(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101208
(43)【公開日】2023-07-20
(54)【発明の名称】電動作業機
(51)【国際特許分類】
B25F 5/02 20060101AFI20230712BHJP
B25F 5/00 20060101ALI20230712BHJP
B23D 29/00 20060101ALI20230712BHJP
B23D 45/16 20060101ALI20230712BHJP
B23D 47/00 20060101ALI20230712BHJP
B24B 23/02 20060101ALI20230712BHJP
B24B 41/04 20060101ALI20230712BHJP
B28D 1/04 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
B25F5/02
B25F5/00 H
B23D29/00 Z
B23D45/16
B23D47/00 Z
B24B23/02
B24B41/04
B28D1/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022001684
(22)【出願日】2022-01-07
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鷲見 卓也
(72)【発明者】
【氏名】津田 翔
(72)【発明者】
【氏名】谷口 洸紀
【テーマコード(参考)】
3C034
3C039
3C040
3C064
3C069
3C158
【Fターム(参考)】
3C034AA15
3C034BB22
3C034BB52
3C034BB89
3C034DD20
3C039FA01
3C040AA01
3C040LL05
3C064AA05
3C064AA08
3C064AB02
3C064AC02
3C064AC03
3C064BA01
3C064BB01
3C064BB11
3C064BB28
3C064BB56
3C064BB84
3C064CA03
3C064CA08
3C064CA27
3C064CA54
3C064CA55
3C064CA58
3C064CB06
3C064CB09
3C064CB63
3C064CB69
3C064CB70
3C064CB72
3C064CB84
3C064CB91
3C069AA01
3C069BA04
3C069BB03
3C069BC02
3C069CA01
3C069DA01
3C069DA05
3C069DA07
3C158AA03
3C158AA14
3C158AA16
3C158AC03
3C158AC05
3C158CB05
3C158CB10
(57)【要約】
【課題】電動作業機において、出力シャフトの回転軸方向に関して、電動作業機を小型化することが可能な技術を提供する。
【解決手段】本明細書が開示する電動作業機は、回転刃と、前記回転刃が取り付けられた出力シャフトと、前記出力シャフトに固定された出力プーリと、入力シャフトと、前記入力シャフトに固定された入力プーリと、前記入力プーリと前記出力プーリの間に架け渡された伝動ベルトと、モータシャフトを有しており、前記モータシャフトを回転駆動する電動モータと、前記モータシャフトの回転を減速して前記入力シャフトに伝達する減速機と、前記電動モータと、前記減速機を収容しており、前記入力シャフトと前記出力シャフトを回転可能に支持するハウジングを備えている。前記モータシャフトの回転軸は、前記出力シャフトの回転軸に沿う方向に対して傾斜して配置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転刃と、
前記回転刃が取り付けられた出力シャフトと、
前記出力シャフトに固定された出力プーリと、
入力シャフトと、
前記入力シャフトに固定された入力プーリと、
前記入力プーリと前記出力プーリの間に架け渡された伝動ベルトと、
モータシャフトを有しており、前記モータシャフトを回転駆動する電動モータと、
前記モータシャフトの回転を減速して前記入力シャフトに伝達する減速機と、
前記電動モータと、前記減速機を収容しており、前記入力シャフトと前記出力シャフトを回転可能に支持するハウジングを備えており、
前記モータシャフトの回転軸が、前記出力シャフトの回転軸に沿う方向に対して傾斜して配置されている、電動作業機。
【請求項2】
前記モータシャフトの前記回転軸が、前記出力シャフトの前記回転軸に沿う方向に対して直交するように配置されている、請求項1の電動作業機。
【請求項3】
前記電動作業機が載置面に載置されている状態において、
前記出力シャフトの前記回転軸が、前記ハウジングの前端近傍で、左右方向に沿って配置されており、
前記電動作業機を側方から見た時に、前記モータシャフトの前記回転軸が、上下方向に対して-45°から45°までの範囲内の傾斜角度で配置されている、請求項2の電動作業機。
【請求項4】
前記電動作業機が前記載置面に載置されている状態において、
前記電動作業機を側方から見た時に、前記モータシャフトの前記回転軸が、上下方向に対して、上方から下方に向かうにつれて後方から前方に向かうように傾斜している、請求項3の電動作業機。
【請求項5】
前記電動作業機を側方から見た時に、前記モータシャフトの前記回転軸が、前記出力シャフトの前記回転軸と前記入力シャフトの回転軸を通る直線に対して略直交するように配置されている、請求項4の電動作業機。
【請求項6】
前記ハウジングに設けられているとともに、ユーザの一方の手によって把持される第1ハンドルと、
前記ハウジングに設けられているとともに、前記ユーザの他方の手によって把持される第2ハンドルと、をさらに備えており、
前記電動作業機が前記載置面に載置されている状態において、
前記第1ハンドルが、前記回転刃よりも後方であって、前記電動モータよりも前方に配置されており、
前記第2ハンドルが、前記電動モータよりも後方に配置されている、請求項3から5の何れか一項の電動作業機。
【請求項7】
前記ハウジングに着脱可能に取り付けられているとともに、前記電動モータに電力を供給する少なくとも一つのバッテリパックをさらに備えている、請求項6の電動作業機。
【請求項8】
前記電動作業機が前記載置面に載置されている状態において、
前記少なくとも一つの前記バッテリパックが、前記電動モータよりも後方であって、前記第2ハンドルよりも前方に配置されている、請求項7の電動作業機。
【請求項9】
前記電動作業機が前記載置面に載置されている状態において、
前記電動作業機を後方から見た時に、前記バッテリパックと前記電動モータが少なくとも部分的に重なり合っている、請求項8の電動作業機。
【請求項10】
前記電動作業機が前記載置面に載置されている状態において、
前記電動作業機を後方から見た時に、前記回転刃と前記電動モータが少なくとも部分的に重なり合っている、請求項8または9の電動作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、電動作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、回転刃と、前記回転刃が取り付けられた出力シャフトと、前記出力シャフトに固定された出力プーリと、入力シャフトと、前記入力シャフトに固定された入力プーリと、前記入力プーリと前記出力プーリの間に架け渡された伝動ベルトと、モータシャフトを有しており、前記モータシャフトを回転駆動する電動モータと、前記モータシャフトの回転を減速して前記入力シャフトに伝達する減速機と、前記電動モータと、前記減速機を収容しており、前記入力シャフトと前記出力シャフトを回転可能に支持するハウジングを備える電動作業機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電動作業機では、特許文献1のように、モータシャフトの回転軸が出力シャフトの回転軸に沿う方向に配置されていた。一般的に、電動モータの長手方向はモータシャフトの回転軸方向に一致するため、従来の電動作業機では、電動モータの長手方向が出力シャフトの回転軸に沿う方向に配置されていた。このため、出力シャフトの回転軸方向(回転刃の軸方向)に関して、電動作業機を小型化することができなかった。本明細書では、電動作業機において、出力シャフトの回転軸方向に関して、電動作業機を小型化することが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する電動作業機は、回転刃と、前記回転刃が取り付けられた出力シャフトと、前記出力シャフトに固定された出力プーリと、入力シャフトと、前記入力シャフトに固定された入力プーリと、前記入力プーリと前記出力プーリの間に架け渡された伝動ベルトと、モータシャフトを有しており、前記モータシャフトを回転駆動する電動モータと、前記モータシャフトの回転を減速して前記入力シャフトに伝達する減速機と、前記電動モータと、前記減速機を収容しており、前記入力シャフトと前記出力シャフトを回転可能に支持するハウジングを備えている。前記モータシャフトの回転軸は、前記出力シャフトの回転軸に沿う方向に対して傾斜して配置されている。
【0006】
上記の構成によれば、電動モータの長手方向が出力シャフトの回転軸に沿う方向に対して傾斜して配置される。このため、出力シャフトの回転軸方向に関して、電動作業機を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施例に係るパワーカッタ10を前方右方上方から見た全体斜視図である。
【
図2】実施例に係るパワーカッタ10のハウジング14内の構造を右方から見た側方図である。
【
図3】実施例に係るパワーカッタ10において、
図2に示す通りに配置された状態の電動モータ4、動力伝達部8、および回転刃12を示す図である。
【
図4】実施例に係るパワーカッタ10を後方から見た場合における、電動モータ4、回転刃12、バッテリインタフェース24、複数のバッテリパック60の位置関係を示す図である。
【
図5】実施例に係るパワーカッタ10が備える後方ハンドル20を後方上方左方から見た拡大図である。
【
図6】実施例に係るパワーカッタ10の重心位置GTを示す上面図である。
【
図7】実施例に係るパワーカッタ10における、伝動ベルト83の脱落抑制機構を示すとともに、出力シャフト85のロック機構において出力シャフト85の回転が許容されている状態を示す拡大図である。
【
図8】実施例に係るパワーカッタ10が備える出力プーリ84の分解図である。
【
図9】実施例に係るパワーカッタ10における、伝動ベルト83の脱落抑制機構を示すとともに、出力シャフト85のロック機構において出力シャフト85の回転が禁止されている状態を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の代表的かつ非限定的な具体例について、図面を参照して以下に詳細に説明する。この詳細な説明は、本発明の好ましい例を実施するための詳細を当業者に示すことを単純に意図しており、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。また、開示された追加的な特徴ならびに発明は、さらに改善された電動作業機を提供するために、他の特徴や発明とは別に、又は共に用いることができる。
【0009】
また、以下の詳細な説明で開示される特徴や工程の組み合わせは、最も広い意味において本発明を実施する際に必須のものではなく、特に本発明の代表的な具体例を説明するためにのみ記載されるものである。さらに、以下の代表的な具体例の様々な特徴、ならびに、特許請求の範囲に記載されるものの様々な特徴は、本発明の追加的かつ有用な実施形態を提供するにあたって、ここに記載される具体例のとおりに、あるいは列挙された順番のとおりに組合せなければならないものではない。
【0010】
本明細書及び/又は特許請求の範囲に記載された全ての特徴は、実施例及び/又は特許請求の範囲に記載された特徴の構成とは別に、出願当初の開示ならびに特許請求の範囲に記載された特定事項に対する限定として、個別に、かつ互いに独立して開示されることを意図するものである。さらに、全ての数値範囲及びグループ又は集団に関する記載は、出願当初の開示ならびに特許請求の範囲に記載された特定事項に対する限定として、それらの中間の構成を開示する意図を持ってなされている。
【0011】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記モータシャフトの前記回転軸は、前記出力シャフトの前記回転軸に沿う方向に対して直交するように配置されていてもよい。
【0012】
上記の構成によれば、電動モータの長手方向が出力シャフトの回転軸に対して略直交するように配置される。このため、出力シャフトの回転軸方向(回転刃の軸方向)に関して、電動作業機を小型化することができる。
【0013】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記電動作業機が載置面に載置されている状態において、前記出力シャフトの前記回転軸は、前記ハウジングの前端近傍で、左右方向に沿って配置されていてもよく、前記電動作業機を側方から見た時に、前記モータシャフトの前記回転軸は、上下方向に対して-45°から45°までの範囲内の傾斜角度で配置されていてもよい。なお、本明細書では、モータシャフトの回転軸の上下方向に対する傾斜角度について、電動作業機を右方から見た時に、右回りになす角度を正の角度とし、左回りになす角度を負の角度として説明を行う。
【0014】
上記の構成によれば、電動作業機が載置面に載置されている状態において、電動作業機を、左右方向に関して小型化できるとともに、前後方向に関しても小型化することができる。
【0015】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記電動作業機が前記載置面に載置されている状態において、前記電動作業機を側方から見た時に、前記モータシャフトの前記回転軸は、上下方向に対して、上方から下方に向かうにつれて後方から前方に向かうように傾斜していてもよい。
【0016】
上記の構成によれば、ユーザが回転刃を下方に向けて電動作業機を使用する際に、モータシャフトの回転軸が上下方向に沿って配置されやすい。このため、ユーザが回転刃を下方に向けて電動作業機を使用する状態において、電動作業機を、前後方向に小型化することができる。したがって、ユーザの操作性を向上することができる。
【0017】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記電動作業機を側方から見た時に、前記モータシャフトの前記回転軸は、前記出力シャフトの前記回転軸と前記入力シャフトの回転軸を通る直線に対して略直交するように配置されていてもよい。
【0018】
上記の構成によれば、モータシャフトの回転軸は回転刃の径方向に対して略直交して(すなわち、回転刃の接線方向に対して略平行に)配置される。すなわち、電動モータの長手方向が回転刃の径方向に対して略直交するように(すなわち、回転刃の接線方向に対して略平行に)配置される。上記の構成によれば、回転刃の径方向に関して、電動作業機を小型化することができる。
【0019】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記ハウジングに設けられているとともに、ユーザの一方の手によって把持される第1ハンドルと、前記ハウジングに設けられているとともに、前記ユーザの他方の手によって把持される第2ハンドルと、をさらに備えていてもよい。前記電動作業機が前記載置面に載置されている状態において、前記第1ハンドルは、前記回転刃よりも後方であって、前記電動モータよりも前方に配置されていてもよく、前記第2ハンドルは、前記電動モータよりも後方に配置されていてもよい。
【0020】
通常、電動作業機の重心位置がユーザの身体の重心位置に近いほど、ユーザの操作性は向上する。また、電動作業機の構成部品の中で電動モータの重量は比較的大きいので、電動モータをどこに配置するかによって、電動作業機の重心位置は大きく変化する。上記の構成によれば、電動モータが第1ハンドルと第2ハンドルの間に配置されるので、ユーザが第1ハンドルと第2ハンドルを把持して電動作業機を使用する際、電動作業機の重心位置がユーザの身体の重心位置の近くに定まりやすい。このため、ユーザの操作性をさらに向上することができる。
【0021】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記ハウジングに着脱可能に取り付けられているとともに、前記電動モータに電力を供給する少なくとも一つのバッテリパックをさらに備えていてもよい。
【0022】
電動作業機を外部電源による電力で駆動する場合、電源コードを電動作業機に取り付ける必要があるため、操作性の低下を招く可能性がある。上記の構成によれば、電動作業機に電源コードを取り付ける必要がないので、ユーザの操作性をさらに向上することができる。また、外部電源の供給が不可能な場所であっても電動作業機を使用することができるため、ユーザの利便性を向上することもできる。
【0023】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記電動作業機が前記載置面に載置されている状態において、前記少なくとも一つの前記バッテリパックは、前記電動モータよりも後方であって、前記第2ハンドルよりも前方に配置されていてもよい。
【0024】
電動作業機の構成部品の中でバッテリパックの重量は比較的大きいので、バッテリパックをどこに配置するかによって、電動作業機の重心位置は大きく変化する。上記の構成によれば、少なくとも一つのバッテリパックは第1ハンドルと第2ハンドルの間に配置されるので、ユーザが第1ハンドルと第2ハンドルを把持して電動作業機を使用する際、電動作業機の重心位置がユーザの身体の重心位置の近くに定まりやすい。このため、ユーザの操作性をさらに向上することができる。
【0025】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記電動作業機が前記載置面に載置されている状態において、前記電動作業機を後方から見た時に、前記バッテリパックと前記電動モータは少なくとも部分的に重なり合っていてもよい。
【0026】
上記の構成によれば、電動モータおよびバッテリパックは、左右方向および上下方向に関して近接して配置される。上記の構成によれば、電動作業機が載置面に載置されている状態において、電動作業機を、左右方向に関して小型化できるとともに、上下方向に関しても小型化することができる。
【0027】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記電動作業機が前記載置面に載置されている状態において、前記電動作業機を後方から見た時に、前記回転刃と前記電動モータは少なくとも部分的に重なり合っていてもよい。
【0028】
上記の構成によれば、回転刃および電動モータは、左右方向および上下方向に関して近接して配置される。上記の構成によれば、電動作業機が載置面に載置されている状態において、電動作業機を、左右方向に関して小型化できるとともに、上下方向に関しても小型化することができる。
【0029】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記出力プーリは、第1回転部材と、前記出力シャフトの回転軸方向において前記第1回転部材に隣接して固定されている第2回転部材を備えている。前記第1回転部材は、前記伝動ベルトが巻回される第1円筒部と、前記第1円筒部の前記第2回転部材に隣接しない側の端部から径方向外側に向かって広がるフランジ部を備えている。前記第2回転部材は、前記第1円筒部よりも外径の大きい第2円筒部と、前記第2円筒部の前記第1回転部材に隣接する側の端部から径方向内側に向かって広がるベース部と、を備えている。前記第2円筒部は、周方向において所定の間隔で形成された複数のロック孔を備えている。前記電動作業機は、前記ハウジングに移動可能に保持されており、前記複数のロック孔に挿入可能なロックピンをさらに備えている。
【0030】
継ぎ目なく一体的に形成された出力プーリにおいて、伝動ベルトの脱落を抑制する機構と、出力シャフトの回転をロックする機構とを設ける場合、出力プーリは複雑な形状に形成される。このため、電動作業機を組み立てる際に出力プーリの取り付けが困難になることがある。上記の構成によれば、出力プーリは、第1回転部材と第2回転部材によって構成されている。このため、電動作業機を組み立てる際に、第1回転部材と第2回転部材を別個に取り付けることで、出力プーリの取り付けを容易に行うことができる。なお、上記の構成によれば、第1円筒部に巻回された伝動ベルトが出力シャフトの回転軸方向に移動する場合、第1回転部材のフランジ部または第2回転部材のベース部によって係止される。このため、伝動ベルトが第1円筒部から脱落することは抑制されている。また、上記の構成によれば、ロックピンを複数のロック孔のいずれかに挿入した状態では、出力プーリがハウジングに対して回転する場合、第2回転部材はロックピンによって係止される。このため、ロックピンを複数のロック孔のいずれかに挿入することによって、出力シャフトの回転をロックすることができる。
【0031】
1つまたはそれ以上の実施形態において、第1円筒部とフランジ部は継ぎ目なく一体的に形成されている。第2円筒部とベース部は継ぎ目なく一体的に形成されている。第1回転部材には、アルミニウム合金が用いられている。第2回転部材には、鉄が用いられている。
【0032】
出力プーリは出力シャフトとともに回転する部材であることから、出力プーリには質量の小さい材料を用いることが望ましい。一方で、出力プーリにロックピンを挿入して出力シャフトの回転をロックすることを考慮すると、出力プーリには剛性および強度の高い材料を用いることが望ましい。上記の構成によれば、ロックピンを挿入する部材である第2回転部材に鉄を用いることで必要な剛性および強度を確保しつつ、伝動ベルトを巻回する部材である第1回転部材にアルミニウム合金を用いることで出力プーリ全体としては軽量化を実現することができる。
【0033】
(実施例)
(パワーカッタ10の構成)
図1に示すように、電動作業機の例であるパワーカッタ10は、手持ち式の動力工具であり、主に石材や鉄材といった切断対象物を切断するために用いられる。パワーカッタ10は、回転刃12と、ハウジング本体14aと、ブレードアーム14bと、ブレードカバー16と、前方ハンドル18と、後方ハンドル20と、給水ホース50と、右側バッテリパック60aと、左側バッテリパック60bと、ガイドローラ70を備えている。なお、本明細書では、右側バッテリパック60aと左側バッテリパック60bを総称して「複数のバッテリパック60」と呼ぶことがある。また、ハウジング本体14aとブレードアーム14bを総称して「ハウジング14」と呼ぶことがある。
【0034】
また、
図2に示すように、パワーカッタ10は、電動モータ4と、制御基板6と、バッテリインタフェース24と、動力伝達部8をさらに備えている。
【0035】
(回転刃12)
回転刃12は、円板形状を有するブレードであり、その外周縁に複数の刃先又は研削砥石を有している。回転刃12は、例えばダイヤモンドホイールであってもよい。回転刃12は、いわゆる消耗品であることから、ブレードアーム14bに対して着脱可能に取り付けられている。回転刃12の回転軸は、ブレードアーム14bの長手方向に直交する方向に延びている。
【0036】
ここで、本明細書では、パワーカッタ10が載置面Hに載置されている状態において、載置面Hに直交する方向を上下方向と定め、載置面Hにおいてパワーカッタ10が載置されている方向を上方向と定め、パワーカッタ10から載置面Hに向かう方向を下方向とする。また、上下方向に直交する方向であって、回転刃12の回転軸が延びる方向を左右方向と定める。そして、上下方向および左右方向に垂直な方向を前後方向と定め、後方ハンドル20から前方ハンドル18に向かう方向を前方向とし、前方ハンドル18から後方ハンドル20に向かう方向を後方向とする。また、以下では、特に明記しない限り、パワーカッタ10が載置面Hに載置されているものとして説明を行っていることに留意されたい。
【0037】
(電動モータ4)
図3に示すように、電動モータ4は、モータハウジング42と、モータハウジング42に対して回転軸A1周りに回転可能なモータシャフト44を備えている。本実施例における電動モータ4はブラシレスモータであり、モータハウジング42にはステータおよびロータ(図示省略)が収容されている。モータシャフト44の一部は、モータハウジング42内のロータに固定されている。モータシャフト44の残部には、第1ギヤ80aが固定されている。本実施例では、第1ギヤ80aはベベルギヤである。電動モータ4に電力が供給されると、モータシャフト44は回転軸A1周りに回転を開始する。また、電動モータ4の長手方向は、回転軸A1が延びる方向と一致している。
【0038】
図2に示すように、電動モータ4は、ハウジング本体14aに収容されている。本実施例では、パワーカッタ10を右方から見た時に、モータシャフト44(
図3参照)の回転軸A1は、上下方向に対して、上方から下方に向かうにつれて後方から前方に向かうように傾斜した方向に配置されている。本実施例では、回転軸A1の上下方向に対する傾斜角度は-20°である。また、パワーカッタ10を右方から見た時に、回転軸A1は、後述する入力シャフト81の回転軸A2(
図3参照)と出力シャフト85の回転軸A3(
図3参照)を通る直線Yに対して略直交するように配置されている。
【0039】
図4に示すように、パワーカッタ10を後方から見た時に、電動モータ4は、回転刃12と部分的に重なり合っている。電動モータ4のモータシャフト44(
図3参照)の回転軸A1は、左右方向に対して直交するように配置されている。また、モータシャフト44の回転軸A1は、回転刃12が広がる平面に相当する基準面Pに対して平行に設けられている。基準面Pは、後述する出力シャフト85の回転軸A3(
図3参照)に対して直交する平面である。回転軸A1は、基準面Pの近傍に配置されている。本実施例では、基準面Pから回転軸A1までの距離は、3.5mmである。
【0040】
(動力伝達部8)
図3に示すように、動力伝達部8は、入力シャフト81と、出力シャフト85と、入力シャフト81に固定された入力プーリ82と、出力シャフト85に固定された出力プーリ84と、入力プーリ82と出力プーリ84の間に架け渡された伝動ベルト83を備えている。
【0041】
入力シャフト81および入力プーリ82は、ハウジング14(図示省略)によって回転軸A2周りに回転可能に支持されている。入力シャフト81および入力プーリ82の回転軸A2は、左右方向に沿って配置されている。入力シャフト81には、入力プーリ82に対して左方にオフセットした位置において、第2ギヤ80bが固定されている。本実施例では、第2ギヤ80bは、ベベルギヤである。第2ギヤ80bは、モータシャフト44の第1ギヤ80aと噛み合っている。このため、モータシャフト44が回転する際、第1ギヤ80aと第2ギヤ80bの噛み合いによって、入力シャフト81も同時に回転する。この際、第1ギヤ80aと第2ギヤ80bのギヤ比に応じて、入力シャフト81の回転速度はモータシャフト44の回転速度に対して減速される。すなわち、第1ギヤ80aおよび第2ギヤ80bは、モータシャフト44の回転軸A1周りの回転運動を入力シャフト81の回転軸A2周りの回転運動に変換する機構として機能するだけでなく、減速機としても機能する。このため、本明細書では、第1ギヤ80aと第2ギヤ80bを総称して「減速機80」と呼ぶことがある。
【0042】
図2に示すように、伝動ベルト83は、入力プーリ82および出力プーリ84とともに、ブレードアーム14bに収容されている。本実施例では、入力プーリ82と出力プーリ84は歯付きプーリであり、伝動ベルト83は歯付きベルトである。入力プーリ82と伝動ベルト83は噛み合っている。出力プーリ84と伝動ベルト83も同様に噛み合っている。このため、入力シャフト81が回転する際、入力シャフト81に固定された入力プーリ82および伝動ベルト83によって、出力プーリ84も同時に回転する。本実施例では、出力プーリ84のプーリ径は、入力プーリ82のプーリ径よりも大きい。このため、出力プーリ84の回転速度は、入力プーリ82の回転速度に対して減速される。
【0043】
図3に示すように、出力プーリ84および出力シャフト85は、ハウジング14(図示省略)によって回転軸A3周りに回転可能に支持されている。出力プーリ84および出力シャフト85の回転軸A3は、左右方向に沿って配置されている。また、出力シャフト85には、出力プーリ84に対して左方にオフセットした位置において、回転刃12が取り付けられている。このため、出力プーリ84が回転する際、出力シャフト85を介して回転刃12も同時に回転する。すなわち、回転軸A3は、回転刃12の回転軸に相当する軸である。
【0044】
以上のように、動力伝達部8は、電動モータ4による動力を回転刃12に伝達する。これにより、パワーカッタ10において、電動モータ4による回転刃12の回転駆動が可能となっている。
【0045】
(制御基板6)
【0046】
図2に示すように、制御基板6は、ハウジング本体14aに収容されている。制御基板6は、モータシャフト44(
図3参照)の回転軸A1が延びる方向において、電動モータ4の上方に配置されている。制御基板6は、モータシャフト44の回転軸A1に対して略直交する平面に沿って配置されている。制御基板6は、複数のバッテリパック60と電気的に接続しており、複数のバッテリパック60から供給される電力を調節し、電動モータ4に供給する。本実施例では、電動モータ4がブラシレスモータであることから、制御基板6は、インバータ回路(図示省略)をさらに備える。インバータ回路は、複数のバッテリパック60と電動モータ4との間を電気的に接続しており、複数のバッテリパック60からの直流電力を三相交流電力に変換して、電動モータ4へ供給する。また、制御基板6は、ハウジング14が備える照明器(図示せず)とも電気的に接続しており、複数のバッテリパック60から供給される電力を調節し、照明器に供給することもできる。
【0047】
(複数のバッテリパック60およびバッテリインタフェース24)
複数のバッテリパック60は、少なくとも一つの二次電池セル(図示省略)を有する。複数のバッテリパック60は、バッテリインタフェース24に着脱可能に取り付けられ、電動モータ4に電力を供給することができる。バッテリインタフェース24は、電動モータ4よりも後方においてハウジング本体14aに設けられている。また、バッテリインタフェース24は、右側バッテリパック60a(
図1参照)および左側バッテリパック60bの長手方向がモータシャフト44(
図3参照)の回転軸A1が延びる方向に対して略平行となって取り付けられるように、ハウジング本体14aに設けられている。すなわち、パワーカッタ10において、電動モータ4と複数のバッテリパック60は、それぞれの長手方向が略平行となるように設けられている。
【0048】
図4に示すようにパワーカッタ10を後方から見た時に、バッテリインタフェース24は、回転刃12と部分的に重なっている。パワーカッタ10を後方から見た時に、バッテリインタフェース24に取り付けられた状態の右側バッテリパック60aおよび左側バッテリパック60bは、それぞれ電動モータ4と部分的に重なり合っている。また、右側バッテリパック60aおよび左側バッテリパック60bは、回転刃12が広がる平面に相当する基準面Pに対して略対称に配置されている。
【0049】
(前方ハンドル18および後方ハンドル20)
図1に示すように、前方ハンドル18と後方ハンドル20はそれぞれ、ハウジング本体14aに設けられている。前方ハンドル18は、ハウジング本体14aの上方から右方および左方にわたって延在している。前方ハンドル18は、一端がハウジング本体14aの右側面の中央近傍に取り付けられており、他端がハウジング本体14aの左側面の下部に取り付けられている。後方ハンドル20は、ハウジング本体14aから後方に向けて延在している。
【0050】
図2に示すように、前方ハンドル18は、回転刃12よりも後方であって、電動モータ4よりも前方に配置されている。後方ハンドル20は、バッテリインタフェース24よりも後方に配置されている。通常、ユーザは、左手で前方ハンドル18を把持し、右手で後方ハンドル20を把持することで、パワーカッタ10を保持する。このとき、ユーザは、前方ハンドル18を把持する位置を変更することで、パワーカッタ10の姿勢を調整することができる。
【0051】
図5に示すように、後方ハンドル20は、ユーザが後方ハンドル20を把持した手の指で操作可能なメインスイッチ30を備えている。本実施例では、ユーザがメインスイッチ30を操作すると、制御基板6(
図2参照)は、電動モータ4への電力供給を開始し、メインスイッチ30の操作が解除されると、制御基板6は、電動モータ4への電力供給を中止する。すなわち、パワーカッタ10は、メインスイッチ30が操作されている間に限って、回転刃12を回転駆動するように構成されている。
【0052】
後方ハンドル20はさらに、ロックオフスイッチ32を備えている。ロックオフスイッチ32は、後方ハンドル20に対し、左右方向にスライド可能に保持されている。図示しないが、ロックオフスイッチ32が後方ハンドル20に対して右方向に押し込まれていない場合、メインスイッチ30とロックオフスイッチ32が機械的に干渉することによって、メインスイッチ30の操作は禁止されている。ロックオフスイッチ32が後方ハンドル20に対して右方向に押し込まれている場合、メインスイッチ30とロックオフスイッチ32は機械的に干渉しないため、メインスイッチ30の操作は許容されている。
【0053】
後方ハンドル20はさらに、操作ボタン34を備えている。本実施例では、制御基板6(
図2参照)は、操作ボタン34の操作に応じて、照明器(図示せず)への電力供給を開始または中止する。すなわち、操作ボタン34は、照明器のON、OFFの切り替えを行うためのボタンである。
【0054】
(ブレードカバー16)
図1に示すように、ブレードカバー16は、ブレードアーム14bの前端近傍に取り付けられており、回転刃12の一部を覆っている。ブレードカバー16は、回転刃12によって発生する粉塵が、ユーザに向けて飛散することを防止する。本実施例におけるブレードカバー16は、回転刃12の周方向における一部(例えば、175°以上の角度範囲)を覆うように構成されている。また、ブレードカバー16の少なくとも一部は、ブレードアーム14bに対して可動式であってもよい。
【0055】
(給水ホース50)
給水ホース50は、パワーカッタ10の右方に設けられている。給水ホース50の先端は、プラグ52を介して、ブレードカバー16の外側面に接続されている。給水ホース50の基端は、後方ハンドル20の下部に取り付けられている。給水ホース50の基端には、給水コネクタ54が設けられている。給水コネクタ54は、ハウジング本体14aによって保持されており、例えば水道の蛇口といった外部の給水源に、ホース(図示省略)を介して接続することができる。このため、給水ホース50は、ブレードカバー16内へ水を供給することができる。
【0056】
(ガイドローラ70)
図2に示すように、ガイドローラ70は、ハウジング14の下方に取り付けられている。ガイドローラ70は、左右一対の車輪72(
図1、
図6参照)を備えている。パワーカッタ10が載置面Hに載置されている状態では、左右一対の車輪72は載置面Hには当接しないように配置されている。パワーカッタ10を使用するユーザは、左右一対の車輪72を任意の面(例えば、載置面Hなど)に当接させながら作業を行うことで、切断対象物に対して回転刃12を安定して前進または後退させることができる。
【0057】
(パワーカッタ10の重心位置GT)
図6に示すように、上記の説明の通りに構成された本実施例のパワーカッタ10では、パワーカッタ10の重心位置GTは、基準面Pの近傍であって、前方ハンドル18と後方ハンドル20の間に配置される。このため、ユーザが前方ハンドル18を左手で把持し、後方ハンドル20を右手で把持してパワーカッタ10を保持したときに、パワーカッタ10の姿勢が安定しやすくなる。
【0058】
(出力シャフト85のロック機構および伝動ベルト83の脱落抑制機構)
図7に示すように、本実施例のブレードアーム14bは、ロックピン140が設けられている。ロックピン140は、ブレードアーム14bに対して、出力シャフト85の回転軸A3に対して略直交する方向にスライド可能に保持されている。ロックピン140は、コイルばね(図示省略)によって、ブレードアーム14bの外側に向かって付勢されている。
【0059】
本実施例の出力プーリ84は、伝動ベルト83を巻回するための第1回転部材110と、ロックピン140を挿入するための第2回転部材120を備えている。第1回転部材110は、出力シャフト85に対して固定されている。詳細は後述するが、第2回転部材120は、第1回転部材110に対して固定されている。すなわち、第1回転部材110および第2回転部材120は、出力シャフト85とともに回転軸A3周りに回転する部材である。
【0060】
図8に示すように、第1回転部材110は、第1円筒部112と、第1円筒部112の右端から径方向外側に向かって広がるフランジ部114と、第1円筒部112の左端から径方向内側に向かって広がる第1ベース部116を備えている。本実施例では、第1円筒部112には周方向に所定の間隔で複数の歯が形成されており、伝動ベルト83(
図7参照)に形成されている複数の歯と噛み合っている。伝動ベルト83は、第1円筒部112に巻回される。また、第1円筒部112と、フランジ部114と、第1ベース部116は、継ぎ目なく一体的に形成されている。本実施例では、第1回転部材110には、アルミニウム合金が用いられている。
【0061】
第2回転部材120は、第2円筒部122と、第2円筒部122の右端から径方向内側に向かって広がる第2ベース部124を備えている。第2円筒部122は、周方向において所定の間隔で形成された複数のロック孔126を備えている。本実施例では、複数のロック孔126は4つのロック孔であり、第2円筒部122の周方向において1/4周ごとに設けられている。第2円筒部122の外径は、第1円筒部112の外径よりも大きい。第2ベース部124は、第1回転部材110の第1ベース部116に対してねじ(図示省略)等によって固定されている。また、第2円筒部122と第2ベース部124は、継ぎ目なく一体的に形成されている。本実施例では、第2回転部材120には、鉄が用いられている。
【0062】
図9に示すように、出力シャフト85を回転させてロックピン140のスライド方向に複数のロック孔126のいずれかを配置した状態で、コイルばねの付勢力に反してロックピン140が押し込み操作されると、ロックピン140は、ロック孔126に挿入される。ロックピン140がロック孔126に挿入された状態では、ロックピン140とロック孔126が機械的に干渉することによって、出力シャフト85の回転軸A3周りの回転は禁止されている。一方、
図7に示すように、ロックピン140がロック孔126に挿入されていない状態では、ロックピン140とロック孔126は機械的に干渉しないため、出力シャフト85の回転軸A3周りの回転は許容されている。
【0063】
第1円筒部112に巻回された伝動ベルト83は、出力シャフト85の回転軸A3方向に沿って右方に移動する場合、伝動ベルト83の右方に位置するフランジ部114によって係止される。また、伝動ベルト83は、回転軸A3方向に沿って左方に移動する場合、伝動ベルト83の左方に位置する第2ベース部124によって係止される。これにより、伝動ベルト83が出力プーリ84から脱落することは抑制されている。
【0064】
(変形例)
上記の実施例では、電動作業機の例として、パワーカッタ10について説明した。別の実施例では、電動作業機は、例えば電動丸鋸やグラインダ等の、パワーカッタ10以外の電動作業機であってもよい。
【0065】
上記の実施例では、電動モータ4がブラシレスモータである構成について説明した。別の実施例では、電動モータ4はブラシレスモータ以外のモータであってもよい。例えば、電動モータ4はブラシ付きモータ等であってもよい。
【0066】
上記の実施例では、パワーカッタ10を右方から見た時に、モータシャフト44の回転軸A1が、上下方向に対して、上方から下方に向かうにつれて後方から前方に向かうように傾斜した方向に配置されており、回転軸A1の上下方向に対する傾斜角度が-20°である構成について説明した。別の実施例では、パワーカッタ10を右方から見た時に、回転軸A1の上下方向に対する傾斜角度は、-20°以外の角度であってもよい。この場合、回転軸A1の上下方向に対する傾斜角度は、-45°から45°までの範囲内で適宜変更されてもよい。さらにまた別の実施例では、パワーカッタ10を右方から見た時に、回転軸A1の上下方向に対する傾斜角度は、-45°から45°までの範囲外であってもよい。
【0067】
上記の実施例では、パワーカッタ10を右方から見た時に、回転軸A1が、入力プーリ82の回転軸A2と出力プーリ84の回転軸A3を通る直線Yに対して略直交するように配置されている構成について説明した。別の実施例では、パワーカッタ10を右方から見た時に、回転軸A1は、回転軸A2と回転軸A3を通る直線Yに対して略直交していなくてもよい。
【0068】
上記の実施例では、第1ギヤ80aおよび第2ギヤ80bがベベルギヤである構成について説明した。別の実施例では、第1ギヤ80aおよび第2ギヤ80bは、ベベルギヤ以外のギヤであってもよい。例えば、第1ギヤ80aおよび第2ギヤ80bは、ウォームギヤ等であってもよい。
【0069】
上記の実施例では、入力プーリ82と出力プーリ84が歯付きプーリであり、伝動ベルト83が歯付きベルトであり、入力プーリ82と、伝動ベルト83と、出力プーリ84の間では、主に歯同士の噛み合いによって動力を伝達する構成について説明した。別の実施例では、入力プーリ82と出力プーリ84は歯付きプーリ以外のプーリであってもよく、伝動ベルト83は歯付きベルト以外のベルトであってもよい。例えば、入力プーリ82と出力プーリ84はV字形の溝付きプーリであってもよく、伝動ベルト83は平ベルトやVベルトであってもよい。この場合、入力プーリ82と、伝動ベルト83と、出力プーリ84の間では、主に部材間の摩擦によって動力が伝達される。
【0070】
上記の実施例では、出力プーリ84のプーリ径が入力プーリ82のプーリ径よりも大きい構成について説明した。別の実施例では、出力プーリ84のプーリ径は、入力プーリ82のプーリ径と同一であってもよいし、入力プーリ82のプーリ径よりも小さくてもよい。
【0071】
上記の実施例では、電動作業機(パワーカッタ10)が、複数のバッテリパック60を備えており、複数のバッテリパック60から電動モータ4に電力が供給される構成について説明した。別の実施例では、電動作業機(パワーカッタ10)は、複数のバッテリパック60の代わりに、外部電源に接続する電源コードをそなえていてもよく、電源コードを介して外部電源から電動モータ4に電力が供給されてもよい。さらに別の実施例では、電動作業機(パワーカッタ10)は、複数のバッテリパック60の代わりに、1つのバッテリパックを備えていてもよい。
【0072】
上記の実施例では、複数のバッテリパック60は、2つのバッテリパック(右側バッテリパック60aと左側バッテリパック60b)である構成について説明した。別の実施例では、複数のバッテリパック60は、3つ以上のバッテリパックであってもよい。例えば、複数のバッテリパック60は、4つのバッテリパックであってもよい。
【0073】
上記の実施例とは異なり、パワーカッタ10は、開閉可能なカバーであって、複数のバッテリパック60を覆うバッテリパックカバーをさらに備えていてもよい。この場合、複数のバッテリパック60を水濡れや粉塵から保護することができる。
【0074】
上記の実施例では、前方ハンドル18が、回転刃12よりも後方であって電動モータ4よりも前方に配置されており、後方ハンドル20が、バッテリインタフェース24よりも後方に配置されている構成について説明した。別の実施例では、前方ハンドル18が後方ハンドル20よりも前方に配置されていれば、前方ハンドル18および後方ハンドル20はどのような位置に配置されていてもよい。
【0075】
上記の実施例とは異なり、パワーカッタ10は、給水コネクタ54に接続する給水タンクをさらに備えていてもよい。この場合、給水コネクタ54に外部の給水源と接続するためのホース等を取り付ける必要がなく、ユーザの操作性をさらに向上することができる。また、外部からの給水が不可能な場所であっても使用することができるため、ユーザの利便性を向上することもできる。
【0076】
上記の実施例では、第1回転部材110にはアルミニウム合金が用いられており、第2回転部材120には鉄が用いられている構成について説明した。別の実施例では、第1回転部材110にはアルミニウム合金以外の材料が用いられてもよく、第2回転部材120には鉄以外の材料が用いられてもよい。例えば、第1回転部材110には樹脂が用いられてもよく、第2回転部材120にはアルミニウム合金が用いられてもよい。
【0077】
上記の実施例では、複数のロック孔126が4つのロック孔であり、第2円筒部122の周方向において1/4周ごとに設けられている構成について説明した。別の実施例では、4つのロック孔は第2円筒部122の周方向において1/4周以下の間隔で設けられていてもよい。さらに別の実施例では、複数のロック孔126は2つ、3つ、または5つ以上のロック孔であってもよい。
【0078】
(対応関係)
以上のように、1つまたはそれ以上の実施形態において、パワーカッタ10(電動作業機の例)は、回転刃12と、回転刃12が取り付けられた出力シャフト85と、出力シャフト85に固定された出力プーリ84と、入力シャフト81と、入力シャフト81に固定された入力プーリ82と、入力プーリ82と出力プーリ84の間に架け渡された伝動ベルト83と、モータシャフト44を有しており、モータシャフト44を回転駆動する電動モータ4と、モータシャフト44の回転を減速して入力シャフト81に伝達する減速機80と、電動モータ4と、減速機80を収容しており、入力シャフト81と出力シャフト85を回転可能に支持するハウジング14を備えている。モータシャフト44の回転軸A1は、出力シャフト85の回転軸A3に沿う左右方向に対して略直交して(傾斜していることの例)配置されている。
【0079】
上記の構成によれば、電動モータ4の長手方向が出力シャフト85の回転軸A3に沿う左右方向に対して傾斜して配置される。このため、出力シャフト85の回転軸A3方向に関して、パワーカッタ10を小型化することができる。
【0080】
1つまたはそれ以上の実施形態において、モータシャフト44の回転軸A1は、出力シャフト85の回転軸A3に沿う左右方向に対して直交するように配置されている。
【0081】
上記の構成によれば、電動モータ4の長手方向が出力シャフト85の回転軸A3に対して略直交するように配置される。このため、出力シャフト85の回転軸A3方向に関して、パワーカッタ10をさらに小型化することができる。
【0082】
1つまたはそれ以上の実施形態において、パワーカッタ10が載置面Hに載置されている状態において、出力シャフト85の回転軸A3は、ハウジング14の前端近傍で、左右方向に沿って配置されており、パワーカッタ10を側方から見た時に、モータシャフト44の回転軸A1は、上下方向に対して-45°から45°までの範囲内の傾斜角度で配置されている。
【0083】
上記の構成によれば、パワーカッタ10が載置面Hに載置されている状態において、パワーカッタ10を、左右方向に関して小型化できるとともに、前後方向に関しても小型化することができる。
【0084】
1つまたはそれ以上の実施形態において、パワーカッタ10が載置面Hに載置されている状態において、パワーカッタ10を側方から見た時に、モータシャフト44の回転軸A1は、上下方向に対して、上方から下方に向かうにつれて後方から前方に向かうように傾斜している。
【0085】
上記の構成によれば、ユーザが回転刃12を下方に向けてパワーカッタ10を使用する際に、モータシャフト44の回転軸A1が上下方向に沿って配置されやすい。このため、ユーザが回転刃12を下方に向けてパワーカッタ10を使用する状態において、パワーカッタ10を、前後方向に小型化することができる。したがって、ユーザの操作性を向上することができる。
【0086】
1つまたはそれ以上の実施形態において、パワーカッタ10を側方から見た時に、モータシャフト44の回転軸A1は、出力シャフト85の回転軸A3と入力シャフト81の回転軸A2を通る直線Yに対して略直交するように配置されている。
【0087】
上記の構成によれば、モータシャフト44の回転軸A1は回転刃12の径方向に対して略直交して(すなわち、回転刃12の接線方向に対して略平行に)配置される。すなわち、電動モータ4の長手方向が回転刃12の径方向に対して略直交するように(すなわち、回転刃12の接線方向に対して略平行に)配置される。上記の構成によれば、回転刃12の径方向に関して、パワーカッタ10を小型化することができる。
【0088】
1つまたはそれ以上の実施形態において、ハウジング14に設けられているとともに、ユーザの左手(一方の手の例)によって把持される前方ハンドル18(第1ハンドルの例)と、ハウジング14に設けられているとともに、ユーザの右手(他方の手の例)によって把持される後方ハンドル20(第2ハンドルの例)と、をさらに備えている。パワーカッタ10が載置面Hに載置されている状態において、前方ハンドル18は、回転刃12よりも後方であって、電動モータ4よりも前方に配置されており、後方ハンドル20は、電動モータ4よりも後方に配置されている。
【0089】
通常、パワーカッタ10の重心位置GTがユーザの身体の重心位置に近いほど、ユーザの操作性は向上する。また、パワーカッタ10の構成部品の中で電動モータ4の重量は比較的大きいので、電動モータ4をどこに配置するかによって、パワーカッタ10の重心位置GTは大きく変化する。上記の構成によれば、電動モータ4が前方ハンドル18と後方ハンドル20の間に配置されるので、ユーザが前方ハンドル18と後方ハンドル20を把持してパワーカッタ10を使用する際、パワーカッタ10の重心位置GTがユーザの身体の重心位置の近くに定まりやすい。このため、ユーザの操作性をさらに向上することができる。
【0090】
1つまたはそれ以上の実施形態において、ハウジング14に着脱可能に取り付けられているとともに、電動モータ4に電力を供給する複数のバッテリパック60(少なくとも一つのバッテリパックの例)をさらに備えている。
【0091】
パワーカッタ10を外部電源による電力で駆動する場合、電源コードをパワーカッタ10に取り付ける必要があるため、操作性の低下を招く可能性がある。上記の構成によれば、電源コードを取り付ける必要がないので、ユーザの操作性をさらに向上することができる。また、外部電源の供給が不可能な場所であっても使用することができるため、ユーザの利便性を向上することもできる。
【0092】
1つまたはそれ以上の実施形態において、パワーカッタ10が載置面Hに載置されている状態において、複数のバッテリパック60は、電動モータ4よりも後方であって、後方ハンドル20よりも前方に配置されている。
【0093】
パワーカッタ10の構成部品の中で複数のバッテリパック60の重量は比較的大きいので、複数のバッテリパック60をどこに配置するかによって、パワーカッタ10の重心位置GTは大きく変化する。上記の構成によれば、複数のバッテリパック60は前方ハンドル18と後方ハンドル20の間に配置されるので、ユーザが前方ハンドル18と後方ハンドル20を把持してパワーカッタ10を使用する際、パワーカッタ10の重心位置GTがユーザの身体の重心位置の近くに定まりやすい。このため、ユーザの操作性をさらに向上することができる。
【0094】
1つまたはそれ以上の実施形態において、パワーカッタ10が載置面Hに載置されている状態において、パワーカッタ10を後方から見た時に、複数のバッテリパック60と電動モータ4は少なくとも部分的に重なり合っている。
【0095】
上記の構成によれば、電動モータ4および複数のバッテリパック60は、左右方向および上下方向に関して近接して配置される。上記の構成によれば、パワーカッタ10が載置面Hに載置されている状態において、パワーカッタ10を、左右方向に関して小型化できるとともに、上下方向に関しても小型化することができる。
【0096】
1つまたはそれ以上の実施形態において、パワーカッタ10が載置面Hに載置されている状態において、パワーカッタ10を後方から見た時に、回転刃12と電動モータ4は少なくとも部分的に重なり合っている。
【0097】
上記の構成によれば、回転刃12および電動モータ4は、左右方向および上下方向に関して近接して配置される。上記の構成によれば、パワーカッタ10が載置面Hに載置されている状態において、パワーカッタ10を、左右方向に関して小型化できるとともに、上下方向に関しても小型化することができる。
【0098】
1つまたはそれ以上の実施形態において、出力プーリ84は、第1回転部材110と、出力シャフト85の回転軸A3方向において第1回転部材110に隣接して固定されている第2回転部材120を備えている。第1回転部材110は、伝動ベルト83が巻回される第1円筒部112と、第1円筒部112の右端(第2回転部材に隣接しない側の端部の例)から径方向外側に向かって広がるフランジ部114を備えている。第2回転部材120は、第1円筒部112よりも外径の大きい第2円筒部122と、第2円筒部122の右端(第1回転部材に隣接する側の端部の例)から径方向内側に向かって広がる第2ベース部124(ベース部の例)と、を備えている。第2円筒部122は、周方向において所定の間隔で形成された複数のロック孔126を備えている。パワーカッタ10は、ハウジング14に移動可能に保持されており、複数のロック孔126に挿入可能なロックピン140をさらに備えている。
【0099】
継ぎ目なく一体的に形成された出力プーリにおいて、伝動ベルト83の脱落を抑制する機構と、出力シャフト85の回転をロックする機構とを設ける場合、出力プーリは複雑な形状に形成される。このため、パワーカッタ10を組み立てる際に出力プーリの取り付けが困難になることがある。上記の構成によれば、出力プーリ84は、第1回転部材110と第2回転部材120によって構成されている。このため、パワーカッタ10を組み立てる際に、第1回転部材110と第2回転部材120を別個に取り付けることで、出力プーリ84の取り付けを容易に行うことができる。なお、上記の構成によれば、第1円筒部112に巻回された伝動ベルト83が出力シャフト85の回転軸A3方向に移動する場合、第1回転部材110のフランジ部114または第2回転部材120の第2ベース部124によって係止される。このため、伝動ベルト83が第1円筒部112から脱落することは抑制されている。また、上記の構成によれば、ロックピン140を複数のロック孔126のいずれかに挿入した状態では、出力プーリ84がハウジング14に対して回転する場合、第2回転部材120はロックピン140によって係止される。このため、ロックピン140を複数のロック孔126のいずれかに挿入することによって、出力シャフト85の回転をロックすることができる。
【0100】
1つまたはそれ以上の実施形態において、第1円筒部112とフランジ部114は継ぎ目なく一体的に形成されている。第2円筒部122と第2ベース部124は継ぎ目なく一体的に形成されている。第1回転部材110には、アルミニウム合金が用いられている。第2回転部材120には、鉄が用いられている。
【0101】
出力プーリ84は出力シャフト85とともに回転する部材であることから、出力プーリ84には質量の小さい材料を用いることが望ましい。一方で、出力プーリ84にロックピン140を挿入して出力シャフト85の回転をロックすることを考慮すると、出力プーリ84には剛性および強度の高い材料を用いることが望ましい。上記の構成によれば、ロックピン140を挿入する部材である第2回転部材120に鉄を用いることで必要な剛性および強度を確保しつつ、伝動ベルト83を巻回するための部材である第1回転部材110にアルミニウム合金を用いることで出力プーリ84全体としては軽量化を実現することができる。
【符号の説明】
【0102】
4 :電動モータ
6 :制御基板
8 :動力伝達部
10 :パワーカッタ
12 :回転刃
14 :ハウジング
14a :ハウジング本体
14b :ブレードアーム
16 :ブレードカバー
18 :前方ハンドル
20 :後方ハンドル
24 :バッテリインタフェース
30 :メインスイッチ
32 :ロックオフスイッチ
34 :操作ボタン
42 :モータハウジング
44 :モータシャフト
50 :給水ホース
52 :プラグ
54 :給水コネクタ
60 :バッテリパック
60a :右側バッテリパック
60b :左側バッテリパック
70 :ガイドローラ
72 :車輪
80 :減速機
80a :第1ギヤ
80b :第2ギヤ
81 :入力シャフト
82 :入力プーリ
83 :伝動ベルト
84 :出力プーリ
85 :出力シャフト
110 :第1回転部材
112 :第1円筒部
114 :フランジ部
116 :第1ベース部
120 :第2回転部材
122 :第2円筒部
124 :第2ベース部
126 :ロック孔
140 :ロックピン
A1 :回転軸
A2 :回転軸
A3 :回転軸
GT :重心位置
H :載置面
P :基準面
Y :直線