(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101309
(43)【公開日】2023-07-20
(54)【発明の名称】流体ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04B 43/02 20060101AFI20230712BHJP
F04B 45/04 20060101ALI20230712BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
F04B43/02 A
F04B45/04 A
B81B3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022001873
(22)【出願日】2022-01-07
(71)【出願人】
【識別番号】521515735
【氏名又は名称】MMIセミコンダクター株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 雄喜
(72)【発明者】
【氏名】多田羅 佳孝
(72)【発明者】
【氏名】所司原 大輔
(72)【発明者】
【氏名】西岡 孝哲
(72)【発明者】
【氏名】東狐 義秀
(72)【発明者】
【氏名】佐野 佳彦
【テーマコード(参考)】
3C081
3H077
【Fターム(参考)】
3C081AA01
3C081AA02
3C081AA07
3C081AA13
3C081BA03
3C081BA09
3C081BA22
3C081BA23
3C081BA25
3C081BA45
3C081BA46
3C081BA48
3C081BA55
3C081CA02
3C081CA13
3C081CA32
3C081DA03
3C081DA04
3C081EA32
3H077AA01
3H077AA11
3H077CC02
3H077CC09
3H077DD06
3H077EE23
3H077EE34
3H077FF02
3H077FF36
(57)【要約】
【課題】流体ポンプとしての剛性を確保しつつ、より高精度に作製された流体ポンプを提供する。
【解決手段】本流体ポンプは、第1半導体層と、上記第1半導体層よりも厚い第2半導体層と、上記第1半導体層と上記第2半導体層との間に形成される酸化膜層とを含むSilicon On Insulator(SOI)部材の上記第2半導体層を加工して形成された振動板と、上記振動板の上側の面に設けられ、上記振動板を振動させる駆動部と、上記振動板の下側の面に対向して設けられ、貫通孔が形成された可動板と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1半導体層と、前記第1半導体層よりも厚い第2半導体層と、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に形成される酸化膜層とを含むSilicon On Insulator(SOI)部材の前記第2半導体層を加工して形成された振動板と、
前記振動板の上側の面に設けられ、前記振動板を振動させる駆動部と、
前記振動板の下側の面に対向して設けられ、貫通孔が形成された可動板と、を備える、
流体ポンプ。
【請求項2】
振動板と、
前記振動板の上側の面に設けられ、前記振動板を振動させる駆動部と、
前記振動板の下側の面に対向して設けられ、第1半導体層と、前記第1半導体層よりも厚い第2半導体層と、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に形成される酸化膜層とを含むSilicon On Insulator(SOI)部材の前記第1半導体層を加工して形成され、貫通孔を含む可動板と、を備える、
流体ポンプ。
【請求項3】
第1半導体層と、前記第1半導体層よりも厚い第2半導体層と、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に形成される第1酸化膜層とを含む第1Silicon On Insulator(SOI)部材の前記第2半導体層を加工して形成された振動板と、
前記振動板の上側の面に設けられ、前記振動板を振動させる駆動部と、
前記振動板の下側の面に対向して設けられ、第21半導体層と、前記第21半導体層よりも厚い第22半導体層と、前記第21半導体層と前記第22半導体層との間に形成される第2酸化膜層とを含む第2Silicon On Insulator(SOI)部材の前記第21半導体層を加工して形成され、貫通孔を含む可動板と、を備える、
流体ポンプ。
【請求項4】
前記第1半導体層及び前記第2半導体層は、単結晶シリコンである、
請求項1から3のいずれか一項に記載の流体ポンプ。
【請求項5】
前記第21半導体層及び前記第22半導体層は、単結晶シリコンである、
請求項3に記載の流体ポンプ。
【請求項6】
前記振動板の下側の面には、複数の突起が設けられる、
請求項1から5のいずれか一項に記載の流体ポンプ。
【請求項7】
前記可動板の上側の面には、複数の突起が設けられる、
請求項1から6のいずれか一項に記載の流体ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
液体や気体といった流体を送出する流体ポンプが利用されている。流体ポンプとしては、例えば、間隔(ギャップ)を開けて対向して配置される振動板と可動板とを備えた流体ポンプを挙げることができる。このような流体ポンプでは、振動板及び可動板の振動により、流体の送出が行われる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
流体ポンプは、板状の部品を機械的なプロセスによって積層することで作製されることが多い。このような機械的なプロセスによって流体ポンプを作製する場合、機械的な工作精度の限界によってギャップのばらつきが生じ、作製された流体ポンプの特性にばらつきが生じる虞がある。
【0005】
機械的なプロセスよりも高精度な加工が可能なMicro Electro Mechanical Systems(MEMS)プロセスを採用することで流体ポンプをより高精度に作製することも考えられる。しかしながら、MEMSプロセス中に行われる加熱工程による応力が流体ポンプの振動板や可動板に残留する虞がある。残留した応力によって可動板や振動板に反りが生じると、反りによってギャップにばらつきが生じ、流体ポンプの特性にばらつきが生じる虞がある。また、MEMSプロセスによっては可動板や振動板を厚く作製することが困難である。そのため、MEMSプロセスによって流体ポンプを作製する場合、流体ポンプに要求される剛性を確保することが困難である。
【0006】
開示の技術の1つの側面は、流体ポンプとしての剛性を確保しつつ、より高精度に作製された流体ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の技術の1つの側面は、次のような流体ポンプによって例示される。本流体ポンプは、第1半導体層と、上記第1半導体層よりも厚い第2半導体層と、上記第1半導体層と上記第2半導体層との間に形成される酸化膜層とを含むSilicon On Insulator(SOI)部材の上記第2半導体層を加工して形成された振動板と、上記振動板の上側の面に設けられ、上記振動板を振動させる駆動部と、上記振動板の下側の面に対向して設けられ、貫通孔が形成された可動板と、を備える。
【0008】
本流体ポンプは、振動板の振動によって貫通孔から流体を導入し、導入した流体を送出する。ここで、上記駆動部は、圧電素子であって良い。本流体ポンプでは、振動板が上記SOI部材を用いて作製される。このようなSOI部材は、機械的なプロセスよりも高精度に作製される。また、SOI部材は、第1半導体層及び第2半導体層をMEMSプロセスによる薄膜積層工程よりも厚く作製されることが可能である。そのため、このような流体ポンプは、機械的なプロセスよりも高精度に作製され、MEMSプロセスによる薄膜積層工程よりも厚さを確保した振動板を備えることができる。そのため、本流体ポンプは、
流体ポンプとしての剛性を確保しつつ、より高精度に作製されることができる。なお、上記流体ポンプでは振動板がSOI部材によって形成されたが、可動板がSOI部材によって形成されてもよい。また、振動板及び可動板の双方がSOI部材によって形成されてもよい。
【0009】
ここで、本流体ポンプの作製に用いるSOI部材では、上記第1半導体層及び上記第2半導体層は、単結晶シリコンであってもよい。上記第1半導体層及び上記第2半導体層が単結晶シリコンであることで、振動板や可動板に残留する応力を非常に小さなものとすることができる。
【0010】
開示の技術は、次の特徴を備えてもよい。上記振動板の下側の面には、複数の突起が設けられる。このような構成を採用することで、高精度に作製されたことで表面が鏡面となった振動板及び可動板とがスティック(固着)することが抑制される。なお、上記複数の突起は、可動板の上側の面に設けられてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本流体ポンプは、流体ポンプとしての剛性を確保しつつ、より高精度に作製されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態に係るMEMSポンプの一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るMEMSポンプの動作を模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るMEMSポンプに用いられるSOI部材の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、MEMSポンプの作製方法の一例を示す第1の図である
【
図5】
図5は、MEMSポンプの作製方法の一例を示す第2の図である。
【
図6】
図6は、第1変形例に係るMEMSポンプの作製方法の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、第2変形例に係るMEMSポンプの作製方法の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、第3変形例に係るMEMSポンプの一例を示す第1の図である。
【
図9】
図9は、第3変形例に係るMEMSポンプの一例を示す第2の図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態>
図1は、実施形態に係るMEMSポンプ1の一例を示す図である。
図1では、MEMSポンプ1を側面から見た断面を例示する。MEMSポンプ1は、逆止弁を有しないマイクロポンプである。MEMSポンプ1は、振動板11、支持部11a、可動板21、基板22及び圧電素子41を備える。
【0014】
MEMSポンプ1は、2つのSOI部材を用いて作製される。MEMSポンプ1では、1つのSOI部材を用いて振動板11が形成され、もう1つのSOI部材を用いて可動板21、基板22、導入口211及び開口部221が作製される。SOI部材についての詳細は後述するが、
図1において着色された部分はSOI部材の酸化膜を例示する。MEMSポンプ1は、振動板11や可動板21の振動によって流体を送出する。流体としては、例えば、空気等の気体や水等の液体を挙げることができる。以下、本明細書において、基板22から振動板11に向かう方向を「上」、振動板11から基板22に向かう方向を「下」とも称する。
【0015】
振動板11は、薄い板状に形成される。振動板11は、支持部11a(
図1では、バネ
形状で例示)によって可動板21との間にギャップ31を確保した状態で支持される。振動板11の下方には基板22が配置される。基板22の中央部には、基板22の下方に向けて開口する開口部221が形成される。開口部221が形成されることで、薄い板状の可動板21が形成される。換言すれば、基板22の可動板21に対応する位置に開口部221が形成される。振動板11と可動板21とは、振動板11の下側の面と可動板21の上側の面とが互いに対向するように、配置される。可動板21の略中央には、可動板21を厚さ方向に貫通する導入口211が設けられる。導入口211は、「貫通孔」の一例である。
【0016】
圧電素子41は、供給される電圧に応じて伸縮する素子である。圧電素子41は、振動板11の上側の面に配置される。圧電素子41と振動板11とは、例えば、接着剤によって接着される。所定周波数の電圧が加えられた圧電素子41の伸縮に伴い、振動板11は振動する。振動板11の振動に伴ってギャップ31の体積が変動し、それに伴い可動板21が振動する。振動板11及び可動板21は、略同じ周波数で振動する。圧電素子41は、「駆動部」の一例である。
【0017】
(MEMSポンプ1の動作概略)
図2は、実施形態に係るMEMSポンプ1の動作を模式的に示す図である。
図2では圧電素子41の図示は省略している。
図2(a)では、供給される電圧に応じて圧電素子41が伸びることで振動板11が撓み、導入口211からギャップ31に流体が導入される。
図2(b)では、
図2(a)とは極性が逆の電圧が供給された圧電素子41が縮むことで振動板11が縮み、ギャップ31に導入された流体が振動板11の外縁部に向けて送出される。MEMSポンプ1は、このような動作を繰り返すことで流体を送出する。
【0018】
(MEMSポンプ1作製に用いられるSOI部材100)
図3は、実施形態に係るMEMSポンプ1に用いられるSOI部材100の一例を示す図である。SOI部材100は、活性層101、酸化膜102及び支持基板103を含む。活性層101及び支持基板103は、例えば、単結晶シリコンである。酸化膜102は、例えば、二酸化ケイ素(SiO
2)である。SOI部材100は、単結晶シリコンで形成された活性層101及び支持基板103の間に、絶縁層となる酸化膜102が介在する。SOI部材100は、例えば、酸化処理を行った支持基板103を活性層101と張り合わせて熱処理を行った上で表面を研磨することで作製される。本実施形態に係るMEMSポンプ1の作製に用いられるSOI部材100は、例えば、高さが略500μmのものである。MEMSポンプ1は、このようなSOI部材100を2つ用いて作製される。活性層101は、「第1半導体層」及び「第21半導体層」の一例である。酸化膜102は、「酸化膜層」、「第1酸化膜層」及び「第2酸化膜層」の一例である。支持基板103は、「第2半導体層」及び「第22半導体層」の一例である。
【0019】
(MEMSポンプ1の作製)
図4及び
図5は、MEMSポンプ1の作製方法の一例を示す図である。
図4では、圧電素子41を接着する手前までの工程が説明され、
図5では圧電素子41を接着する工程が説明される。なお、
図4に例示される工程はMEMSプロセスによって行われる。以下、
図4及び
図5を参照してMEMSポンプ1の製造方法について説明する。
【0020】
図4(a)に例示する工程では、振動板11の作製に用いるSOI部材100aと、可動板21、基板22、導入口211及び開口部221の作製に用いるSOI部材100bとが用意される。SOI部材100aは、「第1SOI部材」の一例である。SOI部材100bは、「第2SOI部材」の一例である。
図4(b)に例示する工程では、SOI部材100a及びSOI部材100bに対して、酸化膜102に達するまでエッチング加工が行われる。活性層101と酸化膜102とが異なる物質であることから酸化膜102
に達した時点でエッチング加工が停止する。そのため、
図4(b)に例示する工程におけるエッチング加工は、時間制御を行わなくとも容易に高精度の加工を実現することができる。
【0021】
図4(c)に例示する工程では、エッチング加工が行われたSOI部材100aとSOI部材100bとを互いに活性層101が設けられた面が向き合うように接合する。この接合ではSOI部材100a及びSOI部材100bに対して厚さ方向における加圧が行われる。
【0022】
図4(d)に例示する工程では、エッチング加工によって、SOI部材100bに開口部221が形成されることで、可動板21が形成され、SOI部材100aには、支持部11aと振動板11が形成される。さらに、
図4(d)に例示する工程では、可動板21の略中央部に導入口211が形成される。
【0023】
図5に例示する工程では、圧電素子41が振動板11の上側の面に接着される。圧電素子41の接着においては、接着剤が塗布された振動板11の上面に圧電素子41が載せられる。そして、圧電素子41の上方から加圧されることで、圧電素子41が振動板11に密着して接着されるとともに、接着剤の層を薄くすることができる。なお、本実施形態では、
図4(d)に例示する工程の後に圧電素子41の接着が行われたが、圧電素子41の接着は、
図4(a)から
図4(d)に例示する工程のいずれかの工程において行われてもよい。すなわち、圧電素子41を振動板11に設ける工程は、MEMSプロセスによって行われてもよい。
【0024】
(実施形態の作用効果)
本実施形態に係るMEMSポンプ1は、振動板11、可動板21、導入口211及び開口部221の作製がMEMSプロセスによって行われる。そのため、本実施形態に係るMEMSポンプ1は、機械的なプロセスで作製されるマイクロポンプと比較して、高精度に作製される。
【0025】
本実施形態では、MEMSポンプ1の作製にSOI部材100を採用した。SOI部材100は、MEMSプロセスによる薄膜積層工程では作製困難な厚い(例えば、数10μm以上)構造を実現することができる。また、MEMSポンプ1では、単結晶シリコンで形成された支持基板103によって振動板11が形成され、単結晶シリコンで形成された活性層101によって可動板21が形成される。単結晶シリコンであることから、振動板11及び可動板21の残留応力が可及的に抑制される。そのため、MEMSポンプ1では、残留応力によるギャップ31の個体差を抑制することができる。また、SOI部材100を採用することで厚い構造をMEMSポンプ1に適用できるため、MEMSポンプ1は、流体ポンプに求められる振動板11及び可動板21の剛性を確保することができる。
【0026】
本実施形態に係るMEMSポンプ1は、動作速度の遅い逆止弁を有しない。そのため、MEMSポンプ1は、振動板11を高周波数で大きく振動させることができ、ひいては、逆止弁を有するポンプよりも高い流量を確保することができる。
【0027】
<第1変形例>
実施形態では、SOI部材100a、SOI部材100bといった2つのSOI部材100を用いてMEMSポンプ1が作製されたが、1つのSOI部材100とシリコンウェハとを組み合わせてMEMSポンプ1が作製されてもよい。第1変形例では、振動板11をシリコンウェハで作製し、可動板21と基板22とをSOI部材100で作製する例について説明する。
図6は、第1変形例に係るMEMSポンプ1の作製方法の一例を示す図である。以下、
図6を参照して第1変形例に係るMEMSポンプ1の製造方法について説
明する。
【0028】
図6(a)に例示する工程では、振動板11作製に用いるシリコンウェハ150と、可動板21、基板22、導入口211及び開口部221の作製に用いるSOI部材100とが用意される。
図6(b)に例示する工程では、シリコンウェハ150に対して時間制御でエッチング加工が行われる。また、SOI部材100に対して、酸化膜102に達するまでエッチング加工が行われる。SOI部材100に対するエッチング加工は、活性層101から酸化膜102に達した時点でエッチング加工が停止する。そのため、SOI部材100に対するエッチング加工は、時間制御を行わなくとも容易に高精度のものとなる。
【0029】
図6(c)に例示する工程では、エッチング加工が行われたシリコンウェハ150とSOI部材100とを、互いにエッチング加工が行われた面が向き合うように接合する。この接合では、シリコンウェハ150及びSOI部材100に対して厚さ方向における加圧が行われる。
【0030】
図6(d)に例示する工程では、エッチング加工によって、SOI部材100bに開口部221が形成されることで、可動板21が形成され、SOI部材100aには、支持部11aと振動板11が形成される。さらに、
図6(d)に例示する工程では、可動板21の略中央部に導入口211が形成される。圧電素子41を接着する工程は実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0031】
第1変形例によれば、可動板21及び基板22はSOI部材100によって作製される。そのため、可動板21及び基板22の加工では、
図6(b)を参照して説明したように、時間制御を行わなくとも高精度のエッチング加工を行うことができる。そのため、第1変形例によれば、振動板11、可動板21及び基板22をシリコンウェハで作製する場合と比較して、高精度のMEMSポンプ1をより容易に作製することができる。
【0032】
<第2変形例>
第1変形例では、振動板11がシリコンウェハで作製され、可動板21と基板22とがSOI部材100で作製された。第2変形例では、振動板11がSOI部材100で作製され、可動板21と基板22とがシリコンウェハ150で作製される例について説明する。
図7は、第2変形例に係るMEMSポンプ1の作製方法の一例を示す図である。以下、
図7を参照して第2変形例に係るMEMSポンプ1の製造方法について説明する。
【0033】
図7(a)に例示する工程では、振動板11の作製に用いるSOI部材100と、可動板21、基板22、導入口211及び開口部221の作製に用いるシリコンウェハ150とが用意される。
図7(b)に例示する工程では、SOI部材100に対して、酸化膜102に達するまでエッチング加工が行われる。SOI部材100に対するエッチング加工は、活性層101から酸化膜102に達した時点でエッチング加工が停止する。そのため、SOI部材100に対するエッチング加工は、時間制御を行わなくとも容易に高精度のものとなる。また、シリコンウェハ150に対して時間制御でエッチング加工が行われる。
【0034】
図7(c)に例示する工程では、エッチング加工が行われたSOI部材100とシリコンウェハ150とを、互いにエッチング加工が行われた面が向き合うように接合する。この接合では、シリコンウェハ150及びSOI部材100に対して厚さ方向における加圧が行われる。
【0035】
図7(d)に例示する工程では、エッチング加工によって、SOI部材100bに開口部221が形成されることで、可動板21が形成され、SOI部材100aには、支持部
11aと振動板11が形成される。さらに、
図7(d)に例示する工程では、可動板21の略中央部に導入口211が形成される。圧電素子41を接着する工程は実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0036】
第2変形例によれば、振動板11はSOI部材100によって作製される。そのため、振動板11の加工では、
図6(b)を参照して説明したように、時間制御を行わなくとも高精度のエッチング加工を行うことができる。そのため、第2変形例によれば、振動板11、可動板21及び基板22をシリコンウェハで作製する場合と比較して、容易に高精度のMEMSポンプ1を作製することができる。
【0037】
<第3変形例>
高精度に作製されるMEMSポンプ1では、振動板11と可動板21の表面が平滑な面(鏡面)となっていることから、振動板11と可動板21とが接触するとスティック(固着)する虞がある。そこで、第3変形例では、振動板11または可動板21の表面に複数の突起を設けることで、このようなスティックを抑制する構造について説明する。
【0038】
図8は、第3変形例に係るMEMSポンプ1aの一例を示す第1の図である。
図8では、MEMSポンプ1aを側面から見た断面が例示される。
図8に例示されるMEMSポンプ1aでは、振動板11の下側の表面から可動板21に向けて突出する複数の振動板側ストッパ12が所定間隔で設けられる。振動板側ストッパ12の高さは、ギャップ31の間隔よりも小さく形成されるため、振動板11が振動していない状態では振動板側ストッパ12と可動板21とは接触せずに互いに離れている。
【0039】
図9は、第3変形例に係るMEMSポンプ1aの一例を示す第2の図である。
図9では、MEMSポンプ1aを側面から見た断面が例示される。
図9に例示されるMEMSポンプ1aでは、可動板21の上側の表面から振動板11に向けて突出する複数の可動板側ストッパ23が所定間隔で設けられる。可動板側ストッパ23の高さは、ギャップ31の間隔よりも小さく形成されるため、振動板11が振動していない状態では可動板側ストッパ23と振動板11とは接触せずに互いに離れている。
【0040】
このような振動板側ストッパ12や可動板側ストッパ23が設けられることで、振動板11と可動板21とが密着することが抑制され、ひいては、振動板11と可動板21とのスティックが抑制される。
【0041】
<付記1>
第1半導体層(101)と、前記第1半導体層(101)よりも厚い第2半導体層(103)と、前記第1半導体層(101)と前記第2半導体層(103)との間に形成される酸化膜層(102)とを含むSilicon On Insulator(SOI)部材(100、100a)の前記第2半導体層(103)を加工して形成された振動板(11)と、
前記振動板(11)の上側の面に設けられ、前記振動板(11)を振動させる駆動部(41)と、
前記振動板(11)の下側の面に対向して設けられ、貫通孔(211)が形成された可動板(21)と、を備える、
流体ポンプ(1)。
<付記2>
振動板(11)と、
前記振動板(11)の上側の面に設けられ、前記振動板(11)を振動させる駆動部(41)と、
前記振動板の下側の面に対向して設けられ、第1半導体層(101)と、前記第1半導
体層よりも厚い第2半導体層(102)と、前記第1半導体層(101)と前記第2半導体層(103)との間に形成される酸化膜層(102)とを含むSilicon On Insulator(SOI)部材(100、100b)の前記第1半導体層(101)を加工して形成され、貫通孔(211)を含む可動板(21)と、を備える、
流体ポンプ(1)。
<付記3>
第1半導体層(101)と、前記第1半導体層(101)よりも厚い第2半導体層(103)と、前記第1半導体層(101)と前記第2半導体層(103)との間に形成される第1酸化膜層(102)とを含む第1Silicon On Insulator(SOI)部材(100a)の前記第2半導体層(103)を加工して形成された振動板(11)と、
前記振動板(11)の上側の面に設けられ、前記振動板(11)を振動させる駆動部(41)と、
前記振動板(11)の下側の面に対向して設けられ、第21半導体層(101)と、前記第21半導体層(101)よりも厚い第22半導体層(103)と、前記第21半導体層(101)と前記第22半導体層(103)との間に形成される第2酸化膜層(102)とを含む第2Silicon On Insulator(SOI)部材(100b)の前記第21半導体層(101)を加工して形成され、貫通孔(211)を含む可動板(21)と、を備える、
流体ポンプ(1)。
【0042】
以上説明した実施形態の構成は例示であり、開示の技術は実施形態の構成に限定されない。また、以上で開示した実施形態や変形例はそれぞれ組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0043】
1・・MEMSポンプ
1a・・MEMSポンプ
11・・振動板
11a・・支持部
12・・振動板側ストッパ
21・・可動板
22・・基板
23・・可動板側ストッパ
31・・ギャップ
41・・圧電素子
50・・治具
51・・支持部
100・・SOI部材
100a・・SOI部材
100b・・SOI部材
101・・活性層
102・・酸化膜
103・・支持基板
150・・シリコンウェハ
211・・導入口
221・・開口部