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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010125
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】筒状ワークのめっき方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 17/08 20060101AFI20230113BHJP
   C25D 17/06 20060101ALI20230113BHJP
   C25D 21/12 20060101ALI20230113BHJP
   C25D 19/00 20060101ALI20230113BHJP
   C25D 7/04 20060101ALI20230113BHJP
   C25D 7/00 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
C25D17/08 F
C25D17/06 H
C25D17/08 R
C25D21/12 D
C25D19/00 A
C25D7/04
C25D7/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021114018
(22)【出願日】2021-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】内藤 丈晴
(72)【発明者】
【氏名】橋口 徹
(72)【発明者】
【氏名】小堀 裕美子
(72)【発明者】
【氏名】中村 瑛郁
(72)【発明者】
【氏名】本田 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】高橋 将哲
【テーマコード(参考)】
4K024
【Fターム(参考)】
4K024AA03
4K024AB06
4K024BA04
4K024BB10
4K024BC04
4K024CB02
4K024CB04
4K024DB10
4K024GA16
(57)【要約】
【課題】筒状ワーク内部のめっき析出量を低減する。
【解決手段】軸方向の両端が開口する筒状ワーク30を給電クリップ20に装着して循環されるめっき液に浸漬し、筒状ワーク30にめっきを施すめっき方法において、筒状ワーク30の給電クリップ20への装着は給電クリップ20を筒状ワーク30の開口の一方から内部に挿入して行う。給電クリップ20は折り曲げられた金属板よりなり、筒状ワーク30の内面に弾性的に接触して筒状ワーク30を保持すると共に筒状ワーク30に給電することのできる複数の弾性接触片21,22と、筒状ワーク30の内部に位置してめっき液の前記軸方向の流れを抑制する抑制部24とを備える。抑制部24によって筒状ワーク30の内部のめっき液の流れを抑制しながら筒状ワーク30にめっきを施す。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向の両端が開口する筒状ワークを給電クリップに装着して循環されるめっき液に浸漬し、前記筒状ワークにめっきを施す筒状ワークのめっき方法であって、
前記筒状ワークの前記給電クリップへの装着は、前記給電クリップを前記筒状ワークの前記開口の一方から内部に挿入して行われ、
前記給電クリップは、折り曲げられた金属板よりなり、前記筒状ワークの内面に弾性的に接触して前記筒状ワークを保持すると共に前記筒状ワークに給電することのできる複数の弾性接触片と、前記筒状ワークの内部に位置して前記めっき液の前記軸方向の流れを抑制する抑制部とを備え、
前記抑制部によって前記筒状ワークの内部の前記めっき液の流れを抑制しながら前記筒状ワークにめっきを施す工程を有することを特徴とする筒状ワークのめっき方法。
【請求項2】
請求項1に記載の筒状ワークのめっき方法において、
前記複数の弾性接触片は2つの弾性接触片とされ、
前記給電クリップはU字状に折り曲げられた形状を有し、U字の中間部によって前記抑制部が構成され、U字の両脚部によって前記2つの弾性接触片が構成されていることを特徴とする筒状ワークのめっき方法。
【請求項3】
請求項1に記載の筒状ワークのめっき方法において、
前記複数の弾性接触片は2つの弾性接触片とされ、
前記給電クリップはコ字状に折り曲げられた形状を有し、コ字の中間部によって前記抑制部が構成され、コ字の両脚部によって前記2つの弾性接触片が構成されていることを特徴とする筒状ワークのめっき方法。
【請求項4】
請求項1に記載の筒状ワークのめっき方法において、
前記抑制部は前記軸方向と交差する平板部とされ、前記複数の弾性接触片は前記平板部の一辺が折り曲げ延長された部分に設けられていることを特徴とする筒状ワークのめっき方法。
【請求項5】
請求項1から4までの何れかに記載の筒状ワークのめっき方法において、
前記抑制部は前記軸方向に見て前記開口の一方又は他方の面積の30%以上90%以下の面積を占める大きさとされていることを特徴とする筒状ワークのめっき方法。
【請求項6】
請求項1から5までの何れかに記載の筒状ワークのめっき方法において、
前記給電クリップが複数配列されたキャリアを用い、前記キャリアの前記給電クリップに前記筒状ワークを装着する装着工程と、前記給電クリップに前記筒状ワークが装着された前記キャリアを前記循環されるめっき液が収容されためっき槽を通過させるめっき工程と、めっきが施された前記筒状ワークを前記給電クリップから取り外す回収工程とを少なくとも前記キャリアが順次経験する連続めっきを行うことを特徴とする筒状ワークのめっき方法。
【請求項7】
請求項6に記載の筒状ワークのめっき方法において、
前記キャリアは閉じたループ状とされ、前記装着工程、前記めっき工程、前記回収工程及び前記キャリアに析出しためっきを除去するめっき除去工程を少なくとも前記キャリアが巡回して順次経験する連続めっきを行うことを特徴とする筒状ワークのめっき方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は筒状ワークのめっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図17及び18はめっき方法の従来例として特許文献1に記載されている構成及び動作を示したものであり、図17は浸漬保持具にワークが取り付けられた状態を示し、図18は浸漬保持具を所定の液槽に浸漬する動作を示す。
【0003】
ワークはこの例では袋状ワークであって図17及び18では袋状ワークの一例として袋ナット11が示されている。浸漬保持具12は昇降方向に長手状に延びる金属製の本体軸部13と、本体軸部13から枝状に所定の間隔で斜め上方を向くように連結された複数の支持竿部14とを備え、それら支持竿部14に1つずつ袋ナット11が装着される。本体軸部13には図17Bに示したように支持竿部14とほぼ平行に弾性押圧部15が固定され、これら支持竿部14と弾性押圧部15とに袋ナット11が差し込まれて、図17Aに示したようにツリー状に多数の袋ナット11が浸漬保持具12に保持される。そして、図18に示すように、この状態で電解めっきの所定の液槽16に浸漬され、所定の処理が終われば液槽16から浸漬保持具12が処理後の袋ナット11と共に引き上げられることとなる。
【0004】
なお、特許文献1では浸漬保持具12に袋状ワーク内部に閉じ込められた空気を外部に逃がす逃がし通路を設けるものとなっており、これにより袋状ワークの内面のめっきの効果、効率を高めることができるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-335993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、特許文献1に記載されている袋状ワークのめっき方法ではワーク内面のめっきも良好に行えるものとなっているが、ワークによってはワーク内面のめっきを特に必要としない場合があり、このような場合、ワーク内面のめっきの析出量を低減することができれば、その分、めっき材料を節約することができ、コストを削減することができる。
【0007】
この発明の目的はこのような点に鑑み、特に筒状ワークにおいて、ワーク内部のめっきの析出量を低減することができるめっき方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明によれば、軸方向の両端が開口する筒状ワークを給電クリップに装着して循環されるめっき液に浸漬し、筒状ワークにめっきを施す筒状ワークのめっき方法において、筒状ワークの給電クリップへの装着は給電クリップを筒状ワークの開口の一方から内部に挿入して行われ、給電クリップは折り曲げられた金属板よりなり、筒状ワークの内面に弾性的に接触して筒状ワークを保持すると共に筒状ワークに給電することのできる複数の弾性接触片と、筒状ワークの内部に位置してめっき液の前記軸方向の流れを抑制する抑制部とを備え、抑制部によって筒状ワークの内部のめっき液の流れを抑制しながら筒状ワークにめっきを施す工程を有することとする。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、筒状ワークの内部のめっき析出量を低減することができ、よってその分、めっき材料を節約することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】Aはこの発明による筒状ワークのめっき方法の一実施例で用いるキャリアを示す正面図、BはAに示したキャリアに筒状ワークが取り付けられた状態を示す正面図。
図2】Aは図1Aに示したキャリアにおける1つの給電クリップが位置する部分を拡大した斜視図、Bはその正面図、Cはその側面図。
図3】Aは図2Aに示した給電クリップの第1の例に筒状ワークが装着された状態を示す斜視図、Bはその正面図、CはBのD-D線断面図。
図4】Aはこの発明による筒状ワークのめっき方法の工程の一例を示す工程図、Bはこの発明による筒状ワークのめっき方法の工程の他の例を示す工程図。
図5】Aは図4A,Bに示した工程における「リールからキャリア繰出し」を示す模式図、Bは図4Bに示した工程における「ワーク付きキャリアをリールに巻取り」を示す模式図。
図6】この発明による筒状ワークのめっき方法の工程のさらに他の例を示す工程図。
図7】Aは給電クリップの第2の例を示す斜視図、Bはその正面図、Cはその側面図。
図8】Aは図7Aに示した給電クリップの第2の例に筒状ワークが装着された状態を示す斜視図、Bはその正面図、CはBのD-D線断面図。
図9】Aは給電クリップの第3の例を示す斜視図、Bはその正面図、Cはその側面図。
図10】Aは図9Aに示した給電クリップの第3の例に筒状ワークが装着された状態を示す斜視図、Bはその正面図、CはBのD-D線断面図。
図11】Aは給電クリップの第4の例を示す斜視図、Bはその正面図、Cはその側面図。
図12】Aは図11Aに示した給電クリップの第4の例に筒状ワークが装着された状態を示す斜視図、Bはその正面図、CはBのD-D線断面図。
図13】Aは給電クリップの第5の例を示す斜視図、Bはその正面図、Cはその側面図。
図14】Aは図13Aに示した給電クリップの第5の例に筒状ワークが装着された状態を示す斜視図、Bはその正面図、CはBのD-D線断面図。
図15】Aは給電クリップの第6の例を示す斜視図、Bはその正面図、Cはその側面図。
図16】Aは図15Aに示した給電クリップの第6の例に筒状ワークが装着された状態を示す斜視図、Bはその正面図、CはBのD-D線断面図。
図17】Aはめっき方法の従来例におけるワークの取付け状態を示す図、Bはそのワークの取付けを示す図。
図18図17Aに示した浸漬保持具を液槽に浸漬する動作を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明の実施形態を図面を参照して実施例により説明する。
【0012】
図1Aはこの発明による筒状ワークのめっき方法の一実施例で用いるキャリアを示したものであり、キャリア100は長尺であって図1Aではその一部のみを示している。キャリア100には筒状ワークを装着するための給電クリップ20が所定のピッチで一列に多数配列されて一体形成されており、このキャリア100は例えばステンレス板等の一枚の金属板を所定の形状に切断し、曲げ加工することによって形成されている。図1A中、101,102はそれぞれパイロット穴を示す。
【0013】
図2はキャリア100の、1つの給電クリップ20が位置する部分を部分拡大して示したものであり、給電クリップ20はこの例ではU字状に折り曲げられた形状を有し、U字の両脚部をなす部分がそれぞれ弾性接触片21,22として機能するものとなっている。これら2つの弾性接触片21,22には互いに外向きに突出するように曲げられてなる接触部21a,22aが形成されている。なお、U字の中間部をなす部分にはこの例では図2に示したように切欠き23が設けられており、このU字の中間部は後述するようにめっき液の流れを抑制する抑制部24として機能する。
【0014】
筒状ワークへのめっきはキャリア100の各給電クリップ20に筒状ワークを装着し、循環されるめっき液に浸漬することによって行われる。図1Bは筒状ワーク30が各給電クリップ20に装着された状態を示したものであり、この例では筒状ワーク30はコネクタの構成部品であるステンレス製のシェルとなっており、このシェルにNiめっきを施すものとなっている。
【0015】
筒状ワーク30の給電クリップ20への装着は、軸方向の両端が開口している筒状ワーク30の開口の一方から給電クリップ20を内部に挿入することによって行われる。これにより、給電クリップ20の2つの弾性接触片21,22は図3に示したように筒状ワーク30の内面の対向する2面に互いに外向きに開くように弾性的に接触して筒状ワーク30を保持すると共に筒状ワーク30に給電することができるものとなっている。なお、2つの弾性接触片21,22には接触部21a,22aが互いに外向きに突出して設けられているため、これら接触部21a,22aによって筒状ワーク30の内面との安定かつ良好な接触が可能となっている。
【0016】
キャリア100は駆動装置(図示せず)により所要の送り動作及び昇降動作が行われるもので、上記のように各給電クリップ20に筒状ワーク30を装着する装着工程と、給電クリップ20に装着された筒状ワーク30をめっき液が収容されためっき槽を通過させるめっき工程と、めっきが施された筒状ワーク30を給電クリップ20から取り外す回収工程とをキャリア100は少なくとも順次経験するものであって、このようなキャリア100を用いることにより、この例では筒状ワーク30の連続めっきを行えるものとなっている。
【0017】
めっき工程においてはキャリア100とめっき槽内に設けられた陽極に電源が接続され、陽極に正電圧を印加し、キャリア100に負電圧を印加することにより、めっきが行われる。筒状ワーク30は軸方向が例えば上下方向とされて、循環されるめっき液に浸漬される。ここで、筒状ワーク30の内部に挿入されている給電クリップ20の抑制部24は図3Bに示したように筒状ワーク30の内部に、空間をある程度塞ぐように位置するため、めっき液の軸方向の流れはこの抑制部24によって抑制される。これにより、この例では筒状ワーク30の内部のめっき析出量は低減する。
【0018】
このようにめっき工程では、筒状ワーク30の内部のめっき析出量を低減すべく、給電クリップ20の抑制部24によって筒状ワーク30の内部のめっき液の流れを抑制しながら筒状ワーク30にめっきを施すものとなっており、これにより、この例ではめっき材料を節約することができるものとなっている。
【0019】
なお、筒状ワーク30の内面のめっき析出量を低減でき、即ち内面がめっきされたとしても内面のめっき膜厚を薄くすることができるため、膜厚のばらつき量は膜厚が大の場合(厚い場合)に比べて小さくなり、つまりめっき後の各筒状ワーク30間の内部寸法のばらつきを小さくすることができる。これは例えば筒状ワーク30内に部品が挿入される後の組立工程等において組立作業を良好に行えることになる。
【0020】
給電クリップ20の抑制部24は、筒状ワーク30の軸方向に見て筒状ワーク30の開口の一方又は他方の面積の30%以上90%以下の面積を占める大きさとされる。
【0021】
筒状ワーク30を装着する前のキャリア100は例えばリールに巻かれた状態となっており、キャリア100をリールから繰出し、筒状ワーク30をキャリア100の各給電クリップ20に装着することによって所要のめっき工程が実行される。
【0022】
図4Aはこのような場合の工程を工程41~47で示したものであり、工程41~47は順にリールからキャリア繰出し、ワーク装着、脱脂、めっき、乾燥、ワーク回収、キャリアをリールに巻取りを行うものとなっている。この工程41~47はいわゆるリールtoリールめっきの工程となっている。なお、工程42のワーク装着や工程46のワーク回収には自動機を用いることも可能である。
【0023】
図4Aに示した工程ではワークを取り外したキャリアを最後の工程47でリールに巻取るものとなっているが、図4Bに示した工程41~45,48のようにワークを取り外すことなく、最後の工程48でワークが付いたままの状態でキャリアをリールに巻き取るといったことも行われる。このようにすれば、めっきが施された筒状ワーク30の、使用される製品への組込みを自動機で行う場合に適した形態となる。
【0024】
図5A図4A,Bにおける工程41のリールからキャリアが繰り出される様子を示したものであり、図中、200はリールを示す。また、図5B図4Bにおける工程48のワーク付きキャリアがリールに巻き取られる様子を示したものであり、図中、300はリールを示す。
【0025】
キャリア100は閉じたループ状とし、キャリア100が巡回して連続めっきを行うようにすることもできる。図6はこの場合の工程を工程42~46,49で順に示したものであり、この例では工程46のワーク回収の後、キャリアに析出しためっきの除去が工程49で行われ、この工程49の後、工程42に戻ってキャリアへのワーク装着が再び行われるものとなっている。キャリア100はこのように巡回して工程42~46,49を繰返し経験する。
【0026】
工程49におけるキャリア100に析出しためっきの除去は、例えばキャリア100を電解液に浸漬してめっきと逆の電気化学反応を起こさせることにより行うことができる。キャリア100から除去されためっき材料は再利用される。
【0027】
なお、前述したように給電クリップ20の抑制部24によって筒状ワーク30の内部のめっき析出量は低減するため、給電クリップ20にもめっきは付着しにくくなる。従って、例えば図4Aに示した工程においてもめっき材料を節約すべく、キャリア100に析出しためっきの回収作業が行われるが、めっきの析出量が少ないため、キャリア100からめっきを除去してめっき材料を回収する作業は例えば複数回のめっき工程を経た後、行うこともでき、この点で回収コストを削減することができる。
【0028】
キャリア100に設ける給電クリップの形状は図2に示した形状に限らず、他の形状を採用することもできる。図7,9,11,13及び15はそれぞれ給電クリップの他の形状例を示したものであり、図8,10,12,14及び16は図7,9,11,13及び15に示した給電クリップに筒状ワークが装着された状態をそれぞれ示したものである。
【0029】
図7に示した給電クリップ20’はコ字状に折り曲げられた形状を有するもので、図2に示した給電クリップ20と対応する部分には同一符号を付してある。この例では抑制部24をなすコ字の中間部には切欠きはなく、コ字の両脚部によって2つの弾性接触片21,22が構成されている。
【0030】
図9に示した給電クリップ50は抑制部51と2つの弾性接触片52,53とよりなるもので、抑制部51は筒状ワーク30’に挿入された際、筒状ワーク30’の軸方向と交差する平板部とされ、2つの弾性接触片52,53はその平板部の一辺が折り曲げ延長された部分に、筒状ワーク30’への挿入方向に向けて延伸されて形成されているものとされる。
【0031】
図11に示した給電クリップ50’は図9に示した給電クリップ50と同様、平板部よりなる抑制部51とその平板部の一辺が折り曲げ延長された部分に設けられた2つの弾性接触片52,53とを有するものとなっているが、この給電クリップ50’では2つの弾性接触片52,53は図11Aに示したように筒状ワークへの挿入方向に向けて延伸された後、互いに外側に曲げられ、抑制部51に向かって折り返された形状となっている。
【0032】
図13に示した給電クリップ20”は図2に示した給電クリップ20と同様、U字状に折り曲げられた形状を有し、U字の両脚部によって2つの弾性接触片21,22が構成されているが、一方の弾性接触片21はその先端(遊端)に至る部分が徐々に幅狭とされて台形状をなすものとされている。この台形状をなす部分は他方の弾性接触片22から遠ざかる方向に若干立ち上げられており(曲げ起こされており)、その先端に接触部21aが形成されている。
【0033】
他方の弾性接触片22には図2に示した給電クリップ20と同様、接触部22aが形成されているが、この給電クリップ20”では筒状ワーク30”に挿入された際、図14B,Cに示したように接触部21aと、接触部22aの幅方向両端のエッジ部22b,22cが筒状ワーク30”の内面に接触するものとなっている。なお、抑制部24には給電クリップ20と同様、切り欠き23が設けられている。
【0034】
図15に示した給電クリップ50”は図9に示した給電クリップ50と同様、平板部よりなる抑制部51と2つの弾性接触片52,53を有するものとなっており、さらにこの給電クリップ50”は3つ目の弾性接触片54を有するものとなっている。弾性接触片54は弾性接触片52と53の間に、弾性接触片52,53と同様に延伸されて形成されており、抑制部51の一辺が折り曲げ延長されてなる板部55の板面に対し、中間部が若干上方に位置するように折り曲げられた形状を有する。この中間部は接触部54aとして機能する。
【0035】
一方、弾性接触片52,53は板部55から図15に示したように斜め下方に延伸されて形成されており、先端には円弧状に曲げられてなる接触部52a,53aがそれぞれ形成されている。
【0036】
この給電クリップ50”は筒状ワーク30’に挿入された際、図16B,Cに示したように接触部52a,53a及び54aが筒状ワーク30’の内面に接触するものとなっている。
【0037】
以上、給電クリップの他の形状例について説明したが、これらいずれの給電クリップ20’,50,50’,20”,50”においてもそれぞれ図8,10,12,14及び16に示したように、筒状ワークの内面に複数の弾性接触片が弾性的に接触して筒状ワークを保持すると共に筒状ワークに給電することができるものとなっており、また抑制部が筒状ワークの内部に位置してめっき液の流れを抑制することができるものとなっている。
【符号の説明】
【0038】
11 袋ナット 12 浸漬保持具
13 本体軸部 14 支持竿部
15 弾性押圧部 16 液槽
20,20’,20” 給電クリップ 21,22 弾性接触片
21a,22a 接触部 22b,22c エッジ部
23 切欠き 24 抑制部
30,30’,30” 筒状ワーク 50,50’,50” 給電クリップ
51 抑制部 52,53,54 弾性接触片
52a,53a,54a 接触部 55 板部
100 キャリア 101,102 パイロット穴
200,300 リール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18