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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101345
(43)【公開日】2023-07-20
(54)【発明の名称】パンツ型使い捨ておむつ
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/496 20060101AFI20230712BHJP
   A61F 13/51 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
A61F13/496 100
A61F13/51
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022001936
(22)【出願日】2022-01-07
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸田 佳祐
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200CA04
3B200DA21
3B200DA25
3B200DE05
3B200DE16
3B200DE18
(57)【要約】
【課題】着用者や介護者による前後の確認を容易にしつつ、着用していることを目立たせないパンツ型使い捨ておむつを提供する。
【解決手段】腹側部1と、背側部2と、腹側部1と背側部2との間に位置する股下部3とを有し、腹側部1から股下部3を通って背側部2に向かう方向を長手方向とし、長手方向に直交する方向を幅方向とするパンツ型使い捨ておむつ10であって、腹側部1の幅方向Wの両側部と背側部2の幅方向Wの両側部とが幅方向Wの所定位置で、長手方向Lに延びる一対の接合部4a,4bで接合されてなる筒状の胴回り部6を備える。一方の接合部4aに、腹側部1と背側部2とを区別するための識別子8が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腹側部と、背側部と、前記腹側部と前記背側部との間に位置する股下部とを有し、前記腹側部から前記股下部を通って前記背側部に向かう方向を長手方向とし、前記長手方向に直交する方向を幅方向とするパンツ型使い捨ておむつであって、
前記腹側部の前記幅方向の両側部と前記背側部の前記幅方向の両側部とが前記幅方向の所定位置で、前記長手方向に延びる一対の接合部で接合されてなる筒状の胴回り部を備え、
少なくとも一方の前記接合部又は該接合部の近傍に、前記腹側部と前記背側部とを区別するための識別子が設けられている
ことを特徴とするパンツ型使い捨ておむつ。
【請求項2】
前記識別子は、一方及び他方の前記接合部又は一方及び他方の前記接合部の近傍に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のパンツ型使い捨ておむつ。
【請求項3】
前記識別子は、一方の前記接合部又は該接合部の近傍と、他方の前記接合部又は該接合部の近傍に、互いに異なる態様で設けられている
ことを特徴とする請求項2に記載のパンツ型使い捨ておむつ。
【請求項4】
前記識別子は、前記接合部又は該接合部の近傍に立体的に設けられた触覚識別表示を含む
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のパンツ型使い捨ておむつ。
【請求項5】
前記識別子は、前記接合部又は該接合部の近傍に平面的に描かれた文字、図形、記号及び色彩から選択される一種又は複数種の組み合わせを含む
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のパンツ型使い捨ておむつ。
【請求項6】
前記接合部は、前記腹側部及び前記背側部の形成材料を圧着することによって形成され、前記識別子は、圧着によって前記接合部に形成される前記識別子の形状の圧着痕から構成される
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のパンツ型使い捨ておむつ。
【請求項7】
前記識別子は、前記接合部の幅方向の外側に設けられ、前記腹側部及び前記背側部の形成材料を圧着することによって形成される前記識別子の形状の圧着痕から構成される
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のパンツ型使い捨ておむつ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンツ型使い捨ておむつに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、腹側部と、背側部と、腹側部と背側部との間に位置する股下部とを有し、腹側部の幅方向の両側部と背側部の幅方向の両側部とが接合されて筒状の胴回り部が形成されたパンツ型の使い捨ておむつが知られている(例えば、特許文献1~特許文献3参照)。このようなパンツ型使い捨ておむつを着用する場合は、着用者又はおむつを履かせる介助者がおむつの前後を確認し、着用者の身体の前後に合わせた上で、左右の脚挿入開口に着用者の脚を挿入し、胴回り部をウエスト部分まで引き上げている。
【0003】
ところで、パンツ型使い捨ておむつは、パンツにより近づけるべくパンツ型とするとともに白一色で形成されている。このため、おむつは前後の区別がつきにくく、胴回り部の内側に「うしろ」、「まえ」等の文字が表示されている製品が多く普及している。また、引用文献2に記載の技術では、腹側部と背側部を区別するための標識として、着色されたホットメルト接着剤から成るグラフィックをおむつに配置している。
【0004】
しかしながら、おむつの内側に文字などが表示されている場合は、おむつの内側を視認する必要があり、前後の確認作業が面倒であった。これに対して、おむつの外側に文字等が表示されている場合は、前後の確認が行い易い反面、前後の表示が目立つため第三者から着用者がおむつを着用していることを気づかれ易く、着用者が恥ずかしさを感じるなど、精神的な負担を与えることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開3032-151325号
【特許文献2】特開2010-520002号
【特許文献3】特開2019-115524号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、着用者や介護者による前後の確認を容易にしつつ、着用していることを目立たせないパンツ型使い捨ておむつを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のパンツ型使い捨ておむつは、腹側部と、背側部と、前記腹側部と前記背側部との間に位置する股下部とを有し、前記腹側部から前記股下部を通って前記背側部に向かう方向を長手方向とし、前記長手方向に直交する方向を幅方向とするパンツ型使い捨ておむつであって、前記腹側部の前記幅方向の両側部と前記背側部の前記幅方向の両側部とが前記幅方向の所定位置で、前記長手方向に延びる一対の接合部で接合されてなる筒状の胴回り部を備え、少なくとも一方の前記接合部及び該接合部の近傍のいずれかに、前記腹側部と前記背側部とを区別するための識別子が設けられている。
【発明の効果】
【0008】
このように構成された本発明のパンツ型使い捨ておむつは、着用者や介護者による前後の確認を容易にしつつ、着用していることを目立たせなくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1のパンツ型使い捨ておむつを着用者が着用した状態を示す斜視図である。
図2】実施例1のパンツ型使い捨ておむつを展開した状態を示す平面図である。
図3図2におけるA-A線に沿った断面を模式的に示す説明図である。
図4】実施例1のパンツ型使い捨ておむつの正面図である。
図5】(a)は実施例1のパンツ型使い捨ておむつの左側の接合部の一部拡大図及びアンビルロールの凸部の配列パターンの一例を示す説明図であり、(b)はアンビルロールの凸部の配列パターンの変形例を示す説明図である。
図6】実施例2のパンツ型使い捨ておむつの正面図である。
図7】(a)~(i)は識別子の第1変形例~第9変形例を示す説明図である。
図8】(a)はおむつの表側部から見た識別子の第10変形例を示す説明図であり、(b)はおむつの背側部から見た識別子の第10変形例を示す説明図であり、(c)は識別子の第11変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明によるパンツ型使い捨ておむつを実施するための形態を、図面に示す実施例に基づいて説明する。
【0011】
(実施例1)
実施例1におけるパンツ型使い捨ておむつ10(以下、単に「おむつ10」という)は、図1及び図2に示すように、腹側部1と、背側部2と、腹側部1及び背側部2の間に位置する股下部3とを有している。なお、本明細書では、腹側部1から股下部3を通って背側部2に向かう方向を長手方向Lとし、長手方向Lに直交する方向を幅方向Wとする。また、以下の説明では、おむつ10を着用する着用者Mを基準として「上下」「左右」「前後」等の用語を用いる。
【0012】
実施例1のおむつ10は、腹側部1の幅方向Wの両側部と背側部2の幅方向Wの両側部が幅方向Wで長手方向Lに延びる一対の接合部4a,4bで接合されている。この接合によって、一対の接合部4a,4b及びウエスト挿入開口5を有する筒状の胴回り部6と、一対の脚挿入開口7とが形成されている。着用者Mは、おむつ10の着用時、一対の脚挿入開口7に足M1、M2をそれぞれ挿入し、ウエスト挿入開口5に胴体M3を挿入することで、胴回り部6によって腹部及び背中が覆われる。
【0013】
また、おむつ10は、図3に示すように、パンツ型に形成された外装体11と、外装体の内面側に配置された内装体12とを備えている。外装体11は、バックシート13、ギャザー押さえシート14及び漏れ防止シート15が、これらの順序で積層して形成されている。バックシート13は、おむつ10の着用時に着衣側に配置されるシート材であり、例えば液不透過性を有する不織布を使用することができる。ギャザー押さえシート14は、例えば液不透過性を有する不織布によって形成されたシート材であり、バックシート13の表面(着用者Mの肌側の面)に固定される。
【0014】
漏れ防止シート15は、着用者Mと胴回り部6のウエスト挿入開口5との間からの体液の漏れ(いわゆる背漏れ、腹漏れ)を防止する。漏れ防止シート15は、おむつ10の長手方向Lの両端縁であって腹側部1と背側部2に、胴回り部6の上端部6aに沿って配置され、長手方向Lの長さは、内装体12の長手方向Lの各端部12aを被覆する長さとしている。漏れ防止シート15は、例えば液不透過性を有する帯状の不織布によって形成されたシート材であり、ギャザー押さえシート14の表面(着用者Mの肌側の面)に固定されている。
【0015】
胴回り部6には、幅方向Wに伸縮する複数の伸縮部材16が設けられている。各伸縮部材16は、例えば、糸状又は帯状の天然ゴム等を使用することができる。複数の伸縮部材16は、胴回り部6の長手方向Lに沿って所定の間隔をあけて配置され、バックシート13とギャザー押さえシート14との間に挟み込まれて、所定の伸長状態で保持されている。
【0016】
内装体12は、図3に示すように、撥水性シート17、吸収体18及びトップシート19が、これらの順序で積層して形成されている。撥水性シート17は、例えば撥水性を有する不織布を使用することができる。撥水性シート17は、外装体11のギャザー押さえシート14の表面(着用者Mの肌側の面)に配置され、ギャザー押さえシート14に固定されている。これにより、内装体12と外装体11とが一体となって、おむつ10を形成している。
【0017】
吸収体18は、液保持性を有する吸収性ポリマーとパルプを含んで構成され、股下部3に対応する位置に配置される。トップシート19は、おむつ10の着用時に着用者Mの肌側に配置されるシート材であり、例えば液透過性を有する不織布を使用することができる。
【0018】
実施例1のおむつ10は、図1図4に示すように、左右に配置された一対の接合部4a,4bを有している。実施例1のおむつ10は、左側(一方)の接合部4aに、おむつ10の腹側部1と背側部2とを区別するための識別子8、つまりおむつ10の前後を区別するための識別子8が設けられている。実施例1の一対の接合部4a,4bは、アンビルロールと超音波ホーンを有する超音波加工装置を用いて形成される。より具体的には、バックシート13、ギャザー押さえシート14及び漏れ防止シート15が積層された外装体11を二つ折して、腹側部1と背側部2とで重ねた状態で、回転するアンビルロールと超音波ホーンの間を通す。これにより、個々のおむつ10の両側部となる部位が溶着されつつ圧縮されて、複数の圧着痕41a,41bを有する一対の接合部4a,4bが形成される。なお、「圧着」には、加圧によって材料を接合させる圧着や、加熱と加圧によって材料を塑性変形させて接合させる「熱圧着」等がある。
【0019】
このアンビルロールの表面の凸部の配列パターンを適宜変えることで、様々な形状の圧着痕41a,41bを形成することができる。図5(a)は、実施例1の左側の接合部4aの一部拡大図及びアンビルロール100の凸部101の配列パターンの一例を示す説明図である。この図5(a)の紙面右図に示すように、アンビルロール100の凸部101の配列パターンを、「Left」(左)の頭文字である「L」を象るような配列パターンとするとともに、この「L」字状の配列パターンを長手方向Lに複数配置する。このようなアンビルロール100を用いることで、図5(a)の紙面左図、図1図3に示すように、おむつ10の幅方向Wの左側(一方)の端部に、「L」字状に並ぶ複数の圧着痕41aの群が、長手方向Lに複数並んでなる左側(一方)の接合部4aが形成される。この圧着痕41aは、圧着されていない非圧着部42aに対して凹んでいるため、着用者Mや介助者が視覚によって「L」と認識することができる。したがって、この「L」字状の圧着痕41aは、実施例1の識別子8として機能する。また、「L」字状の複数の圧着痕41aを有する接合部4aは、おむつ10の着用時は容易に分離することがなく、一方でおむつ10を外すときは、指等で容易に引き裂くことが可能となる。
【0020】
このように、実施例1のおむつ10は、おむつ10の左側の接合部4aを形成すると同時に、圧着痕41aによって識別子8を形成することができる。また、おむつ10に識別子8を設けるための特別な装置や工程を必要とせず、既存の超音波加工装置のアンビルロール100の凸部101の配列パターンを変えるだけで、識別子8を簡易に形成することができる。
【0021】
これに対して、おむつ10の右側(他方)の接合部4bには、図1図4に示すように、長手方向Lに複数並ぶ線状に圧着された一般的な圧着痕41bが形成されている。つまり、右側の接合部4bは、識別子8を有していない。このように、左側の接合部4aの圧着痕41aと右側の接合部4bの圧着痕41bの形状(パターン)を変えて、左側の接合部4aのみに識別子8を設けることで、着用者や介助者は、おむつ10の左右を視覚により迅速に識別し、前後を容易に区別することができる。また、おむつ10の表面の凹凸によって識別子8を形成しているので、識別子8は目立ちにくく、おむつ10を手にした着用者M等からは容易に視認できるが、離れた位置に居る第三者等からは視認しにくい。
【0022】
なお、接合部4a,4bの一方に識別子8を設ける場合は、おむつ10のパッケージや包装紙に、識別子8が設けられている側が左側(若しくは右側)であることを明記することが望ましい。これにより、着用者M等は、識別子8の形状によらず、つまり「L」の文字を読まなくても、識別子8の有無によって一目でおむつ10の左右を把握することができる。
【0023】
また、圧着痕41a,41bの形状が異なることで、左側の接合部4aと右側の接合部4bの手触りが異なる。つまり、着用者M等は、手触りによって識別子8を識別することができる。このため、着用者M等は、視覚によらなくても、おむつ10の左右を手触り(触覚)により識別することができる。
【0024】
このように、手触り(触覚)で物品を区別することを目的として、容器やパッケージに設けられた文字や記号を「触覚識別表示」という。また、「触覚識別表示」は、「触覚識別記号」、「触覚識別マーク」等とも呼ばれる。この「触覚識別表示」はシャンプーやボディソープ等に設けられた「きざみ表示」が広く知られている。
【0025】
シャンプー等の触覚識別表示については、日本工業標準規格(JIS)S0021の「高齢者・障害者配慮設計指針-包装・容器」に規定されている。「触覚識別表示」は、切欠き、点字表示、凸記号、ぎざぎざ、テクスチュア(素材表面に触感)、エンボス(浮き彫り)等が挙げられる。「触覚識別表示」を設けることで、高齢者や視覚障がい者を含む、多くの人が手触りで製品を容易に識別することができる。
【0026】
したがって、実施例1の識別子8は、このような「触覚識別表示」であり、「触覚識別表示」からなる識別子8を、接合部4aに設けることで、着用者M等は、視覚だけでなく、触覚によってもおむつ10の前後を区別することができる。
【0027】
また、図5(b)に、アンビルロール100の凸部101の配列パターンの変形例を示した。図5(b)の各図には、凸部101が様々な形状や大きさの波形(幾何学模様)に配列されている。各凸部101の配列パターンは、アンビルロール100に一つのみ設けられて、圧着痕41aによって短い波形の識別子8を形成してもよい。また、各凸部101配列パターンは、アンビルロール100に長手方向Lに複数繋げて配置され、長手方向Lに長尺な連続する波形からなる識別子8を形成してもよい。また、各凸部101の配列パターンは、アンビルロール100に長手方向Lに間隔をあけて配置され、短い波形が間欠的に連続する識別子8を形成してもよい。また、いずれの配列パターンを用いる場合も、圧着痕41aによる識別子8は、左右の接合部4a,4b又はその近傍の一方のみ設けてられもよいし、波形を異ならせて双方の接合部4a,4b又はその近傍に設けられてもよい。
【0028】
以上のようなアンビルロール100を用いることで、波形に配置された圧着痕41aからなる波形の識別子8が形成される。このような波形の識別子8は、視覚や触覚によって着用者M等に容易におむつ10の左右や前後を区別させられるとともに、文字と比べてより抽象的で、パンツの模様と認識され得る。このため、パンツに似せたおむつ10の外観(デザイン性)に影響することがなく、おむつ10であることを目立たせず、第三者は、着用者Mがおむつ10を着用していることに気づきにくくなる。この場合も、おむつ10のパッケージや包装紙に、波形が描かれている側が左側(若しくは右側)であることや、左右の波形の違い等を明記することが望ましい。
【0029】
なお、接合部4a,4bの接合手法が、超音波加工装置を用いた超音波圧着による接合に限定されず、熱圧着加工による接合、エンボス加工による接合、ホットメルト等の接着剤による接合等、公知の接合手法を用いることができる。例えば、エンボス加工によって接合する場合は、腹側部1と背側部2の外装体11どうしを圧着してエンボス部を形成するときに、左側の接合部4aに対応するエンボス部の形状を、「L」等の識別子8を象った形状とする。これにより、おむつ10に、接合部4aを設けると同時に、視覚でも触覚でも認識できる立体的な識別子8を設けることができる。また、接着剤によって接合する場合は、例えば、接着痕によって接合部4aに識別子8を設けることができる。
【0030】
以下、実施例1のパンツ型使い捨ておむつ10の作用効果を説明する。
【0031】
パンツ型の使い捨ておむつ10を着用する際には、着用者M又は介助者は、まずおむつ10の前後を確認する。従来のおむつでは、前後を区別する文字等がおむつの内側に表示されていたり、おむつの外側に大きく表示されていたりしていた。このため、着用者M等は、おむつを広げて内側を確認する手間がかかったり、前後の表示が目立つため、着用したときに第三者からおむつを着用していることを気づかれ易く、着用者Mが恥ずかしさを感じるなどの精神的な負担を与えたりしていた。
【0032】
これに対して、実施例1のおむつ10は、腹側部1の幅方向Wの両側部と背側部2の幅方向Wの両側部とが幅方向Wの所定位置で、長手方向Lに延びる一対の接合部4a,4bで接合されてなる筒状の胴回り部6を備えている。そして、一方(左側)の接合部4bに、腹側部1と背側部2とを区別するための識別子8が設けられている。具体的には、左側の接合部4aに、「Left」(左)の頭文字である「L」を象った圧着痕41aで構成される識別子8が長手方向Lに複数並んで配置されている。
【0033】
このため、着用者M等は、識別子8を視認することによって、実施例1のおむつ10の左側と右側とを容易に識別することができ、おむつ10の前後を迅速かつ適切に区別することができる。さらには、着用者M等は、「L」と読める面が、おむつ10の前面(正面)であると認識することができる。これに対して、おむつ10の裏面(背面)では、「L」が反転しているので、着用者M等は、裏面であると認識することができる。
【0034】
おむつ10の前後を確認したら、着用者M等は、おむつ10の前後を着用者Mの前後(腹部と背中)に合わせ、左右の脚挿入開口7に着用者の脚を挿入し、胴回り部6をウエスト部分まで引き上げる。これにより、着用者Mは、実施例1のおむつ10を迅速かつ適切に着用することができる。また、介助者は、実施例1のおむつ10を迅速かつ適切に着用者Mに着用させることがでる。
【0035】
実施例1のおむつ10は、識別子8が接合部4aに設けられていることから、識別子8が目立たず、一般的なパンツにより近い外観(見た目)を保つことができる。このため、第三者は、識別子8に気づきにくく、着用者Mがおむつ10を着用中であることに気付きにくい。このため、着用者Mがおむつ10の着用に対する恥ずかしさ等を感じずに済む。したがって、実施例1によれば、着用者Mや介護者による前後の確認を容易にしつつ、着用していることを目立たせないパンツ型使い捨ておむつ10を提供することができる。この結果、着用者Mは、精神的な負担が軽減され、おむつ10の快適な使用が可能となる。また、識別子8が「L」字状であることから、日本語が母国語でない着用者M等も容易に識別でき、国内外において、おむつ10のよりグローバルな展開が可能となる。
【0036】
また、実施例1のおむつ10を外すときは、接合部4a,4bを引き裂くことで、おむつ10を手早く簡単に外すことができる。実施例1では、接合部4aの圧着痕41aを識別子8としているが、このような接合部4aでも容易に引き裂くことができ、識別子8がおむつ10を外す作業に影響することがない。
【0037】
また、実施例1のおむつ10では、識別子8は、一方(左側)の接合部4aに設けられている。この構成により、着用者M等は、識別子8が設けられている接合部4aの方向(実施例1では左側)を適切に把握することができる。また、識別子8の表示をより少なくして、着用していることを、より目立たせないおむつ10を提供することができる。
【0038】
また、実施例1のおむつ10では、一方の接合部4aは、腹側部1及び背側部2の形成材料(外装体11)を圧着することによって形成され、識別子8は、圧着によって前記接合部に形成される前記識別子の形状の圧着痕41aから構成される。すなわち、実施例1の識別子8は、腹側部1及び背側部2の外装体11を圧着したときの圧着痕41aで「L」を象って形成したものであり、立体的に設けられた触覚識別表示でもある。
【0039】
したがって、実施例1のおむつ10では、着用者M等は、視覚だけでなく、触覚でも識別子8を識別することができる。このため、高齢者、視覚障がい者等の視力が低下した者でも、おむつ10の前後を適切に区別することができる。また、手触りでおむつ10の前後を区別できるので、例えば、夜間のおむつ交換時には、灯をつけて前後を確認したり、布団を大きくめくったりしなくても、円滑な交換作業が可能となり、着用者M及び介助者の負担も軽減することができる。
【0040】
(実施例2)
次に、実施例2のパンツ型使い捨ておむつ10Aについで、図6を参照しながら説明する。実施例1のおむつ10は、一方(左側)の接合部4aに識別子8を設けているが、実施例2のおむつ10Aは、一方(左側)の接合部4a及び他方(右側)の接合部4bに、互いに異なる態様の識別子8a,8bを各々設けている。なお、実施例2のおむつ10Aは、二つの識別子8a,8bを設けたこと以外は、実施例1のおむつ10と同様の基本構成を備えている。このため、以下では同様の構成については詳細な説明は省略する。
【0041】
実施例2のおむつ10Aでは、アンビルロール100の凸部101の配列パターンを「L」、「R」が各々長手方向Lに複数並ぶ配列パターンとし、実施例1と同様の超音波加工等の接合手法を用いて接合部4a,4bを形成する。これにより、実施例2のおむつ10は、図6に示すように一方(左側)の接合部4aに、「Left」(左)の頭文字である「L」字状の圧着痕41aが複数形成され、これらの「L」字状の圧着痕41aによって識別子8aが構成される。さらに、実施例2のおむつ10は、他方(右側)の接合部4bに、「Right」(右)の頭文字である「R」字状の圧着痕41bが複数形成され、これらの「R」字状の圧着痕41bによって識別子8bが構成される。また、おむつ10Aは、識別子8を設けた部分に。圧着痕41a,41bと、圧着されていない非圧着部42a,42bによる凹凸が表面に形成される。
【0042】
以上のような構成の実施例2のおむつ10Aでも、実施例1同様の作用効果が得られる。すなわち、着用者M等は、視覚及び触覚のいずれでも識別子8a,8bを識別することができ、実施例2のおむつ10Aの前後を適切に区別することができる。また、接合部4a,4bに設けられる圧着痕41a,41bそのものを識別子8a,8bとしているので、識別子8a,8bは、目立ちにくく、おむつ10Aを保持した着用者M等には識別され易いが、離れた場所に居る第三者には識別されにくい。したがって、実施例2によっても、着用者Mや介護者による前後の確認を容易にしつつ、着用していることを目立たせないパンツ型使い捨ておむつ10Aを提供することが可能となる。
【0043】
また、実施例2のおむつ10Aでは、識別子8a,8bは、一方(左側)の接合部4a及び他方(右側)の接合部4bに設けられている。この構成により、着用者M等は、おむつ10Aの左右をより明確に把握することができ、前後を適切に区別することができる。
【0044】
以上、本発明のパンツ型使い捨ておむつを実施例に基づき説明してきた。しかし、具体的な構成については、この実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や、各実施例の組み合わせや、追加等は許容される。
【0045】
例えば、実施例1、実施例2のおむつ10,10Aでは、識別子8,8a,8bは、一方又は双方の接合部4a,4bに設けられているが、この位置に限定されない。識別子8,8a,8bは、一対の接合部4a,4bの少なくとも何れかの近傍に設けられてもよい。「近傍」に設けられるより具体的な例としては、識別子8,8a,8bは、一対の接合部4a,4bの幅方向Wにおいて内側に設けられてもよいし、外側に設けられてもよい。なお、おむつ10の製造のし易さや視認のし易さ等を鑑みて、識別子8,8a,8bは、接合部4a,4bの幅方向Wにおいて外側に設けられることがより好ましい。
【0046】
また、実施例1、実施例2では、「L」字状や「R」字状の圧着痕41a,41bからなる識別子8,8a,8bは、胴回り部6の両側部の上端から下端まで設けられているが、この構成に限定されることはない。変形例として、識別子8,8a,8bは、両側部の一部のみに設けられてもよい。具体的には、例えば、接合部4a,4bの一部の圧着痕41a,41を「L」字状や「R」字状とし、他の部分を一般的な形状(例えば、図4に示す他方の圧着痕41bのような線状の圧着痕)とすることができる。
【0047】
また、実施例1、実施例2では、識別子8,8a,8bは「L」や「R」の英大文字で表示され、図5(b)に示すアンビルロール100を用いた場合は、識別子8は波形(幾何学模様)で表示されるが、識別子8がこのような態様の表示に限定されることもない。
【0048】
図7(a)~(i)、図8(a)~(c)に、識別子8の第1変形例~第11変形例を示した。第1変形例~第11変形例の識別子8は、一方(左側)の接合部4a又は他方(右側)の接合部4bの幅方向Wにおいて外側に設けられている。また、各変形例では、識別子8を長手方向Lに複数並べて設けているが、個数が限定されることはなく、1個でもよいし、接合部4a,4b近傍の上端から下端まで設けてもよい。各変形例では、接合部4a,4bとは別個に識別子8を設けているため、所望の数で所望の領域に識別子8を設けることができる。なお、第1変形例~第11変形例のような形状(パターン)の識別子8は、一方及び/又は他方の接合部4a,4bに設けられてもよい。
【0049】
図7(a)~(g)に示す第1~第9変形例の識別子8は、超音波加工や熱圧着加工等によって、腹側部1及び背側部2の外装体11を圧着することで形成される複数の圧着痕41’によって構成されている。図7(h)~(i)に示す第10~第11変形例の識別子8は、腹側部1及び背側部2の外装体11を、共にエンボス加工することで形成されるエンボス部43によって構成されている。いずれの場合でも、識別子8を設けた部分に凹凸が形成されて、着用者M等は、視覚だけでなく、触覚によっても、おむつ10の左右を識別することができる。
【0050】
図7(a)に示す第1変形例の識別子8は、他方(右側)の接合部4bの外側に設けられ、漢字の「右」を象った圧着痕41’から構成される。また、図7(b)に示す第2変形例の識別子8は、一方(左側)の接合部4aの外側に設けられ、漢字の「左」を象った圧着痕41’から構成される。このため、着用者M等は、おむつ10の右側又は左側、更には前後を適切に識別することができる。なお、おむつ10の右側と左側に、各々図7(a)、(b)に示す識別子8を設けてもよく、着用者M等がおむつ10の左右、前後をより適切に識別することができる。
【0051】
図7(c)に示す第3変形例の識別子8は、英小文字の「r」を象った圧着痕41’から構成される。
図7(d)に示す第4変形例の識別子8は、英小文字の「l」を象った圧着痕41’から構成される。これらの識別子8も、おむつ10の右側又は左側のみに設けてもよいし、左右両側に設けてもよく、着用者M等は、おむつ10の左右を適切に把握できるとともに、大文字に比べて識別子8を、より目立ちにくくすることができる。
【0052】
図7(e)に示す第5変形例の識別子8は、カタカナの「マエ」を象った圧着痕41’から構成される。第5変形例の識別子8は、おむつ10の左側に設けられているが、右側に設けてもよいし、左右両側に設けてもよい。このような識別子8により、着用者M等は、「マエ」と読める面が、おむつ10の前面であると認識することができ、おむつ10の前後を適切に区別することができる。
【0053】
図7(f)に示す第6変形例の識別子8は、カタカナの「ミギ」を象った圧着痕41’から構成される。図7(g)に示す第7変形例の識別子8は、ひらがなの「ひだり」を象った圧着痕41’から構成される。これらの識別子8も、おむつ10の右側又は左側のみに設けてもよいし、左右両側に設けてもよく、着用者M等は、おむつ10の左右を適切に把握できる。
【0054】
図7(h)に示す第8変形例の識別子8は、一方(左側)の接合部4aの幅方向Wの外側に設けられ、幅方向Wを長辺とする矩形状のエンボス部43が、長手方向Lに複数並んで構成されている。図7(i)に示す第9変形例の識別子8は、一方(左側)の接合部4aの幅方向Wの外側に設けられ、長手方向Lに延びる棒状のエンボス部43によって構成されている。エンボス部43は、圧着痕の一つでもある。
【0055】
第8、第9変形例の識別子8によっても、着用者M等は、視覚は勿論、特に触覚によって、識別子8をより明確に確認でき、おむつ10の左右を適切に識別することができる。第8、第9変形例のような形状の識別子8は、シャンプー等の識別等に多く使用される触覚識別表示であるとともに、文化、言語、国籍、年齢、性別、能力等の違いによらず、あらゆる人が識別可能なユニバーサルデザインである。したがって、おむつ10を、よりグローバルに展開することが可能となる。
【0056】
また、上記各実施例及び変形例では、圧着痕41a,41b,41’やエンボス部43によって構成された立体的な識別子8を、接合部4a,4b又はその近傍に設けているが、識別子8がこれらに限定されない。例えば、識別子8は、接合部4a,4b又はその近傍に平面的に描かれた文字、図形、記号及び色彩から選択される一種又は複数種の組み合わせであってもよい。識別子8を色彩によって表した第10変形例を、図8(a)、(b)に示す。これらの図に示す識別子8は、一方(左側)の接合部4aの幅方向Wの外側であって長手方向Lの上端近傍に設けられ、腹側部1と背側部2のそれぞれの面に、印刷や塗布によって矩形状に色付けすることで設けられる。第10変形例では、腹側部1と背側部2の両面に識別子8を設けているが、一方の面のみに設けてもよい。また、色を異ならせて、識別子8をおむつ10の両側に設けてもよい。また、色彩に限らず、図7の各図に示した文字、図形、記号を、接合部4a,4b又はその近傍に平面的に描いてもよい。
【0057】
このような識別子8によっても、着用者M等は、おむつ10の右側又は左側、更には前後を適切に識別することができるとともに、識別子8のデザイン性を向上させ、第三者に、識別子8がパンツの模様であると思わせることができる。
【0058】
図8(c)に示す第11変形例では、一方(左側)の接合部4aの幅方向Wの外側の一部を、複数個所で三角形状に切り欠いて切欠部44を設け、これらの切欠部44を識別子8としている。切欠部44は、三角形に限定されず、四角形、円形、波形など、様々な形状とすることができる。また、切欠部44の形状を異ならせて、おむつ10の左右両側に切欠部44を設けることもできる。このような切欠部44による識別子8でも、着用者M等は、おむつ10の右側又は左側、更には前後を適切に識別することができるとともに、識別子8のデザイン性を向上させ、第三者に、識別子8がパンツのデザインであると思わせることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 :腹側部 2 :背側部
3 :股下部 4a :接合部(左側の接合部)
4b :接合部(右側の接合部) 6 :胴回り部
8 :識別子(左側の識別子) 8a :識別子(左側の識別子)
8b :識別子(右側の識別子) L :長手方向
W :幅方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8