(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101435
(43)【公開日】2023-07-21
(54)【発明の名称】部品位置決め具
(51)【国際特許分類】
B25B 11/00 20060101AFI20230713BHJP
H05K 3/34 20060101ALI20230713BHJP
【FI】
B25B11/00 Z
H05K3/34 504Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022001994
(22)【出願日】2022-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】394001526
【氏名又は名称】小澤 富士男
(72)【発明者】
【氏名】小澤 富士男
【テーマコード(参考)】
3C020
5E319
【Fターム(参考)】
3C020XX06
5E319AA01
5E319CC22
5E319CD13
5E319GG09
(57)【要約】
【課題】
プリント基板に部品や線材を半田付けする際や、趣味の工作等で2つの物品を接着する様な場合に、その位置決めを容易且つ正確に行なう事ができる部品位置決め具を安価に製作する。
【解決手段】
テーブル1とアーム3とそれらの接続部5と、部品押え4を有し、部品押え4の鏡像防止部43と押さえた部品(図示無し)で成す先端角を、所要の視点位置から、押さえた部品の鏡像が前記部品押え4の鏡像防止部43に見えない角度にし、部品押え4に押さえた部品の映り込みが無く、部品押点が狭く位置決めがし易く、製作工数が少なく安価な部品位置決め具を得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーブルとアームと部品押えを有し、
前記部品押えの鏡像防止部と、押さえた部品で成す先端角を、
所要の視点位置から、前記押さえた部品の鏡像が前記部品押えの鏡像防止部に見えない角度にした事、
又は、前記に加えて、
所要の視点位置から押さえた部品が見易くなる様に、鏡像防止部端面の突出部を削った事
を特徴とする部品位置決め具。
【請求項2】
請求項1の部品位置決め具に於いて、
部品押え又はアームの何れか、又は両方に、
貫通孔を設けた事を特徴とする部品位置決め具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、部品を板状の物品に半田付けや接着剤等で固定する際に、部品の位置決めを容易にする為の部品位置決め具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に電子回路は配線パターンを有するプリント基板に部品を半田付けして製作する。回路試作の為にこれを手作業による半田付けで行なう場合がある。
【0003】
しかし、近年多用される様になった表面実装部品は小さく熱に弱いので、半田付けを手速く行なう必要があり、その位置決めを正確に行なうには熟練した技能が必要である。
同様に、回路変更の為にプリント板を改造する場合があるが、ピン間が狭い表面実装部品の特定のピンに配線材を半田付けするのにも熟練した技能を要する。
【0004】
部品を容易且つ正確に位置決めして固定(クランプ)する為の道具として特許文献1を実用化した非特許文献1の
図2のSMDクランプがある。
これは目的を達するには良く出来ており、使用者からは好評を得ている。
【0005】
しかし、部品位置決め具としてはクランプする対象が小形になる程部品位置決め具の部品押えに対する要件は厳しくなる。
小形部品の一例として
図3に示す様な形状で種々のサイズのチップ部品がある。具体例として1608サイズと呼ばれるL=1.6mm、W=0.8mm、P=1.0mmのチップ抵抗やチップコンデンサ、1005サイズと呼ばれるL=1.0mm、W=0.5mm、P=0.5mmのチップ抵抗やチップコンデンサがあり、その固定はし難い。
他にも2012、3216、5750等、種々のサイズがある。
【0006】
線径の小さい電線等を含むその他の小形部品の固定も同様にし難く、本願では以降これらをまとめて小形部品と呼ぶものとし、図面では便宜上チップ部品で表示する。
これらの小形部品のクランプに対して、部品位置決め具として以下の要件がある。
【0007】
(a)部品押え端面の幅を狭める為に切削が必要
図4に示す様に、小形部品7を部品取り付け対象6であるプリント板にクランプして半田付けする場合、それらの接触部である部品押点45の部品押え4の厚み方向(
図4上で左右方向)の大きさは部品押え4の厚みになる。
小形部品7の端子71に半田11の様に半田付けする場合、部品押え4の先端が端子71に触れると、半田ゴテ(図示無し)の熱は端子71から部品押え4に逃げて半田付けがし難くなり、さらには半田付けの品質が落ちる場合もある。
【0008】
その様な事故を防ぐ為には、例えば小形部品7がチップ部品であれば
図3におけるチップ部品のP寸法より部品押え4の先端の厚みを小さくし、部品押点45の厚み方向の大きさを充分小さくする必要がある。
その為に、部品押え4だけを別に製作してアーム3と結合させる方法があるが、その為の構造が複雑になり、組み立て精度も高い必要があり、コストアップになる等の弊害が伴う。
【0009】
非特許文献1のSMDクランプでは
図5の様に部品押え4の裏面を切削部42の様に斜めに削って部品押点45の厚さ方向の大きさを小さくしている。
あるいは、
図6の様に部品押え4の裏面を切削部42の様に段差を付けて削っても良い。
【0010】
しかし、通常の板金加工では素材をレーザーカットや打ち抜き加工で切り出し、必要に応じてバリ取り処理をし、曲げ加工するだけであるが、部品押えを薄くする為の
図5や
図6の様な切削加工は手作業の為多くの手間が掛かり、多数製作する際には製品の均質化の妨げにもなり、製作を請け負う事を忌避する製造業者も多いのが実状である。
【0011】
(b)部品の映り込み防止対策が必要
小形部品を手作業で半田付けするには、前記した様に、部品押えを部品端子に接触させない為にも、部品に対する押さえ位置の決定も重要である。
しかし、ステンレス等の様に滑らかな表面を持つ材料で製作された部品押えでは、その表面が反射面となり鏡として働くので、作業者からは部品が鏡像として見える。
即ち、部品押えに部品が映り込んで部品との境界が判り難くなり、部品に対する部品押えの位置決めがし難くなる。
【0012】
部品の映り込みに関して
図7で説明する。
ここで、本願では部品押えの反射面41と小形部品7の表面(上面)とで成す角を先端角と呼ぶものとする。
図7では部品押え4の反射面41と小形部品7の先端角はαである。
又、鏡像が先端角αに対して、鏡像が見える範囲を鏡像可視範囲、鏡像が見えない範囲を鏡像不可視範囲と呼ぶものとする。
【0013】
一般的に知られた「光の反射の法則」により、反射面41より右側の小形部品7に対して鏡像9が出来る。これは反射面41の任意位置に於ける法線に対して、小形部品7の表面からの光の入射角とその反射光の反射角が等しい事に因るものであり、
図7に於いて小形部品7の右端は法線1に対しては視点1、法線2に対しては視点2、法線3に対しては視点3で鏡像9が見える。
【0014】
例えば法線2に於ける小形部品7の表面からの光の入射角θ2と視点2への光の反射角θ2は等しい。法線1、法線3においても同様であり、
図7では視点1から視点3を含み、約90度の先端角αのほぼ全域に於いて、鏡像可視範囲であり、部品押えの位置決めがし難くなる事が判る。
【0015】
その部品映り込み防止の為に、部品押えの表面(反射面)に艶消し塗装、ヘアライン処理、サンドブラスト処理等、何らかの処理を施す方法がある。
因に非特許文献1のSMDクランプでは、
図8の様に部品押え4に刻印パンチで波状の凹凸を設けて鏡像防止部43として部品映り込み防止をしている。
しかし、前記の何れの方法を用いても手間が掛かりコストアップの要因になる。
【0016】
なお、5750サイズ等の比較的大形の部品や、多ピンのSOPやSSOPと呼ばれる表面実装形のICでは、部品押えと実際の半田付けを行なう端子の距離が大きく部品押えと部品端子の接触や、映り込みは問題にならないので、前記(a)、(b)の問題は無く、部品押えに特別な工夫は必要無い。
従って、以降本願の説明は主として小形部品を対象として行なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【0018】
【非特許文献1】表面実装はんだ付け用ツール「SMDクランプ」 有限会社 プロエクシィ http://www.proxi.co.jp/products/pamphlet_smd_clamp.htm
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
解決しようとする課題は、部品を板状の物品に半田付けや接着剤等で固定する際に用いる部品位置決め具において、部品押さえ部の狭小化と部品映り込み防止の為の方法を容易にして、安価な部品位置決め具を得る事である。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本願発明の部品位置決め具は部品押えと、部品押え貫通孔を設けたテーブルと、前記部品押えを支持するアームと、前記テーブルと前記アームを結合する接続部等で構成し、部品と部品取り付け対象を位置決めした状態で挟み込んで相対位置を保持(以降クランプと呼ぶ場合がある)させるものであり、対象部品に対する部品押え又はその先端部の傾きに所要の角度を与える事により、部品を辺又は点で押さえ、作業する視点での部品の映り込みを防止する。
さらに、部品押えやアームに貫通孔を設ける事により、部品のみならず周辺の映り込みも防止でき、且つ部品押えの裏面側の視界も確保でき、作業がし易くなる。
【発明の効果】
【0021】
本願発明の部品位置決め具は、単純な構造で加工が容易であり、部品押えと部品との接触部が小さく部品押点の位置決めが容易で、且つ部品の映り込み防止も可能である、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図4】加工無しの部品押えで小形部品を押さえた場合の一例である。
【
図5】切削加工した部品押えで小形部品を押さえた場合の一例である。
【
図6】切削加工した部品押えで小形部品を押さえた場合の一例である。
【
図8】凹凸加工による部品押えへの部品映り込み防止例である
【
図10】部品押え端面位置と鏡像不可視範囲の説明図である。
【
図12】先端角135度の場合の鏡像不可視範囲の説明図である。
【
図16】部品押え端面の角に対する切削加工の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本願実施の最良の形態を実施例で示す。
なお、本願発明は主として部品位置決め具に於ける部品押えに関するものである。
部品押え以外の部分は特許文献1の
図1~
図16に類する何れでも良いので、以降の実施例としての説明や関連図面では、部品位置決め具全体としては特許文献1の
図1の形態とし、記載は主として部品押えを中心に行なっている。
【0024】
なお、本願の対象は部品を板状の物品に半田付けや接着剤等で固定する際に用いる部品位置決め具であるが、主な適用先はプリント基板に部品や線材を半田付けする際と考えられるので、以下の実施例は主としてプリント基板への部品の半田付けで示すが、その他へも同様に適用可能である。
【0025】
又、本願の内容は公知では無い故に、説明に必要な用語も一般に知られたものが無い場合があるので、必要に応じて用語を定義する。
さらに、以下で記述する実施例はあくまでも「例」であり、同等機能を実現する方法にはそれらから組み合わせの変更や応用、派生、類推される種々のバリエーションが考えられるが、発明が示す原理に基づく限りはそれらは全て本願の範囲に含まれるものとする。
【実施例0026】
図9は本願の請求項1の部品位置決め具の部品押えの実施例であり、(a)は部品押え4の先端部を曲げて先端角αを確保し、鏡像防止部43としたものであり、(b)は部品押え4全体で先端角αを確保し鏡像防止したものであり、何れも部品押え4を除けば全体としての形状は
図1の様なイメージである。
なお、(a)において、鏡像防止部43の長さLは、対象とする小形部品7の長さと同等又はそれ以上有れば良く、そうすれば小形部品7が鏡像防止部43に映り込む事が無い様にする事ができる。
【0027】
前記の単純な構造による主な効果は以下の3点であり、従来の問題を完全に解決するものである。
(1)部品上方の視点から部品の鏡像が見えない、映り込み防止効果がある。
(2)部品押えの端面と裏面(反射面の反対面)とで成す辺又は点で部品を押さえるので、小形部品に対しても部品押えの位置決めが容易。
(3)切削箇所が無く製作が容易。
【0028】
なお、
図9(b)は部品押え4全体を鏡像防止部としたものであり、
図9(a)より折曲げが少なく加工の手間が少ない。
但し、
図9(c)の様に弊害として、小形部品7に隣接して高さが大きい部品10が有ると部品押え4が小形部品7に届かない場合が出て来る。
一方(a)ではその様な弊害は無い。
図9(a)、(b)何れでも本願の目的は達成できるが、実用的には(a)の方が優れているので、以降の説明は主として(a)の形態で行なう。
【0029】
先ず
図9(a)(b)について(1)の部品映り込み防止効果を説明する。
最初にその前提条件について
図10で説明する。
部品押え4の反射面41と小形部品7の表面との先端角がαの場合に、部品押え端面の位置がA点とB点の場合が考えられる。
【0030】
部品押え端面がB点となるのは、
図14の様に部品押え端面44を平面のままにする場合であり、A点あるいはA点とB点の間になるのは、
図15の様に小形部品7を確実にクランプする為に、部品押え端面44にV字状の切り欠きや、円や楕円の一部分等の形状の切り欠き(図示無し)を設けた場合であり、部品押え4の板厚と切り欠きの形状と小形部品7の幅寸法との相対関係でA点からB点の何れの位置になるかが決まる。
【0031】
「鏡の原理」で良く知られている様に、小形部品7の上面の鏡像9は反射面41に対する線対称位置に生じる。
その場合、部品押え端面位置がA点の場合の鏡像不可視範囲は視点Aを境界としてβAであり、部品押え端面位置がB点の場合の鏡像不可視範囲は視点Bを境界としてβBであり、
図10より、βA<βBである。
【0032】
本願の目的は鏡像不可視範囲を可能な限り広く確保することであり、先端角の大きさが同じ場合であれば、部品押え端面の位置がA点の場合が鏡像不可視範囲が最小となる最悪条件と言える。
即ち、部品押えの反射面41が小形部品7の上面と接するものとして鏡像不可視範囲を検討すれば良く、本願での以降の説明はその様にするものとする。
【0033】
図11で
図9(a)の部品映り込み防止の原理を説明する。
鏡像防止部43の反射面41と小形部品7上面との先端角をαとし、反射面41の端であるA点の法線を法線1とする。
「光の反射の法則」に従って、法線1に対して小形部品7の上面からの光の入射角θ1は反射角θ1で反射して視点1に届く。
同様に法線2では小形部品7上面右端の光が入射角θ2、反射角θ2で反射して視点2に届く。
【0034】
視点1を境界として視点0側には反射面41による小形部品7の上面からの光の反射光が届く事はなく、即ち鏡像不可視範囲βとなり、この範囲では鏡像は見えないのであり、これが本願発明による映り込み防止効果である。
【0035】
角度の単位を[度]とすると、
図11から先端角αと鏡像不可視範囲βの関係は、以下の式になる事は明らかである。
α=β/2+90 [度] ・・・ (1)式
又は、
β=(α-90)×2 [度] ・・・ (2)式
従って、所要(仕様)の鏡像不可視範囲βに応じて先端角がαとなる様に部品押え4、あるいは鏡像防止部43を製作すれば良い。
【0036】
一例として、
図12にα=135度、β=90度の場合を示す。
小形部品7を真上から見た視点4からは、鏡像防止部43への部品の映り込みが無く、鏡像が見えないので目的を達成できる。
【0037】
図13で鏡像不可視範囲を要する中で最も高さが小さい部品に合わせて先端角を決めれば、それより部品高さが大きい部品についても鏡像不可視範囲が確保出来る事を説明する。
図13において、最も高さが小さい部品に合わせて先端角をα1とすると、それより高さが高い部品に対してはアーム3が角度θだけ持ち上がって先端角がα2になったとすると、α2は
α2=α1+θ ・・・ (3)式
になる。
従って、(2)式より、鏡像不可視範囲βは2θだけ大きくなるので、映り込み防止効果が保たれる事が判る。
【0038】
図9(b)は(a)の鏡像防止部43をそのまま部品押え4全体に置き換えたものと見なせるので、同様に部品映り込み防止効果もある事が判る。
【0039】
次に、(2)の小形部品に対しても部品押えの位置決めが容易である事を説明する。
図4では部品押え端面44がそのまま小形部品7に当たるので部品押点45が広くなったので切削加工が必要になった。
一方
図9(a)、(b)では先端角αを設ける事により、部品押え4の端面と裏面(反射面の反対面)とで成す辺又は点で部品を押さえるので、小形部品に対して部品押えの位置決めが容易になるのは明らかである。
【0040】
図14は
図9(a)が辺で部品を押さえる場合の例である。
部品押え端面44には切り欠きを入れていないので、部品押点45は部品押え4の端面44と裏面(反射面の反対面)とで成す辺で小形部品7を押さえている事が
図14で判る。
【0041】
図14の左側面図において、部品押点45は小形部品7の
図14における左右寸法に対して充分小さく、切削で部品押え4の厚さを小さくするのと同様の効果を得る事ができる。
この事は
図9(b)においても全く同様である。
【0042】
図15は
図9(a)が点で部品を押さえる場合の例である。
図15は部品押え端面44にV字形の切り欠きを入れたものであり、部品押点45はV字形の端面と部品押え裏面(反射面の反対面)とで成す辺と、小形部品7の正面図における上側両端辺との2つの交点が部品押点45となって小形部品7を押さえている事が判る。
【0043】
図15の左側面図において、部品押点45は小形部品7の
図15における左右寸法に対して充分小さく、切削で部品押え4の厚さを小さくするのと同様の効果を得る事ができる。
この事は切り欠きの形状がV字状以外の円や楕円の一部等(図示無し)でも同様であり、
図9(b)においても全く同様である。
【0044】
図9(a)、(b)の部品押えを有する部品位置決め具において、部品押えを薄くする為の
図5や
図6の様な切削加工や、映り込み防止の為の
図8の様な刻印パンチ加工やサンドブラスト等の加工が不要である事から、(3)の製作が容易である事については明らかである。
【0045】
以上の説明から、実施例1の部品位置決め具は一見単純な工夫であるが、従来無かった方法であり、一石三鳥とも言える大きな効果がある発明である事が判る。