(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101213
(43)【公開日】2023-07-20
(54)【発明の名称】接着構造物及びピエゾアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
C09J 5/00 20060101AFI20230712BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20230712BHJP
H04R 17/00 20060101ALI20230712BHJP
F16B 5/08 20060101ALI20230712BHJP
F16B 11/00 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
C09J5/00
C09J201/00
H04R17/00
F16B5/08 Z
F16B11/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022001696
(22)【出願日】2022-01-07
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白戸 博紀
【テーマコード(参考)】
3J001
3J023
4J040
5D004
【Fターム(参考)】
3J001FA02
3J001JD12
3J023EA01
3J023FA01
3J023GA01
4J040KA35
4J040LA06
4J040NA17
4J040PA25
4J040PA37
5D004CD01
5D004GG00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】接着剤の塗布が適正であるかを容易に判定可能にする技術を提供する。
【解決手段】接着構造物が、第一部材11と、前記第一部材11における所定面11Aの一部に塗布された接着剤13と、前記接着剤13により前記第一部材11における所定面11Aの一部に接着された第二部材12と、を備え、前記第一部材11における前記所定面11Aのうち、前記第二部材12で覆われていない露出部分であって、前記第二部材12の外縁12Bから所定距離以内となる範囲に指標11Cが付されている。前記指標11Cは、第一部材11と第二部材12との間からはみ出した接着剤13のはみ出し量が適切か否かを判定するための指標である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一部材と、
前記第一部材における所定面の一部に塗布された接着剤と、
前記接着剤により前記第一部材における所定面の一部に接着された第二部材と、を備え、
前記第一部材における前記所定面のうち、前記第二部材で覆われていない露出部分であって、前記第二部材の外縁から所定距離以内となる範囲に、少なくとも一部が前記接着剤に覆われた指標が付されている接着構造物。
【請求項2】
前記指標の色と前記接着剤の色とが異系色である請求項1に記載の接着構造物。
【請求項3】
前記所定面を平面視した場合の前記接着剤の外縁が前記指標の内側に納まっている請求項1に記載の接着構造物。
【請求項4】
前記指標の全体が前記接着剤に覆われている請求項1に記載の接着構造物。
【請求項5】
前記指標が、前記第二部材の外縁から前記所定距離以内であって、前記接着剤で全体が覆われる第一部分と、前記第二部材の外縁から前記所定距離を超える位置であって、前記接着剤に接触していない第二部分とを有する請求項1に記載の接着構造物。
【請求項6】
前記第二部分の色と前記接着剤の色とが同系色である請求項5に記載の接着構造物。
【請求項7】
前記第一部材の色は、前記第二部分の色及び前記接着剤の色に対して異系色である請求項5又は6に記載の接着構造物。
【請求項8】
請求項1~7の何れか1項に記載の接着構造物を備え、
前記第一部材が振動板であり、
前記第二部材が、前記振動板に撓み振動を励起させるピエゾ素子である、
ピエゾアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着構造物及びピエゾアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、部材間に接着剤を塗布して接着させる接着構造が広く用いられている。しかしながら、接着剤の塗布を忘れられた箇所があった場合や、接着剤の塗布が不足している場合、十分な接着性能が得られないことがある。そのため、例えば、特許文献1では、着色剤により接着剤が付着された部分を視認可能にするとともに、付着ないし塗布した後に加熱により消色する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
接着剤を塗布して接着を行う場合、接着剤の塗布が不足した場合だけでなく、接着剤を塗布し過ぎた場合にも問題が生じることがある。例えば、接着剤を塗布し過ぎた場合、接着剤が、所定の領域からはみ出して周囲の部材等に悪影響を与えることがある。このため従来は、接着剤のはみ出し量を目視で確認していたが、接着剤は比較的透明度の高いものが多く、塗り広げられた場合、その境界が見極めにくいため、接着剤が適切に塗布されたか否かを判定しにくいという問題があった。
【0005】
本発明は、接着剤の塗布が適正であるかを容易に判定可能にする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の接着構造物は、
第一部材と、
前記第一部材における所定面の一部に塗布された接着剤と、
前記接着剤により前記第一部材における所定面の一部に接着された第二部材と、を備え、
前記第一部材における前記所定面のうち、前記第二部材で覆われていない露出部分であって、前記第二部材の外縁から所定距離以内となる範囲に、少なくとも一部が前記接着剤に覆われた指標が付されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、接着剤の塗布が適正であるかを容易に判定可能にする技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第一実施形態の接着構造物を示す断面図である。
【
図2】
図2は、第一実施形態の接着構造物を第二部材側から見た図である。
【
図3】
図3は、指標及び接着剤等に用いる色の例を示す図である。
【
図4】
図4は、接着剤のはみ出し量を検査する検査装置の構成を示す図である。
【
図5】
図5は、検査装置の制御部が実行する検査方法のフローチャートである。
【
図6】
図6は、第二実施形態に係る接着構造物を示す図である。
【
図7】
図7は、第二実施形態に係る検査方法のフローチャートである。
【
図8】
図8は、ディスプレイスピーカを上方から見下ろした断面図である。
【
図9】
図9は、アクチュエータをディスプレイ側(表面側)から見た図である。
【
図10】
図10は、アクチュエータを裏面側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本発明は実施形態の構成に限定されない。
【0010】
〈第一実施形態〉
図1は、本実施形態の接着構造物1を示す断面図、
図2は、本実施形態の接着構造物1を第二部材側から見た図である。ここで、
図1の右から左の方向をx方向、
図1の紙面の裏面から表面の方向をy方向、
図1の下から上の方向をz方向とする。接着構造物1と、x方向、y方向、z方向との位置関係は、他の図においても同様である。なお、この方向は、説明の便宜上示すものであり、この方向に限定されるものではない。例えば、接着構造物1の姿勢が、この方向に限定されるものではない。
【0011】
接着構造物1は、第一部材11と、第二部材12と、接着剤13とを備える。第一部材11及び第二部材12の形状は、特に限定されるものではないが、本実施形態では平板状である。第二部材12は、接着剤13により第一部材11における所定面(被接着面)11Aの一部に接着される。
【0012】
接着剤13の接着成分は、特に限定されるものではなく、無機系、有機系の何れであってもよい。無機系のものとしては、例えば水ガラス等を使用できる。また、有機系のものとしては、例えば、でんぷん、ニカワ、及びゴムなどの天然材料、並びに熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂などの各種合成樹脂を使用できる。
【0013】
接着剤13に使用される具体的な樹脂としては、ABS樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂などの各種の熱可塑性樹脂であってもよい。また、接着剤13に使用される樹脂としては、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴムなどの各種ゴム、或はポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、シリコーン系樹脂、ユリア系樹脂などの硬化性樹脂が挙げられる。
【0014】
また、接着剤13は、所定の色となるように、着色料を含んでもよい。この着色料は、有彩色を呈するものに限らず、白・黒・グレーといった無彩色や、金・銀といった金属色、蛍光色を呈するものであってもよい。
【0015】
図2に示すように、本実施形態の第二部材12は、第一部材11の被接着面11A上の中央付近に接着される。本実施形態の第二部材12は、第一部材11より小さく、第二部材12の外縁12Bが、第一部材11の外縁11Bより内側に位置するように配置されている。
【0016】
第一部材11において、被接着面11Aのうち、第二部材12で覆われていない露出部分であり、第二部材の外縁12Bから所定距離L1以内となる範囲に、指標11Cが付されている。即ち、指標11Cは、第一部材11の被接着面11Aにおいて第二部材12の外周を囲み、少なくとも一部が前記接着剤に覆わるように配置されている。ここで、所定距離L1は、例えば0.5mm~20mm、好ましくは1mm~10mm、特に好ましくは2mm~5mmとしてもよい。なお、本実施形態の第一部材11は、被接着面11Aが
矩形状である。所定距離L1は、被接着面11Aの長手方向(第一方向:x方向)と、当該第一方向と直交する第二方向(z方向)とで、異なる値に設定されてもよい。
【0017】
接着剤13により、第一部材11と第二部材12とを接着した際、余剰となった接着剤13は、第一部材11と第二部材12との間からはみ出して指標11C上に位置することになる。指標11Cは、第一部材11と第二部材12との間からはみ出した接着剤13のはみ出し量が適切か否かを判定するための指標である。例えば、第一部材11と第二部材12との間に塗布された接着剤13の量が不足している場合、接着剤13が第二部材12の外縁12Bから指標11C上にはみ出さないので、例えば検査者が指標11Cを見た際、指標11C上に接着剤13が無い場合、接着剤13の塗布が不足している可能性があると判定できる。また、指標11Cは、第二部材12の外縁12Bから外側に所定距離L1だけ離れた位置にある外縁11Dが、接着剤13のはみ出しを許容する限界(上限)を示してもよい。例えば、第一部材11と第二部材12との間に塗布された接着剤13の量が多いほど、接着剤13が第二部材12の外縁12Bから大きくはみ出すので、検査者が被接着面11A上の指標11Cを平面視した際、接着剤13の広がりの外縁が指標11Cの内側に納まるように、接着構造物1が形成される。即ち、接着剤13が外縁11Dを越えてはみ出している場合、接着剤13の塗布が過剰であると判定できる。なお、これに限らず、指標11Cの全体が接着剤13に覆われるように接着構造物1が形成されてもよい。この場合、指標11Cの外縁11Dが、被接着面11A上に広がる接着剤13の下限を示し、接着剤13の外縁が指標11Cの外縁11Dを越えていなければ、接着剤13の塗布が不足であると判定できる。
【0018】
指標11Cは、指標11Cの上にはみ出した接着剤13が認識され易くなるように、接着剤13と異なる色や、異系統の色(異系色)、異なる色調となっている。例えば、指標11Cの色と接着剤13の色は、互いに補色となるように設定されてもよい。
【0019】
図3は、指標11C及び接着剤13等に用いる色の例を示す図である。
図3の例では、色相を徐々に変化させて円環とし、当該色相を等分するように12の純色に分けている。なお、色相環を表現する表色系は、特に限定されるものではなく、マンセル表色系、オストワルト表色系、又はPCCS(Practical Color Co-ordinate System:日本色研配色体系)などであってもよい。また、色相を等分する数も12に限らず、例えば、24、36、又はそれ以上であってもよい。
図3の色相環では、時計回りに、黄色、黄緑色、緑色、青緑色、緑青色、青色、青緑色、青紫色、紫色、赤紫色、赤色、赤橙色、黄橙色のように、12の色が定められている。この色相環において、円周上の対向位置に配置される色が補色である。例えば、
図3では、黄色に対して青紫色が補色であり、青紫色に対して黄色が補色である。即ち、黄色と青紫色は互いに補色の関係にある。同様に、黄緑色と紫色、緑色と赤紫色、青緑色と赤色等が、補色の関係にある。
【0020】
このように補色の関係にある色は、隣り合って配置された場合に、互いの色を引き立て合い、それぞれが認識され易くなるといった効果を奏する。このため、例えば、接着剤13の色が黄色の場合、指標11Cの色を青紫色とし、接着剤13の色が赤色の場合、指標11Cの色を青緑色とする。
【0021】
なお、接着剤13の色と指標11Cの色は、補色の関係に限らず、それぞれを区別し易いものであればよい。例えば、
図3のような色相環において、特定の色を中心に連続して並んだ複数の色を同系色とし、それ以外を異系色として、接着剤13の色と指標11Cの色とを異系色としてもよい。具体的には、
図3において、黄色を中心に連続して並んだ5つの色、即ち、赤橙色、黄橙色、黄色、黄緑色、緑色を同系色とし、その他の色を異系色とする。そして、接着剤13の色が、当該系統の赤橙色、黄橙色、黄色、黄緑色、緑色の何れかであった場合、指標11Cの色をこれら5色以外の色(異系色)とする。
【0022】
また、接着剤13の色と指標11Cの色とを反対色としてもよい。例えば、接着剤13を黄色とした場合、これの補色である青紫色と同系色のもの(青緑色、青紫色、紫色)を反対色とし、指標11Cの色を青緑色、青紫色、及び紫色の何れかとしてもよい。
【0023】
更に、接着剤13の色と指標11Cの色は、有彩色に限らず、無彩色や金属色(金色、銀色、銅色、鉛色等)であってもよい。例えば、接着剤13を黒色とした場合、指標11Cの色を白色や銀色としてもよい。
【0024】
また、指標11Cは、サンドブラストやエッチング等の表面加工により第一部材11の所定面11Aの色調を接着剤13の色調と異ならせてもよい。例えば、サンドブラストによって所定面11Aに凹凸を形成することによって指標11Cを付した場合、指標11C表面で光が拡散され、光沢の無い色調となる。これに対し接着剤13の表面は滑らかで光沢を有する色調となる。即ち、接着剤13の表面と指標11C表面の色調が異なる。なお、指標11Cは、第一部材11上の第二部材12で覆われた部分にも設けられてよい。例えば、サンドブラストやエッチング等の表面加工によって、所定面11Aのうち、第二部材12で覆われた部分に加え、第二部材12で覆われていない露出部分であって、第二部材12の外縁12Bから所定距離L1以内となる範囲に凹凸を形成することで指標11Cを設けてもよい。これにより、平滑な面同士を接着する場合と比べて、接着剤13と第一部材11との接触面積を増やし、接着力を向上させることができる。
【0025】
<検査装置>
図4は、接着剤13のはみ出し量を検査する検査装置5の構成を示す図である。検査装置5は、接続バス51によって相互に接続された制御部52、メモリ53、入出力IF(インターフェース)54、通信IF55、撮影装置56を有するコンピュータである。制御部52は、入力された情報を処理し、処理結果を出力することにより、装置全体の制御等を行う。制御部52は、CPU(Central Processing Unit)や、MPU(Micro-processing unit)とも呼ばれる。制御部52は、単一のプロセッサに限られず、マルチプロセッサ構成であってもよい。また、単一のソケットで接続される単一のチップ内に複数のコアを有したマルチコア構成であってもよい。
【0026】
メモリ53は、主記憶装置と補助記憶装置とを含む。主記憶装置は、制御部52の作業領域、制御部52で処理される情報を一時的に記憶する記憶領域、通信データのバッファ領域として使用される。主記憶装置は、制御部52がプログラムやデータをキャッシュしたり、作業領域を展開したりするための記憶媒体である。主記憶装置は、例えば、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリを含む。補助記憶装置は、制御部52により実行されるプログラムや、情報処理に用いられるデータ、動作の設定情報などを記憶する記憶媒体である。補助記憶装置は、例えば、HDD(Hard-disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリ、USBメモリ、メモリカード等である。また、補助記憶装置
は、撮影画像や、判定結果を記憶してもよい。
【0027】
入出力IF54は、検査装置5に接続する機器との間でデータの入出力を行うインターフェースである。入出力IF54は、例えば、CDやDVD等の記憶媒体からデータを読み取るディスクドライブ、操作部、表示装置、撮影装置56等の機器との間でデータの入出力を行う。操作部は、マウスやキーボード、タッチパネル等、オペレータの操作によって検査装置5に対する情報が入力される入力部である。表示装置は、処理結果などの情報をオペレータに対して表示出力する出力部である。
【0028】
通信IF55は、通信回線(ネットワーク)を介して他の装置との通信を行うインター
フェース(通信モジュール)であり、CCU(Communication Control Unit)とも称す。
【0029】
撮影装置56は、接着構造物1を撮影して動画データを取得し、入出力IF54を介して制御部52へ入力する。撮影装置56は、例えば、第一部材11と直交する方向から所定面11A上の少なくとも指標11Cの付近を撮影するように配置されている。
【0030】
本実施形態の検査装置5では、制御部52が、アプリケーションプログラムを実行することにより、制御部52が、画像取得部521、判定部522、結果出力部523といった各処理部として機能する。即ち、制御部52は、実行するソフトウェアに応じて各処理部として兼用され得る。但し、上記各処理部の一部又は全部が、DSP(Digital Signal
Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の専用LSI(large scale integration)、論理回路
、その他のデジタル回路といったハードウェアで形成されたものであってもよい。また、上記各処理部の少なくとも一部にアナログ回路を含む構成としてもよい。制御部52は、一つのプロセッサが複数の処理部として機能する構成であっても、一つの処理部として機能するプロセッサを複数備える構成であってもよい。
【0031】
画像取得部521は、撮影装置56を制御し、撮影装置56に接着構造物1を撮影させ、撮影装置56から撮影画像(画像データ)を取得する。
【0032】
判定部522は、取得した画像データを画像処理し、第二部材12からはみ出した接着剤13のはみ出し量を求め、このはみ出し量に基づいて接着剤の塗布が適正か否かを判定する。
【0033】
結果出力部523は、判定部522による判定結果を表示装置や他の装置へ出力し、オペレータへ提示する。
【0034】
<検査方法>
図5は、検査装置5の制御部52が実行する検査方法のフローチャートである。検査装置5は、電源が投入された場合や、検査の開始命令を受けた場合に、
図5の処理を実行する。
【0035】
ステップS10において、制御部52は、撮影装置56により接着構造物1を撮影させて、撮影画像を取得する。
【0036】
ステップS20において、制御部52は、取得した画像データを画像処理し、第二部材12からはみ出した接着剤13のはみ出し量を求める。ここで、はみ出し量は、例えば、第二部材12の外縁12Bから接着剤の外縁までの距離である。
【0037】
ステップS30において、制御部52は、ステップS20で求めたはみ出し量が、第一基準値を超えたか否かを判定する。
【0038】
ステップS30で、接着剤の塗布が不足している可能性がある場合、即ちはみ出し量が第一基準値を超えていない場合、制御部52は、否定判定し、ステップS40へ移行する。ステップS40において、制御部52は、接着剤の塗布が不足している旨のメッセージを表示部等に出力する。
【0039】
一方、ステップS30で、はみ出し量が第一基準値を超えている場合、制御部52は、ステップS50へ移行する。ステップS50において、制御部52は、接着剤13のはみ出し量が,第二基準値(所定距離L1)を超えたか否か、即ち接着剤13が指標11Cの
外縁11Dを超えたか否かを判定する。
【0040】
ステップS50で、はみ出し量が第二基準値を超えていない場合、制御部52は、接着剤の塗布が適正であると判定(否定判定)し、ステップS60へ移行する。ステップS60において、制御部52は、接着剤の塗布が適正である旨のメッセージを表示部等に出力する。
【0041】
一方、ステップS50で、はみ出し量が第二基準値を超えている場合、制御部52は、接着剤の塗布が過剰であると判定(肯定判定)し、ステップS70へ移行する。ステップS70において、制御部52は、接着剤の塗布が過剰である旨のメッセージを表示部等に出力し、
図5の処理を終了する。
【0042】
<実施形態の効果>
本実施形態の接着構造物1は、第一部材11と、第一部材11における所定面11Aの一部に塗布された接着剤13と、当該接着剤13により第一部材11における所定面11Aの一部に接着された第二部材12とを備える。また、接着構造物1は、第一部材11における所定面11Aのうち、第二部材12で覆われていない露出部分であって、第二部材12の外縁から所定距離L1以内となる範囲に指標11Cが付されている。この接着構造物1は、品質検査等の際、接着剤13が第二部材12の外縁12Bから指標11C上にはみ出していない場合、第一部材11と第二部材12との間に塗布された接着剤13の量が不足している可能性がある。このため検査者又は検査装置5は、指標11C上に接着剤13がはみ出しているか否かに基づいて、接着剤13の塗布が不足しているか否かを判定できる。また、第一部材11と第二部材12との間に塗布された接着剤13の量が多いほど、接着剤13が第二部材12の外縁12Bから大きくはみ出すことになるが、接着剤13の量が適切であれば、はみ出した接着剤13が指標11Cの外縁11Dを越えないように形成されている。このため検査者又は検査装置5は、接着剤13が指標11Cの外縁11Dを越えている場合に、接着剤13の塗布が過剰であると判定できる。このように本実施形態の接着構造物1は、接着剤13の塗布が適正であるかを容易に判定できるようにしている。
【0043】
また、本実施形態の接着構造物1は、指標11Cの色と接着剤13の色とを異系色としている。これにより本実施形態の接着構造物1は、接着剤13が、第一部材11と第二部材12との間からはみ出して指標11C上に載ったことや、指標11Cの外縁11Dを越えたか否かを認識し易くし、接着剤13の塗布が適正であるかを更に容易に判定できるようにしている。
【0044】
<第二実施形態>
図6は、第二実施形態に係る接着構造物1Aを示す図である。本実施形態は、前述の第一実施形態と比べ、第一部材11上に複数の指標を設けた構成が異なっている。その他の構成は前述の第一実施形態と同じであるため、同一の要素に同符号を付すなどして再度の説明を省略する。
【0045】
本実施形態では、
図6に示すように、指標として、第一の指標(第一部分)11Cに加え、第二の指標(第二部分)11Eを設けている。第二の指標11Eは、第二部材12の外縁12Bから所定距離L1を超えた位置であって、接着剤13に接触しない位置に設けられている。本実施形態において、第一の指標11Cは、全体が接着剤13に覆われるように設けられ、接着剤13の広がりの下限を示している。そして、第二の指標11Eは、第一の指標11Cとの間に間隔を空けて設けられ、接着剤13の広がりの上限を示している。換言すると、第二の指標11Eにおける第二部材12側の縁(境界)11Fは、接着剤13のはみ出しを許容する第一の指標11C側の領域と、はみ出しを禁止する領域との
境界を示している。例えば、検査者が所定面11Aを平面視した際、第一の指標11Cが接着剤13で完全に覆われており、かつ第二の指標11Eに接着剤13が接触していない場合、接着剤13の塗布が適切であると判定できる。一方、接着剤13が境界11Fを越えて第二の指標11E上まではみ出している場合、接着剤13の塗布が過剰であると判定できる。
【0046】
第二の指標11Eは、接着剤13と同系色になるように形成されている。例えば、接着剤13が黄色であった場合、第二の指標11Eは、赤橙色、黄橙色、黄色、黄緑色、緑色の何れかで形成される。これにより、接着剤13が第二の指標11Eに接触すると下地の第一部材11の色が分断されることになり、接着剤13が第一の指標11Cを越えて第二の指標11Eに達したこと、即ち接着剤の塗布が過剰であることを認識し易くしている。
【0047】
また、本実施形態において、第一部材11の色は、第二の指標11Eの色及び接着剤13の色に対して異系色である。例えば、第二の指標11Eの色及び接着剤13の色が、赤橙色、黄橙色、黄色、黄緑色、緑色の何れかの場合、第一部材11の色は、青緑色、緑青色、青色、青緑色、青紫色、紫色、赤紫色、赤色の何れかであってもよい。これにより、接着剤13及び第二の指標11Eと第一部材11との差異が明確になり、接着剤13が第二の指標11Eに接触して第一部材11の色が分断されたこと、即ち接着剤の塗布が過剰であることを認識し易くしている。
【0048】
図7は、第二実施形態に係る検査方法のフローチャートである。なお、ステップS10~S20の処理は
図5の処理と同じである。ステップS30Aにおいて、制御部52は、ステップS20で求めたはみ出し量が、第一基準値を超えたか否か、即ち接着剤13が第一の指標11Cの外縁11Dを超えたか否かを判定する。
【0049】
ステップS30Aで、接着剤13の塗布が不足している可能性がある場合、即ちはみ出し量が第一基準値を超えていない場合、制御部52は、否定判定し、ステップS40へ移行する。ステップS40において、制御部52は、接着剤の塗布が不足している旨のメッセージを表示部等に出力する。一方、ステップS30Aで、はみ出し量が第一基準値を超えている場合、制御部52は、ステップS50Aへ移行する。なお、接着剤13が第一の指標11Cを完全に覆っていることが望ましいが、僅かに覆われていない部分が存在する状態、即ち、接着剤13が第一の指標11Cを概ね覆っている状態で肯定判定してもよい。ここで概ね覆っている状態とは、例えば接着剤13に覆われている第一の指標11Cの面積に対する接着剤13に覆われていない第一の指標11Cの面積の割合が所定値未満の場合や、第一の指標11Cにおける外縁11Dの全長に対する接着剤13に覆われていない外縁11Dの長さの割合が所定値未満の場合などである。
【0050】
ステップS50Aにおいて、制御部52は、接着剤13のはみ出し量が,第二基準値(所定距離L1)を越えているか否か、即ち接着剤13が第二の指標11Eの境界11Fを越えているか否かを判定する。
【0051】
ステップS50Aで、接着剤13が境界11Fを越えていない場合、制御部52は、接着剤の塗布が適正であると判定(否定判定)し、ステップS60へ移行する。ステップS60において、制御部52は、接着剤の塗布が適正である旨のメッセージを表示部等に出力する。
【0052】
一方、ステップS50で、接着剤13が境界11Fを越えている場合、制御部52は、接着剤の塗布が過剰であると判定(肯定判定)し、ステップS70へ移行する。ステップS70において、制御部52は、接着剤の塗布が過剰である旨のメッセージを表示部等に出力し、
図7の処理を終了する。
【0053】
このように本実施形態の接着構造物1は、第二部材12の外縁12Bから所定距離L1を超える位置であって、接着剤13の塗布を禁止する位置に第二の指標11Eが設けられている。第一部材11と第二部材12との間に塗布された接着剤13の量が過剰であると、接着剤13が第二部材12の外縁12Bから大きくはみ出し、第二の指標11Eの境界11Fを越えることになる。このため検査者及び検査装置は、検査時に接着剤13のはみだし量を確認し、接着剤13が境界11Fを越えて第二の指標11E上に達している場合に、接着剤13の塗布が過剰であると判定できる。このように本実施形態の接着構造物1Aは、接着剤13の塗布が適正であるかを容易に判定できるようにしている。
【0054】
<第三実施形態>
本実施形態は、前述の第二実施形態に係る接着構造物1をディスプレイスピーカ10に適用した例を示す。
図8~
図10は、ディスプレイスピーカ10の構成例を示す図である。
図8は、ディスプレイスピーカ10を上方から見下ろした断面図、
図9は、アクチュエータをディスプレイ側(表面側)から見た図、
図10は、アクチュエータを裏面側から見た図である。
図8のディスプレイスピーカ10は、ディスプレイパネル100、振動伝達部200、振動アクチュエータ300、拘束部400を含む。ここで、
図8の右から左の方向をx方向、
図8の紙面の裏面から表面の方向をy方向、
図8の下から上の方向(振動アクチュエータ300からディスプレイパネル100の方向)をz方向とする。ディスプレイスピーカ10と、x方向、y方向、z方向との位置関係は、他の図においても同様である。なお、この方向は、説明の便宜上示すものであり、この方向に限定されるものではない。例えば、ディスプレイスピーカ10の姿勢が、この方向に限定されるものではない。ディスプレイパネル100は、パネルの一例である。ディスプレイスピーカは、パネル型スピーカの一例である。振動アクチュエータ300は、アクチュエータの一例である。本実施形態におけるアクチュエータの取付構造は、振動伝達部200と、振動アクチュエータ300と、拘束部400とを備える。
【0055】
ディスプレイパネル100は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等などに含まれる表示素子であり、映像信号が入力された場合に映像を表示出力する。ディスプレイパネル100は、概ね平板状で、映像の表示面(表面)と反対側の面(背面)に振動伝達部200を介して振動アクチュエータ300が接続されている。ディスプレイパネル100は、振動アクチュエータ300によって加振する対象パネルの一例である。
【0056】
振動伝達部200は、一端がディスプレイパネル100に接続され、他端が振動アクチュエータ300に接続され、振動アクチュエータ300の振動をディスプレイパネル100に伝達する。振動伝達部200は、ネジ受け部210(被締結部)と、ネジ受け部210の周囲に設けられた振動伝達本体220とを有している。ネジ受け部210は、ディスプレイパネル100の背面101に立設され、その自由端側には拘束部400が取り付けられる雌ネジ部が設けられている。
【0057】
振動伝達本体220は、ディスプレイパネル100の背面に接するディスプレイ側当接面221と、振動アクチュエータ300と接するアクチュエータ側当接面222とが平行に設けられた概ね直方体状の外形を有し、ネジ受け部210を貫通させる孔223を有している。振動伝達本体220は、ディスプレイ側当接面221とアクチュエータ側当接面222を有していれば、他の外形であってもよく、例えば、四角柱、円柱など柱状であってもよい。振動伝達部200は、例えば、樹脂、金属などである。
【0058】
本実施形態では、振動伝達部200の一部であるネジ受け部210が、ディスプレイパネル100と一体に形成されているが、これに限らず振動伝達部200がディスプレイパ
ネル100と別体に形成され、接着剤や両面テープで振動伝達部200がディスプレイパネル100に固定されてもよい。
【0059】
振動アクチュエータ300は、振動板310、振動板310のディスプレイパネル側の面(第1面とする)に貼り付けられる圧電素子320、振動板310の第1面と反対側の面(第2面とする)に貼り付けられる圧電素子330、圧電素子320及び圧電素子330を振動板310に接着する接着剤315を含む。振動アクチュエータ300の振動板310は、本実施形態における第一部材である。振動板310は、振動伝達部200を介して、ディスプレイパネル100に結合される。
【0060】
振動アクチュエータ300の振動板310は、平面視において長方形の板状の部材であって、ディスプレイパネル側に配置される表面(第1面)と、その反対側の裏面(第2面)を有する。振動板310の形状は、円形や楕円形であってもよい。また、振動板310の形状は、左右対称であって、上下対称の形状であれば、他の形状であってもよい。表面は、裏面にほぼ平行である。本実施形態の振動板310は、ステンレス等の金属によって形成されている。振動板310は、振動板310の表面がディスプレイパネル100の背面とほぼ平行となるように配置される。
【0061】
圧電素子320、330は、電圧を印加すると、電圧に応じて形状が変形する圧電素子である。圧電素子320、330は、本実施形態における第二部材である。圧電素子320、330は、例えば、圧電効果を示すセラミックなどの板状の材料による素子である。圧電素子320、330には、電圧を印加するための電極が取り付けられる。圧電素子320は、振動板310の第1面に貼り付けられる。圧電素子330は、振動板310の第2面に貼り付けられる。圧電素子320は、振動板310の中央部分が第1面側から見て露出するように、開口部を有する。圧電素子320は、中央部分に開口部を有する。振動板310は、圧電素子320の開口部により、振動板310の第1面の中央部分に露出する部分(露出部分)を有する。当該開口部に、振動伝達部200のアクチュエータ側当接面が接続される。このとき、圧電素子320と振動伝達部200とは接触しない。なお、圧電素子320、330の一方を省略した構成としてもよい。本実施形態において、第1面、第2面は、xy平面上にある。
【0062】
図9は、振動アクチュエータ300を第1面側から見た図である。振動アクチュエータ300の振動板310の第1面及び第2面には、開口部を有する圧電素子320、330が貼り付けられている。また、振動板310の中央部分(第1面及び第2面の中心を含む部分、平面視中央部分)は、圧電素子320,330の開口部により露出している。ここで、振動板310の形状が長方形である場合、振動板310の第1面(第2面)の中心は、長方形の2つの対角線の交点である。また、振動板310の形状が円形または楕円形である場合、振動板310の第1面(第2面)の中心は、円形または楕円形の中心である。振動板310の形状が他の形状であっても、振動板310の第1面(第2面)の中心は、例えば重心などによって定義され得る。
【0063】
振動板310において、被接着面310Aのうち、圧電素子320、330で覆われていない露出部分であり、圧電素子320、330の外縁320B、330Bから所定距離以内となる範囲に第一の指標310Cが付されている。即ち、第一の指標310Cは、振動板310の被接着面310Aにおいて圧電素子320、330の外周を囲むように配置されている。
【0064】
また、圧電素子320、330の外縁320B、330Bから所定距離を超える位置であって、接着剤315の塗布を禁止する位置に第二の指標310Eが付されている。第二の指標310Eにおける圧電素子320、330側の縁(境界)310Fは、接着剤31
5、316のはみ出しを許容する第一の指標310C側の領域と、はみ出しを禁止する領域との境界を示している。例えば、接着剤315が境界310Fを越えて第二の指標310E上まではみ出している場合、接着剤315の塗布が過剰であると判定できる。なお、第一の指標310C、第二の指標310E、接着剤315、及び振動板310における色や色調の関係は、前述の実施形態2と同様である。例えば、第一の指標310Cの色と接着剤315の色とが異系色である。また、第二の指標310Eの色と接着剤315の色とが同系色である。更に、本実施形態の振動板310は、素材(ステンレス)の色が銀色であり、第二の指標310Eの色及び接着剤315の色と異なっている。
【0065】
また、振動板310の中央付近には、拘束部400を通すための貫通孔311が設けられている。
【0066】
拘束部400は、雄ネジ部410と、頭部420とを有するボルト(締結部材)である。
図8,
図10の例では、2つの拘束部400が用いられ、その雄ネジ部410が、振動板310の第2面側から貫通孔311を貫通し、振動伝達部200の雌ネジ部に対して螺入され、頭部420が振動板310の第2面に突き当たるまで締め込まれる。これにより、振動伝達部200と、振動アクチュエータ300と、拘束部400とが締結される。即ち、振動アクチュエータ300が、拘束部400によって拘束される。なお、本実施形態では、2つの拘束部400を用いたが、これに限らず一つの拘束部400又は三つ以上の拘束部400を用いて振動アクチュエータ300を拘束する構成としてもよい。
【0067】
本実施形態では、振動アクチュエータ300が、ディスプレイパネル100を振動させることにより、ディスプレイパネル100から音波を出力(放出)させ、ディスプレイスピーカとして機能させる。
【0068】
本実施形態においても前述の第二実施形態と同様に、接着剤315が、第一の指標310C上にはみ出しているか、及び接着剤315が第二の指標310Eに達するまで、はみ出しているかに基づいて、接着剤13の塗布が適正であるかを容易に判定できる。これにより例えば、接着剤の過不足によって、ディスプレイスピーカの音響特性に悪影響を及ぼすことを防止できる。
【0069】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらはあくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。例えば、第一実施形態の接着構造物1を第三実施形態のディスプレイスピーカ10に適用してもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 接着構造物
10 ディスプレイスピーカ
11 第一部材
11C 第一の指標
11E 第二の指標
12 第二部材
13 接着剤
100 ディスプレイパネル
200 振動伝達部
300 動アクチュエータ
310 振動板(第一部材)
310C 第一の指標
310E 第二の指標
315 接着剤
320 圧電素子(第二部材)
330 圧電素子(第二部材)