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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101242
(43)【公開日】2023-07-20
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/739 20060101AFI20230712BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20230712BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
H01L29/78 655F
H01L29/78 653C
H01L29/78 655D
H01L29/78 655B
H01L29/78 652P
H01L29/78 655G
H01L29/06 301V
H01L29/06 301G
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022001747
(22)【出願日】2022-01-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(74)【代理人】
【識別番号】100197538
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 功
(72)【発明者】
【氏名】下條 亮平
(57)【要約】
【課題】過電流に対する耐量向上を可能とする半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置は、半導体部と、前記半導体部の裏面上の第1電極と、表面上の第2電極と、前記半導体部と前記第2電極との間の制御電極と、を備える。前記半導体部は、第1導電形の第1層と、第3層と、第5層と、第2導電形の第2層と、第4層と、第6層と、第7層と、を含む。前記第1層は、前記第1および第2電極の間に設けられ、前記第2層は、前記第1層と前記第2電極との間に設けられる。前記第3層は、前記第2層と前記第2電極との間に設けられる。前記第4層、前記第5層は、前記第1層と前記第1電極との間に設けられ、前記第1電極に沿って並ぶ。前記第6層は、前記表面側において、前記第2層および前記第3層を囲み、前記第7層は、第1層と前記第1電極との間に設けられ、且つ、前記第4層、前記第5層から離間し、前記第6層の外縁よりも内側に位置する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性領域と、前記活性領域を囲む終端領域を有する半導体部と、
前記半導体部の裏面上に設けられた第1電極と、
前記半導体部の前記裏面とは反対側の表面上に設けられた第2電極と、
前記半導体部と前記第2電極との間に設けられた制御電極と、
を備え、
前記半導体部は、第1導電形の第1層と、第2導電形の第2層と、前記第1導電形の第3層と、前記第2導電形の第4層と、前記第1導電形の第5層と、前記第2導電形の第6層と、前記第2導電形の第7層と、を含み、
前記第1層は、前記第1電極と前記第2電極との間に設けられ、前記第2層は、前記第1層と前記第2電極との間に設けられ、前記第3層は、前記第2層と前記第2電極との間に設けられ、前記第4層および前記第5層は、前記第1層と前記第1電極との間に設けられ、前記第1電極に沿って並び、
前記第6層は、前記終端領域に設けられ、且つ、前記半導体部の前記表面側において、前記第2層および前記第3層を囲み、
前記第7層は、前記終端領域において、前記第1層と前記第1電極との間に設けられ、前記第4層および前記第5層から離間し、前記第4層および前記第5層を囲み、且つ、前記第6層よりも前記活性領域側に位置する、半導体装置。
【請求項2】
前記半導体部は、前記第1層と前記第4層との間、前記第1層と前記第5層との間および前記第1層と前記第7層との間に設けられ、前記第1層の第1導電形不純物よりも高濃度の第1導電形不純物を含む第1導電形の第8層をさらに含み、
前記第8層は、前記第4層と前記第7層との間および前記第5層と前記第7層との間に設けられる請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第5層の第1導電形不純物濃度は、前記第8層の前記第1導電形不純物の濃度よりも高い請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体部は、前記第4層と前記第7層との間および前記第5層と前記第7層との間に設けられた第2導電形の第9層をさらに含み、
前記第9層は、前記第4層の第2導電形不純物の濃度および前記第7層の第2導電形不純物の濃度よりも低濃度の第2導電形不純物を含む請求項1記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体部は、前記第7層よりも前記終端領域側に設けられ、且つ、前記第1層と前記第1電極との間に位置する第10層をさらに含み、
前記第10層は、前記第4層の前記第2導電形不純物の濃度および前記第7層の前記第2導電形不純物の濃度よりも低濃度の第2導電形不純物を含む請求項4記載の半導体装置。
【請求項6】
前記半導体部の前記裏面に平行な方向において、前記第4層から前記第7層に至る距離は、前記第7層の前記方向の幅よりも長い請求項1乃至5のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体部の前記裏面に平行な方向における前記第4層の最小幅は、前記第7層の前記幅よりも広い請求項6記載の半導体装置。
【請求項8】
前記半導体部は、前記表面から前記第1層中に至るトレンチを有し、
前記制御電極は、前記トレンチの内部に設けられ、前記半導体部から第1絶縁膜により電気的に絶縁され、前記第2電極から第2絶縁膜により電気的に絶縁され、
前記第1層および前記第2層は、前記第1絶縁膜を介して、前記制御電極に向き合い、
前記第3層は、前記第2層と前記第2電極との間において、前記第2絶縁膜に接するように設けられる請求項1乃至7のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第6層は、前記制御電極を囲む請求項8記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第7層は、前記第2層および前記第3層を囲む請求項1乃至9のいずれか1つに記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力制御用半導体装置には、オン状態における過電流に対する耐量が大きいことが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-103376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態は、過電流に対する耐量向上を可能とする半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る半導体装置は、半導体部と、第1電極と、第2電極と、制御電極と、を備える。前記第1電極は、前記半導体部の裏面上に設けられ、前記第2電極は、前記半導体部の前記裏面とは反対側の表面上に設けられる。前記制御電極は、前記半導体部と前記第2電極との間に設けられる。前記半導体部は、活性領域と、前記活性領域を囲む終端領域を有し、第1導電形の第1層と、第2導電形の第2層と、前記第1導電形の第3層と、前記第2導電形の第4層と、前記第1導電形の第5層と、前記第2導電形の第6層と、前記第2導電形の第7層と、を含む。前記第1層は、前記第1電極と前記第2電極との間に設けられ、前記第2層は、前記第1層と前記第2電極との間に設けられる。前記第3層は、前記第2層と前記第2電極との間に設けられる。前記第4層および前記第5層は、前記第1層と前記第1電極との間に設けられ、前記第1電極に沿って並ぶ。前記第6層は、前記終端領域に設けられ、且つ、前記半導体部の前記表面側において、前記第2層および前記第3層を囲む。前記第7層は、前記終端領域において、前記第1層と前記第1電極との間に設けられ、前記第4層および前記第5層から離間し、前記第4層および前記第5層を囲み、且つ、前記第6層よりも前記活性領域側に位置する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態に係る半導体装置を示す模式断面図である。
図2】実施形態に係る半導体装置を示す模式平面図である。
図3】実施形態に係る半導体装置の特性を示すグラフである。
図4】実施形態の変形例に係る半導体装置を示す模式図である。
図5】実施形態の別の変形例に係る半導体装置を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。図面中の同一部分には、同一番号を付してその詳しい説明は適宜省略し、異なる部分について説明する。なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
【0008】
さらに、各図中に示すX軸、Y軸およびZ軸を用いて各部分の配置および構成を説明する。X軸、Y軸、Z軸は、相互に直交し、それぞれX方向、Y方向、Z方向を表す。また、Z方向を上方、その反対方向を下方として説明する場合がある。
【0009】
図1は、実施形態に係る半導体装置1を示す模式断面図である。半導体装置1は、RCIGBT(Reverse Conducting Insulated Gate Bipolar Transistor)である。半導体装置1は、例えば、半導体部10と、コレクタ電極20と、エミッタ電極30と、ゲート電極40と、を備える。半導体部10は、例えば、シリコンである。
【0010】
コレクタ電極20(第1電極)は、半導体部10の裏面上に設けられる。エミッタ電極30(第2電極)は、半導体部10の裏面とは反対側の表面上に設けられる。ゲート電極40(制御電極)は、半導体部10とエミッタ電極30との間に設けられる。
【0011】
半導体部10は、表面側に設けられる複数のゲートトレンチGTを含む。ゲート電極40は、複数のゲートトレンチGTの内部にそれぞれ設けられる。ゲート電極40は、半導体部10からゲート絶縁膜43(第1絶縁膜)により電気的に絶縁される。また、ゲート電極40は、エミッタ電極30から層間絶縁膜45(第2絶縁膜)により電気的に絶縁される。
【0012】
半導体部10は、例えば、n形ベース層11と、p形ベース層13と、n形エミッタ層15と、p形エミッタ層16と、p形コレクタ層17と、n形カソード層19と、を含む。ここでは、第1導電形をn形、第2導電形をp形として説明する。
【0013】
n形ベース層11(第1層)は、コレクタ電極20とエミッタ電極30との間に延在する。n形ベース層11は、例えば、X方向およびY方向に延在し、半導体部10の全体に広がる。ゲートトレンチGTは、半導体部10の表面からn形ベース層11中に延在するように設けられる。ゲートトレンチGTと同様に、ゲート絶縁膜43を介してゲートトレンチGT内に設けられたゲート電極40も、半導体部10の表面側からn形ベース層11中に延在するように設けられる。
【0014】
p形ベース層13(第2層)は、n形ベース層11とエミッタ電極30との間に設けられる。p形ベース層13は、隣り合うゲート電極40の間に設けられる。p形ベース層13は、例えば、X方向において、ゲート絶縁膜43を介して、ゲート電極40に向き合うように設けられる。
【0015】
n形エミッタ層15(第3層)は、p形ベース層13とエミッタ電極30との間に設けられる。n形エミッタ層15は、ゲート絶縁膜43に接するように設けられる。n形エミッタ層15は、n形ベース層11のn形不純物よりも高濃度のn形不純物を含む。
【0016】
p形エミッタ層16は、p形ベース層13とエミッタ電極30との間において、n形エミッタ層15に並ぶように設けられる。p形エミッタ層16は、p形ベース層13のp形不純物よりも高濃度のp形不純物を含む。
【0017】
n形エミッタ層15およびp形エミッタ層16は、例えば、半導体部10の表面に沿って並ぶ。エミッタ電極30は、n形エミッタ層15およびp形エミッタ層16に接し、且つ、電気的に接続される。また、エミッタ電極30は、p形エミッタ層16を介して、p形ベース層13に電気的に接続される。
【0018】
p形コレクタ層17(第4層)は、n形ベース層11とコレクタ電極20との間に設けられる。p形コレクタ層17は、コレクタ電極20に接し、且つ、電気的に接続される。
【0019】
n形カソード層19(第5層)は、n形ベース層11とコレクタ電極20との間において、p形コレクタ層17に並ぶ。p形コレクタ層17およびn形カソード層19は、例えば、半導体部10の裏面に沿って交互に並ぶ。n形カソード層19は、コレクタ電極20に接し、且つ、電気的に接続される。
【0020】
半導体部10は、例えば、活性領域ARと、終端領域TRと、を有する。活性領域ARは、p形ベース層13、n形エミッタ層15、p形エミッタ層16、p形コレクタ層17およびn形カソード層19を含み、半導体装置1の動作時に電流の主経路となる領域である。半導体部10の表面に平行な平面視(X-Y平面)において、終端領域TRは、活性領域ARを囲む。
【0021】
半導体部10は、例えば、p形ガードリング層21と、p形アシスト層23と、n形バッファ層25をさらに含む。p形ガードリング層21およびp形アシスト層23は、終端領域TRに設けられる。
【0022】
p形ガードリング層21(第6層)は、半導体部10の表面側に設けられる。p形ガードリング層21は、活性領域ARと終端領域TRとの境界において、n形ベース層11上に設けられる。活性領域ARと終端領域TRとの境界は、例えば、X方向において最も終端領域TR側に位置するゲートトレンチGTが設けられた位置である。また、コレクタ電極20からエミッタ電極30に向かう方向、例えば、Z方向において、n形ベース層11とp形ガードリング層21との境界は、n形ベース層11とp形ベース層13との境界よりも下に位置する。
【0023】
p形アシスト層23(第7層)は、終端領域TRにおいて、n形ベース層11とコレクタ電極20との間に設けられる。p形アシスト層23は、コレクタ電極20に接し、且つ、電気的に接続される。また、p形アシスト層23は、p形ガードリング層21とコレクタ電極20との間に位置する。p形アシスト層23のp形不純物濃度は、例えば、p形コレクタ層17のp形不純物濃度と同レベルである。
【0024】
p形アシスト層23は、p形コレクタ層17から離間して設けられる。p形アシスト層23からp形コレクタ層17までのX方向における距離d1は、p形アシスト層23のX方向の幅d2よりも長い。また、p形アシスト層23の幅d2は、p形コレクタ層17の最小幅、例えば、X方向の幅d3よりも狭い。
【0025】
n形バッファ層25(第8層)は、活性領域ARおよび終端領域TRに延在する。n形バッファ層25(第8層)は、n形ベース層11とp形コレクタ層17との間に設けられる。n形バッファ層25は、n形ベース層11とn形カソード層19との間およびn形ベース層11とp形アシスト層23との間に延在する。n形バッファ層25は、終端領域TRにおいて、n形ベース層11とコレクタ電極20との間に設けられ、コレクタ電極20に接する。また、n形バッファ層25は、相互に離間したp形コレクタ層17とp形アシスト層23との間に延在する。
【0026】
図2(a)および(b)は、実施形態に係る半導体装置1を示す模式平面図である。図2(a)は、半導体部10の表面を示す平面図である。図2(b)は、半導体部10の裏面を示す平面図である。なお、図2(a)では、n形ベース層13上のn形エミッタ層15およびp形エミッタ層16(図1参照)を省略している。
【0027】
図2(a)に示すように、複数のゲート電極40が設けられる。ゲート電極40は、それぞれ、半導体部10の表面に沿って、Y方向に延在する。複数のゲート電極40は、例えば、X方向に並ぶ。隣り合うゲート電極40の間には、p形ベース層13がそれぞれ設けられる。
【0028】
p形ガードリング層21は、p形ベース層13を囲むように設けられる。また、p形ガードリング層21は、p形べース層13につながるように設けられる。なお、p形ベース層13およびp形ガードリング層21は、一体に設けられても良い。p形ガードリング層21は、図示しないn形エミッタ層15およびp形エミッタ層16も囲む。
【0029】
p形アシスト層23は、p形ベース層13を囲むように設けられる。p形アシスト層23は、図示しないn形エミッタ層15およびp形エミッタ層16を囲むように設けられる。
【0030】
図2(b)に示すように、p形コレクタ層17およびn形カソード層19は、それぞれ、半導体部10の裏面に沿って、例えば、Y方向に延在する。p形コレクタ層17およびn形カソード層19は、例えば、X方向に交互に並ぶ。
【0031】
p形アシスト層23は、p形コレクタ層17およびn形カソード層19を囲むように設けられる。p形アシスト層23は、p形ガードリング層21の外縁21eの内側に位置する。また、p形アシスト層23は、p形コレクタ層17およびn形カソード層19から離間して設けられる。Y方向において、p形コレクタ層17からp形アシスト層23に至る距離d1は、例えば、X方向におけるp形コレクタ層17とp形アシスト層23との間の離間距離d1と同じである。また、Y方向において、n形カソード層19からp形アシスト層23に至る距離d1は、p形コレクタ層17とp形アシスト層23との間の離間距離d1と同じである。
【0032】
p形アシスト層23とp形コレクタ層17との間およびp形アシスト層23とn形カソード層19との間には、例えば、n形バッファ層25が延在する。n形バッファ層25は、p形コレクタ層17とp形アシスト層23との間において、コレクタ電極20に接する。n形バッファ層25は、p形アシスト層23の外側にも設けられる。
【0033】
半導体装置1では、終端領域TRに、p形アシスト層23を設けることにより、過電流に対する耐量を向上させることができる。すなわち、p形アシスト層23は、オン状態において大電流が流れるような場合、例えば、短絡時において、n形ベース層11に正孔を注入し、n形ベース層11内の電界の上昇を抑制する。これにより、半導体装置1の短絡耐量を向上させることができる。
【0034】
半導体装置1が、例えば、定格電流以下で動作する場合、コレクタ電極20とエミッタ電極30との間に、コレクタ電流が流れる。この時、p形ベース層13とゲート絶縁膜43との間に誘起される反転層を介して、n形ベース層11中に電子が注入され、これに応じて、p形コレクタ層17からn形ベース層11中に正孔が注入される。定格電流以下の動作では、n形ベース層11中の電子と正孔とがバランスし、p形ベース層13とp形コレクタ層17との間の電位差は、終端領域TRのp形アシスト層23からn形ベース層11中に正孔が注入されるほど高くはならない。
【0035】
一方、短絡電流のような大電流がコレクタ電極20とエミッタ電極30との間に流れると、p形ベース層13とゲート絶縁膜43との間の反転層を介してn形ベース層11に注入される電子が過剰となり、n形ベース層11中のチャージバランスを維持できなくなる。このため、p形ベース層13とp形コレクタ層17との間の電位差が上昇し、p形アシスト層23からn形ベース層11へ正孔が注入されるようになる。これにより、n形ベース層11中のチャージのアンバランスが抑制され、p形ベース層13とp形コレクタ層17との間の電位差のさらなる上昇を回避できる。
【0036】
例えば、p形アシスト層23を設けない場合、n形ベース層11中のチャージのアンバランスによりp形ベース層13とp形コレクタ層17との間の電位差が上昇する。活性領域ARでは、p形コレクタ層17からの正孔注入によりチャージアンバランスが是正され、この電位差が解消されるが、終端領域TRには、p形コレクタ層17が設けられないため、正孔注入によるチャージアンバランスの是正は生じない。このため、活性領域ARと終端領域TRとの境界に生じた電位差は解消されず、n形ベース層11の空乏化されない領域で発生する拡散電流が活性領域ARと終端領域TRとの境界に集中して流れ、半導体装置1の短絡破壊に至る場合がある。
【0037】
半導体装置1では、p形アシスト層23を設けることにより、終端領域TRにおいても正孔注入が生じ、短絡耐量を向上させることができる。しかしながら、終端領域TRの全体にp形アシスト層23を延在させると、p形ガードリング層21の外縁21eにおける降伏電圧が低下する。すなわち、ターンオフ時におけるアバランシェ耐量が低下する。このため、p形アシスト層23は、半導体部10の裏面に平行な平面視において、p形ガードリング層21の外縁21eの内側に位置することが好ましい(図2(b)参照)。すなわち、X方向(あるいはY方向)において、p形アシスト層23は、p形ガードリング層21の外縁21eよりも活性領域AR側に位置することが好ましい。
【0038】
図3は、実施形態に係る半導体装置1の特性を示すグラフである。図3は、p形アシスト層23からn形ベース層11への正孔注入が開始されるコレクタ電流Iceと、p形アシスト層23の幅d2と、の関係を示すグラフである。横軸は、p形アシスト層23の幅d2である。縦軸は、コレクタ電流Iceである。
【0039】
p形アシスト層23の幅d2が狭くなると、n形ベース層11への正孔の注入量が少なくなり、p形アシスト層23を設けない場合の特性に近づく。一方、p形アシスト層23の幅が広くなると、定格電流以下の動作状態においても、p形アシスト層23からn形ベース層11へ無視できない量の正孔が注入される。これにより、ターンオフ時のスイッチング損失が大きくなる。すなわち、p形アシスト層23を効果的に動作させるためには、幅d2は、一定の範囲にあることが好ましい。例えば、定格電流の2倍である150A以上で正孔注入を生じさせる場合、p形アシスト層23の幅d2は、25マイクロメートル以上、70マイクロメートル以下であることが好ましい。
【0040】
図4(a)および(b)は、実施形態の変形例に係る半導体装置2を示す模式図である。図4(a)は、断面図であり、図4(b)は、半導体部10の裏面を示す平面図である。
【0041】
図4(a)に示すように、半導体装置2では、p形コレクタ層17とp形アシスト層23との間に、p形低濃度層27(第9層)が設けられる。p形低濃度層27は、Z方向において、コレクタ電極20とn形バッファ層25との間に位置する。p形低濃度層27は、コレクタ電極20およびn形バッファ層25に接する。
【0042】
p形低濃度層27は、p形コレクタ層17のp形不純物の濃度およびp形アシスト層23のp形不純物の濃度よりも低濃度のp形不純物を含む。すなわち、p形低濃度層27からn形ベース層11への正孔注入は、p形コレクタ層17からn形ベース層11への正孔注入よりも低レベルである。
【0043】
図4(b)に示すように、p形低濃度層27は、p形コレクタ層17およびn形カソード層19を囲むように設けられる。p形低濃度層27のX方向およびY方向の幅d4は、例えば、p形アシスト層23のX方向およびY方向の幅d2よりも広い。また、p形低濃度層の幅d4は、p形コレクタ層17の最小幅、例えば、X方向の幅d3よりも狭い。
【0044】
図5は、実施形態の別の変形例に係る半導体装置3を示す模式断面図である。半導体装置3は、第2のp形低濃度層29(第10層)を有する。p形低濃度層29は、p形アシスト層23の外側において、例えば、終端領域TR(図1参照)の全体に設けられる。終端領域TRにおいて、p形低濃度層29は、コレクタ電極20とn形バッファ層25との間に設けられる。
【0045】
p形低濃度層29のp形不純物濃度は、p形コレクタ層17のp形不純物濃度およびp形アシスト層23のp形不純物濃度よりも低い。このため、半導体装置3では、p形ガードリング層21の外縁21eにおけるアバランシェ耐量を高くすることができる。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
1、2、3…半導体装置、 10…半導体部、 11…n形ベース層、 13…p形ベース層、 15…n形エミッタ層、 16…p形エミッタ層、 17…p形コレクタ層、 19…n形カソード層、 20…コレクタ電極、 21…p形ガードリング層、 21e…外縁、 23…p形アシスト層、 25…n形バッファ層、 27、29…p形低濃度層、 30…エミッタ電極、 40…ゲート電極、 43…ゲート絶縁膜、 45…層間絶縁膜、 AR…活性領域、 GT…ゲートトレンチ、 TR…終端領域
図1
図2
図3
図4
図5