、前記PCa部材の端面に臨む前記シース管の端面開口に位置合わせされて前記シース管にグラウトを注入する際に適用される、グラウト注入治具であって、
前記グラウト注入治具は、前記端面開口に当接する第1端面と、前記第1端面の反対側にある第2端面を備える治具本体を有し、
前記治具本体は、
前記第1端面と前記第2端面の間に延びて、前記鉄筋が貫通される貫通孔と、
前記貫通孔に連通して、前記グラウトが注入される注入孔と、
前記注入孔に連通し、前記注入孔と交差する位置と前記第1端面の間を前記貫通孔に沿って延びているスリットとを備えていることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、PCa部材のシース管の端面開口に当接する第1端面と反対側にある第2端面の間に延びて鉄筋が貫通される貫通孔と、貫通孔に連通してグラウトが注入される注入孔を備えている治具本体が、注入孔に連通して、注入孔と交差する位置と第1端面の間を貫通孔に沿って延びているスリットをさらに備えていることにより、注入孔に注入されたグラウトをスリットを介してシース管に導くことができ、シース管に対してグラウトを効率的かつ確実に充填することが可能になる。ここで、シース管を備えているPCa部材には、PCa仕口やPCa梁等が含まれる。ここで、スリットは、貫通孔と離れた位置で貫通孔に平行に延びる形態であってもよいし、貫通孔の側方に凸に張り出している形態(貫通孔と連通する形態)であってもよい。
【0012】
また、本発明によるグラウト注入治具の他の態様において、
前記治具本体は、前記貫通孔を分割する複数の分割本体を備え、
複数の前記分割本体が前記貫通孔を形成するようにして配設され、複数の前記分割本体の周囲が締結バンドにて締結されることを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、治具本体が貫通孔を分割する複数の分割本体にて形成されていることから、例えば、PCa部材のシース管に鉄筋を挿通させた後、シース管の端面開口から張り出している鉄筋を挟むようにして複数の分割本体を相互に設置することにより、グラウト注入治具の取り付け性が良好になる。ここで、複数の分割本体とは、代表的には2つの半割状の分割本体が挙げられるが、3つ以上の分割本体が適用されてもよい。
【0014】
また、本発明によるグラウト注入治具の他の態様において、
前記治具本体の前記第1端面には、前記シース管の内部に延びて前記鉄筋を下方から支持し、前記シース管の内部で前記鉄筋を位置合わせするためのスペーサが設けられていることを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、治具本体の第1端面に、シース管の内部に延びて鉄筋を支持するスペーサが設けられていることにより、グラウト注入治具を設置した際にシース管に挿通されている鉄筋をスペーサにて持ち上げてシース管の例えば中央位置に位置合わせすることができ、スペーサの効率的な設置と、鉄筋とシース管の内面の間に対するグラウトの均等かつ密実な充填の双方を実現できる。
【0016】
また、本発明によるグラウト注入治具の他の態様は、
少なくとも前記治具本体が硬質の樹脂により形成されていることを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、治具本体が硬質の樹脂にて形成されていることにより、グラウトの注入圧等に抗するのに十分な硬さを保証しながら、軽量でハンドリング性が良好になり、金物等のように発錆の恐れがなく、多数の転用を実現できる。
【0018】
また、本発明によるPCa部材の接続方法の一態様は、
第1端面と、前記第1端面の反対側にある第2端面を備える治具本体を有するグラウト注入治具であって、
前記治具本体は、
前記第1端面と前記第2端面の間に延びて、鉄筋が貫通される貫通孔と、
前記貫通孔に連通して、グラウトが注入される注入孔と、
前記注入孔に連通し、前記注入孔と交差する位置と前記第1端面の間を前記貫通孔に沿って延びているスリットとを備えている、グラウト注入治具を用意する、A1工程と、
プレキャストコンクリート製の第1PCa部材の備えるシース管に対して、第1鉄筋を貫通させ、前記第1PCa部材の第3端面に前記シース管が臨む第3端面開口と、前記第1PCa部材の第4端面に前記シース管が臨む第4端面開口の双方から、前記第1鉄筋を張り出させ、前記第1鉄筋を前記貫通孔に挿通させて前記グラウト注入治具を仮設置し、第2PCa部材の備える第2鉄筋の一端と前記第1鉄筋の一端を機械式継手を介して接続し、前記第3端面開口の位置に前記グラウト注入治具を本設置する、B1工程と、
前記第4端面開口から張り出している前記第1鉄筋を、バッカー材の備えている貫通孔、もしくは、別途の前記グラウト注入治具の前記貫通孔に貫通させながら、前記バッカー材、もしくは、別途の前記グラウト注入治具を前記第4端面開口の位置に本設置する、C1工程と、
一方の前記グラウト注入治具の前記注入孔からグラウトを注入し、前記スリットと前記シース管の内部を流通した前記グラウトが、前記バッカー材の備えるスリット、もしくは他方の前記グラウト注入治具の前記注入孔から吐出したことを確認してグラウト注入を完了とする、D工程と、
前記第1PCa部材と前記第2PCa部材の間に、前記第1鉄筋の一部と前記機械式継手と前記第2鉄筋の一部を埋設するようにしてコンクリートを打設し、前記第1PCa部材と前記第2PCa部材を接続する、E工程と、を有することを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、本発明のグラウト注入治具を使用して第1鉄筋が挿通されている第1PCa部材のシース管の内部にグラウトを注入することにより、シース管の内部に効率的かつ確実にグラウトを充填することができる。
【0020】
また、第1PCa部材のシース管の他方の開口に設置されているバッカー材のスリットや、別途のグラウト注入治具の注入孔からグラウトが吐出したことを確認することにより、シース管の内部における密実なグラウト注入を保証することができる。
【0021】
グラウトを第1PCa部材のシース管に充填した後、シース管の端部開口に設置されているグラウト注入治具やバッカー材等を取り外す。次いで、第1PCa部材のシース管に挿通固定されている第1鉄筋の一端と、他の第2PCa部材の第2鉄筋の一端を機械式継手にて接続し、この機械式継手の内部にもグラウトもしくはエポキシ樹脂等を充填する。機械式継手は比較的短くて小さな部材であることから、機械式継手の内部へのグラウト等の充填に際してはグラウト注入治具を使用する必要はなく、第1鉄筋と第2鉄筋がともに接続されている機械式継手の端部開口の隙間等からグラウト等を直接注入すればよい。シース管の内部と機械式継手の内部へのグラウトやエポキシ樹脂等の注入が完了した後、第1PCa部材と第2PCa部材の間の空間に、第1鉄筋の一部と機械式継手と第2鉄筋の一部を埋設するようにしてコンクリートを打設し、第1PCa部材と第2PCa部材を接続することにより、PCa部材が接続される。
【0022】
例えば、第1PCa部材がPCa仕口であり、第2PCa部材がPCa梁である形態が挙げられる。この際、PCa仕口のシース管に挿通した第1鉄筋をPCa仕口の左右に張り出させ、左右に配設されているPCa梁の備える第2鉄筋の一端と第1鉄筋の左右端をそれぞれ機械式継手にて接続し、PCa仕口の左右にコンクリートを打設することにより、PCa柱の上方に組み付けられているPCa仕口の左右の側方にPCa梁が延びる、正面視Tの字状の柱梁接合部が形成される。
【0023】
また、本発明によるPCa部材の接続方法の他の態様は、
第1端面と、前記第1端面の反対側にある第2端面を備える治具本体を有するグラウト注入治具であって、
前記治具本体は、
前記第1端面と前記第2端面の間に延びて、鉄筋が貫通される貫通孔と、
前記貫通孔に連通して、グラウトが注入される注入孔と、
前記注入孔に連通し、前記注入孔と交差する位置と前記第1端面の間を前記貫通孔に沿って延びているスリットとを備え、
前記治具本体は、前記貫通孔を分割する複数の分割本体により形成される、グラウト注入治具を用意する、A2工程と、
プレキャストコンクリート製の第1PCa部材の備えるシース管に対して、第1鉄筋を貫通させ、前記第1PCa部材の第3端面に前記シース管が臨む第3端面開口と、前記第1PCa部材の第4端面に前記シース管が臨む第4端面開口の双方から、前記第1鉄筋を張り出させ、第2PCa部材の備える第2鉄筋の一端と前記第1鉄筋の一端を機械式継手を介して接続し、前記第3端面開口の位置において、複数の前記分割本体を前記第1鉄筋を挟むように前記貫通孔を形成しながら配設し、複数の前記分割本体の周囲を締結バンドにて締結することにより前記グラウト注入治具を形成して設置する、B2工程と、
前記第4端面開口から張り出している前記第1鉄筋を、バッカー材の備えている貫通孔、もしくは、別途の前記グラウト注入治具の前記貫通孔に貫通させながら、前記バッカー材、もしくは、別途の前記グラウト注入治具を前記第4端面開口の位置に本設置する、C2工程と、
一方の前記グラウト注入治具の前記注入孔からグラウトを注入し、前記スリットと前記シース管の内部を流通した前記グラウトが、前記バッカー材の備えるスリット、もしくは他方の前記グラウト注入治具の前記注入孔から吐出したことを確認してグラウト注入を完了とする、D工程と、
前記第1PCa部材と前記第2PCa部材の間に、前記第1鉄筋の一部と前記機械式継手と前記第2鉄筋の一部を埋設するようにしてコンクリートを打設し、前記第1PCa部材と前記第2PCa部材を接続する、E工程と、を有することを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、分割本体により形成されるグラウト注入治具を使用することにより、グラウト注入治具の取り付け性や取り外し性が良好になる。そのため、例えば、第1PCa部材のシース管に第1鉄筋を挿通し、その左右の端面開口にグラウト注入用とグラウト吐出(排出)用のグラウト注入治具を設置し、さらに、グラウト注入前に第1鉄筋と他の第2PCa部材の第2鉄筋を機械式継手を介して接続した後、シース管の内部へのグラウト注入と機械式継手へのグラウトやエポキシ樹脂等の注入を連続的に行うことができる。グラウト注入後に、グラウト注入治具は分割本体を分割しながら解体撤去することができ、次の工程である、第1PCa部材と第2PCa部材の間へのコンクリート打設へ移行することができる。
【0025】
また、本発明によるPCa部材の接続方法の他の態様において、
前記B1工程もしくは前記B2工程では、前記シース管の内部の下方のうち、少なくとも、前記第3端面開口の近傍と前記第4端面開口の近傍にスペーサを設置し、
少なくとも2つの前記スペーサにて前記第1鉄筋を下方から支持し、前記シース管の内部に前記第1鉄筋を位置合わせすることを特徴とする。
【0026】
本態様によれば、少なくとも2つのスペーサをシース管の内部に設置して第1鉄筋を下方から支持し、シース管の内部に第1鉄筋を位置合わせすることにより、シース管の内部において第1鉄筋とシース管の内面との間に可及的に均等幅の環状空間を形成してグラウトを充填することができ、第1鉄筋とシース管との強固な接続を図ることが可能になる。
【0027】
また、本発明によるPCa部材の接続方法の他の態様において、
前記A1工程もしくは前記A2工程では、前記シース管の内部に延びて前記鉄筋を下方から支持し、前記シース管の内部で前記鉄筋を位置合わせするためのスペーサが前記第1端面に設けられている、前記治具本体を用意し、
前記B1工程、前記B2工程、前記C1工程、及び前記C2工程では、2つの前記グラウト注入治具を前記第3端面開口と前記第4端面開口の位置にそれぞれ本設置した際に、前記スペーサが前記シース管の内部に挿入されて前記第1鉄筋を下方から支持することを特徴とする。
【0028】
本態様によれば、グラウト注入治具がシース管に挿通されている第1鉄筋を下方から支持するスペーサを備えていることにより、グラウト注入治具をシース管の端部開口に設置した際に、スペーサがシース管に入り込んで第1鉄筋を自動的に持ち上げて支持することから、スペーサの効率的なシース管への設置が可能になる。
【発明の効果】
【0029】
以上の説明から理解できるように、本発明のグラウト注入治具とPCa部材の接続方法によれば、シース管を備えている一方のPCa部材と、端面から鉄筋が張り出している他方のPCa部材を相互に接続するに当たり、グラウトが充填される全ての被充填空間に対して、グラウトを効率的かつ確実に充填することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】第1実施形態に係るグラウト注入治具の一例の斜視図である。
図2A図1のIIa-IIa矢視図である。
図2B図1のIIb-IIb矢視図である。
図2C図1のIIc-IIc矢視図である。
図3】第2実施形態に係るグラウト注入治具の一例の斜視図である。
図4】実施形態に係るPCa部材の接続方法の一例の工程図である。
図5図4に続いて、実施形態に係るPCa部材の接続方法の一例の工程図である。
図6図5に続いて、実施形態に係るPCa部材の接続方法の一例の工程図である。
図7図6に続いて、実施形態に係るPCa部材の接続方法の一例の工程図である。
図8図7に続いて、実施形態に係るPCa部材の接続方法の一例の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、各実施形態に係るグラウト注入治具の一例と実施形態に係るPCa部材の接続方法の一例について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0032】
[第1実施形態に係るグラウト注入治具]
はじめに、図1及び図2を参照して、第1実施形態に係るグラウト注入治具の一例について説明する。ここで、図1は、第1実施形態に係るグラウト注入治具の一例の斜視図であり、図2A図2B及び図2Cはそれぞれ、図1のIIa-IIa矢視図、IIb-IIb矢視図、及びIIc-IIc矢視図である。
【0033】
グラウト注入治具50は、以下で詳説するように、プレキャストコンクリート製のPCa部材の備えるシース管に対して、鉄筋が挿通され、PCa部材の端面に臨むシース管の端面開口に位置合わせされて、シース管にグラウトを注入する際に適用される治具である。
【0034】
グラウト注入治具50は、シース管の端面開口に当接する第1端面32と、第1端面32の反対側にある第2端面33を備えた円柱状の治具本体30を有する。治具本体30は2つの分割本体10,20により形成されている。ここで、治具本体はその全体が一体成形体であってもよいが、図示例のように複数(図示例は2つ)の分割本体10,20により形成されていることで、グラウト注入治具50の取り付け性や取り外し性が良好になり、施工効率を高めることができて好ましい。また、治具本体の外形は、図示例の円柱以外にも、直方体を含む多角柱等であってよい。
【0035】
2つの半円柱状の分割本体10,20のそれぞれの当接面の対応する位置には、半割貫通孔11,21が設けられており、図示例のように分割本体10,20を当接した際に、貫通孔31が形成されるようになっている。
【0036】
貫通孔31は、挿通される第1鉄筋の外径と同一もしくは略同一な断面寸法を有しており、治具本体30の第1端面32と第2端面33の間をX方向に貫通している。
【0037】
治具本体30は例えば硬質の樹脂により形成されており、具体的な素材としては、ポリエチレン(PE:Polyethylene)やポリプロピレン(PP:Polypropylene)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF:Polyvinylidenefluoride)、ポリ塩化ビニル(PVC:Polyvinyl chloride)等の他、エチレン・プロピレンゴム(EPDM:Ethylene propylene diene rubber)等の硬質ゴム等が挙げられる。
【0038】
治具本体30が硬質の樹脂にて形成されていることにより、グラウトの注入圧等に抗するのに十分な硬さを保証しながら、軽量でハンドリング性が良好になり、金物等のように発錆の恐れがなく、多数の転用を実現できる。尚、治具本体が錆び難い金属素材等で形成されてもよく、例えばアルミ製の治具本体を適用することによっても、適度な強度と軽量な治具本体となる。
【0039】
治具本体30を形成する一方の分割本体10には、貫通孔31を形成する半割貫通孔11に連通してグラウトが注入される、注入孔13が設けられている。
【0040】
さらに、分割本体10には、注入孔13に連通し、注入孔13と交差する位置と第1端面32の間を貫通孔31に沿って延びているスリット12が設けられている。図示例のスリット12は、その全体が貫通孔31の側方に突出する凹条の形態であるが、図示例の他にも、貫通孔31から離れた位置で貫通孔31に沿って延びている形態であってもよい。
【0041】
上記構成により、治具本体30の軸方向に直交する縦断面構成は、図2A乃至図2Cに示すように、軸方向の部位に応じて変化する。
【0042】
グラウト注入治具50を実際に使用する際は、PCa部材のシース管に挿通されている鉄筋を挟むようにして貫通孔31を形成しながら2つの分割本体10,20を当接させ、PCa部材の端面に設置した後、図1に示すように2つの分割本体10,20の周囲を例えば複数(図示例は2つ)の締結バンド40にて締結することにより、グラウト注入治具50を形成する。この際、グラウトが注入される注入孔13は、上方を向くように配設されてもよいし、下方や側方を向くように配設されてもよく、施工性を勘案して注入孔13の配設位置が設定される。
【0043】
グラウト注入治具50を適用することにより、注入孔13に注入されたグラウトをスリット12を介してPCa部材のシース管に導くことができるため、シース管に対してグラウトを効率的かつ確実に充填することが可能になる。
【0044】
[第2実施形態に係るグラウト注入治具]
次に、図3を参照して、第2実施形態に係るグラウト注入治具の一例について説明する。ここで、図3は、第2実施形態に係るグラウト注入治具の一例の斜視図である。
【0045】
グラウト注入治具50Aは、治具本体30の第1端面32における貫通孔31の開口下方にスペーサ35が設けられている点において、図1に示すグラウト注入治具50と相違する。
【0046】
スペーサ35は、例えば分割本体20と一体に成形されるが、別体に成形されたスペーサが第1端面32に接着される形態であってもよい。
【0047】
グラウト注入治具50Aによれば、治具本体30の第1端面32に、シース管の内部に延びて鉄筋を支持するスペーサ35が設けられていることにより、グラウト注入治具50Aを設置した際に、既にシース管に挿通されている鉄筋をスペーサ35が自動的に持ち上げ、シース管の例えば中央位置に鉄筋を位置合わせすることができる。このことにより、スペーサ35の効率的な設置と、鉄筋とシース管の内面の間に対するグラウトの均等かつ密実な充填の双方を実現できる。
【0048】
[実施形態に係るPCa部材の接続方法]
次に、図4乃至図8を参照して、実施形態に係るPCa部材の接続方法の一例について説明する。ここで、図4乃至図8は順に、実施形態に係るPCa部材の接続方法の一例の工程図である。以下の説明では、図3に示すグラウト注入治具50Aを使用した接続方法として説明するが、治具本体が一体成形部材であるグラウト注入治具を使用する場合についても、グラウト注入治具50Aを使用する場合と異なる方法内容については随時言及する。
【0049】
以下の説明では、プレキャストコンクリート製の第1PCa部材60であるPCa仕口と、その左右にあるプレキャストコンクリート製の第2PCa部材70である2つのPCa梁との接続方法を説明する。
【0050】
施工現場において、PCa柱68を立設させ、PCa柱68の上端にPCa仕口60を設置する。ここで、図示を省略するが、PCa仕口60の例えば下方には複数の機械式継手が埋設されており、PCa柱68の上端面から上方に突設する柱主筋がPCa仕口の下方にある機械式継手に嵌合される。そして、PCa柱68とPCa仕口60の間にはグラウトが注入されることで不図示の横目地が形成され、このグラウトが機械式継手の内部に入り込むことで柱主筋と機械式継手が接続される。また、図示を省略するが、PCa仕口60には、その上端面から上方に突設する複数の仕口主筋が設けられており、不図示の上階のPCa柱の下方にある機械式継手に仕口主筋が嵌合されるようになっている。
【0051】
PCa部材の接続方法では、まず、図3に示すグラウト注入治具50Aを必要個数用意する(A2工程)。
【0052】
ここで、治具本体が一体成形部材であるグラウト注入治具を使用する場合は、同様に必要個数のグラウト注入治具50を用意する(A1工程)。
【0053】
次に、図4に示すように、PCa仕口60の備える複数(図示例は上下に2つ)のシース管63に対してそれぞれ、第1鉄筋65を挿通する。
【0054】
ここで、図示例では、PCa仕口60の左側の端面を第3端面61とし、右側の端面を第4端面62とする。シース管63は、第3端面61と第4端面62の間を水平に延びており、シース管63の各端面に臨む位置にはそれぞれ、第3端部開口63aと第4端部開口63bが設けられている。第3端面開口63aと第4端面開口63bの双方から、第1鉄筋65が張り出した状態で各シース管63に仮に設置される。
【0055】
次に、図5に示すように、上下の各第3端面開口63aの位置において、2つの分割本体10,20を第1鉄筋65を挟むように貫通孔31を形成しながら配設し、2つの分割本体10,20の周囲を締結バンド40にて締結することによりグラウト注入治具50Aを形成して設置する。
【0056】
グラウト注入治具50Aの設置の際には、その第1端面32から突設するスペーサ35をシース管63の内部の下方へY1方向に挿入する。
【0057】
このスペーサ35のシース管63への挿入により、シース管63に挿通されている第1鉄筋65が上方へY2方向に持ち上げられ、スペーサ35にて支持された第1鉄筋65は、シース管63の断面中心に位置合わせされる。尚、図1に示すグラウト注入治具50を使用する場合は、グラウト注入治具50の設置に先行して、シース管63の内部にスペーサを設置して第1鉄筋65を支持させた後に、グラウト注入治具50を設置する。
【0058】
グラウト注入治具50Aを設置した後、第1鉄筋65にロックナット55を嵌め込み、グラウト注入治具50Aの第2端面33をロックナット55にて押圧することにより、グラウト注入治具50Aが移動不可に設置される(以上、B2工程)。
【0059】
ここで、治具本体が一体成形部材であるグラウト注入治具を使用する場合は、第1鉄筋65の端部を貫通孔31に挿通させながら、グラウト注入治具50をPCa仕口60の第3端面61まで移動させて設置し、次いでロックナット55を嵌め込んでグラウト注入治具50を設置する(B1工程)。
【0060】
グラウト注入治具50Aを設置した後、同図5に示すように、上下の各第4端面開口63bの位置において、2つの分割本体10,20を第1鉄筋65を挟むように貫通孔31を形成しながら配設し、2つの分割本体10,20の周囲を締結バンド40にて締結することによりグラウト注入治具50Aを形成して設置する。
【0061】
ここで、第4端面開口63bの位置(図5におけるPCa仕口60の右側)に設置されるグラウト注入治具50Aは、グラウトを注入する治具として使用する代わりに、シース管63にグラウトが充填されたことを確認するための治具として使用する。従って、図5の右側に設置されるグラウト注入治具50Aにおいて、注入孔13は、グラウトの吐出孔(排出孔)として機能する。
【0062】
右側のグラウト注入治具50Aの設置においても、その第1端面32から突設するスペーサ35をシース管63の内部の下方へY3方向に挿入しながら行う。
【0063】
このスペーサ35のシース管63への挿入により、シース管63に挿通されている第1鉄筋65が上方へY4方向に持ち上げられ、スペーサ35にて支持された第1鉄筋65は、シース管63の断面中心に位置合わせされる。
【0064】
このように、シース管63の内部の左右端にあるスペーサ35により、シース管63の内部において、第1鉄筋65は水平な姿勢でシース管63の断面中心に位置合わせされることになる。
【0065】
右側のグラウト注入治具50Aを設置した後、第1鉄筋65にロックナット55を嵌め込み、グラウト注入治具50Aの第2端面33をロックナット55にて押圧することにより、右側のグラウト注入治具50Aが移動不可に設置される(以上、C2工程)。
【0066】
ここで、図示を省略するが、グラウト充填確認用に使用される右側のグラウト注入治具50Aに代わり、スリットを備えたバッカー材を設置してもよい。
【0067】
また、グラウト充填確認用に治具本体が一体成形部材であるグラウト注入治具を使用する場合は、第1鉄筋65の端部を貫通孔31に挿通させながら、グラウト注入治具50をPCa仕口60の第3端面61まで移動させて設置し、次いでロックナット55を嵌め込んでグラウト注入治具50を設置する(C1工程)。
【0068】
PCa仕口60の第3端面61と第4端面62にそれぞれ、グラウト注入とグラウト吐出のためのグラウト注入治具50Aを設置した後、第1鉄筋65の左右端と、左右にあるPCa梁70の端部から張り出している第2鉄筋75の端部をそれぞれ、カプラー等の機械式継手72に螺合することにより、機械式継手72を介して第1鉄筋65と第2鉄筋75を接続する。
【0069】
次に、図6に示すように、右側のグラウト注入治具50Aの注入孔13からグラウトをY5方向に注入する。注入孔13に注入されたグラウトは、注入孔13に連通するスリット12を介してシース管63の内部へ供給される。
【0070】
シース管63の内部では、スペーサ35によりシース管63の断面中心に第1鉄筋65が位置合わせされていることから、第1鉄筋65とシース管63の内面の間には略均等幅の環状の隙間がシース管63の長手方向に亘って形成されている。シース管63に供給されたグラウトは、この環状の隙間をY6方向に流れて、右側のグラウト注入治具50Aのスリット12に入り、スリット12から注入孔13に流れ込んだグラウトが外部へY7方向に吐出(排出)される。
【0071】
作業員は、このグラウトの吐出を確認することにより、シース管63の内部にグラウトが密実に充填されていると判断できる。
【0072】
シース管63へのグラウト充填に続き、第1鉄筋65と第2鉄筋75を接続している機械式継手72の内部にもグラウトもしくはエポキシ樹脂等を注入する。例えばグラウトを機械式継手72に注入する際は、グラウト注入治具50Aを使用するまでもなく、機械式継手72の端部開口を介してグラウトを直接注入すればよい。
【0073】
図7に示すように、シース管63の内部にグラウトGが密実に充填され、左右の機械式継手72の内部にもグラウトもしくはエポキシ樹脂が充填された後、グラウト注入治具50Aを取り外すことにより、コンクリートの現場打設前状態が形成される(以上、D工程)。
【0074】
ここで、治具本体が一体成形部材であるグラウト注入治具を使用する場合は、シース管63にグラウトを注入した後、第1鉄筋65の端部からグラウト注入治具50を引き抜いて取り外し、次いで第1鉄筋65の端部とPCa梁70の第2鉄筋75の端部を機械式継手72に螺合し、機械式継手72の内部にグラウトやエポキシ樹脂等を充填することになる。すなわち、分割本体10,20を有するグラウト注入治具50Aを使用することで、グラウト注入治具50Aの取り外しのタイミングにバリエーションを持たせることができ、シース管63と機械式継手72へのグラウトの連続的な充填が可能になるなど、施工効率が向上する。
【0075】
次に、図8に示すように、PCa仕口60と左右のPCa梁70の間の空間において、第1鉄筋65の一部と機械式継手72と第2鉄筋75の一部を埋設するようにしてコンクリートを打設し、例えばPCa梁70と同一断面形状及び同一断面寸法のコンクリート接続体80を施工することにより、コンクリート接続体80を介してPCa仕口60とPCa梁70を接続し、柱梁接合部100が施工される。
【0076】
図示するPCa部材の接続方法によれば、シース管63へのグラウトの注入に際してグラウト注入治具50、50Aを使用することにより、グラウトGが充填される全ての被充填空間に対して、グラウトGを効率的かつ確実に充填することができ、効率的なPCa部材の接続方法を実現できる。
【0077】
上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0078】
10,20:分割本体
11,21:半割貫通孔
12:スリット
13:注入孔
30:治具本体
31:貫通孔
32:第1端面
33:第2端面
35:スペーサ
40:締結バンド
50,50A:グラウト注入治具
55:ロックナット
60:第1PCa部材(PCa仕口、PCa部材)
61:第3端面(端面)
62:第4端面(端面)
63:シース管
63a:第3端面開口(端面開口)
63b:第4端面開口(端面開口)
65:第1鉄筋(鉄筋)
68:PCa柱
70:第2PCa部材(PCa梁、PCa部材)
72:機械式継手
75:第2鉄筋(鉄筋)
80:コンクリート接続体
100:柱梁接合部
G:グラウト
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7
図8