特開 2023-101312 電気圧力鍋

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2023101312

(43)【公開日】2023-07-20

(54)【発明の名称】電気圧力鍋

(51)【国際特許分類】

   A47J 27/00 20060101AFI20230712BHJP

   A47J 27/086 20060101ALI20230712BHJP

【ＦＩ】

A47J27/00 109L

A47J27/086

【審査請求】未請求

【請求項の数】10

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2022001877

(22)【出願日】2022-01-07

(71)【出願人】

【識別番号】390010168

【氏名又は名称】東芝ホームテクノ株式会社

(71)【出願人】

【識別番号】503376518

【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】110003063

【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】斎藤 紀子

(72)【発明者】

【氏名】加藤 善光

(72)【発明者】

【氏名】小林 博明

(72)【発明者】

【氏名】初川 嘉一

(72)【発明者】

【氏名】三宅 一也

【テーマコード（参考）】

4B055

【Ｆターム（参考）】

4B055AA08

4B055BA34

4B055BA36

4B055GB45

4B055GC01

4B055GC21

4B055GD05

4B055GD06

(57)【要約】      （修正有）

【課題】同一の料理メニューであっても自動調理の選択や所要時間の選択が可能な電気圧力鍋を提供する。
【解決手段】発明の電気圧力鍋は、被調理物を収容する鍋と、鍋を加熱する底面ヒータ６と、底面ヒータ６を制御して被調理物を自動調理する調理制御手段３５と、を備え、調理制御手段３５は、同一の料理メニューであっても調理時間としての（ニ）調理工程の時間が異なる、複数の調理方法の設定で調理の制御を行なうこと可能であり、複数の自動調理が可能である構成としている。
【選択図】図３

【特許請求の範囲】

【請求項1】

被調理物を収容する鍋と、
前記鍋を加熱する加熱手段と、
前記加熱手段を制御して前記被調理物を自動調理する調理制御手段と、を備え、
前記調理制御手段は、同一の料理メニューであっても調理時間が異なる複数の前記自動調理が可能であることを特徴とする電気圧力鍋。

【請求項2】

前記自動調理は、沸騰加熱工程と、加圧加熱工程と、煮込加熱工程と、を有し、
前記調理制御手段は、前記沸騰加熱工程の時間と、前記加圧加熱工程の時間と、前記煮込加熱工程の時間の少なくとも１つを変えることで、前記調理時間が異なる複数の前記自動調理を実行することを特徴とする請求項１に記載の電気圧力鍋。

【請求項3】

前記調理時間の最も短い時間である最短調理時間が決められていることを特徴とする請求項１又は２に記載の電気圧力鍋。

【請求項4】

選択可能な前記調理時間を複数表示可能な表示手段をさらに備えることを特徴とする請求項１～３の何れか１項に記載の電気圧力鍋。

【請求項5】

前記表示手段は、前記調理時間に対応した調理コースを前記調理時間と同時に複数表示することを特徴とする請求項４に記載の電気圧力鍋。

【請求項6】

被調理物を収容する鍋と、
前記鍋を加熱する加熱手段と、
前記加熱手段を制御して前記被調理物を自動調理する調理制御手段と、を備え、
前記調理制御手段は、同一の料理メニューであっても前記被調理物の食感を異ならせる複数の前記自動調理が可能であることを特徴とする電気圧力鍋。

【請求項7】

前記自動調理は、沸騰加熱工程と、加圧加熱工程と、煮込加熱工程と、を有し、
前記調理制御手段は、前記沸騰加熱工程の時間と、前記加圧加熱工程の時間と、前記煮込加熱工程の時間の少なくとも１つを変えることで、前記被調理物の食感を異ならせる複数の前記自動調理を実行することを特徴とする請求項６に記載の電気圧力鍋。

【請求項8】

選択可能な前記食感を複数表示可能な表示手段をさらに備えることを特徴とする請求項６又は７に記載の電気圧力鍋。

【請求項9】

前記表示手段は、前記食感に対応した複数の前記自動調理の調理時間を前記食感と同時に複数表示することを特徴とする請求項８に記載の電気圧力鍋。

【請求項10】

前記表示手段は、選択した前記料理メニューの前記自動調理の調理終了までの時間又は調理終了時刻を表示することを特徴とする請求項４、５、８又は９の何れか１項に記載の電気圧力鍋。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、被調理物の自動調理が可能な電気圧力鍋に関する。

【背景技術】

【0002】

この種の電気圧力鍋として、例えば特許文献１には、調理物を収容する内鍋と、内鍋を誘導加熱する誘導加熱コイルと、誘導加熱コイルを制御して調理物を自動調理するマイコンと、を備え、このマイコンは、下ゆで工程と、煮込み工程とを順に行なう全自動コースを実行して自動調理を行なうものが開示されている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【特許文献1】特開２０１４－２００４５３号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

上述した特許文献１の技術は、圧力調理器の調理処理として７種類示されているが、どの料理でどの自動調理を行なえば適切であるかが示されておらず、自動調理の選択を適切に行なえない虞があった。また従来のこの種の電気圧力鍋は、調理する料理ごとに使用する自動調理が決められており、同一の料理を行なうには同一の自動調理を実行する調理方法が使用されるため、同一の料理でも、例えば平日は短時間で料理を作りたいが、休日は時間に余裕があるので、素材の味を活かした料理を作りたい、また、じっくり煮込んだ料理を作りたいといったユーザの要望に応えることができなかった。

【0005】

そこで本発明は、同一の料理メニューであっても自動調理の選択や所要時間の選択が可能な電気圧力鍋を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0006】

本発明の電気圧力鍋は、被調理物を収容する鍋と、前記鍋を加熱する加熱手段と、前記加熱手段を制御して前記被調理物を自動調理する調理制御手段と、を備え、前記調理制御手段は、同一の料理メニューであっても調理時間が異なる複数の前記自動調理が可能であることを特徴とする。

【発明の効果】

【0007】

本発明の電気圧力鍋によれば、生活スタイルに応じた自動調理の選択や所要時間の選択を、できあがり食感を参照しながら行なうことができる。

【図面の簡単な説明】

【0008】

【図1】本発明の一実施形態を示す電気圧力鍋の縦断面概略図である。

【図2】同上、蓋上部の縦断面図である。

【図3】同上、電気的構成を示すブロック図である。

【図4】同上、表示手段の平面図である。

【図5】同上、調理コースで「標準」、料理メニューで「煮豚」が選択されたときの調理工程および保温工程における、鍋温度センサの検知温度の経時的な変化を示すグラフである。

【図6】同上、調理コースで「時短」、料理メニューで「煮豚」が選択されたときの調理工程および保温工程における、鍋温度センサの検知温度の経時的な変化を示すグラフである。

【図7】同上、調理コースで「甘み」、料理メニューで「煮豚」が選択されたときの調理工程および保温工程における、鍋温度センサの検知温度の経時的な変化を示すグラフである。

【図8】同上、調理コースで「熟成」、料理メニューで「煮豚」が選択されたときの調理工程および保温工程における、鍋温度センサの検知温度の経時的な変化を示すグラフである。

【図9】本発明の一実施形態の変形例を示す電気圧力鍋の表示手段の平面図である。

【図10】本発明の一実施形態のさらなる変形例を示す電気圧力鍋の表示手段の平面図である。

【発明を実施するための形態】

【0009】

以下、本発明における好ましい電気圧力鍋の実施形態について、添付図面を参照して説明する。なお、これらの全図面にわたり、共通する部分には共通する符号を付すものとする。

【0010】

図１～図８は、本発明を電気圧力鍋に適用した一実施形態を示している。先ず、図１および図２に基づいて、本実施形態における電気圧力鍋の全体構成を説明すると、１は上面を開口した本体、２は本体１の開口上面を覆う開閉可能な蓋体であり、これらの本体１と蓋２とにより電気圧力鍋の外観が構成される。本体１は上面を開口した鍋収容部としての内枠３を有し、蓋２を開けたときに、被調理物Ｓを収容する有底筒状の鍋４が着脱自在に収容される構成となっている。そして本体１に鍋４を入れて蓋２を閉じると、蓋２の下面部に装着された内蓋５が鍋４の開口上面を塞ぐように構成される。

【0011】

鍋４の母材は熱伝導性に優れたアルミニウム系素材であり、母材の外面の側面下部から底部にかけて、ＩＨ加熱による発熱に優れた磁性金属のステンレス素材からなる発熱体を接合して形成される。また鍋４の内側には、例えばポリテトラフルオロエチレン（ＰＴＦＥ）やペルフルオロアルコキシフッ素樹脂（ＰＦＡ）からなる、図示しない鍋内面フッ素コートが塗布されている。

【0012】

内枠３は、例えばアルミメッキ鋼板製であり、収容された鍋４との間に空間を持たせるように、全体が有底筒状に形成される。そのため鍋４を内枠３に収容すると、鍋４が内枠３に吊設されるように構成される。鍋４の側面下部から底面に対向する内枠３の外面には、被炊飯物Ｓを炊飯するために鍋４を加熱する加熱手段としてＩＨ（induction heating：誘導加熱）ヒータによる底面ヒータ６が配設される。この底面ヒータ６に高周波電流を供給すると、底面ヒータ６から発生する交番磁界によって、鍋４の外面に設けた磁性体が発熱し、調理時と保温時に鍋４内の被調理物Ｓを加熱する構成となっている。

【0013】

また鍋４の側面上部に対向する内枠３の外面には、加熱手段としてコードヒータによる側面ヒータ７が配設される。鍋４への補助加熱手段となる側面ヒータ７が通電状態となると、この側面ヒータ７からの輻射熱で鍋４の主に側面上部を加熱する。

【0014】

内枠３の中央には挿通穴３ａが設けられており、本体１には、この挿通穴３ａを通り抜けて、鍋４の底部の外面である外底面に当接するサーミスタ式の鍋温度センサ１５が配設される、鍋温度検知手段となる鍋温度センサ１５は鍋４の底部温度を検知しており、後述する制御手段３１（図３参照）は、主に鍋温度センサ１５の検知温度に基づき底面ヒータ６を制御するように構成される。

【0015】

蓋２の上面には、鍋４内の被調理物Ｓから発生する蒸気を電気圧力鍋の外部に排出する蒸気口１１が設けられている。また蓋２の前方上面には、蓋開手段としての蓋体操作体１２が露出状態で配設される。この蓋体操作体１２を押動操作すると、本体１と蓋体２との係合が解除され、本体１の上部後方に設けたヒンジバネ１３により、蓋２の後方下部に設けられたヒンジ軸１４を回転中心として蓋体２が開く構成となっている。

【0016】

本体１の上方開口部を開閉する蓋２には、内蓋５の温度を検知するサーミスタ式の蓋温度センサ１６と、コードヒータなどの蓋ヒータ１７とがそれぞれ設けられている。本実施形態の蓋ヒータ１７は内蓋５を加熱して、内蓋５や鍋４内部の温度を上昇させるものであり、蓋加熱手段として機能している。ここで蓋２に内蓋５を装着すると、内蓋５の上面に蓋温度センサ１６が接触し、内蓋５の上面に蓋ヒータ１７が対向して配置される構成となっている。そして制御手段３１は、主に蓋温度センサ１６の検知温度に基づき蓋ヒータ１７の出力を制御するように構成される。

【0017】

内蓋５は鍋４の上方開口部と略同径の円盤状を有する金属材料からなり、鍋４と内蓋５との間をシールするために、内蓋５の外側全周に設けられる弾性部材としての蓋パッキン２１を有している。環状に形成された蓋パッキン２１は、蓋２を閉じた蓋閉時に、鍋４の開口部である上端部の上面および内側側面に当接して、この鍋４と内蓋５との間の隙間を塞いでいる。

【0018】

蓋２の下面部を構成する内蓋５の略中央には調圧部２２が配設される。調圧部２２は、鍋４内部と連通する蒸気孔２２ａと、ボール状の調圧弁２２ｂと、調圧弁２２ｂを移動させるソレノイド２２ｃを含んでいる。そして蒸気孔２２ａと、調圧弁２２ｂと、ソレノイド２２ｃの一部とが、鍋４の内部と蒸気口１１との間を連通する蒸気排出経路２３の途中に配設される。鍋４内の蒸気を外部へ放出する場合には、ソレノイド２２ｃにより調圧弁２２ｂを蒸気孔２２ａから移動させることにより、調圧弁２２ｂが塞いでいた蒸気孔２２ａを開放することで蒸気排出経路２３を開放し、鍋４への加熱に関係なく鍋４内部を大気圧に維持する。また鍋４内を加圧状態にする場合には、ソレノイド２２ｃが後方に戻ることで調圧弁２２ｂが自重で蒸気孔２２ａに移動し、調圧弁２２ｂにより蒸気孔２２ａを閉塞させるように、ソレノイド２２ｃが調圧弁２２ｂを移動させることにより蒸気排出経路２３を閉塞し、鍋４の開口部がすべて密閉される。ここで加圧時には、底ヒータ６や側面ヒータ７により鍋４が加熱されることにより鍋４内の被炊飯物Ｓも加熱され、鍋４の内圧が所定値に達すると、調圧弁２２ｂの自重に抗して蒸気排出経路２３を開放することで、鍋４内の圧力を大気圧以上に維持する構成となっている。したがって、蒸気排出経路２３は、鍋４の内外を連通する通路としての機能を有し、調圧部２２は蒸気排出経路２３を開閉させる通路開閉手段としての機能を有している。また内蓋５、蓋パッキン２１および調圧部２２を有する蓋２は、鍋４の開口部を密閉可能に覆う蓋体としての機能を有している。

【0019】

蓋体２の上面には、蒸気口１１や蓋体操作体１２の他に、調理に関わる様々な情報を表示するための、画面表示部としてのＬＣＤ（Liquid Crystal Display：液晶ディスプレイ）４１や状態表示部としての工程ＬＥＤ（Light Emitting Diode：発光ダイオード）表示部４２～４６（図４参照）、などで構成される表示手段２５と、例えばタッチセンサなどで構成されて表示手段２５の上方に配設され、調理を開始させたり、時間や調理方法などを選択させたりするための操作手段２６と、がそれぞれ配設される。そして、表示手段２５の下方には、電気圧力鍋の各部を制御するための制御手段３１（図３参照）を備えた制御ＰＣ（Printed Circuit：印刷回路）板２７が配置される。

【0020】

タッチセンサで構成された操作手段２６は、例えば、導電性ポリマーによる透明電極部と制御ＰＣ板２７に接続する接点部との間をパターン配線で繋いだ構成要素が、タッチキーとして複数配設されるものであり、ＬＣＤ２５に表示される複数のボタン表示部の何れかに、操作手段２６を介してタッチ操作を行なうことで、そのボタン表示部の上に配設され、当該ボタン表示部に対応したタッチキーがタッチ操作されて、このボタン表示部が選択される構成となっている。

【0021】

図３は、本実施形態における電気圧力鍋の電気的な構成を示している。同図において、３１は本体１または蓋２の内部に組み込まれた制御手段である。制御手段３１は、マイクロコンピュータを構成する制御用ＩＣ、各種の情報やデータを記憶する読み出しおよび書き込みが可能なメモリなどの記憶手段３２、時間を計時するタイマーなどの計時手段３４、各部の駆動素子などを含んで構成されている。また制御手段３１の入力ポートには、前述した鍋温度センサ１５と、蓋温度センサ１６と、操作手段２６に加えて、圧力検知手段３３が電気的に接続される。また制御手段３１の出力ポートには、前述した底面ヒータ６と、側面ヒータ７と、蓋ヒータ１７と、ソレノイド２２ｃと、表示手段２５と、がそれぞれ電気的に接続される。

【0022】

圧力検知手段３３は鍋４内の圧力を検知するものである。圧力検知手段３３の構成は特に制限されず、例えば鍋４内の圧力を検知する圧力センサを圧力検知手段３３として本体１や蓋２に設けてもよい。あるいは鍋４底部の温度を被調理物Ｓの温度と略同等として、鍋温度センサ１５で検知した鍋４底部の温度から鍋４内の圧力を算出する圧力算出手段を、後述するプログラムの制御シーケンス上の機能として制御手段３１に設け、この圧力算出手段を圧力検知手段３３としてもよい。

【0023】

制御手段３１は、操作手段２６からの操作信号と、鍋温度センサ１５や蓋温度センサ１６からの各検知信号を受けて、内蔵する計時手段３４からの計時に基づく所定のタイミングで、表示手段２５に表示制御信号を出力し、また底ヒータ６と、側面ヒータ７と、蓋ヒータ１７とに、それぞれ加熱制御信号を出力し、そしてソレノイド２２ｃに駆動制御信号を出力する機能を有する。こうした機能は、記憶媒体としての記憶手段に予め記録したプログラムを、制御手段３１が読み取ることで実現し、制御手段３１は、このプログラムの制御シーケンス上の機能として、調理制御手段３５、保温制御手段３６および表示制御手段３７を備えている。

【0024】

調理制御手段３５は、操作手段２６からの調理開始の指示を受けて、鍋４に収容された被調理物Ｓの液体を沸騰温度にまで昇温させる沸騰加熱工程と、鍋４内を、大気圧を超えた圧力である加圧状態にして、被調理物Ｓの液体の沸騰を継続させる加圧加熱工程と、鍋４内を大気圧に戻し、被調理物Ｓの温度を高温に維持する煮込加熱工程との各工程を順に行なう調理工程を実行して、鍋４内の被調理物Ｓに対して所望の圧力で調理加熱するものである。なお調理工程で行なう各工程は前述のものだけに限定されず、他の工程を追加してもよい。例えば、後述する調理方法によっては、加圧加熱工程で、鍋４内を大気圧にして被調理物Ｓの液体の沸騰を継続させる沸騰継続工程を追加してもよく、また加圧加熱工程の代わりに沸騰継続工程を実施するようにしてもよい。

【0025】

保温制御手段３６は、鍋４内の被調理物Ｓを所定の保温温度に保つ保温加熱工程を行なうように制御するものである。そして表示制御手段３７は、操作手段２６からの操作信号に基づき、各種の制御信号を生成し、また表示手段２５の表示動作を制御するものである。

【0026】

図４は表示手段２５の平面図である。図４および後述する図９では、それぞれの図面の上側を「前」、下側を「後」、左側を「左」、右側を「右」として説明する。また、それぞれの図面の手前側を「上」、奥側を「下」として説明する。工程ＬＥＤ表示部４２～４６は、電気圧力鍋の現在の状態を表示するもので、本実施形態では、沸騰加熱工程の期間では「昇温」の工程ＬＥＤ表示部４２が点灯し、加圧加熱工程の期間では「加圧」の工程ＬＥＤ表示部４３が点灯し、煮込加熱工程において鍋４内を大気圧に戻す期間では「排圧」の工程ＬＥＤ表示部４４が点灯し、煮込加熱工程において大気圧で被調理物Ｓの温度を高温に維持する期間では「煮込」の工程ＬＥＤ表示部４５が点灯し、保温工程の期間では「保温」の工程ＬＥＤ表示部４６が点灯するようになっており、ユーザが電気圧力鍋の現在の状態を一目で理解できるようにしている。

【0027】

ユーザが予め本体１に設けた電源プラグを家庭用のコンセントに差し込むと、電気圧力鍋の各部に必要な電力が投入される。このとき表示制御手段３７は、所定時間経過後に、ＬＣＤ４１に表示される普段使いの初期画面として、図４に示すようなメイン画面Ｇ１の配置を表示するようにＬＣＤ４１を制御する。また表示制御手段３７は、調理工程や保温工程でもこのメイン画面Ｇ１の配置を表示するようにＬＣＤ４１を制御しており、料理メニューや調理コースの選択や設定など、選択、設定時に専用の画面に移行するようにＬＣＤ４１を制御する。図４では、表示手段２５の「昇温」のＬＥＤ表示部４２が点灯して調理工程における沸騰加熱工程の状態であることが示され、表示手段２５のＬＣＤ４１において、「煮豚」と、「標準」および「３５分」とが選択されて示されている。

【0028】

図４を参照してメイン画面Ｇ１の説明をすると、その前部には、「料理メニュー」なるテキスト表示体Ｄ１を含むボタン表示部Ｂ１と、「料理メニュー」の設定表示体Ｄ２と、を左右に並べて表示した料理メニュー表示領域Ａ１が形成されている。ここで「料理メニュー」の設定表示体Ｄ２は選択された料理メニューの情報が表示されており、図４では「煮豚」が表示されている。

【0029】

また、料理メニュー表示領域Ａ１の後ろには、４つのボタン表示部Ｂ４～Ｂ７を左右に並べて表示した調理コースキー表示領域Ａ２が形成されている。また調理コースキー表示領域Ａ２の前に、調理コースキー表示領域Ａ２のボタン表示部Ｂ４～Ｂ７が調理コースの選択に関連するものであることを連想させる「調理コース」なるテキスト表示体Ｄ３が配置される。ここで「時短」のボタン表示部Ｂ４は「時短」なるテキスト表示体Ｄ４を含む。また「標準」のボタン表示部Ｂ５は「標準」なるテキスト表示体Ｄ５を含む。そして「甘み」のボタン表示部Ｂ６は「甘み」なるテキスト表示体Ｄ６を含む。また「熟成」のボタン表示部Ｂ７は「熟成」なるテキスト表示体Ｄ７を含む。

【0030】

また、調理コースキー表示領域Ａ２の後ろには、４つの設定表示体Ｄ８～Ｄ１１を左右に並べて表示した調理予定時間表示領域Ａ３が形成される。ここで「時短」の設定表示体Ｄ８は選択された料理メニューを時短の調理コースで調理したときの調理工程の時間の情報が表示されており、「時短」のボタン表示部Ｂ４の後ろに配置されている。また「標準」の設定表示体Ｄ９は選択された料理メニューを標準の調理コースで調理したときの調理工程の時間の情報が表示されており、「標準」のボタン表示部Ｂ５の後ろに配置されている。そして「甘み」の設定表示体Ｄ１０は選択された料理メニューを甘みの調理コースで調理したときの調理工程の時間の情報が表示されており、「甘み」のボタン表示部Ｂ６の後ろに配置されている。また「熟成」の設定表示体Ｄ１１は選択された料理メニューを熟成の調理コースで調理したときの調理工程の時間の情報が表示されており、「熟成」のボタン表示部Ｂ７の後ろに配置されている。図４では「時短」の設定表示体Ｄ８には「２３分」、「標準」の設定表示体Ｄ９には「３５分」、「甘み」の設定表示体Ｄ１０には「４５分」、「熟成」の設定表示体Ｄ１１には「６０分」が、それぞれ表示されている。

【0031】

また調理予定時間表示領域Ａ３の後ろには、「残時間」の設定表示体Ｄ１２と、「調理開始」なるテキスト表示体Ｄ１３を含むボタン表示部Ｂ１３と、「切」なるテキスト表示体Ｄ１４を含むボタン表示部Ｂ１４と、が左右に並べて表示される。また設定表示体Ｄ１２の前に、設定表示体Ｄ１２が調理工程終了までの残時間を示していることを連想させる「残時間」なるテキスト表示体Ｄ１５が配置される。ここで、「残時間」の設定表示体Ｄ１２は現在行われている調理工程が終了するまでの時間である残時間の情報が表示されており、加熱調理が開始されるとカウントダウンが始まり、図４では「３５分」が表示されている。

【0032】

「切」のボタン表示部Ｂ１３は、調理工程や保温工程を中止する際に操作されるもので、「切」のボタン表示部Ｂ２２をタッチ操作すると、「切」のボタン表示部Ｂ１３の上に配設された操作手段２６からの操作信号を制御手段３１が受け付けて、炊飯制御手段３５や保温制御手段３６が本体１内の被調理物Ｓに対する加熱を中止して切状態にする制御を行なう。

【0033】

「調理開始」のボタン表示部Ｂ１３は調理を開始する際に操作されるもので、「調理開始」のボタン表示部Ｂ１３をタッチ操作すると、「調理開始」のボタン表示部Ｂ１３の上に配設された操作手段２６からの操作信号を制御手段３１が受け付けて、現在、メイン画面Ｇ１に表示された料理メニューおよび選択された調理コースの設定を今回の調理方法の設定として記憶手段３２に記憶し、調理制御手段３５が、記憶手段３２に記憶した今回の調理方法の設定で、本体１内の被炊飯物Ｓに対する調理開始の制御をする構成となっている。

【0034】

本実施形態の電気圧力鍋では、設定された料理メニューの設定および調理コースの設定に応じた調理方法が記憶手段３２に記憶されており、記憶手段３２に記憶された調理方法における料理メニューの設定および調理コースの設定が表示手段２５に選択可能に表示され、これらの設定を行なうことで、当該調理方法の選択および設定を行なっている。そして調理制御手段３５が、この調理方法の設定ごとに加熱手段となる底面ヒータ６、側面ヒータ７および蓋ヒータ８の制御を行ない、また制御手段３１が、この調理方法の設定ごとにソレノイド２２ｃの制御を行ない、調理の制御を行なうことで自動調理を実行している。

【0035】

次に図５～図８を参照しつつ、上記構成の電気圧力鍋について調理工程および保温工程における作用を説明する。図５～図８は、本実施形態の電気圧力鍋の調理工程および保温工程における、鍋温度センサ１５の検知温度ｔの経時的な変化をそれぞれグラフで示しており、網掛け部で示された箇所は鍋４内が加圧状態であることを示している。

【0036】

本実施形態の調理時における動作を説明すると、鍋４内に被調理物Ｓを入れ、これを本体１の内枠３にセットした後に、蓋２を閉じる。それと前後して、電気圧力鍋の電源プラグをコンセントに差し込んで通電すると、電気圧力鍋は調理工程や保温工程が行われていない初期の切（待機）状態となる。このとき制御手段３１は、ソレノイド２２ｃを制御して調圧弁２２ｂにより蒸気孔２２ａを閉塞させ、ユーザが操作しなくても自動的に鍋４内外の連通を遮断している。

【0037】

ここで操作手段２６を操作する毎に、その操作信号が表示制御手段３７に受け入れられ、制御手段３１により調理方法の設定が変更される。変更された設定は表示制御手段３７によりＬＣＤ４１にその都度表示され、ユーザはこれを目視で確認できる。

【0038】

例えば電気圧力鍋が切状態のときに「料理メニュー」のボタン表示部Ｂ１をタッチ操作すると、「料理メニュー」のボタン表示部Ｂ１の上に配設された操作手段２６からの操作信号を表示制御手段３７が受け付けて、表示制御手段３７が、別画面である料理メニュー選択画面（図示せず）を表示するようにＬＣＤ４１を制御し、この料理メニュー選択画面で、例えば煮豚、豚の角煮、カレー、シチュー、おでん、もつ煮、豚汁、筑前煮などの料理メニューを選択すると、表示制御手段３７がメイン画面Ｇ１に戻って「料理メニュー」の設定表示体Ｄ２の表示を、選択された料理メニューの表示、例えば図４の場合は「煮豚」の表示にするようにＬＣＤ４１を制御する。そして表示制御手段３７は、記憶手段３２に記憶された、選択された料理メニューのそれぞれの調理方法の調理工程の時間を、調理予定時間表示領域Ａ３のそれぞれの設定表示体Ｄ８～Ｄ１１に表示するようにＬＣＤ４１を制御する。例えば図４に示されるように選択された料理メニューが「煮豚」である場合は、表示制御手段３７は、記憶手段３２に記憶された「煮豚」のそれぞれの調理方法の調理工程の時間をそれぞれの設定表示体Ｄ８～Ｄ１１に表示するよう、具体的には「時短」の設定表示体Ｄ８に「２３分」、「標準」の設定表示体Ｄ９に「３５分」、「甘み」の設定表示体Ｄ１０に「４５分」、「熟成」の設定表示体Ｄ１１に「６０分」を表示するようにＬＣＤ４１を制御する。

【0039】

ここで調理コースキー表示領域Ａ２のボタン表示部Ｂ４～Ｂ７のいずれか、例えば「標準」のボタン表示部Ｂ５をタッチ操作して調理コースを選択すると、選択されたボタン表示部Ｂ４～Ｂ７、例えば「標準」のボタン表示部Ｂ５の上に配設された操作手段２６からの操作信号を表示制御手段３７が受け付けて、図４に示されるように、表示制御手段３７が、選択されたボタン表示部Ｂ４～Ｂ７以外のボタン表示部Ｂ４～Ｂ７に対応した設定表示体Ｄ８～Ｄ１１、例えば「標準」のボタン表示部Ｂ５以外であるボタン表示部Ｂ４，Ｂ６およびＢ７に対応した設定表示体Ｄ８，Ｄ１０およびＤ１１の色を薄くして表示する、いわゆるグレーアウト表示で表示するようにＬＣＤ４１を制御する。そして表示制御手段３７は、選択されたボタン表示部Ｂ４～Ｂ７、例えば「標準」のボタン表示部Ｂ５、に対応した設定表示体Ｄ８～Ｄ１１、例えば「標準」の設定表示体Ｄ９に表示された時間である「３５分」、を「残時間」の設定表示体Ｄ１２に表示するようにＬＣＤ４１を制御する。そのため「残時間」の設定表示体Ｄ１２の表示と、調理予定時間表示領域Ａ３のそれぞれの調理コースの（ニ）調理工程の時間の表示と、を同時に表示することになり、ユーザがタッチ操作して選択した調理コースが所望のものと異なっている場合に、誤操作したことをユーザが容易に知ることができ、誤った調理方法を実行して自動調理を行なうことを抑制することができる。

【0040】

そして「料理メニュー」および「調理コース」の設定後に「調理開始」のボタン表示部Ｂ１３をタッチ操作すると、「調理開始」のボタン表示部Ｂ１３のボタン表示部Ｂ５の上に配設された操作手段２６からの操作信号を表示制御手段３７が受け付けて、調理制御手段３５は、「料理メニュー」の設定表示体Ｄ２に表示されている料理メニューと、選択されたボタン表示部Ｂ４～Ｂ７に対応する調理コースと、が選択された料理メニューおよび調理コースであり、今回の調理方法の設定として、設定した調理方法に対応する加熱パターンに沿って、鍋４内の被調理物Ｓに対する沸騰加熱工程、加圧加熱工程、煮込加熱工程の調理工程の各動作を行なう。また表示制御手段３７は「昇温」の工程ＬＥＤ表示部４２を点灯させるように制御し、計時手段３４からの計時に基づき、「残時間」の設定表示体Ｄ１２に表示された時間をカウントダウンして表示するようにＬＣＤ４１を制御する。そのためユーザは、調理工程の進行に伴うおおよその調理時間を調理開始時に把握でき、また調理完了までの残時間が分単位で表示されるため、利便性が向上する。

【0041】

ここで図５を参照して、調理コースで「標準」、料理メニューで「煮豚」が選択されたときの調理工程および保温工程の加熱パターンを説明する。調理工程が開始されると、（ロ）加圧加熱工程に移行するまでの加熱で、調理制御手段３５が底ヒータ６と側面ヒータ７と蓋ヒータ１７とを連続通電する制御を行ない、鍋４内の被調理物Ｓを強く加熱する（イ）沸騰加熱工程を行なう。このため、図５に示されるように鍋温度センサ１５が検知する検知温度ｔが次第に上昇する。この（イ）沸騰加熱工程中では、制御手段３１は蒸気孔２２ａを閉塞させるようにソレノイド２２ｃを制御しており、底ヒータ６、側面ヒータ７および蓋ヒータ１７の加熱効率ロスを抑制している。

【0042】

（イ）沸騰加熱工程の時間は、調理コースごとに設定された底ヒータ６、側面ヒータ７および蓋ヒータ１７と出力と、鍋４内の圧力値により変化し、例えば料理メニューが「煮豚」のときは略１０分に設定される。また本実施形態では、底ヒータ６の出力は７００Ｗ～１４００Ｗの所定の出力、鍋４内の圧力値は１．２ａｔｍ～２．７ａｔｍの所定の圧力値に設定される。なお、このときの被調理物Ｓの温度と略同等である、鍋温度センサ１５が検知する鍋４底部の温度は、被調理物Ｓの液体の沸騰時で略１０５℃～略１３０℃である。ここで図５に示されるように、料理メニューが「煮豚」のときは、調理制御手段３５は鍋４内の圧力値が２．０ａｔｍになるようにソレノイド２２ｃを制御しており、また底ヒータ６の出力を１０００Ｗに制御して、被調理物Ｓの温度が略１２０℃に達するようにしているが、本発明ではこれに限定されず、調理方法によっては底ヒータ６の出力を他の値に制御してもよい。なお底ヒータ６の出力を１４００Ｗに制御すると（イ）沸騰加熱工程の時間が短くなり、底ヒータ６の出力を７００Ｗに制御すると（イ）沸騰加熱工程の時間が長くなる。

【0043】

その後、調理制御手段３５は、検知温度ｔが所定温度近傍、例えば料理メニューが「煮豚」のときは図５に示されるように１２０℃の沸騰温度近傍になったことを検知した鍋温度センサ１５からの温度検知信号を受信すると、被調理物Ｓが沸騰したと判定し、調理工程が（ロ）加圧加熱工程に移行する。

【0044】

なお被調理物Ｓが沸騰したと判定するときは、調理制御手段３５が鍋温度センサ１５からの温度検知信号と蓋温度センサ１６からの温度検知信号とを併用してもよい。具体的には、調理制御手段３５が、鍋温度センサ１５からの温度検知が所定温度なったことを検知し、または鍋温度センサ１５からの温度検知から鍋４の温度上昇率が所定の値に達したことを算出すると、被調理物Ｓの沸騰を検出するために、調理制御手段３５が蓋温度センサ１６からの温度検知信号を受信し、検知温度が所定温度になったことを検知した蓋温度センサ１６からの温度検知信号を受信し、または蓋温度センサ１６からの温度検知から内蓋５の温度上昇率が所定の値に達したことを算出すると、被調理物Ｓが沸騰したと判定して（ロ）加圧加熱工程に移行してもよい。

【0045】

（ロ）加圧加熱工程に移行すると、調理制御手段３５が蓋ヒータ１７を通電する制御を行なって内蓋５への結露を抑制すると共に、底ヒータ６を通断電制御して、鍋温度センサ１５の検知温度ｔが所定の温度、例えば料理メニューが「煮豚」のときは１２０℃を維持するようにして、被調理物Ｓの沸騰状態を継続させる。また表示制御手段３７は「昇温」の工程ＬＥＤ表示部４２を消灯させるように制御し、かつ、「加圧」の工程ＬＥＤ表示部４３を点灯させるように制御する。この（ロ）加圧加熱工程の時間は調理コースごとに、例えば１分～１０分の所定時間で設定されており、例えば料理メニューが「煮豚」のときは略１０分に設定される。この（ロ）加圧加熱工程中では、制御手段３１は圧力検知手段３３からの圧力検知信号を受信し、鍋４内の圧力値が所定の値、例えば料理メニューが「煮豚」のときは２．０ａｔｍになるよう、蒸気孔２２ａを開放／閉塞させるようにソレノイド２２ｃを制御する。（ロ）加圧加熱工程の時間が経過したことを調理制御手段３５が計時手段３４により計時すると、調理工程が（ハ）煮込加熱工程に移行する。

【0046】

ここで制御手段３１が、例えば料理メニューが「煮豚」のときに鍋４内の圧力値が所定の値よりも高圧、例えば２．７ａｔｍになるようにソレノイド２２ｃを制御し、調理制御手段３５が鍋温度センサ１５の検知温度ｔが所定の温度よりも高温、例えば略１３０℃を維持するように底ヒータ６を通断電制御すると、被調理物Ｓの食材を柔らかくする時間である（ロ）加圧加熱工程の時間を短くすることができる。その一方で、制御手段３１が、例えば料理メニューが「煮豚」のときに鍋４内の圧力値が所定の値よりも低圧、例えば１．２ａｔｍになるようにソレノイド２２ｃを制御し、調理制御手段３５が鍋温度センサ１５の検知温度ｔが所定の温度よりも低温、例えば略１０５℃を維持するように底ヒータ６を通断電制御すると、（ロ）加圧加熱工程の時間を長くすることができる。そのため料理メニューや被調理物Ｓの食材に応じて最適に設定された圧力値と工程時間にし、例えば火が通り難い骨付きの肉や魚、また柔らかくするのに加熱時間が長くなる豆類や根菜類の場合は、（ロ）加圧加熱工程の時間を長くし、また鍋４内の圧力値を所定の値よりも高圧にし、鍋温度センサ１５の検知温度ｔが所定の温度よりも高温にすることにより、被調理物Ｓの食材を柔らかくしつつ、適度な咀嚼性を確保することができる。

【0047】

（ハ）煮込加熱工程に移行すると、調理制御手段３５が鍋温度センサ１５の検知温度ｔに基づいて鍋４の底部の温度を制御して、鍋４の温度を、例えば７０～９０℃の所定の温度、例えば料理メニューが「煮豚」のときは８０℃まで降下させ、それと共に、蓋温度センサ１６の検知温度に基づいて蓋ヒータ１７を制御して内蓋５への露付きを防止し、また側面ヒータ７を制御して鍋４側面への露付きを防止する。また、この（ハ）煮込加熱工程中では、制御手段３１は蒸気孔２２ａを開放させるようにソレノイド２２ｃを制御し、鍋４内の圧力を大気圧まで低下させる排圧を行なっている。そして表示制御手段３７は「加圧」の工程ＬＥＤ表示部４３を消灯させるように制御し、かつ、「排圧」の工程ＬＥＤ表示部４４および「煮込」の工程ＬＥＤ表示部４５を点灯させるように制御する。この（ハ）煮込加熱工程の時間は調理コースごとに、例えば５分～５０分の所定時間で設定されており、例えば料理メニューが「煮豚」のときは略１５分に設定される。（ハ）煮込加熱工程では、被調理物Ｓの液体である調味液の拡散現象により、被調理物Ｓの食材への味の染み込みを促進させている。

【0048】

制御手段３１は圧力検知手段３３からの圧力検知信号を受信し、鍋４内の圧力値が大気圧まで降下したことを受信すると、表示制御手段３７は「排圧」の工程ＬＥＤ表示部４４を消灯させるように制御する。その後、（ハ）煮込加熱工程の時間が経過したことを調理制御手段３５が計時手段３４により計時すると、底面ヒータ６をＯＦＦにする制御を行ない、表示制御手段３７が「煮込」の工程ＬＥＤ表示部４５を消灯させるように制御して（ハ）煮込加熱工程を終了させ、調理工程が完了して次の保温工程に移行する。

【0049】

このように本実施形態では、例えば調理コースで「標準」であり、料理メニューが「煮豚」のときは、（ニ）調理工程の時間は、（イ）沸騰加熱工程の時間の略１０分と、（ロ）加圧加熱工程の時間の略１０分と、（ハ）煮込加熱工程の時間の略１５分とを合計した略３５分に設定される。その一方で、例えば料理メニューが「骨付き豚肉のブロック」でスープを作る場合、骨があると被調理物Ｓの食材の内部まで熱が通り難いため、また骨まで柔らかくするために、前述の時間で（ロ）加圧加熱工程が略２０分に設定され、（ニ）調理時間が略４５分に設定されている。また、例えば調理コースで「肉じゃが」のときは、薄肉を使用し、かつ、じゃが芋や人参など根菜類を柔らかくするために、前述の時間で（ロ）加圧加熱工程が５分程度に設定され、被調理物Ｓの食材への調理液の味の染み込みを深くするために（ハ）煮込加熱工程の時間が略２５分に設定され、（ニ）調理時間が略４０分に設定されている。なお、それぞれの「料理メニュー」および「調理コース」のときの（イ）沸騰加熱工程の時間、（ロ）加圧加熱工程の時間および（ハ）煮込加熱工程の時間は調理方法の設定として記憶手段３２に記憶されており、調理制御手段３５は、これらの時間の情報を含む調理方法の設定の加熱パターンに沿って、鍋４内の被調理物Ｓに対する調理工程の各動作を行なう。このように、被調理物Ｓの素材の種類や量、調味液の量など、料理メニューに応じて、調理時間（二）が最適な加熱パターンで設定された時間にされている。

【0050】

保温工程を開始すると、保温制御手段３６は、鍋温度センサ１５の検知温度ｔに基づいて鍋４の底部の温度を制御して、鍋４の温度を、例えば６０～８０℃の所定の保温温度に維持し、それと共に、蓋温度センサ１６の検知温度に基づいて蓋ヒータ１７を制御して内蓋５への露付きを防止し、また側面ヒータ７を制御して鍋４側面への露付きを防止する。また表示制御手段３７は「保温」の工程ＬＥＤ表示部４６を点灯させるように制御する。この保温工程では、調理工程で調理した被調理物Ｓの腐敗を防止し、その一方で、調味液の拡散現象により被調理物Ｓの食材への味の染み込みを進行させて被調理物Ｓの熟成を進めている。

【0051】

次に図６を参照して、調理コースで「時短」、料理メニューで「煮豚」が選択されたときの調理工程および保温工程の加熱パターンを説明する。本実施形態では調理コースが「時短」の場合、調理制御手段３５は、その設定した調理方法に対応する加熱パターンに沿って、可能な限り調理工程の時間を短縮するように鍋４内の被調理物Ｓに対する調理工程の各動作を行なっている。

【0052】

具体的には、（イ）沸騰加熱工程では底ヒータ６の出力が、前述した所定の出力で最大値の１４００Ｗに設定され、被調理物Ｓが沸騰するまでの時間を最短にしている。ここで、鍋４内の圧力を高くして調理した場合、被調理物Ｓの食材を柔らかくする時間が短くなる一方で、食材の煮崩れ（形崩れ）が過度に進む虞があり、また食材が柔らかくなりすぎ、例えば歯応えのない流動食のように咀嚼性の悪化をまねく虞がある。そのため本実施形態では、鍋４内の圧力値を、前述した調理コースが「標準」の場合と同様の２．０ａｔｍに設定され、（イ）沸騰加熱工程の時間は、前述した調理コースが「標準」のときよりも短い略８分に設定される。なお、このときの鍋温度センサ１５が検知する鍋４底部の温度は被調理物Ｓの液体の沸騰時で略１２０℃である。また（ロ）加圧加熱工程の時間も、被調理物Ｓの食材である煮豚が咀嚼可能な程度の硬さにまで柔らかくなる時間である、例えば略５分に設定される。そして（ハ）煮込加熱工程の時間も、煮豚に調理液の塩分や味の染みこみがある程度進行する時間である、例えば略１０分に設定に設定される。そのため、例えば調理コースが「時短」であり、料理メニューが「煮豚」のときは、（ニ）調理工程の時間は、（イ）沸騰加熱工程の時間の略８分 と、（ロ）加圧加熱工程の時間の略５分と、（ハ）煮込加熱工程の時間の略１０分とを合計した略２３分に設定される。

【0053】

なお（ハ）煮込加熱工程では鍋４内の排圧も行なっているが、この排圧による鍋４内の蒸気および空気の機外への放出の時間が（ハ）煮込加熱工程の時間で設定された、例えば略１０分で不足する場合では、鍋４内の排圧の安全性を優先し、例えば略１２分など最短の時間よりも多く設定される。

【0054】

このように調理コースが「時短」の場合は、調理コースが「標準」のときと比較して、底ヒータ６の出力の設定が増加され、前述した所定の出力で最大値の１４００Ｗに設定され、（ロ）加圧加熱工程の時間や（ハ）煮込加熱工程の時間も、被調理物Ｓの食材の軟化度合の確保、咀嚼性の確保および味の染み込み確保の最短時間に設定される。そのため料理メニューが同一の「煮豚」でも、調理コースが「標準」のときと比較して、（ニ）調理工程の時間を短くすることができ、すなわち加熱調理を早急に行なうことができる。その一方で、完成した被調理物Ｓの食材の柔らかさや味の染み込み度合は控えめであり、被調理物Ｓをさっぱりとした食感に仕上げることができる。

【0055】

本実施形態では、それぞれの「料理メニュー」および「調理コース」のときの（イ）沸騰加熱工程、（ロ）加圧加熱工程および（ハ）煮込加熱工程における時間や底面ヒータの出力、鍋４内の圧力値の最大値、最小値または最高値、最低値の組み合わせが記憶手段３２に記憶されており、調理制御手段３５は、これらの組み合わせの制限を超えた加熱パターンが使用できないように構成されている。そのため（ニ）調理工程の時間の最も短い時間である最短調理時間が決められている。なお調理コースが「時短」の場合は、調理制御手段３５は、これらの組み合わせの制限の最大値、最高値の設定の加熱パターンに沿って、鍋４内の被調理物Ｓに対する調理工程の各動作を行なってもよい。

【0056】

例えば前述の料理メニューが「煮豚」の場合は、鍋４内の圧力値が、調理コースが「標準」の場合よりも高圧である２．７ａｔｍに設定され、（イ）沸騰加熱工程の時間が略８分に設定され、（ロ）加圧加熱工程の時間が略２分に設定され、（ハ）煮込加熱工程の時間が略１０分に設定されて、（ニ）調理工程の時間が最短調理時間である略２０分に設定されてもよい。ここでの（ロ）加圧加熱工程は、前述の「時短」のものよりも鍋４内の圧力を高く設定され、それに伴い、被調理物Ｓの液体の沸騰温度も前述の「時短」のものよりも高く設定されるため、被調理物Ｓの食材を柔らかくする時間が短くすることができ、（ロ）加圧加熱工程で必要な時間も短くすることができる。

【0057】

次に図７を参照して、調理コースで「甘み」、料理メニューで「煮豚」が選択されたときの調理工程および保温工程の加熱パターンを説明する。

【0058】

タンパク質をより小さなポリペプチドや単一のアミノ酸へ分解する触媒として作用し、分解する速度を上げる加水分解酵素であるプロアテーゼは加熱されると壊れてしまう。これは、ほとんどの酵素がタンパク質で構成されており、加熱されるとタンパク質が変成して酵素でなくなるためである。７０℃を超えた高温になると酵素が失活するため、被調理物Ｓの液体が、沸騰に達する前の温度である５０℃前後のときに、被調理物Ｓの素材に含まれる酵素の活性がより効果的に促進される。またサツマ芋を略７０℃帯で、時間をかけて長時間ゆっくり加熱する緩慢加熱を行なうことにより甘みを引出す、石焼き芋の酵素活性が知られており、料理メニューのレシピや被調理物の素材に応じた緩慢加熱による最適な酵素活性促進温度を設定することにより、被調理物の旨みや甘みをより効果的に旨みや甘みを引き出すことができる。そこで本実施形態では、調理コースが「甘み」の場合、調理制御手段３５は、（イ）沸騰加熱工程に酵素活性促進時間Ｔを設けた加熱パターンに沿って、鍋４内の被調理物Ｓに対する調理工程の各動作を行ない、被調理物Ｓの素材に内在する酵素の活性を加圧加熱の前に最大限促進させることにより、この被調理物Ｓの素材の甘みや旨味を最大限引き出している。

【0059】

図７を参照して、調理コースで「甘み」、料理メニューで「煮豚」が選択されたときの調理工程および保温工程の加熱パターンを説明する。（イ）沸騰加熱工程が開始されると、調理制御手段３５が、調理コースが「標準」の場合と同様の設定で底ヒータ６と側面ヒータ７と蓋ヒータ１７とを連続通電する制御を行ない、鍋４内の被調理物Ｓを強く加熱する。その後、調理制御手段３５は、検知温度ｔが４０～８０℃の所定温度近傍、例えば料理メニューが「煮豚」のときは図７に示されるように５０℃近傍になったことを検知した鍋温度センサ１５からの温度検知信号を受信すると、被調理物Ｓの温度が酵素の活性を促進させる温度である酵素活性促進温度に達したと判定し、鍋温度センサ１５の検知温度ｔが、この酵素活性促進温度である５０℃を、酵素活性促進温度に維持する期間である酵素活性促進時間Ｔの間維持するように底ヒータ６を通断電制御し、被調理物Ｓに含まれるタンパク質が硬く凝固しないようにゆっくり低温で加熱を行なう。ここで、酵素活性促進温度は調理コースごとに設定され、また酵素活性促進時間Ｔも調理コースごとに、例えば１０～３０分の所定時間で設定されており、例えば酵素活性促進温度が６０℃なら３０分、酵素活性促進温度が７０℃なら１５分、酵素活性促進温度が８０℃なら５分など、任意に設定されて、これらの設定が記憶手段３２に記憶されている。そのため完成した被調理物Ｓの旨みや甘みを最大限引き出した食感に仕上げることができる。

【0060】

調理制御手段３５は、酵素活性促進時間Ｔが経過したことを調理制御手段３５が計時手段３４により計時すると、（ロ）加圧加熱工程に移行するまでの加熱で、底ヒータ６と側面ヒータ７と蓋ヒータ１７とを連続通電する制御を再度行ない、鍋４内の被調理物Ｓを再度強く加熱する。

【0061】

したがって（イ）沸騰加熱工程の時間は、調理コースが「標準」のときの条件に加えて酵素活性促進時間Ｔにより変化する。例えば料理メニューが「煮豚」のときは、図７に示されるように酵素活性促進時間Ｔが略１０分に設定されるため、（イ）沸騰加熱工程の時間は、調理コースが「標準」のときの時間と比較して酵素活性促進時間Ｔの略１０分だけ長くなり、略２０分に設定される。また同様に、（ニ）調理工程の時間も、調理コースが「標準」のときの時間と比較して酵素活性促進時間Ｔだけ長くなり、略４５分に設定される。

【0062】

次に図８を参照して、調理コースで「熟成」、料理メニューで「煮豚」が選択されたときの調理工程および保温工程の加熱パターンを説明する。調理コースが「熟成」の場合、鍋４内の圧力値は調理コースが「標準」や「甘み」のものよりも低圧に設定され、例えば料理メニューが「煮豚」のときは、鍋４内の圧力値は調理コースが「標準」や「甘み」の場合よりも低圧である１．４ａｔｍに設定される。それに伴い、被調理物Ｓの液体の沸騰温度も調理コースが「標準」や「甘み」のものよりも低く設定され、例えば料理メニューが「煮豚」のときは、被調理物Ｓの液体の沸騰温度が、「標準」や「甘み」の場合よりも低温である１１０℃に設定される。

【0063】

（イ）沸騰加熱工程が開始されると、調理制御手段３５が、調理コースが「甘み」の場合と同様に、鍋温度センサ１５の検知温度ｔが酵素活性促進温度に達するまでは底ヒータ６と側面ヒータ７と蓋ヒータ１７とを連続通電する制御を行ない、酵素活性促進温度近傍になったことを検知した鍋温度センサ１５からの温度検知信号を受信すると、酵素活性促進時間Ｔの間、酵素活性促進温度を維持するように底ヒータ６を通断電制御し、酵素活性促進時間Ｔが経過したことを計時手段３４により計時すると、（ロ）加圧加熱工程に移行するまでの加熱で、底ヒータ６と側面ヒータ７と蓋ヒータ１７とを連続通電する制御を再度行ない、鍋４内の被調理物Ｓを再度強く加熱する。そのため本実施形態では、調理コースが「甘み」の場合と比較して鍋４内の圧力値が異なる一方で、（イ）沸騰加熱工程の時間は調理コースが「甘み」の場合と同等の略２０分に設定される。なお前述のように、（イ）沸騰加熱工程は料理メニューに応じて酵素活性促進時間Ｔを設けているため、料理メニューによっては（イ）沸騰加熱工程に酵素活性促進時間Ｔが設けられていなくてもよい。

【0064】

（ロ）加圧加熱工程では、被調理物Ｓの食材の形崩れ、煮崩れを抑え、かつ、咀嚼性が最大限良好な状態で加圧加熱を行なうために、前述のように鍋４内の圧力値が他の調理コースのものよりも低圧である１．４ａｔｍに設定され、また被調理物Ｓの液体の沸騰温度も他の調理コースのものよりも低温である１１０℃に設定されて、（ロ）加圧加熱工程の時間が他の調理コースのものよりも長時間、例えば料理メニューが「煮豚」のときは略１０分に設定される。また（ハ）煮込加熱工程の時間が、素材の芯まで味の染みこみを促進するために他の調理コースのものよりも長時間、例えば料理メニューが「煮豚」のときは略３０分に設定される。また調理制御手段３５は、鍋４の温度が所定の温度、例えば料理メニューが「煮豚」のときは８０℃になったことを検知した鍋温度センサ１５からの温度検知信号を受信すると、その時点から（ロ）加圧加熱工程の時間が経過するまでの間、この所定の温度である８０℃を維持するように底ヒータ６を通断電制御し、被調理物Ｓの液体が沸騰しない温度で、時間をかけてじっくり被調理物Ｓの加熱調理を行なう。したがって、例えば調理コースが「熟成」であり、料理メニューが「煮豚」のときは、（ニ）調理工程の時間は略６０分に設定される。

【0065】

このように調理コースが「熟成」の場合は、調理コースが「標準」のときと比較して、鍋４内の圧力値が他の調理コースのものよりも低圧に設定され、被調理物Ｓの液体の沸騰温度が他の調理コースのものよりも低温に設定され、そして（ロ）加圧加熱工程の時間および（ハ）煮込加熱工程の時間が、それぞれ他の調理コースのものよりも長時間に設定される。そのため料理メニューが同一の「煮豚」でも、他の調理コースのものと比較して、鍋４内の圧力値を減少させて加圧時間および煮込時間を増加させ、時間をかけて加熱調理を行なうことにより、煮崩れのない、味が芯まで染み込んだものに仕上げることができ、被調理物Ｓを熟成させた食感に仕上げることができる。また料理メニューが「煮豚」の場合のように、（イ）沸騰加熱工程に酵素活性促進時間Ｔを設けている場合は、緩慢加熱により沸騰加熱工程を、時間をかけて行なうことができ、さらに時間をかけて加熱調理を行なうことができる。

【0066】

このように本実施形態の電気圧力鍋は、料理メニューが「煮豚」と同一であっても、複数の調理コース「標準」「時短」「甘み」「熟成」から選択することができ、調理時間が異なる複数の調理方法による自動調理ができる。そのため、調理に時間をかけることができない場合や、時間をかけてじっくり料理をしたい場合、また食感を選びたい場合といった、生活スタイルに応じた自動調理の選択や加熱調理の所要時間の選択を、できあがり食感を参照しながら行なうことができる。

【0067】

以上のように、本実施形態の電気圧力鍋では、被調理物Ｓを収容する鍋４と、鍋４を加熱する加熱手段としての底面ヒータ６と、底面ヒータ６を制御して被調理物Ｓを自動調理する調理制御手段３５と、を備え、調理制御手段３５は、同一の料理メニューであっても調理時間としての（ニ）調理工程の時間が異なる、例えば調理コースが「標準」「時短」「甘み」「熟成」の調理方法などの複数の調理方法の設定で調理の制御を行なうこと可能であり、複数の自動調理が可能である構成としている。

【0068】

このように構成することにより、生活スタイルに応じた自動調理の選択や所要時間の選択を、できあがり食感を参照しながら行なうことができる。

【0069】

また本実施形態の自動調理では、調理方法の設定に沸騰加熱工程と、加圧加熱工程と、煮込加熱工程と、を有し、調理制御手段３５は、（イ）沸騰加熱工程の時間と、（ロ）加圧加熱工程の時間と、（ハ）煮込加熱工程の時間の少なくとも１つを変えることで、（ニ）調理工程が異なる複数の調理方法の設定で調理の制御を行ない、複数の自動調理を実行する構成としている。

【0070】

このように構成することにより、調理コースが「時短」の場合は、加熱調理を早急に行なうことができ、その一方で被調理物Ｓをあっさりした食感に仕上げることができる。また調理コースが「甘み」の場合は、沸騰加熱工程に酵素活性促進時間Ｔを設けて、この被調理物Ｓの素材の甘みや旨味を最大限引き出すことができる。そして調理コースが「熟成」の場合は、被調理物Ｓの食材に味を芯まで染み込ませることができる。このように好みの味や食感に応じた自動調理を行なうことができる。

【0071】

また本実施形態の電気圧力鍋では、（ニ）調理工程の時間の最も短い時間である最短調理時間が決められており、被調理物Ｓの食材の煮崩れ（形崩れ）が過度に進む虞や、食材が柔らかくなりすぎて咀嚼性の悪化をまねく虞を抑制することができる。

【0072】

また本実施形態の電気圧力鍋では、調理予定時間表示領域Ａ３に選択可能な（ニ）調理工程の時間を複数表示可能な表示手段２５のＬＣＤ４１をさらに備える構成としており、自動調理の種類や所要時間を一目で知ることができる。

【0073】

また本実施形態の表示手段２５のＬＣＤ４１は、（ニ）調理工程の時間に対応した調理コースの名称であるテキスト表示体Ｄ４～Ｄ７が表示されたボタン表示部Ｂ４～Ｂ７を、調理予定時間表示領域Ａ３に表示された（ニ）調理工程の時間である設定表示体Ｄ８～Ｄ１１と同時に複数表示し、ボタン表示部Ｂ４～Ｂ７を選択することにより（ニ）調理工程の時間が選択される構成としており、生活スタイルに応じた調理コースや所要時間を検索することができる。

【0074】

また本実施形態の表示手段２５のＬＣＤ４１は、選択した料理メニューの調理方法を実行して自動調理を行なったときの調理終了までの時間を「残時間」の設定表示体Ｄ１２に表示しており、「残時間」の設定表示体Ｄ１２の表示と、調理予定時間表示領域Ａ３のそれぞれの調理コースの（ニ）調理工程の時間の表示と、を同時に表示することになり、ユーザがタッチ操作して選択した調理コースが所望のものと異なっている場合に、誤操作したことをユーザが容易に知ることができ、誤った調理方法を実行して自動調理を行なうことを抑制することができる。

【0075】

図９は、本実施形態の変形例における表示手段２５の平面図を示している。本変形例では、調理コースの代わりに食感を選択できるようにしており、同一の料理メニューであっても被調理物Ｓの食感を異ならせる、複数の自動調理が選択できるようにしている。

【0076】

図９では、表示手段２５のＬＣＤ４１はメイン画面Ｇ１’を示している。図９では、表示手段２５の「昇温」のＬＥＤ表示部４２が点灯して調理工程における沸騰加熱工程の状態であることが示され、表示手段２５のＬＣＤ４１において、「煮豚」と、「標準」および「３５分」とが選択されて示されている。

【0077】

図９を参照してメイン画面Ｇ１’の説明をすると、料理メニュー表示領域Ａ１の後ろには、４つのボタン表示部Ｂ４’～Ｂ７’を左右に並べて表示した食感キー表示領域Ａ４が形成されている。また調理コースキー表示領域Ａ２の前に、調理コースキー表示領域Ａ２のボタン表示部Ｂ４～Ｂ７が調理コースの選択に関連するものであることを連想させる「食感」なるテキスト表示体Ｄ２１が配置される。ここで「さっぱり」のボタン表示部Ｂ４’は「さっぱり」なるテキスト表示体Ｄ２２を含む。また「標準」のボタン表示部Ｂ５’は「標準」なるテキスト表示体Ｄ２３を含む。そして「甘み」のボタン表示部Ｂ６’は「甘み」なるテキスト表示体Ｄ２４を含む。また「熟成」のボタン表示部Ｂ７’は「熟成」なるテキスト表示体Ｄ２５を含む。

【0078】

また、食感キー表示領域Ａ４の後ろには、４つの設定表示体Ｄ８～Ｄ１１を左右に並べて表示した調理予定時間表示領域Ａ３が形成される。ここで、それぞれの設定表示体Ｄ８～Ｄ１１は、メイン画面Ｇ１の設定表示体Ｄ８～Ｄ１１と同様に、選択された料理メニューを、それぞれの設定表示体Ｄ８～Ｄ１１の前に配置された食感で調理したときの調理工程の時間の情報が表示されている。

【0079】

またメイン画面Ｇ１’の後部には、メイン画面Ｇ１の「残時間」なるテキスト表示体Ｄ１５に代えて、時刻表示体Ｄ２７が現在の時刻を示していることを連想させる「時計」なるテキスト表示体Ｄ２６と、「▲」なるテキスト表示体を含むボタン表示部Ｂ２８および「▼」なるテキスト表示体を含むボタン表示部Ｂ２９と、時刻表示体Ｄ２７と、が左右に並べて表示される。またメイン画面Ｇ１の「残時間」の設定表示体Ｄ１２に代えて、設定表示体Ｄ３２が調理工程終了の予定時刻を示していることを連想させる「できあがり」なるテキスト表示体Ｄ３１と、設定表示体Ｄ３２と、が左右に並べて表示される。

【0080】

ここで、時刻表示体Ｄ２７は現在の時刻の情報が表示され、図９では「１７：３０」が表示されており、「▲」のボタン表示部Ｂ２８や「▼」のボタン表示部Ｂ２９をタッチ操作することにより、時刻表示体Ｄ２７の表示を変更させることができる。また「できあがり」の設定表示体Ｄ３２は、現在選択されている料理メニューおよび食感の調理方法を実行して自動調理を行なったときの、調理工程が終了する予定時刻が表示されており、時刻表示体Ｄ２７に表示された時刻に、現在選択されている食感の後ろの設定表示体Ｄ８～Ｄ１１に表示された時間を加えた時刻が表示され、図９では「１８：０５」が表示されている。

【0081】

本変形例の調理時における動作を説明すると、例えば図９に示されるように選択された料理メニューが「煮豚」である場合は、表示制御手段３７は、記憶手段３２に記憶された「煮豚」のそれぞれの調理方法の調理工程の時間をそれぞれの設定表示体Ｄ８～Ｄ１１に表示するようにＬＣＤ４１を制御し、具体的には「さっぱり」の設定表示体Ｄ８に「２５分」、「標準」の設定表示体Ｄ９に「３５分」、「甘み」の設定表示体Ｄ１０に「４５分」、「熟成」の設定表示体Ｄ１１に「６０分」を表示するようにＬＣＤ４１を制御する。

【0082】

ここで食感キー表示領域Ａ４のボタン表示部Ｂ４’～Ｂ７’のいずれか、例えば「標準」のボタン表示部Ｂ５’をタッチ操作して調理コースを選択すると、選択されたボタン表示部Ｂ４’～Ｂ７’、例えば「標準」のボタン表示部Ｂ５’の上に配設された操作手段２６からの操作信号を表示制御手段３７が受け付けて、図９に示されるように、表示制御手段３７が、選択されたボタン表示部Ｂ４’～Ｂ７’以外のボタン表示部Ｂ４’～Ｂ７’に対応した設定表示体Ｄ８～Ｄ１１、例えば「標準」のボタン表示部Ｂ５’以外であるボタン表示部Ｂ４’，Ｂ６’およびＢ７’に対応した設定表示体Ｄ８，Ｄ１０およびＤ１１をグレーアウト表示で表示するようにＬＣＤ４１を制御する。

【0083】

そして表示制御手段３７は、時刻表示体Ｄ２７に表示された時刻に、選択されたボタン表示部Ｂ４’～Ｂ７’、例えば「標準」のボタン表示部Ｂ５’、に対応した設定表示体Ｄ８～Ｄ１１、例えば「標準」の設定表示体Ｄ９に表示された時間である「３５分」、を加えた時刻である「１８：０５」を「できあがり」の設定表示体Ｄ３２に表示するようにＬＣＤ４１を制御する。このように「できあがり」の設定表示体Ｄ３２を表示することにより、調理工程が終了する時刻がいつ頃かを一目で知ることができる。また現在の時刻の情報が表示される時刻表示体Ｄ２７の近傍に、調理完了時刻であるできあがり時刻の情報が表示される「できあがり」の設定表示体Ｄ３２を表示することにより、ユーザがタッチ操作して選択した調理コースが所望のものと異なっている場合に、誤操作したことをユーザが容易に知ることができ、誤った調理方法を実行して自動調理を行なうことを抑制することができる。

【0084】

そして「料理メニュー」および「食感」の設定後に「調理開始」のボタン表示部Ｂ１３をタッチ操作すると、「調理開始」のボタン表示部Ｂ１３のボタン表示部Ｂ５の上に配設された操作手段２６からの操作信号を表示制御手段３７が受け付けて、調理制御手段３５は、「料理メニュー」の設定表示体Ｄ２に表示されている料理メニューと、選択されたボタン表示部Ｂ４’～Ｂ７’に対応する食感と、が選択された料理メニューおよび食感であり、今回の調理方法の設定として記憶手段３２に記憶する。また調理制御手段３５は、その設定した調理方法に対応する加熱パターンに沿って、鍋４内の被調理物Ｓに対する沸騰加熱工程、加圧加熱工程、加圧加熱工程、煮込加熱工程の調理工程の各動作を行なう。

【0085】

ここで本変形例では、食感で「標準」、料理メニューで「煮豚」が選択されたときの調理工程および保温工程の加熱パターンは、前述した本実施形態の、調理コースで「標準」、料理メニューで「煮豚」が選択されたときの調理工程および保温工程の加熱パターンを使用している。また、食感で「さっぱり」、料理メニューで「煮豚」が選択されたときの調理工程および保温工程の加熱パターンは、前述した本実施形態の、調理コースで「時短」、料理メニューで「煮豚」が選択されたときの調理工程および保温工程の加熱パターンを使用している。そして食感で「甘み」、料理メニューで「煮豚」が選択されたときの調理工程および保温工程の加熱パターンは、前述した本実施形態の、調理コースで「甘み」、料理メニューで「煮豚」が選択されたときの調理工程および保温工程の加熱パターンを使用している。また食感で「熟成」、料理メニューで「煮豚」が選択されたときの調理工程および保温工程の加熱パターンは、前述した本実施形態の、調理コースで「熟成」、料理メニューで「煮豚」が選択されたときの調理工程および保温工程の加熱パターンを使用している。すなわち本変形例における食感「標準」「さっぱり」「甘み」「熟成」は、本実施形態における調理コース「標準」「時短」「甘み」「熟成」にそれぞれ対応している。

【0086】

このように本実施形態の電気圧力鍋は、料理メニューが「煮豚」と同一であっても、複数の食感「標準」「さっぱり」「甘み」「熟成」から選択することができ、調理時間が異なる複数の調理方法による自動調理ができる。そのため、調理に時間をかけることができない場合や、時間をかけてじっくり料理をしたい場合、また食感を選びたい場合といった、生活スタイルに応じた自動調理の選択や加熱調理の所要時間の選択を、できあがり食感を参照しながら行なうことができる。

【0087】

以上のように、本変形例の電気圧力鍋では、被調理物Ｓを収容する鍋４と、鍋４を加熱する加熱手段としての底面ヒータ６と、底面ヒータ６を制御して被調理物Ｓを自動調理する調理制御手段３５と、を備え、調理制御手段３５は、同一の料理メニューであっても調理時間としての（ニ）調理工程の時間が異なる、例えば食感が「標準」「さっぱり」「甘み」「熟成」の調理方法などの複数の調理方法の設定で調理の制御を行なうこと可能であり、複数の自動調理が可能である構成としている。

【0088】

このように構成することにより、生活スタイルに応じた自動調理の選択や所要時間の選択を、できあがり食感を参照しながら行なうことができる。

【0089】

また本実施形態の電気圧力鍋では、食感キー表示領域Ａ４に選択可能な食感を複数表示可能な表示手段２５のＬＣＤ４１をさらに備える構成としており、選択可能な食感の種類を一目で知ることができる。

【0090】

また本実施形態のＬＣＤ４１は、被調理物Ｓの食感に対応した自動調理を行なう調理方法の名称としての、料理メニューの名称である「料理メニュー」の設定表示体Ｄ２および食感の名称であるテキスト表示体Ｄ２２～Ｄ２５が表示されたボタン表示部Ｂ４’～Ｂ７’を複数表示する構成としており、生活スタイルに応じた食感の選択を検索することができる。

【0091】

また本実施形態のＬＣＤ４１は、選択した料理メニューの調理方法を実行して自動調理を行なったときの調理終了時刻を「できあがり」の設定表示体Ｄ３２に表示しており、調理工程が終了する時刻がいつ頃かを一目で知ることができる。

【0092】

図１０は、本実施形態のさらなる変形例における表示手段２５の平面図を示している。本発明は、選択可能な「調理コース」や「食感」の種類は前述した４つに限定されず、例えば図１０に示されるように７種類でもよく、もっと多くてもよい。

【0093】

図１０に示された本変形例では、「調理時間」のボタン表示部Ｂ４１をタッチ操作することにより、調理予定時間表示領域Ａ３’に表示された調理工程の時間を選択することができ、また「食感」のボタン表示部Ｂ４２をタッチ操作することにより、食感キー表示領域Ａ４’に表示された食感のカーソル表示体を選択することができる。ここで調理予定時間表示領域Ａ３’に表示された調理工程の時間の表示と食感キー表示領域Ａ４’に表示された食感のカーソル表示体は対応しており、調理工程の時間の表示を変更すると、その調理工程の時間に対応した食感のカーソル表示体に選択表示が変更され、同様に、食感のカーソル表示体の表示を変更すると、その調理工程の時間に対応した調理工程の時間の表示に選択表示が変更される。

【0094】

そして「料理メニュー」と、「調理工程の時間」および「食感」と、の設定後に「調理」のボタン表示部Ｂ１３’をタッチ操作すると、調理制御手段３５は、「料理メニュー」の設定表示体Ｄ２に表示されている料理メニューと、選択された「食感」に対応する調理コースと、が選択された料理メニューおよび調理コースであり、今回の調理方法の設定として、設定した調理方法に対応する加熱パターンに沿って、鍋４内の被調理物Ｓに対する沸騰加熱工程、加圧加熱工程、煮込加熱工程の調理工程の各動作を行なう。

【0095】

なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更可能である。例えば、実施形態中や変形例中の構成を組み合わせてもよい。また実施形態中や変形例中で例示した数値などはあくまでも一例にすぎず、電気圧力鍋の仕様などに応じて適宜変更してかまわない。

【符号の説明】

【0096】

４ 鍋
６ 底面ヒータ（加熱手段）
２５ 表示手段
３５ 調理制御手段
Ａ４ 食感キー表示領域
Ｄ４～Ｄ７ テキスト表示体（調理コース）
Ｄ８～Ｄ１１ 設定表示体（調理時間）
Ｄ１２ 「残時間」の設定表示体（調理終了までの時間）
Ｄ２２～Ｄ２５ テキスト表示体（食感）
Ｓ 被調理物

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】