IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ YKK AP株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-胴縁固定構造 図1
  • 特開-胴縁固定構造 図2
  • 特開-胴縁固定構造 図3
  • 特開-胴縁固定構造 図4
  • 特開-胴縁固定構造 図5
  • 特開-胴縁固定構造 図6
  • 特開-胴縁固定構造 図7
  • 特開-胴縁固定構造 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101225
(43)【公開日】2023-07-20
(54)【発明の名称】胴縁固定構造
(51)【国際特許分類】
   E04H 17/16 20060101AFI20230712BHJP
【FI】
E04H17/16 102Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022001715
(22)【出願日】2022-01-07
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 信二
【テーマコード(参考)】
2E142
【Fターム(参考)】
2E142AA01
2E142DD01
2E142DD04
2E142DD32
2E142HH03
2E142HH13
2E142HH22
(57)【要約】
【課題】固定金具の位置を確実に保持でき、柱に胴縁を固定する施工性を向上できる胴縁固定構造を提供すること。
【解決手段】本発明は、柱3の取付面部31に取り付けられた固定金具7を介して胴縁を固定する胴縁固定構造である。柱3は、取付面部31の長手方向に連続する溝部35を有する。固定金具7は、溝部35に挿入可能な凸部73を備える。固定金具7の凸部73が柱3の溝部35に挿入することで、固定金具7が回転することを防止できる。このため、固定金具7の位置を確実に保持でき、作業者が固定金具7を保持する必要が無いため、柱3に胴縁を固定する際の施工性を向上できる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱の取付面部に取り付けられた固定金具を介して胴縁を固定する胴縁固定構造であって、
前記柱は、前記取付面部の長手方向に連続する溝部を有し、
前記固定金具は、前記溝部に挿入可能な凸部を備える
ことを特徴とする胴縁固定構造。
【請求項2】
請求項1に記載の胴縁固定構造において、
前記固定金具の前記取付面部に対向する対向面には、前記対向面から突出する前記凸部と、前記凸部を挟んで左右位置に形成されて前記凸部よりも突出寸法が小さいガイド部とが設けられ、
前記凸部および前記ガイド部間には溝部が形成されている
ことを特徴とする胴縁固定構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の胴縁固定構造において、
前記固定金具は、前記取付面部に固定するためのボルトが挿通される挿通孔を有し、
前記挿通孔は、前記固定金具の重心よりも上方に形成されている
ことを特徴とする胴縁固定構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の胴縁固定構造において、
前記溝部には、前記溝部の長手方向に沿って位置調整可能に前記柱に固定された裏板が配置され、
前記固定金具は前記裏板に固定されている
ことを特徴とする胴縁固定構造。
【請求項5】
請求項4に記載の胴縁固定構造において、
前記溝部は、
前記取付面部に開口する開口溝部と、
前記開口溝部の裏面側に連続して形成され、幅寸法が前記開口溝部よりも大きな裏板保持溝部と、
前記裏板保持溝部の裏面側に連続して形成され、幅寸法が前記裏板保持溝部よりも小さなボルト配置溝部とを備えて構成され、
前記裏板は、前記裏板保持溝部に配置され、前記溝部の長手方向に離れて形成された第一雌ねじ部および第二雌ねじ部を有し、前記第二雌ねじ部に螺合される第二ボルトと前記裏板とで前記取付面部を挟持することで前記柱に固定され、
前記固定金具は、前記第一雌ねじ部に螺合される第一ボルトで前記裏板に固定され、
前記第一ボルトおよび前記第二ボルトの先端は、前記ボルト配置溝部に配置される
ことを特徴とする胴縁固定構造。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の胴縁固定構造において、
前記胴縁は係合片を備え、
前記固定金具の上端部には、前記係合片に係合する鉤部が形成されている
ことを特徴とする胴縁固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェンスの縦格子等が取り付けられた胴縁を柱に固定する胴縁固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
フェンスの柱に胴縁を固定する構造として、柱に取り付けたネジ桿に係止縁を有する固定金具を緩く螺着する際に、柱と固定金具との間に両側面が粘着面となる弾性体を介在させ、各粘着面を柱および固定金具に接着することで、固定金具を所定の位置に保持しながら、胴縁に形成した係合突起と固定金具の係止縁を嵌み合わせ、この状態を維持しながら固定金具にネジ桿をきつく螺合する構造が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平2-40863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、施工現場で両面粘着テープの剥離紙を剥がして、柱および固定金具に接着する作業が必要となり、施工性が低下するという課題がある。
また、両面粘着テープの粘着力で固定金具の位置を保持するため、例えば、作業者が誤って胴縁を固定金具に衝突させた場合に、固定金具の位置がずれてしまうという課題もある。
本発明の目的は、固定金具の位置を確実に保持でき、柱に胴縁を固定する施工性を向上できる胴縁固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の胴縁固定構造は、柱の取付面部に取り付けられた固定金具を介して胴縁を固定する胴縁固定構造であって、前記柱は、前記取付面部の長手方向に連続する溝部を有し、前記固定金具は、前記溝部に挿入可能な凸部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、固定金具の位置を確実に保持でき、柱に胴縁を固定する施工性を向上できる胴縁固定構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の第1実施形態に係る胴縁固定構造を用いたフェンスを示す外観姿図である。
図2】第1実施形態のフェンスの平面図である。
図3】第1実施形態の胴縁固定構造を示す側面図である。
図4】第1実施形態の胴縁固定構造を示す正面図である。
図5】第1実施形態の胴縁固定構造の固定金具の取付構造を示す分解斜視図(円内は固定金具を裏面側から見た斜視図)である。
図6】第1実施形態の胴縁の取付手順を示す説明図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る胴縁固定構造を用いたフェンスを示す外観姿図である。
図8】第2実施形態の胴縁固定構造の固定金具の取付構造を示す分解斜視図(円内は固定金具を裏面側から見た斜視図)である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1および図2に示すように、フェンス1は、敷地内と道路などの敷地外とを区画するものであり、柱基礎2に下端が埋め込まれて立設された柱3と、胴縁4と、縦格子5と、柱3に取り付けられる裏板6および固定金具7とを備える。なお、以下の説明において、フェンス1の敷地の外側(道路側)を表側、敷地の内側(敷地側)を裏側とし、各部材において道路側に面する面を表面、敷地側に面する面を裏面と定義する。
【0009】
柱3は、図2に示すように、断面略中空矩形状のアルミ製の形材で構成され、取付面部31と、一対の側面部32と、裏面部33とを備える。
取付面部31は、柱3の表面であり、長手方向つまり上下方向に連続する溝部35が形成されている。すなわち、図2および図5に示すように、取付面部31は、一対の突出片部311と、断面L字状に形成された一対の第一区画片部312と、断面コ字状に形成されて第一区画片部312に連続する第二区画片部313とを備える。
溝部35は、一対の突出片部311間に形成される開口溝部36と、突出片部311および第一区画片部312で区画される裏板保持溝部37と、第二区画片部313で区画されるボルト配置溝部38とを備える。開口溝部36は、取付面部31の表面に露出する溝である。裏板保持溝部37は、開口溝部36の裏面側つまり裏面部33側に連続して形成される溝である。ボルト配置溝部38は、裏板保持溝部37の裏面側に連続して形成される溝である。
ここで、溝部35の幅寸法を、溝部35の長手方向(上下方向)に直交し、かつ、取付面部31の面内方向に沿った方向(左右方向)の寸法とすると、開口溝部36の幅寸法に比べて裏板保持溝部37の幅寸法は大きくされ、裏板保持溝部37の幅寸法に比べてボルト配置溝部38の幅寸法は小さくされている。なお、開口溝部36とボルト配置溝部38の幅寸法はほぼ同じであるが、本実施形態では、開口溝部36の幅寸法に比べてボルト配置溝部38の幅寸法は僅かに小さくされている。
図3に示すように、柱3の上端開口にはキャップ39が取り付けられている。
【0010】
胴縁4は、アルミ製の形材で形成され、図3にも示すように、断面中空矩形状の本体部41と、本体部41の表面から下方に延長された固定片42と、本体部41の裏面上端から柱3側に延出されて湾曲されたカバー片43と、本体部41の裏面下端から柱3側および下方に延出された係合片44とを備える。係合片44は、本体部41から柱3側に延出され、さらに下方に延出され、さらに柱3から離れる方向に延出されて断面略コ字状に形成されている。
胴縁4は、長手方向に一定の寸法で形成され、図2にも示すように、直線状に配置された胴縁4同士は直線継手81で連結される。また、コーナー部に配置される胴縁4同士は、交差角度を調整可能なコーナー継手82で連結される。
直線継手81やコーナー継手82は、胴縁4の本体部41に挿入され、本体部41の裏面から直線継手81やコーナー継手82にネジ込まれるタッピンネジ85で胴縁4に固定される。なお、直線継手81で連結される胴縁4の小口間には樹脂製のジョイントキャップが介在されている。
フェンスの端部に配置される胴縁4の端部開口には、本体部41に挿入される端部キャップ86がタッピンネジ85で固定される。
【0011】
縦格子5は、断面中空矩形状のアルミ製の形材で構成されて上下の胴縁4に掛け渡され、図3および図4に示すように、胴縁4の固定片42にリベット51で固定される。また、縦格子5の上下両端部には、端部キャップ55が取り付けられている。
縦格子5は、胴縁4を柱3に取り付ける前に、予め胴縁4に取り付けられる。この胴縁4および縦格子5によってフェンス本体が構成される。
【0012】
裏板6は、スチール等で構成され、裏板保持溝部37に挿入されて上下方向に位置調整可能に取り付けられている。
図5に示すように、裏板6には、第一雌ねじ部61および第二雌ねじ部62が上下に離れて形成されている。第一雌ねじ部61には、後述するように、固定金具7を固定する第一ボルト65が螺合される。
第二雌ねじ部62には、裏板6を柱3に固定する第二ボルト66が螺合される。すなわち、裏板保持溝部37に挿入された裏板6の第二雌ねじ部62に、柱3の表側から開口溝部36を介して第二ボルト66をネジ込み、裏板6および第二ボルト66で突出片部311を挟み込むことで、裏板6を柱3に固定する。このため、裏板6は、裏板保持溝部37内で突出片部311に当接する位置、つまり柱3の表側に引き寄せられて固定されている。
なお、第一雌ねじ部61および第二雌ねじ部62の上下間隔は、第一雌ねじ部61に螺合される第一ボルト65で固定金具7を取り付けた際に、第二雌ねじ部62に螺合される第二ボルトが固定金具7の下端よりも下方に位置し、固定金具7と干渉しないように設定されている。
【0013】
固定金具7は、図5に示すように、略矩形板状に形成されている。固定金具7には、表面から裏面に貫通し、第一ボルト65が挿通される挿通孔71が形成されている。固定金具7の上端部には、幅方向全長に渡って鉤部72が形成されている。鉤部72は、固定金具7の表面からこの表面に直交する方向に突出する第一片部721と、第一片部721の先端から上方に延出された第二片部722と、第二片部722の上端から柱3に近づく方向に延出された第三片部723とを備え、断面略コ字状に形成されている。鉤部72は、第一片部721、第二片部722、第三片部723で区画される係合溝を有し、この係合溝に胴縁4の係合片44が配置されて係合される。
【0014】
図5の円内に示すように、固定金具7の裏面つまり取付面部31に対向する対向面の下端部には、凸部73およびガイド部74が形成されている。なお、凸部73およびガイド部74の間には溝部75が形成され、凸部73およびガイド部74は非連続つまり分離して設けられている。
凸部73は、固定金具7の裏面から突出する突起であり、固定金具7の下端における幅方向中心位置に設けられている。この凸部73の幅寸法は、開口溝部36の幅寸法よりも僅かに小さい寸法とされている。
ガイド部74は、凸部73を挟んで左右位置に形成されている。ガイド部74は、固定金具7の左右の端面まで延長された突条部であり、固定金具7の裏面からの突出寸法は凸部73よりも小さい寸法とされている。なお、凸部73のガイド部74から突出する寸法は、突出片部311の厚さ寸法よりも小さくされている。このため、ガイド部74が取付面部31に当接している場合、凸部73は開口溝部36内に配置され、凸部73の先端が裏板6に当接しないように設定されている。
【0015】
固定金具7では、挿通孔71が重心位置よりも上方、つまり重心位置と鉤部72との間に挿通孔71が位置するように形成されている。換言すれば、重心位置は、挿通孔71と凸部73との間である。このため、挿通孔71に挿通される一本の第一ボルト65で裏板6に取り付けられた場合、鉤部72が上側に位置し、凸部73が下側に位置する状態に維持される。また、挿通孔71が形成された板状部分に対して、鉤部72は固定金具7の表面側に突出して形成され、固定金具7の裏面側に突出する凸部73、ガイド部74に比べて重量が大きいため、第一ボルト65で締め付けられるまでは、固定金具7は上端側が取付面部31から離れ、下端側が取付面部31に近づいて凸部73が開口溝部36内に配置される状態に傾斜される。
【0016】
[胴縁の固定手順]
次に、図6を参照して、胴縁4を柱3に固定する手順について説明する。
工場などにおいて、柱3の裏板保持溝部37に裏板6を挿入し、胴縁4の取付高さ位置に合わせて裏板6の位置を調整して第二ボルト66で固定する。
次に、施工現場などで、固定金具7の凸部73を柱3の溝部35に挿入し、固定金具7を第一ボルト65で裏板6に仮固定する。仮固定は、第一ボルト65を第二雌ねじ部62に緩く螺合する。
裏板6および固定金具7を取り付けた柱3を、施工現場において柱基礎2に埋設して建てる。この際、図6(A)に示すように、固定金具7は、第一ボルト65を緩く締めて仮固定しているため、鉤部72と取付面部31との間には係合片44を配置可能な隙間が確保されている。
次に、縦格子5が固定された上下の胴縁4を、固定金具7の上方位置で取付面部31に当接させた状態で胴縁4を下方に移動し、図6(B)に示すように、固定金具7に仮置きする。すなわち、胴縁4の係合片44を固定金具7の第一片部721上に載置する。胴縁4の仮置き作業は、胴縁4を取付面部31に当接させて下方に移動するだけでよいので、一人の作業者でも容易に作業できる。
次に、第一ボルト65を締め付けて固定金具7を固定する。この際、胴縁4は固定金具7に仮置きされており、固定金具7も凸部73が開口溝部36内に配置されて安定した姿勢で維持されているので、作業者は胴縁4や固定金具7を保持しながら第一ボルト65の締め付け作業を行う必要が無い。このため、一人の作業者でも第一ボルト65の締め付け作業を順次行うことができる。
これにより、図6(C)に示すように、固定金具7の鉤部72と、胴縁4の係合片44とが係合する。すなわち、係合片44は、取付面部31と鉤部72との間に挟持され、胴縁4の取付面部31の面直交方向への移動が規制される。また、係合片44が鉤部72の溝内に配置されるため、胴縁4の上下方向への移動も規制される。したがって、胴縁4は固定金具7によって柱3に固定される。
【0017】
なお、施工現場において、裏板6や固定金具7の高さ位置の調整が必要な場合は、第一ボルト65および第二ボルト66を緩め、裏板6および固定金具7を溝部35に沿ってスライドさせて高さ位置を調整した後、緩めた第一ボルト65および第二ボルト66を締め付けて固定すれば良い。
【0018】
[第1実施形態の作用効果]
以上に説明した第1実施形態の胴縁固定構造によれば、固定金具7の姿勢を確実に保持でき、柱3に胴縁4を固定する際の施工性を向上できる。
すなわち、柱3に溝部35を設け、固定金具7に溝部35に挿入される凸部73を形成したので、固定金具7を第一ボルト65で裏板6に仮固定した際に、凸部73を溝部35、具体的には開口溝部36に配置することで、固定金具7は常に鉤部72の上面が水平となる姿勢で仮固定することができる。このため、フェンス本体の胴縁4を固定金具7の鉤部72に仮置きし易く、例えば、胴縁4の仮置き時に固定金具7が回転しないように作業者が保持し続ける必要も無いため、施工性を向上できる。
さらに、固定金具7の凸部73を開口溝部36に配置して機械的に固定金具7の姿勢を維持しているので、胴縁4の仮置き時に胴縁4等が固定金具7に接触しても固定金具7の姿勢を維持できる。このため、両面粘着テープで金具の姿勢を維持する場合に比べて、固定金具7の姿勢を確実に維持でき、施工性を向上できる。
また、固定金具7には予め凸部73が一体に形成されているので、例えば、施工現場で両面粘着テープの剥離紙を剥がして金具などに貼り付ける作業も不要にでき、この点でも施工性を向上できる。
【0019】
固定金具7は、柱3の表側から挿通孔71を介して裏板6に螺合される第一ボルト65で固定されるため、短いボルトを使用できる。このため、従来のネジ桿のように、取付面部31および裏面部33に長さ寸法が大きなボルトを挿通する必要が無いため、施工性を向上できる。
また、柱3にボルト用の貫通孔を形成する必要が無いため、穴加工を無くすことができ、コストも低減できる。
さらに、取付面部31および裏面部33を通して配置したボルトで固定金具を固定すると、ボルトの締付力が柱3に加わるため柱3が変形する可能性がある。これに対し、本実施形態では、固定金具7は裏板6に第一ボルト65を螺合することで固定されるため、第一ボルト65を締め付けても柱3が変形することを防止できる。
また、柱3の裏面部33側には第一ボルト65、第二ボルト66が露出しないため、敷地側から見たフェンス1の意匠性を向上できる。さらに、第一ボルト65、第二ボルト66の先端は、ボルト配置溝部38に配置されて柱3の外部に露出しないので、この点でも意匠性を向上できる。
【0020】
固定金具7は、第一ボルト65、第二ボルト66を緩めて裏板6と共に溝部35に沿って上下にスライドさせることで、高さ位置を容易に調整できる。このため、施工現場において、胴縁4および縦格子5からなるフェンス本体の取り付け高さ位置も容易に調整できる。
【0021】
裏板6を第二ボルト66で突出片部311に当接した状態つまり裏板保持溝部37内において表側に引き寄せた状態に固定できるので、裏板6に第一ボルト65で固定金具7を仮固定した際に、固定金具7の鉤部72と取付面部31との隙間を大きくでき、胴縁4の係合片44を第一片部721に載置して容易に仮置きすることができる。
さらに、固定金具7は、上端に鉤部72が形成されることで、フェンス本体側に傾きやすい構成となっているため、固定金具7を仮固定した際に、鉤部72と取付面部31との隙間を更に大きくでき、胴縁4を容易に仮置きすることができる。
【0022】
第一ボルト65を締めて仮固定した固定金具7を本締めすると、鉤部72が係合片44に係合し、係合片44を柱3に圧着して強固に固定できる。その上、第一ボルト65の締め付けによって、裏板6の上部側も突出片部311に圧着するため、裏板6を第一ボルト65、第二ボルト66の2本のボルトで突出片部311に圧着することができ、裏板6の固定強度も向上できる。
【0023】
第一ボルト65や第二ボルト66は、柱3の表側から裏板6にネジ込まれるため、柱3の表側からスパナやラチェットスパナによって容易に締めたり緩めたりすることができ、施工性を向上できる。
また、従来のように、柱の裏面部33側から長いボルトを通す構造であると、フェンスのコーナー部に柱を配置する場合、一方の柱の裏面部が他方の柱で隠れないように、各柱を互いに離して配置する必要がある。これに対し、本実施形態のように、柱3の表側から第一ボルト65、第二ボルト66を螺合する場合、コーナー部において各柱3を近づけて配置することができる。このため、コーナー部において、各胴縁4つまりフェンス本体の端部を柱3に固定でき、コーナー部分の固定強度を向上できる。
【0024】
胴縁4の裏面に、係合片44に加えてカバー片43を設けているので、胴縁4を固定金具7に仮置きする際に、カバー片43および係合片44を取付面部31に当接させることができるため、胴縁4を安定した姿勢で下方に移動させることができる。また、カバー片43によって、胴縁4の本体部41と取付面部31との隙間を隠すことができ、さらにタッピンネジ85の上方を覆うこともできるため、意匠性を向上できる。
【0025】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。
第1実施形態は、平地に配置されるフェンス1における胴縁固定構造であったのに対し、第2実施形態は、図7に示すように、傾斜地に配置されるフェンス1Bにおける胴縁固定構造に関する。なお、図7において、平地に配置されるフェンス1の胴縁固定構造は第1実施形態と同じであるため、説明を省略する。
【0026】
ここで、フェンス1およびフェンス1Bにおいて、柱3、胴縁4、縦格子5、裏板6、固定金具7は同一の部品を用いている。ただし、フェンス1Bで用いられる固定金具7は、図8に示すように、凸部73をくい切りなどの工具で切除して利用している。なお、凸部73の両側には、溝部75が形成されているので、ガイド部74に影響を与えずに凸部73を切除できる。また、凸部73の切除面に凹凸が残って荒れていても、固定金具7の裏面からのガイド部74の突出寸法よりも凸部73の切除面の突出寸法を小さくできるので、取付面部31に凸部73の切除面が当接することがない。このため、凸部73の切除面にヤスリをかけるなどの仕上げ作業を行う必要もない。
固定金具7は、柱3の開口溝部36内に配置される凸部73を切除することで、図7に示すように、第一ボルト65を回転軸として固定金具7を傾斜配置することができる。
【0027】
胴縁4は、傾斜面の傾斜角度に合わせて傾斜配置されている。すなわち、胴縁4および縦格子5は1本のリベット51で固定されているので、図7に示すように、縦格子5に対して胴縁4を傾斜させることができる。また、固定金具7は開口溝部36に配置される凸部73が切除されているので、柱3に対して第一ボルト65を回転軸として回転させることができる。このため、傾斜配置される胴縁4の係合片44に合わせて鉤部72を傾斜配置させて胴縁4を柱3に取り付けることができる。
また、フェンス1の水平に配置された胴縁4の端部と、フェンス1Bの傾斜配置された胴縁4の端部とは、角度調整可能な傾斜継手83で連結されている。
【0028】
このようなフェンス1Bにおいても、フェンス1と同様の手順で胴縁4を柱3に取り付けることができる。
すなわち、工場などで、柱3に裏板6を固定する。次に、施工現場などで裏板6に固定金具7を仮固定する。この際に、傾斜地に立設する柱3では、凸部73を工具で切除した固定金具7を第一ボルト65で仮固定する。これにより、第1実施形態の図6(A)と同様に、固定金具7は重心位置が挿通孔71の下方であるため、鉤部72が上側に位置し、ガイド部74が下側に位置し、さらに鉤部72が柱3から離れ、ガイド部74が柱3の取付面部31に近づく方向に傾斜する状態となる。
次に、胴縁4を取付面部31に当接した状態で下方に移動させ、胴縁4の係合片44を固定金具7の鉤部72に当接させる。すると、係合片44が第一片部721に当接することで固定金具7は胴縁4の傾斜角度に合わせて回転する。そして、第一ボルト65を締め付けることで、胴縁4は固定金具7を介して柱3に固定される。
【0029】
このような第2実施形態においても前記第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
また、凸部73を工具を用いて切除することで傾斜地用の固定金具7として利用できるので、平地用と傾斜地用とで固定金具7を兼用でき、コストを低減できる。
さらに、固定金具7の凸部73の両側に溝部75を形成しているので、凸部73を工具で容易に切除できる。さらに、凸部73の両側にガイド部74が形成されていても、溝部75によって凸部73およびガイド部74が分断されているので、ガイド部74に影響を与えずに凸部73のみを容易に切除できる。
また、ガイド部74が形成されているので、凸部73を切除した際に、切除面をガイド部74よりも後退させることができる。このため、ガイド部74が取付面部31に当接することで、切除面が取付面部31に当接しないため、切除面を仕上げなくても、取付面部31が傷付くことを防止できる。
【0030】
[変形例]
固定金具7は、ガイド部74を有さずに、取付面部31に対向する裏面に凸部73のみが形成されるものでもよい。この場合、凸部73の切除面が取付面部31に当接するため、凸部73の切除面をヤスリなどで仕上げることが好ましい。また、凸部73に切除用の溝を予め形成し、くい切りなどの工具で切除し易く構成してもよい。
固定金具7は、挿通孔71が固定金具7の重心よりも上方に形成されるものに限定されず、挿通孔71が重心位置と一致するものでもよいし、挿通孔71が重心よりも下方に形成されるものでもよい。このような位置関係であっても、凸部73を開口溝部36に配置させることで固定金具7の回転を規制することができる。
【0031】
固定金具7は、裏板6に取り付けられるものに限定されず、柱3に直接固定してもよい。また、柱3の溝部35の構成も前記実施形態の構成に限定されない。例えば、第二区画片部313を有さない、すなわちボルト配置溝部38を備えずに、開口溝部36および裏板保持溝部37のみで溝部35を構成してもよい。ただし、前記実施形態のように、第二区画片部313を備えていれば、第二区画片部313を備えずに、取付面部31が溝部35部分で左右に分離されている場合に比べて、柱3の剛性を向上できる。
胴縁4と固定金具7との係合構造は前記実施形態に限定されない。例えば、固定金具7に、第一片部721および第二片部722によって断面L字状の鉤部を設け、胴縁4に、下向きの断面L字状に形成されて第二片部722と取付面部31との間に挟持される係合片を設けてもよい。
【0032】
本発明は、フェンス本体の胴縁を柱に固定する構造として広く利用できる。このため、フェンス本体としては、前記実施形態に限定されず、例えば、縦板格子を備えるものなどでもよく、柱に固定される横材としての胴縁を備えるものであればよい。
【0033】
[発明のまとめ]
本発明の胴縁固定構造は、柱の取付面部に取り付けられた固定金具を介して胴縁を固定する胴縁固定構造であって、前記柱は、前記取付面部の長手方向に連続する溝部を有し、前記固定金具は、前記溝部に挿入可能な凸部を備えることを特徴とする。
本発明の胴縁固定構造によれば、固定金具の凸部が柱の溝部に挿入することで、固定金具が回転することを防止できる。このため、固定金具の位置を確実に保持でき、作業者が固定金具を保持して固定金具の回転を防止する必要が無いため、柱に胴縁を固定する施工性を向上できる。また、固定金具の凸部を切除すれば、固定金具を回転させることができ、傾斜配置される胴縁を柱に固定することができる。このため、傾斜地用と平地用とで固定金具や胴縁、柱を共通化でき、コストを低減できる。
【0034】
本発明の胴縁固定構造において、前記固定金具の前記取付面部に対向する対向面には、前記対向面から突出する前記凸部と、前記凸部を挟んで左右位置に形成されて前記凸部よりも突出寸法が小さいガイド部とが設けられ、前記凸部および前記ガイド部間には溝部が形成されていることが好ましい。
固定金具は、凸部に加えてガイド部を備え、凸部およびガイド部間に溝部が形成されているので、ガイド部に影響を与えずに凸部のみを容易に切除できる。また、ガイド部が形成されているので、凸部を切除した際に、切除面をガイド部よりも後退させることができる。このため、切除面に凹凸が残っていても、ガイド部が取付面部に当接することで、切除面が取付面部に当接することがないため、取付面部が傷付くことも防止できる。
【0035】
本発明の胴縁固定構造において、前記固定金具は、前記取付面部に固定するためのボルトが挿通される挿通孔を有し、前記挿通孔は、前記固定金具の重心よりも上方に形成されていることが好ましい。
固定金具においてボルトが挿通される挿通孔が固定金具の重心よりも上方に形成されることで、固定金具がボルトを軸に回転して上下が逆になることを防止できる。このため、作業者が固定金具を保持してその姿勢を維持する必要が無く、施工性を向上できる。
【0036】
本発明の胴縁固定構造において、前記溝部には、前記溝部の長手方向に沿って位置調整可能に前記柱に固定された裏板が配置され、前記固定金具は前記裏板に固定されていることが好ましい。
裏板は溝部の長手方向に沿って位置調整可能であるため、裏板および固定金具の高さ位置を調整できる。特に傾斜地に設置した場合に、固定金具の高さ位置を容易に調整できる。
【0037】
本発明の胴縁固定構造において、前記溝部は、前記取付面部に開口する開口溝部と、前記開口溝部の裏面側に連続して形成され、幅寸法が前記開口溝部よりも大きな裏板保持溝部と、前記裏板保持溝部の裏面側に連続して形成され、幅寸法が前記裏板保持溝部よりも小さなボルト配置溝部とを備えて構成され、前記裏板は、前記裏板保持溝部に配置され、前記溝部の長手方向に離れて形成された第一雌ねじ部および第二雌ねじ部を有し、前記第二雌ねじ部に螺合される第二ボルトと前記裏板とで前記取付面部を挟持することで前記柱に固定され、前記固定金具は、前記第一雌ねじ部に螺合される第一ボルトで前記裏板に固定され、前記第一ボルトおよび前記第二ボルトの先端は、前記ボルト配置溝部に配置されることが好ましい。
本発明では、開口溝部の裏面側に裏板保持溝部を形成しているので、固定金具の凸部を開口溝部に配置し、裏板を裏板保持溝に配置できる。このため、裏板を凸部よりも下方位置まで延長でき、裏板を柱に固定する第二ボルトを固定金具の下方に配置することで、固定金具と干渉しない位置に第二ボルトを配置できる。このため、固定金具を裏板に固定した後でも第二ボルトを緩めて裏板および固定金具の高さ位置を容易に調整できる。
また、裏板保持溝部の裏面側にボルト配置溝部を形成しているので、裏板から突き出た第一ボルトおよび第二ボルトの先端が柱と干渉しないように、貫通孔や溝などを形成する必要が無く、柱の穴加工などを不要にでき、かつ、柱の強度低下も抑制できる。
【0038】
本発明の胴縁固定構造において、前記胴縁は係合片を備え、前記固定金具の上端部には、前記係合片に係合する鉤部が形成されていることが好ましい。
本発明では、固定金具に鉤部を形成し、胴縁の係合片に係合しているので、胴縁の係合片を鉤部に係合させて胴縁を容易に仮置きすることができ、施工性を向上できる。
【符号の説明】
【0039】
1…フェンス、1B…フェンス、3…柱、4…胴縁、5…縦格子、6…裏板、7…固定金具、31…取付面部、35…溝部、36…開口溝部、37…裏板保持溝部、38…ボルト配置溝部、41…本体部、42…固定片、44…係合片、51…リベット、61…第一雌ねじ部、62…第二雌ねじ部、65…第一ボルト、66…第二ボルト、71…挿通孔、72…鉤部、73…凸部、74…ガイド部、75…溝部、311…突出片部、312…第一区画片部、313…第二区画片部、721…第一片部、722…第二片部、723…第三片部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8