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特開2023-101507リチウムイオン二次電池の制御装置及びその制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101507
(43)【公開日】2023-07-21
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池の制御装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20230713BHJP
   H02J 7/04 20060101ALI20230713BHJP
【FI】
H01M10/48 301
H02J7/04 L
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074766
(22)【出願日】2023-04-28
(62)【分割の表示】P 2019571147の分割
【原出願日】2019-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2018020310
(32)【優先日】2018-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183265
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 剣一
(72)【発明者】
【氏名】山口 修一郎
(57)【要約】
【課題】リチウム二次電池が発煙、発火等の異常状態になる予兆を新たに見出すことで、リチウムイオン二次電池の異常発生を従来よりも正確に検出する。
【解決手段】リチウムイオン二次電池を制御する制御装置であって、リチウムイオン二次電池を構成する電池セルの温度を算出し、温度が所定期間内に所定量以上増加した場合、リチウムイオン二次電池が備える記憶部へ前記温度算出に基づく制御情報を記録する制御部、を備える。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン二次電池を制御する制御装置であって、
前記リチウムイオン二次電池を構成する電池セルの温度を算出し、
前記温度が所定期間内に所定量以上増加した場合、
リチウムイオン二次電池が備える記憶部へ前記温度算出に基づく制御情報を記録する制御部、を備えたリチウムイオン二次電池の制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記リチウムイオン二次電池の周囲温度の影響を抑制して前記電池セルの温度を算出する、請求項に記載のリチウムイオン二次電池の制御装置。
【請求項3】
リチウムイオン二次電池を制御する制御方法であって、
前記リチウムイオン二次電池を構成する電池セルの温度を算出するステップと、
前記温度が所定期間内に所定量以上増加した場合、
前記リチウムイオン二次電池が備える記憶部へ前記温度算出に基づく制御情報を記録する制御ステップと、
を備えたリチウムイオン二次電池の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リチウムイオン二次電池を制御する制御装置、その制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、リチウムをイオンの状態にした電解液を用いている。リチウムは反応が速く、反応熱によって発煙、発火するという特性を持つ。そのため、従来リチウムイオン二次電池では温度制御等をおこなうことで、発煙、発火に至る直前に稼動を停止させる等の対応がとられてきた。
【0003】
特許文献1では、リチウムイオン二次電池に温度計測装置を設置し、温度の変化を微分値等用いて管理することで、電池内部で生じる小短絡現象を把握し、電池の稼動停止を判断していた。この小短絡現象は特にリチウムイオン二次電池を過充電にした状態で生じやすいことが指摘されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-92476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし従来の技術ではリチウムイオン二次電池が発煙、発火にいたる直前の現象を捕らえることでこれらの事象の発生を抑制するものであった。そのため、異常を検出した場合でも十分な時間が確保できず対応できない可能性がある。
【0006】
また、異常の発生を従来以上に前もって検出しようとすると、正常なリチウムイオン二次電池に対してまで誤って異常と検出してしまう誤検出の問題もあった。
【0007】
本開示では、リチウム二次電池が発煙、発火等の異常状態になる予兆を新たに見出すことで、リチウムイオン二次電池の異常発生を従来よりも正確に検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示における制御装置は、リチウムイオン二次電池を制御する制御装置であって、リチウムイオン二次電池へ定電圧充電をおこなっている際の充電電流を検出し、充電電流が所定時間内に所定量の増加をした場合、リチウムイオン二次電池への充電を停止するとともに、リチウムイオン二次電池が備える記憶部へ充電電流増加に基づく制御情報を記録する制御部、を備える。
【0009】
本開示における制御装置は、リチウムイオン二次電池を制御する制御装置であって、リチウムイオン二次電池を構成する電池セルの温度を算出し、温度が所定期間内に所定量以上増加した場合、リチウムイオン二次電池が備える記憶部へ温度算出に基づく制御情報を記録する制御部、を備える。
【0010】
本開示における制御装置は、リチウムイオン二次電池を制御する制御装置であって、リチウムイオン二次電池への充電が所定電圧以上になった後に、リチウムイオン二次電池を構成する電池セルの電圧を検出し、電圧の電圧降下が基準モデルの電池セルの電圧降下と所定量以上異なる場合、リチウムイオン二次電池が備える記憶部へ電圧検出に基づく制御情報を記録する制御部、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示におけるリチウムイオン二次電池の制御装置は、新たな異常の予兆をみいだすことで、従来と比較してリチウムイオン二次電池の異常をより正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】リチウムイオン二次電池を搭載した電子機器の外観図。
図2】リチウムイオン二次電池を搭載した電子機器の機能構成図。
図3】リチウムイオン二次電池の構成図。
図4】リチウムイオン二次電池を充電する場合の充電方法を説明するグラフ。
図5】CV充電中の充電電流の様子を示すグラフ。
図6】CV充電中の電流増加を検出するフローチャート。
図7】電池セルブロックの温度変化例を示すグラフ。
図8】温度上昇検知処理の内容を示すフローチャート。
図9】満充電直後からの電池電圧の変化を示すグラフ。
図10】電池セルの電圧検出処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0014】
なお、発明者(ら)は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、リチウムイオン二次電池を搭載した電子機器の外観図である。パーソナルコンピュータ100は、動作するためにリチウムイオン二次電池(図示せず)を搭載している。リチウムイオン二次電池は例えば、キーボード101の裏側にあたる底面、あるいはキーボード101とディスプレイ102との接合部分の底面後側等に、格納される。
【0016】
本説明ではリチウムイオン二次電池を搭載した電子機器として、パーソナルコンピュータを例として示す。しかし、本開示はこれに限定されるものではない。リチウムイオン二次電池を搭載して動作する電子機器であれば他のものであってもよい。
【0017】
図2は、本実施の形態で説明するリチウムイオン二次電池を搭載した電子機器の機能構成図である。パーソナルコンピュータ100は、本体部200とリチウムイオン二次電池300とを備える。
【0018】
本体部200は、電源端子201と、制御部202と、負荷回路203と、を備える。
【0019】
電源端子201は、外部から電力が供給される際に電源線等が接続される端子である。ここから供給される電力を利用してリチウムイオン二次電池300は充電をおこなう。
【0020】
制御部202は、パーソナルコンピュータ100の負荷回路203、その他のハードウェア等を制御する。特に本実施の形態ではリチウムイオン二次電池300を制御部202が制御する。
【0021】
制御部202は、MPU(Micro-Procesing Unit)や専用IC(Integrated Circuit)等により実現(構成)することができる。また、制御部202は、DSP(Digital Signal Processor)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等により実現することができる。
【0022】
負荷回路203は、電源端子201から入力された電力、あるいは、リチウムイオン二次電池300から供給される電力により動作する電気回路である。パーソナルコンピュータ100の場合は、CPU、メモリ、ディスプレイ等一般的なコンピュータを構成する各種デバイスがこれに該当する。
【0023】
リチウムイオン二次電池300は、内部にリチウムイオン二次電池のセルを一つ又は複数備えている。これらのセルに充電、及び放電をさせることで本体部200からの電力を蓄積する、あるいは本体部200へ電力を供給することを可能とする。リチウムイオン二次電池300は、本体部200に、+接続端子及び-接続端子(電源接続端子)、及びデータ通信端子で電気的に接続される。
【0024】
図3は、本実施の形態で説明するリチウムイオン二次電池の構成図である。リチウムイオン二次電池300は、電池セルブロック310と、制御モジュール320とを有する。
【0025】
電池セルブロック310は、リチウムイオンを電解質とする充電が可能な電池セルを備える。電池セルブロック310は、リチウムイオン二次電池に求められる性能に応じて、1個あるいは複数個の電池セルを有する。
【0026】
制御モジュール320は、電池セルブロック310への充電や放電を制御する。制御モジュール320は、+端子321、-端子322、DATA端子323、電流検出抵抗324、充電スイッチ325、放電スイッチ326、ヒューズ327、スイッチ328、第1電池制御部329、第2電池制御部330、第1温度センサ331、及び第2温度センサ332を備える。
【0027】
+端子321、-端子322は、本体部200からリチウムイオン二次電池300へ充電する際、あるいはリチウムイオン二次電池300から本体部200へ放電する際に電気的に接続される端子である。リチウムイオン二次電池300は、本体部200との間で直流電力の授受をおこなう。
【0028】
DATA端子323は、本体部200とリチウムイオン二次電池300とが通信をおこなう際に用いられる端子である。より具体的には本体部200の制御部202とリチウムイオン二次電池300の第1電池制御部329とが、この端子を介してデータやコマンド等を送受信する。
【0029】
電流検出抵抗324は、リチウムイオン二次電池300から放電される電力の電流、あるいはリチウムイオン二次電池300へ充電する際の電力の電流を検出するために利用される電気抵抗である。この両端の電圧差を第1電池制御部329が計測し、電流値を算出する。
【0030】
充電スイッチ325及び放電スイッチ326はそれぞれ電池セルブロック310を制御するために使用されるスイッチである。これらのスイッチは第1電池制御部329により制御される。
【0031】
電池セルブロック310へ電力を充電している際に、第1電池制御部329は、電池セルブロック310を構成する電池セルが過電圧の状態や過放電の状態となるのを抑制するために、充電スイッチ325及び放電スイッチ326を制御する。これらのスイッチは例えばMOSFET等により実現される。
【0032】
ヒューズ327は、電池セルブロック310を過電流あるいは過充電(過電圧)から保護する目的で備えられている。第2電池制御部330は、電池セルブロック310への過電流や過電圧等を検出すると、スイッチ328を通電させてヒューズ327の抵抗へ電流を流す。ヒューズ327の抵抗は電流による発熱でヒューズ327を溶断させる。これにより電池セルブロック310を電気的に切り離し、過電流あるいは過電圧から保護している。
【0033】
第1電池制御部329は、リチウムイオン二次電池300全体を制御する。第1電池制御部329はDATA端子323を介して本体部200の制御部202と通信をおこなう。第1電池制御部329は、電流検出抵抗324の両端から取得した電圧差に基づいて電流値を算出する。
【0034】
第1電池制御部329は充電スイッチ325や放電スイッチ326の制御もおこなう。第1電池制御部329は、第1温度センサ331や第2温度センサ332から温度情報も取得する。電流や温度だけでなく、第1電池制御部329は、電池セルブロック310の電圧も計測する。なお、電池セルブロック310が複数の電池セルにより直列接続で構成されている場合、全体としての電圧だけでなく、全ての電池セルの電圧を個別に計測する。
【0035】
第1電池制御部329は、不揮発性の記憶媒体(図示せず)に接続されている。これらは例えばEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)やNAND型フラッシュメモリ等で実現することができる。第1電池制御部329は、算出した電流値、取得した温度情報、及び電池セルブロック310の電圧値を、必要に応じてこれらの記憶媒体へ記録・保持する。また、第1電池制御部329は、制御部202から指示された情報をこの記憶媒体に記録する。
【0036】
第2電池制御部330は、電池セルブロック310を保護する目的で備えられている。第2電池制御部330は、第1電池制御部329が充電スイッチ325及び放電スイッチ326を制御しているにもかかわらず電池セルブロック310の異常等が検出された場合に、スイッチ328をONにし、これによりヒューズ327を溶断させる。
【0037】
なお、第1電池制御部329及び第2電池制御部330は、MPU(Micro-Procesing Unit)や専用IC(Integrated Circuit)等により実現(構成)することができる。また、第1電池制御部329及び第2電池制御部330は、DSP(Digital Signal Processor)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等により実現することができる。
【0038】
第1電池制御部329に接続される不揮発性の記憶媒体は、第1電池制御部329とは独立して設けられてもよいし、第1電池制御部329の内部に設けられてもよい。
【0039】
第1温度センサ331は、充電スイッチ325や放電スイッチ326の温度を計測する。第2温度センサ332は、電池セルブロック310の温度を計測する。電池セルブロック310が複数の電池セルから構成されている場合、第2温度センサ332は、それぞれの電池セルの温度を計測できるように構成されてもよい。
【0040】
図4は、リチウムイオン二次電池を充電する場合の充電方法を説明するグラフである。上段グラフ及び下段グラフの横軸は時間を示す。上段グラフの縦軸は電圧を示し、下段グラフの縦軸は電流を示す。
【0041】
本実施の形態で説明するリチウムイオン二次電池では定電流定電圧方式とよばれる方法で充電をおこなう。この充電方法では、充電の初期段階(時間t1までの期間)では電池セルブロック310に一定電流による充電をおこなう。その際、電圧は充電量に応じて上昇する。以下本実施の形態の説明では、この充電方式を「CC充電」と称する。
【0042】
電圧が満充電の近傍まで上昇すると、電圧を一定にして充電をおこなう(時間t1~t2の期間)。電圧を一定にした充電では、電池セルブロック310内部の電圧が上昇するに従って充電電流が減少していく。以下本実施の形態の説明では、この充電方式を「CV充電」と称する。充電が完了(時間t2)すると充電を終了する。
【0043】
上記の充電制御を第1電池制御部329と制御部202が、電池セルブロック310から取得した電池電圧値や算出した電流値等に基づいて制御する。
【0044】
リチウムイオン二次電池が発煙、発火等にいたる要因としては、例えば、先行技術文献等でも示されているようにリチウムイオン二次電池の過充電が考えられる。他の要因としては、例えば、リチウムイオン二次電池内部に金属異物が混入していることが考えられる。このような異物の混入は、リチウムイオン二次電池の製造に用いる材料に異物が混在している場合や電池の製造段階で異物が内部に混じりこむこんだ場合に、生じると考えられる。
【0045】
リチウムイオン二次電池内部に金属異物が混じっていると、電池の使用中にこの異物が電池内部で小短絡を引き起こす可能性がある。
【0046】
図5は、図4で説明したCV充電時における充電電流の様子を示したグラフである。図5(A)及び図5(B)の横軸は時間を示し、縦軸は電流値を示す。
【0047】
図5(A)は、正常なリチウムイオン二次電池における充電電流の減少を示すグラフである。リチウムイオン二次電池が正常である場合、充電電流はほぼ単調に減少していく。これは、リチウムイオン二次電池が満充電に近づくにつれて電池抵抗が大きくなり電流値が減少するためである。
【0048】
図5(B)は、リチウムイオン二次電池内部で局所的に小短絡等が発生した場合における充電電流の減少を示すグラフである。電池内部で電気的な短絡が発生する原因としては、電池内部に金属異物が含まれていることや、電極体に比較的大きなバリが存在していることなどの様々な原因が考えられる。このような原因により短絡が生じると、一時的にリチウムイオン二次電池の電気抵抗が低下して、電流値が増大するものと考えられる。
【0049】
電池内部で生じた短絡現象が局所的に収束すると、リチウムイオン二次電池全体としての電気抵抗が短絡前の状態に戻る。そのため電流値の減少も元のペースに戻る。この短絡現象が収束しないと発熱が継続し、最終的に発煙、発火にいたると考えられる。
【0050】
本出願の発明者は発煙、発火にいたったリチウムイオン二次電池の状態を継続的に観察した結果、このような問題が生じるリチウムイオン二次電池では、問題が生じる前に、上記のような事象が観察されるケースがあることを見出した。そこで本出願の発明者は、この事象を捕らえることでリチウムイオン二次電池の異常予兆検出をおこない、より安全な取り扱いを提案する。
【0051】
上記の検出方法に関して、図6のフローチャートを用いて説明する。このフローチャートの処理は、図2で説明した制御部202及び第1電池制御部329により行われる。
【0052】
(ステップS601)第1電池制御部329が電流検出抵抗324の両端の電圧値を取得する。
【0053】
(ステップS602)第1電池制御部329は、取得した電流検出抵抗324の両端の電圧値から電圧差を算出し、この電圧差と電流検出抵抗324の抵抗値とから理論的な電流値を算出する。
【0054】
(ステップS603)第1電池制御部329は、算出した電流値をDATA端子323を介して本体部200の制御部202へ送信する。
【0055】
(ステップS604)制御部202は、取得した電流値をメモリ等の記憶部に記録する。
【0056】
(ステップS605)制御部202は、記憶部に記録した過去所定期間(第1の期間)内の電流値データを読み出す。制御部202は読み出したデータから電流値が所定期間(第1の期間)継続して予め定めた閾値(第1の閾値)以上に増加しているか否かを比較、判断する。
【0057】
電流値が所定期間継続して第1の閾値以上増加している場合、制御部202は処理をステップS606へ移す。電流値が増加していない、あるいは増加していても第1の閾値未満の場合、制御部202はステップS601の処理に戻る。
【0058】
(ステップS606)制御部202は、使用しているリチウムイオン二次電池がCV充電中に電流が基準以上に増加したことに基づく制御情報を、リチウムイオン二次電池300の第1電池制御部329へ記録することを要求する。要求を受けた第1電池制御部329は、不揮発性の記憶部へ当該情報を記録する。
【0059】
(ステップS607)制御部202は、第1電池制御部329へ充電を停止させることを指示する。さらに制御部202は第1電池制御部329へ電池を放電させることも指示する。これは、リチウムイオン二次電池300に充電された電力を放電してリチウムイオンの状態を安定にするためである。リチウムイオン二次電池300から放電(供給)される電力は、本体部200の負荷回路203内部に設けられている放電用電気回路へ入力される。これにより、電池セルブロック310に蓄積された電力は減少する。
【0060】
以上説明したように、CV充電中の充電電流の増加という予兆を検出することで、従来にくらべて、発煙や発火の現象が生じる前のより早い段階で、上記現象が生じる疑いのあるリチウムイオン二次電池の使用を抑制することができる。よって、より安全にリチウムイオン二次電池を利用することができる。
【0061】
また、リチウムイオン二次電池への充電を停止するだけでなく、すでに蓄えられている電力を放電させることでリチウムイオン二次電池をより安定な状態とすることができる。これらにより、従来と比較してより安全にリチウムイオン電池を利用することができる。
【0062】
なお上記のステップS605において制御部202は、電流値が「所定の期間(第1の期間)」継続して「第1の閾値」以上に増加していること検出することで、電流増加を検出することを説明した。この「所定の期間(第1の期間)」と「第1の閾値」の設定については以下のようにしてもよい。
【0063】
なお、「所定の期間(第1の期間)」と「第1の閾値」の設定を行うにあたっては、以下の点を考慮する必要がある。すなわち、図5を参照した説明では、CV充電中に電流が減少することを説明した。しかし、実際の製品では、リチウムイオン二次電池300が正常であってもノイズやその他要因により電流が純粋には減少しない場合がある。そのため、「所定の期間(第1の期間)」や「第1の閾値」の設定を行うにあたっては、このようなノイズ等の影響を考慮する必要がある。
【0064】
上記の「所定の期間(第1の期間)」と「第1の閾値」との組み合わせとしては種々の組み合わせが考えられる。例えば、対象機器がパーソナルコンピュータ等の機器である場合、1秒間(所定の期間(第1の期間))継続して500mA(第1の閾値)以上の電流増加が認められることや、2秒間継続して80mA以上の電流増加が認められることや、3秒間継続して30mA以上の電流増加が認められることや、5秒間継続して10mA以上の電流増加が認められることなどの幾つかの組み合わせが考えられる。
【0065】
制御部202は、上記のような複数の組み合わせのうちいずれか一つの組み合わせに係る条件についてのみ成立の有無を判断することで電流増加の有無を検出(判断)してもよいし、複数の組み合わせのそれぞれについて並行して条件成立の有無を判断しつつ、いずれかの一つの組み合わせに係る条件が成立した場合に、電流増加が発生していると判断(検出)してもよい。あるいは、制御部202は、上記の複数の組み合わせのうち2つの組み合わせについて条件が成立した場合に、電流増加が発生していると判断(検出)しもよい。このように複数の判断基準を組み合わせて判断を行い、あるいは一つの判断基準に基づいて判断を行うことで、ノイズ等の外乱の影響を抑制したより精度の高い検出が可能となる。
【0066】
上記の電流増加の検出については、CV充電中にリチウムイオン二次電池300への充電電力が所定の条件を満たした状態で実施することで、より精度を高めることができる。具体的には、負荷回路203の消費電力が大きくなった場合、負荷回路203へ供給する電力とリチウムイオン二次電池300への充電電力との合計が電源端子201から供給される外部電源の供給能力を上回ると、充電電力が絞られる。その後、負荷回路203の消費電力が小さくなった場合は充電電力の絞りが解除される。このように、負荷回路の動作状態により充電電流が変動する。この点を考慮して、負荷回路がどのように動作をしてもリチウムイオン二次電池へ供給される電力を維持できる条件を算出し、その電力に応じた電流値以下の条件下で上記の検出を行う。これにより、充電時における負荷回路が検出処理に及ぼす影響を抑制することができる。
【0067】
より好ましくは、電流値の検出とともに、第1温度センサ331、第2温度センサ332等を利用した温度変化の検出を行い、温度変化についても併せて考慮してもよい。電流値の検出を一定温度下で実施することでより精度の高い検出が可能となる。
【0068】
また、ステップS606において説明した第1電池制御部329に記録する情報が「使用しているリチウムイオン二次電池がCV充電中に電流が基準以上に増加したことに基づく制御情報」として説明したが、この情報は、例えば当該事象が発生したことを示す情報などである。しかし、本開示ではこれに限定されるものではない。例えば、上記以外の情報でも、この事実にもとづいて当該リチウムイオン二次電池300の以後の使用を禁止する旨の情報、その他この事実に起因して記録することが求められる情報であれば、記録される情報の論理的な意味を特に限定するものではない。
【0069】
また、ステップS607において、さらに以下の処理を追加してもよい。具体的には、制御部202がステップS605において電流値が所定条件で増加していると判断した場合、制御部202は負荷回路203を構成するCPU(図示せず)等に、リチウムイオン二次電池300の使用中止を求めるための通知をする。パーソナルコンピュータ100は利用者に当該リチウムイオン二次電池300の使用停止を強く推奨する警告をディスプレイ102に表示する、あるいは一定時間後に自動的に処理を終了する、あるいは使用中のリチウムイオン二次電池300を使用できる期限をディスプレイ102に表示する等の処理を行う。これにより、利用者は必要なデータの保存やバックアップ等を行うことができる。
【0070】
また、リチウムイオン二次電池300のステップS601からS603までの処理と、本体部200のステップS604~S605までの処理とが同期して行われる場合について図6では説明した。しかし、本開示ではこれに限定されない。例えば、これら両者の処理はそれぞれ独立に処理することも可能である。例えば、ステップS601~S603では、ステップS603の処理を終了後にステップS601へ戻ればよい。また、ステップS604~S605では、ステップS605の判断で電流値が所定値以上増加していない場合、ステップS604へ戻ればよい。独立した両処理は、リチウムイオン二次電池300から本体部200へ送られるデータで関係性を維持できる。
【0071】
(実施の形態2)
本実施の形態では、温度を観察することによる、リチウムイオン二次電池の異常予兆の検出について説明する。なお、本実施の形態のハードウェアの構成は、実施の形態1において図1から図3を参照して説明した構成と同じであるため、説明を省略する。
【0072】
図7は、リチウムイオン二次電池300を本体部200に接続して放電または充電しているときの電池セルブロック310の温度変化例を示すグラフである。
【0073】
図7のグラフの横軸は時間を示し、縦軸は温度を示す。時間t7以降で示されるような大幅な温度上昇が発生すると、電池セルブロック310の内部で短絡現象が発生し、それが収束せずに発煙、発火に至る場合がある。
【0074】
本出願では、時間t5から時間t6の期間(第2の期間)に示されるような温度上昇を検出することを目的とする。一定条件下で生じる時間t5から時間t6の期間(第2の期間)での温度上昇は、時間t7以降で発生する大幅な温度上昇の予兆となりえることを本出願の発明者は見出した。そこで本出願ではこのような予兆となりえるような事象を検出する。
【0075】
図8は本出願で説明する温度上昇検知処理の内容を示すフローチャートである。以下図8のフローチャートに沿って温度を利用した予兆検出について説明する。
【0076】
(ステップS801)第1電池制御部329は、第2温度センサ332から電池セルブロック310の温度情報を取得する。
【0077】
(ステップS802)第1電池制御部329は、DATA端子323を介して電池セルブロック310の温度情報を制御部202へ送信する。
【0078】
(ステップS803)制御部202は、第1電池制御部329から取得した電池セルブロック310の温度情報を記憶部に記録する。
【0079】
(ステップS804)制御部202は、記憶部に記録した過去の所定時間内(第2の期間)の温度状況を確認する。具体的には制御部202は、所定時間(第2の期間)内の電池セルブロック310の温度が予め定めた閾値(第2の閾値)以上に上昇しているか否かを判断する。電池セルブロック310の温度が予め定めた閾値(第2の閾値)以上に上昇している場合、制御部202はステップS805の処理に移る。電池セルブロック310の温度が低下、あるいは一定のまま、あるいは上昇したとしても、当該温度が予め定めた閾値(第2の閾値)未満の場合は、制御部202は、ステップS801の処理に戻る。
【0080】
(ステップS805)制御部202は、DATA端子323を介して第1電池制御部329へ、使用しているリチウムイオン二次電池300に所定範囲以上の温度上昇が検出されたことに基づく制御情報を記録することを要求する。第1電池制御部329は上記の要求を受けると、内部の記憶部へ当該情報を記録する。
【0081】
上記の「使用しているリチウムイオン二次電池300に所定範囲以上の温度上昇が検出されたことに基づく制御情報」は、当該事象が発生したことを示す情報に限定されるものではない。これ以外でも、この事象にもとづいて当該リチウムイオン二次電池300の以後の使用を禁止する旨の情報、その他この事実に起因して記録することが求められる情報であれば、記録される情報の論理的な意味を特に限定するものではない。
【0082】
(ステップS806)制御部202は、リチウムイオン二次電池300が充電中である場合、第1電池制御部329へ充電を停止させることを指示する。さらに制御部202は第1電池制御部329へ電池セルブロック310に蓄えられている電力を放電させることを指示する。リチウムイオン二次電池から放電(供給)される電力は、本体部200の負荷回路203内部に設けられている放電用電気回路へ入力する。これにより、電池セルブロック310に蓄積された電力は減少する。
【0083】
なお、上記の説明では電池セルブロック310の温度のみを取得し、それに基づいて判断する処理について説明した。しかし、本出願の内容はこれに限定するものではない。例えば、リチウムイオン二次電池300が利用されている周囲環境の温度を併せて取得し、その温度情報を考慮して電池セルブロック310の温度を第1電池制御部329は算出してもよい。これにより、ノイズの影響を抑制したより精度を高めた電池セルブロック310の温度を制御部202が取得することができる。
【0084】
また、ステップS804で利用される「所定の条件」等は、上述した数値内容に限定されるものではない。これら所定の条件は、使用されるセルの数や、それぞれのセルの能力により異なるからである。例えば、ラップトップPC等のリチウムイオン二次電池については、10秒の期間で3度以上の温度上昇がいずれかの電池セルで検出された場合にステップS804の条件が成立したものとしてもよい。また、自動車の動力源として使用されるリチウムイオン二次電池については、10秒間で1.4度以上の温度上昇がいずれかの電池セルが検出された場合に、ステップS804の条件が成立したものとしてもよい。
【0085】
また、ステップS801からS806までの処理がリチウムイオン二次電池の放電中に行われる場合、つまりリチウムイオン二次電池が供給する電力により本体部200の負荷回路203が動作している場合、ステップS806において本体部200の制御部202は、(1)リチウムイオン二次電池からの電力供給による動作を一定時間後に中止し、(2)外部電源等の別電源があれば負荷回路203をこれら別電源による動作へ切り換え、(3)一定時間が経過後、リチウムイオン二次電池に残っている電力を放電用の専用回路で消費させる。これにより、本体部200の利用者はその利用を継続することができる。また、リチウムイオン二次電池に残っている電力が放電用専用回路で消費され、本体部200を安定な状態へ遷移させることが可能となる。
【0086】
ステップS801からS806までの処理の実行がリチウムイオン二次電池の充電中あるいは放電中のいずれでもない場合は、リチウムイオン二次電池に残っている電力は放電用専用回路で消費させる。これにより、リチウムイオン二次電池をより安定した状態へ遷移させることが可能となる。
【0087】
リチウムイオン二次電池300のステップS801からS802までの処理と、本体部200のステップS803~S806までの処理と、が同期する場合について図8では説明した。しかし、本出願で記載する内容はこれに限定されない。例えば、これら両者の処理はそれぞれ独立に処理することも可能である。その場合、ステップS801~S802の処理は、ステップ802の処理を終了後にステップS801へ戻す。ステップS803~S806の処理は、ステップS804の処理で温度が所定値以上増加していない場合、処理をステップS803へ戻すことで対応できる。独立した両処理は、リチウムイオン二次電池300から本体部200へ送られるデータで関係性を維持できる。
【0088】
以上により、電池セルブロック310の温度変化を検出することで、リチウムイオン二次電池300の発煙や発火に至る現象を検出し、異常の可能性があるリチウムイオン二次電池の使用を抑制することができる。その結果、より安全にリチウムイオン二次電池の利用が可能となる。
【0089】
(実施の形態3)
本実施の形態では電圧を観察することによる、リチウムイオン二次電池の異常予兆検出について説明する。なお、本実施の形態についても図1から図3の構成については実施の形態1と共通しているためその部分については説明を省略する。
【0090】
図9は、電池セルブロック310を満充電直後からの無負荷時の電池電圧の変化を示すグラフである。満充電直後からリチウムイオン二次電池300の電池セルブロック310は自然放電により、時間とともにその電池電圧が降下する。図9(A)、図9(B)、図9(C)の横軸はいずれも時間を示し、縦軸は電池セルブロック310を構成するセルの電池電圧を示す。
【0091】
図9(A)は、電池セルブロック310を構成する各セルがほぼそろって電圧が降下している状況を示すグラフである。正常なリチウムイオン二次電池300を構成するそれぞれの電池セルはこのようにほぼそろって電圧が降下する。
【0092】
図9(B)は、電池セルブロック310を構成する各電池セルのうち、一つの電池セルの電圧降下が他の電池セルの電圧降下と比べて速く降下しているケースを示したグラフである。
【0093】
図9(C)は、電池セルブロック310を構成する各電池セルのうち、一つの電池セルの電圧が常に他の電池セルの電圧と比べて低い状態で変化するケースを示したグラフである。
【0094】
本出願の発明者は、発煙、発火にいたるようなリチウムイオン二次電池では上記の図9(B)や図9(C)のような事象が事前に見出されやすいことを発見した。そこで本出願の発明者はリチウムイオン二次電池の満充電後の電池セルの電圧降下を観察することで、発煙、発火に至る可能性あるリチウムイオン二次電池を事前に検出する方法を検討した。
【0095】
図10は、本出願で説明する電池セルの電圧検出処理のフローチャートである。
【0096】
(ステップS1001)第1電池制御部329は、電池セルブロック310を構成する各電池セルの電圧値を取得する。
【0097】
(ステップS1002)第1電池制御部329は、取得した各電池セルの電圧値を電圧情報として、本体部200の制御部202へDATA端子323を介して送信する。
【0098】
(ステップS1003)制御部202は、第1電池制御部329から取得した電圧情報を記憶部に記憶する。
【0099】
(ステップS1004)制御部202は、ステップS1003により記憶部に保存したこれまでの各セルの電圧情報を所定期間(第3の期間)分よみだし、それぞれの電池セルの電圧降下速度を算出する。制御部202は、算出した各電池セルの電圧降下速度を比較する。
【0100】
具体的には電池セルブロック310を構成する各電池セルのいずれかが、図9(B)で説明したように、他の電池セルと比較して電圧降下の速度が所定以上に速い場合、あるいは所定期間における電池セルの電圧降下の降下量が所定以上である場合、に該当するか否かを制御部202は判断する。制御部202は所定期間(第3の期間)中においてある電池セルの電圧値が他の電池セルや判断の基準となる規準モデルとなる電池セルの電圧値とどれだけ差異があるかで数値的に判断することができる。
【0101】
電池セルブロック310を構成する各電池セルのいずれかが上記に該当する場合、制御部202は処理をステップS1005へ移す。反対に該当しない場合、制御部202は処理をステップS1001へ戻す。
【0102】
(ステップS1005)
制御部202は、電池セルブロック310を構成する電池セルについて電圧降下の速度
が所定以上、あるいは所定期間における電池セルの電圧降下量が所定以上であると判断した場合、その情報を記憶部に記録する。
【0103】
(ステップS1006)制御部202は、電池セルブロック310を構成する電池セルの電圧が図9(C)で示すように、電池セル間で所定量以上定常的に差異が生じているか、あるいは上記電圧が所定量以上低下しているか、を判断する。この判断は、ステップS1004で電圧降下速度の異常が検出された電池セルを対象に、ステップS1004を検出した充電サイクルとは異なる充電サイクルで検出する。
【0104】
つまり、制御部202は、図9(B)で示すような電圧降下の速度が速い電池セルが、当該電圧降下について検出された充電サイクルよりも後の充電サイクルにおいて図9(C)のような現象が発生しているか否かを確認している。これにより、異常な状態になりうるリチウムイオン二次電池の検出においてその精度をより高めることができる。
【0105】
ステップS1005で記録対象となった電池セルについて本ステップで定常的に電圧が低下していることが確認された場合、制御部202は処理をステップS1007へ移す。反対に定常的な電圧低下が見られない場合、制御部202は処理をステップS1001へ戻す。
【0106】
(ステップS1007)制御部202は、DATA端子323を介して第1電池制御部329へ、使用しているリチウムイオン二次電池300の電池セルブロック310に電圧降下量の異常があったことに基づく制御情報を記録することを要求する。第1電池制御部329は上記の要求を受けると、内部の記憶部へ当該情報を記録する。
【0107】
ここで「リチウムイオン二次電池300の電池セルブロック310に電圧降下量の異常があったことに基づく制御情報」とは当該事象が発生したことを示す情報以外にも、当該事象が発生したことでリチウムイオン二次電池300の以後の使用を禁止する旨の情報、その他この事象に起因して記録することが求められる情報などでもよい。「リチウムイオン二次電池300の電池セルブロック310に電圧降下量の異常があったことに基づく制御情報」とは記録される論理的な意味を特に限定するものではない。
【0108】
(ステップS1008)制御部202は、第1電池制御部329へ電池セルブロック310に蓄えられている電力を放電させることを指示する。リチウムイオン二次電池300から放電(供給)される電力は、本体部200の負荷回路203内部に設けられている放電用電気回路へ入力する。これにより、電池セルブロック310に蓄積された電力は減少する。
【0109】
以上により、電池セルブロックを構成する電池セルの電圧変化を検出することで、リチウムイオン二次電池300の発煙や発火の現象を従来にくらべてより早い段階で検出し、異常の可能性があるリチウムイオン二次電池の使用を抑制することができる。その結果、より安全にリチウムイオン二次電池の利用が可能となる。
【0110】
上記ステップS1004の電圧降下量の異常があったか否かの判断では、図9(B)、図9(C)で示したようなケースを例として説明したが、本出願で説明する内容はこれに限定されない。これ以外にも電池セルブロック310を構成するセル間の比較において、いずれかのセルのみが異なる電気的状態になっていることを検出できる場合にはそれらに基づくものであっても良い。
【0111】
なお、図10で説明した電圧検出処理は、リチウムイオン二次電池300への充電が満たされた状態(満充電状態)から一定時間、例えば3分、5分、10分等の所定時間経過後の状態から判断することでより検出の精度を高めることができる。これは、充電を止めた直後は、通常動作として電圧降下が大きいためここで検出をしても検出の精度を高めにくいと考えられるからである。
【0112】
また、図10の検出処理は、満充電後において本体部200とリチウムイオン二次電池との間で電力の授受を行っていない状態、つまりリチウムイオン二次電池への充電も放電もおこなっていない無負荷状態で実施することが必要である。本体部200、特に負荷回路203へ電力の供給(放電)を行うと、リチウムイオン二次電池300は負荷回路203の影響を受け電池電圧が上下動することで、上記に説明した検出処理での検出が困難となる。電池セルブロック310の各セルの電池電圧が、負荷回路203等の本体部200の影響をうけて検出処理の精度が低下する。また、リチウムイオン二次電池への充電をおこなう場合でも、本体側の負荷の大きさの影響を受けて充電電力が変化し同様に検出処理の精度が低下する。そのため、精度を維持、向上させるため、検出期間中は、リチウムイオン二次電池300の充電、放電のいずれも実施しない電気的に無接続と等価な状態とすることが求められる。
【0113】
なお、上記で「満充電後(充電がみたされた状態後)」として説明しているが、完全に満たされている必要はない。例えば規定の電池電圧に対して80%以上等、電池セルブロック310が所定以上の電池電圧を有した状態で図10の検出処理を実行するものであっても良い。これ以外にも、リチウムイオン二次電池の電圧が、規定の電池電圧の20%、40%、60%、80%等となる度に一度充電を停止して、図10で示した処理を制御部202や第1電池制御部329が実施するものであってもよい。
【0114】
また、図9図10の例では電池セルブロック310が複数のセルで構成されていることを前提として説明したが本出願で説明する内容はこれに限定するものではない。電池セルブロック310が一つの電池セルのみで構成されている場合には、比較の対象として基準モデル等を事前に制御部202が備え、その規準モデルと計測された電圧値とを比較するものであっても良い。これにより、単一セルの場合でも同様の検出を行うことができる。
【0115】
さらに電池セルブロック310が一つの電池セルのみで構成されている場合、図10で説明した処理のステップS1005及びS1006を省略するものであってもよい。単一電池セルの場合には、こちらのほうが精度よく検出できるからである。
【0116】
また、図10では、リチウムイオン二次電池300のステップS1001からS1002までの処理と、本体部200のステップS1003~S1009までの処理とが同期して行われる場合を説明した。しかし、本開示ではこれに限定されない。たとえば、これら両者の処理はそれぞれ独立に行われてもよい。例えば、ステップS1001~S1002では、ステップS1002の処理を終了後にステップS1001へ戻ればよい。また、ステップS1003~S1009では、ステップS1005、S1006、S1007の処理を終了後にステップS1003へ戻ればよい。独立した両処理は、リチウムイオン二次電池300から本体部200へ送られるデータで関係性を維持できる。
【0117】
また、ステップS1009において、さらに以下の処理を追加してもよい。具体的には、制御部202は、負荷回路203を構成するCPU(図示せず)等に、リチウムイオン二次電池300の使用中止を求めるための通知をする。パーソナルコンピュータ100は、利用者に当該リチウムイオン二次電池300の使用停止を強く推奨する警告をディスプレイ102に表示する、あるいは一定時間後に自動的に処理を終了する、あるいは使用中のリチウムイオン二次電池300を使用できる期限をディスプレイ102に表示する等の処理を行う。これにより、利用者は必要なデータの保存やバックアップ等を行うことができる。
【0118】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1~3を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されるものではない。特に数値を用いての説明については記載の内容に限定するものではない。
【0119】
また、実施の形態1~3で説明した技術内容については、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、上記実施の形態1~3で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
【0120】
例えば、実施の形態1~3で説明した充電電流、温度、電圧のすべての状況を確認して予兆を検出しても良い。この場合、いずれか一つ、あるいは3つの内の2つ、又は3つのすべての予兆条件を満たした際に、充電の停止、及び電池セルブロック310に逐電された電力の放電等を行ってもよい。3つの予兆条件のうちいずれを採用するかは、リチウムイオン二次電池300を使用する電子機器に求められる安全レベル等に応じて、電子機器毎に設定すればよい。
【0121】
実施の形態1~3では本体部200とリチウムイオン二次電池300とが独立している場合を例として説明した。しかし、本開示ではこれに限定されるものではない。例えば、本体部200とリチウムイオン二次電池300が一つの装置内に固定的に組みつけられてもよい。また、本開示をリチウムイオン二次電池への充電や放電を制御する装置に適用する場合には、他装置から独立した装置として、あるいは単体の装置として構成されてもよい。
【0122】
実施の形態1~3では、本開示に係る制御装置及び制御方法について図6、8、10のフローチャートなどを用いて説明した。しかし、実施の形態1~3における制御装置及び制御方法は、本開示に係る制御装置及び制御方法についての実施態様の一例であり、これに限定されるものではない。
【0123】
実施の形態1~3の説明では予兆を検出した場合、充電の停止及び蓄積された電力の放電を行うことを説明した。しかし、本開示では、これに限定されるものではない。例えば、パーソナルコンピュータ100では、ユーザに警告画面を一定時間表示し、その後強制的にハイバネーションモードへの移行し、あるいはシャットダウン動作等を行っても良い。予兆を検出した場合の動作は、リチウムイオン二次電池へ接続される電子機器の用途や当該電子機器に求められる信頼性等に応じて、適宜に行われればよい。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本出願で説明した技術は、リチウムイオン二次電池を利用する電子機器等で産業上利用
することが可能である。
【符号の説明】
【0125】
100 パーソナルコンピュータ
101 キーボード
102 ディスプレイ
200 本体部
201 電源端子
202 制御部
203 負荷回路
300 リチウムイオン二次電池
310 電池セルブロック
320 制御モジュール
321 +端子
322 -端子
323 DATA端子
324 電流検出抵抗
325 充電スイッチ
326 放電スイッチ
327 ヒューズ
328 スイッチ
329 第1電池制御部
330 第2電池制御部
331 第1温度センサ
332 第2温度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10