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特開2023-101255被処理水のシリカ濃度の測定方法及び被処理水のシリカ濃度の測定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101255
(43)【公開日】2023-07-20
(54)【発明の名称】被処理水のシリカ濃度の測定方法及び被処理水のシリカ濃度の測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/06 20060101AFI20230712BHJP
   G01N 33/18 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
G01N27/06 Z
G01N33/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022001776
(22)【出願日】2022-01-07
(71)【出願人】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大場 将純
【テーマコード(参考)】
2G060
【Fターム(参考)】
2G060AA06
2G060AC05
2G060AE17
2G060AE18
2G060AF08
2G060KA06
(57)【要約】
【課題】被処理水中のシリカの濃度を、簡易な手法で、簡易な装置を用いて測定可能な被処理水のシリカ濃度の測定方法及び被処理水のシリカ濃度の測定装置を提供する。
【解決手段】シリカを含有する被処理水にアルカリ剤としてアルカリ金属水酸化物を添加してアルカリ剤に含まれる水酸化物イオンとシリカとを反応させ、該反応により消費される水酸化物イオン濃度に相当する電気伝導率の低下分から、被処理水中のシリカ濃度を求めることを特徴とする被処理水のシリカ濃度の測定方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカを含有する被処理水にアルカリ剤としてアルカリ金属水酸化物を添加して前記アルカリ剤に含まれる水酸化物イオンと前記シリカとを反応させ、該反応により消費される水酸化物イオン濃度に相当する電気伝導率の低下分から、前記被処理水中のシリカ濃度を求めることを特徴とする被処理水のシリカ濃度の測定方法。
【請求項2】
前記シリカを含有する被処理水中のシリカ濃度を求めることが、
前記被処理水中のシリカ濃度をゼロと仮定した時の被処理水に対しpH値が9.0~12.0となるように前記アルカリ剤を添加した時の電気伝導率計算値EC2を求めることと、
前記シリカ濃度がゼロと仮定した時の被処理水に添加する前記アルカリ剤と同一注入率の前記アルカリ剤を、前記シリカを含有する被処理水に添加した時の電気伝導率測定値EC3を取得することと、
前記電気伝導率計算値EC2と前記電気伝導率測定値EC3との差分に、3.0~3.5の係数を乗じた値を、前記被処理水中のシリカ濃度として算出することと
を含むことを特徴とする請求項1に記載の被処理水のシリカ濃度の測定方法。
【請求項3】
前記シリカを含有する被処理水中のシリカ濃度を、以下の式(1)~(3)に基づいて、算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の被処理水のシリカ濃度の測定方法。
SiO2=3.24×(EC2-EC3) ・・・(1)
EC2=[Alk0×{4.73×10(6.35-pH0)+2.84}
+2.48×10(1.24+0.05×T)]/10+EC0 ・・・(2)
Base=Alk0×{1.95×10(6.35-pH0)+0.95}+5×10(0.25+0.05×T) ・・・(3)
(ここで、CSiO2は被処理水のシリカ濃度の算出値[mg/L asSiO2]、EC2は被処理水中のシリカ濃度をゼロと仮定した時の被処理水に対し、pH値が11.5となるように、アルカリ剤を添加した時の電気伝導率計算値[mS/m]、CBaseは被処理水中のシリカ濃度をゼロと仮定した時の被処理水のpHが11.5となるようにアルカリ剤を添加した時のアルカリ剤の注入率[mg/L asCaCO3]、EC3は被処理水に注入率CBaseでアルカリ剤を添加した時の電気伝導率測定値[mg/L asSiO2]、Alk0は被処理水のアルカリ度[mg/L asCaCO3]、pH0は被処理水のpH値[-]、EC0は被処理水にアルカリ剤を添加する前の電気伝導率測定値[mg/L asSiO2]、Tは被処理水の水温[℃]を示す。)
【請求項4】
前記被処理水のアルカリ度を、以下の式(4)に基づいて算出することを特徴とする請求項3に記載の被処理水のシリカ濃度の測定方法。
Alk0=(ECH+EC0-EC1)×1.27 ・・・(4)
(ここでECHは被処理水のpHが4.0以下となる酸注入率Cacidで酸を注入した時の電気伝導率を表す電気伝導率基準値[mS/m]、EC1は、被処理水に前記酸注入率Cacidで酸を注入した時の電気伝導率測定値[mS/m]、EC0は、被処理水の酸注入前の電気伝導率測定値[mS/m]を示す。)
【請求項5】
前記シリカを含有する被処理水に前記アルカリ剤を添加する前に、前記シリカを含有する被処理水中に含まれる硬度成分を除去することを含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の被処理水のシリカ濃度の測定方法。
【請求項6】
シリカを含む被処理水の水温Tを測定する水温測定部と、
前記被処理水のpH値を測定するpH測定部と、
前記被処理水にアルカリ金属水酸化物を含むアルカリ剤を注入するアルカリ剤注入部と、
前記アルカリ剤注入前の前記被処理水の電気伝導率測定値EC0を取得する第1電気伝導率測定部と、
前記アルカリ剤注入後の前記被処理水の電気伝導率測定値EC3を取得する第2電気伝導率測定部と、
前記被処理水に酸を注入する酸注入部と、
前記酸注入後の前記被処理水の電気伝導率測定値EC1を取得する第3電気伝導率測定部と、
前記アルカリ剤及び前記酸の注入率を制御する制御部と、
前記アルカリ剤注入後の前記被処理水の電気伝導率測定値EC3と、前記アルカリ剤注入前の前記被処理水の電気伝導率測定値EC0と、前記被処理水の水温及びpHと、前記被処理水のアルカリ度Alk0とに基づいて、前記アルカリ剤に含まれる水酸化物イオンと前記被処理水中のシリカとの反応により消費される水酸化物イオン濃度に相当する電気伝導率の低下分から、前記被処理水中のシリカ濃度を求めるシリカ濃度算出部と
を備えることを特徴とする被処理水のシリカ濃度の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理水のシリカ濃度の測定方法及び被処理水のシリカ濃度の測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水中のシリカは濃度が溶解度以上になると薬品洗浄による除去が困難なスケール付着が生じ、設備やその目的とする性能に深刻な問題を引き起こすことが知られている。具体的には、クーリングタワーやボイラ水等の循環水における熱伝導性の低下、逆浸透膜(RO)処理におけるRO膜処理水流量の低下の問題等が挙げられる。これらの問題が生じると、設備の更新やRO膜の交換が必要となる。そのため、循環水や濃縮水中のシリカ濃度は、溶解度以下とするか、防止剤の適切な注入を行うこと等により、シリカスケールが生じないように管理することが求められている。
【0003】
被処理水中のシリカ濃度を測定する方法は、日本工業規格(JIS K0101 1998 44.シリカ)及び上水試験法(以下公定法)において、モリブデン吸光光度法及びICP発光光度分析法を用いることが定められている。モリブデン吸光光度法は、モリブデン酸イオンを含む試薬との反応により発色させて吸光度からシリカ濃度を求める方法である。ICP発光光度分析法は、霧状にした試料を高温のプラズマ中で励起させ、励起された水中のシリカ成分であるSi(ケイ素)原子が低いエネルギー状態に遷移する際に生じる発光を測定して分析する方法である。
【0004】
ICP発光光度分析法は、シリカのみならず、他元素を比較的低濃度から高濃度まで同時に分析できる優れた分析方法である。一方、ICP発光光度分析装置は、吸光光度計などの他の機器分析装置と比べて大型であり、かつ分析時に排ガスが発生するため排出設備等の付帯設備が必要となる。また、装置も高額であり、試料の採取や分析操作に少なからず手作業が生じる。そのため、シリカ濃度の簡易測定及び定期的な管理を目的とした分析方法としては、費用対効果が得られ難い。
【0005】
モリブデン酸イオンを利用した公定法では、定量範囲が2~20mg/L as SiO2(JIS K0101 1998)である。そのため、被処理水の濃度が高い場合は、希釈操作や濃度範囲に応じた測定波長の変更等の分析条件の再設定が必要になる。この問題に対し、特許第4894003号公報(特許文献1)には、モリブデン酸イオンを利用したサンプルのシリカ濃度測定方法において、サンプルの低濃度、高濃度に対応した測定波長の切り替えや、希釈水の注入等の対策を行うことにより定量範囲を広くする方法が開示されている。しかしながら、特許文献1では、低濃度、高濃度の切り替え判断装置および希釈装置が必要となり、装置が複雑化する。
【0006】
モリブデン酸イオンを利用した公定法における発色試薬であるモリブデン酸イオン含有溶液は、保存期間と共に結晶が析出し、発色強度が低下するため、保存期間は1ヶ月程度と短く、自動化への弊害となっている。この問題に対し、特許第5397187号公報(特許文献2)では、発色試薬をアルカリ性pH8~10にして9ヶ月保存可能にする方法が提案されている。特許第5169809号公報(特許文献3)では、試薬を酸性pH1.1~1.6にして4ヶ月保存可能にする方法が開示されている。しかしながら、特許文献2及び3においても、pH調整を含む発色試薬の調製作業が煩雑であることと、所定の保存期間以降残留している試薬は破棄しなければならず、試薬の継ぎ足しもできないという問題がある。また、分析廃液の無害化処理等の処理も煩雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4894003号公報
【特許文献2】特許第5397187号公報
【特許文献3】特許第5169809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、従来のICP発光光度分析法及びモリブデン吸光光度法を用いたシリカ濃度の測定方法では、被処理水中のシリカ濃度を簡易的に測定したい場合には対費用効果、処理の複雑性及び装置の大型化等の点から、必ずしも有用とはいえない場合がある。
【0009】
例えば、シリカ濃度の簡易測定及び定期的な管理を目的とした分析方法としては、費用対効果の面等からモリブデン酸イオンを利用したモリブデン吸光光度法を用いる方が現実的と考えられる。しかしながら、モリブデン酸イオンを利用した公定法は吸光光度法であるため、検量線の作成が必須であり、発色試薬の調製時を含め定期的な検量線の校正が必要となる。その結果、煩雑なメンテナンス作業が発生する。また、モリブデン吸光光度法では、分析後に洗浄廃液を含む発色廃液が発生するため、廃水処理設備で処理するか、若しくは産業廃棄物処理が必要になる。
【0010】
上記課題に鑑み、本発明は、被処理水中のシリカの濃度を、従来の公定法よりも簡易な手法で、簡易な装置を用いて測定することが可能な被処理水のシリカ濃度の測定方法及び被処理水のシリカ濃度の測定装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明者らが鋭意検討したところ、測定対象となるシリカを含有する被処理水に対しアルカリ剤を注入し、アルカリ剤と被処理水中のシリカとの反応による被処理水の導電率の変化を測定することが有用であるとの知見を得た。
【0012】
以上の知見を基礎として完成した本発明の実施の形態は一側面において、シリカを含有する被処理水にアルカリ剤としてアルカリ金属水酸化物を添加してアルカリ剤に含まれる水酸化物イオンとシリカとを反応させ、該反応により消費される水酸化物イオン濃度に相当する電気伝導率の低下分から、被処理水中のシリカ濃度を求めることを特徴とする被処理水のシリカ濃度の測定方法である。
【0013】
本発明の実施の形態に係る被処理水のシリカ濃度の測定方法は、一実施態様において、シリカを含有する被処理水中のシリカ濃度を求めることが、被処理水中のシリカ濃度をゼロと仮定した時の被処理水に対しpH値が9.0~12.0となるようにアルカリ剤を添加した時の電気伝導率計算値EC2を求めることと、シリカ濃度がゼロと仮定した時の被処理水に添加するアルカリ剤と同一注入率のアルカリ剤を、シリカを含有する被処理水に添加した時の電気伝導率測定値EC3を取得することと、電気伝導率計算値EC2と電気伝導率測定値EC3との差分に、3.0~3.5の係数を乗じた値を、被処理水中のシリカ濃度として算出することとを含む。
【0014】
本発明の実施の形態に係る被処理水のシリカ濃度の測定方法は別の一実施態様において、シリカを含有する被処理水中のシリカ濃度を、以下の式(1)~(3)に基づいて、算出する。
SiO2=3.24×(EC2-EC3) ・・・(1)
EC2=[Alk0×{4.73×10(6.35-pH0)+2.84}
+2.48×10(1.24+0.05×T)]/10+EC0 ・・・(2)
Base=Alk0×{1.95×10(6.35-pH0)+0.95}+5×10(0.25+0.05×T) ・・・(3)
(ここで、CSiO2は被処理水のシリカ濃度の算出値[mg/L asSiO2]、EC2は被処理水中のシリカ濃度をゼロと仮定した時の被処理水に対し、pH値が11.5となるように、アルカリ剤を添加した時の電気伝導率計算値[mS/m]、CBaseは被処理水中のシリカ濃度をゼロと仮定した時の被処理水のpHが11.5となるようにアルカリ剤を添加した時のアルカリ剤の注入率[mg/L asCaCO3]、EC3は被処理水に注入率CBaseでアルカリ剤を添加した時の電気伝導率測定値[mg/L asSiO2]、Alk0は被処理水のアルカリ度[mg/L asCaCO3]、pH0は被処理水のpH値[-]、EC0は被処理水にアルカリ剤を添加する前の電気伝導率測定値[mg/L asSiO2]、Tは被処理水の水温[℃]を示す。)
【0015】
本発明の実施の形態に係る被処理水のシリカ濃度の測定方法は更に別の一実施態様において、被処理水のアルカリ度を、以下の式(4)に基づいて算出する。
Alk0=(ECH+EC0-EC1)×1.27 ・・・(4)
(ここでECHは被処理水のpHが4.0以下となる酸注入率Cacidで酸を注入した時の電気伝導率を表す電気伝導率基準値[mS/m]、EC1は、被処理水に酸注入率Cacidで酸を注入した時の電気伝導率測定値[mS/m]、EC0は、被処理水の酸注入前の電気伝導率測定値[mS/m]を示す。)
【0016】
本発明の実施の形態に係る被処理水のシリカ濃度の測定方法は更に別の一実施態様において、シリカを含有する被処理水にアルカリ剤を添加する前に、シリカを含有する被処理水中に含まれる硬度成分を除去することを含む。
【0017】
本発明の実施の形態は別の一側面において、シリカを含む被処理水の水温Tを測定する水温測定部と、被処理水のpH値を測定するpH測定部と、被処理水にアルカリ金属水酸化物を含むアルカリ剤を注入するアルカリ剤注入部と、アルカリ剤注入前の被処理水の電気伝導率測定値EC0を取得する第1電気伝導率測定部と、アルカリ剤注入後の被処理水の電気伝導率測定値EC3を取得する第2電気伝導率測定部と、被処理水に酸を注入する酸注入部と、酸注入後の被処理水の電気伝導率測定値EC1を取得する第3電気伝導率測定部と、アルカリ剤及び酸の注入率を制御する制御部と、アルカリ剤注入後の被処理水の電気伝導率測定値EC3と、アルカリ剤注入前の被処理水の電気伝導率測定値EC0と、被処理水の水温及びpHと、被処理水のアルカリ度Alk0とに基づいて、アルカリ剤に含まれる水酸化物イオンと被処理水中のシリカとの反応により消費される水酸化物イオン濃度に相当する電気伝導率の低下分から、被処理水中のシリカ濃度を求めるシリカ濃度算出部とを備える被処理水のシリカ濃度の測定装置である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、被処理水中のシリカの濃度を、従来の公定法よりも簡易な手法で、簡易な装置を用いて測定することが可能な被処理水のシリカ濃度の測定方法及び被処理水のシリカ濃度の測定装置が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態に係る被処理水のシリカ濃度の測定方法の一例を表す概略図である。
図2】本発明の実施の形態に係る被処理水のシリカ濃度の測定装置の一例を表す概略図である。
図3】本発明の実施の形態に係る被処理水のシリカ濃度の測定装置の変形例を表す概略図である。
図4】本発明の実施の形態に係る被処理水のシリカ濃度の測定装置の別の変形例を表す概略図である。
図5】本実施例に係る被処理水のシリカ濃度の測定方法を用いた場合の分析値と、公定法であるモリブデン吸光光度法で測定した場合の両者の相関性を表すグラフである。
図6】本実施例に係る被処理水のシリカ濃度の測定方法を用いた場合の分析値と、公定法であるICP発光光度分析法で測定した場合の両者の相関性を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載においては、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。なお、以下に示す実施の形態はこの発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであってこの発明の技術的思想は、構成要素の構造、配置等を下記のものに特定するものではない。
【0021】
(シリカ濃度の測定方法)
本発明の実施の形態に係る被処理水のシリカ濃度の測定方法は、シリカを含有する被処理水にアルカリ剤としてアルカリ金属水酸化物を添加して、アルカリ剤に含まれる水酸化物イオンとシリカとを反応させ、反応により消費される水酸化物イオン濃度に相当する電気伝導率の低下分から、被処理水中のシリカ濃度を求める工程を含む。
【0022】
測定対象とする被処理水としては、シリカ(SiO2)を含有する被処理水であり、例えば、処理装置内にシリカスケールを発生させるおそれのあるシリカを含有する水が挙げられる。具体的には、例えば、クーリングタワー、ボイラ水等の循環水、RO処理に供される被処理水、イオン交換樹脂等に通水される被処理水等が利用できる。このような被処理水は、典型的には、シリカを5~500mg/L asSiO2程度、より典型的には10~100mg/L asSiO2程度含む。
【0023】
アルカリ剤としては、アルカリ金属水酸化物が用いられる。アルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)等が挙げられ、典型的にはNaOHが好適に用いられる。被処理水にアルカリ剤を加えて被処理水中のシリカを溶解させ、溶解したシリカと水酸化物イオンとを反応させることにより、水酸化物イオンが消費され、被処理水中の導電率が低下する。この導電率の変化を測定することで、被処理水中のシリカ濃度を推定することができる。
【0024】
被処理水中のシリカは温度を高くするほど溶解度が大きくなり、pHを高くすると溶解度が大きくなるが、pH1~8では溶解度はさほど変わらずpH9以上のアルカリ溶液とすると、溶解度が急激に大きくなる。導電率の変化をより測定しやすくするためには、被処理水中に対するアルカリ剤の注入率を、被処理水のpH9以上とするように調整することが好ましく、より好ましくはpH10以上、更に好ましくはpH11以上である。一方、pHを高くしすぎるとアルカリ剤の注入量が多くなるため測定に必要な薬液量が増大する。また、アルカリ剤注入後の導電率の値が高くなりすぎてシリカ濃度を正確に評価しにくくなるおそれもある。被処理水中に対するアルカリ剤の注入率は、被処理水のpHが12以下となるように調整することが好ましく、より典型的には被処理水のpH値が11.5となるように調整することが好ましい。
【0025】
図1に、シリカを含有する被処理水のシリカ濃度を簡易的に測定するための測定方法の一例を示す。シリカを含有する被処理水のシリカ濃度を簡易的に測定する方法としては、例えば、図1に示すように、被処理水のアルカリ度を測定するためのアルカリ度測定ラインと、被処理水のシリカ濃度を測定するシリカ濃度測定ラインとを設ける。そして、アルカリ度測定ラインとシリカ濃度測定ラインとに被処理水を通水させ、酸又はアルカリ剤を加えることにより、被処理水のアルカリ度とシリカ濃度をそれぞれ測定することが好ましい。
【0026】
具体的には、まず、測定対象とする被処理水を採取し、被処理水の水温T及びpH値pH0と電気伝導率測定値EC0を取得する。次に、被処理水のシリカ濃度がゼロである場合の導電率の基準値を決定する。ここでは、被処理水中のシリカ濃度をゼロと仮定した時の被処理水に対し、pH値が9.0~12.0の間で設定した任意のpH値となるように、アルカリ剤を添加した時の電気伝導率計算値EC2を算出する。電気伝導率計算値EC2の算出方法の具体例は後述する。
【0027】
次に、シリカ濃度がゼロと仮定した時の被処理水に添加するアルカリ剤と同一注入率のアルカリ剤を、測定対象とするシリカを含有する被処理水に添加した時の電気伝導率測定値EC3を取得する。次に、電気伝導率計算値EC2と電気伝導率測定値EC3との差分に、3.0~3.5の係数を乗じた値を、被処理水中のシリカ濃度として求める。
【0028】
更に具体的には、以下の式(1)~(3)に基づいて、被処理水中のシリカ濃度CSiO2、電気伝導率計算値EC2、アルカリ剤の注入率CBaseを算出することが好ましい。
SiO2=3.24×(EC2-EC3) ・・・(1)
EC2=[Alk0×{4.73×10(6.35-pH0)+2.84}
+2.48×10(1.24+0.05×T)]/10+EC0 ・・・(2)
Base=Alk0×{1.95×10(6.35-pH0)+0.95}+5×10(0.25+0.05×T) ・・・(3)
ここで、CSiO2は被処理水のシリカ濃度[mg/L asSiO2]、EC2は被処理水中のシリカ濃度をゼロと仮定した時の被処理水に対し、pH値が11.5となるように、アルカリ剤を添加した時の電気伝導率計算値[mS/m]、CBaseは被処理水中のシリカ濃度をゼロと仮定した時の被処理水のpHが11.5となるようにアルカリ剤を添加した時のアルカリ剤の注入率[mg/L asCaCO3]、EC3は被処理水に注入率CBaseでアルカリ剤を添加した時の電気伝導率測定値[mg/L asSiO2]、Alk0は被処理水のアルカリ度[mg/L asCaCO3]、pH0は被処理水のpH値[-]、EC0は被処理水にアルカリ剤を添加する前の電気伝導率測定値[mg/L asSiO2]、Tは被処理水の水温[℃]を示す。
【0029】
<アルカリ剤の注入率CBase
式(3)で示されるアルカリ剤の注入率CBaseは、被処理水中に通常含まれるアルカリ度(重炭酸イオンHCO3-)によって、添加されるアルカリ剤の水酸化物イオンが消費され、所定のpH値より低くなるため、アルカリ度によるpH低下分を補正した計算式とする必要がある。具体的には、以下の考え方に基づいて算出される。
【0030】
被処理水中のシリカ濃度をゼロと仮定した時の被処理水のpHが例えば11.5となるようにアルカリ剤を添加した時のアルカリ剤の注入率について、以下の事項(a)~(c):
(a)CO2→HCO3 -の反応に必要な分(pH8.3までの注入分)
(b)全HCO3 -(pH8.3の時)の93.66%がCO3 2-となるため必要分
(c)pH11.5となるため必要な分
を考慮する必要がある。
【0031】
各(a)~(c)については、具体的には以下のように求められる。
(a)pH0=pKa+log([HCO3 -]0/[CO2]0
ここで[HCO3 -]≒[Alk]0とすると、
[CO2]0=[HCO3 -]0×10(6.35-pH0) ・・・(a1)
(b)[HCO3 -]T=[HCO3 -]0+[CO2]0
ここで[CO3 2-]≒0と近似して、
[HCO3 -]T=[HCO3 -]0+[HCO3 -]0×10(6.35-pH0)
=[HCO3 -]0×{1+10(6.35-pH0)}×0.9366 ・・・(b1)
(c)[OH-]=Kw/[H+]、[H+]=10-11.5
Kwの温度依存性を考慮すると回帰式pKw=15.25-0.049×Tから、Kw=10(0.049×T-15.25)となる。
よって、[OH-]=10(0.05×T-15.25)/10-11.5
=10(0.05×T-3.75)[mol/L]
=10(0.05×T-3.75)×50×103[mg/L asCaCO3
=10(0.25+0.05×T) ・・・(c1)
アルカリ剤(NaOH)注入率は(a1)+(b1)+(c1)より、
NaOH=[Alk]0×10(6.35-pH0)+[Alk]0
×{1+10(6.35-pH0)}×0.9366+5×10(0.25+0.05×T)
=[Alk]0×{1.9366×10(6.35-pH0)+0.9366}
+5×10(0.25+0.05×T)
これをエクセルシミュレーションとのフィッティングにより数値をまるめると、
Base=Alk0×{1.95×10(6.35-pH0)+0.95}
+5×10(0.25+0.05×T)[mg/L asCaCO3] ・・・(3)
となる。
【0032】
<電気伝導率計算値EC2
式(2)で表される電気伝導率計算値EC2は、添加したアルカリ剤分の電気伝導率の上昇分とアルカリ度によって消費されるアルカリ剤の電気伝導率の低下分およびアルカリ度のHCO3 -の電気伝導率低下分、CO3 2-の電気伝導率上昇分を加減せしめた計算式であり、具体的には以下の考え方に基づいて算出される。
【0033】
被処理水中のシリカ濃度をゼロと仮定した時の被処理水に対し、pH値が11.5となるように、アルカリ剤を添加した時の電気伝導率計算値EC2は、以下の事項:
(d)[HCO3 -]分(注入前)
(e)[HCO3 -]+[CO3 2-]分(注入後)
(f)[OH-](pH11.5)分
(g)[Na+](NaOH注入増加分)
を考慮する必要がある。
【0034】
上記(d)、(e)、(f)、(g)の各濃度に極限モル伝導率を乗じて各々の電気伝導率を算出することにより、電気伝導率計算値EC2は{(e)+(f)+(g)}-(d)にアルカリ剤注入前の被処理水の電気伝導率測定値EC0を加算して求めればよい。
【0035】
ここで、
(d):[HCO3 -]T×0.089=[Alk]0×0.089[mS/m]
(0.089:極限モル伝導率)
(e)全ICの95%がCO3 2-として
→[Alk]0×{1+10(6.35-pH0)}×0.95×0.288
(0.288:極限モル伝導率)
全ICの5%がHCO3 -として
→[Alk]0×{1+10(6.35-pH0)}×0.05×0.289
(0.289:極限モル伝導率)
となるため、
[Alk]0×{1+10(6.35-pH0)}×0.278[mS/m]
(f)5×10(0.25+0.05×T)×0.397
(0.397:極限モル伝導率)
(g)CNaOH×0.1003[mS/m]
(0.1003:極限モル伝導率)
となるから、
EC2=[[Alk]0×{4.73×10(6.35-pH0)+2.84}+2.48×10(1.24+0.05×T)]/10+EC0[mS/m] ・・・(2)
となる。
【0036】
<被処理水のシリカ濃度CSiO2
式(1)で表される被処理水中のシリカ濃度CSiO2は、電気伝導率計算値EC2と電気伝導率測定値EC3との差分に、所定の係数を乗じる。被処理水をpH11.5となるようにアルカリ剤を注入して被処理水中のシリカ濃度を算出する場合は係数として3.24を採用することにより(1)式が得られる。
【0037】
被処理水のアルカリ度Alk0は、被処理水に対して酸をpH値が4.8以下、より好ましくは3.5~4.5の間で設定した任意のpH値となるような酸注入率で加えた場合の電気伝導率基準値ECHと、被処理水の酸注入前の電気伝導率測定値EC0と、被処理水に上記酸注入率で酸を注入した時の電気伝導率測定値EC1とに基づいて算出することが好ましい。
【0038】
より具体的には、被処理水のアルカリ度Alk0は以下の式(4)に基づいて算出できる。
Alk0=(ECH+EC0-EC1)×1.27 ・・・(4)
(ここでECHは被処理水のpHが確実に4.0以下となる酸注入率Cacidで酸を注入した時の電気伝導率を表す電気伝導率基準値[mS/m]、EC1は、被処理水に酸注入率Cacidで酸を注入した時の電気伝導率測定値[mS/m]、EC0は、被処理水の酸注入前の電気伝導率測定値[mS/m]を示す。)
【0039】
シリカを含有する被処理水には、アルカリ剤を添加する前に、シリカを含有する被処理水中に含まれるカルシウム、マグネシウム等の硬度成分を除去することが好ましい。硬度成分を予め除去することにより、シリカ濃度の測定に干渉するイオンを予め除去することができるため、シリカ濃度の測定精度を向上できる。硬度成分の除去方法としては特に限定されないが、例えば、晶析法、石灰軟化法、イオン交換法、ナノろ過法、逆浸透法等が利用できる。中でも、被処理水中から硬度成分を簡便に効率良く除去する方法として、Na形イオン交換樹脂(ソフナ樹脂)等の強酸性陽イオン交換樹脂を用いたイオン交換法を用いることが好ましい。
【0040】
本発明の実施の形態に係る被処理水のシリカ濃度の測定方法によれば、シリカを含有する被処理水とアルカリ剤との反応によって消費される水酸化物イオン濃度に相当する電気伝導率の低下分から被処理水中のシリカ濃度を求める。そのため、モリブデン吸光光度法を応用した従来技術のように、吸光度測定のための高価な分析装置は使用しないのみならず、被処理水のシリカ濃度に応じた濃度レンジの変更の必要もなく、一般的な水質計器と薬品注入のみの簡易な設備で構成することができる。
【0041】
また、本発明の実施の形態に係る被処理水のシリカ濃度の測定方法によれば、検量線等を作製しなくて済むため、検量線作製のための複雑なメンテナンス作業も不要で、薬液の管理も不要で、分析で生じる廃液の処理も容易となる。使用する薬品も保存期間が短いモリブデン酸イオン含有試薬でなく、長期保管が可能な一般的な無機酸、無機アルカリのみであるため、その取り扱いも容易である。更に、測定廃液はpHを中和することで排水が可能であるのみならず、被処理水へ返送し再利用することも可能な自然環境保全の点からも極めて有利である。このように、本発明の実施の形態に係る被処理水のシリカ濃度の測定方法によれば、従来の公定法よりも被処理水中のシリカの濃度をより簡易な手法で、簡易な装置を用いて測定することができる。
【0042】
(シリカ濃度の測定装置)
本発明の実施の形態に係る被処理水のシリカ濃度の測定装置は、図2に示すように、シリカを含む被処理水の水温Tを測定する水温測定部11と、被処理水のpH値pH0を測定するpH測定部12と、被処理水にアルカリ剤を注入するアルカリ剤注入部3と、被処理水の電気伝導率測定値EC0を取得する第1電気伝導率測定部13と、アルカリ剤注入後の被処理水の電気伝導率測定値EC3を取得する第2電気伝導率測定部14と、被処理水に酸を注入する酸注入部4と、酸注入後の被処理水の電気伝導率測定値EC1を取得する第3電気伝導率測定部15と、処理装置6とを備える。
【0043】
図2の構成例では、採取した被処理水にアルカリ剤を注入してシリカ濃度を測定するためのシリカ濃度測定ライン1と、シリカ濃度測定ライン1から分岐し、被処理水中に酸を注入して被処理水のアルカリ度を測定するためのアルカリ度測定ライン2とを備えるが、この例には限定されない。
【0044】
例えば、図3に示すように、シリカ濃度測定ライン1とアルカリ度測定ライン2とを、それぞれ独立した配管等で構成してもよい。また、図4に示すように、水温測定部11、pH測定部12及び第1電気伝導率測定部13は、アルカリ度測定ライン2に設けられていてもよい。また、水温測定部11、pH測定部12及び第1電気伝導率測定部13の設置位置は、アルカリ剤注入部3及び酸注入部4よりも上流側であれば特に限定されない。水温測定部11、pH測定部12、第1電気伝導率測定部13、第2電気伝導率測定部14及び第3電気伝導率測定部15は、処理装置6に接続されており、測定結果が処理装置6へ出力可能になっている。
【0045】
アルカリ剤注入部3は、シリカ濃度測定ライン1に通水された被処理水にアルカリ剤を注入する。アルカリ剤注入部3は処理装置6に接続されており、処理装置6から出力される出力信号に応じて、アルカリ剤の添加率が調整可能となっている。アルカリ剤としては、例えば、NaOH等のアルカリ金属水酸化物が用いられる。アルカリ剤注入部3は、被処理水のpH値が9以上、より好ましくは10~12の間の任意の設定値、好ましくは11.5となるように、被処理水にアルカリ剤を注入する。
【0046】
酸注入部4は、アルカリ度測定ライン2に通水された被処理水に酸を注入する。酸としては、例えば塩酸等が用いられる。酸注入部4は処理装置6に接続されており、処理装置6から出力される出力信号に応じてアルカリ剤の添加率が調整可能となっている。酸注入部4は、被処理水のpHが確実に4.8以下、より好ましくは4.0以下の任意の設定値となるように、被処理水に酸を注入する。
【0047】
処理装置6は、所定のアルゴリズムに従って、所定の演算処理を行うことが可能な汎用のコンピュータ等で構成されることができる。処理装置6は、図示しない記憶装置、外部のネットワーク等に測定結果等を入出力可能な入力装置および出力装置などを備えており、操作者からの処理に応じて、シリカ濃度の算出処理を含めた種々の演算を行う。処理装置6は、アルカリ剤注入部3によるアルカリ剤の注入率及び酸注入部4による酸の注入率を制御する制御部61と、被処理水のアルカリ度Alk0を算出するアルカリ度算出部62と、被処理水中のシリカ濃度CSiO2を求めるシリカ濃度算出部63を備える。
【0048】
アルカリ度算出部62は、第3電気伝導率測定部15により測定される酸注入後の被処理水の電気伝導率測定値EC1と、第1電気伝導率測定部13により測定されるアルカリ剤注入前の被処理水の電気伝導率測定値EC0と、電気伝導率基準値ECHとに基づいて、被処理水のアルカリ度Alk0を算出する。
【0049】
具体的には、アルカリ度算出部62は、被処理水のアルカリ度Alk0を、以下の式(4)に基づいて算出することができる。
Alk0=(ECH+EC0-EC1)×1.27 ・・・(4)
(ここでECHは被処理水のpHが4.0以下となる酸注入率Cacidで酸を注入した時の電気伝導率を表す電気伝導率基準値[mS/m]、EC1は、被処理水に上記酸注入率Cacidで酸を注入した時の電気伝導率測定値[mS/m])
【0050】
被処理水のpHが4.0以下の任意の設定値となるときの酸注入率及びその酸注入率での電気伝導率基準値ECHは予め試験等を行うこと等により決定しておく。
【0051】
シリカ濃度算出部63は、アルカリ剤注入部3によるアルカリ剤注入後の被処理水の電気伝導率測定値EC3と、アルカリ剤注入前の被処理水の電気伝導率測定値EC0と、被処理水の水温及びpHと、被処理水のアルカリ度Alk0とに基づいて、アルカリ剤に含まれる水酸化物イオンと被処理水中のシリカとの反応により消費される水酸化物イオン濃度に相当する電気伝導率の低下分から、被処理水中のシリカ濃度を求める。
【0052】
具体的には、シリカ濃度算出部63は、以下の(1)~(3)式に基づいて、被処理水中のシリカ濃度を算出することができる。
SiO2=3.24×(EC2-EC3) ・・・(1)
EC2=[Alk0×{4.73×10(6.35-pH0)+2.84}
+2.48×10(1.24+0.05×T)]/10+EC0 ・・・(2)
Base=Alk0×{1.95×10(6.35-pH0)+0.95}+5×10(0.25+0.05×T) ・・・(3)
【0053】
なお、シリカ濃度測定ライン1の上流側には、被処理水中のカルシウム、マグネシウムなどの硬度成分を除去するための軟化装置5がシリカ濃度測定ライン1に設けられていることが好ましい。軟化装置5がシリカ濃度測定ライン1に設けられることにより、シリカと干渉を起こし得る硬度成分を、アルカリ剤の注入前に予め除去することができるため、シリカ濃度の測定精度を向上させることができる。軟化装置5としては、晶析装置、イオン交換等、膜ろ過装置等が利用できる。中でも、被処理水中から硬度成分を簡便に効率良く除去する方法として、Na形イオン交換樹脂(ソフナ樹脂)等の強酸性陽イオン交換樹脂を備えたイオン交換塔を用いることができる。
【0054】
本発明の実施の形態に係る被処理水のシリカ濃度の測定装置によれば、被処理水を通水するシリカ濃度測定ライン1及びアルカリ度測定ライン2を備え、処理装置6により、シリカ濃度測定ライン1を流れる被処理水のシリカ濃度を連続的に求めることができる。そのため、被処理水のシリカ濃度を簡易かつリアルタイムにシリカ濃度を測定することができ、オンライン化も容易となる。
【実施例0055】
以下に本発明の実施例を比較例と共に示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
【0056】
図1に示すフローに従って、シリカ濃度の異なる7種類の被処理水のシリカ濃度を測定した。アルカリ剤として水酸化ナトリウムを使用し、シリカ濃度測定ラインを流れる被処理水のpHが11.5となる注入率で注入した。酸として塩酸を使用し、アルカリ度測定ラインを流れる被処理水のpHが4.0となる注入率で注入した。被処理水のpH、水温、電気伝導率、酸注入後の電気伝導率及びアルカリ剤注入後の電気伝導率を測定し、上述の式(1)~(4)に従って各値を求めた。結果を表1に示す。比較のため、公定法であるモリブデン吸光光度法と、ICP発光光度分析法とに従って同一の被処理水を測定した際のシリカ濃度の測定結果も表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
表1に示すように、シリカ濃度が10~90mg/Lの各被処理水について本方法で測定した結果、シリカ濃度は公定法と比較して差異が1.1mg/L以内となり、公定法と比較しても実質的に同じ濃度といえる程度であった。よって、本方法は、簡易測定法としては十分に利用可能な測定方法であるといえる。
【0059】
公定法と本実施例における分析値との相関性を示すグラフを図5及び図6に示す。図5及び図6に示すように、いずれも公定法とゼロ点を通過する非常に良い相関があることが示された。このゼロ点を通過する比例関係から、シリカ濃度10mg/L以下のシリカ濃度も、本方法による簡易測定によって十分測定可能であることが分かる。
【符号の説明】
【0060】
1…シリカ濃度測定ライン
2…アルカリ度測定ライン
3…アルカリ剤注入部
4…酸注入部
5…軟化装置
6…処理装置
11…水温測定部
12…pH測定部
13…第1電気伝導率測定部
14…第2電気伝導率測定部
15…第3電気伝導率測定部
61…制御部
62…アルカリ度算出部
63…シリカ濃度算出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6