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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101282
(43)【公開日】2023-07-20
(54)【発明の名称】変速制御装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/04 20060101AFI20230712BHJP
   F16H 63/50 20060101ALI20230712BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20230712BHJP
   B60W 10/04 20060101ALI20230712BHJP
   B60W 10/115 20120101ALI20230712BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
F16H61/04
F16H63/50
B60W10/08
B60W10/00 106
B60W10/115
B60L15/20 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022001820
(22)【出願日】2022-01-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石脇 誠也
(72)【発明者】
【氏名】右手 潤二
(72)【発明者】
【氏名】野田 裕久
【テーマコード(参考)】
3D241
3J552
5H125
【Fターム(参考)】
3D241AA53
3D241AC18
3D241AD30
3D241AE02
3D241AE30
3J552MA02
3J552NA01
3J552NB05
3J552PA02
3J552RA03
3J552RA06
3J552RA18
3J552SA02
3J552SA17
3J552SA30
3J552SB09
3J552SB10
3J552TA10
3J552UA07
3J552VA03W
3J552VA33W
3J552VA34W
3J552VA78W
3J552VC01W
3J552VC02W
5H125AA01
5H125BA00
5H125BE05
5H125CA01
5H125EE08
(57)【要約】
【課題】変速時のショックを低減可能な変速制御装置を提供する。
【解決手段】変速制御装置1は、変速機構10を制御するものであって、クラッチアクチュエータ21と、ストロークセンサ23と、回転角センサ48と、制御部50と、を備える。クラッチアクチュエータ21は、クラッチ20を駆動する。ストロークセンサ23は、クラッチ20のストローク量を検出する。回転角センサ48は、MG40の回転状態を検出する。制御部50は、クラッチアクチュエータ21を制御するアクチュエータ制御部51、および、MG40を制御するMG制御部55を有する。アクチュエータ制御部51は、変速時にMG40の回転数を変化させるとき、MG40の回転数の変化が一定となるようにクラッチストロークを制御する。MG制御部55は、クラッチ20の締結による車軸90のトルク変動を打ち消すように、MG40の出力トルクを補正する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機である駆動源(40)の動力を車軸(90)に伝達する動力伝達経路に設けられるクラッチ(20)を有し、前記駆動源から前記車軸に伝達されるトルクおよび回転数を切替可能である変速機構(10)を制御する変速制御装置であって、
前記クラッチを駆動するクラッチアクチュエータ(21)と、
前記クラッチのストローク量を検出するストロークセンサ(23)と、
前記駆動源の回転状態を検出する回転検出部(48)と、
前記クラッチアクチュエータを制御するアクチュエータ制御部(51)、および、前記駆動源を制御する駆動源制御部(55)を有する制御部(50)と、
を備え、
前記アクチュエータ制御部は、変速時に前記駆動源の回転数を変化させる状態において、前記駆動源の回転数の変化が一定となるようにクラッチストロークを制御し、
前記駆動源制御部は、前記クラッチの締結による前記車軸のトルク変動を打ち消すように前記駆動源の出力トルクを補正する変速制御装置。
【請求項2】
前記アクチュエータ制御部は、目標変速時間に基づき、前記駆動源の回転数の変化率の目標値を設定する請求項1に記載の変速制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、変速時に前記駆動源の回転数が変化している状態において、変速比の瞬時値を用いて演算される等価慣性モーメントに基づいてトルク変動を推定する請求項1または2に記載の変速制御装置。
【請求項4】
前記クラッチを第1クラッチとし、前記第1クラッチに加え、変速後に解放される前記第1クラッチとは別の第2クラッチ(25)が共に係合している状態において、
前記制御部は、前記ストローク量に基づいてトルク変動を推定する請求項1~3のいずれか一項に記載の変速制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オートクラッチ機構による半クラッチ制御時のクラッチストロークを制御する変速制御装置が知られている。例えば特許文献1では、クラッチ側の惰性回転の減速度合に基づいて変速機の引き摺りトルクを求め、その引き摺りトルクの影響を除去するようにクラッチストロークを補正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-29414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、変速時の急激なトルク変化に対してはショックを低減する効果がない。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、変速時のショックを低減可能な変速制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の変速制御装置は、回転電機である駆動源(40)の動力を車軸(90)に伝達する動力伝達経路に設けられるクラッチ(20)を有し、動力源から車軸に伝達されるトルクおよび回転数を切替可能である変速機構(10)を制御するものであって、クラッチアクチュエータ(21)と、ストロークセンサ(23)と、回転検出部(48)と、制御部(50)と、を備える。
【0007】
クラッチアクチュエータは、クラッチを駆動する。ストロークセンサは、クラッチのストローク量を検出する。回転検出部は、駆動源の回転状態を検出する。制御部は、クラッチアクチュエータを制御するアクチュエータ制御部(51)、および、駆動源を制御する駆動源制御部(55)を有する。
【0008】
アクチュエータ制御部は、変速時に駆動源の回転数を変化させる状態において、駆動源の回転数の変化が一定となるようにクラッチストロークを制御する。駆動源制御部は、クラッチの締結による車軸のトルク変動を打ち消すように駆動源の出力トルクを補正する。これにより、変速時のショックを低減可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態による変速制御装置を示す模式図である。
図2】クラッチ差回転とクラッチ摩擦係数との関係を示す説明図である。
図3】クラッチ差回転とクラッチトルクとの関係を説明する説明図である。
図4】一実施形態による変速制御処理を説明するフローチャートである。
図5】一実施形態によるトルク相制御処理を説明するフローチャートである。
図6】一実施形態によるイナーシャ相制御処理を説明するフローチャートである。
図7】一実施形態による変速制御処理を説明するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(一実施形態)
以下、本発明による変速制御装置を図面に基づいて説明する。一実施形態による変速制御装置を図1図7に示す。
【0011】
図1に示すように、変速制御装置1は、変速機構10、および、制御部50等を有し、モータジェネレータ40を駆動源とする電動車両に適用される。図1では、煩雑になることを避けるため、一部の制御線を省略した。また、以下適宜、モータジェネレータを「MG」とする。
【0012】
変速機構10は、サンギヤ11、プラネタリギヤ12、リングギヤ13、第1クラッチ20、および、第2クラッチ25等を有する遊星歯車機構である。プラネタリギヤ12は、サンギヤ11とリングギヤ13との間に設けられており、出力軸14にて減速機構30と接続されている。リングギヤ13は、モータジェネレータ40と一体に回転する。回転角センサ18は出力軸14の回転角を検出し、回転角センサ48はモータジェネレータ40の回転角を検出する。
【0013】
第1クラッチ20および第2クラッチ25は、摩擦クラッチであって、第1クラッチ20はクラッチアクチュエータ21により駆動され、第2クラッチ25はブレーキアクチュエータ26により駆動される。アクチュエータ21、26は、電動モータである。すなわち、クラッチ20、25は電動クラッチであって、アクチュエータ21、26の駆動を制御することで、油圧クラッチと比較して精密なストローク制御が可能である。
【0014】
第1クラッチ20は、締結されることで、サンギヤ11とリングギヤ13とが一体に回転する。第2クラッチ25は、締結されることで、サンギヤ11を筐体に固定するブレーキとして機能する。ストロークセンサ23は第1クラッチ20のストローク量を検出し、ストロークセンサ28は第2クラッチ25のストローク量を検出する。
【0015】
変速機構10は、初期状態において、第1クラッチ20が解放されており、第2クラッチ25が締結されている。これにより、サンギヤ11が筐体に固定され、モータジェネレータ40の駆動力は、リングギヤ13およびプラネタリギヤ12を介して車軸90側に出力される。
【0016】
初期状態からアップシフトするとき、第1クラッチ20を締結し、第2クラッチ25を解放する。これにより、サンギヤ11とリングギヤ13とが固定され、モータジェネレータ40の駆動力は、リングギヤ13と一体となって回転するサンギヤ11およびプラネタリギヤ12を介して車軸90側に出力される。以下適宜、第2クラッチ25が締結され、第1クラッチ20が解放されている状態を「1速」、第1クラッチ20が締結され、第2クラッチ25が解放されている状態を「2速」、1速から2速への切り替えを「アップシフト」、2速から1速への切り替えを「ダウンシフト」とする。
【0017】
第1クラッチ20および第2クラッチ25は、初期位置および完全締結位置にて、無通電で保持力が維持できる。本実施形態では、摩擦板の引き摺りトルクが生じない程度に離間させたストローク位置である非引き摺り位置を初期位置とし、第1クラッチ20を解放しているとき、非引き摺り位置にて保持することで、引き摺りによる損失を低減することができる。また、ストロークセンサ23の検出値に基づき、第1クラッチ20の締結状態を適宜学習する。第2クラッチ25についても同様としてもよいし、異なっていてもよい。
【0018】
減速機構30は、ドライブギヤ31およびドリブンギヤ32を有する。ドライブギヤ31は、出力軸14と接続され、プラネタリギヤ12と一体に回転する。ドリブンギヤ32は、車輪91が設けられる車軸90と一体に回転する。これにより、駆動源であるモータジェネレータ40の駆動力は、変速機構10および減速機構30を経由して車軸90に伝達される。
【0019】
制御部50は、マイコン等を主体として構成され、内部にはいずれも図示しないCPU、ROM、RAM、I/O、及び、これらの構成を接続するバスライン等を備えている。制御部50における各処理は、ROM等の実体的なメモリ装置(すなわち、読み出し可能非一時的有形記録媒体)に予め記憶されたプログラムをCPUで実行することによるソフトウェア処理であってもよいし、専用の電子回路によるハードウェア処理であってもよい。
【0020】
制御部50は、アクチュエータ制御部51、および、MG制御部55を有する。アクチュエータ制御部51は、回転角センサ18、48の検出値および車両状態に係る情報等を取得し、これらの情報に基づいてアクチュエータ21、26の駆動を制御する。MG制御部55は、MG40の駆動を制御する。なお、アクチュエータ制御部51とMG制御部55とは、別途のECUにより構成されていてもよい。
【0021】
以下、1速から2速への切り替えを中心に説明する。1速から2速への変速開始から第1クラッチ20が完全締結されるまでの変速期間において、第2クラッチ25が締結されている期間を「トルク相」、第2クラッチ25が解放されている期間を「イナーシャ相」とする。イナーシャ相は、モータジェネレータ40の回転数であるMG回転数が変化している状態と捉えることもできる。
【0022】
目標クラッチストロークの演算について説明する。イナーシャ相において、目標クラッチトルクTは、慣性モーメントIにモータジェネレータ40の目標回転数変化率(dω/dt)を乗算することで演算される(式(1))。また、目標クラッチトルクT、クラッチ摩擦係数μ(式(2)参照)、クラッチ枚数n、クラッチ半径rを用いて目標クラッチ荷重Fを算出する(式(3)参照)。式中のΔωは、MG回転数と出力軸14の回転数との差であるクラッチ差回転である。
【0023】
T=I×(dω/dt) ・・・(1)
μ=f(Δω) ・・・(2)
F=2nrμ/T ・・・(3)
【0024】
図2に示すように、クラッチ摩擦係数μは、クラッチ差回転Δωの関数となり、一定ではなく、一般的には、ある差回転にてピークとなる特性をもつ。また、図3に示すように、クラッチ荷重を一定とした場合、クラッチ差回転Δωが0に収束していく過程では、クラッチトルクは一定にならない。図3では、共通時間軸を横軸とし、上段からクラッチストローク、クラッチ差回転Δω、クラッチトルクを示した。なお、クラッチストロークを一定とすることは、クラッチ荷重を一定とすることと略同義である。
【0025】
そこで本実施形態では、車軸90からみた変速機構10全体の等価慣性モーメントIe(式(4)参照)を算出する。等価慣性モーメントIeは、ギヤ比を介した相手側の部品に対してギヤ比の2乗で増加する性質があるため、等価慣性モーメントIeを考慮することで、精度よく慣性トルクを推定可能となる。ひいては目標クラッチトルクTを適切に演算することができる。等価慣性モーメントIeを用いた目標クラッチトルクTを式(5)に示す。なお、式(4)中の変速比γは、MG回転数と出力軸14の回転数との比であって、等価慣性モーメントIeの演算においては瞬時値を用いる。
【0026】
Ie=I×γ2 ・・・(4)
T=Ie×(dω/dt) ・・・(5)
【0027】
本実施形態の変速制御処理を図4に基づいて説明する。この処理は制御部50にて所定の周期で実行される。以下、ステップS10等の「ステップ」を省略し、単に記号「S」と記す。
【0028】
S10では、制御部50は、変速指示があるか否か判断する。変速指示がないと判断された場合(S10:NO)、S11以降の処理をスキップする。変速指示があると判断された場合(S10:YES)、S11へ移行し、トルク相制御を行う。
【0029】
S12では、制御部50は、イナーシャ相に移行したか否か判断する。イナーシャ相に移行していないと判断された場合(S12:NO)、S11へ戻り、トルク相制御を継続する。イナーシャ相に移行したと判断された場合(S12:YES)、S13へ移行し、イナーシャ相制御を行う。
【0030】
S14では、制御部50は、変速が完了したか否か判断する。変速が完了していないと判断された場合(S14:NO)、S13へ戻り、イナーシャ相制御を継続する。変速が完了したと判断された場合(S14:YES)、S15へ戻り、後述するカウンタトルクを0とし、本処理を終了する。
【0031】
トルク相制御処理を図5のサブフローに基づいて説明する。S111では、制御部50は、トルク相における目標クラッチ荷重を設定する。S112では、制御部50は、ストロークセンサ23の検出値に基づき、実クラッチストロークを演算する。
【0032】
S113では、制御部50は、クラッチ荷重-ストロークマップを参照し、実クラッチストロークからクラッチ荷重を推定する。S114では、制御部50は、推定されたクラッチ荷重に基づき、クラッチトルクを推定する。S115では、制御部50は、クラッチトルクによる車軸トルク変動を推定する。
【0033】
制御部50は、S116にて、車軸変動トルクを打ち消すようなMGカウンタトルクを演算し、S117にて、MGカウンタトルクが出力されるように、MG40の駆動を制御する。
【0034】
イナーシャ相制御処理を図6のサブフローに基づいて説明する。S131では、制御部50は、目標変速時間Xt内に変速が完了するように、目標回転数変化率(dω/dt)を演算する。S132では、制御部50は、式(5)を用いて目標クラッチトルクTを演算する。なお、式(5)に替えて、式(1)を用いて目標クラッチトルクTを演算してもよい。
【0035】
S133では、制御部50は、目標クラッチトルクTを用いて目標クラッチ荷重F(式(3)参照)を演算する。S134では、制御部50は、クラッチ荷重-ストロークマップを参照し、目標クラッチストロークを演算する。S135では、ストロークセンサ23の検出値に基づき、実クラッチストロークを演算する。本実施形態では、目標クラッチトルクTとなるように、第1クラッチ20をストローク制御する。
【0036】
S136では、制御部50は、クラッチトルクから車軸トルク変動を推定する。S137では、制御部50は、S137にて、車軸変動トルクを打ち消すようなMGカウンタトルクを演算し、S138にて、MGカウンタトルクが出力されるように、MG40の駆動を制御する。
【0037】
本実施形態の変速制御処理を図7のタイムチャートに基づいて説明する。図7では、共通時間軸を横軸とし、上段からクラッチストローク、クラッチトルク、MG回転数、MGトルク、車軸トルクを示している。MGトルクおよび車軸トルクについて、カウンタトルクを与えなかった場合を破線で示している。また、走行に要するMGトルク(以下、走行用トルク)が一定であるものとして説明する。
【0038】
時刻x10にて、変速指示により変速を開始すると、第2クラッチ25が締結されている状態にて、第1クラッチ20のストローク制御を開始する。本実施形態では、トルク相において、クラッチストロークからクラッチトルクを推定し、走行用トルクに対して正方向のカウンタトルクを印加することで車軸トルクの変動を抑制することができる。
【0039】
時刻x11にて、第2クラッチ25が解放され、イナーシャ相に移行する。イナーシャ相において、目標変速時間Xt内に変速が完了するように、目標回転数変化率(dω/dt)を設定し(二点鎖線参照)、設定されたMG回転数の変化率に基づき、クラッチトルクが一定となるように、第1クラッチ20のクラッチストロークを制御する。本実施形態では、クラッチ差回転Δωとクラッチ摩擦係数μとの関係を考慮し、摩擦板を押付方向にストロークさせた後、クラッチ摩擦係数μの増加に応じてクラッチストロークを減少させることで、クラッチトルクが一定となり、MG回転数変化率も一定となる。
【0040】
また、イナーシャ相においては、走行用トルクに対して負方向のカウンタトルクを印加する。カウンタトルクを印加することで、破線で示すカウンタトルクを印加しない場合と比較し、車軸トルクの変動を抑制することができる。また、MG回転数の変化率が一定となるようなカウンタトルクを与えることで、一点鎖線で示すMG回転数の変化率が一定でない場合と比較し、車軸トルクの変動をより抑制することができる。時刻x12にて、変速が完了すると、カウンタトルクを0とする。
【0041】
本実施形態では、クラッチトルクを一定とすることで、クラッチトルクに起因する車軸トルク変動も一定となり、これを打ち消すためのカウンタトルクも一定とすることができる。これにより、MGトルク制御における応答性や制御性の要件を緩和することができる。なお、実施形態等における「一定」とは、制御誤差や制御上発生しうる変動等は許容されるものとする。
【0042】
以上説明したように、変速制御装置1は、回転電機であるMG40の動力を車軸90に伝達する動力伝達経路に設けられるクラッチ20を有し、MG40から車軸90に伝達されるトルクおよび回転数を切替可能である変速機構10を制御するものであって、クラッチアクチュエータ21と、ストロークセンサ23と、回転角センサ48と、制御部50と、を備える。
【0043】
クラッチアクチュエータ21は、クラッチ20を駆動する。ストロークセンサ23は、クラッチ20のストローク量を検出する。回転角センサ48は、MG40の回転状態を検出する。制御部50は、クラッチアクチュエータ21を制御するアクチュエータ制御部51、および、MG40を制御するMG制御部55を有する。アクチュエータ制御部51は、変速時にMG40の回転数を変化させるとき、MG40の回転数の変化が一定となるようにクラッチストロークを制御する。「MG回転数を変化させるとき」とは、イナーシャ相に対応する。MG制御部55は、クラッチ20の締結による車軸90のトルク変動を打ち消すように、MG40の出力トルクを補正する。本実施形態では、カウンタトルクを与えることが「出力トルクを補正する」ことに対応する。
【0044】
MG回転数の変化率を一定とすることで、変速ショックの抑制に必要なカウンタトルクを一定とすることができるため、カウンタトルク誤差によるショックの発生を抑制することができる。
【0045】
アクチュエータ制御部51は、目標変速時間Xtに基づき、MG40の回転数の変化率の目標値を設定する。これにより、変速に要する時間を適切に制御することができる。
【0046】
制御部50は、変速時にMG40の回転数が変化している状態において、変速比γの瞬時値を用いて演算される等価慣性モーメントIeに基づいて車軸90のトルク変動を推定する。これにより、イナーシャ相におけるトルク変動を精度よく推定することができる。
【0047】
変速時に第1クラッチ20に加え、変速後に解放される第1クラッチ20とは別の第2クラッチ25が係合している状態において、制御部50は、ストローク量に基づいてトルク変動を推定する。本実施形態では、「第1クラッチに加え、第1クラッチとは別の第2クラッチが共に係合している状態」とは、トルク相に対応する。これにより、トルク相におけるトルク変動を精度よく推定することができる。
【0048】
実施形態では、第1クラッチ20が「クラッチ」、ストロークセンサ23が「ストロークセンサ」、MG40が「駆動源」、回転角センサ48が「回転検出部」、MG制御部55が「駆動源制御部」に対応する。
【0049】
(他の実施形態)
上記実施形態では、変速機構は、遊星歯車機構および2つのクラッチを有している。他の実施形態では、変速機構の構成や段数は上記実施形態と異なっていてもよい。また上記実施形態では1速と2速とを切替可能に構成されているが、他の実施形態では、ギヤを複数段設けることで3速以上を切替可能としてもよい。上記実施形態では、変速機構が適用される車両はモータジェネレータを駆動力とする電動車両である。他の実施形態では、ハイブリッド車両に変速機構を適用してもよい。
【0050】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0051】
1・・・変速制御装置
10・・・変速機構
20・・・第1クラッチ(クラッチ)
21・・・クラッチアクチュエータ
23・・・ストロークセンサ
40・・・モータジェネレータ(駆動源)
48・・・回転角センサ(回転検出部)
50・・・制御部 51・・・アクチュエータ制御部
55・・・MG制御部(駆動源制御部)
90・・・車軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7