(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101441
(43)【公開日】2023-07-21
(54)【発明の名称】吸音型透過音式耳栓II
(51)【国際特許分類】
A61F 11/08 20060101AFI20230713BHJP
G10K 11/16 20060101ALI20230713BHJP
G10K 11/162 20060101ALI20230713BHJP
G10K 11/168 20060101ALI20230713BHJP
【FI】
A61F11/08
G10K11/16 120
G10K11/162
G10K11/168
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022015958
(22)【出願日】2022-01-08
(71)【出願人】
【識別番号】517273788
【氏名又は名称】合資会社加藤製作所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 峰男
【テーマコード(参考)】
5D061
【Fターム(参考)】
5D061AA04
5D061BB31
(57)【要約】
【課題】 聴覚過敏の患者の方々が、日常生活において聴く、体に障る低周波音・中周波音・高周波音の音を、本来の自然な柔らかい音として再現し、それを聴き取ることが出来る吸音型透過音式耳栓IIを提供する事を課題とする。
【解決の手段】 吸音型透過音式耳栓II1は、円柱形をした耳栓2を耳の外耳道に挿入保持させ、耳栓2の他端と外耳孔の外部に開かれた孔と、耳介が繋がる部分を外耳孔端部とみなし、その端部と形状を合わせた吸音板A3とを外耳道の延長線上の位置で接着したもので構成する。前記吸音型透過音式耳栓II1は、吸音板A3が耳の外部に開かれた孔を塞ぐことによって、音の回折を防ぐことができ、又、音波のエネルギーを熱エネルギーに変換し、響きを低減させる。よって前記吸音型透過音式耳栓II1は、透過音だけを外耳道から鼓膜へ直に伝えることができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱形をしたソフトで圧迫感の無い材質の耳栓を指で押さえて細くし、前記耳栓を人の耳の外耳道に挿入し、ゆっくりと膨らんでぴったりと外耳道に保持され、又、外耳孔の外部に開かれた孔と、耳介が繋がる部分を外耳孔端部とみなし、その端部と形状を合わせ、且つ外耳孔端部の外側に位置する為、耳介が外耳孔端部と繋がる部分との干渉を避ける為の切り欠き部を有した物を高周波音対策として、耐摩耗性に優れたゴム板を吸音板Aとして成形し、この前記吸音板Aに前記耳栓の外部に面した端面を外耳道の延長線上の位置で接着した物を吸音板付耳栓とし、前記吸音板付耳栓は前記耳栓が外耳道にぴったり保持され、前記吸音板Aが、耳の外部に開かれた孔を塞ぐことによって音の回折を防ぎ得るよう構成したことを特徴とする吸音型透過音式耳栓II。
【請求項2】
請求項1にて記載の吸音型透過音式耳栓IIにおける前記吸音板Aの代わりに、吸音は周波数帯域によって影響されるので、低周波音・中周波音対策として、振動吸収性と弾性に優れたゴム板を吸音板Bとして、前記吸音板Aと同じ手法で作製し、前記吸音板Bと前記耳栓は請求項1と同一の手法で成形・接着した物を吸音板付耳栓とし、前記吸音板付耳栓は前記耳栓が外耳道にぴったり保持され、前記吸音板Bが耳の外部に開かれた孔を塞ぐことによって音の回折を防ぎ得るように構成したことを特徴とする吸音型透過音式耳栓II。
【請求項3】
請求項1及び請求項2に記載の吸音型透過音式耳栓IIにおける前記吸音板A・前記吸音板Bと前記耳栓を、まず、前記吸音板Aと前記吸音板Bを同一形状面で合わせて接着し、これを低周波音・中周波音・高周波音対策の吸音板Cとし、これを前記吸音板Bだった面と前記耳栓は、請求項1と同一の手法で成形・接着した物を吸音板付耳栓とし、前記吸音板付耳栓は前記耳栓が外耳道にぴったり保持され、前記吸音板Cが耳の外部に開かれた孔を塞ぐことによって音の回折を防ぎ得るように構成したことを特徴とする吸音型透過音式耳栓II。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、聴覚過敏の患者の方々並びに防音効果を求める方々に好適な吸音型透過音式耳栓IIに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に耳栓とは、工場・道路工事の作業現場等、騒音の発生する所で、耳の負担を軽くする為に、防音・遮音効果を求めて使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、聴覚過敏の患者の方々にとって、日常生活で聴く話し声・新聞をめくる音・ドアの開閉の音等に対して、低周波音・中周波音の聴力が低下していると、高周波音の音に対して正常な聴力を維持している場合でも、聴覚が低下していることによって、高周波音が割れたように聴こえたり、音が体に沁みるように不快感を伴って聴こえたり、酷くなると精神安定剤を服用しなければならないという問題があった。
【0004】
又、聴力検査において、低周波音・中周波音・高周波音いづれにも正常な聴力が確認され、且つ、鼓膜に異常が診られなくても日常生活における車の走行音・工場の機械・圧縮機・家電製品等を音源とする低周波音・中周波音が外耳より空気の振動として外耳道を通って耳に侵入し、音圧を生じて粗く聴こえたり、更に悪化すると音源を特定できない騒音となって聴こえてくる。
この時の症状としては、外耳道の骨部と鼓膜とで閉管と考えられ、共鳴器として共鳴する周波数付近の感度を上げている為、音が響き、外耳道の軟骨部と骨部の境目に炎症をおこし、ピリピリした痛みを伴い、痛みが継続する。しかし、低周波騒音と人体への影響との関連が余り知られていない為、治療としては傷や細菌等が原因で起きる一時的な外耳道炎の場合と同じように、ステロイド軟膏の塗布等、常用することが好ましくないと言われている方法を取らざるを得ない問題があった。
【0005】
これらを解決したのが先に開発した吸音型透過音式耳栓でありましたが、新たな問題として前記吸音型透過音式耳栓に使われる外耳孔スポンジは、個々の患者さんの外耳孔に相似の形に成形する必要がある為、対面で作製・調整しなければならなく、しかも、相当の時間を要する為、普及に問題があった。
【0006】
又、食事や会話の時に噛む等の動作によって、下顎骨が左右に動く為、耳介も同様に揺らぐことによって、前記吸音型透過音式耳栓が外耳孔から揉み出される形となり、そこに隙間が出来る為、音の回折が起きる原因となる問題があった。
【0007】
本発明は上記問題に鑑み、吸音機能を持った高周波音対策用と低周波音・中周波音対策用と低周波音・中周波音・高周波音対策用のそれぞれの吸音板付耳栓を使用し、前記吸音板付耳栓と鼓膜と外耳道とで耳を吸音室と見立て、その働きによって、薬の服用及び塗布等を必要とせず、しかも本来の自然な柔らかい音を再現し、それを聴き取ることが出来る3種類の吸音型透過音式耳栓IIを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1記載の吸音型透過音式耳栓IIは、円柱形をしたソフトで圧迫感のない材質の耳栓を指で押さえて細くし、前記耳栓を人の耳の外耳道に挿入し、ゆっくりと膨らんでぴったりと外耳道に保持され、又、外耳孔の外部に開かれた孔と、耳介が繋がる部分を外耳孔端部とみなし、その端部と形状を合わせ、且つ、外耳孔端部の外側に位置する為、耳介が外耳孔端部と繋がる部分との干渉を避ける為の切り欠き部を有した物を高周波音対策として、耐摩耗性に優れたゴム板を吸音板Aとして成形し、この前記吸音板Aに前記耳栓の外部に面した端面を外耳道の延長線上の位置で接着した物を、吸音板付耳栓とし、前記吸音板付耳栓は、前記耳栓が外耳道にぴったり保持され、尚且つ前記吸音板Aが耳の外部に開かれた孔を塞ぐことによって、音の回折を防ぎ得るように構成したことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の吸音型透過音式耳栓IIは、請求項1に記載の吸音型透過音式耳栓IIにおける前記吸音板Aの代わりに、吸音は周波数帯域によって影響されるので、低周波・中周波対策として振動吸収性と弾性に優れたゴム板を吸音板Bとして、前記吸音板Aと同じ手法で作製し、前記吸音板Bと前記耳栓は、請求項1と同一手法で成形・接着した物を吸音板付耳栓とし、前記吸音板付耳栓は前記耳栓が外耳道にぴったり保持され、尚且つ前記吸音板Bが耳の外部に開かれた孔を塞ぐことによって、音の回折を防ぎ得るように構成したことを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の吸音型透過音式耳栓IIは請求項1及び請求項2に記載の吸音型透過音式耳栓IIにおける前記吸音板A・前記吸音板Bと前記耳栓を、まず、前記吸音板Aと前記吸音板Bを同一形状面で合わせて接着し、これを低周波音・中周波音・高周波音対策の吸音板Cとし、これを前記吸音板Bだった面と前記耳栓は、請求項1と同一の手法で成形・接着した物を吸音板付耳栓とし、前記吸音板付耳栓は前記耳栓が外耳道にぴったり保持され、尚且つ前記吸音板Cが耳の外部に開かれた孔を塞ぐことによって、音の回折を防ぎ得るように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、次のような効果を奏する。
請求項1に記載の吸音型透過音式耳栓IIによると、前記耳栓に円柱形をしたソフトで圧迫感の無い材質を使用する為、指で押さえて細くし、外耳道に挿入し、ゆっくり膨らんで体温で柔らかくもなる為、外耳道にぴったり保持される。
【0012】
前記吸音板Aは外耳孔端に位置し、食事や会話の時に噛む等の動作によって下顎骨が左右に動き、耳介も同様に揺らぎ、前記吸音板Aも外耳孔に密接している為、追随して揺らぐ、しかし、前記吸音板Aは、前記耳栓と接着しており、前記耳栓の他端はぴったり外耳道に保持されているので、揺らぎに対してその部分でしなり、下顎骨の動きに左右されず、外耳孔と密接した状態を保つ事が出来る為、音の回折を防ぐ事が出来る。
【0013】
よって、外部の音は、前記吸音板Aを通して透過音だけを外耳道を通して聴くことが出来る。
【0014】
又、高周波音対策として耐摩耗性に優れたゴム板を前記吸音板Aとして使用する為、高周波音の音波のエネルギーが前記吸音板Aに接触することによって、その音が熱エネルギーに変換されて響きを低減させ、透過音として本来の自然な柔らかい音を再現することが出来る。
【0015】
これによって、聴覚過敏の患者の方々が聴く高周波音が割れたように聴こえたり、音が体に沁みるように不快感を伴って聴こえたりしなくなる為、精神安定剤の服用も不用となる。
【0016】
又、同耳栓は前記吸音板Aで耳を塞いでいるので、耳の中に籠った汗などの湿気を前記耳栓が吸収することが出来る。
【0017】
又、前記吸音板Aは切り欠き部がある為、同耳栓の左用・右用の区別がしやすく、且つ、同耳栓の外耳孔端への形状に合わせた挿入が容易である。
【0018】
請求項2に記載の吸音型透過音式耳栓IIによると、前記吸音板Bは切り欠き部がある為、同耳栓の左用・右用の区別がしやすく、且つ、同耳栓の外耳孔端への形状に合わせた挿入が容易である。
【0019】
又、前記吸音板Bは耳の外部に開かれた孔を塞ぐことが出来るので、音の回折を防ぐことが出来る。よって外部の音は、前記吸音板Bを通して透過音だけを外耳道を通して聴くことが出来る。
【0020】
又、低周波音・中周波音対策として、振動吸収性と弾性に優れたゴム板を前記吸音板Bとして使用する為、低周波音・中周波音の音波のエネルギーが前記吸音板Bに、吸収・分解され、その音が熱エネルギーに変換されて響きを低減させ、透過音として本来の自然な柔らかい音を再現することが出来る。
【0021】
これによって、聴覚過敏の患者の方々が聴く音が粗く聴こえたり、音源が特定できないように聴こえる騒音は無くなり、したがって外耳道に起こしていた炎症やピリピリした痛みもなくなる為、外耳道にとって常用することが好ましくない、ステロイド軟膏の塗布等の治療も不用となる。
【0022】
請求項3に記載の吸音型透過音式耳栓IIによると、前記吸音板Cは切り欠き部がある為、同耳栓の左用・右用の区別がしやすく、且つ、同耳栓の外耳孔への形状に合わせた挿入が容易である。
【0023】
又、前記吸音板Cは、耳の外部に開かれた孔を塞ぐことが出来るので、音の回折を防ぐことが出来る。よって外部の音は、前記吸音板Cを通して透過音だけを外耳道を通して聴くことが出来る。
【0024】
又、低周波音・中周波音・高周波音対策として使用される、前記吸音板Cは請求項1に記載の前記吸音板Aと、請求項2に記載の前記吸音板Bによって構成される為、音波のエネルギーが接触・吸収・分解され、その音が熱エネルギーに変換されて響きを低減させ、透過音として本来の自然な柔らかい音を再現することが出来る。
【0025】
これによって、日常生活において、聴覚過敏の患者の方々が聴いている、生理的に近づくことが困難であった様々な音源に対しても自然と近づくことが出来るようになり、音に対して恐怖感を抱くことがなくなる。
【0026】
又、聴覚過敏の患者の方々が、聴力検査において、正常な聴力と診断されていても、一つ一つの音が響いて聴こえていて、それに反応して検査を受けている状態での正常な聴力であって、実際は一つ一つの音が響きあって重なりあっている為、小さな音や、小さな会話の声をハッキリと聴き取る事が出来ない場合があったが、吸音板を介する事によって聴き取れる様になった。
【0027】
聴覚過敏の患者の方々は、耳に異常がある為、異常のみられない方々と比べ、音高や音圧が同じであっても、音色の異なる音としての聴こえ方をしますが、吸音板を介することによって、若干、音は小さく聴こえますが、異常のみられない方々と同じ様な音色が得られます。
【0028】
上記記載の事項は、聴覚過敏の患者の方々の症状が、吸音板を介すことによって得られる効果であり、同じ吸音板を使用しても、耳に異常を感じてなく、防音効果を求めたい方々にとっては、3種類の吸音板とも同じような防音効果があり、吸音や遮音の作用によって音圧が軽減され、透過音として従来の音質で音の大きさだけが軽減された状態で聴きとる事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】 一事例による吸音型透過音式耳栓IIを人の左耳に装着した時の外観図である。
【
図2】 高周波音対策用の同吸音板付耳栓を右耳に装着した時の耳の構造の一部を表す断面図である。
【
図3】 低周波音・中周波音対策用の同吸音板付耳栓を右耳に装着した時の耳の構造の一部を表す断面図である。
【
図4】 低周波音・中周波音・高周波音対策用の同吸音板付耳栓を右耳に装着した時の耳の構造の一部を表す断面図である。
【
図5】 高周波音対策用の同吸音板付耳栓の左図は平面図、右図は正面図である。
【
図6】 低周波音・中周波音対策用の同吸音板付耳栓の左図は平面図、右図は正面図である。
【
図7】 低周波音・中周波音・高周波音対策用の同吸音板付耳栓の左図は平面図、右図は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0031】
図1は一実施例による吸音型透過音式耳栓II(吸音板付耳栓)を人の左耳に装着した時の外観図。
図2は高周波音対策用の同吸音板付耳栓を右耳に装着した時の耳の構造の一部を表す断面図。
図3は低周波音・中周波音対策用の同吸音板付耳栓を右耳に装着した時の耳の構造の一部を表す断面図。
図4は低周波音・中周波音・高周波音対策用の同吸音板付耳栓を右耳に装着した時の耳の構造の一部を表す断面図。
図5は高周波音対策用の同吸音板付耳栓の左図は平面図、右図は正面図。
図6は低周波音・中周波音対策用の同吸音板付耳栓の左図は平面図、右図は正面図。
図7は低周波音・中周波音・高周波音対策用の同吸音板付耳栓の左図は平面図、右図は正面図をそれぞれ示している。
【0032】
図1ないし
図7において、吸音板付耳栓1は高周波音対策用として、耳栓2と耐摩耗性に優れたゴム板の吸音板A3とを備え、
図2および
図5に準じて接着し構成する。
【0033】
又、同吸音板付耳栓1は低周波音・中周波音対策用として、耳栓2と振動吸収性と弾性に優れたゴム板の吸音板B4とを備え、
図3および
図6に準じて接着し構成する。
【0034】
又、同吸音板付耳栓1は低周波音・中周波音・高周波音対策として、耳栓2と前記吸音板A3と前記吸音板B4とを備え、
図4および
図7に準じて接着し構成する。
【符号の説明】
【0035】
1 吸音型透過音式耳栓II(吸音板付耳栓)
2 耳栓
3 吸音板A
4 吸音板B