(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101364
(43)【公開日】2023-07-20
(54)【発明の名称】医療器具用保護具
(51)【国際特許分類】
A61M 5/14 20060101AFI20230712BHJP
【FI】
A61M5/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022010508
(22)【出願日】2022-01-07
(71)【出願人】
【識別番号】503415910
【氏名又は名称】株式会社 スワコー
(72)【発明者】
【氏名】池上 和明
(72)【発明者】
【氏名】征矢野 恭子
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066LL30
(57)【要約】
【課題】 混注口や三方活栓等の輸液用医療器具を柔軟な包囲シートにより包囲することにより、患者の肌に損傷を与えることを未然に防止するための医療器具用保護具を提供する。
【解決手段】 医療器具用保護具は、柔軟な包囲シート1の両端側に脱着可能な接合部材2を設けるとともに、包囲シート1の一方面の中央部に液用機具を包囲する包囲部を形成し、接合部材2は包囲シート1の端部から離間させて設け、輸液用機具を包囲して接合部材2を接合したとき、輸液用機具を隠蔽させ、包囲シート1の他方面を露出させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者等への輸液用機具を包囲する保護具であって、
前記保護具は柔軟な包囲シートの両端側に着脱可能な接合部材を設けるとともに、前記包囲シートの一方面の中央部に前記輸液用機具を包囲する包囲部を形成し、
前記接合部材は前記包囲シートの端部から離間させて設け、前記輸液用機具を包囲して前記接合部材を接合したとき、前記輸液用機具を隠蔽させ、前記包囲シートの他方面を露出させるように構成したことを特徴とする医療用保護具。
【請求項2】
前記接合部材は、ループ及びフックを有する面ファスナー又は接離可能な粘着シートである請求項1に記載の医療用保護具。
【請求項3】
前記接合部材は、中間部を離間して配列させた請求項1又は2のいずれかに記載の医療用保護具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療行為を行うときに、輸液用機具が直接皮膚に接触することにより損傷を防止するための医療器具用保護具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な医療行為において、患者等に薬液を経静脈的に注入する輸液する場合、輸液容器からチューブを介し注射針を患者の腕に注入している。輸液は、患者に対する治療方法に応じて、一種類の薬液のみならず、他の薬液をチューブの途中に配設した混注口、或いは三方活栓から注入することがある。この輸液は長時間に及ぶため、輸液中に患者が動いた場合には、注射針が離脱して危険な医療事故に至ることがある。この事故を防止するため、実公平7-45220号公報(特許文献1)に示すように、脱着自在とした面ファスナーを設けた帯状の固定用シートにチューブを保持し、固定用シートに積層した両面粘着シートにより、固定用シートを患者の腕に粘着して固定していた。
【0003】
一方、他の薬液を混合するための混注口、或いは、薬液の薬液等に切り換えるための三方活栓は、医師や看護師が操作するため、チューブの途中に配設し、操作や作業が容易になるようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された医療用チューブ固定具は、輸液を移送するチューブを固定するため、患者の腕に粘着テープにより粘着固定している。しかしながら、治療に必要な他の薬液を混合する場合、或いは、切り換える場合に使用する混注口や三方活栓は、放置状態のために露出している。このため、患者が移動したときや、医師や看護師が所在位置を探したり、操作するときに、患者の腕等の肌に接触することがある。混注口や三方活栓は、プラスチック等の硬い材質により製造され、鋭利な部位も有していることから、患者の肌に傷を与える危険があった。
【0006】
そこで、本発明の課題は、混注口や三方活栓等の輸液用医療器具を柔軟な包囲シートにより包囲することにより、患者の肌に損傷を与えることを未然に防止するための医療器具用保護具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明による医療器具用保護具は、患者等への輸液用機具を包囲する保護具であって、前記保護具は柔軟な包囲シートの両端側に脱着可能な接合部材を設けるとともに、前記包囲シートの一方面の中央部に前記輸液用機具を包囲する包囲部を形成し、前記接合部材は前記包囲シートの端部から離間させて設け、前記輸液用機具を包囲して前記接合部材を接合したとき、前記輸液用機具を隠蔽させ、前記包囲シートの他方面を露出させるように構成したことを要旨としている。
【0008】
また、前記接合部材は、ループ及びフックを有する面ファスナー又は接離可能な粘着シートとすることが望ましい。
【0009】
さらに、前記接合部材は、中間部を離間して配列させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の医療器具用保護具によれば、輸液用機具を柔軟な包囲シートにより、プラスチック等の硬い材質であり、しかも鋭利な部位を有している混注口や三方活栓を包囲して隠蔽することができるので、患者の肌に接触しても、柔軟な包囲シートの緩衝作用も相まって、傷を与える危険を未然に防止することができる。また、接合部材を包囲シートの端部から離間させているので、輸液用機具を包囲したとき、接合部材が患者の肌に接触しないので、接合部材による痛み等の違和感を与えることがなく、患者に対して優しい状態で輸液用機具を使用することができる。しかも、接合部材が着脱可能なことから、医師や看護師が混注口や三方活栓を操作する場合に、包囲シートからの露出や隠蔽を容易にすることができる。
【0011】
また、接合部材をループ及びフックを有する面ファスナー又は接離可能な粘着シートとすることにより、着脱を容易にすることが可能となる。
【0012】
さらに、複数の接合部材の中間部を離間して配列させることにより、混注口や三方活栓を包囲シートにより包囲しても、離間した部分に輸液用のチューブ等を通過させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明による医療器具用保護具の第1の実施例を示す平面図である。
【
図2】
図1に示す医療器具用保護具の断面図である。
【
図3】医療器具用保護具に医療器具を配置した状態を示す平面図である。
【
図4】包囲シートの端部を接合する状態を示す説明図である。
【
図5】本発明による医療器具用保護具の第2の実施例の一方面を示す平面図である。
【
図6】
図5に示す医療器具用保護具の他方面を示す平面図である。
【
図8】第2の実施例における包囲シートの端部を接合する状態を示す説明図である
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明による医療器具用保護具は、患者等への輸液用機具を包囲する保護具であって、前記保護具は柔軟な包囲シートの両端側に脱着可能な接合部材を設けるとともに、前記包囲シートの一方面の中央部に前記輸液用機具を包囲する包囲部を形成し、前記接合部材は前記包囲シートの端部から離間させて設け、前記輸液用機具を包囲して前記接合部材を接合したとき、前記輸液用機具を隠蔽させ、前記包囲シートの他方面を露出させるように構成している。
【0015】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施例について説明する。
図1、
図2は、本発明による医療器具用保護具の第1の実施例を示している。包囲シート1は、ウレタンフォームなどのプラスチックの発泡体、柔軟なシリコンゴム、天然ゴム、或いは、布などの、柔軟であって患者等の肌に優しい素材が用いられる。この包囲シート1は、
図1に示すように四角形に形成され、1辺の長さは、
図3に示す輸液用機具としての三方活栓4及び医療用チューブ3を包囲するために必要な長さとし、例えば、5~15cmとしている。また、厚さは、1~10mmとしている。
【0016】
包囲シート1の一方面には、接合部材として、面ファスナー2が接着又は縫合により設けられている。面ファスナー2は、
図1に示すように、包囲シート1の上方端に帯状の面ファスナー2が設けられ、下方端には、3個の面ファスナー2が中間部を所定寸法離間して設けられている。また、面ファスナー2は、包囲シート1の端部から離間させて設けられている。さらに、包囲シート1の上方端に設けた面ファスナー2には、ループが形成され、上方端に設けた面ファスナー2には、フックが形成されている。なお、面ファスナー2のループとフックは、逆であっても良い。
【0017】
そして、ループが形成された面ファスナー2と、フックが形成された面ファスナー2を合わせることにより接合される。この面ファスナー2は、フック及びループが硬いため、患者等の肌に接すると傷付くことがある。そのため、各面ファスナー2を包囲シート1の端部から離間させて設けることにより、面ファスナー2が包囲シート1の端部から露出しないので、肌に接することが防止され、傷つけることが未然に防止される。また、包囲シート1の一方面の中央部には、輸液用機具を包囲するための包囲部が形成されている。
【0018】
このように構成した医療器具用保護具は、
図3に示すように、包囲シート1の中央部の包囲部に輸液用機具としての三方活栓4及び医療用チューブ3を配設した後、
図4に示すように、輸液用機具を包囲して、上下に設けた面ファスナー2を合わせて接合する。このとき、三方活栓4が包囲シート1内に包囲され、三方活栓4の左右に接続された医療用チューブ3は、包囲シート1の左右から導出される。また、三方活栓4の下方に接続された医療用チューブ3は、離間させて設けた面ファスナー2の隙間から導出される。
【0019】
そして、医師や看護師等の医療従事者が、三方活栓4を操作するときは、接合した面ファスナー2を引き離すことにより、三方活栓4及び医療用チューブ3が露出するので、種々の操作を行うことができる。三方活栓4等を操作した後は、再び三方活栓4等を包囲して面ファスナー2を合わせて接合し、包囲シート1により隠蔽する。
【0020】
図5乃至
図8は、本発明による医療器具用保護具の第2の実施例を示している。前述した第1の実施例と相違することは、面ファスナー2を包囲シート1の一方面と他方面に設けたことである。すなわち、
図5及び
図7に示すように、包囲シート1の一方面の下方端には、3個の面ファスナー2が中間部を所定寸法離間して設けられている。また、包囲シート1の他方面の上方端には、
図6及び
図7に示すように、帯状の面ファスナー2が設けられている。包囲シート1の他方面に設けた面ファスナー2には、ループが形成され、一方面端に設けた面ファスナー2には、フックが形成されている。さらに、包囲シート1の中央部は、輸液用機具を包囲するための包囲部としている。
【0021】
このように構成した第2の実施例において、包囲シート1の中央部の包囲部に輸液用機具としての三方活栓4及び医療用チューブ3を配設した後、
図8に示すように、輸液用機具を巻くように包囲して、上下に設けた面ファスナー2を合わせて接合する。これにより、三方活栓4が包囲シート1内に巻かれた状態で包囲される。このとき、三方活栓4の左右に接続された医療用チューブ3は、包囲シート1の左右から導出される。また、三方活栓4の下方に接続された医療用チューブ3は、離間させて設けた面ファスナー2の隙間から導出される。
【0022】
そして、医師や看護師等の医療従事者が、三方活栓4を操作するときは、接合した面ファスナー2を引き離すことにより、三方活栓4及び医療用チューブ3が露出するので、種々の操作を行うことができ、三方活栓4等を操作した後は、再び三方活栓4等を包囲して面ファスナー2を合わせて接合し、包囲シート1により隠蔽されることは、前述した第1の実施例と同様である。
【0023】
以上、本発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能であることは言うまでもない。例えば、上述した実施例において、包囲シートを四角形に形成したが、輸液用機具に形状に応じて楕円形に形成しても良い。また、包囲シートの角を円弧状に形成しても良い。さらに、接合部材として、面ファスナーの他、繰り返し着脱可能なように、粘着テープを接着や、粘着剤を塗布しても良く、また、スナップやボタンを使用しても良く、さらに、永久磁石を使用しても良い。さらに、輸液用機具としては、混注口であっても良い。
【符号の説明】
【0024】
1 包囲シート
2 面ファスナー
3 医療用チューブ
4 三方活栓