(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101417
(43)【公開日】2023-07-20
(54)【発明の名称】エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物及びそれを含む多層構造体
(51)【国際特許分類】
C08L 29/04 20060101AFI20230712BHJP
B32B 27/28 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
C08L29/04 S
B32B27/28 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068844
(22)【出願日】2023-04-19
(62)【分割の表示】P 2022110784の分割
【原出願日】2022-07-08
(31)【優先権主張番号】17/570,539
(32)【優先日】2022-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】591057290
【氏名又は名称】長春石油化學股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梁 志傑
(72)【発明者】
【氏名】林 文星
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F100AK04C
4F100AK07C
4F100AK25B
4F100AK25G
4F100AK46C
4F100AK68B
4F100AK68G
4F100AK69A
4F100AL02B
4F100AL02G
4F100AL04C
4F100AL07C
4F100AT00
4F100BA03
4F100CB00B
4F100CB00G
4J002BE031
4J002BE032
4J002DK006
4J002GB01
4J002GF00
4J002GG00
(57)【要約】
【課題】改善された酸素バリア特性および改善された機械的特性をもつエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】
エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物、および均一な厚さを有するエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物を含む多層構造体を提供する。このエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物は、せん断速度99 s-1および温度210℃における粘度の決定係数が、0.5~1である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のエチレン含有量を有する第1のエチレン-ビニルアルコール共重合体と、第2のエチレン含有量を有する第2のエチレン-ビニルアルコール共重合体とを含み、前記第1のエチレン含有量が前記第2のエチレン含有量と同じであるエチレン-ビニルアルコール共重合樹脂組成物であって、
せん断速度99 s-1および温度210℃における粘度の決定係数が、0.5~1であるエチレン-ビニルアルコール共重合樹脂組成物。
【請求項2】
せん断速度99 s-1および温度210℃におけるエチレン-ビニルアルコール共重合樹脂組成物の粘度を1500秒~4500秒間にわたりプロットしたときの回帰直線の傾きが-1~1である、請求項1に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合樹脂組成物。
【請求項3】
前記回帰直線の傾きが-0.5~0.5である、請求項2に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合樹脂組成物。
【請求項4】
前記エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物のメルトフローレートが1.0g/10分~10.0g/10分である、請求項1~3のいずれかに記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物。
【請求項5】
前記エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物が、含有量約5ppm~約300ppmのホウ素を含む、請求項1~3のいずれかに記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物。
【請求項6】
前記エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物が、含有量約5ppm~約380ppmのアルカリ金属を含む、請求項1~3のいずれかに記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物。
【請求項7】
前記エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物が、第1の融点および第2の融点を有し、前記第1の融点の温度が140℃~215℃の範囲であり、前記第2の融点の温度が135℃~200℃の範囲である請求項1~3のいずれかに記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物。
【請求項8】
第1のエチレン含有量を有する第1のエチレン-ビニルアルコール共重合体と、第2のエチレン含有量を有する第2のエチレン-ビニルアルコール共重合体とを含み、前記第1のエチレン含有量が前記第2のエチレン含有量と異なるエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物であって、
せん断速度99 s-1および温度210℃における粘度の決定係数が、0.5~1であるエチレン-ビニルアルコール共重合樹脂組成物。
【請求項9】
前記エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物が、第1の融点および第2の融点を含み、前記第1の融点の温度が170℃~215℃の範囲であり、前記第2の融点の温度が135℃~190℃の範囲である、請求項8に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物。
【請求項10】
前記第1のエチレン含有量が20モル%~35モル%の範囲であり、前記第2のエチレン含有量が36モル%~65モル%の範囲である、請求項8または9に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物。
【請求項11】
次の(a)、(b)及び(c)を含む多層構造体であって、
(a)請求項1又は8記載のエチレン-ビニルアルコール共重合樹脂組成物から形成される層、
(b)前記エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物以外のポリマーから形成されたポリマー層、
(c)接着剤層、
前記接着剤層は、前記エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物から形成される層と前記ポリマー層との間に配置される多層構造体。
【請求項12】
前記ポリマー層が、ポリエチレン層、ポリエチレングラフト-無水マレイン酸層、ポリプロピレン層、およびナイロン層からなる群から選択される、請求項11に記載の多層構造体。
【請求項13】
前記接着剤層がタイ層である、請求項11または12に記載の多層構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物、および該エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物を含む多層構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン-ビニルアルコール(EVOH)樹脂組成物は、腐敗しやすい物品を保存するための積層体として広く使用されている。例えば、EVOH樹脂組成物およびラミネートは、食品包装産業、医療デバイスおよびサプライ産業、製薬産業、エレクトロニクス産業、および農薬産業によって一般に使用される。EVOH樹脂組成物は、酸素バリア層として機能するために、ラミネート内に個別の層として組み込まれることが多い。
【0003】
個別の層としてEVOH層を有する積層体は、典型的には、EVOH樹脂組成物を他のタイプのポリマーと共押出することによって製造される。EVOH樹脂組成物は、他の樹脂と同様のレオロジー特性を示し、従来の押出装置を使用して、ポリオレフィン、ポリアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、および熱可塑性ポリウレタンと同時押出成形すること可能である。しかしながら、EVOH樹脂組成物は、例えば、上記ポリマーのいくつかを含む他のポリマーに対して乏しい接着性を示す場合がある。したがって、「タイ樹脂」(結合層樹脂)と呼ばれる接着樹脂を使用して、EVOH層を隣接する層に共押出成形で結合する。しかし、ナイロンおよび熱可塑性ポリウレタンには、タイ樹脂を使用せずにEVOH樹脂組成物に直接接着するものもある。
【0004】
エチレン含有量が比較的低いEVOH共重合体は、通常、比較的良好な結晶化度および良好なガスバリア特性をもたらすものの、典型的には、機械的特性が比較的劣っている。逆に、エチレン含有量が比較的高いEVOH共重合体は、通常、機械的特性が良好であるが、ガスバリア特性は劣る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中国特許第1264914号(C)明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
改善された酸素バリア特性および改善された機械的特性を提供するEVOH樹脂組成物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の一態様は、エチレン-ビニルアルコール(EVOH)共重合体樹脂組成物であって、せん断速度99 s-1および温度210℃における粘度の決定係数が0.5~1である、エチレン-ビニルアルコール(EVOH)共重合体樹脂組成物である。
【0008】
また本発明の別の態様は、(a)EVOH共重合体樹脂組成物から形成された層と、(b)EVOH共重合体樹脂組成物以外のポリマーから形成されたポリマー層と、(c)接着剤層とを含む多層構造であり、接着剤層は、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物から形成された層とポリマー層との間に配置される。
【0009】
本発明の説明と他の特徴については、以下で、詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例(EVOH 4)および比較例(EVOH 6)のEVOH共重合体樹脂組成物の決定係数(R
2)を表し、これは、EVOH共重合体樹脂組成物を、温度210℃およびせん断速度99 s
-1における粘度をレオメーターによって試験し、せん断粘度対経過時間をプロットしたものである。実施例EVOH 4の回帰直線の決定係数(R
2)は、0.5以上1以下である。R
2が1に近づくと、せん断粘性がより安定になり、膜厚が均一になる。
【
図2】実施例EVOH1~6および比較例EVOH1~7から熱成形された多層容器の概略図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、その一態様として、エチレン-ビニルアルコール(EVOH)共重合体樹脂組成物を提供する。
このEVOH共重合体樹脂組成物は、第1のエチレン-ビニルアルコール共重合体および第2のエチレン-ビニルアルコール共重合体を含む。EVOH共重合体樹脂組成物は、任意に、追加のエチレン-ビニルアルコール共重合体、第3のエチレン-ビニルアルコール共重合体を含むことができる。EVOH共重合体樹脂組成物は、粘度の決定係数が、せん断速度99 s-1および温度210℃において、0.5~1の範囲である。温度210℃及びせん断速度99 s-1におけるエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物の粘度を、約1500秒~約4500秒にわたってプロットしたとき、回帰直線の傾きは約-1~約1である。これらの特性により、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物から製造されたフィルムは、他のエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物から製造されたものと比較して、良好な均一な厚さおよび改善された酸素バリア特性を有する。
【0012】
(I) エチレン-ビニルアルコール(EVOH)共重合体樹脂組成物
本発明は、第1のエチレン-ビニルアルコール共重合体および第2のエチレン-ビニルアルコール共重合体を含むエチレン-ビニルアルコール(EVOH)共重合体樹脂組成物を包含する。いくつかの実施形態では、エチレン-ビニルアルコール(EVOH)共重合体樹脂組成物は、第3のエチレン-ビニルアルコール(EVOH)共重合体を含む。
【0013】
一般に、本発明のEVOH共重合体樹脂組成物は、第1のエチレン-ビニルアルコール共重合体の第1のエチレン含量と、第2のエチレン-ビニルアルコール共重合体の第2のエチレン含量とを含む。当業者であれば理解できるように、EVOH共重合体樹脂組成物中の第1および第2のエチレン含量は、変えることができる。一実施形態では、第1のエチレン含量は、第2のエチレン含量と同じであってもよく、エチレン含量は、約20モル%~約65モル%であってもよい。別の実施形態では、第1のエチレン含量は、第2のエチレン含量とは異なっていてもよい。さらに別の実施形態では、EVOH共重合体樹脂組成物は、第3のEVOH共重合体を含む。第3のEVOH共重合体は、第3のエチレン含有量に寄与する。第3のエチレン含量は、第1のエチレン-ビニルアルコール共重合体の第1のエチレン含量、及び、第2のエチレン-ビニルアルコール共重合体の第2のエチレン含量と、同一であっても、異なっていてもよい
【0014】
本発明において、通常、第1のエチレン-ビニルアルコール共重合体の第1のエチレン含量は、約20モル%~約48モル%であり得る。様々な実施形態において、第1のエチレン含有量は、約22モル%~約48モル%、約23モル%~約48モル%、約24モル%~約48モル%、約32モル%~約48モル%、約20モル%~約35モル%、約21モル%~約35モル%、約22モル%~約35モル%、約23モル%~約35モル%、約24モル%~約35モル%、約25モル%~約35モル%、約26モル%~約35モル%、約27モル%~約35モル%、約28モル%~約35モル%、約29モル%~約35モル%、約30モル%~約35モル%、約31モル%~約35モル%、約32モル%~約35モル%、約33モル%~約35モル%、約34モル%~約35モル%であり、その間の任意の範囲または部分範囲を含む。
【0015】
本発明において、通常、第2のエチレン-ビニルアルコール共重合体の第2のエチレン含量は、約36モル%~約65モル%であり得る。様々な実施形態では、第2のエチレン含量は、36モル%~約65モル%、約37モル%~約65モル%、約38モル%~約65モル%、約39モル%~約65モル%、約40モル%~約65モル%、約41モル%~約65モル%、約43モル%~約65モル%、約45モル%~約65モル%、約48モル%~約65モル%、約50モル%~約65モル%、約52モル%~約65モル%、約55モル%~約65モル%、約58モル%~約65モル%、約60モル%~約65モル%、または約63モル%~約65モル%であってよく、これらの間の任意の範囲または部分範囲を含む。
【0016】
本発明のEVOH共重合体樹脂組成物は、粘度の決定係数を有する。この粘度の決定係数は、温度210℃、せん断速度99s-1で測定される。温度およびせん断速度は、EVOH共重合体樹脂組成物を処理する際の押出機内の状況をシミュレートして設定したものである。温度210℃とせん断速度99s-1は、EVOH共重合体樹脂組成物を加工する際の最も一般的な条件である。このデータを、約1500秒~約4500秒の期間にわたって回帰直線にプロットする。約1500秒~約4500秒の時間は、処理中の安定した状況である。この時間期間において、EVOH共重合体樹脂組成物は、完全に溶融され、EVOH共重合体樹脂組成物の固有のレオロジー特性を挙動させることができる。通常、このプロットの回帰直線の傾きは-1から1である。様々な実施形態では、このプロットの回帰直線の傾きは、-1、-0.9、-0.8、-0.7、-0.6、-0.5、-0.4、-0.3、-0.2、-0.1、0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、または1で、それらの間の任意の範囲または部分範囲を含むであってもよい。一実施形態では、プロットからの回帰直線の傾きは、-0.5から0.5である。
【0017】
通常、本発明のEVOH共重合体樹脂組成物は、約1.0g/10分~約10.0g/10分のメルトフローレートを有する。様々な実施形態では、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物は、約1.0g/10分~約9.0g/10分、約1.0g/10分~約6.0g/10分、約3.0g/10分~約10.0g/10分、約3.0g/10分~約6.0g/10分、約3.5g/10分~約5.5g/10分、約4.0g/10分~約5.0g/10分、または約4.2g/10分~約4.8g/10分のメルトフローレートを有し、これらの間の任意の範囲または下位範囲を含む。
【0018】
当業者であれば理解できるように、EVOH共重合体樹脂組成物中のホウ素含有量は、利用される特定のEVOH共重合体、溶液中のホウ素の濃度、およびホウ素溶液と接触するEVOH共重合体の持続時間に依存する。通常、本発明のEVOH共重合体樹脂組成物は、約5ppm (百万分率)~約300ppmのホウ素含有量を有する。様々な実施形態において、EVOH共重合体樹脂組成物は、約5ppm~約300ppm、約50ppm~約250ppm、約100ppm~約200ppm、または約125pm~約175ppmのホウ素含有量を有し、これらの間の任意の範囲または下位範囲を含む。
【0019】
通常、本発明のEVOH共重合体樹脂組成物は、約5ppm (百万分率)~約380ppmのアルカリ金属含有量を有する。様々な実施形態において、EVOH共重合体樹脂組成物は、約5ppm~約300ppm、約50ppm~約250ppm、約100ppm~約200ppm、または約125pm~約175ppmのアルカリ金属含有量を有し、これらの間の任意の範囲または下位範囲を含む。
【0020】
本発明のEVOH共重合体樹脂組成物は、ペレットの形態であってもよい。ペレットが円筒形または楕円円筒形の場合、高さは1.5~5.0mm、1.7~5.0mm、2.2~5.0mm、2.4~5.0mm、2.6~5.0mm、2.8~5.0mm、3.0~5.0mm、3.2~5.0mm、3.4~5.0mm、3.6~5.0mm、3.8~5.0mm、4.0mm~5.0mm、1.7~4.5mm、1.7~4.4mm、1.7~4.2mm、1.7~4.0mm、1.7~3.8mm、1.7~3.6mm、1.7~3.4 mm、1.7~3.2 mm、または1.7~3.0 mmであり、断面積の長軸は1.5~5.0mm、1.7~5.0mm、2.2~5.0mm、2.4~5.0mm、2.6~5.0mm、2.8~5.0mm、3.0~5.0mm、3.2~5.0mm、3.4~5.0mm、3.6~5.0mm、3.8~5.0mm、4.0~5.0mm、1.7~4.5mm、1.7~4.4mm、1.7~4.2mm、1.7~4.0mm、1.7~3.8mm、1.7~3.6mm、1.7~3.4 mm、1.7~3.2mm、または1.7~3.0mmである。
【0021】
ペレットが円形粒子形状である場合、円形粒子形状は、円形、楕円形、または「碁」形状であってもよく、ここで、ペレットの最大外径を長辺とし、長辺に垂直な断面において最大面積を有する断面における最大直径を短辺とすると、長辺は、1.5-5.0mm、2.2.5-0mm、2.4-5.0mm、2.6-5.0mm、2.8-5.0mm、3.0-5.0mm、3.2-5.0mm、3.4-5.0mm、3.6-5.0mm、3.8-0.5mm、4.0-0.5mm、2.0-4.5mm、2.0-4.4mm、2.0-4.2mm、2.0-4.0mm、2.0-3.8mm、2.0-3.6mm、2.0-3.4mm、2.0-3.2mm、または2.0-3.0mmとすることができ、短辺は、1.5-5.0 mm、1.8-4.6 mm, 2.4-4.6 mm, 2.6-4.6 mm, 2.8-4.6 mm, 3.0-4.6 mm, 3.2-4.6 mm, 3.4-4.6 mm, 3.6-4.6 mm, 3.8-4.6 mm, 4.0-4.6 mm, 1.6-4.5 mm, 1.6-4.4 mm, 1.6-4.2 mm, 1.6-4.0 mm, 1.6-3.8 mm, 1.6-3.6 mm, 1.6-3.4 mm, 1.6-3.2 mm, または1.6-3.0 mmすることができる。
【0022】
2つのEVOH共重合体を含むEVOH共重合体樹脂組成物は、第1の融点および第2の融点を有する。当業者であれば理解できるように、第3のEVOH共重合体を含めた場合には、第3の融点が存在する。
【0023】
通常、第1の融点は、約140℃~約215℃の範囲である。様々な実施形態では、第1の融点は、約140℃~約200℃、約170℃~約215℃、約180℃~約210℃、約190℃~約205℃、または約195℃~約200℃の範囲であり、その間の任意の範囲または部分範囲を含む。
【0024】
通常、第2の融点は、約135℃~約200℃の範囲である。様々な実施形態では、第2の融点は、約135℃~約190℃、約140℃~約180℃、約150℃~約175℃、または約160℃~約170℃の範囲であり、その間の任意の範囲または部分範囲を含む。
【0025】
特定の理論に限定されるものではないが、本発明者らは、少なくとも2つの融点の範囲が前述の好ましい範囲外である場合、またはEVOH共重合体樹脂組成物またはそのペレットを形成するEVOH共重合体のエチレン含有量が、違いすぎる場合、または近すぎる場合、混和性が不十分となりえること、および/またはそれから形成される熱成形多層の特性が劣ることを発見した。例えば、EVOH共重合体樹脂組成物を形成するEVOH共重合体またはそのペレットのエチレン含有量が近すぎる場合、EVOH共重合体樹脂組成物またはそのペレットから熱成形された多層構造体は、特性が劣る可能性がある。
【0026】
本発明のEVOH共重合体樹脂組成物は、2つ以上のEVOH共重合体から調製されるので、いくつかの独特の特性をもたらす。例えば、2つ以上のエチレン含有量では、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物は、フィルムの形成後に、フィルムの厚さの均一性が改善し、酸素バリア特性が向上する。
【0027】
(II) EVOH共重合体樹脂組成物の製造方法
本発明の別の態様は、EVOH共重合体樹脂組成物を製造するための方法を含む。この方法は、(a)第1のエチレン-酢酸ビニル(EVAc)共重合体を調製すること、(b) 第1のEVAc 共重合体中間体を鹸化して、第1のエチレン-ビニルアルコール(EVOH)共重合体中間体を形成すること、(c)第1のEVOH共重合体中間体をペレット化して、第1のEVOH共重合体中間体ペレットを形成すること、(d)第1のエチレン-ビニルアルコール共重合体中間体ペレットを、アルカリ金属を含む第1の溶液と接触させて、第1のエチレン-ビニルアルコール共重合体を形成すること、(e)第2のエチレン-酢酸ビニル(EVAc)共重合体を調製すること、(f) 第2のエチレン-酢酸ビニル共重合体を鹸化して、第2のエチレン-ビニルアセテート(EVOH)共重合体中間体を形成すること、(g)第2のEVOH共重合体中間体をペレット化して、第2のEVOH共重合体中間体ペレットを形成すること、(h)第2のEVOH共重合体中間体ペレットを、アルカリ金属を含む第2の溶液と接触させて、第2のエチレン-ビニルアルコール共重合体を形成すること、(i)第1のEVOH共重合体と第2のEVOH共重合体とを溶液ブレンドにより接触させてEVOH共重合体樹脂組成物前駆体を形成すること、(j) エチレン-ビニルアルコール共重合体組成物前駆体を乾燥させて、EVOH共重合体樹脂組成物を形成すること、または(k)さらに配合してEVOH共重合体樹脂組成物を形成すること、を含む。第1の溶液および/または第2の溶液は、ホウ素化合物を含んでもよい。当業者ならばわかるように、1つ以上の追加のEVOH共重合体、各共重合体は、工程(a)~(d)のような工程によって得ることができ、工程(i)において添加してEVOH共重合体樹脂組成物前駆体を形成することができる。
【0028】
(a) 第1のエチレン-酢酸ビニル(EVAc)共重合体の調製
本方法の第1の工程、工程(a)は、第1のエチレン-酢酸ビニル(EVAc)共重合体を調製することから開始する。本工程では、エチレン雰囲気下、重合触媒、有機酸、非水系極性溶媒に酢酸ビニルモノマーを撹拌しながら接触させる。所定の重合度が達成された後、重合を停止させる。
【0029】
この工程では、過酸化物重合触媒などの種々の重合触媒を使用することができる。限定されるものではないが、触媒は、AIBN (アゾビスイソブチルニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ジ-t-ブチル、過酸化ジアセチル、過酸化水素または過酸化ラウリロイルであり得る。一実施形態では、過酸化物重合触媒は、ジアセチルペルオキシドである。
【0030】
通常、重合触媒対酢酸ビニルモノマーの重量比は、約0.00002:1.0~約0.0002:1.0の範囲であり得る。様々な実施形態では、重合触媒対酢酸ビニルモノマーの重量比は、約0.00002:1.0~約0.0002:1.0、約0.00004:1.0~約0.0001:1.0、または約0.00006:1.0~約0.00009:1.0の範囲であってよく、これらの間の任意の範囲または部分範囲を含む。
【0031】
本方法の工程(a)において、多種多様な有機酸を利用することができる。限定されないが、適切な酸として、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、シュウ酸、尿酸、リンゴ酸、クエン酸、または酒石酸が挙げられる。一実施形態では、重合反応に使用される有用な有機酸はクエン酸である。
【0032】
通常、酢酸ビニルモノマー対有機酸の重量比は、約500,000:1.0~約5,000:1.0の範囲であり得る。様々な実施形態では、酢酸ビニルモノマー対有機酸の重量比は、約500,000:1.0~約5,000:1.0、約100,000:1.0~約10,000:1.0、または約75,000:1.0~約25,000:1.0の範囲であってよく、これらの間の任意の範囲または部分範囲を含む。一実施形態では、酢酸ビニルモノマー対有機酸の重量比は、約30,000:1.0であってもよい。
【0033】
この工程では、種々の非水性極性溶媒を使用することができる。限定されないが、適切な非水性極性溶媒の例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、またはそれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態では、適切な非水性極性溶媒はメタノールであってもよい。
【0034】
通常、酢酸ビニルモノマー対非水性極性溶媒の重量比は、約20.0:1.0~約0.1:1.0の範囲とすることができる。様々な実施形態では、酢酸ビニルモノマー対非水性極性溶媒の重量比は、約20.0:1.0~約0.1:1.0、約10.0:1.0~約1.0:1.0、または約8.0:1.0~約2.0:1.0の範囲であってよく、これらの間の任意の範囲または部分範囲を含む。一実施形態では、酢酸ビニルモノマーと非水性極性溶媒との重量比は、約5.0:1.0であってもよい。
【0035】
酢酸ビニルモノマー、重合触媒、有機酸、および非水性極性溶媒の接触は、最初に、ヘリウム、アルゴン、窒素、またはそれらの組み合わせなどの不活性雰囲気下で行うことができる。工程(a)で使用されるこれらの試薬を合わせ、撹拌した後(均質または不均質混合物のいずれかが形成される)、不活性雰囲気をエチレン雰囲気に置き換える。エチレンは、重合反応に組み込まれて、エチレン-酢酸ビニル共重合体を形成する。
【0036】
通常、重合反応におけるエチレンガスの圧力は、約10kg/cm2~約60kg/cm2とすることができる。様々な実施形態において、重合反応におけるエチレンガスの圧力は、約10kg/cm2~約60kg/cm2、約25kg/cm2~約50kg/cm2、または約35kg/cm2~約45kg/cm2 であり、これらの間の任意の範囲または部分範囲を含む。
【0037】
重合に使用される試薬を一旦合わせ、撹拌し、エチレンガスを導入したならば、反応混合物を特定の温度に加熱して重合を開始する。通常、重合の温度は、約30℃~約100℃の範囲であり得る。様々な実施形態では、重合温度は、約30℃~約100℃、約40℃~約90℃、約50℃~約80℃、または約60℃~約70℃の範囲であってよく、これらの間の任意の範囲または下位範囲を含む。一実施形態では、重合の温度は、約67℃であってもよい。
【0038】
所定の重合度に達するまで重合を進行させる。通常、重合は、少なくとも重合度約50%に達するまで進行させる。種々の実施形態において、重合度約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約95%に達するまで重合を進行させる。一実施形態では、重合度約60%まで重合を進行させる。
【0039】
重合時間は、重合反応の各成分、各成分の濃度、重合中のエチレンガスの圧力、および重合度に応じて変化させることができる。通常、重合時間は、少なくとも2時間である。様々な実施形態において、重合時間は、約2時間、約2.5時間、約3時間、約3.5時間、約4時間、約4.5時間、約5時間、約5.5時間、約6時間、約6.5時間、約7時間、約7.5時間、約8時間、または8時間超であり得る。一実施形態では、重合を行う時間は約6時間である。
【0040】
適切な重合度に達したならば、重合を停止させるために、重合中に抑制剤を導入する。この工程では、広範囲の抑制剤を使用することができる。限定されないが、適切な抑制剤の例として、4-メトキシフェノール、ブチル化ヒドロキシトルエン、ヒドロキノン、2-メチルブタン酸、ペンタン二酸、アジピン酸、ソルビン酸、サリチル酸、またはケイ皮酸が挙げられる。一実施形態では、工程(a)で使用される抑制剤はソルビン酸である。
【0041】
通常、抑制剤対酢酸ビニルモノマーの重量比は、約0.001:1.0~約0.00001:1.0の範囲であり得る。様々な実施形態では、抑制剤対酢酸ビニルモノマーの重量比は、約0.001:1.0~約0.00001:1.0、約0.0008:1.0~約0.00002:1.0、約0.0005:1.0~約0.00005:1.0、または約0.0002:1.0~約0.00008:1.0の範囲であってよく、これらの間の任意の範囲または部分範囲を含む。
【0042】
重合を停止したならば、エチレン-酢酸ビニル共重合体中のエチレン含有量を測定する。
【0043】
通常、EVAc共重合体中のエチレン含有量は、20モル%~約35モル%の範囲である。様々な実施形態では、エチレン-酢酸ビニル共重合体中のエチレン含有量は、20モル%~約35モル%、約20モル%~約30モル%、または20モル%~約25モル%の範囲であってよく、これらの間の任意の範囲または下位範囲を含む。
【0044】
次の工程で使われる適切なEVAc共重合体を得るために、残りの酢酸ビニルモノマーを重合混合物から除去する必要がある。この除去を達成するのに有用な1つの方法は、未反応酢酸ビニルモノマーおよび溶媒の共沸蒸留を含む。有用な溶媒は上記に記載したとおりで、一実施形態では、溶媒はメタノールである。
【0045】
重合混合物は蒸留塔に導入される。蒸留は、大気圧下または減圧下で行うことができる。一実施形態では、蒸留は大気圧下で行うことができる。メタノールおよび酢酸ビニルモノマーを蒸留塔から除去する。メタノールは、蒸気として蒸留塔に戻され、酢酸ビニルモノマーは回収され、再使用される。追加のメタノールを蒸留塔の下部に導入して、溶媒のレベルを維持し、残りの酢酸ビニルモノマーを除去することができる。重合反応中に残存する酢酸ビニルモノマーの量を正確に測定する方法は、当該技術分野において公知である。
【0046】
蒸留が完了した時点で、EVAc共重合体の収率は、少なくとも30%である。様々な実施形態では、エチレン-酢酸ビニル共重合体の収率は、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、または60%を超え、それらの間の任意の範囲または部分範囲を含んでもよい。
【0047】
(b) 第1のエチレン-酢酸ビニル(EVAc)共重合体を鹸化して、第1のエチレン-ビニルアルコール(EVOH)共重合体中間体を形成する工程
本方法の次の工程、工程(b)は、第1のエチレン-酢酸ビニル共重合体をアルカリ金属塩基、アルカリ土類金属塩基、塩基性触媒、またはそれらの組み合わせと接触させることによって、第1のEVAc共重合体を鹸化して、第1のEVOH共重合体中間体を形成することを含む。
【0048】
この工程では、種々のアルカリ金属塩基、アルカリ土類金属塩基、または塩基性触媒を使用することができる。適切な塩基の非限定的な例として、水酸化リチウム、炭酸リチウム、水酸化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、重炭酸カリウム、炭酸カリウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、またはアンモニア水溶液が挙げられる。
【0049】
アルカリ金属塩基、アルカリ土類金属塩基、塩基性触媒、またはそれらの組み合わせは、固体または水溶液として鹸化反応に添加することができる。
【0050】
アルカリ金属塩基、アルカリ土類金属塩基、塩基性触媒、またはこれらの組み合わせのエチレン-酢酸ビニル共重合体に対する重量比は、約0.01:1.0~約1.0:1.0の範囲とすることができる。種々の実施形態において、アルカリ金属塩基、アルカリ土類金属塩基、塩基性触媒、またはこれらの組み合わせのエチレン-酢酸ビニル共重合体に対する重量比は、約0.01:1.0~約1.0:1.0、約0.08:1.0~約0.8:1.0、または約0.1:1.0~約0.5:1.0の範囲であってもよい。
【0051】
鹸化反応の水溶液に対するアルカリ金属塩基、アルカリ土類金属塩基、塩基性触媒、またはそれらの組み合わせの重量比は、約1:5~約1:20の範囲とすることができる。種々の実施形態において、水溶液に対するアルカリ金属塩基、アルカリ土類金属塩基、塩基性触媒、またはそれらの組み合わせの重量比は、約1:5~約1:20、約1:8~約1:16、または約1:10~約1:12の範囲であってもよい。
【0052】
鹸化は水溶液中で行われる。通常、この溶液は、非水性極性溶媒および水を含む。非水性極性溶媒のリストは、上記に列挙されているとおりである。一つの実施形態では、適切な非水性極性溶媒はメタノールである。
【0053】
水溶液の濃度は変えることができる。通常、水に対する非水性極性溶媒の体積%は、約99.0:1.0~約1.0:99.0とすることができる。種々の実施形態においては、水に対する非水性極性溶媒の体積%は、約99.0:1.0~約1.0:99.0、約75.0:25.0~約25.0:75.0、または約60.0:40.0~約40.0:60.0(それらの間の任意の範囲または部分範囲を含む)とすることができる。一実施形態では、水に対する非水性極性溶媒の体積%は、変化してもよい。水に対する非水性極性溶媒の体積%は、約60.0:40.0とすることができる。
【0054】
鹸化の温度は、概ね室温(~23℃)~約80℃の範囲とすることができる。種々の実施形態において、鹸化の温度は、約30℃~約80℃、40℃~約75℃、または約50℃~約70℃の範囲としてもよい。一実施形態では、鹸化の温度は約60℃とすることができる。
【0055】
鹸化の持続時間は、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アルカリ金属塩基、アルカリ土類金属塩基、塩基性触媒、またはそれらの使用される組み合わせの量、使用される非水性極性溶媒および水の量、および温度に応じて変化させることができる。通常、鹸化の持続時間は、約30分~約6時間の範囲であり得る。種々の実施形態において、鹸化の持続時間は、約30分~約6時間、約30分~約4時間、または約30分~約2時間の範囲としてもよい。一実施形態では、60℃での鹸化の持続時間は、約1時間とすることができる。
【0056】
第1のエチレン-ビニルアルコール共重合体中間体は、約20重量%~約60重量%の範囲の固形分を有してもよい。様々な実施形態において、第1のエチレン-ビニルアルコール共重合体中間体は、約20重量%~約60重量%、約25重量%~約55重量%、または約30重量%~約50重量%の範囲(それらの間の任意の範囲または下位範囲を含む)の固体含有量を有してもよい。
【0057】
(c) 第1のEVOH共重合体中間体をペレット化して第1のEVOH共重合体中間体ペレットを形成する工程
本方法の次の工程は、第1のEVOH共重合体中間体をペレット化することである。この工程は、水中ペレット化を用いる。前の工程からの混合物は、水中ペレタイザーの供給管に導入される。具体的には、メタノールおよび水を含有するEVOH共重合体中間体の混合物を、120 L/分の流速で供給管にポンプ輸送する。混合物を、直径2.8mmの入口パイプに移動させて、1500rpmの速度で回転ナイフによって切断し、次いで、温度5℃の水を添加することによって冷却し、続いて遠心分離する。これにより、上記の調製されたEVOH共重合体中間体からEVOH共重合体中間体ペレットを生成する。
【0058】
(d) 第1のEVOH共重合体中間体ペレットを、アルカリ金属を含む第1の溶液と接触させて第1のEVOH共重合体を形成する工程
本方法の次の工程は、第1のEVOH共重合体中間ペレットを、アルカリ金属を含む第1の溶液と接触させて、第1のEVOH共重合体を形成することを含む。この工程では、最初にEVOH共重合体中間ペレットを水で洗浄し、次いで、EVOH共重合体中間体を、第1のエチレン-ビニルアルコール共重合体を形成するアルカリ金属塩を含む第1の溶液に浸漬する。一実施形態では、最初にアルカリ金属を含む第1の溶液を調製し、第1のEVOH共重合体中間ペレットを溶液に浸漬する。
【0059】
任意に、アルカリ金属を含む第1の溶液は、ホウ素化合物をさらに含んでもよい。種々のホウ素化合物およびアルカリ金属塩を使用することができる。ホウ素化合物は、場合によっては、ホウ酸またはその金属塩を含むことができる。適切な金属塩の例として、ホウ酸カルシウム、ホウ酸コバルト、ホウ酸亜鉛(例えば、四ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛)、ホウ酸アンモニウムカリウム、ホウ酸アンモニウム(例えば、メタホウ酸アンモニウム、四ホウ酸アンモニウム、五ホウ酸アンモニウム、オクタホウ酸アンモニウム)、ホウ酸カドミウム(例えば、オルトホウ酸カドミウム、四ホウ酸カドミウム)、ホウ酸カリウム(例えば、メタホウ酸カリウム、四ホウ酸カリウム、五ホウ酸カリウム、ヘキサホウ酸カリウム、オクタホウ酸カリウム)、ホウ酸銀(例えば、メタホウ酸銀、四ホウ酸銀)、ホウ酸銅(例えば、ホウ酸銅(II)、メタホウ酸銅、四ホウ酸銅)、ホウ酸ナトリウム(例えば、メタホウ酸ナトリウム、二ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、五ホウ酸ナトリウム、ヘキサホウ酸ナトリウム、オクタホウ酸ナトリウム)、ホウ酸鉛(例えば、メタホウ酸鉛、ヘキサホウ酸鉛)、ホウ酸ニッケル(例えば、オルトホウ酸ニッケル、二ホウ酸ニッケル、四ホウ酸ニッケル、オクタホウ酸ニッケル)、ホウ酸バリウム(例えば、オルトホウ酸バリウム、メタホウ酸バリウム、二ホウ酸バリウム、四ホウ酸バリウム)、ホウ酸ビスマス、ホウ酸マグネシウム(例えば、オルトホウ酸マグネシウム、二ホウ酸マグネシウム、メタホウ酸マグネシウム、四ホウ酸三マグネシウム、四ホウ酸五マグネシウム)、ホウ酸マンガン(例えば、ホウ酸マンガン(I)、メタホウ酸マンガン、四ホウ酸マンガン)、ホウ酸リチウム(例えば、メタホウ酸リチウム、四ホウ酸リチウム、五ホウ酸リチウム)、それらの塩、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。ホウ砂、インヨー石(Inyoite)、コトー石(Kotoite)、スアナイト、およびザイベリー石(Szaibelyite)のようなホウ酸塩鉱物が含まれてもよい。実施形態において、第1の溶液中のホウ素化合物は、ホウ砂、ホウ酸、またはメタホウ酸ナトリウム、二ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、五ホウ酸ナトリウム、ヘキサホウ酸ナトリウム及びオクタホウ酸ナトリウムのようなホウ酸ナトリウムである。
【0060】
種々のアルカリ金属化合物を使用することができる。アルカリ金属化合物の非限定的な例は、リチウム、ナトリウム、またはカリウムを含むアルカリ金属塩であってもよく、ナトリウムおよびカリウムが好ましい。アルカリ金属塩の非限定的な例としては、脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン酸塩、カーボネート、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、またはリチウム、ナトリウムもしくはカリウムなどの金属錯体が挙げられる。これらの中でも、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウムが好ましい。
【0061】
第1の溶液がホウ素化合物およびアルカリ金属の両方を含む場合、一般に、ホウ素化合物およびアルカリ金属を含む第1の溶液中のホウ素化合物の量は、約100mg/L~約1000mg/Lの範囲である。種々の実施形態において、ホウ素化合物およびアルカリ金属を含む第1の溶液中のホウ酸の量は、約100mg/L~約1000mg/L、約150mg/L~750mg/L、または約200mg/L~約500mg/Lの範囲である。
【0062】
通常、ホウ素化合物およびアルカリ金属化合物を含む第1の溶液のEVOH共重合体中間体ペレットに対する重量比は、約0.6:1~約2.0:1、または約0.8:1~約1.8:1の範囲であり得る。
【0063】
第1の溶液がホウ素化合物およびアルカリ金属化合物の両方を含む場合、一般に、ホウ素化合物およびアルカリ金属化合物を含む第1の溶液中のアルカリ塩の量は、約100mg/L~約1000mg/Lの範囲である。種々の実施形態において、ホウ素化合物およびアルカリ金属を含む第1の溶液中のアルカリ塩(酢酸ナトリウム)の量は、約100mg/L~約1000mg/L、約150mg/L~約750mg/L、または約200mg/L~約500mg/Lの範囲である。
【0064】
第1のEVOH共重合体中のホウ素化合物およびアルカリ金属塩の特定の量を決定する方法は、当技術分野において公知である。
【0065】
通常、第1のEVOH共重合体中の第1のエチレン含量は、約20モル%~約35モル%の範囲である。様々な実施形態では、EVOH共重合体中の第1のエチレン含有量は、約20モル%~約35モル%、約20モル%~約30モル%、または約20モル%~約25モル%の範囲であってよく、これらの間の任意の範囲または部分範囲を含む。
【0066】
第1のEVOH共重合体の最大/最小MFRは、Dynisco LNI 5000を用いたMFR測定方法(ISO 1133-1)を用いて、試料2160gを温度210℃で10分間測定したとき、1.0~1.5の範囲である。様々な実施形態において、第1のEVOH共重合体の最大/最小MFRは、1.1、1.2、1.3、1.4または1.5であってもよい。
【0067】
(e) 第2のEVOH共重合体の調製
本方法の次の工程である工程(e)は、第2のEVAc共重合体の調製を含む。このステップは、上述の方法のステップ(a)に記載されている。
【0068】
通常、第2のEVAc共重合体中の第2のエチレン含有量は、約36モル%~約65モル%の範囲であり得る。様々な実施形態では、第2のEVAc共重合体中の第2のエチレン含有量は、約36モル%~約65モル%、約40モル%~約60モル%、または40モル%~約50モル%の範囲であってよく、これらの間の任意の範囲または部分範囲を含む。
【0069】
(f) 第2のEVAc共重合体を鹸化して第2のEVOH共重合体中間体を形成する工程
本方法の次の工程、工程(f)は、第2のEVAc共重合体を鹸化して第2のEVOH共重合体中間体を形成することを含む。この工程は、上述した本方法の工程(b)に記載されている。
【0070】
EVOH共重合体中間体は、約20重量%~約60重量%の範囲の固形分を有する。様々な実施形態において、EVOH共重合体中間体は、約20重量%~約60重量%、約25重量%~約55重量%、または約30重量%~約50重量%の範囲(それらの間の任意の範囲または部分範囲を含む)の固体含有量を有し得る。
【0071】
(g) 第2のEVOH共重合体中間体をペレット化して、第2のEVOH共重合体中間体ペレットを形成する。
本方法における次の工程である工程(g)は、第2のEVOH共重合体中間体のペレット化を含む。この工程は、上述した工程(c)に記載されている。
【0072】
(h) 第2のEVOH共重合体中間ペレットを、アルカリ金属を含む第2の溶液と接触させて、第2のエチレン-ビニルアルコール共重合体を形成する。
本方法の次の工程、工程(h)は、第2のEVOH共重合体中間ペレットを、第2のEVOH共重合体を形成するアルカリ金属を含む第2の溶液と接触させることを含む。アルカリ金属を含む第2の溶液は、任意に、ホウ素化合物をさらに含んでもよい。この工程は、上述した工程(d)に開示されている。
【0073】
通常、第2のEVOH共重合体中の第2のエチレン含有量は、約36モル%~約65モル%の範囲であり得る。様々な実施形態では、第2のエチレン-ビニルアルコール共重合体中の第2のエチレン含有量は、約36モル%~約65モル%、約40モル%~約60モル%、または45モル%~約60モル%の範囲であってよく、これらの間の任意の範囲または下位範囲を含む。
【0074】
(i) 溶液ブレンドによって第1のEVOH共重合体と第2のEVOH共重合体とを接触させて、EVOH共重合体樹脂組成物前駆体を形成する工程
本方法における次の工程である工程(i)は、第1のEVOH共重合体と第2のEVOH共重合体とを接触させることを含む。この接触工程は、水中で溶液ブレンドすることによって行うことができる。溶液ブレンドのために、第1のEVOH共重合体および第2のEVOH共重合体の別々の溶液を調製し、次いで、1つの溶液に合わせる。
【0075】
第1のEVOH共重合体または第2のEVOH共重合体の水に対する重量比は、約0.1:1.0~約10.0:1.0の範囲であり得る。様々な実施形態では、第1のEVOH共重合体または第2のEVOH共重合体の水に対する重量比は、約0.1:1.0~約10.0:1.0、約0.5:1.0~約5.0:1.0、または約0.75:1.0~約1.25:1.0の範囲であってよく、これらの間の任意の範囲または部分範囲を含む。一実施形態では、第1のEVOH共重合体または第2のEVOH共重合体の水に対する重量比は、約1.0:1.0とすることができる。
【0076】
EVOH共重合体樹脂組成物前駆体を形成するのに用いられる第1のEVOH共重合と第2のEVOH共重合体との割合は、種々の重量比とすることができる。通常、第1のEVOH共重合体対第2のEVOH共重合体の重量比は、約90:10~約50:50の範囲であり得る。種々な実施形態では、第1のEVOH共重合体と第2のEVOH共重合体との重量比は、約90:10~約50:50、約80:20~約60:40、または約75:25~約70:30の範囲であってよく、これらの間の任意の範囲または部分範囲を含む。
【0077】
第1のEVOH共重合体と第2のEVOH共重合体との混合により、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物前駆体が形成される。
【0078】
(j) EVOH共重合体樹脂組成物前駆体を乾燥させてEVOH共重合体樹脂組成物を形成すること、または(k)さらに配合してEVOH共重合体樹脂組成物を形成すること
本方法の最後の工程、工程(j)または工程(k)は、EVOH共重合体樹脂組成物を形成するEVOH共重合体樹脂組成物前駆体を乾燥すること、または(k)さらに配合してEVOH共重合体樹脂組成物を形成することを含む。
【0079】
溶液配合では、溶液を合わせ、混合し、次いで乾燥する。
【0080】
通常、第1のEVOH共重合体および第2のEVOH共重合体を含むEVOH共重合体樹脂組成物前駆体を混合する持続時間は、混合物を確実に均質にするために、約10分~約6時間の範囲とする。様々な実施形態では、混合の持続時間は、約10分~約6時間、約30分~約2時間、または約45分~約1.5時間の範囲であってよい。一実施形態では、混合の持続時間は約1時間である。
【0081】
通常、混合温度は、約10℃~約30℃の範囲であり得る。種々の実施形態において、混合温度は、約10℃~約30℃、約15℃~約25℃、または室温(~23℃)の範囲であり得る。
【0082】
溶液を混合してEVOH共重合体樹脂組成物前駆体を形成した後、EVOH共重合体樹脂組成物前駆体を乾燥させてEVOH共重合体樹脂組成物を得る。この工程は、減圧下または大気圧下で行うことができる。
【0083】
通常、EVOH共重合体樹脂組成物前駆体の乾燥温度は、約100℃~約220℃の範囲であり得る。種々の実施形態において、EVOH共重合体樹脂組成物前駆体の乾燥温度は、約100℃~約220℃、約120℃~約200℃、または約150℃~約180℃の範囲であり得る。
【0084】
通常、混合物を確実に均質にするために、乾燥の持続時間は、約6時間~約24時間の範囲であり得る。種々の実施形態において、乾燥の持続時間は、約6時間~約24時間、約8時間~約20時間、または約10時間~約14時間の範囲であり得る。
【0085】
乾燥後、EVOH共重合体樹脂組成物は、固体形態であり、ペレット化される。EVOH共重合体樹脂組成物の調整はこの工程で完了、または、さらに異なる種類のEVOH共重合体を結合するために、さらなる配合を行って完了する。
【0086】
配合には、使用可能な配合機として、当技術分野において様々の配合機が知られている。一実施形態では、配合機は、Zenix Industrial Co., LTDから市販されているZenix ZPT-32HT二軸スクリュー押出機であり、スクリューは、10mm/mm/mm~40mm/mm、具体的には10mm/mm、20mm/mm、30mm/mmまたは40mm/mmの長さ/直径(L/D)、10rpmの回転速度、および後述するようなシリンダー温度プロファイルを有し、EVOH共重合体樹脂組成物の最終ペレットを生成する。なお、長さ/直径は、供給入口によって制御することができる。
【0087】
EVOH共重合体樹脂組成物は、50%を超える収率とすることができる。様々な実施形態では、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物は、50%超、60%超、70%超、80%超、90%超、または99.5%超の収率となる。
【0088】
他の実施形態において、EVOH共重合体樹脂組成物は、第3のEVOH共重合体を含み得る。この実施形態において、第3のEVOH共重合体の調製は、上記に詳述した方法の工程(a)~(d)と同様にして調製することができる。上記の工程(i)では、第3のEVOH共重合体を導入し、工程(i)に記載したように第1および第2のEVOH共重合体と配合する。
【0089】
(III)多層構造体
さらに別の態様では、本発明は多層構造体を含む。多層構造体は、(a)前述のEVOH共重合体樹脂組成物から形成された少なくとも1つの層と、(b)EVOH共重合体組成物以外のポリマーから形成された少なくとも1つのポリマー層と、(c)少なくとも1つの接着剤層とを含む。多層構造体は、本明細書で定義されるように、改善された酸素バリア特性、および改善された機械的特性を提供するものである。
【0090】
(a)前記EVOH共重合体樹脂組成物から形成される少なくとも1つの層。
EVOH共重合体樹脂組成物については、上記のセクション(I)において、詳細に記載したとおりである。
【0091】
(b)少なくとも1つのポリマー層
多層構造体は、少なくとも1つのポリマー層を含む。ポリマー層の非限定的な例は、低密度ポリエチレン層、ポリプロピレン層、またはナイロン層である。
【0092】
(c)少なくとも1つの接着剤層
多層構造体は、少なくとも1つの接着剤層を含む。接着剤層は、結合層であってもよい。一般的な結合層の非限定的な例は、エチレン-酢酸ビニル樹脂、エチレン-メチルアクリレート樹脂、エチレン-アクリル酸樹脂、またはエチレングラフト無水マレイン酸樹脂から形成される層である。
【0093】
(d) 多層構造体
多層構造体は、例えば、EVOH樹脂共重合体組成物から形成された1つの層、2つのポリマー層、および2つの接着剤層を共押出しすることによって調製することができる。この多層フィルムは、EVOH共重合体樹脂組成物から形成された層を2つのポリマー層の間に挟んだ5層を有する。接着剤層は、EVOH共重合体樹脂組成物から形成された層の各面とポリマー層の1つとの間に配置される。その他、様々な多層構成を調製することができる。一実施形態では、EVOH共重合体樹脂組成物(I)、ポリマー層(II)、および接着剤層(III)から形成された層を5層共押出機に供給して、(II)/(III)/(I)/(III)/(III)で表される構造を有する多層シートを製造することができる。
【0094】
各層の厚さ(μm)は、同じでも異なっていてもよい。通常、多層構造体の各層の厚さは、約20μm~約500μmの範囲とすることができる。様々な実施形態では、多層構造体の各層の厚さは、約20μm~約500μm、約25μm~約400μm、または約50μm~約300μmの範囲とすることができる。一実施形態では、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物から形成される層は、約50μmの厚さを有してもよい。別の実施形態では、ポリマー層は、約300μmの厚さを有してもよい。さらに別の実施形態では、接着剤層は、約25μmの厚さを有してもよい。
【0095】
この多層構造体は、多層構造体の熱成形後の酸素透過率は、酸素率透過率測定装置(Mocon社 OXTRAN 2/22)を用いて65%の相対湿度及び23℃でISO 14663-2法により測定したとき、2.00 cm3 *20μm/m2 *24 hr*atm以下である。多層構造体の酸素透過率は、場合によっては、1.90cm 3*20cm/m 2*24 hr*atm 以下、1.80cm 3*20cm/m 2*24 hr*atm 以下、1.70cm 3*20cm/m 2*24 hr*atm 以下、または1.60cm *20cm/m 2*24 hr*atm となりえる。
【0096】
これらの多層構造体の各々は、改善された酸素バリア特性および改善された機械的特性を有している。
【0097】
本明細書において、実施形態の各要素は、それぞれ、1つまたは複数存在することを意図している。また「含む」および「有する」などの用語は、包括的であることを意図し、列挙された要素以外の追加の要素が存在し得ることを意味する。
【0098】
本発明の範囲から逸脱することなく、上記の方法に様々な変更を加えることができ、上記の説明および以下に示す実施例に含まれるすべての事項は、例示として解釈されるべきであり、限定的な意味で解釈されるべきではない。
【実施例0099】
非限定的な実施例として、6つのエチレン-ビニルアルコール(「EVOH」)共重合体樹脂組成物(「実施例EVOH1~6」)を、本発明の態様に従って製造した。また以下に説明する方法に従って、比較例として7つのエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物(「比較例EVOH1~7」)も調製した。
【0100】
<実施例1:EVOH1の調製>
実施例EVOH1は、第1のEVOH共重合体および第2のEVOH共重合体から調製した。具体的には、第1のEVOH共重合体を以下の工程に従って調製した。
【0101】
[エチレン-酢酸ビニル共重合体調製工程]
冷却コイルを備えた重合容器に、酢酸ビニルモノマー500kg、メタノール100kg、酢酸ビニルモノマーの重量に基づいて過酸化ジアセチル(触媒)70ppm、クエン酸0.015kgを添加した。重合容器内のガス状内容物を窒素で一時的に置換した後、窒素をエチレンに置換し、エチレン圧が39kg/cm2になるまでプレスした。エチレン圧力下で、重合容器中の含有量を撹拌しながら67℃の温度にして重合を開始した。重合開始から6時間後、重合度が60%に達したところで、0.0525kgのソルビン酸(重合抑制剤として作用する)を添加した。エチレン含量32モル%のエチレン‐酢酸ビニル共重合体を得た。次いで、エチレン-酢酸ビニル共重合体を含む反応液を蒸留塔に供給し、塔下部にメタノール蒸気を導入して未反応の酢酸ビニルモノマーを除去し、第1のエチレン-酢酸ビニル(「EVAc」)共重合体のメタノール溶液を得た。
【0102】
[鹸化工程]
次に、第1のEVAc共重合体を水酸化ナトリウムで鹸化度99.5%になるまで鹸化して、第1のEVOH共重合体中間体を得た。続いて、第1のEVOH共重合体中間体を、重量比60:40でメタノールおよび水を含む溶液に溶解した。第1のEVOH共重合体中間体をメタノールおよび水の溶液に溶解した後の混合物は41重量%のEVOH共重合体中間体の固形分を有していた。EVOH共重合体中間体の混合物を約60℃の温度で1時間維持した。
【0103】
[ペレット化工程]
次いで、メタノールおよび水を含有するEVOH共重合体中間体の混合物を、水中ペレット化によりペレット化した。具体的には、メタノール、水、およびEVOH共重合体中間体の混合物を、120 L/分の流速で供給管にポンプ輸送した。混合物を、2.8mmの直径を有する入口パイプに移動し、1500rpmの速度で回転ナイフによって切断し、次いで、温度5℃の水を添加することによって冷却し、続いて遠心分離して、調製されたEVOH共重合体中間体からペレットを生成した。
【0104】
[第1溶液添加工程]
EVOH共重合体中間ペレットを水で洗浄し、次いでホウ素酸および酢酸ナトリウムを含む第1の溶液に浸漬した。EVOH共重合体中間体ペレットを浸漬した第1の溶液は、ホウ素濃度が600ppmで、ホウ素酸および酢酸ナトリウムを含む第1の溶液とEVOH共重合体中間体ペレットとの重量比は1.2:1であった。これにより、最終的に第1のEVOH共重合体を形成した。
【0105】
第2のEVOH共重合体を、(1) EVAc共重合体調製工程において、エチレン-酢酸ビニル共重合体のエチレン含有量を44モル%、エチレン圧を60kg/cm2、触媒を60ppmとしたこと、及び(2)第2の溶液添加工程において、第2の溶液のホウ素濃度を400ppm、EVOH共重合体中間体ペレットに対する第2の溶液の重量比を1.5:1としたこと以外は、第1のEVOH共重合体について上述したのと同様の工程に従って調製した。第2のEVOH共重合体は、第1のEVOH共重合体とは別に調製した。
【0106】
次いで、別々に調製した第1のEVOH共重合体および第2のEVOH共重合体を、20rpmの混合速度で、ペレット対水の重量比1:1で、10分間水中ブレンドすることによって結合した。第1のEVOH共重合体および第2のEVOH共重体の割合は、第1のEVOH共重合体対第2のEVOH共重合体の重量比75:25とした。ブレンド後、溶液を除去し、ペレットを100℃下で24時間乾燥した。乾燥後、Zenix Industrial Co., LTDから市販されているZenix ZPT-32HT二軸スクリュー押出機を用いて、40mm/mmの長さ/直径(L/D)、10rpmの回転速度、および下表1に示すシリンダー温度プロファイルを有するスクリューを用いてペレットを配合し、0.15重量%の水分含有量を有する実施例EVOH 1の最終ペレットを製造した。最終EVOH共重合体樹脂組成物のホウ素含有量およびアルカリ金属含有量を後述の表8に列挙した。
【表1】
【0107】
<実施例2:EVOH2の調製>
実施例EVOH 2は、第1のEVOH共重合体および第2のEVOH共重合体から調製した。具体的には、第1のEVOH共重合体を以下の工程に従って調製した。
【0108】
[エチレン-酢酸ビニル共重合体調製工程]
冷却コイルを備えた重合容器に、酢酸ビニルモノマー500kg、メタノール100kg、酢酸ビニルモノマーの重量に対して過酸化ジアセチル(触媒)50ppm、クエン酸0.015kgを添加した。重合容器内のガス状内容物を窒素で一時的に置換した後、窒素をエチレンに置換し、エチレン圧が28kg/cm2になるまでプレスした。エチレン圧力下で、重合容器中の含有量を撹拌しながら67℃の温度にして重合を開始した。重合開始から6時間後、重合度が60%に達したところで、0.0525kgのソルビン酸(重合抑制剤として作用する)を添加した。エチレン含量24モル%のエチレン‐酢酸ビニル共重合体を得た。エチレン-酢酸ビニル共重合体を含む反応液を蒸留塔に供給し、塔下部にメタノール蒸気を導入して未反応の酢酸ビニルモノマーを除去し、第1のEVAc共重合体のメタノール溶液を得た。
【0109】
[鹸化工程]
第1のEVAc共重合体を水酸化ナトリウムで99.5%の鹸化度まで鹸化して、第1のEVOH共重合体中間体を得た。続いて、第1のEVOH共重合体中間体を、重量比60:40でメタノールおよび水を含む溶液に溶解した。第1のEVOH共重合体中間体をメタノールおよび水の溶液に溶解した後の混合物はEVOH共重合体中間体の固形分が41重量%であった。EVOH共重合体中間体の混合物を温度約60℃で1時間維持した。
【0110】
[ペレット化工程]
次いで、メタノールおよび水を含有するEVOH共重合体中間体の混合物を、水中ペレット化を使用してペレット化した。具体的には、メタノール、水、およびEVOH共重合体中間体の混合物を、120 L/分の流速で供給管にポンプ輸送し、混合物を、2.8mmの直径を有する入口パイプに移動し、1500rpmの速度で回転ナイフによって切断した。次いで、温度5℃の水を添加することによって冷却し、続いて遠心分離して、調製されたEVOH共重合体中間体からペレットを生成した。
【0111】
[第1溶液添加工程]
EVOH共重合体中間ペレットを水で洗浄し、次いで酢酸ナトリウムを含む第1の溶液に浸漬した。EVOH共重合体中間ペレットを浸漬した第1の溶液は、ホウ素濃度約0ppmであり、酢酸ナトリウムを含む第1の溶液対EVOH共重合体中間ペレットの重量比は1:1であった。これにより、最終的に第1のEVOH共重合体を形成した。
【0112】
第2のEVOH共重合体を、(1)EVAc共重合体調製工程において、エチレン-酢酸ビニル共重合体のエチレン含有量を48モル%とし、エチレン圧を70kg/cm2 とし、触媒を70ppmとしたこと、及び(2)第2の溶液添加工程において、第2の溶液のホウ素濃度を600ppmとし、EVOH共重合体中間体ペレットに対するホウ素酸および酢酸ナトリウムを含む第2の溶液の重量比を1.1:1としたこと以外は、第1のEVOH共重合体について上述したのと同様の工程に従って調製した。第2のEVOH共重合体は、第1のEVOH共重合体とは別に調製した。
【0113】
次いで、別々に調製した第1のEVOH共重合体および第2のEVOH共重合体を、30rpmの混合速度で、ペレット対水の重量比1:1で、30分間水中ブレンドすることによって結合した。第1のEVOH共重合体と第2のEVOH共重合体とは、第1のEVOH共重合体と第2のEVOH共重合体との50:50の重量比で結合した。第1のEVOH共重合体と第2のEVOH共重合体との混合物を乾燥させて、0.15重量%の水分含有量を有する実施例EVOH2の最終ペレットを形成した。最終EVOH共重合体樹脂組成物のホウ素含有量およびアルカリ金属含有量を表8に列挙した。
【0114】
<実施例3:EVOH3の調製>
実施例EVOH3は、第1のEVOH共重合体および第2のEVOH共重合体から調製した。具体的には、第1のEVOH共重合体を以下の工程に従って調製した。
【0115】
[エチレン-酢酸ビニル共重合体調製工程]
冷却コイルを備えた重合容器に、酢酸ビニルモノマー500kg、メタノール100kg、酢酸ビニルモノマーの重量に基づいて過酸化ジアセチル(触媒)20ppm、およびクエン酸0.015kgを添加した。重合容器内のガス状内容物を窒素で一時的に置換した後、窒素をエチレンに置換し、エチレン圧が50kg/cm2になるまでプレスした。エチレン圧力下で、重合容器中の含有量を撹拌しながら67℃の温度にして重合を開始した。重合開始から6時間後、重合度が60%に達したところで、0.0525kgのソルビン酸(重合抑制剤として作用する)を添加した。エチレン含量38モル%のエチレン‐酢酸ビニル共重合体を得た。エチレン-酢酸ビニル共重合体を含む反応液を蒸留塔に供給し、塔下部にメタノール蒸気を導入して未反応の酢酸ビニルモノマーを除去し、第1のEVAc共重合体のメタノール溶液を得た。
【0116】
[鹸化工程]
第1のEVAc共重合体を水酸化ナトリウムで99.5%の鹸化度まで鹸化して、第1のEVOH共重合体中間体を得た。次いで、第1のEVOH共重合体中間体を、60:40の重量比でメタノールおよび水を含む溶液に溶解した。第1のEVOH共重合体中間体をメタノールおよび水の溶液に溶解した後、混合物はEVOH共重合体中間体の固形分が41重量%であった。EVOH共重合体中間体の混合物を約60℃の温度で1時間維持した。
【0117】
[ペレット化工程]
次いで、メタノールおよび水を含有するEVOH共重合体中間体の混合物を、水中ペレット化によりペレット化した。具体的には、メタノール、水、およびEVOH共重合体中間体の混合物を、120 L/分の流速で供給管にポンプ輸送した。混合物を、2.8mmの直径を有する入口パイプに移動し、1500rpmの速度で回転ナイフによって切断し、次いで、温度5℃の水を添加することによって冷却し、続いて遠心分離して、調製されたEVOH共重合体中間体からペレットを生成した。
【0118】
[第1溶液添加工程]
EVOH共重合体中間ペレットを水で洗浄し、次いでホウ素酸および酢酸ナトリウムを含む第1の溶液に浸漬した。EVOH共重合体中間ペレットを浸漬した第1の溶液は、ホウ素濃度が330ppmであり、EVOH共重合体中間ペレットに対するホウ酸および酢酸ナトリウムを含む第1の溶液の重量比は1:1であった。これにより、最終的な第1のEVOH共重合体を形成した。
【0119】
第2のEVOH共重合体を、(1)EVAc共重合体調製工程において、エチレン-酢酸ビニル共重合体のエチレン含有量を48モル%、エチレン圧を70kg/cm2 、触媒を10ppmとしたこと、及び(2)第2の溶液添加工程において、第2の溶液のホウ素濃度を150ppm、EVOH共重合体中間体ペレットに対するホウ素酸および酢酸ナトリウムを含む第2の溶液の重量比を1.8:1としたこと以外は、第1のEVOH共重合体について上記したのと同様の工程に従って調製した。第2のEVOH共重合体は、第1のEVOH共重合体とは別に調製した。
【0120】
次いで、別々に調製した第1のEVOH共重合体および第2のEVOH共重合体を、50rpmの混合速度で、ペレット対水の重量比1:1で15分間水中ブレンドすることによって合わせた。第1のEVOH共重合体と第2のEVOH共重合体との割合は、第1のEVOH共重合体と第2のEVOH共重合体との重量比で60:40とした。ブレンド後、溶液を除去し、ペレットを100℃下で24時間乾燥した。乾燥後、Zenix Industrial Co., LTDから市販されているZenix ZPT-32HT二軸スクリュー押出機を用いて、長さ/直径(L/D)30mm/mm、回転速度10rpm、および下表2に示すシリンダー温度プロファイルを有するスクリューを用いてペレットを配合し、水分含量0.15重量%の実施例EVOH3の最終ペレットを製造した。最終EVOH共重合体樹脂組成物のホウ素含有量およびアルカリ金属含有量を表8に列挙した。
【表2】
【0121】
<実施例4:EVOH4の調製>
実施例EVOH4は、第1のEVOH共重合体および第2のEVOH共重合体から調製した。具体的には、第1のEVOH共重合体を以下の工程に従って調製した。
【0122】
[エチレン-酢酸ビニル共重合体調製工程]
冷却コイルを備えた重合容器に、酢酸ビニルモノマー500kg、メタノール100kg、酢酸ビニルモノマーの重量に基づいて過酸化ジアセチル(触媒)40ppm、クエン酸0.015kgを添加した。重合容器内のガス状内容物を窒素で一時的に置換した後、窒素をエチレンに置換し、エチレン圧が35kg/cm2になるまでプレスした。エチレン圧力下で、重合容器中の含有量を撹拌しながら67℃の温度にして重合を開始した。重合開始から6時間後、重合度が60%に達したところで、0.0525kgのソルビン酸(重合抑制剤として作用する)を添加した。エチレン含量29モル%のエチレン‐酢酸ビニル共重合体を得た。エチレン-酢酸ビニル共重合体を含む反応液を蒸留塔に供給し、塔下部にメタノール蒸気を導入して未反応の酢酸ビニルモノマーを除去し、第1のEVAc共重合体のメタノール溶液を得た。
【0123】
[鹸化工程]
次に、第1のEVAc共重合体を水酸化ナトリウムで99.5%の鹸化度になるまで鹸化して、第1のEVOH共重合体中間体を得た。続いて、第1のEVOH共重合体中間体を、60:40の重量比でメタノールおよび水を含む溶液に溶解した。第1のEVOH共重合体中間体をメタノールおよび水の溶液に溶解した後、混合物は41重量%のEVOH共重合体中間体の固形分を有していた。EVOH共重合体中間体の混合物を約60℃の温度で1時間維持した。
【0124】
[ペレット化工程]
次いで、メタノールおよび水を含有するEVOH共重合体中間体の混合物を、水中ペレット化を使用してペレット化した。具体的には、メタノール、水、およびEVOH共重合体中間体の混合物を、120 L/分の流速で供給管にポンプ輸送した。混合物を、2.8mmの直径を有する入口パイプに移動し、1500rpmの速度で回転ナイフによって切断し、次いで、温度5℃の水を添加することによって冷却し、続いて遠心分離して、調製されたEVOH共重合体中間体からペレットを生成した。
【0125】
[第1溶液添加工程]
EVOH共重合体中間ペレットを水で洗浄し、次いでホウ素酸および酢酸ナトリウムを含む第1の溶液に浸漬した。EVOH共重合体中間ペレットを浸漬した第1の溶液は、ホウ素濃度が500ppmであり、EVOH共重合体中間ペレットに対するホウ酸および酢酸ナトリウムを含む第1の溶液の重量比は、0.8:1であった。これにより、最終的な第1のEVOH共重合体を形成した。
【0126】
第2のEVOH共重合体は、(1)EVAc共重合体調製工程において、エチレン-酢酸ビニル共重合体のエチレン含有量を38モル%、エチレン圧を50kg/cm2 、触媒を50ppmとしたこと、及び(2)第2の溶液添加工程において、第2の溶液のホウ素濃度を50ppm、EVOH共重合体中間体ペレットに対するホウ素酸および酢酸ナトリウムを含む第2の溶液の重量比を1.1:1としたこと以外は、第1のEVOH共重合体について上述したのと同様の工程に従って調製した。第2のEVOH共重合体は、第1のEVOH共重合体とは別に調製した。
【0127】
次いで、別々に調製した第1のEVOH共重合体および第2のEVOH共重合体を、40rpmの混合速度で、ペレット対水の重量比1:1で60分間水中ブレンドすることによって合わせた。第1のEVOH共重合体および第2のEVOH共重合体の割合は、第1のEVOH共重合体対第2のEVOH共重合体の重量比で90:10とした。第1のEVOH共重合体と第2のEVOH共重合体との混合物を再び乾燥させて、0.15重量%の水分含有量を有する実施例EVOH 4の最終ペレットを形成した。最終EVOH共重合体樹脂組成物のホウ素含有量およびアルカリ金属含有量を表8に列挙した。
【0128】
<実施例5:EVOH5の調製>
実施例EVOH5は、第1のEVOH共重合体および第2のEVOH共重合体から調製した。具体的には、第1のEVOH共重合体を以下の工程に従って調製した。
【0129】
[エチレン-酢酸ビニル共重合体調製工程]
冷却コイルを備えた重合容器に、酢酸ビニルモノマー500kg、メタノール100kg、酢酸ビニルモノマーの重量に基づいて過酸化ジアセチル(触媒)50ppm、およびクエン酸0.015kgを添加した。重合容器内のガス状内容物を窒素で一時的に置換した後、窒素をエチレンに置換し、エチレン圧が60kg/cm2になるまでプレスした。エチレン圧力下で、重合容器中の含有量を撹拌しながら67℃の温度にして重合を開始した。重合開始から6時間後、重合度が60%に達したところで、0.0525kgのソルビン酸(重合抑制剤として作用する)を添加した。エチレン含有量44モル%のエチレン‐酢酸ビニル共重合体を得た。エチレン-酢酸ビニル共重合体を含む反応液を蒸留塔に供給し、塔下部にメタノール蒸気を導入して未反応の酢酸ビニルモノマーを除去し、第1のEVAc共重合体のメタノール溶液を得た。
【0130】
[鹸化工程]
第1のEVAc共重合体を水酸化ナトリウムで99.5%の鹸化度になるまで鹸化して、第1のEVOH共重合体中間体を得た。次いで、第1のEVOH共重合体中間体を、60:40の重量比でメタノールおよび水を含む溶液に溶解した。第1のEVOH共重合体中間体をメタノールおよび水の溶液に溶解した後、混合物は41重量%のEVOH共重合体中間体の固形分を有していた。EVOH共重合体中間体の混合物を約60℃の温度で1時間維持した。
【0131】
[ペレット化工程]
次いで、メタノールおよび水を含有するEVOH共重合体中間体の混合物を、水中ペレット化によりペレット化した。具体的には、メタノール、水、およびEVOH共重合体中間体の混合物を、120 L/分の流速で供給管にポンプ輸送した。混合物を、2.8mmの直径を有する入口パイプに移動し、1500rpmの速度で回転ナイフによって切断し、次いで、温度5℃の水を添加することによって冷却し、続いて遠心分離して、調製されたEVOH共重合体中間体からペレットを生成した。
【0132】
[第1溶液添加工程]
EVOH共重合体中間ペレットを水で洗浄し、次いでホウ素酸および酢酸ナトリウムを含む第1の溶液に浸漬した。EVOH共重合体中間体ペレットを浸漬した第1の溶液は、ホウ素濃度が500ppmであり、ホウ素酸および酢酸ナトリウムを含む第1の溶液とEVOH共重合体中間体ペレットとの重量比は1.1:1であった。これにより、最終的に第1のEVOH共重合体を形成した。
【0133】
第2のEVOH共重合体を、(1)EVAc共重合体調製工程において、エチレン-酢酸ビニル共重合体のエチレン含有量を44モル%、エチレン圧を60kg/cm2 、触媒を100ppmにしたこと、及び(2)第2の溶液添加工程において、第2の溶液のホウ素濃度を200ppm、ホウ素酸および酢酸ナトリウムを含む第2の溶液のEVOH共重合体中間体ペレットに対する重量比を1.3:1としたこと以外は、第1のEVOH共重合体について上述したのと同様の工程に従って調製した。第2のEVOH共重合体は、第1のEVOH共重合体とは別に調製した。
【0134】
次いで、別々に調製した第1のEVOH共重合体および第2のEVOH共重合体を、60rpmの混合速度を用いて、ペレット対水の重量比1:1で30分間水中ブレンドすることによって合わせた。第1のEVOH共重合体と第2のEVOH共重合体との割合は、第1のEVOH共重合体と第2のEVOH共重合体との重量比で80:20とした。第1のEVOH共重合体と第2のEVOH共重合体との混合物を乾燥させて、0.15重量%の水分含有量を有する実施例EVOH5の最終ペレットを形成した。最終EVOH共重合体樹脂組成物のホウ素含有量およびアルカリ金属含有量を表8に列挙した。
【0135】
<実施例6:EVOH6の調製>
実施例EVOH6は、3つのEVOH共重合体から調製した。第1のEVOH共重合体は、以下の工程に従い調製した。
【0136】
[エチレン-酢酸ビニル共重合体調製工程]
冷却コイルを備えた重合容器に、酢酸ビニルモノマー500kg、メタノール100kg、酢酸ビニルモノマーの重量に基づいて過酸化ジアセチル(触媒)10ppm、およびクエン酸0.015kgを添加した。重合容器内のガス状内容物を窒素で一時的に置換した後、窒素をエチレンに置換し、エチレン圧が28kg/cm2になるまでプレスした。エチレン圧力下で、重合容器中の含有量を撹拌しながら67℃の温度にして重合を開始した。重合開始から6時間後、重合度が60%に達したところで、0.0525kgのソルビン酸(重合抑制剤として作用する)を添加した。エチレン含量24モル%のエチレン‐酢酸ビニル共重合体を得た。次いで、エチレン-酢酸ビニル共重合体を含む反応液を蒸留塔に供給し、塔下部にメタノール蒸気を導入して未反応の酢酸ビニルモノマーを除去し、第1のEVAc共重合体のメタノール溶液を得た。
【0137】
[鹸化工程]
第1のEVAc共重合体を水酸化ナトリウムで99.5%の鹸化度になるまで鹸化して、第1のEVOH共重合体中間体を得た。次いで、第1のEVOH共重合体中間体を、60:40の重量比でメタノールおよび水を含む溶液に溶解した。第1のEVOH共重合体中間体をメタノールおよび水の溶液に溶解した後、混合物は41重量%のEVOH共重合体中間体の固形分を有していた。EVOH共重合体中間体の混合物を約60℃の温度で1時間維持した。
【0138】
[ペレット化工程]
次いで、メタノールおよび水を含有するEVOH共重合体中間体の混合物を、水中ペレット化にてペレット化した。具体的には、メタノール、水、およびEVOH共重合体中間体の混合物を、120 L/分の流速で供給管にポンプ輸送した。混合物を、2.8mmの直径を有する入口パイプに移動し、1500rpmの速度で回転ナイフによって切断し、次いで、温度5℃の水を添加することによって冷却し、続いて遠心分離して、調製されたEVOH共重合体中間体からペレットを生成した。
【0139】
[第1溶液添加工程]
EVOH共重合体中間ペレットを水で洗浄し、次いでホウ素酸および酢酸ナトリウムを含む第1の溶液に浸漬した。EVOH共重合体中間ペレットを浸漬した第1の溶液は、ホウ素濃度が300ppmで、EVOH共重合体中間ペレットに対するホウ酸および酢酸ナトリウムを含む第1の溶液の重量比は、1.3:1であった。これにより、最終的な第1のEVOH共重合体を形成した。
【0140】
第2のEVOH共重合体を、(1)EVAc共重合体調製工程において、エチレン-酢酸ビニル共重合体のエチレン含有量を32モル%、エチレン圧を39kg/cm2 であり、触媒を30ppmとしたこと、及び(2)第2の溶液添加工程において、ホウ素濃度を400ppm、ホウ素酸および酢酸ナトリウムを含む第2の溶液のEVOH共重合体中間体ペレットに対する重量比を1.2:1としたこと以外は、第1のEVOH共重合体について上述したのと同様の工程に従って調製した。第2のEVOH共重合体は、第1のEVOH共重合体とは別に調製した。
【0141】
第3のEVOH共重合体を、(1)EVAc共重合体調製工程において、エチレン-酢酸ビニル共重合体のエチレン含有量を48モル%、エチレン圧を70kg/cm2 であり、触媒を50ppmとしたこと、及び(2)第3の溶液添加工程において、第3の溶液のホウ素濃度を200ppm、EVOH共重合体中間体ペレットに対するホウ素酸および酢酸ナトリウムを含む第3の溶液の重量比を1.5:1としたこと以外は、第1のEVOH共重合体について上述したのと同様の工程に従って調製した。第3のEVOH共重合体は、第1および第2のEVOH共重合体とは別に調製した。
【0142】
次に、別々に調製した第1、第2および第3のEVOH共重合体を、重量比1:1のペレット対水を有する水中で、40rpmの混合速度を用いて20分間ブレンドすることによって合わせた。この際、第1、第2および第3のEVOH共重合体の重量比を60:40:10とした。ブレンド後、溶液を除去し、ペレットを100℃下で24時間乾燥した。乾燥後、Zenix Industrial Co., LTDから市販されているZenix ZPT-32HT二軸スクリュー押出機を用いて、長さ/直径(L/D)30mm/mm、回転速度10rpm、および下表3に示すシリンダー温度プロフィールを有するスクリューを用いてペレットを配合し、水分含量0.15重量%の実施例EVOH 6の最終ペレットを製造した。最終EVOH共重合体樹脂組成物のホウ素含有量およびアルカリ金属含有量を表8に列挙した。
【表3】
【0143】
<実施例7:比較例EVOH1の調製>
比較例EVOH1は、第1のEVOH共重合体および第2のEVOH共重合体から調製した。第1のEVOH共重合体は、以下の工程に従って調製した。
【0144】
[エチレン-酢酸ビニル共重合体調製工程]
冷却コイルを備えた重合容器に、酢酸ビニルモノマー500kg、メタノール100kg、酢酸ビニルモノマーの重量に基づいて過酸化ジアセチル(触媒)10ppm、およびクエン酸0.015kgを添加した。重合容器内のガス状内容物を窒素で一時的に置換した後、窒素をエチレンに置換し、エチレン圧が35kg/cm2になるまでプレスした。エチレン圧力下で、重合容器中の含有量を撹拌しながら67℃の温度にして重合を開始した。重合開始から6時間後、重合度が60%に達したところで、0.0525kgのソルビン酸(重合抑制剤として作用する)を添加した。エチレン含量29モル%のエチレン‐酢酸ビニル共重合体を得た。エチレン-酢酸ビニル共重合体を含む反応液を蒸留塔に供給し、塔下部にメタノール蒸気を導入して未反応の酢酸ビニルモノマーを除去し、第1のEVAc共重合体のメタノール溶液を得た。
【0145】
[鹸化工程]
次に、第1のEVAc共重合体を水酸化ナトリウムで99.5%の鹸化度になるまで鹸化して、第1のEVOH中間体を得た。次いで、第1のEVOH共重合体中間体を、60:40の重量比でメタノールおよび水を含む溶液に溶解した。第1のEVOH共重合体中間体をメタノールおよび水の溶液に溶解した後、混合物は41重量%のEVOH共重合体中間体の固形分を有していた。EVOH共重合体中間体の混合物を約60℃の温度で1時間維持した。
【0146】
[ペレット化工程]
次いで、メタノールおよび水を含有するEVOH共重合体中間体の混合物を、水中ペレット化によりペレット化した。具体的には、メタノール、水、およびEVOH共重合体中間体の混合物を、120 L/分の流速で供給管にポンプ輸送した。混合物を、2.8mmの直径を有する入口パイプに移動し、1500rpmの速度で回転ナイフによって切断し、次いで、温度5℃の水を添加することによって冷却し、続いて遠心分離して、調製されたEVOH共重合体中間体からペレットを生成した。
【0147】
[第1溶液添加工程]
EVOH共重合体中間ペレットを水で洗浄し、次いでホウ素酸および酢酸ナトリウムを含む第1の溶液に浸漬した。EVOH共重合体中間ペレットを浸漬した第1の溶液は、ホウ素濃度が400ppmであり、EVOH共重合体中間ペレットに対するホウ酸および酢酸ナトリウムを含む第1の溶液の重量比は1.5:1であった。これにより、最終的な第1のEVOH共重合体を形成した。
【0148】
第2のEVOH共重合体を、(1)EVAc共重合体調製工程において、エチレン-酢酸ビニル共重合体のエチレン含有量を44モル%、エチレン圧を60kg/cm2 、触媒を100ppmとしたこと、及び(2)第2の溶液添加工程において、第2の溶液のホウ素濃度を300ppm、ホウ素酸および酢酸ナトリウムを含む第2の溶液のEVOH共重合体中間体ペレットに対する重量比を1.2:1としたこと以外は、第1のEVOH共重合体について上述したのと同様の工程に従って調製した。第2のEVOH共重合体は、第1のEVOH共重合体とは別に調製した。
【0149】
次に、別々に調製した第1のEVOH共重合体および第2のEVOH共重合体を、乾式ブレンドおよび配合によって合わせた。具体的には、それぞれのEVOH共重合体を、コニカルスクリューミキサーを用いて、10rpmの混合速度で5分間、第1のEVOH共重合体と第2のEVOH共重合体との重量比70:30でドライブレンドした。次いで、EVOH共重合体の乾燥ブレンド混合物を、Zenix Industrial Co., LTD.から市販されているZenix ZPT-32HT二軸スクリュー押出機を使用して、10mm/mmの長さ/直径(L/D)、10rpmの回転速度、および下表4に示すシリンダー温度プロファイルを有するスクリューで配合して、0.15重量%の水分含有量を有する比較例EVOH 1の最終ペレットを製造した。最終EVOH共重合体樹脂組成物のホウ素含有量およびアルカリ金属含有量を表8に列挙した。
【表4】
【0150】
<実施例8:比較例EVOH2の調製>
比較例EVOH2は、第1のEVOH共重合体および第2のEVOH共重合体から調製した。第1のEVOH共重合体は、以下の工程に従って調製した。
【0151】
[エチレン-酢酸ビニル共重合体調製工程]
冷却コイルを備えた重合容器に、酢酸ビニルモノマー500kg、メタノール100kg、酢酸ビニルモノマーの重量に基づいて過酸化ジアセチル(触媒)70ppm、およびクエン酸0.015kgを添加した。重合容器内のガス状内容物を窒素で一時的に置換した後、窒素をエチレンに置換し、エチレン圧が39kg/cm2になるまでプレスした。エチレン圧力下で、重合容器中の含有量を撹拌しながら67℃の温度にして重合を開始した。重合速度が60%に達した重合開始から6時間後、0.0525kgのソルビン酸(重合抑制剤として作用する)を添加した。エチレン含量32モル%のエチレン‐酢酸ビニル共重合体を得た。エチレン-酢酸ビニル共重合体を含む反応液を蒸留塔に供給し、塔下部にメタノール蒸気を導入して未反応の酢酸ビニルモノマーを除去し、第1のEVAc共重合体のメタノール溶液を得た。
【0152】
[鹸化工程]
第1のEVAc共重合体を水酸化ナトリウムで鹸化度99.5%になるまで鹸化して、第1のEVOH共重合体中間体を得た。次いで、第1のEVOH共重合体中間体を、60:40の重量比でメタノールおよび水を含む溶液に溶解した。第1のEVOH共重合体中間体をメタノールおよび水の溶液に溶解した後、混合物は41重量%のEVOH共重合体中間体の固形分を有していた。EVOH共重合体中間体の混合物を約60℃の温度で1時間維持した。
【0153】
[ペレット化工程]
次いで、メタノールおよび水を含有するEVOH共重合体中間体の混合物を、水中ペレット化によりペレット化した。具体的には、メタノール、水、およびEVOH共重合体中間体の混合物を、120 L/分の流速で供給管にポンプ輸送した。混合物を、2.8mmの直径を有する入口パイプに移動し、1500rpmの速度で回転ナイフによって切断し、次いで、温度5℃の水を添加することによって冷却し、続いて遠心分離して、上記の調製されたEVOH共重合体中間体からペレットを生成した。
【0154】
[第1溶液添加工程]
EVOH共重合体中間ペレットを水で洗浄し、次いで酢酸ナトリウムを含む第1の溶液に浸漬した。EVOH共重合体中間ペレットを浸漬した第1の溶液は、ホウ素濃度が約0ppmで、酢酸ナトリウムを含む第1の溶液対EVOH共重合体中間ペレットの重量比は、1.1:1であった。これにより、最終的な第1のEVOH共重合体を形成した。
【0155】
第2のEVOH共重合体を、(1)EVAc共重合体調製工程において、エチレン-酢酸ビニル共重合体のエチレン含有量を38モル%、エチレン圧を50kg/cm2 、触媒を10ppmとしたこと、及び(2)第2の溶液添加工程において、第2の溶液のホウ素濃度を300ppm、ホウ素酸および酢酸ナトリウムを含む第2の溶液のEVOH共重合体中間体ペレットに対する重量比を1.3:1としたこと以外は、第1のEVOH共重合体について上述したのと同様の工程に従って調製した。第2のEVOH共重合体は、第1のEVOH共重合体とは別に調製した。
【0156】
次いで、別々に調製した第1のEVOH共重合体および第2のEVOH共重合体を、10rpmの混合速度を用いて、ペレット対水の重量比1:1で10分間水中ブレンドすることによって合わせた。この際、第1のEVOH共重合体と第2のEVOH共重合体と割合を、第1のEVOH共重合体と第2のEVOH共重合体との重量比で80:20とした。第1のEVOH共重合体と第2のEVOH共重合体との混合物を乾燥させて、0.15重量%の水分含有量を有する比較例EVOH2の最終ペレットを形成した。最終EVOH共重合体樹脂組成物のホウ素含有量およびアルカリ金属含有量を表8に列挙した。
【0157】
<実施例9:比較例EVOH3の調製>
比較例EVOH 3は、第1のEVOH共重合体および第2のEVOH共重合体から調製した。第1のEVOH共重合体は、以下の工程に従って調製した。
【0158】
[エチレン-酢酸ビニル共重合体調製工程]
冷却コイルを備えた重合容器に、酢酸ビニルモノマー500kg、メタノール100kg、酢酸ビニルモノマーの重量に基づいて過酸化ジアセチル(触媒)10ppm、およびクエン酸0.015kgを添加した。重合容器内のガス状内容物を窒素で一時的に置換した後、窒素をエチレンに置換し、エチレン圧が35kg/cm2になるまでプレスした。エチレン圧力下で、重合容器中の含有量を撹拌しながら67℃の温度にして重合を開始した。重合開始から6時間後、重合度が60%に達したところで、0.0525kgのソルビン酸(重合抑制剤として作用する)を添加した。エチレン含量29モル%のエチレン‐酢酸ビニル共重合体を得た。エチレン-酢酸ビニル共重合体を含む反応液を蒸留塔に供給し、塔下部にメタノール蒸気を導入して未反応の酢酸ビニルモノマーを除去し、第1のEVAc共重合体のメタノール溶液を得た。
【0159】
[鹸化工程]
次に、第1のEVAc共重合体を水酸化ナトリウムで鹸化99.5%になるまで鹸化して、第1のEVOH共重合体中間体を得た。次いで、第1のEVOH共重合体中間体を、60:40の重量比でメタノールおよび水を含む溶液に溶解した。第1のEVOH共重合体中間体をメタノールおよび水の溶液に溶解した後、混合物は41重量%のEVOH共重合体中間体の固形分を有していた。EVOH共重合体中間体の混合物を約60℃の温度で1時間維持した。
【0160】
[ペレット化工程]
次いで、メタノールおよび水を含有するEVOH共重合体中間体の混合物を、水中ペレット化によりペレット化した。具体的には、メタノール、水、およびEVOH共重合体中間体の混合物を、120 L/分の流速で供給管にポンプ輸送した。混合物を、2.8mmの直径を有する入口パイプに移動し、1500rpmの速度で回転ナイフによって切断し、次いで、温度5℃の水を添加することによって冷却し、続いて遠心分離して、調製されたEVOH共重合体中間体からペレットを生成した。
【0161】
[第1溶液添加工程]
EVOH共重合体中間ペレットを水で洗浄し、次いで酢酸ナトリウムを含む第1の溶液に浸漬した。EVOH共重合体中間ペレットを浸漬した第1の溶液は、ホウ素濃度が約0ppmであり、EVOH共重合体中間ペレットに対するホウ酸および酢酸ナトリウムを含む第1の溶液の重量比は、1.1:1であった。これにより、最終的な第1のEVOH共重合体を形成した。
【0162】
第2のEVOH共重合体を、(1)EVAc共重合体調製工程において、エチレン-酢酸ビニル共重合体のエチレン含有量を48モル%、エチレン圧を70kg/cm2、触媒を70ppmとしたこと、及び(2)第2の溶液添加工程において、第2の溶液のホウ素濃度を1000ppm、EVOH共重合体中間体ペレットに対するホウ素酸および酢酸ナトリウムを含む第2の溶液の重量比を2:1としたこと以外は、第1のEVOH共重合体について上述したのと同様の工程に従って調製した。第2のEVOH共重合体は、第1のEVOH共重合体とは別に調製した。
【0163】
次いで、別々に調製した第1のEVOH共重合体および第2のEVOH共重合体を、30rpmの混合速度を用いて、ペレット対水の重量比1:1で60分間水中ブレンドすることによって合わせた。第1のEVOH共重合体と第2のEVOH共重合体との割合を、第1のEVOH共重合体と第2のEVOH共重合体との重量比で80:20とした。第1のEVOH共重合体と第2のEVOH共重合体との混合物を乾燥させて、0.15重量%の水分含有量を有する比較例EVOH3の最終ペレットを形成した。最終EVOH共重合体樹脂組成物のホウ素含有量およびアルカリ金属含有量を表8に列挙した。
【0164】
<実施例10:比較例EVOH4の調製>
比較例EVOH4は、第1のEVOH共重合体および第2のEVOH共重合体から調製した。第1のEVOH共重合体は、以下の工程に従って調製した。
【0165】
[エチレン-酢酸ビニル共重合体調製工程]
冷却コイルを備えた重合容器に、酢酸ビニルモノマー500kg、メタノール100kg、酢酸ビニルモノマーの重量に基づいて過酸化ジアセチル(触媒)35ppm、およびクエン酸0.015kgを添加した。重合容器内のガス状内容物を窒素で一時的に置換した後、窒素をエチレンに置換し、エチレン圧が35kg/cm2になるまでプレスした。エチレン圧力下で、重合容器中の含有量を撹拌しながら67℃の温度にして重合を開始した。重合速度が60%に達した重合開始から6時間後、0.0525kgのソルビン酸(重合抑制剤として作用する)を添加した。エチレン含量29モル%のエチレン‐酢酸ビニル共重合体を得た。次いで、エチレン-酢酸ビニル共重合体を含む反応液を蒸留塔に供給し、塔下部にメタノール蒸気を導入して未反応の酢酸ビニルモノマーを除去し、第1のEVAc共重合体のメタノール溶液を得た。
【0166】
[鹸化工程]
第1のEVAc共重合体を水酸化ナトリウムで鹸化度99.5%になるまで鹸化して、第1のEVOH共重合体中間体を得た。次いで、第1のEVOH共重合体中間体を、60:40の重量比でメタノールおよび水を含む溶液に溶解した。第1のEVOH共重合体中間体をメタノールおよび水の溶液に溶解した後、溶液はEVOHの固形分41重量%を有していた。EVOH共重合体中間体の混合物を約60℃の温度で1時間維持した。
【0167】
[ペレット化工程]
次いで、メタノールおよび水を含有するEVOH共重合体中間体の混合物を、水中ペレット化によりペレット化した。具体的には、メタノール、水、およびEVOH共重合体中間体の混合物を、120 L/分の流速で供給管にポンプ輸送した。混合物を、2.8mmの直径を有する入口パイプに移動し、1500rpmの速度で回転ナイフによって切断し、次いで、温度5℃の水を添加することによって冷却し、続いて遠心分離して、調製されたEVOH共重合体中間体からペレットを生成した。
【0168】
[第1溶液添加工程]
EVOH共重合体中間ペレットを水で洗浄し、次いで、所定濃度のホウ素酸および酢酸ナトリウムを含む第1の溶液に浸漬した。EVOH共重合体中間ペレットを浸漬した第1の溶液は、ホウ素濃度が600ppmで、EVOH共重合体中間ペレットに対するホウ酸および酢酸ナトリウムを含む第1の溶液の重量比は、1.3:1であった。これにより、最終的な第1のEVOH共重合体を形成した。
【0169】
第2のEVOH共重合体を、(1)EVAc共重合体調製工程において、エチレン-酢酸ビニル共重合体のエチレン含有量を60モル%、エチレン圧を85kg/cm2、触媒を60ppmとしたこと、及び(2)第2の溶液添加工程において、第2の溶液のホウ素濃度を400ppm、EVOH共重合体中間体ペレットに対するホウ素酸および酢酸ナトリウムを含む第2の溶液の重量比を1.3:1としたこと以外は、第1のEVOH共重合体について上記したのと同様の工程に従って調製した。第2のEVOH共重合体は、第1のEVOH共重合体とは別に調製した。
【0170】
次に、別々に調製した第1のEVOH共重合体および第2のEVOH共重合体を配合によって合わせた。具体的には、Zenix Industrial Co., LTDから市販されているZenix ZPT-32HT二軸押出機を使用して、長さ/直径(L/D)10mm/mm、回転速度10rpm、および下表5に示すシリンダー温度プロファイルを有するスクリューを用いて、第1のEVOH共重合体と第2のEVOH共重合体との95:5重量比でEVOHペレットを配合し、0.15重量%の水分含有量を有する比較例EVOH 4の最終ペレットを製造した。最終EVOH共重合体樹脂組成物のホウ素含有量およびアルカリ金属含有量を表8に列挙した。
【表5】
【0171】
<実施例11:比較例EVOH5の調製>
比較例EVOH5は、第1のEVOH共重合体および第2のEVOH共重合体から調製した。第1のEVOH共重合体は、以下の工程に従って調製した。
【0172】
[エチレン-酢酸ビニル共重合体調製工程]
冷却コイルを備えた重合容器に、酢酸ビニルモノマー500kg、メタノール100kg、酢酸ビニルモノマーの重量に基づいて過酸化ジアセチル(触媒)70ppm、およびクエン酸0.015kgを添加した。重合容器内のガス状内容物を窒素で一時的に置換した後、窒素をエチレンに置換し、エチレン圧が35kg/cm2になるまでプレスした。エチレン圧力下で、重合容器中の含有量を撹拌しながら67℃の温度にして重合を開始した。重合開始から6時間後、重合度が60%に達したところで、0.0525kgのソルビン酸(重合抑制剤として作用する)を添加した。エチレン含量29モル%のエチレン‐酢酸ビニル共重合体を得た。次いで、エチレン-酢酸ビニル共重合体を含む反応液を蒸留塔に供給し、塔下部にメタノール蒸気を導入して未反応の酢酸ビニルモノマーを除去し、第1のEVAc共重合体のメタノール溶液を得た。
【0173】
[鹸化工程]
次に、第1のEVAcを水酸化ナトリウムで鹸化度99.5%まで鹸化して、第1のEVOH共重合体中間体を得た。次いで、第1のEVOH共重合体中間体を、60:40の重量比でメタノールおよび水を含む溶液に溶解した。第1のEVOH共重合体中間体をメタノールおよび水の溶液に溶解した後、混合物はEVOH共重合体中間体の固形分が41重量%であった。EVOH共重合体中間体の混合物を温度約60℃で1時間維持した。
【0174】
[ペレット化工程]
次いで、メタノールおよび水を含有するEVOH共重合体中間体の混合物を、水中ペレット化を使用してペレット化した。具体的には、メタノール、水、およびEVOH共重合体中間体の混合物を、120 L/分の流速で供給管にポンプ輸送した。混合物を、2.8mmの直径を有する入口パイプに移動し、1500rpmの速度で回転ナイフによって切断し、次いで、温度5℃の水を添加することによって冷却し、続いて遠心分離して、調製されたEVOH共重合体中間体からペレットを生成した。
【0175】
[第1溶液添加工程]
EVOH共重合体中間ペレットを水で洗浄し、次いでホウ素酸および酢酸ナトリウムを含む第1の溶液に浸漬した。EVOH共重合体中間体ペレットを浸漬した第1の溶液は、200ppmのホウ素濃度を有し、ホウ素酸および酢酸ナトリウムを含む第1の溶液とEVOH共重合体中間体ペレットとの重量比は1.1:1であった。これにより、最終的な第1のEVOH共重合体を形成した。
【0176】
第2のEVOH共重合体を、(1)EVAc共重合体調製工程において、エチレン-酢酸ビニル共重合体のエチレン含有量を44モル%、エチレン圧を60kg/cm2 、触媒を60ppmとしたこと、及び(2)第2の溶液添加工程において、第2の溶液のホウ素濃度を300ppm、ホウ素酸および酢酸ナトリウムを含む第2の溶液のEVOH共重合体中間体ペレットに対する重量比を1:1としたこと以外は、第1のEVOH共重合体について上述したのと同様の工程に従って調製した。第2のEVOH共重合体は、第1のEVOH共重合体とは別に調製した。
【0177】
次いで、別々に調製した第1のEVOH共重合体および第2のEVOH共重合体を、乾式ブレンドによって組み合わせた。具体的には、第1のEVOH共重合体と第2のEVOH共重合体とのブレンドの割合は、重量比で80:20とした。EVOH共重合体をプラスチックバッグに入れて振盪した。EVOH共重合体の乾燥ブレンド混合物をペレット化して、水分含有量0.15重量%の比較例EVOH 5の最終ペレットを製造した。最終EVOH共重合体樹脂組成物のホウ素含有量およびアルカリ金属含有量を表8に列挙した。
【0178】
<実施例12:比較例EVOH6の調製>
比較例EVOH6は、第1のEVOH共重合体および第2のEVOH共重合体から調製した。第1のEVOH共重合体は、以下の工程に従って調製した。
【0179】
[エチレン-酢酸ビニル共重合体調製工程]
冷却コイルを備えた重合容器に、酢酸ビニルモノマー500kg、メタノール100kg、酢酸ビニルモノマーの重量に基づいて過酸化ジアセチル(触媒)70ppm、およびクエン酸0.015kgを添加した。重合容器内のガス状内容物を窒素で一時的に置換した後、窒素をエチレンに置換し、エチレン圧が43kg/cm2になるまでプレスした。エチレン圧力下で、重合容器中の含有量を撹拌しながら67℃の温度にして重合を開始した。重合開始から6時間後、重合度が60%に達したところで、0.0525kgのソルビン酸(重合抑制剤として作用する)を添加した。エチレン含量35モル%のエチレン‐酢酸ビニル共重合体を得た。次いで、エチレン-酢酸ビニル共重合体を含む反応液を蒸留塔に供給し、塔下部にメタノール蒸気を導入して未反応の酢酸ビニルモノマーを除去し、第1のEVAc共重合体のメタノール溶液を得た。
【0180】
[鹸化工程]
第1のEVAc共重合体を水酸化ナトリウムで鹸化度99.5%になるまで鹸化して、第1のEVOH共重合体中間体を得た。次いで、第1のEVOH共重合体中間体を、60:40の重量比でメタノールおよび水を含む溶液に溶解した。第1のEVOH共重合体中間体をメタノールおよび水の溶液に溶解した後、混合物はEVOH共重合体中間体の固形分が41重量%であった。EVOH共重合体中間体の混合物を約60℃の温度で1時間維持した。
【0181】
[ペレット化工程]
次いで、メタノールおよび水を含有するEVOH共重合体中間体の混合物を、水中ペレット化を使用してペレット化した。具体的には、メタノール、水、およびEVOH共重合体中間体の混合物を、120 L/分の流速で供給管にポンプ輸送した。混合物を、2.8mmの直径を有する入口パイプに移動し、1500rpmの速度で回転ナイフによって切断し、次いで、温度5℃の水を添加することによって冷却し、続いて遠心分離して、調製されたEVOH共重合体中間体からペレットを生成した。
【0182】
[第1溶液添加工程]
EVOH共重合体中間ペレットを水で洗浄し、次いでホウ素酸および酢酸ナトリウムを含む第1の溶液に浸漬した。EVOH共重合体中間ペレットを浸漬した第1の溶液は、ホウ素濃度が約550ppmで、EVOH共重合体中間ペレットに対するホウ酸および酢酸ナトリウムを含む第1の溶液の重量比は、1.8:1であった。これにより、最終的な第1のEVOH共重合体を形成した。
【0183】
第2のEVOH共重合体を、(1)EVAc共重合体調製工程において、エチレン-酢酸ビニル共重合体のエチレン含有量を42モル%、エチレン圧を58kg/cm2、触媒を30ppmとしたこと、及び(2)第2の溶液添加工程において、第2の溶液のホウ素濃度を130ppm、ホウ素酸および酢酸ナトリウムを含む第2の溶液のEVOH共重合体中間体ペレットに対する重量比を1:1としたこと以外は、第1のEVOH共重合体について上記したのと同様の工程に従って調製した。第2のEVOH共重合体は、第1のEVOH共重合体とは別に調製した。
【0184】
次いで、別々に調製した第1のEVOH共重合体および第2のEVOH共重合体を、乾式ブレンドによって組み合わせた。具体的には、それぞれのEVOH共重合体を、第1のEVOH共重合体と第2のEVOH共重合体との重量比50:50で混合し、次いで、円錐スクリューミキサー(CM-2; SHE HUI MACHINERY CO., LTD.)で5分間、混合速度10rpmで十分に混合した。第1のEVOH共重合体と第2のEVOH共重合体との混合物を乾燥させて、水分含有量0.15重量%の比較例EVOH6の最終ペレットを形成した。最終EVOH共重合体樹脂組成物のホウ素含有量およびアルカリ金属含有量を表8に列挙した。
【0185】
<実施例13:比較例EVOH7の調製>
比較例EVOH7は、第1のEVOH共重合体および第2のEVOH共重合体から調製した。第1のEVOH共重合体は、以下の工程に従って調製した。
【0186】
[エチレン-酢酸ビニル共重合体調製工程]
冷却コイルを備えた重合容器に、酢酸ビニルモノマー500kg、メタノール100kg、酢酸ビニルモノマーの重量に基づいて過酸化ジアセチル(触媒)70ppm、およびクエン酸0.015kgを添加した。重合容器内のガス状内容物を窒素で一時的に置換した後、窒素をエチレンに置換し、エチレン圧が60kg/cm2になるまでプレスした。エチレン圧力下で、重合容器中の含有量を撹拌しながら67℃の温度にして重合を開始した。重合開始から6時間後、重合度が60%に達したところで、0.0525kgのソルビン酸(重合抑制剤として作用する)を添加した。エチレン含有量44モル%のエチレン‐酢酸ビニル共重合体を得た。次いで、エチレン-酢酸ビニル共重合体を含む反応液を蒸留塔に供給し、塔下部にメタノール蒸気を導入して未反応の酢酸ビニルモノマーを除去し、第1のEVAc共重合体のメタノール溶液を得た。
【0187】
[鹸化工程]
第1のEVAc共重合体を水酸化ナトリウムで鹸化度99.5%になるまで鹸化して、第1のEVOH共重合体を得た。次いで、第1のEVOH共重合体中間体を、60:40の重量比でメタノールおよび水を含む溶液に溶解した。第1のEVOH共重合体中間体をメタノールおよび水の溶液に溶解した後、混合物は41重量%のEVOH共重合体中間体の固形分を有していた。EVOH共重合体中間体の混合物を約60℃の温度で1時間維持した。
【0188】
[ペレット化工程]
次いで、メタノールおよび水を含有するEVOH共重合体中間体の混合物を、水中ペレット化によりペレット化した。具体的には、メタノール、水、およびEVOH共重合体中間体の混合物を、120 L/分の流速で供給管にポンプ輸送した。混合物を、2.8mmの直径を有する入口パイプに移動し、1500rpmの速度で回転ナイフによって切断し、次いで、温度5℃の水を添加することによって冷却し、続いて遠心分離して、調製されたEVOH共重合体中間体からペレットを生成した。
【0189】
[第1溶液添加工程]
EVOH共重合体中間ペレットを水で洗浄し、次いで所定濃度の酢酸ナトリウムを含む第1の溶液に浸漬した。EVOH共重合体中間ペレットを浸漬した第1の溶液は、ホウ素濃度が約0ppmで、酢酸ナトリウムを含む第1の溶液対EVOH共重合体中間ペレットの重量比は1:1であった。次に、最終的な第1のEVOH共重合体を形成した。
【0190】
第2のEVOH共重合体を、(1)EVAc共重合体調製工程において、エチレン-酢酸ビニル共重合体のエチレン含有量を44モル%、エチレン圧を60kg/cm2、触媒を20ppmとしたこと、及び(2)第2の溶液添加工程において、第2の溶液のホウ素濃度を500ppm、EVOH共重合体中間体ペレットに対するホウ素酸および酢酸ナトリウムを含む第2の溶液の重量比を1.5:1としたことを以外は、第1のEVOH共重合体について上述したのと同様の工程に従って調製した。第2のEVOH共重合体は、第1のEVOH共重合体とは別に調製した。
【0191】
次に、別々に調製した第1のEVOH共重合体および第2のEVOH共重合体を配合によって合わせた。具体的には、それぞれのEVOH共重合体を、第1のEVOH共重合体と第2のEVOH共重合体との90:10重量比で配合し、Zenix Industrial Co., LTD.から市販されているZenix ZPT-32HT二軸押出機によって、長さ/直径(L/D)20mm/mm、回転速度10rpm、および下表6に示すシリンダー温度プロファイルを有するスクリューを用いて押出し、水分含有量0.15重量%の比較例EVOH 7の最終ペレットを製造した。最終EVOH共重合体樹脂組成物のホウ素含有量およびアルカリ金属含有量を表8に列挙した。
【表6】
【0192】
<試験例1>
実施例EVOH1~6および比較例EVOH1~7について、メルトフローレート(MFR)、融点温度、および決定係数を含む特定の特性を評価した。さらに、実施例EVOH1~6および比較例EVOH1~7を製造するための各EVOH共重合体を、製造のために混合する前に評価した。
【0193】
実施例EVOH1~6及び比較例EVOH1~7、並びに実施例及び比較例EVOHを製造するためのEVOH共重合体のメルトフローレート(MFR)の概要を表7に示す。最大MFRおよび最小MFRは、単一のせん断速度でのEVOH共重合体のレオロジー挙動を評価するものである。最大MFRおよび最小MFRを計算する方法の例は、中国特許第1264914 C号に見出すことができ、この内容は、すべての目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。実施例および比較例EVOHを製造するために使用した第1のEVOH共重合体の最大MFRを最小MFRで割ったものを以下の表7に示す。(MFR単位: g/10分)
【表7】
【0194】
具体的には、実施例EVOH1~6および比較例EVOH1~7のEVOH樹脂組成物を、それぞれ、ツインボアキャピラリーレオメータに装填した。ツインボアキャピラリーレオメータは、Malvern Instruments LTDから入手可能なRH7 Flowmaster Twin-bore Capillary Rheometerであり、ダイは、直径1mmのキャピラリーで、L/D=20であった。長いダイは、内孔直径1mm、長さ20mmであった。内孔直径1mm、長さ0.25mmのオリフィスダイ(ゼロダイとも呼ばれる)を使用して、孔入口での圧力降下を測定した。ツインボアキャピラリーレオメータは、ボアサイズ15mm、最大力50 kNであり、試験温度は210℃とした。圧力センサとして、Ultra‐MAX‐HT、モデル番号UMHT3-6-M-X-18-D8-30M-B を使用した。またツインボアキャピラリーレオメータの測定値の計測と評価に、Rosand Rheometer Controlソフトウェア、Version 8.6を使用した。
【0195】
実施例EVOH1~6および比較例EVOH1~7のEVOH樹脂組成物、ならびに実施例EVOH1~6および比較例EVOH1~7を製造するために使用したEVOH共重合体を、試験側の長いダイおよびブランク側のゼロダイに装填した。装置を210℃の温度に加熱し、30分間その温度を維持し、次いでサンプルをツインボアキャピラリーレオメータに充填した。次いで、圧力を適度に加えて、材料間の空気を排出させた。EVOH樹脂組成物を9分間溶融した後、せん断速度を99 s
-1に設定し、レオロジー特性を測定した。具体的には、粘度は、ツインボアキャピラリーレオメータから押出開始して、約1500秒~約4500秒の間、評価した。次に、120秒毎の粘度をプロットし、プロットした点から回帰直線を導出した。次いで、プロットした点の粘度から決定係数を計算した。
決定係数は、以下の式を用いて計算することができる。
【数1】
【0196】
決定係数(R2)は、一般に、プロットされた回帰直線によってフィットさせることができるy値の比率を指す。たとえば、決定係数(R2)が0.92の場合、y値の92%はx値の回帰線の影響を受ける。グラフのy値は、せん断粘度(パスカル秒)に対応する。従って、決定係数(R2)がある範囲にある場合、レオロジー挙動は安定であることが期待される。
【0197】
図1は、実施例EVOH4および比較例EVOH6の決定係数(R
2)を表す。これは、EVOH共重合体樹脂組成物を、温度210℃およびせん断速度99 s
-1で、レオメーターによって試験した結果である。実施例EVOH 4の決定係数(R
2)は、0.5以上1以下である。R
2が1に近づくほど、せん断粘性が安定になり、膜厚は均一になる。
【0198】
実施例および比較例EVOHを製造するために使用したEVOH共重合体の融点は、DSC Q200装置(Tzero蓋はTA Instrument社の T 170607、TzeroパンはTA Instrument社のT 170620)を用いて、ISO 11357-3-2011の方法により決定した。
【0199】
ホウ素含有量を評価するために、実施例EVOH1~6および比較例EVOH1~7の各ペレットを、濃硝酸10ml中で、マイクロ波により加熱しながら、0.2gのEVOH共重合体樹脂組成物ペレットに分解することによって、サンプル溶液を調製した。次に、得られたサンプル溶液を純水で50mlに希釈した。調製した溶液に含まれるホウ素量は、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP-OES)により測定した。ICP-OESに使用した装置は、THERMOFISHER SCIENTIFICによって製造されたThermoFisher iCAP7000装置である。ICP‐OESで測定したEVOH共重合体樹脂組成物のほう素含有量は、それぞれのEVOH共重合体に取り込まれたほう素化合物に由来するほう素量に相当していた。
【0200】
また、それぞれのEVOH共重合体樹脂組成物について、アルカリ金属含有量を決定した。具体的には、それぞれのEVOH共重合体樹脂組成物2gを白金皿に入れ、数ミリリットルの硫酸を添加し、次いでEVOH共重合体樹脂組成物および硫酸を入れた白金皿をガスバーナーで加熱した。EVOH共重合体樹脂組成物が炭化し、硫酸による白煙が消失したことを確認した後、硫酸を数滴加え、炭化EVOH共重合体樹脂組成物と硫酸の組み合わせを再加熱した。この操作を有機物が消失するまで繰り返し、得られた物質を完全に灰化した。次いで、白金皿を放冷し、1mLの塩酸を加えて灰分を溶解した。灰分を含む塩酸溶液を超純水で洗浄した後、50mLに希釈した。試料溶液中のアルカリ金属含有量は、誘導結合プラズマ分光計(ICP-AES)(Agilent Technology社製、モデル720-ES)を用いて測定した。最後に、溶液中のアルカリ金属濃度をEVOH共重合体樹脂組成物中のアルカリ金属含有量に変換した。
【0201】
実施例および比較例EVOHを製造するために使用したEVOH共重合体の融点、回帰直線の傾き、決定係数、ホウ素の含有量、および実施例EVOH1~6および比較例EVOH1~7のアルカリ金属の含有量を以下の表8に示す。表8において、1
stは第1のEVOH共重合体を示し、2
ndは第2のEVOH共重合体を示し、3
rdは第3のEVOH共重合体を示す。
【表8】
【0202】
上記のように、最大MFRおよび最小MFRは、単一のせん断速度におけるEVOH共重合体のレオロジー挙動だけを評価するものであり、また、MFR値は、期間全体のレオロジー挙動だけを評価するものである。したがって、最大粘度および最小粘度を制御しただけでは、本発明にが解決すべき課題を解決することができない。しかし、決定係数は、同じせん断速度下で異なる時間での各レオロジー挙動を表し、これは、実際の製造工程における実際の状況をより良く表すものである。したがって、特定の決定係数を制御することが、本発明の各態様による特定のEVOH共重合体樹脂組成物から形成されたフィルムについて、厚さの均一性の改善および優れた酸素バリア特性に寄与するものであると言える。
【0203】
<試験例2>
実施例EVOH1~6および比較例EVOH1~7の単層フィルムについて、単層フィルムの厚さおよび伸びの均一性を評価した。具体的には、実施例EVOH1~6および比較例EVOH1~7のペレットを単軸押出機に供給して、約20μmの厚さおよび15cmの幅を有する実施例EVOH1~6および比較例EVOH1~7のフィルムを形成した。フィルムmの厚さはTECLOCK厚さ計、モデル番号SM-114を用いて決定した。次いで、ランダムに選んだ5点におけるフィルムの厚さの間の標準偏差を決定した。標準偏差が0.3未満であると決定された場合、フィルムは、厚さの優れた均一性を有するフィルムであると分類した(表9において「〇」としてランク付けした)。標準偏差が0.3~0.5であると決定された場合、フィルムは、適切な厚さの均一性を有するフィルムであると分類した(表9において「△」としてランク付けした)。標準偏差が0.5より大きいと判定された場合、フィルムは、厚さの不均一性を有するフィルムであると分類した(表9において「×」としてランク付けされる)。
【0204】
酸素透過率(OTR)を評価するために、実施例EVOH1~6および比較例EVOH1~7から作製された厚さ20μmのフィルムを、MOCONから入手可能なOXTRAN 2/22装置を用いて、ISO 14663-2の方法により、5点で評価した。厚さ20μmのフィルムの5点を分析するための温度は20℃であり、その相対湿度は65%であった。OTR値の単位はcm3 *20um/m2 *24hr*atmである。次いで、20μmの厚さを有するフィルムの5点で評価されたOTR値を平均して、実施例EVOH1~6および比較例EVOH1~7のそれぞれのフィルムについての全体的なOTR値を決定した。
【0205】
実施例EVOH1~6および比較例EVOH1~7の伸び特性を評価するために、実施例EVOH1~6および比較例EVOH1~7のペレットから、一軸スクリュー押出機を使用して、180μmの厚さを有するフィルムを製造した。実施例EVOH1~6および比較例EVOH1~7のフィルムを、それぞれ30mmの長さおよび90mmの幅を有するサンプルに切断した。
【0206】
各フィルムのサンプルを130℃の温度に30分間維持し、次いで、ASTM D882の手順により1000m/分の引張速度で試験した。ASTM D882の伸び試験手順を簡単に要約すると、GOTECHから入手可能なAI-7000MTを使用して、テンションを掛けてサンプルが破損するまでサンプルを引っ張った。伸び試験は、単一カラム汎用試験機で実施することができる。特に、実施例EVOH1~6および比較例EVOH1~7の厚さ180μmのフィルムについて、機械方向および引張方向の伸び率を決定した。
【0207】
実施例EVOH1~6及び比較例EVOH1~7のフィルムについて、厚さの均一性、機械方向の伸び率、引張方向の伸び率、及び酸素移動率を要約したものを以下の表9に示す。
【表9】
【0208】
それぞれのEVOHペレット、ポリプロピレン、および結合層(タイ層)(例えば、ARKEMA OREVAC 18729)を共押出することによって、EVOH1~6および比較例EVOH1~7のそれぞれから、EVOH共重合体樹脂組成物の多層フィルムを形成した。多層フィルム(実施例多層フィルム1~6および比較多層フィルム1~7)はそれぞれ、EVOH共重合体樹脂組成物(EVOH層と略す)から形成された層を2つのポリプロピレン層の間に挟んだ5層を有するものとした。タイ層は、EVOH層の各側とポリプロピレン層の1つとの間に配置された。具体的には、EVOH層(I)、ポリプロピレン層(II)、およびタイ層(III)を5層共押出機に供給し、それぞれ300/25/50/25/300(μm)の厚さを有する、(II)/(III)/(III)で表される構造を有する多層シートを作製した。EVOH共重合体樹脂組成物を容器(例えばカップ容器)の形状に熱成形することによって、実施例EVOH1~6および比較例EVOH1~7の多層容器(多層容器E1~E6およびC1~C7と略す)を得た。
【0209】
図2を参照すると、多層容器10は、カップ状である。多層容器10は、立面11と角部領域12とを有する。なお、立面11は多層容器10の側面であり、角部領域12は立面11と底面の角である。Dは立面11の厚さであり、dは角部領域12の厚さである。多層容器の立面と角部の厚さを測定し比較した結果を表10に示す。
【0210】
表10において、「厚さ偏差」とは、実施例多層フィルム1~6及び比較多層フィルム1~7から作製した各熱成形多層容器E1~E6及びC1~C7において、立面領域と角部領域とを比較したときの多層フィルムの厚さの差をいう。評価は、角部領域と立面領域との厚さの差が20%未満のEVOH層を「〇」とした。角部領域と立面領域との間の厚さの差が20%~40%のEVOH層を「△」とし、角部領域と立面領域との間の厚さの差が40%を超えるEVOH層を「×」とした。
【表10】
【0211】
表10から、実施例EVOH5から作製された実施例多層フィルムは、第1のEVAc共重合体および第2のEVAc共重合体中のエチレン含有量が同じであるため、厚さ偏差が大きくなったものと考えられる。エチレン含有量の高いEVOH共重合体は、引張強度を改善することができ、エチレン含有量の低いEVOH共重合体は、水素結合を改善することができる。したがって、EVOH共重合体樹脂組成物中のエチレン含有量が異なる第1のEVAc共重合体および第2のEVAc共重合体は、熱成形性をさらに向上させることができる。