(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101428
(43)【公開日】2023-07-21
(54)【発明の名称】コンクリート舗装目地形成方法
(51)【国際特許分類】
E01C 11/06 20060101AFI20230713BHJP
E01C 23/09 20060101ALI20230713BHJP
E01C 7/32 20060101ALI20230713BHJP
【FI】
E01C11/06
E01C23/09 Z
E01C7/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022001980
(22)【出願日】2022-01-08
(71)【出願人】
【識別番号】590002482
【氏名又は名称】株式会社NIPPO
(74)【代理人】
【識別番号】110001667
【氏名又は名称】弁理士法人プロウィン
(72)【発明者】
【氏名】金井 海瑠
(72)【発明者】
【氏名】萩原 高志
【テーマコード(参考)】
2D051
2D053
【Fターム(参考)】
2D051AC04
2D051AF03
2D051AH03
2D053AA27
2D053AA32
2D053AD01
2D053AD03
2D053DA05
2D053FA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】施工後のコンクリートの表面状態が良好であり、角欠けの発生を抑制することが可能なコンクリート舗装目地形成方法を提供する。
【解決手段】構造物上にコンクリートを供給するコンクリート供給工程と、コンクリートの硬化状態を計測する硬化計測工程と、硬化状態が完全に硬化する前の半硬化条件を満たした場合に、コンクリートにカッタで目地を入れる目地入れ工程とを備えるコンクリート舗装目地形成方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物上にコンクリートを供給するコンクリート供給工程と、
前記コンクリートの硬化状態を計測する硬化計測工程と、
前記硬化状態が完全に硬化する前の半硬化条件を満たした場合に、前記コンクリートにカッタで目地を入れる目地入れ工程とを備えることを特徴とするコンクリート舗装目地形成方法。
【請求項2】
請求項1に記載のコンクリート舗装目地形成方法であって、
前記硬化計測工程において、GB試験を用いて前記コンクリートの表面における硬さを計測することを特徴とするコンクリート舗装目地形成方法。
【請求項3】
請求項2に記載のコンクリート舗装目地形成方法であって、
前記半硬化条件は、GB係数が10%以上50%以下の範囲であることを特徴とするコンクリート舗装目地形成方法。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一つに記載のコンクリート舗装目地形成方法であって、
前記硬化計測工程において、シュミットハンマ試験を用いて前記コンクリートの表面における硬さを計測することを特徴とするコンクリート舗装目地形成方法。
【請求項5】
請求項4に記載のコンクリート舗装目地形成方法であって、
前記半硬化条件は、反発度が20以上45以下の範囲であることを特徴とするコンクリート舗装目地形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート舗装目地形成方法に関し、コンクリート表面にカッタで目地を形成するコンクリート舗装目地形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からコンクリート舗装においては、硬化時におけるコンクリートの収縮を吸収し、コンクリート版に不規則な間隔のひび割れが発生することを抑制するために、コンクリート表面に収縮目地を形成している。収縮目地の形成方法としては、打ち込み目地を設置してコンクリート打設後の一定時間経過後に目地を形成する工法や、打ち込み目地を用いない湿式工法(ソフカット工法)が提案されている(特許文献1,2等を参照)。
【0003】
打ち込み目地を用いた工法では、一次カッタ施工時に仮挿入物であるスレート板の通りに合わせてコンクリートを切断するため、ブレードが横ブレして目地通りの歪みや角欠けが生じる可能性がある。また、人力施工で打ち込み目地の周りを仕上げる際に水の噴霧や鏝仕上げを行うため、細粒分が集まりやすい。それに対してソフカット工法では、打ち込み目地が不要なため仕上がり状態も良好になり、通りの歪みや角欠けを軽減することが可能である。またソフカット工法では、コンクリートを打設してから比較的に短時間が経過した時点でカッタ装置による施工を行うため、施工時間の短縮化と工程の簡略化を図ることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5401124号公報
【特許文献2】特開2006-97228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしソフカット工法では、コンクリート上でカッタ装置を走行させて目地を切るため、コンクリートが未硬化の状態(半硬化状態)では舗装上にカッタ装置のタイヤ痕が生じる可能性がある。また、コンクリートの硬化が進み過ぎると、カッタ装置での目地切り作業時に角欠けが発生する可能性がある。
【0006】
そこで本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、施工後のコンクリートの表面状態が良好であり、角欠けの発生を抑制することが可能なコンクリート舗装目地形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のコンクリート舗装目地形成方法は、構造物上にコンクリートを供給するコンクリート供給工程と、前記コンクリートの硬化状態を計測する硬化計測工程と、前記硬化状態が完全に硬化する前の半硬化条件を満たした場合に、前記コンクリートにカッタで目地を入れる目地入れ工程とを備えることを特徴とする。
【0008】
このような本発明のコンクリート舗装目地形成方法では、硬化計測工程においてコンクリートの硬化状態を測定し、半硬化条件を満たした場合にカッタでの目地入れ工程を実施するため、タイヤ痕や角欠けの発生を抑制することが可能となる。
【0009】
また、本発明の一態様では、前記硬化計測工程において、GB試験を用いて前記コンクリートの表面における硬さを計測する。
【0010】
また、本発明の一態様では、前記半硬化条件は、GB係数が10%以上50%以下の範囲である。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記硬化計測工程において、シュミットハンマ試験を用いて前記コンクリートの表面における硬さを計測する。
【0012】
また、本発明の一態様では、前記半硬化条件は、反発度が20以上45以下の範囲である。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、施工後のコンクリートの表面状態が良好であり、角欠けの発生を抑制することが可能なコンクリート舗装目地形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態に係るコンクリート舗装目地形成方法の工程を示すフローチャートである。
【
図2】ソフカット工法でコンクリート版の表面に形成した目地の状態を示す写真であり、
図2(a)は角欠けが発生した不良個所を示す写真であり、
図2(b)は角欠けが発生していない良好な施工状態を示す写真である。
【
図3】硬化計測工程におけるコンクリートの硬化状態を測定する方法を示す写真であり、
図3(a)はGB試験を示す写真であり、
図3(b)はシュミットハンマ試験を示す写真である。
【
図4】目地形成が良好であった施工例におけるGB試験結果を示すグラフであり、
図4(a)はGB反発係数と切断までの時間の関係を示し、
図4(b)はGB反発係数とシュミットハンマによる測定結果との関係を示している。
【
図5】目地形成が良好であった施工例におけるGB試験結果を示すグラフであり、
図5(a)はGB反発係数と平均気温の関係を示し、
図5(b)はGB反発係数と平均湿度の関係を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付すものとし、適宜重複した説明は省略する。本実施形態のコンクリート舗装目地形成方法では、コンクリート舗装の施工方法は限定されず、セットフォーム工法やスリップフォーム工法等の従来から公知の工法を用いることができる。
図1は、本実施形態に係るコンクリート舗装目地形成方法の工程を示すフローチャートである。
図1に示したように、本実施形態のコンクリート舗装目地形成方法の工程は、コンクリート供給工程と、カット予定時刻算出工程と、硬化計測工程と、目地入れ工程を備えている。
【0016】
本実施形態のコンクリート舗装目地形成工程の前に、前工程として構造物を形成しておく。ステップS1のコンクリート供給工程では、構造物上にコンクリートを供給する工程であり、コンクリートを荷卸しした時刻を記録する。構造物上に供給されたコンクリートは、前述したように公知の工法で施工される。ここで、コンクリート荷卸し時刻の記録は、手作業で行うとしてもよく、自動管理システムを用いるとしてもよい。コンクリートの供給と荷卸し時刻の記録が終了した後に、カット予定時刻算出工程に移行する。ここで、コンクリートが供給される構造物としては、路盤やコンクリート舗装、橋梁の床版等が挙げられる。
【0017】
ステップS2のカット予定時刻算出工程では、コンクリート供給工程で記録された荷卸し時刻に基づいて、目地入れ工程を実施する予定時刻を概算で算出する工程である。一例として、最も単純な予定時刻の算出方法は、予め定められた待機時間を荷卸し時刻に加算するものである。例えば、待機時間を荷卸し時刻から3時間と予め定めておくことで、14時の荷卸し時刻に対して17時を予定時刻とすることができる。また、施工現場における各種環境条件をパラメータとして、予定時刻の算出に用いるとしてもよい。一例としては、施工現場の気温や湿度を計測し、予め定められた待機時間を気温と湿度に基づいて増減させることができる。目地入れ工程の予定時刻の算出が終了し、算出した予定時刻に到達した時点で硬化計測工程に移行する。カット予定時刻算出工程を実施することで、コンクリートの硬化状態が半硬化条件を満たす時間を予測し、後述する硬化計測工程の実施回数を低減することができる。
【0018】
ステップS3の硬化計測工程では、打設されたコンクリートの硬化状態を計測して、硬化状態が目地入れ工程を実施するための半硬化条件を満たしているかを判定する工程である。さらに硬化計測工程は、GB試験を用いて反発係数(GB係数)の測定を行うGB計測工程と、シュミットハンマ試験を用いて圧縮強度の測定を行うシュミットハンマ計測工程とを備えている。また、必要に応じて施工者がコンクリートを触診する触診工程を備えるとしてもよい。
【0019】
ステップS4のGB計測工程は、計測対象の表面にゴルフボールを1m(100cm)の高さから落下させた際に跳ね返る高さh(cm)をGB係数として求めるGB試験を実施する工程である。測定したGB係数が10%以上50%以下の範囲であり、半硬化条件を満たす場合にはシュミットハンマ計測工程に移行する。測定したGB係数が0%以上10%未満である場合には、コンクリートの硬化が不十分であるとして、5~10分経過後に再度GB計測工程を行う。測定したGB係数が50%を超える場合には、コンクリートが硬化しすぎであるため次工程に移行することは好ましくない。
【0020】
ステップS5のシュミットハンマ計測工程は、シュミットハンマを用いてコンクリート表面における反発度(R値)を計測するシュミットハンマ試験を実施する工程である。シュミットハンマ計測工程で用いるハンマの形は限定されないが、試験時に衝撃を加えてもコンクリート表面に測定痕を残しにくいPT型シュミットハンマを用いることが好ましい。計測した反発度が20以上45以下の範囲であり、半硬化条件を満たす場合には触診工程に移行、触診工程を実施しない場合には目地入れ工程に移行する。計測した反発度が20未満である場合には、コンクリートの硬化が不十分であるとして、5~10分経過後に再度GB計測工程に移行する。計測した反発度が45を超える場合には、コンクリートが硬化しすぎであるため次工程に移行することは好ましくない。
【0021】
ステップS6の触診工程は、コンクリート表面を施工者が触診し、施工の可否を判断する工程である。触診工程では、コンクリートの圧縮強度や反発度を触覚で確認すると共に、表面状態を確認することができる。ここではシュミットハンマ計測工程の後に触診工程を実施する例を示したが、触診工程は省略してもよく、シュミットハンマ計測工程の前に実施するとしてもよい。触診工程で異常が発見されない場合には、目地入れ工程に移行する。
【0022】
ステップS7の目地入れ工程は、完全に硬化する前の半硬化条件を満たしているコンクリート上で、ブレードを回転させながらカッタ装置を走行させて、コンクリートの表面から所定の深さまで目地を入れる工程である。カッタ装置の形式は限定されず、従来公知の装置を用いることができる。本実施形態のコンクリート舗装目地形成方法では、完全に硬化する前のコンクリートにおいて、半硬化条件を満たす場合に目地入れ工程を実施するため、カッタ装置のタイヤ痕形成と、目地の角欠け発生を防止することができる、
【0023】
(実施例)
第1実施形態のコンクリート舗装目地形成方法を用いて、コンクリート版の表面に目地を形成し、角欠けの発生有無を確認した。
図2は、ソフカット工法でコンクリート版の表面に形成した目地の状態を示す写真であり、
図2(a)は角欠けが発生した不良個所を示す写真であり、
図2(b)は角欠けが発生していない良好な施工状態を示す写真である。
図3は、硬化計測工程におけるコンクリートの硬化状態を測定する方法を示す写真であり、
図3(a)はGB試験を示す写真であり、
図3(b)はシュミットハンマ試験を示す写真である。
【0024】
全ての施工例において、コンクリート供給工程でスリップフォーム工法を用い、目地入れ工程ではカッタ装置としてハスクバーナ社製ソフカット150Dを用いた。切断深さは30mmとした。シュミットハンマ計測工程ではPT型シュミットハンマを用いて計測を行った。目地入れ後のコンクリートに角欠けやタイヤ痕が生じたケースを不良とし、角欠けやタイヤ痕が生じないケースにおいて施工中の切断感覚を感応評価して良好なものを良品と判定した。
【0025】
GB計測工程において、GB係数が10%未満の場合には、コンクリート表面の硬化が不十分であるためゴルフボール落下時の衝突でコンクリート表面に窪みが発生した。よってGB係数が10%未満の場合には、カッタ装置の走行時の安全性を考慮して目地入れ工程は実施しなかった。GB係数が50%超の場合には、目地入れ工程後に角欠けが発生するケースが散見された。GB係数が10%以上50%以下の範囲の場合には、施工150箇所において、角欠けも窪みも生じた例は0箇所であった。
【0026】
図4は、目地形成が良好であった施工例におけるGB試験結果を示すグラフであり、
図4(a)はGB反発係数と切断までの時間の関係を示し、
図4(b)はGB反発係数とシュミットハンマによる測定結果との関係を示している。
図4(a)(b)ともに横軸はGB係数を示しており、
図4(a)の縦軸はコンクリート荷卸しからの目地入れ工程までの経過時間を示し、
図4(b)の縦軸はシュミットハンマでの反発度を示している。
【0027】
図4(a)(b)のプロットした試験結果は、全て目地形成が良好であり、角欠けも窪みも生じなかったものである。また、カッタ装置での切断時における感応評価として、良好な判定を丸印でプロットし、柔らかめの判定を三角印でプロットし、硬めの判定をバツ印でプロットしている。感応評価における柔らかめの判定は、窪みが生じるリスクを含む可能性があるが、待機時間を延長して硬化を待つことでリスク回避できるため、問題は小さい。感応評価における硬めの評価は、角欠けが生じるリスクを含む可能性があり、作業時間の経過とともにリスクが高まるため、避けることがより好ましい。
【0028】
図4(a)に示したように、コンクリート荷卸しからの経過時間とGB係数には相関があり、経過時間が3時間から3時間半の間において、GB係数が10以上50以下の範囲となる可能性が高いことがわかる。したがって、カット予定時刻算出工程での待機時間は3時間から3時間半と設定することが好ましい。待機時間を設定することで、コンクリートの硬化状態が不十分な時点においてGB計測工程を実施して、ゴルフボールの衝突により窪みが発生してしまうリスクを抑制し、適切なタイミングでGB計測工程を実施することができる。
【0029】
図4(a)に示したように、感応評価で柔らかめや硬めと評価された試験結果は、荷卸しからの経過時間との相関が低く、一定の頻度で発生している。よって、待機時間の管理のみで感応評価の良好なものだけにコントロールすることは困難である。硬めの感応評価では、GB反発係数は30%以上50%以下の範囲では発生数が抑制されており、35%以上45%以下の範囲ではさらに発生数が抑制されている。したがって、目地入れ工程を実施するための半硬化条件は、GB係数が10%以上50%以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは30%以上50%以下であり、さらに好ましくは35%以上45%以下である。
【0030】
図4(b)に示したように、GB係数とシュミットハンマでの反発度には相関があり、20以上45以下の反発度はGB係数10%以上50%以下に相当している。また、30以上45以下の反発度はGB係数30%以上50%以下に相当し、30以上40以下の反発度はGB係数10%以上50%以下に相当している。したがって、コンクリート表面への影響が小さいGB計測工程を実施した後に、コンクリート表面への影響が比較的大きなシュミットハンマ計測工程を実施することで、硬化計測工程でのコンクリート表面への悪影響を抑制することができる。また、GB計測工程とは別の方法であるシュミットハンマ計測工程を実施することで、コンクリートの硬化状態をより正確に把握し、目地入れ工程での角欠け発生を効果的に抑制することができる。
【0031】
図5は、目地形成が良好であった施工例におけるGB試験結果を示すグラフであり、
図5(a)はGB反発係数と平均気温の関係を示し、
図5(b)はGB反発係数と平均湿度の関係を示している。
図5(a)(b)に示したように、施工時における平均気温および平均湿度とGB係数との間には相関があることがわかる。したがって、カット予定時刻算出工程において、施工現場における気温と湿度を参考にして、予め定められた待機時間を補正して、補正後の待機時間によって目地入れ工程を実施する予定時刻を算出し、待機時間経過後にGB計測工程を実施することが好ましい。
【0032】
図5(a)(b)に示したように、感応評価で柔らかめや硬めと評価された試験結果は、平均温度および平均湿度との相関が低く、一定の頻度で発生している。よって、施工現場における気温と湿度のみで、感応評価が良好なものだけにコントロールすることは困難である。よって感応評価を良好にするためには、上述したように目地入れ工程を実施する半硬化条件として、GB係数とシュミットハンマでの反発度を用いることが好ましい。
【0033】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。