(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101209
(43)【公開日】2023-07-20
(54)【発明の名称】需要家評価システム、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20120101AFI20230712BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
G06Q50/06
H02J13/00 301A
H02J13/00 301J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022001687
(22)【出願日】2022-01-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】片桐 汐駿
(72)【発明者】
【氏名】畑野 隆文
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 航司
(72)【発明者】
【氏名】小倉 徹
【テーマコード(参考)】
5G064
5L049
【Fターム(参考)】
5G064AC09
5G064BA01
5G064CB21
5G064DA05
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】需要家の節電能力を客観的に評価する。
【解決手段】需要家評価システム10は、需要家が所有する1以上の建物のそれぞれの種類を取得する取得部11Aと、取得部11Aにより取得された前記1以上の建物のそれぞれの種類に基づいて前記需要家の節電能力を評価する評価部11Bと、評価部11Bによる前記節電能力の評価結果を出力する出力部11Cと、を備える。取得部11Aは、1以上の建物のそれぞれが有する1以上の節電リソースのそれぞれの種類をさらに取得してもよい。評価部11Bは、取得部11Aにより取得された前記1以上の建物のそれぞれの種類と当該1以上の建物のそれぞれが有する前記1以上の節電リソースのそれぞれの種類とに基づいて前記節電能力を評価してもよい。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
需要家が所有する1以上の建物のそれぞれの種類を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記1以上の建物のそれぞれの種類に基づいて前記需要家の節電能力を評価する評価部と、
前記評価部による前記節電能力の評価結果を出力する出力部と、
を備える需要家評価システム。
【請求項2】
前記取得部は、前記1以上の建物のそれぞれが有する1以上の節電リソースのそれぞれの種類をさらに取得し、
前記評価部は、前記取得部により取得された前記1以上の建物のそれぞれの種類と当該1以上の建物のそれぞれが有する前記1以上の節電リソースのそれぞれの種類とに基づいて前記節電能力を評価する、
請求項1に記載の需要家評価システム。
【請求項3】
前記評価部は、建物の種類及び節電リソースの種類の組み合わせと、前記節電リソースの節電の柔軟性を示す評価点との対応関係を示すテーブルを参照し、前記1以上の建物のそれぞれの種類と当該1以上の建物のそれぞれが有する前記1以上の節電リソースのそれぞれの種類との各組合せにそれぞれ対応する評価点を取得し、取得した前記評価点に基づいて前記節電能力を評価する、
請求項2に記載の需要家評価システム。
【請求項4】
前記取得部は、前記需要家の過去のデマントレスポンスでの節電の実績を表す実績値をさらに取得し、
前記評価部は、前記評価点と前記実績値とに基づいて前記需要家の節電能力を評価する、
請求項3に記載の需要家評価システム。
【請求項5】
前記取得部は、前記需要家の過去のデマントレスポンスでの節電の実績を表す実績値をさらに取得し、
前記評価部は、前記取得部により取得された前記1以上の建物のそれぞれの種類と前記実績値とに基づいて、前記需要家の節電能力を評価する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の需要家評価システム。
【請求項6】
前記実績値は、前記過去のデマントレスポンスでのネガワットの要求量に対して実際に創出されたネガワットの量の割合に基づく数値である、
請求項4又は5に記載の需要家評価システム。
【請求項7】
コンピュータに、
需要家が所有する1以上の建物のそれぞれの種類を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにより取得された前記1以上の建物のそれぞれの種類に基づいて前記需要家の節電能力を評価する評価ステップと、
前記評価ステップによる前記節電能力の評価結果を出力する出力ステップと、
を実行させるプログラム。
【請求項8】
需要家の過去のデマントレスポンスでのネガワットの要求量に対して実際に創出されたネガワットの量の割合を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記割合に基づいて前記需要家の節電能力を評価する評価部と、
前記評価部による前記節電能力の評価結果を出力する出力部と、
を備える需要家評価システム。
【請求項9】
コンピュータに、
需要家の過去のデマントレスポンスでのネガワットの要求量に対して実際に創出されたネガワットの量の割合を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにより取得された前記割合に基づいて前記需要家の節電能力を評価する評価ステップと、
前記評価ステップによる前記節電能力の評価結果を出力する出力ステップと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、需要家評価システム、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力需給の逼迫等への対策としてデマンドレスポンス(以下、DR)が注目されている。DRでは、アグリゲータが、複数の需要家それぞれが有する節電リソース(節電する電気設備)を取りまとめ、電力事業者からの節電要請に応える(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アグリゲータは、個々の需要家とDRのための契約を結ぶ。従って、アグリゲータは、需要家の節電能力(ネガワットの創出能力)を客観的に評価する必要がある。しかし、ネガワットの創出能力を客観的に評価する手法は現状ない。
【0005】
本発明は、上記点に鑑みてなされたものであり、需要家の節電能力を客観的に評価することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る需要家評価システムは、需要家が所有する1以上の建物のそれぞれの種類を取得する取得部と、前記取得部により取得された前記1以上の建物のそれぞれの種類に基づいて前記需要家の節電能力を評価する評価部と、前記評価部による前記節電能力の評価結果を出力する出力部と、を備える。
【0007】
前記取得部は、前記1以上の建物のそれぞれが有する1以上の節電リソースのそれぞれの種類をさらに取得し、前記評価部は、前記取得部により取得された前記1以上の建物のそれぞれの種類と当該1以上の建物のそれぞれが有する前記1以上の節電リソースのそれぞれの種類とに基づいて前記節電能力を評価する、ようにしてもよい。
【0008】
前記評価部は、建物の種類及び節電リソースの種類の組み合わせと、前記節電リソースの節電の柔軟性を示す評価点との対応関係を示すテーブルを参照し、前記1以上の建物のそれぞれの種類と当該1以上の建物のそれぞれが有する前記1以上の節電リソースのそれぞれの種類との各組合せにそれぞれ対応する評価点を取得し、取得した前記評価点に基づいて前記節電能力を評価する、ようにしてもよい。
【0009】
前記取得部は、前記需要家の過去のデマントレスポンスでの節電の実績を表す実績値をさらに取得し、前記評価部は、前記評価点と前記実績値とに基づいて前記需要家の節電能力を評価する、ようにしてもよい。
【0010】
前記取得部は、前記需要家の過去のデマントレスポンスでの節電の実績を表す実績値をさらに取得し、前記評価部は、前記取得部により取得された前記1以上の建物のそれぞれの種類と前記実績値とに基づいて、前記需要家の節電能力を評価する、ようにしてもよい。
【0011】
前記実績値は、前記過去のデマントレスポンスでのネガワットの要求量に対して実際に創出されたネガワットの量の割合に基づく数値である、ようにしてもよい。
【0012】
本発明に係るプログラムは、コンピュータに、需要家が所有する1以上の建物のそれぞれの種類を取得する取得ステップと、前記取得ステップにより取得された前記1以上の建物のそれぞれの種類に基づいて前記需要家の節電能力を評価する評価ステップと、前記評価ステップによる前記節電能力の評価結果を出力する出力ステップと、を実行させる。
【0013】
本発明に係る需要家評価システムは、需要家の過去のデマントレスポンスでのネガワットの要求量に対して実際に創出されたネガワットの量の割合を取得する取得部と、前記取得部により取得された前記割合に基づいて前記需要家の節電能力を評価する評価部と、前記評価部による前記節電能力の評価結果を出力する出力部と、を備える。
【0014】
本発明に係るプログラムは、コンピュータに、需要家の過去のデマントレスポンスでのネガワットの要求量に対して実際に創出されたネガワットの量の割合を取得する取得ステップと、前記取得ステップにより取得された前記割合に基づいて前記需要家の節電能力を評価する評価ステップと、前記評価ステップによる前記節電能力の評価結果を出力する出力ステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、需要家の節電能力が客観的に評価される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る需要家評価システムのハードウェア構成図である。
【
図2】
図2は、評価テーブルの構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、需要家データベースの構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態に係る需要家評価システムの構成図である。
【
図6】
図6は、ネガワットテーブルの構成例を示す図である。
【
図7】
図7は、等級テーブルの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0018】
本実施の形態に係る需要家評価システム10の構成例を
図1に示す。需要家評価システム10は、各種のコンピュータにより構成されており、デマンドレスポンス(以下、DRともいう)に新規に参加を希望する新規需要家又はすでに参加している既参加需要家の節電能力つまりネガワットの創出能力を評価するように構成されている。評価対象が新規需要家の場合、評価に使用される新規需要家の情報は、需要家評価システム10に新たに入力される。評価対象が既参加需要家の場合、評価に使用される既参加需要家の情報は、需要家評価システム10が記憶する後述の需要家データベースにより管理される。
【0019】
需要家評価システム10は、プロセッサ11、RAM(Random Access Memory)12、記憶装置13、操作装置14、及び、表示装置15を備える。プロセッサ11は、CPU(Central Processing Unit)などからなる。RAM12は、プロセッサ11のメインメモリとして機能する。記憶装置13は、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)などの不揮発性の記憶装置である。記憶装置13は、プロセッサ11が実行又は使用するプログラム及びデータを記憶している。記憶装置13が記憶するデータには、評価点テーブル、需要家データベース、ネガワットテーブル、等級テーブル、及び、演算式などが含まれる。これらについては後述する。操作装置14は、タッチセンサ、キーボード、及び、マウスなどの各種の入力装置のうちの少なくとも1つを含む。表示装置15は、液晶表示装置、又は、有機ELディスプレイなどからなる。各装置11~15は、バス16を介して相互接続されている。
【0020】
記憶装置13が記憶する評価点テーブルでは、
図2に示すように、需要家が所有する建物が有する節電リソースの種類それぞれに、その種類の節電リソースの節電の柔軟性を示す評価点が割り当てられている。当該評価点は、どの程度柔軟に節電量を確保できるかを示す点数である。当該評価点は、点数が高いほど、節電の依頼に対して柔軟に対応できる(つまり節電量を多く確保できる)ように設定されている。この評価点は、その電力リソースを備える建物の種類ごとに登録されている。このように、評価点は、建物の種類と節電リソースの種類との組み合わせを1組とする各組に割り当てられており、評価点テーブルは、建物の種類及び節電リソースの種類の組み合わせと、評価点との対応関係を示す。
【0021】
図2の例では、建物の種類として、「工場」、「オフィスビル」、及び「商業施設」が用意されている。節電リソースとして、「空調」、「コジェネレーション」、「自家発電機」、「照明」、「蓄電池」、「蓄熱槽」、及び「熱源機」がある。
【0022】
空調などの評価点は、比較的低く設定されている。これは、需要家側の従業員などが、自身の体感気温などにより、デマンドレスポンスの実施などにかかわらず空調の設定温度を換えてしまう可能性があるからである。他方、コジェネレーション及び自家発電機は、建物で必要な電力の一部を賄え、その分、建物全体での節電量つまり、ネガワットを創出できる。従って、これらの評価点は、比較的高く設定されている。照明については、そもそも無駄な点灯が避けられる傾向にあるので、ネガワットの創出がもともと難しい、従って、照明の評価点は、低く設定されている。
【0023】
工場、オフィスビル、及び商業施設それぞれの空調に割り当てられている評価点は、「1」、「5」、「3」となっている。工場内の気温は、通常、生産する製品の品質に悪影響を与えないように一定に保たれる。従って、工場では、空調による節電は難しい。このような理由から、この実施の形態では、工場の空調の評価点が最も柔軟性の低い「1」に設定されている。商業施設も、様々な客を迎え入れるので、客に不快感を与えないよう、空調による節電が難しい。但し、商業施設内の気温の変化は、工場の室温よりも許容される。従って、商業施設の空調の評価点は、工場の空調の評価点よりも柔軟性の高い「3」に設定されている。オフィスビル内の人は、そのほとんどがその需要家の従業員であり、空調による節電が商業施設などに比べて許容される。従って、オフィスビルの空調の評価点は、工場及び商業施設よりも高い「5」に設定されている。このように、同じ種類の節電リソースに割り当てられた評価点でも、その節電リソースが設けられている建物の種類に応じて異なる値が設定されることで、その電力設備の実態を反映した適切な評価点が設定される。
【0024】
評価点は、
図2の具体例に限らず任意に設定される。コジェネレーション、自家発電機などの評価点は、
図2の例では建物の種類によらず同じとなっているが、建物の種類に応じて異ならせてもよい。
【0025】
記憶装置13が記憶する需要家データベースの構成を
図3に示す。需要家データベースには、需要家評価システム10が過去にネガワット創出能力を評価した需要家の情報が登録されている。需要家データベースでは、各需要家を特定する需要家IDに、その需要家の前年のDR成功率R1及びネガワット創出率R2と、その需要家が有する1以上の建物のそれぞれの種類と、各建物が備える1以上の節電リソースのそれぞれの種類及びネガワット創出量(kW)と、が対応付けられて登録されている。節電リソースの種類及びネガワット創出量は、建物の種類ごとに登録されている。ネガワット創出量は、その節電リソースがネガワットとして創出可能な最大量(節電する電力の最大量)である。
【0026】
DR成功率R1は、前年のDRの成功コマ数を、当該前年のその需要家を対象としたDR実施時の全コマ数で除した値である。ネガワット創出率R2は、前年のDRで実際に創出されたネガワット量を、当該前年のその需要家を対象としたDRの実施によりその需要家に要求されたネガワット総量で除した値である。各率R1及びR2は、任意の方法により需要家データベースに登録される。例えば、需要家評価システム10(プロセッサ11)は、各需要家のDRの各コマの成功/失敗、ネガワット創出率などの各種情報を、需要家ごとに、不図示の通信ネットワークを介して取得する。需要家評価システム10(プロセッサ11)は、取得したこれらに基づいて定期的(例えば、1年ごと)に上記率R1及びR2を算出し、算出した上記率R1及びR2で需要家データベースの内容を更新する。
【0027】
建物の種類、節電リソースの種類、及び、ネガワット創出量とは、例えば、新規需要家の情報の一部として入力され登録される。
【0028】
需要家評価システム10が需要家の節電能力の評価を行う際には、プロセッサ11が記憶装置13に記憶されたプログラムを実行することで、
図4に示す取得部11A、評価部11B、及び、出力部11Cとして動作する。各部11A~11Cは、
図5に示す評価処理を実行する。以下、各部11A~11Cを、
図4及び
図5を参照して説明する。
【0029】
評価処理では、まず、取得部11Aが、需要家評価システム10を使用するユーザであるアグリゲータからの評価指示を取得する(ステップS11)。評価指示は、操作装置14を介して需要家評価システム10に入力され、取得部11Aに送られる。
【0030】
評価指示は、評価対象の需要家が新規需要家である場合、その需要家が有する1以上の建物のそれぞれの種類(建物が1つである場合、その1つ建物の種類)と、各建物が有する1以上の節電リソースのそれぞれの種類及びネガワット創出量(kW)(節電リソースが1つである場合、その1つ節電リソースの種類)と、を含む。これら各情報は、評価対象の需要家からの申告に基づいて入力される。節電リソースの種類及びネガワット創出量は、建物の種類ごとに入力される。評価指示は、評価対象の需要家が既参加需要家である場合、需要家IDが含まれる。節電リソースに変更があった場合などに対応して、既参加需要家の評価指示は、需要家IDに加えて、上記建物の種類、節電リソースの種類、及び、ネガワット創出量を含んでもよい。
【0031】
その後、取得部11Aは、取得した評価指示の評価対象が新規需要家であるか否かを判別する(ステップS12)。ここでは、評価指示に需要家IDが含まれない場合、評価対象が新規需要家であると判別される(ステップS12;Yes)。評価指示に需要家IDが含まれる場合、評価対象が新規需要家でない、つまり、評価対象が既参加需要家であると判別される(ステップS12;No)。
【0032】
評価対象が新規需要家である場合、当該評価対象の需要家の情報が需要家データベースに登録されていない。この場合、取得部11Aは、評価対象の需要家のDR成功率R1及びネガワット創出率R2として、固定値「0.5」を取得する(ステップS13)。固定値の具体的数値は、0.5に限らず任意である。さらに、取得部11Aは、評価指示から、建物の種類、節電リソースの種類、ネガワット創出量を全て抽出することでこれら各情報を取得する(ステップS14)。このとき、取得部11Aは、需要家IDを新規に生成し、取得した各情報を、生成した需要家IDと対応付けて需要家データベースに登録する(ステップS15)。
【0033】
評価対象が既参加需要家である場合、当該評価対象の需要家の情報が需要家データベースに登録されている。この場合、取得部11Aは、需要家データベースを参照し、評価指示に含まれる需要家IDに対応する、DR成功率R1、ネガワット創出率R2、建物の種類、節電リソースの種類、及び、ネガワット創出量を全て取得する(ステップS16)。評価指示が、建物の種類、節電リソースの種類、ネガワット創出量を有する場合、取得部11Aは、これら情報については、評価指示から抽出して取得する。このとき、取得部11Aは、取得した各情報により、需要家データベースの登録内容を更新する。
【0034】
その後、評価部11Bが、評価点テーブルを参照し、取得部11Aが取得した、建物の種類及び節電リソースの種類に対応する評価点を取得する(ステップS17)。当該第1評価点は、建物の種類と節電リソースの種類との全組み合わせについて取得される。以下、各建物におけるi番目の節電リソースの評価点をEiともいう。ここで、iは、1~nのいずれかの整数をとり、nは、その建物が有する節電リソースの総数である。
【0035】
さらに、評価部11Bは、取得部11Aにより取得されたネガワット創出量のそれぞれに基づいて、記憶装置13に記憶されているネガワットテーブルを参照し、各ネガワット創出量にそれぞれ対応するネガワット創出レベルを導出する(ステップS18)。
図5に例示しているネガワットテーブルに示すように、ネガワット創出レベルは、ネガワット創出量を複数レベルに分けたものである。以下、各建物におけるi(1~n)番目の節電リソースのネガワット創出レベルをNiともいう。
【0036】
評価部11Bは、取得した評価点Ei及びネガワット創出レベルNiに基づいて、評価対象の需要家が有するj番目の建物の節電評価値Ejを、下記の式(1)により導出する(ステップS19)。jは、1~mのいずれかの整数をとり、mは、評価対象の需要家が有する建物の総数である。評価部11Bは、評価対象の需要家が有する1~m番目の建物それぞれの節電評価値E1~Emを導出する。
【数1】
【0037】
その後、評価部11Bは、導出した節電評価値Ej(E1~Em)と、DR成功率R1及びネガワット創出率R2と、に基づいて、評価対象の需要家の需要家評価値Eを、下記の式(2)により導出する(ステップS20)。
【数2】
【0038】
その後、評価部11Bは、記憶装置13に記憶されている等級テーブルを参照し、ステップS18で導出した需要家評価値Eに対応する等級を導出する(ステップS21)。
図7に示すように、等級テーブルでは、所定範囲ごとに区切られた需要家評価値Eに等級が対応付けられている。ここでは、等級として「A」~「C」が設定されている。「A」~「C」のうち、「A」が、需要家評価値Eの高いつまり節電能力の高い等級となっている。ここでは、導出された等級が、評価対象の需要家の節電能力の評価結果となっている。
【0039】
例えば、評価対象の需要者が、ネガワット創出量600kWの空調と、ネガワット創出量400kWのコジェネレーションを持っている工場のみを有する新規需要者である場合の、当該需要者の等級は以下のように導出される。まず、1番目のEiであるE1=1、1番目のNiであるN1=2、2番目のEiであるE2=10、2番目のNiであるN2=1、R1=0.5(固定値)、R2=0.5(固定値)となる。従って、需要家評価値E=節電評価値Ej={(1×2)+(10×1)}×(0.5+0.5)=12であり、その等級は、Bランクである。
【0040】
例えば、評価対象の需要者が、ネガワット創出量1100kWの自家発電機と、ネガワット創出量100kWの照明を備えるオフィスビルと、ネガワット創出量600kWの空調と、ネガワット創出量400kWのコジェネレーションを持っている工場と、を備える既参加需要者である場合の、当該需要者(
図3の需要家ID参照)の等級は以下のように導出される。1番目の建物であるオフィスビルの1番目のEiであるE1=10、1番目のNiであるN1=3、2番目のEiであるE2=1、2番目のNiであるN2=1となる。したがって、1番目の建物であるオフィスビルの節電評価値Ej=E1=(10×3)+(1×1)=31となる。2番目の建物である工場の1番目のEiであるE1=1、1番目のNiであるN1=2、2番目のEiであるE2=10、2番目のNiであるN2=1となる。したがって、2番目の建物である工場の節電評価値Ej=E2=(1×2)+(10×1)=12となる。さらに、R1=0.1、R2=0.7とすると、需要家評価値E=(31+12}×(0.1+0.7)=34.4であり、その等級は、Aランクである。
【0041】
評価部11Bによる等級(評価結果)が導出されたあとは、出力部11Cが、当該等級を表示装置15に出力する(ステップS22)。出力された等級は、表示装置15に表示され、ユーザであるアグリゲータは、表示された等級に基づいて、評価対象の需要家と契約するか否か及び契約する場合の契約条件などを検討する。
【0042】
以上のように、本実施の形態では、取得部11Aが、評価対象の需要家が所有する1以上の建物のそれぞれの種類を取得する。そして、評価部11Bが、取得部11Aにより取得された1以上の建物のそれぞれの種類に基づいて需要家の節電能力を評価する。そして、出力部11Cが、評価部11Bによる節電能力の評価結果を出力する。このような構成により、需要家が所有する節電可能な1の建物の種類又は複数の建物それぞれの種類に応じた客観的な評価結果が得られる。従って、需要家の節電能力が客観的に評価される。なお、評価部11Bは、建物の種類に基づいて需要家の節電能力を評価できればよく、その具体的態様は任意である。評価部11Bは、例えば、建物の種類と、節電能力の評価結果との対応関係を示すテーブルを参照して、取得部11Aが取得した建物の種類に基づいて評価結果を導出してもよい。
【0043】
上記実施の形態のように、取得部11Aは、上記1以上の建物のそれぞれが有する1以上の節電リソースのそれぞれの種類をさらに取得してもよい。評価部11Bは、取得部11Aにより取得された1以上の建物のそれぞれの種類と当該1以上の建物のそれぞれが有する1以上の節電リソースのそれぞれの種類とに基づいて節電能力を評価してもよい。このような構成により、建物が有する節電リソースが考慮されて節電能力が評価されるため、より客観的かつ精度の良い評価結果が得られる。なお、上記建物及び節電リソースの各種類に基づく評価方法は任意である。評価部11Bは、例えば、建物の種類、節電リソースの種類、ネガワット創出量の組み合わせと、節電能力の評価結果との対応関係を示すテーブルを参照して、取得部11Aが取得した建物の種類に基づいて評価結果を導出してもよい。
【0044】
上記実施の形態のように、評価部11Bは、建物の種類及び節電リソースの種類の組み合わせと、節電リソースの節電の柔軟性を示す評価点との対応関係を示す評価点テーブルを参照し、上記1以上の建物のそれぞれの種類と当該1以上の建物のそれぞれが有する1以上の節電リソースのそれぞれの種類との各組合せにそれぞれ対応する評価点を取得し、取得した前記評価点に基づいて前記節電能力を評価するとよい。これにより、より客観的かつ精度の良い評価結果が得られる。
【0045】
上記実施の形態のように、取得部11Aは、需要家の過去のデマントレスポンスでの節電の実績を表す実績値として、DR成功率R1及びネガワット創出率R2をさらに取得してもよい。評価部11Bは、上記評価点と実績値とに基づいて需要家の節電能力を評価してもよい。このような構成により、評価点の他に、需要家の過去の節電実績が考慮されるので、より客観的かつ精度の良い評価結果が得られる。なお、評価部11Bは、取得部11Aにより取得された1以上の建物のそれぞれの種類と実績値とに基づいて需要家の節電能力を評価してもよく、その具体的評価方法は任意である。
【0046】
上記実績値は、過去のデマントレスポンスでのネガワットの要求量に対して実際に創出されたネガワットの量の割合(例えば、ネガワット創出率R2)に基づく数値(例えば、R1+R2)であるとよい。このような構成により、過去のデマントレスポンスでのネガワットの要求量に対して実際に創出されたネガワットの量の割合が考慮されるので、より客観的かつ精度の良い評価結果が得られる。特に、前記の割合は、その需要家の節電の努力が反映されやく、評価結果に当該努力が反映されやくすなる。なお、前記数値は、前記の割合そのものであってもよい。例えば、DR成功率R1は考慮されず、ネガワット創出率R2のみ考慮されてもよい。
【0047】
上記実施の形態のように、取得部11Aは、需要家の過去のデマントレスポンスでのネガワットの要求量に対して実際に創出されたネガワットの量の割合を取得してもよい。評価部11Bは、取得部11Aにより取得された割合に基づいて需要家の節電能力を評価してもよい。出力部11Cは、評価部11Bによる節電能力の評価結果を出力してもよい。これにより、過去のデマントレスポンスでのネガワットの要求量に対して実際に創出されたネガワットの量の割合が考慮されるので、客観的かつ精度の良い評価結果が得られる。なお、評価方法は、任意であり、例えば、上記割合と評価結果との対応関係を示すテーブルが参照されてもよい。
【0048】
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。例えば、本発明には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る、上記の実施の形態に対する様々な変更が含まれる。上記実施の形態に挙げた各構成は、矛盾の無い範囲で適宜組み合わせることができる。
【0049】
需要家評価システム10は、1台のコンピュータなどから構成されても、通信ネットワークなどを介して互いに通信可能なコンピュータなどの複数のハードウェアリソースにより実現されてもよい。需要家評価システム10は、サーバコンピュータなどからなり、評価指示は、クライアントコンピュータから通信ネットワークを介して需要家評価システム10に入力されてもよい。出力部11Cは、評価結果をクライアントコンピュータなどの他の装置に出力してもよい。需要家評価システム10を上記各部11A~11Cとして動作させる上記プログラムは、例えば、記憶装置13などの非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶されればよい。
【符号の説明】
【0050】
10…需要家評価システム、11…プロセッサ、11A…取得部、11B…評価部、11C…出力部、13…記憶装置、14…操作装置、15…表示装置、16…バス。