(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101270
(43)【公開日】2023-07-20
(54)【発明の名称】熱処理機構
(51)【国際特許分類】
C02F 1/02 20230101AFI20230712BHJP
C02F 1/28 20230101ALI20230712BHJP
B01D 53/44 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
C02F1/02 B ZAB
C02F1/28 D
B01D53/44 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022001801
(22)【出願日】2022-01-07
(71)【出願人】
【識別番号】399049981
【氏名又は名称】株式会社オメガ
(72)【発明者】
【氏名】中村 信一
【テーマコード(参考)】
4D002
4D034
4D624
【Fターム(参考)】
4D002AC10
4D002BA04
4D002DA42
4D034AA11
4D034CA04
4D034CA06
4D624AA04
4D624AB02
4D624BA02
4D624BB01
4D624BC01
4D624BC05
4D624CA02
(57)【要約】
【課題】よりコンパクトな構造とすることができる熱処理機構を提供しようとするもの。
【解決手段】被処理物を供給する金属液体浴槽1と、前記金属液体槽を加熱する流体流路2と、前記金属液体浴槽1の冷却機構3とを有し、前記金属液体浴槽1の外周側に加熱流体流路2を配し、その外周側に冷却機構3を配するようにした。前記冷却機構3を被処理物の活性炭流動床31による吸着処理槽としてもよい。前記冷却機構3を被処理物の活性炭固定床32による吸着処理槽としてもよい。前記被処理物の排ガスを前記吸着処理槽に供給するようにしてもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を供給する金属液体浴槽(1)と、前記金属液体槽を加熱する流体流路(2)と、前記金属液体浴槽(1)の冷却機構(3)とを有し、前記金属液体浴槽(1)の外周側に加熱流体流路(2)を配し、その外周側に冷却機構(3)を配するようにしたことを特徴とする熱処理機構。
【請求項2】
前記冷却機構(3)を被処理物の活性炭流動床(31)による吸着処理槽とした請求項1記載の熱分解機構。
【請求項3】
前記冷却機構(3)を被処理物の活性炭固定床(32)による吸着処理槽とした請求項1又は2記載の熱分解機構。
【請求項4】
前記被処理物の排ガスを前記吸着処理槽に供給するようにした請求2又は3記載の熱分解機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、よりコンパクトな構造とすることができる熱処理機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、会社、工場、ホテル、旅館、飲食店、一般家庭等から排出された生ごみその他の廃棄物を、公害が生ずることなく、無害、無臭で炭化処理するための装置に関する提案があった(特許文献1)。
すなわち、会社、工場、ホテル、旅館、飲食店、一般家庭等から排出された生ごみその他の廃棄物の量は極めて多量であり、これらの廃棄物を公害が生ずることなく、無害、無臭で処理することが大きな社会問題になっている。
廃棄物の処理は、一般に、焼却処理、発酵処理、埋立て投棄処理等によって行われている。このような従来の廃棄物処理手段特に焼却処理の場合に、次のような問題が生ずる。即ち、廃棄物の焼却処理時に、排ガス中に存在するダストおよび有害物質が飛散するため、公害を引き起こさずに無煙、無臭で処理することができず、また、処理に際し廃棄物を分別しなければならず、これらの処理のために多額の設備費を要し、処理コストが高騰する上、処理作業が複雑になること等である、というものである。
このような状況に対し、よりコンパクトな構造とすることができる熱処理機構を得たいという要望があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこでこの発明は、よりコンパクトな構造とすることができる熱処理機構を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するためこの発明では次のような技術的手段を講じている。
(1)この発明の熱処理機構は、被処理物を供給する金属液体浴槽と、前記金属液体槽を加熱する流体流路と、前記金属液体浴槽の冷却機構とを有し、前記金属液体浴槽の外周側に加熱流体流路を配し、その外周側に冷却機構を配するようにしたことを特徴とする。
この熱処理機構では、被処理物を供給する金属液体浴槽と、前記金属液体槽を加熱する流体流路と、前記金属液体浴槽の冷却機構とを有するので、冷却機構により金属液体浴槽を冷却しつつ、流体流路により加熱する金属液体浴槽に被処理物を供給して熱処理することが出来る。
そして、前記金属液体浴槽の外周側に加熱流体流路を配し、その外周側に冷却機構を配するようにしたので、金属液体浴槽の外周側の加熱流体流路とその外周側の冷却機構とにより全体を嵩低く構成することが出来る。
【0006】
前記被処理物として、固体(被処理固体)の粉砕物(廃プラスチック類の粉砕片等)や活性炭(使用済み活性炭を賦活・再生)、液体(被処理液体)として排水や廃液(特に高濃度廃液)を例示することが出来る。
被処理固体として、病院や介護施設の使用済みのおしめ、脱脂綿、スポンジ、タオル、医療器具のゴムホース片、シリコンホース片(菌類で汚染された感染性廃棄物)、家庭、企業、業務用などの炊事場のシンクの角の三角コーナーの生ごみ、廃プラスチックス類、工場で油にまみれたウエス、これらの破砕・粉砕物、これらの真空パック物などを例示することが出来る。そして、これらの菌類を金属液体浴槽での高温の熱処理(例えば600~650℃)により除菌・殺菌することが出来る。
具体的には、被処理固体として、病院等で排出される止血帯、汚染ガーゼ、包帯その他の血液が付着した感染性廃棄物、手術での医療廃棄物その他の破砕・粉砕物、また介護施設、老健施設などの使用済みおしめや廃棄タオルその他の破砕・粉砕物に対する衛生的な熱処理機構として利用することが出来る。
【0007】
前記金属液体浴槽の金属液体として、錫(融点232℃、沸点2,063℃、密度7g/cm3)、鉛(融点327.5℃、沸点1,750℃、密度11g/cm3)、インジウム(融点156℃、沸点2,072℃、密度22 g/cm3)、ガリウム(融点29.78℃、沸点2,208℃、密度6g/cm3)、ビスマス(融点271.5℃、沸点1,564℃、密度10g/cm3)などを例示することが出来る。
金属液体は、概して熱容量が大きく金属液体浴槽の温度が低下し難く、被処理物を熱処理する際に槽内の温度が低下しても熱伝導性が高いので熱源(流体流路)からの伝熱により迅速に元の温度へと復元させることが出来る。また、金属液体により被処理物に対して直接的に接触して熱を効率良く伝達することができるのでエネルギー効率に優れる。
前記金属液体槽を加熱する流体流路の使用流体として、LNG・LPG・メタンガス・水素ガス等のバーナーによる熱風を例示することが出来る。この熱を金属液体浴槽に効率良く伝導するため、グラファイトなどの固体高熱伝導体を用いることが出来る。
【0008】
金属液体浴槽に被処理物(固体、液体、気体)を供給する態様として、槽の底部近傍へと圧入することが出来る。具体的には、ホッパーなどから被処理物(固体)の破砕・粉砕物を受け入れて、スパイラル・コンベアなどにより機械的に押圧して押し込むことが出来る。また被処理物(液体)を注入ノズルにより供給・圧入することが出来る。さらに被処理物(気体)を注入ノズルにより供給・圧入することが出来る。
金属液体浴槽の形状として、鉛直方向(縦方向)に長い(深い)ものとすることが出来る。このようにすると、該槽の下方に供給した被処理物が上方に向けて浮上する間に熱の作用を長めに受けることが出来る。そして、該槽の表面に到達した時点で炭化物等に変質・変容していることとなり、また被処理物を減容化することが出来る。
【0009】
前記金属液体浴槽上に浮上した熱処理後の被処理物(熱分解炭化物や賦活再生後の活性炭等)は、圧縮空気(コンプレッサー・エアー)を用いて外部に排出することが出来る。
金属液体浴槽での被処理物の熱処理後の排ガスは、電解スクラバー槽(電解水として食塩NaCl電解水やオゾンO3電解水を使用できる)で浄化して大気解放することが出来る。
【0010】
(2)前記冷却機構を被処理物の活性炭流動床による吸着処理槽とするようにしてもよい。
このように、冷却機構を被処理物(液体)の活性炭流動床による吸着処理槽とすると、冷却機構と被処理物(液体)の活性炭流動床による吸着処理槽を兼用することが出来る。
【0011】
(3)前記冷却機構を被処理物の活性炭固定床による吸着処理槽とするようにしてもよい。
このように、冷却機構を被処理物(液体)の活性炭固定(定置)床による吸着処理槽とすると、冷却機構と被処理物(液体)の活性炭固定(定置)床による吸着処理槽を兼用することが出来る。
【0012】
(4)前記被処理物の排ガスを前記吸着処理槽に供給するようにしてもよい。
このように、前記被処理物の排ガスを前記吸着処理槽に供給するようにすると、吸着処理槽を被処理物の排ガスのスクラバーとして機能させることが出来る。
【発明の効果】
【0013】
この発明は上述のような構成であり、次の効果を有する。
金属液体浴槽の外周側の加熱流体流路とその外周側の冷却機構とにより全体を嵩低く構成することができるので、よりコンパクトな構造とすることができる熱処理機構を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】この発明の熱処理機構の実施形態1を説明するシステム・フロー図。
【
図2】この発明の熱処理機構の実施形態2を説明するシステム・フロー図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
(実施形態1)
図1に示すように、この実施形態の熱処理機構は、被処理物(液体)を供給する金属液体浴槽1と、前記金属液体槽を加熱する流体流路2と、前記金属液体浴槽1の冷却機構3とを有し、前記金属液体浴槽1の外周側に加熱流体流路2を配し、その外周側に冷却機構3を配している。冷却機構3と金属液体浴槽1は、同芯円状のビルドインタイプのコンパクトな構造に形成した。
【0016】
前記被処理物(被処理液体)として、CODが約20,000ppmの高濃度廃液を金属液体浴槽1により熱処理(600~650℃)した。具体的には、金属液体浴槽1に、前記被処理液体(高濃度廃液)を注入ノズル4により供給・圧入した。金属液体槽を加熱する流体流路2の使用流体として、LNGガスバーナーによる熱風を用いた。
金属液体浴槽1の金属液体として、錫(融点232℃、沸点2,063℃、密度7g/cm3)、鉛(融点327.5℃、沸点1,750℃、密度11g/cm3)、インジウム(融点156℃、沸点2,072℃、密度22 g/cm3)、ガリウム(融点29.78℃、沸点2,208℃、密度6g/cm3)、ビスマス(融点271.5℃、沸点1,564℃、密度10g/cm3)を用いた。
【0017】
金属液体は、熱容量が大きく金属液体浴槽1の温度が低下し難く、被処理液体(高濃度廃液)を熱処理する際に槽内の温度が低下しても熱伝導性が高いので熱源(流体流路2)からの伝熱により迅速に元の温度へと復元させることが出来た。また、金属液体により被処理液体(高濃度廃液)に対して直接的に接触して熱を効率良く伝達することができるのでエネルギー効率に優れたものであった。
【0018】
金属液体浴槽1の形状として、鉛直方向(縦方向)に長い(深い)ものとしており、該槽の下方に供給した被処理液体(高濃度廃液)が上方に向けて浮上する間に熱の作用を長めに受けることができ、該槽の表面に到達した時点で炭化物等に変質・変容していることとなった。
そして、金属液体浴槽1上に浮上した熱処理後の被処理物(熱分解炭化物)は、圧縮空気(コンプレッサー・エアー)Airを用いて外部に排出するようにした。
【0019】
前記冷却機構3を被処理物(COD約3,000ppmの低濃度排水)の活性炭流動床31による吸着処理槽とするようにしており、冷却機構3と被処理物の活性炭流動床31による吸着処理槽を兼用することが出来た。
また、被処理物の排ガスを、吸着処理槽(活性炭流動床31)に噴出口5から注入し浄化して大気解放するようにしており、活性炭流動床31を被処理物の排ガスのスクラバーとして機能させることが出来た。
【0020】
さらに、冷却機構3を前記活性炭流動床31と共に、被処理物(前記低濃度排水)の活性炭固定(定置)床32による吸着処理槽としており、冷却機構3と被処理物(液体)の活性炭固定(定置)床32による吸着処理槽を兼用することが出来た。
この実施例では、高濃度廃液(COD約20,000ppm)を金属液体浴槽1で処理しつつ、低濃度排水(COD約3,000ppm)を活性炭流動床31(排ガスのスクラバーを兼用)と活性炭固定(定置)床32とで処理しており、2系統の廃液・排水を同時に処理した。
【0021】
次に、この実施形態の熱処理機構の使用状態を説明する。
この熱処理機構では、被処理物を供給する金属液体浴槽1と、前記金属液体槽を加熱する流体流路2と、前記金属液体浴槽1の冷却機構3とを有するので、冷却機構3により金属液体浴槽1を冷却しつつ、流体流路2により加熱する金属液体浴槽1に被処理物を供給して熱処理することが出来た。
そして、前記金属液体浴槽1の外周側に加熱流体流路2を配し、その外周側に冷却機構3を配するようにしたので、金属液体浴槽1の外周側の加熱流体流路2とその外周側の冷却機構3とにより全体を嵩低く構成することができ、よりコンパクトな構造とすることができるという利点を有する。
【0022】
(実施形態2)
次に、実施形態2を上記実施形態との相違点を中心に説明する。
図2に示すように、この実施形態の熱処理機構は、被処理物(固体)を供給する金属液体浴槽1と、前記金属液体槽を加熱する流体流路2と、前記金属液体浴槽1の冷却機構3とを有し、前記金属液体浴槽1の外周側に加熱流体流路2を配し、その外周側に冷却機構3を配している。
【0023】
前記被処理物として、廃プラスチック類の粉砕片、紙おしめの粉砕物を熱処理(600~650℃)した。
前記金属液体浴槽1の金属液体として、錫(融点232℃、沸点2,063℃、密度7g/cm3)、鉛(融点327.5℃、沸点1,750℃、密度11g/cm3)、インジウム(融点156℃、沸点2,072℃、密度22 g/cm3)、ガリウム(融点29.78℃、沸点2,208℃、密度6g/cm3)、ビスマス(融点271.5℃、沸点1,564℃、密度10g/cm3)を用いた。
【0024】
金属液体浴槽1の形状として、鉛直方向(縦方向)に長い(深い)ものとしており、該槽の下方に供給した被処理物が上方に向けて浮上する間に熱の作用を長めに受けることができ、該槽の表面に到達した時点で炭化物等に変質・変容していることとなった。
金属液体浴槽1に被処理物を供給する態様として、該槽の底部近傍へと圧入するようにした。具体的には、上方のスクリューコンベアSにより水平方向(図示右方向)に移送し、次いで上下方向のスクリューコンベアS(図示中央)により下方の底部近傍に移送し、機械的に押圧して押し込むようにした。
【0025】
前記金属液体浴槽1上に浮上した熱処理後の被処理物(熱分解炭化物)は、圧縮空気(コンプレッサー・エアー)Airを用いて外部に排出するようにした。金属液体浴槽1での被処理物の熱処理後の排ガスは、電解スクラバー槽(図示せず)で浄化して大気解放した。
【0026】
次に、この実施形態の熱処理機構の使用状態を説明する。
この熱処理機構では、被処理物を供給する金属液体浴槽1と、前記金属液体槽を加熱する流体流路2と、前記金属液体浴槽1の冷却機構3とを有するので、冷却機構3により金属液体浴槽1を冷却しつつ、流体流路2により加熱する金属液体浴槽1に被処理物を供給して熱処理することが出来た。
そして、前記金属液体浴槽1の外周側に加熱流体流路2を配し、その外周側に冷却機構3を配するようにしたので、金属液体浴槽1の外周側の加熱流体流路2とその外周側の冷却機構3とにより全体を嵩低く構成することができ、よりコンパクトな構造とすることができるという利点を有する。
【産業上の利用可能性】
【0027】
よりコンパクトな構造とすることができることによって、種々の熱処理機構の用途に適用することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 金属液体浴槽
2 流体流路
3 冷却機構
31 活性炭流動床
32 活性炭固定床