(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101472
(43)【公開日】2023-07-21
(54)【発明の名称】発光素子及び発光素子用多環化合物
(51)【国際特許分類】
C07F 5/02 20060101AFI20230713BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20230713BHJP
H10K 50/11 20230101ALI20230713BHJP
H10K 50/12 20230101ALI20230713BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20230713BHJP
H10K 85/00 20230101ALI20230713BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20230713BHJP
H10K 101/10 20230101ALN20230713BHJP
【FI】
C07F5/02 D CSP
H05B33/14 B
H10K50/10
H10K50/11
H10K50/12
H10K59/10
H10K85/00
C09K11/06 660
C09K11/06 690
H10K101:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001312
(22)【出願日】2023-01-06
(31)【優先権主張番号】10-2022-0003648
(32)【優先日】2022-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】512187343
【氏名又は名称】三星ディスプレイ株式會社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Display Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】1, Samsung-ro, Giheung-gu, Yongin-si, Gyeonggi-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】早野 哲二
【テーマコード(参考)】
3K107
4H048
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC04
3K107CC21
3K107DD53
3K107DD59
3K107DD64
3K107DD68
3K107DD69
4H048AA01
4H048AA03
4H048AB90
4H048VA30
4H048VA32
4H048VA77
4H048VB10
(57)【要約】
【課題】発光効率及び素子寿命に優れた発光素子を提供する。
【解決手段】一実施例の発光素子は、発光層に特定置換基が導入されたB-N-B構造の多環化合物を含むことで高効率及び長寿命特性を示す。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される多環化合物:
<化学式1>
前記化学式1において、
Xは下記化学式2で表され、
Aは、置換または非置換の芳香族炭化水素環、または置換または非置換の芳香族ヘテロ環であり、
Ar
1は、水素原子、重水素原子、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であるか、または、これらのいずれかの炭素鎖、炭素環または複素環が、隣接する基と互いに結合して環を形成し、
Ar
2及びAr
3は、それぞれ独立して、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリールであるか、または、これらのいずれかの炭素環または複素環が、隣接する基と互いに結合して環を形成したものであり、ここで、Ar
2及びAr
3が互いに結合して環を形成することが除外されており、
Ar
4は、水素原子、重水素原子、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であるか、または、これらのいずれかの炭素環または複素環が、隣接する基と互いに結合して環を形成するか、または下記化学式2で表され、
n1は0以上3以下の整数であり、n2は0以上4以下の整数である:
<化学式2>
前記化学式2において、
Ar
5及びAr
6は、それぞれ独立して、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であるか、または、このようなアリール基またはヘテロアリール基である、Ar
5とAr
6が互いに結合して環を形成したものである。
【請求項2】
前記n2は2以上4以下の整数であり、複数のAr4のうちの少なくとも一つは前記化学式2で表される請求項1に記載の多環化合物。
【請求項3】
前記化学式2は、下記化学式2-1または2-2で表される請求項1に記載の多環化合物:
<化学式2-1>
<化学式2-2>
前記化学式2-1及び2-2において、
R
1乃至R
4は、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、置換または非置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基であり、
m1及びm2はそれぞれ独立して0以上5以下の整数であり、
m3及びm4はそれぞれ独立して0以上4以下の整数である。
【請求項4】
前記化学式1は、下記化学式3で表される請求項1に記載の多環化合物:
<化学式3>
前記化学式3において、
Y
1及びY
2は、それぞれ独立してO、S、またはNAr
7であり、
Ar
7は、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であるか、隣接する基と結合して環を形成し、
R
5及びR
6は、それぞれ独立して水素原子、重水素原子、または置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基であるか、または隣接する基と結合して環を形成し、
m5及びm6はそれぞれ独立して0以上4以下の整数であり、
Aは前記化学式1で定義した通りであり、
Ar
5及びAr
6は前記化学式2で定義した通りである。
【請求項5】
前記Y1及びY2のうち少なくとも一つはNAr7である請求項4に記載の多環化合物。
【請求項6】
前記化学式3は、下記化学式3-1乃至化学式3-3のうちのいずれか一つで表される請求項4に記載の多環化合物:
<化学式3-1>
<化学式3-2>
<化学式3-3>
前記化学式3-1乃至3-3において、
R
7乃至R
17は、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、置換または非置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、または置換または非置換の環形成炭素数6以上15以下のアリール基であり、
m7、m8、m11、m12、m16、及びm17は、それぞれ独立して0以上4以下の整数であり、
m9、m10、及びm13は、それぞれ独立して0以上3以下の整数であり、
m14及びm15は、それぞれ独立して0以上5以下の整数であり、
m7乃至m17のそれぞれが2以上の整数であれば、複数個のR
7乃至R
17はいずれも同じであるか、または少なくともいずれかが他とは異なり、
Aは前記化学式1で定義した通りであり、
Ar
5及びAr
6は化学式2で定義した通りであり、
前記化学式3-2において、Y
2aはSまたは0である。
【請求項7】
前記化学式3は、下記化学式4で表される請求項4に記載の多環化合物:
<化学式4>
前記化学式4において、
Y
3及びY
4は、それぞれ独立してCR
aまたはNであり、
R
aは、水素原子、重水素原子、置換または非置換の環形成炭素数6以上20以下のアリール基、または置換または非置換の環形成炭素数2以上20以下のヘテロアリール基であるか、または、これらのいずれかの炭素環または複素環が、隣接する基と互いに結合して環を形成したものであり、
Ar
5及びAr
6は、前記化学式2で定義した通りであり、
R
5、R
6、m5、m6、Y
1、及びY
2は、前記化学式3で定義した通りである。
【請求項8】
前記化学式4は、下記化学式4-1または4-2で表される請求項7に記載の多環化合物:
<化学式4-1>
<化学式4-2>
前記化学式4-1及び4-2において、
R
1乃至R
4は、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、置換または非置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基であり、
m1及びm2はそれぞれ独立して0以上5以下の整数であり、
m3及びm4はそれぞれ独立して0以上4以下の整数であり、
R
5、R
6、m5、m6、Y
1、及びY
2は前記化学式3で定義した通りであり、
Y
3及びY
4は前記化学式4で定義した通りである。
【請求項9】
前記化学式1は、下記第1化合物群の化合物のうちいずれか一つで表される請求項1に記載の多環化合物:
[第1化合物群]
【請求項10】
第1電極と、
前記第1電極の上に配置される第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に配置される発光層と、を含み、
前記発光層は、
請求項1乃至請求項9のうちのいずれか一項に記載の第1化合物と、
下記化学式HTで表される第2化合物と、下記化学式ETで表される第3化合物と、下記化学式D-1で表される第4化合物とのうちの少なくとも一つと、を含む発光素子:
<化学式HT>
前記化学式HTにおいて、
L
1は、直接結合(direct linkage)、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリーレン基、または置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリーレン基であり、
Ar
1aは、置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、
R
11及びR
12は、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、
e及びfは、それぞれ独立して0以上4以下の整数である:
<化学式ET>
前記化学式ETにおいて、
Z
a乃至Z
cのうちの少なくとも一つはNで、残りはCR
16であり、
R
13乃至R
16は、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、シアノ基、置換または非置換のシリル基、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基である:
<化学式D-1>
前記化学式D-1において、
Q
1乃至Q
4はそれぞれ独立してCまたはNであり、
C1乃至C4は、それぞれ独立して、置換または非置換の環形成炭素数5以上30以下の炭化水素環、または置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロ環であり、
L
21乃至L
23は、それぞれ独立して、直接結合、
置換または非置換の炭素数1以上20以下の2価のアルキル基、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリーレン基、または、置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリーレン基であり、
b1乃至b3は、それぞれ独立して0または1であり、
R
21乃至R
26は、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換または非置換のアミン基、置換または非置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換または非置換の炭素数2以上20以下のアルケニル基、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換または非置換の環形成炭素1以上30以下のヘテロアリール基であるか、または、これらのいずれかのアミン基、炭素鎖、炭素環または複素環が、隣接する基と互いに結合して環を形成し、
d1乃至d4はそれぞれ独立して0以上4以下の整数である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発光素子及び発光素子用多環化合物に関し、より詳しくは、発光材料として使用される新規の多環化合物をはじめとする複数の材料を発光層に含む発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、映像表示装置として、有機電界発光表示装置(Organic Electroluminescence Display Device)などの開発が盛んに行われている。有機電界発光表示装置などは第1電極及び第2電極から注入される正孔及び電子を発光層で再結合させることで、発光層の発光材料を発光させて表示を実現するいわゆる自発光型発光素子を含む表示装置である。
【0003】
有機電界発光素子を表示装置に応用するに当たっては、有機電界発光素子の低駆動電圧化、高発光効率化及び長寿命化が要求されており、これを安定的に具現し得る有機電界発光素子用材料の開発が持続的に要求されている。
【0004】
特に、最近は高効率の有機電界発光素子を具現するために、三重項状態のエネルギーを利用するりん光発光に関する技術や、三重項励起子の衝突によって一重項例励起子が生成される現象(Triplet-triplet annihilation、TTA)を利用した遅延蛍光発光に関する技術が開発されており、遅延蛍光現象を利用した熱活性遅延蛍光(Thermally Activated Delayed Fluorescence、TADF)材料に関する開発が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中国特許公開CN111471062
【特許文献2】中国特許公開CN113292584
【特許文献3】韓国公開特許KR10-2021-0099678
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、発光効率及び素子寿命に優れた発光素子を提供することである。
【0007】
また、本発明の目的は、発光効率及び素子寿命に優れた発光素子用材料として使用し得る多環化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施例の発光素子は、第1電極と、前記第1電極の上に配置される第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に配置される発光層と、を含み、前記発光層は、下記化学式1で表される第1化合物と、下記化学式HTで表される第2化合物と、下記化学式ETで表される第3化合物と、下記化学式D-1で表される第4化合物とのうち少なくとも一つと、を含む。
【0009】
【0010】
前記化学式1において、Xは下記化学式2で表され、Aは、置換または非置換の芳香族炭化水素環、または置換または非置換の芳香族ヘテロ環であり、Ar1は、水素原子、重水素原子、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であるか、または、これらのいずれかの炭素環または複素環が、隣接する基と互いに結合して環を形成したものであり、Ar2及びAr3は、それぞれ独立して、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であるか、または隣接する基と互いに結合して環を形成するのである。ここで、Ar2及びAr3が互いに結合して環を形成することは除外されており、Ar4は、水素原子、重水素原子、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であるか、または隣接する基と互いに結合して環を形成するのであるか、または、下記化学式2で表される。n1は、0以上3以下の整数であり、n2は、0以上4以下の整数である。
【0011】
【0012】
前記化学式2において、Ar5及びAr6は、それぞれ独立して、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であるか、または、Ar5とAr6が互いに結合して環を形成するのである。
【0013】
【0014】
前記化学式HTにおいて、L1は、直接結合(direct linkage;単結合)、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリーレン基、または、置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリーレン基であり、Ar1aは、置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、R11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、e及びfは、それぞれ独立して、0以上4以下の整数である。
【0015】
【0016】
前記化学式ETにおいて、Za乃至Zcのうち少なくとも一つはNで、残りはCR16(環形成炭素に側鎖R16が結合)であり、
R13乃至R16は、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、シアノ基、置換または非置換のシリル基、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または、置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基である。
【0017】
【0018】
前記化学式D-1において、Q
1乃至Q
4はそれぞれ独立してCまたはNであり、C1乃至C4は、それぞれ独立して、置換または非置換の環形成炭素数5以上30以下の炭化水素環、または、置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロ環であり、L
21乃至L
23は、それぞれ独立して、直接結合、
置換または非置換の炭素数1以上20以下の2価のアルキル基、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリーレン基、または、置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリーレン基であり、b1乃至b3はそれぞれ独立して0または1であり、R
21乃至R
26は、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換または非置換のアミン基、置換または非置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換または非置換の炭素数2以上20以下のアルケニル基、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または、置換または非置換の環形成炭素1以上30以下のヘテロアリール基であるか、または、これらのいずれかの炭素鎖、炭素環または複素環が、隣接する基と互いに結合して環を形成したものであり、d1乃至d4はそれぞれ独立して0以上4以下の整数である。
【0019】
一実施例において、前記n2は2以上4以下の整数であり、複数のAr4のうちの少なくとも一つは前記化学式2で表される。
【0020】
前記化学式2は、下記化学式2-1または化学式2-2で表される。
【0021】
【0022】
【0023】
前記化学式2-1及び2-2において、R1乃至R4は、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、置換または非置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基であり、m1及びm2はそれぞれ独立して0以上5以下の整数であり、m3及びm4はそれぞれ独立して0以上4以下の整数である。
【0024】
一実施例において、R1乃至R4は、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、置換または非置換のt-ブチル基、置換または非置換のフェニル基である。
【0025】
前記化学式1は、下記化学式3で表される。
【0026】
【0027】
前記化学式3において、Y1及びY2はそれぞれ独立してO、S、またはNAr7(環形成窒素に側鎖Ar7が結合)であり、Ar7は、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であるか、隣接する基と結合して環を形成するのであり、R5及びR6は、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、または置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基であるか、または、これらのいずれかの炭素環が、隣接する基と結合して環を形成したものであり、m5及びm6はそれぞれ独立して0以上4以下の整数であり、Aは前記化学式1で定義した通りであり、Ar5及びAr6は前記化学式2で定義した通りである。
【0028】
一実施例において、前記Y1及びY2のうちの少なくとも一つはNAr7である。
【0029】
前記化学式3は、下記化学式3-1乃至化学式3-3のうちの、いずれか一つで表される。
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
前記化学式3-1乃至化学式3-3において、R7乃至R17は、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、置換または非置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、または置換または非置換の環形成炭素数6以上15以下のアリール基であり、m7、m8、m11、m12、m16、及びm17は、それぞれ独立して0以上4以下の整数であり、m9、m10、及びm13は、それぞれ独立して0以上3以下の整数であり、m14及びm15は、それぞれ独立して0以上5以下の整数であり、m7乃至m17のそれぞれが2以上の整数であれば、複数個のR7乃至R17は、それぞれ互いに同じであるか異なり、Aは前記化学式1で定義した通りであり、Ar5及びAr6は化学式2で定義した通りであり、前記化学式3-2において、Y2aはSまたは0である。
【0034】
一実施例において、前記化学式3は下記化学式4で表される。
【0035】
【0036】
前記化学式4において、Y3及びY4はそれぞれ独立してCRaまたはNであり、Raは、水素原子、重水素原子、置換または非置換の環形成炭素数6以上20以下のアリール基、または置換または非置換の環形成炭素数2以上20以下のヘテロアリール基であるか、または、これらのいずれかの炭素環または複素環が、隣接する基と互いに結合して環を形成したものであり、Ar5及びAr6は前記化学式2で定義した通りであり、R5、R6、m5、m6、Y1、及びY2は前記化学式3で定義した通りである。
【0037】
前記化学式4は、下記化学式4-1または化学式4-2で表される。
【0038】
【0039】
【0040】
前記化学式4-1乃至4-2において、R1乃至R4は、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、置換または非置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基であり、m1及びm2はそれぞれ独立して0以上5以下の整数であり、m3及びm4はそれぞれ独立して0以上4以下の整数であり、R5、R6、m5、m6、Y1、及びY2は、前記化学式3で定義した通りであり、Y3及びY4は前記化学式4で定義した通りである。
【0041】
前記発光層は遅延蛍光を放出する。
【0042】
前記発光層は、前記第1化合物と、前記第2化合物と、前記第3化合物とを含む。また、前記発光層は、前記第1化合物と、前記第2化合物と、前記第3化合物と、前記第4化合物とを含む。
【発明の効果】
【0043】
一実施例の発光素子は、一実施例の多環化合物を含むことで高効率を示し、寿命特性が改善される。
【0044】
一実施例の多環化合物は、高効率及び長寿命の改善された発光素子特性を具現するための発光材料として使用される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】一実施例による表示装置を示す平面図である。
【
図2】
図1のI-I’線に対応する部分を示す断面図である。
【
図3】一実施例の発光素子を概略的に示す断面図である。
【
図4】一実施例の発光素子を概略的に示す断面図である。
【
図5】一実施例の発光素子を概略的に示す断面図である。
【
図6】一実施例の発光素子を概略的に示す断面図である。
【
図7】一実施例による表示装置を示す断面図である。
【
図8】一実施例による表示装置を示す断面図である。
【
図9】一実施例による表示装置を示す断面図である。
【
図10】一実施例による表示装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明は、多様な変更を加えることができ、多様な形態を有することができるゆえ、特定実施例を図面に例示し、本文に詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定な開示形態に対して限定しようとするのではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる全ての変更、均等物乃至代替物を含むと理解すべきである。
【0047】
本明細書において、ある構成要素(または領域、層、部分など)が他の構成要素の「上にある」、「結合される」、または「結合される」と言及されれば、それは他の構成要素の上に直接配置・連結・結合され得るか、またはそれらの間に第3の構成要素が配置され得ることを意味する。
【0048】
同じ図面符号は同じ構成要素を指す。また、図面において、構成要素の厚さ、割合、及び寸法は技術的内容の効果的な説明のために誇張されている。「及び/または」は、関連する構成要素が定義する一つ以上の組み合わせを全て含む。
【0049】
第1、第2などの用語は多様な構成要素を説明するのに使用されるが、前記構成要素は前記用語に限らない。前記用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的にのみ使用される。例えば、本発明の権利範囲を逸脱しないながらも第1構成要素は第2構成要素と命名されてもよく、類似して第2構成要素も第1構成要素と命名されてもよい。単数の表現は、文脈上明白に異なるように意味しない限り、複数の表現を含む。
【0050】
また、「下に」、「下側に」、「上に」、「上側に」などの用語は、図面に示した構成要素の連関関係を説明するために使用される。前記用語は相対的な概念であって、図面に示した方向を基準に説明される。
【0051】
「含む」または「有する」などの用語は明細書の上に記載された特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定するものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないと理解すべきである。
【0052】
異なるように定義されない限り、本明細書で使用された全ての用語(技術的及び科学的用語を含む)は、本発明の属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるようなものと同じ意味を有する。また、一般的に使用される辞書で定義された用語のような用語は、関連技術の脈絡で有する意味と一致する意味を有すると解釈すべきであって、ここで明示的に定義されない限り、過度に理想的であるか形式的な意味で解釈してはならない。
【0053】
本出願において、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上に」または「上部に」あるとする場合、これは他の部分の「直上」にある場合だけでなく、その中間にまた他の部分がある場合も含む。逆に、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「下に」または「下部に」にあるとする場合、これは他の部分の「直下」にある場合だけでなく、その中間にまた他の部分がある場合も含む。また、本出願において、「上に」配置されるとは、上部だけでなく下部に配置される場合も含む。
【0054】
本明細書において、「置換または非置換の」とは、重水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミン基、シリル基、オキシ基、チオ基、スルフィニル基、スルホニル基、カルボニル基、ホウ素基、ホスフィンオキシド基、ホスフィンスルフィド基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、炭化水素環基、アリール基、及びヘテロ環基からなる群より選択される一つ以上の置換基に置換または非置換されることを意味する。また、前記例示した置換基それぞれは置換または非置換されていてもよい。例えば、ビフェニル基はアリール基と解釈されてもよく、フェニル基に置換されたフェニル基と解釈されてもよい。
【0055】
本明細書において、「隣接する基と互いに結合して環を形成」するとは、隣接する基と互いに結合して置換または非置換の炭化水素環、または置換または非置換のヘテロ環を形成することを意味する。炭化水素環は、脂肪族炭化水素環及び芳香族炭化水素環を含む。ヘテロ環は、脂肪族ヘテロ環及び芳香族ヘテロ環を含む。炭化水素環及びヘテロ環は、単環または多環である。また、互いに結合して形成される環は、他の環と連結されてスピロ構造を形成してもよい。
【0056】
本明細書において、「隣接する基」とは該当置換基が置換された原子と直接連結された原子に置換された置換基、該当置換基が置換された原子に置換された他の置換基、または該当置換基と立体構造的に最も隣接した置換基を意味する。例えば、1,2-ジメチルベンゼンにおける2つのメチル基は互いに「隣接する基」と解釈され、1,1-ジエチルシクロペンタンにおける2つのエチル基は互いに「隣接する基」と解釈される。また、4,5-ジメチルフェナントレンにおける2つのメチル基は互いに「隣接する基」と解釈される。
【0057】
本明細書において、ハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子が挙げられる。
【0058】
本明細書において、アルキル基は直鎖、分枝鎖、または環状である。アルキル基の炭素数は、1以上60以下、1以上50以下、1以上30以下、1以上20以下、1以上10以下、または1以上6以下である。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、i-ブチル基、2-エチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、n-ペンチル基、i-ペンチル基、ネオペンチル基、t-ペンチル基、シクロペンチル基、1-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2-エチルペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基、n-ヘキシル基、1-メチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、2-ブチルヘキシル基、シクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、4-t-ブチルシクロヘキシル基、n-ヘプチル基、1-メチルペプチル基、2,2-ジメチルヘプチル基、2-エチルヘプチル基、2-ブチルヘプチル基、n-オクチル基、tーオクチル基、2-エチルオクチル基、2-ブチルオクチル基、2-ヘキシルオクチル基、3,7-ジメチルオクチル基、シクロオクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、アダマンチル基、2-エチルデシル基、2-ブチルデシル基、2-ヘキシルデシル基、2-オクチルデシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、2-エチルドデシル基、2-ブチルドデシル基、2-ヘキシルドデシル基、2-オクチルデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、2-エチルヘキサデシル基、2-ブチルヘキサデシル基、2-ヘキシルヘキサデシル基、2-オクチルヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-イコシル基、2-エチルイコシル基、2-ブチルイコシル基、2-ヘキシルイコシル基、2-オクチルイコシル基、n-ヘンイコシル基、n-ドコシル基、n-トリコシル基、n-テトラコシル基、n-ペンタコシル基、n-ヘキサコシル基、n-ヘプタコシル基、n-オクタコシル基、n-ノナコシル基、及びn-トリアコンチル基などが挙げられるが、これに限らない。
【0059】
本明細書において、炭化水素環基は、脂肪族炭化水素環または脂肪族炭化水素環と芳香族炭化水素環が縮合された環から誘導される任意の作用基または置換基を意味する。炭化水素環基の環形成炭素数は、5以上60以下、5以上30以下、または6以上30以下である。
【0060】
本明細書において、アリール基は芳香族炭化水素環から誘導される任意の作用基または置換基を意味する。アリール基は、単環式アリール基または多環式アリール基である。アリール基の環形成炭素数は、6以上30以下、6以上20以下、または6以上15以下である。アリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ビフェニル基、テルフェニル基、クォーターフェニル基、クインクフェニル基、セクシフェニル基、トリフェニルエニル基、ピレニル基、ベンゾフルオランテニル基、クリセニル基などが挙げられるが、これに限らない。
【0061】
本明細書において、ヘテロ環基は、ヘテロ原子としてB、O、N、P、Se、Si、及びSのうちの一つ以上を含む環から誘導される任意の作用基または置換基を意味する。ヘテロ環基は、脂肪族ヘテロ環基及び芳香族ヘテロ環基を含む。芳香族ヘテロ環基はヘテロアリール基であってもよい。脂肪族ヘテロ環及び芳香族ヘテロ環は、単環及び多環であってもよい。
【0062】
ヘテロ環基がヘテロ原子を2つ以上含めば、2つ以上のヘテロ原子は互いに同じであってもよく、異なってもよい。ヘテロ環基は単環式ヘテロ環基または多環式ヘテロ環基であってもよく、ヘテロアリール基を含む概念である。ヘテロ環基の環形成炭素数は、2以上60以下、2以上30以下、2以上20以下、または2以上10以下である。
【0063】
本明細書において、脂肪族ヘテロ環基は、ヘテロ原子としてB、O、N、P、Se、Si、及びSのうち一つ以上を含む。脂肪族ヘテロ環基の環形成炭素数は、2以上30以下、2以上20以下、または2以上10以下である。脂肪族ヘテロ環基の例としては、オキシラン基、チイラン基、ピロリジン基、ピペリジン基、テトラヒドロフラン基、テトラヒドロチオフェン基、チアン基、テトラヒドロピラン基、1,4-ジオキサン基などが挙げられるが、これに限られない。
【0064】
本明細書において、ヘテロアリール基は、ヘテロ原子としてB、O、N、P、Se、Si、及びSのうち一つ以上を含む。ヘテロアリール基がヘテロ原子を2つ以上含めば、2つ以上のヘテロ原子は互いに同じであってもよく、異なってもよい。ヘテロアリール基は、単環式ヘテロ環基または多環式ヘテロ環基である。ヘテロアリール基の環形成炭素数は、2以上30以下、2以上20以下、または2以上10以下である。ヘテロアリール基の例としては、チオフェン基、フラン基、ピロール基、イミダゾール基、ピリジン基、ビピリジン基、ピリミジン基、トリアジン基、トリアゾール基、アクリジル基、ピリダジン基、ピリジニル基、キノリン基、キナゾリン基、キノキサリン基、フェノキサン基、フタラジン基、ピリドピリミジン基、ピリドピラジン基、ピラジノピラジン基、イソキノリン基、インドール基、カルバゾール基、N-アリールカルバゾール基、N-ヘテロアリールカルバゾール基、N-アルキルカルバゾール基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾイミダゾール基、ベンゾチアゾール基、ベンゾカルバゾール基、ベンゾチオフェン基、ジベンゾチオフェン基、チエノチオフェン基、ベンゾフラン基、フェナントロリン基、チアゾール基、イソオキサゾール基、オキサゾール基、オキサジアゾール基、チアジアゾール基、フェノチアジン基、ジベンゾシロール基、及びジベンゾフラン基などが挙げられるが、これに限らない。
【0065】
本明細書において、アリーレン基は、2価基であることを除いては、上述したアリール基に関する説明が適用される。ヘテロアリーレン基は2価基であることを除いては、上述したヘテロアリール基に関する説明が適用される。
【0066】
本明細書において、フルオレニル基は置換されてもよく、2つの置換基が互いに結合してスピロ構造を形成してもよい。フルオレニル基が置換される場合の例示は以下のようである。但し、これに限られない。
【0067】
【0068】
本明細書において、シリル基はアルキルシリル基及びアリールシリル基を含む。シリル基の例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、エチルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルシリル基、フェニルシリル基などが挙げられるが、これに限られない。
【0069】
本明細書において、チオ基は、アルキルチオ基及びアリールチオ基を含む。チオ基は、前記定義されたアルキル基またはアリール基に硫黄原子が結合されているものを意味する。チオ基の例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基、フェニルチオ基、ナフチルチオ基などが挙げられるが、これに限られない。
【0070】
本明細書において、オキシ基は、前記定義されたアルキル基またはアリール基に酸素原子が結合されているものを意味する。オキシ基は、アルコキシオキシ基及びアリールオキシ基を含む。アルコキシ基は、直鎖、分枝鎖、または環鎖状である。アルコキシ基の炭素数は、特に限られないが、例えば、1以上60以下、1以上20以下、または1以上10以下である。アリールオキシ基の環形成炭素数は特に限らないが、例えば、6以上60以下、6以上30以下、または6以上20以下である。オキシ基の例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、ベンジルオキシなどが挙げられるが、これに限られない。
【0071】
本明細書において、ホウ素基は、前記定義されたアルキル基またはアリール基にホウ素原子が結合されているものを意味する。ホウ素基はアルキルホウ素基及びアリールホウ素基を含む。ホウ素基の例としては、ジメチルホウ素基、ジエチルホウ素基、t-ブチルジメチルホウ素基、ジフェニルホウ素基、フェニルホウ素基などが挙げられるが、これらに限られない。
【0072】
本明細書において、アミン基の炭素数は、特に限られないが、1以上30以下である。アミン基は、アルキルアミン基及びアリールアミン基を含む。アミン基の例としては、メチルアミン基、ジメチルアミン基、フェニルアミン基、ジフェニルアミン基、ナフチルアミン基、9-メチル-アントラセニルアミン基、トリフェニルアミン基などが挙げられるが、これに限られない。
【0073】
本明細書において、アルキルチオ基、アルキルスルホキシ基、アルキルアリール基、アルキルアミノ基、アルキルホウ素基、アルキルシリル基、アルキルアミン基のうち、アルキル基は上述したアルキル基の例示のようである。
【0074】
本明細書において、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールスルホキシ基、アリールアミノ基、アリールホウ素基、アリールシリル基、アリールアミン基のうち、アリール基は上述したアリールのようである。
【0075】
本明細書において、直接結合(direct linkage)は単一結合を意味してもよい。一方、本明細書において、
及び
は連結される位置を意味する。
【0076】
以下、図面を参照して一実施例の発光素子について説明する。
【0077】
図1は、表示装置DDの一実施例を示す平面図である。
図2は、一実施例の表示装置DDの断面図である。
図2は、
図1のI-I’線に対応する部分を示す断面図である。
【0078】
表示装置DDは、表示パネルDPと、表示パネルDPの上に配置される光学層PPとを含む。表示パネルPPは発光素子ED-1、ED-2、ED-3を含む。表示装置DDは複数個の発光素子ED-1、ED-2、ED-3を含む。光学層PPは、表示パネルDPの上に配置され、外部光による表示パネルDPにおける反射光を制御する。光学層PPは、例えば、偏光層を含むか、またはカラーフィルタ層を含んでもよい。一方、図示とは異なって、一実施例の表示装置DDから光学層PPが省略されてもよい。
【0079】
光学層PPの上にはベース基板BLが配置される。ベース基板BLは、光学層PPが配置されるベース面を提供する部材である。ベース基板BLは、ガラス基板、金属基板、プラスチック基板などである。しかし、実施例はこれに限らず、ベース基板BLは無機層、有機層、または複合材料層であってもよい。また、図示とは異なって、一実施例においてベース基板BLは省略されてもよい。
【0080】
一実施例による表示装置DDは充填層(図示せず)を更に含む。充填層(図示せず)は表示素子層DP-EDとベース基板BLとの間に配置される。充填層(図示せず)は有機物層である。充填層(図示せず)は、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、及びエポキシ系樹脂のうちの少なくとも一つを含む。
【0081】
表示パネルDPは、ベース層BS、ベース層BSの上に提供される回路層DP-CL、及び表示素子層DP-EDを含む。表示素子層DP-EDは、画素画定(定義)膜PDL、画素画定(定義)膜PDL同士の間に配置される発光素子ED-1、ED-2、ED-3、及び発光素子ED-1、ED-2、ED-3の上に配置される封止層TFEを含む。
【0082】
ベース層BSは、表示素子層EP-EDが配置されるベース面を提供する部材である。ベース層BSは、ガラス基板、金属基板、プラスチック基板などでありうる。しかし、実施例はこれに限られず、ベース層BSは、無機層、有機層、または複合材料層であってもよい。
【0083】
一実施例において、回路層DP-CLはベース層BSの上に配置されるが、回路層DP-CLは複数のトランジスタ(図示せず)を含む。トランジスタ(図示せず)は、それぞれ制御電極、入力電極、及び出力電極を含む。例えば、回路層DP-CLは、発光素子ED-1、ED-2、ED-3を駆動するためのスイッチングトランジスタ、及び駆動トランジスタを含んでもよい。
【0084】
発光素子ED-1、ED-2、ED-3のそれぞれは、後述する
図3乃至
図6による一実施例の発光素子EDの構造を有する。発光素子ED-1、ED-2、ED-3のそれぞれは、第1電極EL1、正孔輸送領域HTR、発光層EML-R、EML-G、EML-B、電子輸送領域ETR、及び第2電極EL2を含む。
【0085】
図2は、画素画定膜PDLにより画定された開口部OH内に発光素子ED-1、ED-2、ED-3、の発光層EML-R、EML-G、EML-Bが配置され、正孔輸送領域HTR、電子輸送領域ETR、及び第2電極EL2は発光素子ED-1、ED-2、ED-3全体で共通層として提供される実施例を示している。しかし、実施例はこれに限られないのであり、
図2の図示とは異なって、一実施例において、正孔輸送領域HTR及び電子輸送領域ETRは、画素画定膜PDLにより画定された開口部OHの内部に、パターニングされて提供されてもよい。例えば、一実施例において、発光素子ED-1、ED-2、ED-3の正孔輸送領域HTR、発光層EML-R、EML-G、EML-B、及び電子輸送領域ETRなどは、インクジェットプリント法でパターニングされて提供されてもよい。
【0086】
封止層TFEは、有機電界発光素ED-1、ED-2、ED-3をカバーする。封止層TFEは、表示素子層DP-EDを密封する。封止層TFEは薄膜封止層である。封止層TFEは一層または複数の層が積層されている。封止層TFEは少なくとも一つの絶縁層を含む。一実施例による封止層TFEは、少なくとも一つの無機膜(以下、封止無機膜)を含む。また、一実施例による封止層TFEは、少なくとも一つの有機膜(以下、封止有機膜)、及び少なくとも一つの封止無機膜を含む。
【0087】
封止無機膜は水分/酸素から表示素子層DP-EDを保護し、封止有機膜はほこり粒子のような異物から表示素子層DP-EDを保護する。封止無機膜は、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化ケイ素、酸化チタン、または酸化アルミニウムなどを含んでもよいが、特にこれに限られない。封止有機膜は、アクリル系化合物、エポキシ系化合物などを含む。封止有機膜は、光重合可能な有機物質を含むが、特にこれに限らない。
【0088】
封止層TFEは、第2電極EL2の上に配置され、開口部OHを埋めるようにして配置される。
【0089】
図1及び
図2を参照すると、表示装置DDは、非発光領域NPXA、及び発光領域PXA-R、PXA-G、PXA-Bを含む。発光領域PXA-R、PXA-G、PXA-Bそれぞれは、発光素子ED-1、ED-2、ED-3のそれぞれから生成された光が放出される領域である。発光領域PXA-R、PXA-G、PXA-Bは、平面上にて互いに離隔されている。
【0090】
発光領域PXA-R、PXA-G、PXA-Bのそれぞれは、画素画定膜PPLで区分される領域である。非発光領域NPXAは隣り合う発光領域PXA-R、PXA-G、PXA-Bの間の領域であって、画素画定膜PDLと対応する領域である。一方、本明細書において、発光領域PXA-R、PXA-G、PXA-Bそれぞれは画素(Pixel)に対応する。画素画定膜PDLは、発光素子ED-1、ED-2、ED-3を区分する。発光素子ED-1、ED-2、ED-3の発光層EML-R、EML-G、EML-Bは、画素画定膜PDLにより区画された開口部OHにそれぞれ配置されることで互いに分け隔てられている。
【0091】
発光領域PXA-R、PXA-G、PXA-Bは、発光素子ED-1、ED-2、ED-3から生成される光のカラーに応じて、複数個のグループに区分される。
図1及び
図2に示した一実施例の表示装置DDには、赤色光、緑色光、及び青色光を発光する3つの発光領域PXA-R、PXA-G、PXA-Bを例示的に示している。例えば、一実施例の表示装置DDは、互いに区分される赤色発光領域PXA-R、緑色発光領域PXA-G、及び青色発光領域PXA-Bを含んでもよい。
【0092】
一実施例による表示装置DDにおいて、複数の発光素子ED-1、ED-2、ED-3は互いに異なる波長領域の色の光を放出する。例えば、一実施例において、表示装置DDは、赤色光を放出する発光素子ED-1、緑色光を放出する第2発光素子ED-3、及び青色光を放出する第3発光素子ED-3を含んでもよい。つまり、表示装置DDの赤色発光領域PXA-R、緑色発光領域PXA-G、及び青色発光領域PXA-Bは、それぞれ第1発光素子ED-1、第2発光素子ED-2、及び第3発光素子ED-3に対応する。
【0093】
しかし、実施例はこれに限られず、第1乃至第3発光素子ED-1、ED-2、ED-3は、同じ波長領域の光を放出するか、または、少なくとも一つが他とは異なる波長領域の光を放出してもよい。また、第1乃至第3発光素子ED-1、ED-2、ED-3は、いずれも青色光を放出してもよい。
【0094】
一実施例による表示装置DDにおける発光領域PXA-R、PXA-G、PXA-Bは、縞状に配列される。
図1を参照すると、複数個の赤色発光領域PXA-R、複数個の緑色発光領域PXA-G、及び複数個の青色発光領域PXA-Bが、それぞれ第2方向軸DR2に沿って整列されている。また、第1方向軸DR1に沿って、赤色発光領域PXA-R、緑色発光領域PXA-G、及び青色発光領域PXA-Bの順に交互に配列されている。
【0095】
図1及び
図2では、発光領域PXA-R、PXA-G、PXA-Bの面積がいずれも類似しているように示したが、実施例はこれにかぎられず、発光領域PXA-R、PXA-G、PXA-Bの面積は、放出する光の波長領域によって互いに異なり得る。一方、発光領域PXA-R、PXA-G、PXA-Bの面積は、第1方向軸DR1と第2方向軸DR2が定義する平面上から見た際の面積を意味する。
【0096】
一方、発光領域PXA-R、PXA-G、PXA-Bの配列形態は、
図1の図示に限らず、赤色発光領域PXA-R、緑色発光領域PXA-G、及び青色発光領域PXA-Bが配列される順番は表示装置DDから要求される表示品質の特性に応じて多様に組み合わせられて提供される。例えば、発光領域PXA-R、PXA-G、PXA-Bの配列形態はペンタイル(PENTILE(登録商標))配列形態であるか、ダイヤモンド(Diamond Pixel
TM(登録商標))配列の形態を有してもよい。
【0097】
また、発光領域PXA-R、PXA-G、PXA-Bの面積は互いに異なりうる。例えば、一実施例において、緑色発光領域PXA-Gが青色発光領域PXA-Bの面積より小さくてもよいが、実施例はこれに限られない。
【0098】
以下、
図3乃至
図6は、一実施例による発光素子を概略的に示す断面図である。一実施例による発光素子EDは、第1電極EL1と、第1電極EL1と向かい合う第2電極EL2と、第1電極EL1と第2電極EL2との間に配置される発光層EMLとを含む。一実施例の発光素子EDは、発光層EMLに、後述する一実施例の第1化合物を含む。
【0099】
発光素子EDは、少なくとも順次に積層される正孔輸送領域HTR、発光層EML、電子輸送領域ETRなどを含む。つまり、一実施例発光素子EDは、順次に積層された第1電極EL1と、正孔輸送領域HTRと、発光層EMLと、電子輸送領域ETRと、第2電極EL2とを含む。
【0100】
図4は、
図3と同様の積層構造において、正孔輸送領域HTRが正孔注入層HIL及び正孔輸送層HTLを含み、電子輸送領域ETRが電子注入層EIL及び電子輸送層ETLを含む、一実施例の発光素子EDの断面図を示す。また、
図5は、
図3と同様の積層構造において、正孔輸送領域HTRが正孔注入層HIL、正孔輸送層HTL、及び電子阻止層EBLを含み、電子輸送領域ETRが電子注入層EIL、電子輸送層ETL、及び正孔阻止層HBLを含む、一実施例の発光素子EDの断面図を示す。
図6は、
図4と同様の積層構造において、第2電極EL2の上に配置されるキャッピング層CPLを含む、一実施例の発光素子EDの断面図を示す。
【0101】
一実施例の発光素子EDは、発光層EMLに、後述する一実施例の第1化合物を含む。前記第1化合物は多環化合物である。一方、複数個の発光領域を含む一実施例の表示装置DD(
図2)において、少なくとも一つの発光領域を構成する発光層EMLに、後述する一実施例の多環化合物を含む。
【0102】
一実施例による発光素子EDにおいて、第1電極EL1は導電性を有する。第1電極EL1は、金属材料、金属合金、または導電性化合物から形成される。第1電極EL1は、アノード(anode)またはカソード(cathode)でありうる。しかし、実施例はこれに限られない。また、第1電極EL1は画素電極である。第1電極EL1は、透過型電極、半透過型電極、または反射型電極である。第1電極EL1は、Ag、Mg、Cu、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr、Li、Ca、LiF、Mo、Ti、W、In、Sn、及びZnのうちから選択される少なくとも一つ、これらのうちから選択される2種以上の化合物、これらのうちから選択される2種以上の混合物、またはこれらの酸化物を含む。
【0103】
第1電極EL1が透過型電極であれば、第1電極EL1は透明金属酸化物を含み、例えば、ITO(indium tin oxide)、IZO(indium zinc oxide)、ZnO(zinc oxide)、ITZO(indium tin zinc oxide)などを含む。第1電極EL1が半透過型電極または反射型電極であれば、第1電極EL1は、Ag、Mg、Cu、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr、Li、Ca、LiF/Ca(LiFとCaの積層構造)、LiF/Al(LiFとAlの積層構造)、Mo、Ti、W、またはこれらの化合物や混合物(例えば、AgとMgの混合物)を含みうる。または、第1電極EL1は、前記物質からなる反射膜や半透過膜、及びITO、IZO、ZnO、ITZOなどからなる透明導電膜を含む複数層の構造でありうる。例えば、第1電極EL1は、ITO/Ag/ITOの3層構造を有してもよいが、これに限らない。また、実施例はこれに限られず、第1電極EL1は、上述した金属材料、上述した金属材料のうちから選択される2種以上の金属材料の組み合わせ、または上述した金属材料の酸化物などを含んでもよい。第1電極EL1の厚さは、約700Å乃至約10000Åでありうる。例えば、第1電極EL1の厚さは、約1000Å乃至約3000Åであってもよい。
【0104】
正孔輸送領域HTRは第1電極EL1の上に提供される。正孔輸送領域HTRは、正孔注入層HIL、正孔輸送層HTL、バッファ層または発光補助層(図示せず)、及び電子阻止層EBLのうちの少なくとも一つを含む。正孔輸送領域HTRの厚さは、例えば、約50Å乃至約15,000Åあってもよい。
【0105】
正孔輸送領域HTRは、単一物質からなる単一層、複数の互いに異なる物質からなる単一層、または複数の互いに異なる物質からなる複数の層を有する多層構造を有する。
【0106】
例えば、正孔輸送領域HTRは正孔注入層HILまたは正孔輸送層HTLの単一層の構造を有してもよく、正孔注入物質及び正孔輸送物質からなる単一層の構造を有してもよい。また、正孔輸送領域HTRは、複数の互いに異なる物質からなる単一層の構造を有するか、第1電極EL1から順番に積層される正孔注入層HIL/正孔輸送層HTL、正孔注入層HIL/正孔輸送層HTL/バッファ層(図示せず)、正孔注入層HIL/バッファ層(図示せず)、正孔輸送層HTL/バッファ層(図示せず)、または正孔注入層HIL/正孔輸送層HTL/電子阻止層EBLの構造を有してもよいが、実施例はこれに限らない。
【0107】
正孔輸送領域HTRは、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法(Langmuir-Blodgett)、インクジェットプリント法、レーザプリント法、レーザ熱転写法(Laser Induced Thermal Imaging、LITI)などといった多様な方法を利用して形成されうる。
【0108】
正孔輸送領域HTRは、下記化学式H-1で表される化合物を含みうる。
【0109】
【0110】
化学式H-1において、L11及びL12は、それぞれ独立して、直接結合、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリーレン基、または置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリーレン基である。c1乃至c2はそれぞれ独立して0以上10以下の整数である。一方、c1またはc2が2以上の整数であれば、複数のL11及びL12は、それぞれ独立して、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリーレン基、または置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリーレン基である。
【0111】
化学式H-1において、Ar11及びAr12は、それぞれ独立して、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基である。また、化学式H-1において、Ar13は、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基である。
【0112】
前記化学式H-1で表される化合物は、モノアミン化合物である。または、前記化学式H-1で表される化合物は、Ar-11乃至Ar13のうちの少なくとも一つが、アミン基を置換基として含むジアミン化合物である。または、前記化学式H-1で表される化合物は、Ar11乃至Ar12のうちの少なくとも一つに、置換または非置換のカルバゾール基を含むカルバゾール系化合物、または、Ar11乃至Ar12のうちの少なくとも一つに、置換または非置換のフルオレン基を含むフルオレン系化合物である。
【0113】
化学式H-1で表される化合物は、下記化合物群Hの化合物のうちのいずれか一つで表される。しかし、下記化合物群Hに並べられた化合物は例示的なものであって、化学式H-1で表される化合物は、下記化合物群Hに示されたものに限らない。
【0114】
<化合物群H>
<化合物群H-1-1~H-1-7>
【0115】
【0116】
【0117】
正孔輸送領域HTRは、銅フタロシアニンなどのフタロシアニン化合物、DNTPD(N1,N1’-([1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジイル)ビス(N1-フェニル-N4,N4-ジ-m-トリルベンゼン-1,4-ジアミン))、m-MTDATA(4,4’,4”-[トリス(3-メチルフェニル)フェニルアミノ)トリフェニルアミノ]、TDATA(4,4’,4”-トリス(N,N-ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン)、1-TNATA(4,4’,4”-トリス[N(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]-トリフェニルアミン)、2-TNATA(4,4’,4”-トリス[N(2-ナフチル)-N-フェニルアミノ]-トリフェニルアミン)、PEDOT/PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルフォナート)、PANI/DBSA(ポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸)、PANI/CSA(ポリアニリン/カンファースルホン酸)、PANI/PSS((ポリアニリン)/ポリ(4-スチレンスルフォナート))、NPB(またはNPD、α-NPD)(N,N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N’-ジフェニル-ベンジジン)、トリフェニルアミンを含むポリエテールケトン(TPAPEK)、4-イソプロピル-4’-メチルジフェニルヨードニウム[テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート]、HAT-CN(ジピラジノ[2,3-f:2’,3’-h]キノキサリン-2,3,6,7,10,11-ヘキサカルボニトリル)などを含んでもよい。
【0118】
正孔輸送領域HTRは、N-フェニルカルバゾール、ポリビニルカルバゾールなどのカルバゾール系誘導体、フルオレン系誘導体、TCTA(4,4’,4”-トリス(N-カルバゾリル)トリフェニルアミン)などといったトリフェニルアミン系誘導体、またはTPD(N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン)、NPB(N、N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N、N’-ジフェニル-ベンジジン)、TAPC(4、4’-シクロへキシリデンビス[N、N-ビス(4-メチルフェニル)ベンゼンアミン])、HMTPD(4、4’-ビス[N、N’-(3-トリル)アミノ]-3、3’-ジメチルビフェニル)、mCP(1,3-ビス(N-カルバゾリル)ベンゼン)などを含んでもよい。
【0119】
また、正孔輸送領域HTRは、CzSi(9-(4-tert-ブチルフェニル)-3,6-ビス(トリフェニルシリル)-9H-カルバゾール)、CCP(9-フェニル-9H-3,9’-ビカルバゾール)、またはmDCP(1,3-ビス(1,8-ジメチル-9H-カルバゾール-9-イル)ベンゼン)などを含む。
【0120】
正孔輸送領域HTRは、上述した正孔輸送領域の化合物を、正孔注入層HIL、正孔輸送層HTL、及び電子阻止層EBLのうちの少なくとも一つに含む。
【0121】
正孔輸送領域HTRの厚さは、約100Å乃至約10000Å、例えば約100Å乃至約5000Åであってもよい。正孔輸送領域HTRが正孔注入層HILを含む場合、正孔注入層HILの厚さは、例えば約30Å乃至約1000Åである。正孔輸送領域HTRが正孔輸送層HTLを含む場合、正孔輸送層HTLの厚さは約30Å乃至約1000Åである。例えば、正孔輸送領域HTRが電子阻止層EBLを含む場合、電子阻止層EBLの厚さは例えば約10Å乃至約1000Åである。正孔輸送領域HTR、正孔注入層HIL、正孔輸送層HTL、及び電子阻止層EBLの厚さが上述したような範囲を満足すれば、実質的な駆動電圧の上昇なしに、満足できる程度の正孔輸送特性を得ることができる。
【0122】
正孔輸送領域HTRは、上述した物質以外に、導電性を向上するために電荷生成物質を更に含む。電荷発生物質は、正孔輸送領域HTR内に、均一にまたは不均一に分散されている。電荷発生物質は、例えば、p-ドーパント(dopant)である。p-ドーパントは、ハロゲン化金属化合物、キノン誘導体、金属酸化物及びシアノ基含有化合物のうち少なくとも一つを含んでもよいが、これに限られない。例えば、p-ドーパントは、CuI及びRBIなどのハロゲン化金属化合物、TCNQ(テトラシアノキノジメタン)及びF4-TCNQ(2,3,5,6-テトラフルオロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン)などのようなキノン誘導体、タングステン酸化物、及びモリブデン酸化物のような金属酸化物、HATCN(ジピラジノ[2,3-f:2’,3’-h]キノキサリン-2,3,6,7,10,11-ヘキサカルボニトリル)、及びNDP9(4-[[2,3-ビス[シアノ-(4-シアノ-2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)メチリデン]シクロプロピリデン]-シアノメチル]-2,3,5,6-テトラフルオロベンゾニトリル)のようなシアノ基含有化合物などが挙げられるが、実施例はこれに限られない。
【0123】
上述したように、正孔輸送領域HTRは、正孔輸送層HTL及び正孔注入層HIL以外に、バッファ層(図示せず)及び電子阻止層EBLのうちの少なくとも一つを更に含む。バッファ層(図示せず)は、発光層EMLから放出される光の波長による共振距離を補償して光放出効率を増加させる。バッファ層(図示せず)に含まれる物質としては、正孔輸送領域HTRに含まれ得る物質を使用する。電子阻止層EBLは、電子輸送領域ETRから正孔輸送領域HTRへの電子の注入を防止する役割をする層である。
【0124】
発光層EMLは正孔輸送領域HTRの上に提供される。発光層EMLは、例えば、約100Å乃至約1000Å、または約100Å乃至約300Åの厚さを有する。発光層EMLは、単一物質からなる単一層、複数の互いに異なる物質からなる単一層、または複数の互いに異なる物質からなる複数の層を有する多層構造を有する。
【0125】
一実施例の発光素子EDにおいて、発光層EMLは複数の発光材料を含む。一実施例において、発光層EMLは第1化合物を含み、第2化合物、第3化合物、及び第4化合物のうちの少なくともいずれか一つを含む。一実施例の発光素子EDにおいて、発光層EMLは少なくとも一つのホスト及び少なくとも一つのドーパントを含む。例えば、一実施例の発光層EMLは、第1ドーパントを含み、互いに異なる第1ホストと第2ホストを含んでもよい。また、一実施例の発光層EMLは、互いに異なる第1ホスト及び第2ホスト、互いに異なる第1ドーパント及び第2ドーパントを含む。
【0126】
一実施例の発光層EMLに含まれる第1化合物は、一つの窒素原子に2つのホウ素原子が結合されるB-N-B構造を有する多環化合物を含む。
【0127】
一実施例の第1化合物は、下記化学式1で表される多環化合物を含む。
【0128】
【0129】
化学式1において、Xは置換されたアミン基であり、下記化学式2で表される。
【0130】
化学式1において、Aは置換または非置換の芳香族炭化水素環、または置換または非置換の芳香族ヘテロ環である。一実施例において、Aは、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下の芳香族炭化水素環、または、置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下の芳香族ヘテロ環である。例えば、Aは、置換または非置換のベンゼン環、置換または非置換のピリジン環、置換または非置換のカルバゾール環、置換または非置換のジベンゾフラン環、または、置換または非置換のジベンゾチオフェン環であってもよい。一方、Aが、置換された芳香族炭化水素環または置換された芳香族ヘテロ環であるならば、ここでの置換基はフェニル基、ピリジン基などである。
【0131】
化学式1において、n1は0以上3以下の整数である。Ar1は、水素原子、重水素原子、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であるか、または、これらのいずれかの炭素環または複素環が、隣接する基と互いに結合して環を形成したものである。一実施例において、Ar1はAr2と結合して炭化水素環またはN、O、Sなどを環形成原子として含むヘテロ環を形成する。
【0132】
一実施例において、n1が2以上の整数であれば、複数個のAr1はいずれも同じであるか少なくとも一つが残りとは異なる。例えば、複数で提供されるAr1のうちいずれか一つは置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であるか、または隣接する基と互いに結合して環を形成し、残りは水素原子または重水素原子である。
【0133】
化学式1において、Ar2及びAr3はそれぞれ独立して、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であるか、または隣接する基と互いに結合して環を形成する。Ar2及びAr3はそれぞれ独立して置換または非置換の環形成炭素数6以上15以下のアリール基、または置換または非置換の環形成炭素数2以上15以下のヘテロアリールであるか、またはAr2はAr1と結合し、Ar3はAr4と結合して炭化水素環またはN、O、Sなどを環形成原子として含むヘテロ環を形成する。一方、Ar2及びAr3が互いに結合して環を形成する場合は除外される。
【0134】
化学式1において、n2は0以上4以下の整数である。Ar4は置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であるか、または隣接する基と結合して環を形成し、または下記化学式2で表される。一実施例において、n2が2以上の整数であれば、複数のAr4はいずれも同じであるか少なくとも一つが残りとは異なる。例えば、複数個で提供されるAr4のうち少なくとも一つは下記化学式2で表される。
【0135】
【0136】
前記化学式2において、Ar5及びAr6は、それぞれ独立して、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または、置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であるか、または、Ar5とAr6が互いに結合して環を形成したものである。例えば、Ar5及びAr6は、それぞれ独立して、置換または非置換のフェニル基、置換または非置換のビフェニル基、置換または非置換のテルフェニル基であってもよく、またはAr5とAr6が互いに結合して置換または非置換のカルバゾール環を形成してもよい。しかし、実施例はこれに限られない。
【0137】
一実施例において、化学式2は下記化学式2-1または化学式2-2で表される。
【0138】
【0139】
【0140】
化学式2-1及び化学式2-2において、R1乃至R4は、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、置換または非置換の炭素数1または20のアルキル基、または置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基である。例えば、R1乃至R4は、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、置換または非置換のt-ブチル基、置換または非置換のフェニル基であってもよい。しかし、実施例はこれに限られない。
【0141】
化学式2-1及び2-2において、m1及びm2はそれぞれ独立して0以上5以下の整数であり、m3及びm4はそれぞれ独立して0以上4以下の整数である。一実施例において、m1乃至m4が2以上の整数であれば、複数で提供されるR1乃至R4のそれぞれは、いずれも同じであるか、少なくとも一つが残りとは異なりうる。
【0142】
一実施例において、前記化学式1は下記化学式3で表される。化学式3は化学式1でAr1乃至Ar4を具体化したものに当たる。化学式3において、Aは前記化学式1で定義した通りであり、Ar5及びAr6は前記化学式2で定義した通りである。
【0143】
【0144】
化学式3において、Y1及びY2は、それぞれ独立して、O、S、またはNAr7である。一実施例において、Y1及びY2のうち少なくとも一つはNAr7である。
【0145】
化学式3において、Ar7は置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であるか、隣接する基と結合して環を形成する。一実施例において、Ar7は置換または非置換のフェニル基であり、または隣接するR5またはR6とNを環形成原子として含むヘテロ環を形成する。
【0146】
化学式3において、m5及びm6はそれぞれ独立して0以上4以下の整数である。R5及びR6はそれぞれ独立して水素原子、重水素原子、または置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基であるか、または隣接する基と結合して環を形成する。例えば、R5及びR6は、それぞれ独立して水素原子、重水素原子、または置換または非置換のフェニル基であるか、または、このフェニル基が、隣接するY1またはY2(S、またはNAr7)と結合して環を形成したものである。一方、m5及びm6が2以上の整数であれば、複数が提供されるR5乃至R6は、いずれも互いに同じであるか、少なくとも一つが残りとは異なる。
【0147】
一実施例において、化学式3は、下記化学式3-1乃至化学式3-3のうちのいずれか一つで表される。化学式3-1乃至化学式3-3は、化学式3においてY1、Y2、R5、及びR6を具体化したものに当たる。化学式3-1乃至化学式3-3において、A、Ar5及びAr6は前記化学式3で説明した内容と同じ内容が適用される。このことに伴い、化学式3-1乃至化学式3-3において、Aについては前記化学式1で説明した内容と同じ内容が適用され、Ar5及びAr6については、前記化学式2で説明した内容と同じ内容が適用される。
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
化学式3-1乃至化学式3-3において、R7乃至R17は、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、置換または非置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、または置換または非置換の環形成炭素数6以上15以下のアリール基である。例えば、R9、R10、R12、R13、R16、及びR17は、水素原子または重水素原子であり、R7、R8、R11、R14、及びR15は、水素原子、重水素原子、置換または非置換のt-ブチル基、または、置換または非置換のフェニル基であってもよい。しかし、実施例はこれに限られない。
【0152】
化学式3-1乃至化学式3-3において、m7、m8、m11、m12、m16、及びm17は、それぞれ独立して0以上4以下の整数であり、m9、m10、及びm13は、それぞれ独立して0以上3以下の整数であり、m14及びm15はそれぞれ独立して0以上5以下の整数である。一実施例において、m7乃至m17のそれぞれが2以上の整数であれば、複数個のR7乃至R17は、互いに同じであるか異なる。化学式3-2において、Y2aはSまたは0である。
【0153】
一実施例において、化学式3の化合物は下記化学式4で表される。化学式4は、化学式3において、置換または非置換の芳香族炭化水素環、または置換または非置換の芳香族ヘテロ環であるAを具体化したものに当たる。化学式4において、Ar5、Ar6、R5、R6、m5、m6、Y1、及びY2については、前記化学式3で説明した内容と同じ内容が適用される。また、Ar5及びAr6は、前記化学式2の定義と同じである。
【0154】
【0155】
化学式4において、Y3及びY4は、それぞれ独立してCRaまたはNである。例えば、Y3及びY4は、いずれもがCRaであるか、Y3がNで、Y4がCRaであってもよい。
【0156】
化学式4において、Raは水素原子、重水素原子、置換または非置換の環形成炭素数6以上20以下のアリール基、または置換または非置換の環形成炭素数2以上20以下のヘテロアリール基であるか、または、これらの炭素環または複素環が、隣接する基と互いに結合して環を形成したものである。例えば、Raは、水素原子、重水素原子、置換または非置換のフェニル基であってもよく、または、隣接するRa同士(フェニル基同士、少なくとも一方がN、O、Sなどで置換)が互いに結合してN、O、Sなどを環形成原子として含むヘテロ環を形成してもよい。一方、隣接するRa同士に互いに結合してNを環形成原子として含むヘテロ環を形成する場合、Nはフェニル基に置換されるか置換されない。
【0157】
一実施例において、化学式4は下記化学式4-1乃至化学式4-2で表される。化学式4-1及び化学式4-2は、化学式4においてY1、Y2、Ar5、及びAr6を具体化したものに当たる。化学式4-1及び化学式4-2における、R5、R6、m5、m6、Y1、及びY2に対しては、前記化学式3で説明した内容と同じ内容が適用され、Y3及びY4に対しては、前記化学式4で説明した内容と同じ内容が適用される。一方、化学式4-1及び化学式4-2は、化学式4に、化学式2-1及び化学式2-2が対称の構造をなして導入されるものに当たる。それによって、R1乃至R4、m1乃至m4に対しては、前記化学式2-1及び化学式2-2で説明した内容と同じ内容が適用される。
【0158】
【0159】
【0160】
一実施例の第1化合物は、下記第1化合物群に示す化合物のうちのいずれか一つである。一実施例の発光素子EDは、第1化合物群に示す化合物のうちの少なくとも一つを第1化合物として発光層EMLに含む。
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
【0167】
【0168】
【0169】
【0170】
【0171】
【0172】
【0173】
前記第1化合物群の構造において、Dは重水素原子を意味し、Phはフェニル基を意味する。
【0174】
化学式1で表される一実施例の第1化合物の発光スペクトルは20~60nmの半値幅を有する。化学式1で表される一実施例の第1化合物の発光スペクトルが、前記範囲の半値幅を有することで、素子に適用されれば発光効率が改善される。また、発光素子用の青色発光素子の材料として使用されれば素子寿命が改善される。
【0175】
化学式1で表される一実施例の第1化合物は熱活性遅延蛍光発光材料である。また、化学式1で表される一実施例の第1化合物は、最低励起三重項エネルギー準位(T1)と、最低励起一重項エネルギー準位(S1)との差(ΔEST)が0.2eV以下の熱活性遅延蛍光ドーパントである。
【0176】
化学式1で表される一実施例の第1化合物は、440nm以上480nm以下の波長領域に発光中心波長を有する発光材料である。例えば、化学式1で表される一実施例の第1化合物は、青色の熱活性遅延蛍光(Thermally Activated Delayed Fluorescence、TADF)ドーパントであってもよい。しかし、実施例はこれに限らず、一実施例の第1化合物が発光材料として使用される場合、第1化合物は赤色発光ドーパント、緑色発光ドーパントなどの多様な波長領域の光を放出するドーパント物質として使用されてもよい。
【0177】
一実施例の発光素子EDにおいて、発光層EMLは遅延蛍光を放出する。例えば、発光層EMLは熱活性遅延蛍光(TADF)を発光してもよい。
【0178】
また、発光素子EDの発光層EMLは青色光を放出する。例えば、一実施例の発光素子EDの発光層EMLは、中心波長が440nm以上480nm以下の青色光を放出する。しかし、実施例はこれに限らず、発光層EMLは4800nm超過の青色光を放出するか、または緑色光または赤色光を放出してもよい。
【0179】
一実施例の発光素子EDにおいて、発光層EMLは遅延蛍光発光用ホスト及び遅延蛍光発光用ドーパントを含むが、上述した第1化合物を遅延蛍光発光用ドーパントとして含む。発光層EMLは、上述した第1化合物群に示した多環化合物のうち少なくとも一つを熱活性遅延蛍光ドーパントとして含む。
【0180】
上述したように、一実施例の発光素子EDにおいて、発光層EMLはホストを含む。ホストは発光素子ED内で光を放出せず、ドーパントにエネルギーを伝達する役割をする。発光層EMLは一種以上のホストを含む。例えば、発光層EMLは2種の互いに異なるホストを含んでもよい。発光層が2種のホストを含む場合、2種のホストは正孔輸送性ホスト及び電子輸送性ホストを含む。但し、これに限らず、発光層EMLは一種のホストを更に含むか、2種以上の互いに異なるホストの混合物を含んでもよい。
【0181】
一実施例において、発光層EMLは、2つの互いに異なるホストを含む。ホストは第2化合物と、第2化合物とは異なる第3化合物とを含む。ホストは、正孔輸送性の部分構造(moiety)を有する第2化合物と、電子輸送性部分構造を有する第3化合物を含む。一実施例の発光素子EDにおいて、ホストは第2化合物と第3化合物とがエキシプレックス(exciplex)を形成する。
【0182】
一実施例において、発光層EMLは下記化学式HTで表される第2化合物を含む。例えば、第2化合物は発光層EMLの正孔輸送性ホスト材料として使用される。
【0183】
【0184】
化学式HTにおいて、L1は直接結合、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリーレン基、または置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリーレン基である。また、Ar1aは置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基である。
【0185】
化学化HTにおいて、R11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基である。例えば、R11及びR12は、それぞれ独立して水素原子または重水素原子である。
【0186】
化学式HTにおいて、e及びfはそれぞれ独立して0以上4以下の整数であり、R11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基である。一方、e及びfがそれぞれ2以上の整数であれば、複数のR11及び複数個のR12は、いずれも同じであるか、少なくとも一つが他とは異なる。例えば、化学式HTにおいて、e及びfは0であってもよい。この場合、化学式HTのカルバゾール基は、置換されていないものに当たる。
【0187】
化学式HTにおいて、L1は直接結合、フェニレン基、2価のビフェニル基、2価のカルバゾール基などであってもよいが、実施例はこれに限らない。また、Ar1は置換または非置換のカルバゾール基、置換または非置換のジベンゾフラン基、置換または非置換のジベンゾチオフェン基、置換または非置換のビフェニル基などであってもよいが、実施例はこれに限られない。
【0188】
一実施例の発光素子EDにおいて、発光層EMLは第3化合物として下記化学式ETで表される化合物を含む。
【0189】
【0190】
前記化学式ETにおいて、Za乃至Zcのうちの少なくとも一つはNである。Za乃至Zcのうちの、Nではない残りはCR16である。つまり、化学式ETで表される第3化合物は、ピリジン部分構造、ピリミジン部分構造、またはトリアジン部分構造を含む。
【0191】
化学式ETにおいて、R13乃至R15は、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、シアノ基、置換または非置換のシリル基、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基である。
【0192】
化学式ETにおいて、R13乃至R15は、それぞれ独立して置換または非置換のフェニル基、置換または非置換のカルバゾール基などであってもよいが、実施例はこれに限られない。
【0193】
一実施例の発光素子EDの発光層EMLが、化学式HTで表される第2化合物と、化学式ETで表される第3化合物とを発光層EMLに同時に含めば、優れた長寿命特性を示す。特に、一実施例の発光素子EDの発光層EMLにおいて、ホストは、化学式HTで表される第2化合物と、化学式ETで表される第3化合物とがエキシプレックスを形成したものである。
【0194】
発光層EMLに同時に含まれる2つのホスト材料のうち、第2化合物は正孔輸送性ホストであり、第3化合物は電子輸送性ホストである。一実施例の発光素子EDは、発光層EMLに正孔輸送特性に優れた第2化合物及び電子輸送特性に優れた第3化合物をいずれも含むことで、後述するドーパント化合物への効率的なエネルギー伝達が可能となる。
【0195】
一実施例の発光素子EDは、発光層EMLに上述した化学式1で表される第1化合物以外に第4化合物を更に含む。発光層EMLは、Pt(白金)を中心金属原子として含み、中心金属原子に結合されるリガンドを含む有機金属錯体を第4化合物として含む。一実施例の発光素子EDにおいて、発光層EMLは第4化合物として下記化学式D-1で表される化合物を含む。
【0196】
【0197】
化学式D-1において、Q1乃至Q4はそれぞれ独立してCまたはNである。
【0198】
化学式D-1において、C1乃至C4は、それぞれ独立して、置換または非置換の環形成炭素数5以上30以下の炭化水素環、または置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロ環である。
【0199】
化学式D-1において、L
21乃至L
23は、それぞれ独立して、直接結合、
置換または非置換の環形成炭素数1以上20以下の2価のアルキル基、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリーレン基、または置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリーレン基である。L
21乃至L
23において、
は、C1乃至C4と連結される部位を意味する。
【0200】
化学式D-1において、b1乃至b3はそれぞれ独立して0または1である。b1が0であれば、C1とC2とは互いに連結されていない。b2が0であれば、C2とC3とは互いに連結されていない。b3が0であれば、C3とC4とは互いに連結されていない。
【0201】
化学式D-1において、R21乃至R26は、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換の環形成炭素数1以上30以下のヘテロアリール基であるか、または、これらのいずれかの炭素鎖、炭素環または複素環が、隣接する基と互いに結合して環を形成したものである。例えば、R21乃至R26は、それぞれ独立してメチル基、またはt-ブチル基である。
【0202】
化学式D-1において、d1及びd4は、それぞれ独立して0以上4以下の整数である。一方、d1乃至d4がそれぞれ2以上の整数であれば、複数個のR21乃至複数個のR24は、いずれも同じであるか、少なくとも一つが他とは異なる。
【0203】
化学式D-1において、C1乃至C4は、それぞれ独立して下記C-1乃至C-3のうちいずれか一つで表される置換または非置換の炭化水素環、または置換または非置換のヘテロ環である。
【0204】
【0205】
C-1乃至C-3において、P
1-は
またはCR
54であり、P
2は
またはNR
61であり、P
3は
またはNR
62である。R
51及びR
64は、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下ヘテロアリール基であるか、または、これらのいずれかの炭素鎖、炭素環または複素環が、隣接する基と互いに結合して環を形成したものである。
【0206】
また、C-1乃至C-3において、
は、中心金属原子であるPtと連結される部分であり、
は隣り合う環基(C1乃至C4)またはリンカー(L
21乃至L
24)と連結される部分に当たる。
【0207】
上述した化学式D-1で表される第4化合物は、りん光ドーパントである。
【0208】
一実施例において、第1化合物は青色光を発光する発光ドーパントであり、発光層EMLは蛍光発光する。また、より詳しくは、発光層EMLは、青色光を遅延蛍光発光する。
【0209】
一実施例において、発光層EMLに含まれる第4化合物は、増感剤(sensitizer)である。一実施例の発光素子EDにおいて、発光層EMLに含まれる第4化合物は増感剤として機能し、ホストから発光ドーパントである第1化合物にエネルギーを伝達する役割をする。つまり、補助ドーパントの役割をする第4化合物は、発光ドーパントである第1化合物へのエネルギーの伝達を加速化して、第1化合物の発光割合を増加させる。よって、一実施例の発光層EMLは発光効率が向上される。また、第1化合物へのエネルギーの伝達が増加されたら、発光層EMLに形成されるエキシトンが発光層EMLの内部に積滞されずに速く発光するため、素子の劣化が減少する。よって、一実施例の発光素子EDの寿命が上昇する。
【0210】
一実施例において、発光素子EDにおける第2化合物及び第3化合物の重量比は約4:6乃至7:3、または約5:5乃至7:3である。例えば、第2化合物及び第3化合物の重量比は4:6、5:5、6:4、または7:3であってもよい。但し、実施例はこれに限らない。第2化合物及び第3化合物の含量が上述した割合を満足すれば、発光層EML内の電荷バランス特性が向上されるため、発光効率及び素子寿命が上昇される。第2化合物及び第3化合物の含量が上述した割合を逸脱すれば、発光層EML内の電荷バランスが崩れて発光効率が低下し、素子が劣化しやすくなる恐れがある。
【0211】
一実施例の発光素子EDは、第1化合物、第2化合物、第3化合物、及び第4化合物をいずれも含むことで、発光層EMLが2つのホスト材料と2つのドーパント材料の組み合わせを含むことになる。一実施例の発光素子EDにおいて、発光層EMLは互いに異なる2つのホスト、遅延蛍光を放出する第1化合物、及び有機金属錯体を含む第4化合物を同時に含むことで、優れた発光効率特性を示す。
【0212】
一実施例において、前記化学式HTで表される第2化合物は、下記第2化合物群に示した化合物のうちいずれか一つで表される。発光層EMLは、正孔輸送性ホスト物質として下記第2化合物群に示した化合物のうち少なくとも一つを含む。
【0213】
[第2化合物群]
[第2化合物HT-1~HT-9]
【0214】
【0215】
【0216】
一実施例において、化学式ETで表される第3化合物は、下記第3化合物群に示す化合物のうちいずれか一つで表される。発光層EMLは、電子輸送性ホスト物質として下記第3化合物群に示す化合物のうち少なくとも一つを含む。
【0217】
[第3化合物群]
[第3化合物ET-1~ET-9]
【0218】
【0219】
一実施例において、化学式D-1で表される第4化合物は、下記第4化合物群に示す化合物の少なくとも一つを含む。発光層EMLは、増感剤物質として下記第4化合物群に示す化合物のうち少なくとも一つを含む。
【0220】
【0221】
【0222】
【0223】
前記第4化合物群に含まれる化合物において、R、R38、及びR39はそれぞれ独立して水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換または非置換のアミン基、置換または非置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基である。
【0224】
一方、図示していないが、一実施例の発光素子EDは複数の発光層を含んでもよい。複数の発光層は順次に積層されて提供されるが、例えば、複数の発光層を含む発光素子EDは白色光を放出してもよい。複数の発光層を含む発光素子はタンデム(Tandem)構造発光素子である。発光素子EDが複数の発光層を含む場合、少なくとも一つの発光層EMLは、上述したように第1化合物、第2化合物、第3化合物、及び第4化合物をいずれも含む。
【0225】
一実施例の発光素子EDにおいて、発光層EMLは、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、フルオランテン誘導体、クリセン誘導体、ジヒドロベンズアントラセン誘導体、またはトリフェニレン誘導体を更に含む。詳しくは、発光層EMLは、アントラセン誘導体またはピレン誘導体を含む。
【0226】
図3乃至
図6に示した一実施例の発光素子EDにおいて、発光層EMLは上述したホスト及びドーパント以外に公知のホスト及びドーパントを更に含むが、発光層EMLは下記化学式E-1で表される化合物を含む。下記化学式E-1で表される化合物は蛍光ホスト材料として使用される。
【0227】
【0228】
化学式E-1において、R31乃至R40はそれぞれ独立して水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換のシリル基、置換または非置換のチオ基、置換または非置換のオキシ基、置換または非置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換または非置換の炭素数2以上10以下のアルケニル基、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリールであるか、または隣接する基と互いに結合して環を形成する。一方、R31乃至R40は、隣接する基と互いに結合して飽和炭化水素環、不飽和炭化水素環、飽和ヘテロ環、または不飽和ヘテロ環を形成する。
【0229】
化学式E-1において、n1及びn2はそれぞれ独立して0以上5以下の整数である。
【0230】
化学式E-1は、下記化合物E1乃至化合物E20のうちいずれか一つで表される。
【0231】
【0232】
【0233】
【0234】
一実施例において、発光層EMLはE-2bで表される化合物を更に含む。下記化学式E-2bで表される化合物は、りん光ホスト材料として使用される。
【0235】
【0236】
前記化学式E-2bにおいて、Cbz1及びCbz2は、それぞれ独立して、非置換のカルバゾール基、または環形成炭素数6以上30以下のアリール基に置換されたカルバゾール基である。Lbは、直接結合、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリーレン基、または置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリーレン基である。一方、bは0以上10以下の整数であり、bが2以上の整数であれば、複数個のLbはそれぞれ独立して置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリーレン基、または置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリーレン基である。
【0237】
化学式E-2aまたは化合物E-2bで表される化合物は、下記化合物群E-2の化合物のうちいずれか一つで表される。しかし、下記化合物群E-2に並べられた化合物は例示的なものであって、化学式E-2aまたは化学式E-2bで表される化合物は、下記化合物群E-2に示されたものに限られない。
【0238】
<化合物群E-2>
[化合物E-2-1~E-2-8]
【0239】
【0240】
【0241】
発光層EMLは、ホスト物質として該当技術分野で知られている一般的な材料を更に含む。例えば、発光層EMLは、ホスト材料として、BCPDS(ビス(4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル)ジフェニルシラン)、POPCPA((4-(1-(4-(ジフェニルアミノ)フェニル)シクロヘキシル)フェニル)ジフェニル-ホスフィンオキシド)、DPEPO(ビス[2-(ジフェニルホスフィノ)フェニル]エーテルオキシド)、CBP(4,4’-ビス(N-カルバゾリル)-1,1’-ビフェニル)、mCBP(3,3’-ジ(9H-カルバゾール-9-イル)-1,1’-ビフェニル)、mCP(1,3-ビス(カルバゾール-9-イル)ベンゼン)、PPF(2,8-ビス(ジフェニルホスホリル)ジベンゾ[b,d]フラン)、TCTA(4,4’,4”-トリス(カルバゾール-9-イル)-トリフェニルアミン)、及びTPBi(1,3,5-トリス(1-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)ベンゼン)のうちの少なくとも一つを含んでもよい。但し、これに限らず、例えば、Alq3(トリス(8-ヒドロキシキノリノ)アルミニウム)、ADN(9、10-ジ(ナフタレン-2-イル)アントラセン)、TBADN(3-tert-ブチル-9、10-ジ(ナフト-2-イル)アントラセン)、DSA(ジスチリルアリーレン)、CDBP(4、4’-ビス(9-カルバゾリル)-2、2’-ジメチル-ビフェニル)、MADN(2-メチル-9、10-ビス(ナフタレン-2-イル)アントラセン)、CP1(ヘキサフェニルシクロトリホスファゼン)、UGH2(1、4-ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン)、DPSiO3(ヘキサフェニルシクロトリシロキサン)、DPSiO4(オクタフェニルシクロテトラシロキサン)などを、ホスト材料として使用してもよい。
【0242】
発光層EMLは下記化学式M-aで表される化合物を含む。下記化学式M-aで表される化合物は、りん光ドーパント材料として使用されうる。また、一実施例において、化学式M-aで表される化合物は、補助ドーパント材料として使用されうる。
【0243】
【0244】
前記化学式M-aにおいて、Y1乃至Y4、及びZ1乃至Z4は、それぞれ独立して、CR1またはNであり、R1乃至R4はそれぞれ独立して水素原子、重水素原子、置換または非置換のアミン基、置換または非置換のチオ基、置換または非置換のオキシ基、置換または非置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換または非置換の炭素数2以上20以下のアルケニル基、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリールであるか、または、これらのいずれかのアミン基、炭素鎖、炭素環または複素環が、隣接する基と互いに結合して環を形成する。化学式M-aにおいて、mは0または1で、nは2または3である。化学式M-aにおいて、mが0であればnは3で、mが1であれば、nは2である。
【0245】
化学式M-aで表される化合物は、りん光ドーパントとして使用される。
【0246】
化学式M-aで表される化合物は、下記化合物群M-a1乃至M-a25の化合物のうちいずれか一つで表される。しかし、下記化合物M-a1乃至M-a25は例示的なものであって、化学式M-aで表される化合物は下記化合物M-a1乃至M-a25で表されるものに限られない。
【0247】
【0248】
【0249】
【0250】
化合物M-a1及び化合物M-a2は赤色ドーパント材料として使用され、化合物M-a3乃至化合物M-a7は緑色ドーパント材料として使用される。
【0251】
発光層EMLは、下記化学式F-a乃至化学式F-cのうちのいずれか一つで表される化合物を含む。下記化学式F-a乃至化学式F-cで表される化合物は、蛍光ドーパント材料として使用される。
【0252】
【0253】
前記化学式F-aにおいて、R
a乃至R
jのうちから選択される2つは、それぞれ独立して
に置換される。R
a乃至R
jのうち、
に置換されていない残りは、それぞれ独立して水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換または非置換のアミン基、置換または非置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または、置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基である。
において、Ar
1及びAr
2は、それぞれ独立して、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基である。例えば、Ar
1及びAr
2のうちの少なくとも一つは、環形成原子としてOまたはSを含むヘテロアリール基である。
【0254】
【0255】
化学式F-bにおいて、Ra及びRbは、それぞれ独立して水素原子、重水素原子、置換または非置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換または非置換の環形成の2以上20以下のアルケニル基、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または、置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であるか、または、これらのいずれかの炭素鎖、炭素環または複素環が、隣接する基と互いに結合して環を形成したものである。Ar1及びAr4は、それぞれ独立して、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基である。
【0256】
化学式F-bにおいて、U及びVは、それぞれ独立して置換または非置換の環形成炭素数5以上30以下の炭化水素環、または置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロ環である。
【0257】
化学式F-bにおいて、U及びVで表される環の個数はそれぞれ独立して0または1である。例えば、化学式F-bにおいて、UまたはVの個数が1であればUまたはVで記載の部分に一つの環が縮合環を構成し、UまたはVの個数が0であればUまたはVが記載の環は存在しないことを意味する。詳しくは、Uの個数が0でVの個数が1であれば、またはUの個数が1でVの個数が0であれば、化学式F-bのフルオレンコアを有する縮合環は4環の環式化合物である。また、U及びVの個数がいずれも0であれば、化学式F-bの縮合環は3環の環式化合物である。また、U及びVの個数がいずれも1であれば、化学式F-bのフルオレンコアを有する縮合環は5環の環式化合物である。
【0258】
【0259】
前記化学式F-cにおいて、A1及びA2は、それぞれ独立してO、S、Se、またはNRmであり、Rmは水素原子、重水素原子、置換または非置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基である。R1乃至R11はそれぞれ独立して水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換または非置換のアミン基、置換または非置換のボリル基、置換または非置換のオキシ基、置換または非置換のチオ基、置換または非置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換または非置換の環形成炭素2以上30以下のヘテロアリール基であるか、または隣接する基と互いに結合して環を形成する。
【0260】
化学式F-cにおいて、A1及びA2はそれぞれ独立して隣り合う環の置換基と結合して縮合環を形成する。例えば、A1及びA2がそれぞれ独立してNRmであれば、A1はR4またはR5と結合して環を形成する。また、A2はR7またはR8と結合して環を形成する。
【0261】
一実施例において、発光層EMLは、公知のドーパント材料として、スチリル誘導体(例えば、1,4-ビス[2-(3-N-エチルカルバゾリル)ビニル]ベンゼン(BCzVB)、4-(ジ-p-トリルアミノ)-4’-[(ジ-p-トリルアミノ)スチリル]スチルベン(DPAVB)、N-(4-((E)-2-(6-((E)-4-(ジフェニルアミノ)スチリル)ナフタレン-2-イル)ビニル)フェニル)-N-フェニルベンゼンアミン(N-BDAVBi))、4,4’-ビス[2-(4-(N,N-ジフェニルアミノ)フェニル)ビニル]ビフェニル(DPAVBi)、ぺリレン及びその誘導体(例えば、2,5,8,11-テトラ-t-ブチルぺリレン(TBP))、ピレン及びその誘導体(例えば、1,1’-ジピレン、1,4-ジピレニルベンゼン、1,4-ビス(N、N-ジフェニルアミノ)ピレン)などを含む。
【0262】
一実施例において、複数個の発光層EMLを含む場合、少なくとも一つの発光層EMLは公知のりん光ドーパント物質を含む。例えば、りん光ドーパントとしては、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、オスミウム(Os)、金(Au)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ユウロピウム(Eu)、テルビウム(Tb)、またはツリウム(Tm)を含む金属錯体が使用されてもよい。詳しくは、FIrpic(イリジウム(III)ビス(4,6-ジフルオロフェニルピリジナト-N,C2’)ピコリナート、Fir6(ビス(2,4-ジフルオロフェニルピリジナト)-テトラキス(1-ピラゾリル)ボラートイリジウム(III))、またはPtOEP(白金-オクタエチルポルフィリン)がりん光ドーパントとして使用される。しかし、実施例はこれに限らない。
【0263】
一方、少なくとも一つの発光層EMLは量子ドット(Quantom dot)物質を含む。量子ドットのコアはII-VI族化合物、III-VI族化合物、I-III-VI族、III-V族化合物、III-II-V族化合物、IV-VI族化合物、IV族元素、IV族化合物、及びこれらの組み合わせから選択される。
【0264】
II-VI族化合物は、CdSe、CdTe、CdS、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe、MgSe、MgS、及びこれらの混合物からなる群より選択される二元化合物、CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HeZnSe、HeZnTe、MgZnSe、MgZnS、及びこれらの混合物からなる群より選択される三元化合物、及びHgZnTeS、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、 及びこれらの混合物からなる群より選択される四元化合物からなる群より選択される。
【0265】
III-VI族化合物は、In2S3、In2Se3などのような二元素化合物、InGaS3、InGaSe3などのような三元化合物、またはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0266】
I-III-VI族化合物は、AgInS、AgInS2、CuInS、CuInS2、AgGaS2、CuGaS2、CuGaO2、AgGaO2、AgAlO2、及びこれらの混合物からなる群より選択される三元化合物、またはAgInGaS2、CuInGaS2などの四元化合物から選択される。
【0267】
III-V族化合物は、GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSb、及びこれらの混合物からなる群より選択される二元化合物と、GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InGaP、InAlP、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、及びこれらの混合物からなる群より選択される三元化合物と、GaAlNP、GaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSb、及びこれらの混合物からなる群より選択される四元化合物とからなる群より選択される。一方、III-V族化合物はII族金属を更に含む。例えば、III-II-V族化合物としてInZnPなどが選択されてもよい。
【0268】
IV-VI族化合物は、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe、及びこれらの混合物からなる群より選択される二元化合物、SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTe、及びこれらの混合物からなる群より選択される三元化合物、及びSnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTe、及びこれらの混合物からなる群より選択される四元化合物からなる群より選択される。IV族元素は、Si、Ge、及びこれらの混合物からなる群より選択される。IV族化合物は、SiC、SiGe、及びこれらの混合物からなる群より選択される二元化合物である。
【0269】
この際、二元化合物、三元化合物、または四元化合物は均一な濃度で粒子内に存在するか、濃度分布が部分的に異なる状態に分けられて同一粒子内に存在する。また、一つの量子ドットが他の量子ドットを囲むコア/シェル構造を有してもよい。コア/シェル構造において、シェルに存在する元素の濃度がコアに行くほど低くなる濃度勾配(gradient)を有する。
【0270】
いくつかの実施例において、量子ドットは上述したナノ結晶を含むコア、及び前記コアを囲むシェルを含むコア-シェル構造を有する。前記量子ドットのシェルは、前記コアの化学的変性を防止して半導体特性を維持するための保護層の役割、及び/または量子ドットに電気泳動特性を与えるためのチャージング層(charging layer)の役割をする。前記シェルは単層または多重層である。前記量子ドットのシェルの例としては、金属または非金属の酸化物、半導体化合物、またはこれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0271】
例えば、前記金属または非金属の酸化物は、SiO2、Al2O3、TiO2、ZnO、MnO、Mn2O3、Mn3O4、CuO、FeO、Fe2O3、Fe3O4、CoO、Co3O4、NiOなどの二元素化合物、またはMgAl2O4、CoFe2O4、NiFe2O4、CoMn2O4などの三元素化合物が挙げられるが、本発明はこれに限らない。
【0272】
また、前記半導体化合物は、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnSeS、ZnTeS、GaAs、GaP、GaSb、HgS、HgSe、HgTe、InAs、InP、InGaP、InSb、AlAs、AlP、AlSbなどが挙げられるが、本発明はこれに限らない。
【0273】
量子ドットは約45nm以下、好ましくは約40nm以下、より好ましくは約30nm以下の発光波長スペクトルの半値幅(full width of half maximum、FWHM)を有し、この範囲で色純度や色再現性を向上させることができる。また、このような量子ドットを介して発光される光は全方向に放出されるゆえ、光視野角が向上される。
【0274】
また、量子ドットの形態は当分野で一般的に使用する形態のものであって特に限らないが、より詳しくは、球状、ピラミッド状、多腕(multi-arm)状、立方体(cubic)のナノ粒子、ナノチューブ、ナノワイヤ、ナノ繊維、ナノ板状粒子などの形態のものを使用してもよい。
【0275】
量子ドットは粒子のサイズによって放出する光の色相を調節することができるが、それによって量子ドットは青色、赤色、緑色など多様な発光色相を有する。
【0276】
図3乃至
図6に示した一実施例の発光素子EDにおいて、電子輸送領域ETRは発光層EMLの上に提供される。電子輸送領域ETRは、正孔阻止層HBL、電子輸送層ETL、及び電子注入層のEILうち少なくとも一つを含むが、実施例はこれに限らない。
【0277】
電子輸送領域ETRは、単一物質からなる単一層、複数の互いに異なる物質からなる単一層、または複数の互いに異なる物質からなる複数の層を有する多層構造を有する。
【0278】
例えば、電子輸送領域ETRは電子注入層のEILまたは電子輸送層ETLの単一層構造を有してもよく、電子注入物質と電子輸送物質からなる単一層構造を有してもよい。また、電子輸送領域ETRは、複数の互いに異なる物質からなる単一層の構造を有するか、発光層EMLから順番に積層される電子輸送層ETL/電子注入層EIL、正孔阻止層HBL/電子輸送層ETL/電子注入層EIL、電子輸送層ETL/バッファ層(図示せず)/電子注入層EILなどの構造を有してもよいが、これに限らない。電子輸送領域ETRの厚さは、例えば、約1000Å乃至約1500Åであってもよい。
【0279】
電子輸送領域ETRは、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法、インクジェットプリント法、レーザプリント法、レーザ熱転写法(LITI)などのような多様な方法を利用して形成される。
【0280】
電子輸送領域ETRは下記化学式ET-1で表される化合物を含む。
【0281】
【0282】
化学式ET-2において、X1乃至X3のうち少なくとも一つはNで残りはCRaである。Raは水素原子、重水素原子、置換または非置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、Ar1乃至Ar3は、それぞれ独立して水素原子、重水素原子、置換または非置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基である。
【0283】
化学式ET-2において、a乃至cはそれぞれ独立して0以上10以下の整数である。化学式ET-2において、L1及びL3は、それぞれ独立して、直接結合、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリーレン基、または置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリーレン基である。一方、a乃至cが2以上の整数であれば、複数のL1及びL3は、それぞれ独立して、置換または非置換の環形成炭素数6以上30以下のアリーレン基、または置換または非置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリーレン基である。
【0284】
電子輸送領域ETRはアントラセン系化合物を含む。但し、これに限らず、電子輸送領域ETRは、例えば、Alq3(トリス(8-ヒドロキシキノリナト)アルミニウム)、1,3,5-トリ[(3-ピリジル)-フェン-3-イル]ベンゼン、2,4,6-トリス(3’-ピリジン-3-イル)ビフェニル-3-イル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-(N-フェニルベンゾイミダゾール-1-イル)フェニル)-9,10-ジナフチルアントラセン、TPBi(1,3,5-トリ(1-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)ベンゼン)、BCP(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、Bphen(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、TAZ(3-(4-ビフェニルイル)-4-フェニル-5-テルト-ブチルフェニル-1,2,4-トリアゾール)、NTAZ(4-(ナフタレン-1-イル)-3,5-ジフェニル-4H-1,2,4-トリアゾール)、tBu-PBD(2-(4-ビフェニルイル)-5-(4-テルトーブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール)、BAlq(ビス(2-メチル-8-キノリノラト-N1,O8)-(1,1’-ビフェニル-4-オラト)アルミニウム)、Bebq2(ベリリウムビス(ベンゾキノリン-10-オラト)、ADN(9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)アントラセン)、BmPyPhB(1,3-ビス[3,5-ジ(ピリジン-3-イル)フェニル]ベンゼン)、TSPO1(ジフェニル(4-(トリフェニルシリル)フェニル)ホスフィンオキシド)、及びこれらの混合物を含んでもよい。
【0285】
電子輸送領域ETRは、下記化合物ET1乃至ET36のうちの少なくとも一つを含む。
【0286】
【0287】
【0288】
【0289】
【0290】
【0291】
また、電子輸送領域ETRは、LiF、NaCl、CsF、RbCl、RbI、CuI、KIといったハロゲン化金属、Ybといったランタン族金属、または前記ハロゲン化金属とランタン族金属との共蒸着材料を含みうる。例えば、電子輸送領域ETRは共蒸着材料としてKI:Yb、RbI:Yb、LiF:Ybなどを含んでもよい。一方、電子輸送領域ETRとしては、Li2O、BaOといった金属酸化物、またはLiq(8-ヒドロキシ-リチウムキノラート)などが使用されてもよいが、実施例はこれに限られない。電子輸送領域ETRは、また、電子輸送物質と絶縁性の有機金属塩(organo metal salt)とが混合された物質からなる。有機金属塩は、エネルギーバンドギャップ(energy band gap)が約4eV以上の物質である。詳しくは、例えば、有機金属塩は、酢酸金属塩(metal acetate)、安息香酸金属塩(metal benzoate)、アセト酢酸金属塩(metal acetoacetate)、金属アセチルアセトネート(metal acetylacetonate)、またはステアリン酸金属塩(stearate)を含む。
【0292】
電子輸送領域ETRは、上述した材料以外に、BCP(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、TSPO1(ジフェニル(4-(トリフェニルシリル)フェニル)ホスフィンオキシド)、及びBphen(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)のうち少なくとも一つを更に含んでもよいが、これに限られない。
【0293】
電子輸送領域ETRは、上述した電子輸送領域の化合物を、電子注入層EIL、電子輸送層ETL、及び正孔阻止層HBLのうち少なくとも一つを含む。
【0294】
電子輸送領域ETRが電子輸送層ETLを含む場合、電子輸送層ETLの厚さは、約100Å乃至約1000Å、例えば約150Å乃至約500Åであってもよい。電子輸送層HTLの厚さが上述したような範囲を満足すれば、実質的な駆動電圧の上昇なしに満足できる程度の電子輸送特性が得られる。電子輸送領域ETRが電子注入層EILを含む場合、電子注入層EILの厚さは、約1Å乃至約100Å、約3Å乃至約90Åであってもよい。電子注入層EILの厚さが、上述したような範囲を満足すれば、実質的な駆動電圧の上昇なしに、満足できる程度の電子注入特性が得られる。
【0295】
第2電極EL2は、電子輸送領域ETRの上に提供される。第2電極EL2は共通電極である。第2電極EL2はカソードまたはアノードでありうるが、実施例はこれに限られない。例えば、第1電極EL1がアノードであれば第2電極はカソードで、第1電極EL1がカソードであれば第2電極EL2はアノードでありうる。第2電極EL2は、Ag、Mg、Cu、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr、Li、Ca、LiF、Mo、Ti、W、In、Sn、及びZnのうちから選択される少なくとも一つ、これらのうちから選択される2種以上の化合物、これらのうちから選択される2種以上の混合物、またはこれらの酸化物を含む。
【0296】
第2電極EL2は、透過型電極、半透過型電極、または反射型電極である。第2電極EL2が透過型電極であれば、第2電極EL2は透明金属酸化物、例えば、ITO、IZO、ZnO、ITZOなどからなる。
【0297】
第2電極EL2が半透過型電極または反射型電極であれば、第2電極EL2は、Ag、Mg、Cu、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr、Li、Ca、LiF/Ca(LiFとCaの積層構造)、LiF/Al(LiFとAlの積層構造)、Mo、Ti、Yb、W、またはこれらを含む化合物や混合物(例えば、AgMg、AgYb、またはMgYb)を含みうる。または、第2電極EL2は、前記物質からなる反射膜や半透過膜、及びITO、IZO、ZnO、ITZOなどからなる透明導電膜を含む複数の層構造でありうる。例えば、第2電極EL2は、上述した金属材料、上述した金属材料のうちから選択される2種以上の金属材料の組み合わせ、または上述した金属材料の酸化物などを含んでもよい。
【0298】
図示していないが、第2電極EL2は補助電極と連結される。第2電極EL2が補助電極と連結されれば、第2電極EL2の抵抗を減少させる。
【0299】
一方、一実施例の発光素子EDの第2電極EL2の上には、キャッピング層CPLが更に配置される。キャピング層CPLは、多層または単層を含む。
【0300】
一実施例において、キャッピング層CPLは有機層または無機層である。例えば、キャッピング層CPLが無機物を含めば、無機物は、LiFなどのアルカリ金属化合物、MgF2などのアルカリ土類化合物、SiON、SiNx、SiOyなどを含んでもよい。
【0301】
例えば、キャッピング層CPLが有機物を含めば、有機物は、α-NPD、NPB、TPD、m-MTDATA、Alq3、CuPc、TPD15(N4,N4,N4’,N4’-テトラ(ビフェニル-4-イル)ビフェニル-4,4’-ジアミン)、TCTA(4,4’,4”-トリス(カルバゾール ソル-9-イル)トリフェニルアミン)などを含むか、エポキシ樹脂、またはメタクリレートといったアクリレートを含んでもよい。但し、実施例はこれに限らず、キャッピング層CPLは、下記のような化合物P1乃至P5のうち少なくとも一つを含んでもよい。
【0302】
【0303】
一方、キャッピング層CPLの屈折率は1.6以上である。詳しくは、550nm以上660nm以下の波長範囲の光に対してキャッピング層CPLの屈折率は1.6以上である。
【0304】
図7及び
図10は、それぞれ一実施例による表示装置に対する断面図である。以下、
図7乃至
図10を参照して説明する一実施例に対する表示装置に関する説明において、上述した
図1乃至
図6で説明した内容と重複する内容は再度説明せず、差を中心に説明する。
【0305】
図7を参照すると、一実施例による表示装置DD-aは、表示素子層DP-EDを含む表示パネルDPと、表示パネルDPの上に配置される光制御層CCLと、カラーフィルタ層CFLとを含む。
【0306】
図7に示した一実施例において、表示パネルDPは、ベース層BSと、ベース層BSの上に提供される回路層DP-CLと、表示素子層DP-EDとを含み、表示素子層DP-EDは発光素子EDを含む。
【0307】
発光素子EDは、第1電極EL1、第1電極EL1の上に配置される正孔輸送領域HTR、正孔輸送領域HTRの上に配置される発光層EML、発光層EMLの上に配置される電子輸送領域ETR、及び、電子輸送領域ETRの上に配置される第2電極EL2を含む。一方、
図7に示した発光素子EDの構造は、上述した
図3乃至
図6の発光素子の構造が同じく適用される。
【0308】
一実施例による表示装置DD-aに含まれる発光素子EDの発光層EMLは、上述した一実施例の第2化合物、第3化合物、及び第4化合物のうち少なくとも一つと、第1化合物とを含む。
【0309】
図7を参照すると、発光層EMLは画素定義膜PDLに定義される開口部OH内に配置される。例えば、画素定義膜PDLによって区分されて各発光領域PXA-R、PXA-G、PXA-Bに対応して提供される発光層EMLは同じ波長領域の光を放出する。一実施例の表示装置DD-aにおいて、発光層EMLは青色光を放出する。一実施例の表示装置DDにおいて、発光層EMLは青色光を放出する。一方、図示とは異なって、一実施例の発光層EMLは発光領域PXA-R、PXA-G、PXA-B全体に共通に層として供されてもよい。
【0310】
光制御層CCLは表示パネルDPの上に配置される。光制御層CCLは光変換体を含む。光変換体は量子ドットまたは蛍光体などである。光変換体は、提供された光を波長変換して放出する。つまり、光制御層CCLは量子ドットを含む層であるか、または蛍光体を含む層である。
【0311】
光制御層CCLは、複数個の光制御部CCP1、CCP2、CCP3を含む。光制御部CCP1、CCP2、CCP3は互いに離隔されている。
【0312】
図7を参照すると、互いに離隔されている光制御部CCP1、CCP2、CCP3の間に分割パターンBMPが提供されるが、実施例はこれに限らない。
図7において、分割パターンBMPは、光制御部CCP1、CCP2、CCP3と重ならないものとして示されているが、光制御部CCP1、CCP2、CCP3のエッジは、分割パターンBMPと少なくとも一部が重なってもよい。
【0313】
光制御層CCLは、発光素子EDから提供される第1色光を第2色光に変換する第1量子ドットQD1を含む第1光制御部CCP1と、第1色光を第3色光に変換する第2量子ドットQD2を含む第2光制御部CCP2と、第1色光を透過させる第3光制御部CCP3とを含む。
【0314】
一実施例において、第1光制御部CCP1は第2色光である赤色光を提供し、第2光制御部CCP2は第3色光である緑色光を提供する。第3光制御部CCP3は、発光素子EDから提供された第1色光である青色光を透過させて提供する。例えば、第1量子ドットQD1は赤色の量子ドットで、第2量子ドットQD2は緑色の量子ドットであってもよい。量子ドットQD1、QD2については、上述した内容と同じ内容が適用される。
【0315】
また、光制御層CCLは散乱体SPを更に含む。第1光制御部CCP1は第1量子ドットQD1と散乱体SPを含み、第2光制御部CCP2は第2量子ドットQD2と散乱体SPを含み、第3光制御部CCP3は量子ドットを含まずに散乱体SPを含む。
【0316】
散乱体SPは無機粒子である。例えば、散乱体SPは、TiO2、ZnO、Al2O3、SiO2、及び中空シリカのうち少なくとも一つを含む。散乱体SPは、TiO2、ZnO、Al2O3、SiO2、及び中空シリカのうちの少なくともいずれか一つを含むか、TiO2、ZnO、Al2O3、SiO2、及び中空シリカのうちから選択される2種以上の物質が混合されたものであってもよい。
【0317】
第1光制御部CCP1、第2光制御部CCP2、及び第3光制御部CCP3それぞれは、量子ドットQD1、QD2及び散乱体SPを分散させるベース樹脂BR1、BR2、BR3を含む。一実施例において、第1光制御部CCP1は第1ベース樹脂BR1内に分散された第1量子ドットQD1と散乱体SPを含み、第2光制御部CCP2は第2ベース樹脂BR2内に分散された第2量子ドットQD2と散乱体SPを含み、第3光制御部CCP1は第3ベース樹脂BR3内に分散された散乱体SPを含む。ベース樹脂BR1、BR2、BR3は量子ドットQD1、QD2及び散乱体SPが分散される媒質であって、一般にバインダと称される多様な樹脂組成物からなる。例えば、ベース樹脂BR1、BR2、BR3はアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコン系樹脂、エポキシ系樹脂などであってもよい。ベース樹脂BR1、BR2、BR3は透明樹脂である。一実施例において、第1ベース樹脂BR1、第2ベース樹脂BR2、及び第3ベース樹脂BR3は、互いに同じであるか異なる。
【0318】
光制御層CCLはバリア層BFL1を含む。バリア層BFL1は、水分及び/または酸素(以下、「水分/酸素」と称する)の浸透を防ぐ役割をする。バリア層BFL1は、光制御部CCP1、CCP2、CCP3の上に配置されて、光制御部CCP1、CCP2、CCP3が水分/酸素に露出されることを遮断する。一方、バリア層BFL1は光制御部CCP1、CCP2、CCP3をカバーする。また、光制御部CCP1、CCP2、CCP3とカラーフィルタ層CFLとの間にも、バリア層BLF2が提供されてもよい。
【0319】
バリア層BFL1、BFL2は、少なくとも一つの無機層を含む。つまり、バリア層BFL1、BFL2は無機物質を含んで形成される。例えば、バリア層BFL1、BFL2は、シリコン窒化物、アルミニウム窒化物、ジルコニウム窒化物、チタン窒化物、ハフニウム窒化物、タンタル窒化物、シリコン酸化物、アルミニウム酸化物、チタン酸化物、錫酸化物、セリウム酸化物、及びシリコン酸窒化物や、光透過率が確保された金属薄膜などを含んで形成される。一方、バリア層BFL1、BFL2は有機膜を更に含む。バリア層バリア層BFL1、BFL2は、単一の層または複数の層からなる。
【0320】
一実施例の表示装置DDにおいて、カラーフィルタ層CFLは色制御層CCLの上に配置される。例えば、カラーフィルタ層CFLは、色制御層CCLの上に直接配置されてもよい。この場合、バリア層BFL2は省略されうる。
【0321】
カラーフィルタ層CFLは、フィルタCF1、CF2、CF3を含む。カラーフィルタCFLは、第2色光を透過させる第1フィルタCF1、第3色光を透過させる第2フィルタCF2、及び第1色光を透過させる第3フィルタCF3を含む。例えば、第1フィルタCF1は赤色フィルタで、第2フィルタCF2は緑色フィルタで、第3フィルタCF3は青色フィルタであってもよい。フィルタCF1、CF2、CF3のそれぞれは、高分子感光樹脂と、顔料または染料とを含む。第1フィルタCF1は赤色の顔料または染料を含み、第2フィルタCF2は緑色の顔料または染料を含み、第3フィルタCF3は青色の顔料または染料を含みうる。一方、実施例はこれに限らず、第3フィルタCF3は顔料または染料を含まなくてもよい。第3フィルタCF3は高分子感光樹脂を含み、顔料または染料を含まないのでありうる。第3フィルタCF3は透明でありうる。第3フィルタCF3は透明な感光樹脂からなりうる。
【0322】
また、一実施例において、第1フィルタCF1と第2フィルタCF2は黄色(yellow)フィルタである。第1フィルタCF1と第2フィルタCF2は互いに区分されずに一体で提供されてもよい。第1乃至第3フィルタCF1、CF2、CF3それぞれは、赤色発光領域PXA-R、緑色発光領域PXA-G、及び青色発光領域PXA-Bそれぞれに対応して配置される。
【0323】
一方、図示していないが、カラーフィルタ層CFLは遮光部(図示せず)を含む。カラーフィルタ層CFLは、隣り合うフィルタCF1、CF2、CF3の境界に重なるように配置される遮光部BMを含みうる。遮光部BMはブラックマトリクスである。遮光部BMは、黒色顔料または黒色染料を含む有機遮光物質または無機遮光物質を含んで形成されうる。遮光部BMは、隣接するフィルタCF1、CF2、CF3の間の境界を区分する。また、一実施例において、遮光部BMは青色フィルタで形成される。
【0324】
カラーフィルタ層CFLの上にはベース基板BLが配置される。ベース基板BLは、カラーフィルタ層CFL及び光制御層CCLなどが配置されるベース面を提供する部材である。ベース基板BLは、ガラス基板、金属基板、プラスチック基板などである。しかし、実施例はこれに限られず、ベース基板BLは無機層、有機層、または複合材料層であってもよい。また、図示とは異なって、一実施例においてベース基板BLは省略されてもよい。
【0325】
図8は、一実施例による表示装置の一部を示す断面図である。
図8では、
図7の表示パネルDPに対応する一部分の断面図を示す。一実施例の表示装置DD-TDにおいて、発光素子ED-BTは、複数個の発光構造OL-B1、OL-B2、OL-B3を含みうる。発光素子ED-BTは、互いに向き合う第1電極EL1と第2電極EL2、及び、第1電極EL1と第2電極EL2との間で厚さ方向に順次に積層されて提供される複数の発光構造OL-B1、OL-B2、OL-B3を含む。発光構造OL-B1、OL-B2、OL-B3のそれぞれは、発光層EML(
図7)、及び、発光層EML(
図7)を間に挟んで配置される、正孔輸送領域HTRと電子輸送領域ETRを含む。
【0326】
つまり、一実施例の表示装置DD-TDに含まれる発光素子ED-BTは、複数の発光層を含むタンデム構造の発光素子である。
【0327】
図8に示した一実施例において、発光構造OL-B1、OL-B2、OL-B3それぞれから放出される光はいずれも青色光である。しかし、実施例はこれに限らず、発光構造OL-B1、OL-B2、OL-B3のそれぞれから放出される光の波長領域は互いに異なり得る。例えば、互いに異なる波長領域の光を放出する複数個の発光構造OL-B1、OL-B2、OL-B3を含む発光素子ED-BTは、白色光を放出してもよい。
【0328】
隣り合う発光構造OL-B1、OL-B2、OL-B3の間には、電荷生成層CGL1、CGL2が配置される。電荷生成層CGL1、CGL2は、p型電荷生成層及び/またはn型電荷生成層を含む。
【0329】
一実施例の表示装置DD-TDに含まれる発光創造OL-B1、OL-B2、OL-B3のうちの少なくとも一つに、上述した一実施例の第1化合物、第2化合物、第3化合物、及び第4化合物のうちの少なくとも一つを含む。
【0330】
図9を参照すると、一実施例による表示装置DD-bは、2つの発光層が積層される発光素子ED-1、ED-2、ED-3を含む。
図2に示した一実施例の表示装置DDと比較した場合、
図9に示した一実施例は、第1乃至第3発光素子ED-1、ED-2、ED-3が、それぞれ厚さ方向に積層される2つの発光層を含むことに差がある。第1乃至第3発光素子ED-1、ED-2、ED-3のそれぞれにおいて、2つの発光層は同じ波長領域の光を放出しうる。
【0331】
第1発光素子ED-1は、第1赤色発光層EML-R1及び第2赤色発光層EML-R2を含みうる。第2発光素子ED-2は、第1緑色発光層EML-G1及び第2緑色発光層EML-G2を含みうる。また、第3発光素子ED-3は、第1青色発光層EML-B1及び第2青色発光層EML-B2をみうる。第1赤色発光層EML-R1と第2赤色発光層EML-R2との間、第1緑色発光層EML-G1と第2緑色発光層EML-G2との間、及び第1青色発光層EML-B1と第2青色発光層EML-B2との間には、発光補助部OGが配置されうる。
【0332】
発光補助部OGは、単層または多層を含む。発光補助部OGは電荷生成層を含む。より詳しくは、発光補助部OGは、順次に積層される電子輸送領域と、電荷生成層と、正孔輸送領域とを含む。発光補助部OGは、第1乃至第3発光素子ED-1、ED-2、ED-3全体にわたって共通層として提供される。但し、実施例はこれに限られず、発光補助部OGは、画素画定膜PDLにより区画された開口部OH内にパターニングされて提供されてもよい。
【0333】
第1赤色発光層EML-R1、第1緑色発光層EML-G1、及び第1青色発光層EML-B1は、電子輸送領域ETRと発光補助部OGとの間に配置されうる。第2赤色発光層EML-R2、第2緑色発光層EML-G2、及び第2青色発光層EML-B2は、発光補助部OGと正孔輸送領域HTR との間に配置されうる。
【0334】
つまり、第1発光素子ED-1は、順次に積層される第1電極EL1と、正孔輸送領域HTRと、第2赤色発光層EML-R2と、発光補助部OGと、第1赤色発光層EML-R1と、電子輸送領域ETRと、第2電極EL2とを含む。第2発光素子ED-2は、順次に積層される第1電極EL1と、正孔輸送領域HTRと、第2緑色発光層EML-G2と、発光補助部OGと、第1緑色発光層EML-G1と、電子輸送領域ETRと、第2電極EL2とを含みうる。第3発光素子ED-3は、順次に積層される第1電極EL1と、正孔輸送領域HTRと、第2青色発光層EML-B2と、発光補助部OGと、第1青色発光層EML-B1と、電子輸送領域ETRと、第2電極EL2とを含みうる。
【0335】
一方、表示素子層DP-EDの上に光学補助層PLが配置される。光学補助層PLは偏光層を含む。光学補助層PLは、表示パネルDPの上に配置され、外部光による表示パネルDPにおける反射光を制御する。図示とは異なって、一実施例による表示装置において光学補助層PLは省略されてもよい。
【0336】
図9に示した一実施例の表示装置DD-bに含まれる少なくとも一つの発光層は、上述した一実施例の多環化合物を含む。例えば、一実施例において、第1青色発光層EML-B1及び第2青色発光層EML-B2のうちの少なくとも一つは、一実施例の多環化合物を含んでもよい。
【0337】
図8及び
図9とは異なって、
図10の表示装置DD-cは、4つの発光構造OL-B1、OL-B2、OL-B3、OL-C1を含むものとして示されている。発光素子ED-CTは、互いに向き合う第1電極EL1と第2電極EL2、及び、第1電極EL1と第2電極EL2との間で、厚さ方向に順次に積層される第1乃至第4発光構造OL-B1、OL-B2、OL-B3、OL-C1を含む。第1乃至第4発光構造OL-B1、OL-B2、OL-B3、OL-C1のそれぞれの間には、順次、電荷生成層CGL1、CGL2、CGL3が配置される。4つの発光構造うちの第1乃至第3発光構造OL-B1、OL-B2、OL-B3は青色光を発光し、第4発光構造OL-C1は緑色光を発光しうる。しかし、実施例はこれに限られず、第1乃至第4発光構造OL-B1、OL-B2、OL-B3、OL-C1は、互いに異なる波長領域の光を発光してもよい。
【0338】
隣り合う発光構造OL-B1、OL-B2、OL-B3、OL-C1の間に配置される電荷生成層GCL1、CGL2、CGL3は、p型の電荷生成層及び/またはn型の電荷生成層を含む。
【0339】
一実施例の表示装置DD-cに含まれる発光構造OL-B1、OL-B2、OL-B3、OL-C1のうちの少なくとも一つに上述した一実施例の第1化合物を含み、第2化合物、第3化合物、及び第4化合物のうちの少なくとも一つを含む。
【0340】
本発明の一実施例による発光素子EDは、上述した一実施例の多環化合物を、第1電極EL1と第2電極EL2との間に配置される正孔輸送領域HTR、発光層EML、及び、電子輸送領域ETRのうちの少なくとも一つに含むか、またはキャッピング層CPLに含む。
【0341】
例えば、一実施例による第1化合物が一実施例の発光素子EDの発光層EMLに含まれることで、一実施例の発光素子は高効率及び長寿命特性を示す。
【0342】
上述した一実施例の第1化合物は一つの窒素原子を中心に2つのホウ素原子が結合されるBNB構造を含み、振動子強度(oscillator strength、f)を上げる置換基を有することで、発光材料として使用されれば、発光素子の寿命を向上させるだけでなく、発光素子の効率を上げることができる。
【0343】
以下では実施例及び比較例を参照し、本発明の一実施形態による第1化合物として使用される多環化合物及び一実施例の発光素子について詳しく説明する。また、以下に示す実施例は本発明の理解を助けるための一例示であって、本発明の範囲はこれに限らない。
【0344】
[実施例]
1.一実施例の多環化合物の合成
まず、本実施形態による多環化合物の合成方法について、化合物A-1、化合物A-20、及び化合物B-13の合成方法を例示して詳しく説明する。また、以下で説明する多環化合物の合成法は一実施例であって、本発明の実施形態による多環化合物の合成法は下記実施例に限らない。
【0345】
(1)化合物A-1の合成
一実施例による多環化合物A-1は、例えば、下記反応式1のステップによって合成される。
【0346】
【0347】
1)5-クロロ-N1,N1,N3,N3-テトラフェニルベンゼン-1,3-ジアミン(15g)を含むジエチルエーテル(250ml)溶液を-78℃に冷却させ、ここに1.60Mのt-BuLiペンタン溶液を46ml滴下した。反応溶液を0℃で3時間撹拌した後、更に-78℃に冷却し、B(OMe)3(9.3ml)を滴下した。反応溶液を室温で3時間撹拌した後、1N HCl溶液に注ぎ、目的物をジエチルエーテルから抽出して、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮した。得られた混合物をシリカゲルクロマトグラフィで精製し、中間体化合物IM-1を7.9g(収率52%)得た。
【0348】
2)前記で得られた中間体化合物IM-1(7.9g)と2,6-ジブロモアニリン(1.76g)、炭酸カリウム(8g)、Pd(PPh3)4(400mg)を含むトルエン(100ml)、エタノール(20ml)、水(20ml)溶液を、90℃の加熱条件下で3時間加熱還流した。室温まで冷却した後、反応溶液を水に注いだ。目的物をトルエンから抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮した。得られた混合物をシリカゲルクロマトグラフィで精製し、中間体化合物IM-2を4.2g(収率65%)得た。
【0349】
3)前記で得られた中間体化合物IM-2(3g)を含むo-ジクロロベンゼン(50ml)溶液を0℃に冷却し、BBr3(1.25ml)を滴下した後、150℃まで昇温し7時間加熱撹拌した。室温まで冷却した後、反応溶液にDIPEAを注いだ。目的物をトルエンから抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮した。得られた混合物をシリカゲルクロマトグラフィで精製し、目的物のA-1を2g(収率67%)得た。
【0350】
また、FAB-MS測定によって、目的物A-1の分子量が930であることを確認した。得られた目的物A-1は、更に昇華精製し、評価用試料として使用した。
【0351】
(2)化合物A-20の合成
一実施例による多環化合物A-20は、例えば、下記反応式2のステップによって合成される。
【0352】
【0353】
1)2,6-ジフェニルアニリン(25g)と1,3-ジブロモ-5-クロロベンゼン(30.3g)、ナトリウムブトキシド(15g)、Pd2(dba)3(1g)、及びXantPhos(1.2g)を含むトルエン(700ml)溶液を、オイルバス加熱条件下で2時間加熱還流した。室温まで冷却した後、反応溶液を水に注いだ。目的物をトルエンから抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮した。得られた混合物をシリカゲルクロマトグラフィで精製し、中間体化合物IM-3を35g(収率79%)得た。
【0354】
2)前記で得られた中間体化合物IM-3(35g)とヨードベンゼン(400g)、CuI(3.5g)、炭酸カルシウム(25g)を含む混合物を、200℃の加熱条件下で15時間撹拌した。室温まで冷却した後、反応溶液を水に注いだ。目的物をジクロロメタンで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮した。得られた混合物をシリカゲルクロマトグラフィで精製し、中間体化合物IM-4を27g(収率65%)得た。
【0355】
3)前記で得られた中間体化合物IM-4(27g)と3,6-ジ-tert-ブチル-9H-カルバゾール(15g)、ナトリウムブトキシド(30g)、Pd2(dba)3(0.5g)、及びPH(tBu)3/BF4(0.6g)を含むトルエン(300ml)溶液を、オイルバス加熱条件下で2時間加熱還流した。室温まで冷却した後、反応溶液を水に注いだ。目的物をトルエンから抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮した。得られた混合物をシリカゲルクロマトグラフィで精製し、中間体化合物IM-5を26g(収率70%)得た。
【0356】
4)前記で得られた中間体化合物IM-5(26g)を含むジエチルエーテル(500ml)溶液を-78℃に冷却し、ここに1.60Mのt-BuLiペンタン溶液を50ml滴下した。反応溶液を0℃で3時間撹拌した後、更に-78℃に冷却し、B(OMe)3(10ml)を滴下した。反応溶液を室温で3時間撹拌した後、1N HCl溶液に注ぎ、目的物をジエチルエーテルから抽出して、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮した。得られた混合物をシリカゲルクロマトグラフィで精製し、中間体化合物IM-6を14.5g(収率55%)得た。
【0357】
5)前記で得られた中間体化合物IM-6(14.5g)と2,6-ジブロモアニリン(2g)、炭酸カリウム(6.7g)、Pd(PPh3)4(350mg)を含むトルエン(120ml)、エタノール(30ml)、水(30ml)溶液を、90℃の加熱条件下で3時間加熱還流した。室温まで冷却した後、反応溶液を水に注いだ。目的物をトルエンから抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮した。得られた混合物をシリカゲルクロマトグラフィで精製し、中間体化合物IM-7を6.1g(収率53%)得た。
【0358】
6)前記で得られた中間体化合物IM-7(3g)を含むo-ジクロロベンゼン(50ml)溶液を0℃に冷却し、BBr3(1.25ml)を滴下した後、150℃まで昇温し7時間加熱撹拌した。室温まで冷却した後、反応溶液にDIPEA(N,N-ジイソプロピルエチルアミン)を注いだ。目的物をトルエンから抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮した。得られた混合物をシリカゲルクロマトグラフィで精製し、目的物の化合物A-20を1.1g(収率37%)得た。
【0359】
また、FAB-MS測定によって、目的物の化合物A-20の分子量が1454であることを確認した。得られた目的物の化合物A-20は、更に昇華精製し、評価用試料として使用した。
【0360】
(3)化合物B-13の合成
一実施例による多環化合物B-13は、例えば、下記反応式3のステップによって合成される。
【0361】
【0362】
1)1-ブロモ-3,5-ジフェニルベンゼン(25g)と2-アミノビフェニル(13.7g)、ナトリウムブトキシド(23.3g)、Pd2(dba)3(0.74g)、及びPH(tBu)3/BF4(0.94g)を含むトルエン(400ml)溶液を、オイルバス加熱条件下で3時間加熱還流させた。室温まで冷却した後、反応溶液を水に注いだ。目的物をトルエンから抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮した。得られた混合物をシリカゲルクロマトグラフィで精製し、中間体化合物IM-8を15g(収率47%)得た。
【0363】
2)前記で得られた中間体化合物IM-8(15g)と9-(3,5-ジブロモフェニル)-9H-カルバゾール(7.7g)、ナトリウムブトキシド(8g)、Pd2(dba)3(0.65g)、及びPH(tBu)3/BF4(0.8g)を含むトルエン(150ml)溶液を、オイルバス加熱条件下で2時間加熱還流した。室温まで冷却した後、反応溶液を水に注いだ。目的物をトルエンから抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮した。得られた混合物をシリカゲルクロマトグラフィで精製し、中間体化合物IM-9を8.3g(収率60%)得た。
【0364】
3)前記で得られた中間体化合物IM-9(8.3g)を含むジエチルエーテル(80ml)溶液を-78℃に冷却し、ここに1.60Mのn-BuLiヘキサン溶液を18ml滴下した。反応溶液を0℃で3時間撹拌した後、更に-78℃に冷却し、B(OMe)3(3.2ml)を滴下した。反応溶液を室温で3時間撹拌した後、1N HCl溶液に注ぎ、目的物をジエチルエーテルから抽出して、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮した。得られた混合物をシリカゲルクロマトグラフィで精製し、中間体化合物IM-10を5g(収率63%)得た。
【0365】
4)前記で得られた中間体化合物IM-10(5g)と2,6-ジブロモアニリン(0.9g)、炭酸カリウム(3g)、Pd(PPh3)4(200mg)を含むトルエン(80ml)、エタノール(20ml)、水(20ml)溶液を、90℃の加熱条件下で5時間加熱還流した。室温まで冷却した後、反応溶液を水に注いだ。目的物をトルエンから抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮した。得られた混合物をシリカゲルクロマトグラフィで精製し、中間体化合物IM-11を3.1g(収率63%)得た。
【0366】
5)前記で得られた中間体化合物IM-11(3.1g)を含むo-ジクロロベンゼン(50ml)溶液を0℃に冷却し、BBr3(1.5ml)滴下した後、150℃まで昇温し7時間加熱撹拌した。室温まで冷却した後、反応溶液にDIPEAを注いだ。目的物をトルエンから抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮した。得られた混合物をシリカゲルクロマトグラフィで精製し、目的物の化合物B-13を0.8g(収率25%)得た。
【0367】
また、FAB-MS測定によって、目的物の化合物B-13の分子量が1382であることを確認した。得られた目的物の化合物B-13は更に昇華精製し、評価用試料として使用した。
【0368】
2.発光素子の製作と評価
実施例及び比較例の化合物を発光層に含む発光素子に対する評価を下記方法で行った。素子評価のための発光素子の製作方法は以下に記載した。
【0369】
詳しくは、実施例化合物A-1、A-20、及びB-13をそれぞれ発光層のドーパント材料として使用して、実施例1乃至実施例3の発光素子を製作した。また、比較例1及び比較例4は、比較例化合物R1乃至R4を発光層ドーパント材料としてそれぞれ使用して制作された発光素子である。
【0370】
【0371】
【0372】
<発光素子の製作>
ITOで厚さ150nmの第1電極を形成し、第1電極の上にHAT-CN(ジピラジノ[2,3-f:2’,3’-h]キノキサリン-2,3,6,7,10,11-ヘキサカルボニトリル)で厚さ10nmの正孔注入層を形成し、正孔注入層の上にα-NPD(N,N’-ジ(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニル-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジアミン)でもって厚さ80nmの正孔輸送層を形成し、正孔輸送層の上にmCP(1,3-ビス(N-カルバゾリル)ベンゼン)でもって厚さ5nmの発光補助層を形成し、発光補助層の上に、ホスト(mCBP(3,3’-ジ(9H-カルバゾール-9-イル)-1,1’-ビフェニル))に実施例化合物または比較例化合物を6%ドープしたものを用いて厚さ20nmの発光層を形成し、発光層の上にTPBi(2,2’、2”-(1,3,5-Benzinetriyl)-トリス(1-フェニル-1-H-ベンズイミダゾール))でもって厚さ30nmの電子輸送層を形成し、電子輸送層の上にLiFでもって厚さ0.5nmの電子注入層を形成し、電子注入層の上にAlでもって厚さ100nmの第2電極を形成した。各層は、真空雰囲気下で蒸着法によって形成した。
【0373】
発光素子の製作に使用された下記物質は公知の物質であり、市販品を昇華精製して素子の製作に使用した。
【0374】
【0375】
(実験例)
実施例及び比較例に対する特性評価結果において、電流密度1000cd/m2における輝度及び発光波長をKeithley MU 236及び輝度計PR650を利用して測定した。また、素子寿命は、初期輝度に対する輝度が95%になるのにかかる時間を測定し、比較例1を基準に相対寿命を計算したものである。その結果を表1にそれぞれ示した。半値幅(FWQM)は、HORIBA社製のfluoromax+ spectrometer装備にxenon light source及びmonochromatorが取り付けられた状態で、FluorEssence softwareを利用して測定した。
【0376】
【0377】
表1の結果を参照すると、本発明の一実施例による縮合多環化合物を発光材料として使用した発光素子の実施例の場合、比較例に比べ、素子寿命が向上されていることが分かる。実施例化合物の場合、窒素原子を中心に2つのホウ素原子が結合されたBNBの板状骨格構造を有することで、多環芳香環構造が安定化され、多重共鳴効果が増大される。それによって、実施例化合物が熱活性遅延蛍光ドーパントとして使用される際、半値幅と波長範囲が青色発光材料として適切である。また、実施例化合物は縮合環のコアに、立体障害置換基が連結される構造を有することで、振動子強度(f)が高くなって材料の安定性が増加し、素子寿命が改善されていることが分かる。
【0378】
それに対し、比較例1で使用した比較例化合物R1は、実施例化合物の中心骨格を構成するBNB骨格を有しておらず、実施例に比べ、素子特性が低下していることが分かる。
【0379】
比較例2で使用した比較例化合物R2は、BNB骨格を有してはいるものの、実施例化合物が必須に含む置換基(本明細書において化学式2で表される置換基)については有していない。また、比較例3で使用した比較例化合物R3は、本発明による化学式1で表される多環化合物において、Ar2-Ar3部位が縮合されている。それによって、比較例2及び比較例3は、いずれも実施例に比べ寿命特性が著しく低下していることが分かる。比較例4の場合も、実施例に比べ寿命特性が低下していることが分かる。
【0380】
これまで本発明の好ましい実施例を参照して説明したが、該当技術分野における熟練した当業者または該当技術分野における通常の知識を有する者であれば、後述する請求の範囲に記載の本発明の思想及び技術領域から逸脱しない範囲内で、本発明を多様に修正及び変更し得ることを理解できるはずである。
【0381】
よって、本発明の技術的範囲は明細書の詳細な説明に記載の内容に限らず、特許請求の範囲によって決められるべきである。
【0382】
好ましい実施形態によると、下記のとおりである。
【0383】
本件の背景及び課題は下記(i)~(v)のとおりである。
【0384】
(i) 有機発光素子などに用いるために、三重項状態のエネルギーを利用するりん光発光に関する技術や、三重項励起子の衝突によって一重項例励起子が生成される現象(Triplet-triplet annihilation, TTA)を利用した遅延蛍光発光に関する技術などに関連した、熱活性遅延蛍光(Thermally Activated Delayed Fluorescence, TADF)材料の開発が行われている。
【0385】
(ii) 特許文献1は、B-N-Bをコアとして板状をなす化合物群について開示しており、請求項7の一般式(通式)1-1~1-6のとおりの化合物種を示している。
【0386】
上記一般式1-1~1-6によると、コアのまわりに5つのフェニル基が結合しており、このうちの3つのフェニル基が単結合(直接結合)により順次、互いに連結されており、このように連結された両端(紙面で右上及び左上)のフェニル基が、N,O,Cを介して、残りの2つ(紙面で右下及び左下)のフェニル基と、それぞれ連結されている。ここで、「残りの2つ(紙面で右下及び左下)のフェニル基」は、互いに連結されていない。
【0387】
また、上記両端(紙面で右上及び左上)のフェニル基は、いずれも、2つの連結基X3,X4を介して、それぞれ一つのさらなるフェニル基と結合されている。なお、ここでの連結基X3,X4は、「単結合、-O-、-S-、-C(R9)(R10)-又は-N(R11)-で」あるとされている(請求項1)。
【0388】
(iii) 一方、特許文献2の一般式(請求項1)によると、B-N-Bの中心のNと、N-B-Nの中心のBとが連結されて6つの原子によりコアをなし、このまわりに6つのフェニル基が連結され、これらのうち、2対のフェニル基が、隣接するもの同士で、単結合により連結している。
(iv) また、特許文献3の一般式(請求項1)によると、B-N-B-N-B-N-の6つの原子によるリングが、コアをなし、このまわりに6つのフェニル基が連結され、これら3対のフェニル基が、隣接するもの同士で、単結合により連結している。
【0389】
(v) しかし、発光効率及び素子寿命に優れた発光素子を提供すべく、さらなる改良や改変が求められる。
【0390】
そこで、好ましい一実施形態によると、下記A1のとおりとする。
下記A1は、特許文献1の一般式1-1~1-6(請求項7)と比較した場合、下記A2のような特徴を有する。
【0391】
A1 「化学式4-1」または「化学式4-2」で表される化合物種を、遅延蛍光発光の材料として用いる。
【0392】
A2 B-N-Bのコアに連結された5つのフェニル基の中で、単結合による三連のフェニル基のうちの両端(紙面で右上及び左上)のフェニル基が、そのパラ位(Bから見た4位)に結合されたNを介して、2つのフェニル基に連結されている。
すなわち、パラNジフェニル基となっている。
【0393】
また、好ましくは、下記A3~A4のとおりである。
【0394】
A3 「化学式4-1」及び「化学式4-2」のY1, Y2が、Nフェニル基となっている。(すなわち、Y1, Y2の箇所が「化学式3-1乃至化学式3-3」と同様である。)
このNフェニル基は、適宜に、隣接する「残りのフェニル基(紙面で右下または左下)」との間で単結合により連結されている。
Y1, Y2のNフェニル基や、上記のパラNジフェニル基には、適宜に、フェニル基やtert-ブチル基が追加される。
【0395】
A4 具体的には、本願[0162]~[0173]に示された[第1化合物群]の化合物を用いる。
【0396】
一具体例では、下記の本願実施例での化合物を用いる。
【0397】
上記の遅延蛍光発光用の化合物は、具体的に、下記A5~A7のようにして用いる。
【0398】
A5 上記の遅延蛍光発光用の化合物を、遅延蛍光発光用ドーパントとして、本願化学式HT([0013])の化合物を用いる。具体的には、本願[0215]~[0217]に示された[第2化合物群]の化合物を用いる。
【0399】
A6 電子輸送性ホスト物質として、本願化学式ET([0015])の化合物を用いる。具体的には、本願[0219]~[0220]に示された[第3化合物群]の化合物を用いる。
【0400】
A7 増感剤物質としてとして、本願化学式D-1([0017])の化合物を用いる。具体的には、本願[0222]~[0224]に示された[第4化合物群]の化合物を用いる。
【符号の説明】
【0401】
ED:発光素子 EL1:第1電極
EL2:第2電極 EML:発光層
HTR:正孔輸送領域 ETR:電子輸送領域