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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101310
(43)【公開日】2023-07-20
(54)【発明の名称】校正値の算出方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 19/00 20130101AFI20230712BHJP
【FI】
G01C19/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022001874
(22)【出願日】2022-01-07
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 高弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅浩
【テーマコード(参考)】
2F105
【Fターム(参考)】
2F105AA10
2F105BB07
(57)【要約】
【課題】旋回式建設機械に用いる慣性センサのジャイロに生じる誤差を校正するための校正値の算出方法を提案する。
【解決手段】旋回式建設機械に設けられた慣性センサにより旋回角速度を取得する旋回角度取得工程S1と、旋回角速度から旋回速度Nを算出する旋回速度算出工程S2と、旋回速度Nの誤差の割合SFを算出する誤差割合算出工程S3と、校正する旋回速度の区間を選択する校正区間選択工程S4と、誤差の割合SFに基づいて、前記区間に含まれる旋回速度Nを校正するための補正関数を求める補正関数定義工程S5と、補正関数を用いて補正係数を算出する補正係数算出工程S6と、補正係数から前記旋回速度Nの校正値を算出する校正値算出工程S7とを備えている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジャイロの校正に使用する校正値の算出方法であって、
慣性センサにより旋回角速度を取得する工程と、
前記旋回角速度から旋回速度Nを算出する工程と、
前記旋回速度Nの誤差の割合SFを算出する工程と、
校正する旋回速度の区間を選択する工程と、
前記誤差の割合SFに基づいて、前記区間に含まれる前記旋回速度Nを校正するための補正関数を求める工程と、
前記補正関数を用いて補正係数を算出する工程と、
前記補正係数から前記旋回速度Nの校正値を算出する工程と、を備えていることを特徴とする、校正値の算出方法。
【請求項2】
前記旋回速度Nは、旋回時間T内で時間Δtごとに前記慣性センサで取得された旋回角速度ωの積分値θを前記旋回時間Tで除すことにより算出することを特徴とする、請求項1に記載の校正値の算出方法。
【請求項3】
前記慣性センサは、エンコーダを有する試験装置の旋回試験用テーブルに取り付けられており、
前記誤差の割合SFは、式1を利用して、前記エンコーダで取得された前記旋回試験用テーブルの回転角θeと、前記積分値θとから算出することを特徴とする、請求項2に記載の校正値の算出方法。
【数1】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に使用される慣性センサのジャイロの校正に使用する校正値の算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
旋回式建設機械を利用した建設工事において、旋回式建設機械に設置された2台のターゲットを2台のトータルステーションにより自動追尾することで、旋回式建設機械の旋回方向を検出するとともに、旋回式建設機械のブーム、アーム、ヘッド部に取り付けた傾斜計により傾斜角を検出することで、施工管理を行う場合がある。
一方、トータルステーションによる自動追尾では、旋回式建設機械の旋回時にターゲットを正しく視準できないことがある。
しかし、旋回式建設機械の旋回部に高精度な慣性センサが備わっていれば、慣性センサによる測定値と照らし合わせることで、トータルステーションによる視準ミスを検知し、トータルステーションを自動復帰させることができる。
慣性センサは、3軸のジャイロと3軸の加速度センサからなるセンサで、主に慣性航法等に用いられ三次元位置の自己診断に用いられる。
慣性センサでは、ジャイロのドリフトによる誤差が蓄積する。このような誤差に対し、例えば、特許文献1や特許文献2に示すように、慣性センサの校正方法が開示されている。特許文献1や特許文献2に記載の校正方法は、ゼロ点バイアスおよびスケールファクターの温度依存特性などを最適化するための最小二乗を用いたパラメータの設定方法である。
ここで、旋回式建設機械では、旋回部がプラス側とマイナス側の両方に動くことで、ジャイロの誤差もプラスとマイナスに生じる。そのため、旋回式建設機械に用いる慣性センサにおいては、一律に校正することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-209000号公報
【特許文献2】特開2011-209001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、旋回式建設機械に用いる慣性センサのジャイロに生じる誤差を校正するための校正値の算出方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための本発明のジャイロ校正方法は、慣性センサにより旋回角速度を取得する工程と、前記旋回角速度から旋回速度Nを算出する工程と、前記旋回速度Nの誤差の割合SFを算出する工程と、校正する前記旋回速度Nの区間を検出する工程と、前記誤差の割合SFから前記区間における補間関数を求める工程と、前記補間関数を用いて補正係数を算出する工程と、前記補正係数から校正値を算出する工程とを備えている。
かかるジャイロ校正方法によれば、ジャイロの個別の特性を把握したうえで校正することができるため、ジャイロ(慣性センサ)を高精度に校正することができる。一律に校正するのではなく、旋回速度に応じて校正するため、建設機械のように、プラス側とマイナス側の両方に生じる誤差に対して校正することを可能としている。
【0006】
なお、前記旋回速度Nは、式1を利用して、慣性センサの旋回角度ωの積分値(旋回角速度積分値)θと旋回時間Tとの割合により算出するのが望ましい。
また、前記慣性センサがエンコーダを有する試験装置の旋回試験用テーブルに取り付けられている場合には、前記誤差の割合SFは、式2を利用して、前記旋回角速度積分値θと、前記エンコーダにより検出された前記旋回試験用テーブルの回転角(エンコーダ回転角)θeとから算出するのが望ましい。
【0007】
【数1】
【発明の効果】
【0008】
本発明の校正値の算出方法を使用すれば、一律に校正することができないジャイロの誤差を校正することが可能となり、ひいては、当該ジャイロを介して旋回式建設機械の移動を的確に把握することで、より正確な施工を実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の旋回式建設機械による施工状況を示す概略図である。
図2】本実施形態の掘削補助システムを示すブロック図である。
図3】旋回角に対する慣性センサの誤差の割合を示すグラフである。
図4】実施例に使用した試験装置の模式図である。
図5】ジャイロ校正方法の手順を示すフローチャートである。
図6】旋回角度と誤差の割合の関係の例を示すグラフである。
図7】旋回角度とセンサ補正値の関係の例を示すグラフである。
図8】区間ごとの補正関数の例を示すグラフである。
図9】再現実験結果を示すグラフである。
図10】再現実験結果の時間と旋回角度の誤差との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態では、旋回式建設機械1を利用して山岳トンネルを施工する場合について説明する。図1に旋回式建設機械1による施工状況を示す。図1に示すように、旋回式建設機械1は、発破後の切羽(トンネル先端部)において、掘削直後の切羽面やトンネル壁面に残存する浮石の除去(コソク)に使用する。
本実施形態の旋回式建設機械1は、いわゆるバックホウであって、走行体11と、走行体11上に縦軸を中心に回転可能に設けられた旋回体12と、旋回体12に横軸を中心に回動可能に取り付けられたブーム13と、ブーム13の先端部に横軸を中心に回動可能に取り付けられたアーム14と、アーム14の先端部に横軸を中心に回動可能に取り付けられたヘッド部15とを備えている。ヘッド部15は、いわゆるアタッチメントであって、本実施形態のヘッド部15は、ノミ16を備えた油圧式のブレーカーである。
【0011】
旋回式建設機械1によるコソク作業は、掘削補助システム2を利用して、ノミ16の先端位置を把握した状態で行う。ノミ16の先端位置を的確に把握できれば、旋回式建設機械1を適切に操作できるようになるので、効率的かつ精度の高いトンネル施工が可能となる。一方、ノミ16の先端位置を把握するためには旋回式建設機械1の位置および向きを正確に把握する必要があるが、旋回式建設機械1の測定に視準ミスがあるとノミ16の先端位置を正確に制御することができない。そのため、本実施形態の掘削補助システム2は、視準ミスを自動的に補完して、ノミ16の先端位置を制御する。
図2に掘削補助システム2の概要を示す。図2に示すように、本実施形態の掘削補助システム2は、二台のターゲット3と、二台のトータルステーション4と、三軸加速度センサ5と、慣性センサ6と、コンピュータ7とを備えている。
【0012】
ターゲット3は、図1に示すように、旋回式建設機械1の旋回体12の後部に固定されている。本実施形態では、二台のターゲット3,3が、旋回体12の上面に間隔をあけて配設されている。ターゲット3は、反射プリズムを備えており、トータルステーション4から照射された光波を、トータルステーション4に向けて反射する。本実施形態では、全周方向(ターゲット3を中心とした360°の方向)から測定可能なターゲットプリズムを使用する。
【0013】
トータルステーション4は、図1に示すように、旋回式建設機械1の後方に据え付けられていて、ターゲット3を自動追尾する。本実施形態では、二台のトータルステーション4を据え付けて、それぞれのトータルステーション4が異なるターゲット3の測量を行う。すなわち、一方のトータルステーション4により一方のターゲット3を自動追尾し、他方のトータルステーション4により他方のターゲット3を自動追尾する。
トータルステーション4は、ターゲット3の位置を計測し、図示しない通信手段を介して計測結果をコンピュータ7に送信する。
【0014】
三軸加速度センサ5は、図1に示すように、ブーム13、アーム14およびヘッド部15にそれぞれ取り付けられている。各三軸加速度センサ5は、取付位置において三軸加速度を検出する。三軸加速度は、互いに直交する3つの軸(X軸、Y軸、Z軸)方向の加速度である。X軸およびY軸は、水平面内において互いに直交する軸であり、Z軸は、水平面に垂直な軸(鉛直軸)である。三軸加速度センサ5により計測された三軸加速度は、通信手段(図示せず)を介してコンピュータ7に送信される。
【0015】
慣性センサ6は、旋回体12に設けられている。慣性センサ6は、旋回体12の三軸加速度および三軸回転角速度を検出する。三軸回転角速度は、互いに直交する3つの軸(X軸、Y軸、Z軸)周りの角加速度である。慣性センサ6は、ジャイロ(三軸ジャイロ)、加速度計(三軸加速度計)を備えている。ジャイロは、旋回体12の三軸回転角速度を検出する。加速度計は、取付位置において三軸加速度を検出する。慣性センサ6の計測結果は、コンピュータ7に送信される。
【0016】
コンピュータ7は、算出手段71、視準ミス判定手段72および記憶手段73を備えている。算出手段71は、旋回式建設機械1のヘッド部15に設けられたノミ16の先端位置を算出する。また、視準ミス判定手段72は、トータルステーション4による計測のミスを検知する。さらに、記憶手段73は、トータルステーション4、三軸加速度センサ5、慣性センサ6から送信された計測結果や、算出手段71および視準ミス判定手段72の計算結果等を記憶する。
【0017】
算出手段71は、トータルステーション4から送信された測定結果に基づいて各ターゲット3の座標を算出し、両ターゲット3,3の座標から旋回式建設機械1の向きや傾きを算出する。トータルステーション4は、主に現場座標系での旋回式建設機械1の三次元座標を求め、慣性センサ6で旋回体12のピッチング角とローリング角を求め、結果として旋回式建設機械1の三次元座標と方向角と傾きが検出される。
また、算出手段71は、三軸加速度センサ5から送信されたデータ(ブーム13、アーム14およびヘッド部15の三軸加速度)に基づいて三軸加速度センサ5の取付位置(ブーム13、アーム14またはヘッド部15)におけるピッチング角およびローリング角を算出する。ピッチング角およびローリング角を算出したら、算出結果(三軸加速度センサ5の取付位置におけるピッチング角、ローリング角)およびトータルステーション4の計測結果に基づいてノミ16の先端位置を算出する。
さらに、本実施形態の算出手段71は、一方のトータルステーション4の視準ミスが検知された場合に、他方のトータルステーション4による計測結果と、慣性センサ6による計測結果とを利用して、ノミ16の先端位置を算出する。すなわち、算出手段71は、以下の手順によって視準ミスを補完する。まず、ターゲット3の測定座標からヨー角を算出し、慣性センサ6の計測結果に基づいて算出されたヨー角との差分を求める。次に、慣性センサ6の計測結果から算出されたヨー角と差分値とを利用して、実ヨー角を算出する。そして、正常に測定したトータルステーション4の測定結果と、実ヨー角とを用いて、ノミ16の先端位置を算出する。
【0018】
視準ミス判定手段72は、予め記憶されたターゲット3同士の位置関係(ターゲット3同士の距離、一方のターゲット3の対する他方のターゲット3の位置等)である実位置関係と、トータルステーション4により測定されたターゲット3の座標から求まるターゲット3同士の位置関係である測定位置関係とを比較する。比較の結果、実位置関係のターゲット同士の距離と、計測位置関係のターゲット3同士の距離が異なっている場合、視準ミス判定手段72は、いずれか一方または両方のトータルステーション4による計測にミスがあるとして、信号を発信する。信号は通信手段を介してオペレータや作業所等に送信される。
なお、視準ミス判定手段72は、慣性センサ6により測定された三軸加速度および三軸回転角速度から算出される旋回体のヨー角を利用して、測定位置関係を算出する。これにより、一方のターゲット3に対する他方のターゲット3の位置を把握することができる。そのため、両トータルステーション4,4が測定するべきターゲット3とは異なるターゲット3を測定している場合(一方のトータルステーション4が他方のターゲット3を測定し、他方のトータルステーション4が一方のターゲット3を測定している場合)であって、ターゲット3同士の間隔が正しい数値である場合に、トータルステーション4による視準ミスを検知する。
【0019】
ここで、慣性センサ6では、旋回角速度に応じて誤差が発生する。図3は、慣性センサ82の誤差の割合(慣性センサの旋回角と実際の旋回角との誤差の割合)SFの例を示す。図3は、4種類の慣性センサ(A~D)について、誤差の割合SFを示したものである。図3に示すように、誤差の割合SFは、一定に増減するのではなく、旋回角速度により変化する。また、慣性センサ6に生じる誤差は、慣性センサ6の種類によって個別に独自の特性があり、旋回角速度の大きさによっても変化する。そのため、慣性センサ6の誤差は、一律に校正するのではなく、旋回式建設機械1の旋回角速度の大きさに見合った所定の区間毎に適切に校正する必要がある。
算出手段71は、予め定義されたジャイロの補正関数f(x)を用いてジャイロの校正を行う。補正関数f(x)は、試験装置8を利用して、慣性センサ6のジャイロ特性を把握した上で定義する。図4に試験装置8の概要を示す。図4に示すように、試験装置8は、慣性センサ6が設置される旋回テーブル(旋回試験用テーブル)81と、旋回テーブル81を旋回させるサーボモータ82と、旋回テーブル81(サーボモータ82)の回転データ(角度や移動量)を検出するエンコーダ83とからなる。試験装置8は、旋回テーブル81の回転速度を自由に設定できる機能を有している。そして、旋回テーブル81を一定の速度で旋回させ、慣性センサ6の出力データを収集解析する。
【0020】
図5にジャイロ校正方法の手順を示す。ジャイロ校正方法は、図5に示すように、旋回角度取得工程S1と、旋回速度算出工程S2と、誤差割合算出工程S3と、校正区間選択工程S4と、補正関数定義工程S5と、補正係数算出工程S6と、校正値算出工程S7とを備えている。
旋回角度取得工程S1は、慣性センサ6により旋回角速度を取得する工程である。試験装置8に慣性センサ6をセットして、旋回テーブル81を低速旋回させた際のデータを収集する。旋回速度は、旋回式建設機械1の旋回速度を想定した大きさとする。
【0021】
旋回速度算出工程S2は、旋回角速度から旋回速度Nを算出する工程である。旋回速度Nは、旋回時間T内で時間Δtごとに慣性センサ6で取得された旋回角速度ωの積分値(旋回角速度積分値)θを前記旋回時間Tで除すことにより算出する(式1)。
【0022】
【数2】
【0023】
誤差割合算出工程S3は、旋回速度Nの誤差の割合SFを算出する工程である。誤差の割合SFは、式2を利用して、エンコーダ83で取得されたエンコーダ回転角θeと、慣性センサ6で取得された旋回角速度ωの積分値(旋回角速度積分値)θとから算出する。
なお、誤差の割合SF<0の場合、慣性センサ測定値が実際の旋回速度よりも大きく出力されていることを意味し、SF>0の場合は、慣性センサ測定値が実際の旋回速度よりも少なく出力されていることを意味する。図6に旋回速度と誤差の割合SFの関係の例を示す。
【0024】
【数3】
【0025】
校正区間選択工程S4は、校正する旋回速度の区間(選定区間)を選択する工程である。まず、試験装置8で得られた誤差の割合SFから慣性センサ6の実測値を補正するためのセンサ補正値HSF(=1+SF)を求める。図7に旋回速度とセンサ補正値HSFとの関係を示す。次に、補正関数を定義する選定区間を選定する。
【0026】
補正関数定義工程S5は、センサ補正値HSF(誤差の割合SF)に基づいて、選定区間に含まれる旋回速度Nを校正するための補正関数f(x)を求める工程である。選定区間を関数化すること(すなわち、選定区間ごとに補正関数f(x)を定義すること)で、連続性を確保する。図8に示すように、例えば、測定P1から測点P2までの区間(選定区間)Aにおける補正関数f(x1)を定義する。同様に、測点P2から測点P3までの区間B、測点P3から測点P4までの区間C、測点P4から測点P5までの区間D、測点P5から測点P6までの区間Eにおける補正関数f(x2)~f(x6)をそれぞれ定義する。
【0027】
補正係数算出工程S6は、補正関数f(x)を用いて補正係数kを算出する工程である。補正係数kは、校正するセンサ出力値ωを補正関数f(x)に代入することにより算出する。すなわち、慣性センサ6からの出力(角速度)が、区間A~Eの何れに含まれるかを検出し、その区間に対応する補正関数f(x)を用いて補正係数kを算出する(式3参照)。
k=f(ω) ・・・式3
【0028】
校正値算出工程S7は、補正係数kから旋回速度Nの校正値ω0を算出する工程である。
校正値ω0は、式4に示すように、補正係数kと実測の角速度(センサ出力値ω)とを乗算して算出する。
ω0=k×ω ・・・式4
【0029】
以上、本実施形態の掘削補助システム2を利用した施工方法によれば、トータルステーション4の視準ミスを適切に検出して、建設機械による掘削作業の施工誤差を最小限に抑えることができる。トータルステーション4の視準ミスの補完は、掘削補助システム2により自動的に実行されるため、複雑な計算や操作を測定者が実施する手間を省略できる。このとき、ジャイロの個別の特性を把握したうえで、ジャイロ(慣性センサ6)を高精度に校正できる。ジャイロの校正は、一律に行うのではなく、旋回速度に応じた補正係数kを利用して校正するため、建設機械のように、プラス側とマイナス側の両方に生じる誤差に対して校正することを可能としている。ゆえに、ジャイロの精度を高めることが可能となる。なお、本実施形態では、補正関数f(x)を実施工前に予め定義しておき、実施工時のジャイロの校正に活用する。
【0030】
以下、試験装置8を用いて旋回動作を試験装置8で再現し、慣性センサ6の校正前と校正後の性能を比較した結果を示す。真の旋回角は、エンコーダ83により検出されたエンコーダ回転角θeとする。
図9に再現試験結果を示す。約320秒間の作業時間での旋回において、校正後の最終旋回角は、エンコーダ回転角θeと重なっている。一方、校正前の慣性センサ6の最終旋回角は、図9に示すように、エンコーダ回転角θeよりも少し大きく検出されている。図10に校正前および校正後の旋回角度とエンコーダ回転角θeとの差分を示す。図10に示すように、校正前は、エンコーダ回転角θeと大きな誤差が生じたが、校正後の誤差はわずかであった。
したがって、本実施形態の慣性センサ校正方法によれば、慣性センサ6を高精度に校正できることが確認できた。また、慣性センサ6は、個別に独自の特性があり、個々の特性を把握して構成する必要があるが、本実施形態の慣性センサ校正方法を利用することで、比較的簡易に校正できる。
【0031】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、旋回式建設機械1がバックホウの場合について説明したが、旋回式建設機械1を構成する機械は、旋回体を有するものであれば限定されるものではない。
【符号の説明】
【0032】
1 旋回式建設機械
2 掘削補助システム
3 ターゲット
4 トータルステーション
5 三軸加速度センサ
6 慣性センサ
7 コンピュータ
71 算出手段
72 視準ミス判定手段
8 試験装置
81 旋回テーブル(旋回試験用テーブル)
82 サーボモータ
83 エンコーダ
S1 旋回角度取得工程
S2 旋回速度算出工程
S3 誤差割合算出工程
S4 校正区間選択工程
S5 補正関数定義工程
S6 補正係数算出工程
S7 校正値算出工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10