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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101530
(43)【公開日】2023-07-21
(54)【発明の名称】心臓弁搬送装置用歯車駆動機構
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20230713BHJP
【FI】
A61F2/24
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023076290
(22)【出願日】2023-05-02
(62)【分割の表示】P 2020511373の分割
【原出願日】2018-08-22
(31)【優先権主張番号】62/548,855
(32)【優先日】2017-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/105,353
(32)【優先日】2018-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500218127
【氏名又は名称】エドワーズ ライフサイエンシーズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Edwards Lifesciences Corporation
【住所又は居所原語表記】One Edwards Way, Irvine, CALIFORNIA 92614, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】オーレン・コーエン
(72)【発明者】
【氏名】オフィル・ウィッツマン
(72)【発明者】
【氏名】ヤイール・エー・ニューマン
(57)【要約】
【課題】経皮弁技術の最近の発展にもかかわらず、経カテーテル心臓弁およびそのような弁用の搬送デバイスの改良が依然として必要である。
【解決手段】人工弁搬送装置は、ハンドルと、ギアボックスと、入力トルクシャフトと、複数の出力トルクシャフトと、を備えることができる。入力トルクシャフトは、ハンドルから遠位方向に延びることができ、ギアボックスに動作可能に接続された遠位端部を有することができる。出力トルクシャフトは、ギアボックスに動作可能に接続することができ、ギアボックスから遠位方向に延びることができる。入力トルクシャフトを回転させると、ギアボックスを介して出力トルクシャフトを回転させることができる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書及び図面に記載された人工弁搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、人工心臓弁などの移植可能で機械的に拡張可能な人工デバイスと、そのような人工デバイスのための方法およびそのような人工デバイスを含む搬送アセンブリと、に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の心臓は様々な弁膜症を患うことがある。これらの弁膜症は、心臓の顕著な機能不全をもたらし、最終的に自然弁の修復または自然弁と人工弁との交換が必要になることがある。いくつかの公知の修復デバイス(たとえば、ステント)および人工弁、ならびにこれらのデバイスおよび弁を人間に移植するいくつかの公知の方法がある。従来の心臓切開手術に伴う欠点に起因して、経皮的で低侵襲の手術方式が注目されている。一技法では、人工デバイスが、カテーテル法によってより侵襲の少ない手順で移植されるように構成される。たとえば、折り畳み可能な経カテーテル人工心臓弁を波形にして圧縮状態にし、経皮的に導入してカテーテル上で圧縮状態にし、機械的に拡張させるかまたは自己拡張フレームもしくはステントを使用して所望の位置で機能的なサイズに拡張させることができる。経皮弁技術の最近の発展にもかかわらず、経カテーテル心臓弁およびそのような弁用の搬送デバイスの改良が依然として必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6730118号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2018/0153689号明細書
【特許文献3】米国特許出願第15/995528号明細書
【特許文献4】米国特許第6730118号明細書
【特許文献5】米国特許第7393360号明細書
【特許文献6】米国特許第7510575号明細書
【特許文献7】米国特許第7993394号明細書
【特許文献8】米国特許第8652202号明細書
【特許文献9】米国特許出願第15/978459号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2016/0158497号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2014/0296962号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書では、改良された人工移植物搬送アセンブリおよび人工移植物搬送アセンブリ用のフレーム、ならびにそのようなアセンブリの関係する方法およびデバイスの実施形態が開示される。いくつかの実施形態では、開示されたアセンブリは、置換心臓弁を患者の心臓内に搬送するように構成される。
【0005】
代表的な一実施形態では、人工弁搬送装置は、ハンドルと、ギアボックスと、入力トルクシャフトと、複数の出力トルクシャフトと、を備えることができる。入力トルクシャフトは、ハンドルから遠位方向に延びることができ、ギアボックスに動作可能に接続された遠位端部を有することができる。出力トルクシャフトは、ギアボックスに動作可能に接続することができ、ギアボックスから遠位方向に延びることができる。入力トルクシャフトを回転させると、ギアボックスを介して出力トルクシャフトを回転させることができる。
【0006】
いくつかの実施形態では、人工弁搬送装置は、ハンドル内に配置されたモータをさらに備えることができる。モータは、入力トルクシャフトの近位端部に動作可能に接続することができる。モータを作動させると、入力トルクシャフトを回転させることができる。
【0007】
いくつかの実施形態では、ギアボックスは、駆動歯車と複数の被駆動歯車とを備えることができる。駆動歯車は、入力トルクシャフトに動作可能に接続することができ、入力トルクシャフトによって駆動することができる。被駆動歯車は、駆動歯車によって駆動されるように構成することができる。各被駆動歯車は、出力トルクシャフトのうちの1つに動作可能に接続することができ、この出力トルクシャフトを回転させることができる。
【0008】
いくつかの実施形態では、駆動歯車は、内歯歯車を備えることができ、被駆動歯車は、内歯歯車の内部に位置するピニオン歯車を備えることができる。
【0009】
いくつかの実施形態では、駆動歯車は、入力トルクシャフトの遠位端部に取り付けることができ、各被駆動歯車は、出力トルクシャフトのうちの1つに取り付けることができる。
【0010】
いくつかの実施形態では、駆動歯車は、各被駆動歯車の歯と噛み合う歯を有することができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、ギアボックスは、駆動歯車から被駆動歯車のうちの1つに回転運動を伝達するように構成された少なくとも1つのアイドラ歯車をさらに備えることができる。
【0012】
いくつかの実施形態では、複数の出力トルクシャフトは3つの出力トルクシャフトを備えることができる。
【0013】
いくつかの実施形態では、各出力トルクシャフトは、人工心臓弁上のアクチュエータとの取外し可能な接続部を形成するように構成されたコネクタを出力トルクシャフトの遠位端に備えることができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、入力トルクシャフトは、搬送装置の中央長手方向軸と同一線上の中央回転軸を画定することができ、各出力トルクシャフトは、搬送装置の中央長手方向軸からずれた回転軸を画定することができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、人工心臓弁搬送装置は、半径方向に拡張可能および圧縮可能なフレームと、フレームを半径方向に拡張および圧縮するように構成された複数のアクチュエータと、を備える人工弁と組み合わせて使用することができる。各出力トルクシャフトは、アクチュエータのねじに取外し可能に結合され、回転運動をトルクシャフトからねじに伝達することができる。ねじを回転させると、フレームを半径方向に拡張させるかまたは圧縮することができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、入力トルクシャフトは、搬送装置の長さの少なくとも大部分にわたって延びることができる。
【0017】
別の代表的な実施形態では、人工弁搬送アセンブリは、人工弁と搬送装置とを備えることができる。人工弁は、半径方向に拡張可能および圧縮可能なフレームと、フレームを半径方向に拡張および圧縮するように構成された複数のアクチュエータと、を備えることができる。搬送装置は、ハンドルと、ハンドルから延びる入力トルクシャフトと、入力トルクシャフトの遠位端部に結合された歯車機構と、歯車機構に結合され歯車機構から遠位方向に延びる複数の出力トルクシャフトと、を備えることができる。歯車機構は、入力トルクシャフトの回転運動を出力トルクシャフトに伝達することができる。各出力トルクシャフトは、アクチュエータのうちの1つに取外し可能に結合することができ、それにより、出力トルクシャフトの回転によってアクチュエータは人工弁を半径方向に拡張させるかまたは圧縮することができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、入力トルクシャフトの遠位端部、歯車機構、および出力トルクシャフトは、患者の血管系内に挿入されるように構成することができる。
【0019】
いくつかの実施形態では、歯車機構は、入力トルクシャフトの遠位端部に動作可能に接続された駆動歯車と、駆動歯車によって駆動されるように構成された複数の被駆動歯車と、を備えることができる。各被駆動歯車は、出力トルクシャフトのうちの1つに動作可能に接続することができる。
【0020】
別の代表的な実施形態では、人工心臓弁を移植する方法は、人工心臓弁および搬送装置の遠位端部を患者の血管系内に挿入するステップと、入力トルクシャフトを回転させるステップと、を含むことができる。人工心臓弁は、半径方向圧縮状態にすることができ、搬送装置は、入力トルクシャフトと、患者の血管系に挿入される搬送装置の遠位端部に沿って入力トルクシャフトに結合された歯車機構と、人工心臓弁上のアクチュエータに取外し可能に結合された複数の出力トルクシャフトと、を備えることができる。入力トルクシャフトを回転させると、出力トルクシャフトを、歯車機構を介して回転させることができる。出力トルクシャフトを回転させると、アクチュエータを作動させることができ、それによって、人工心臓弁を半径方向圧縮状態から半径方向拡張状態に拡張させることができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、人工心臓弁および搬送装置の遠位端部を患者の血管系に挿入する行為は、人工心臓弁および搬送装置の遠位端部を大動脈を通して前進させ、それによって、入力トルクシャフトが大動脈弓を貫通して延び、出力トルクシャフトおよび歯車機構が上行大動脈内に配置されるステップを含むことができる。
【0022】
いくつかの実施形態では、人工心臓弁を移植する方法は、出力トルクシャフトをアクチュエータから取り外すステップをさらに含むことができる。
【0023】
いくつかの実施形態では、出力トルクシャフトを入力トルクシャフトとは異なる回転速度で回転させることができる。
【0024】
いくつかの実施形態では、出力トルクシャフトのうちの少なくとも1つは、入力トルクシャフトとは異なる方向に回転することができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、歯車機構は、入力トルクシャフトの遠位端部に動作可能に接続された駆動歯車と、駆動歯車によって駆動されるように構成された複数の被駆動歯車と、を備えることができる。各被駆動歯車は、出力トルクシャフトのうちの1つに動作可能に接続することができる。
【0026】
本発明の上記の目的、特徴、ならびに利点およびその他の目的、特徴、ならびに利点は、添付の図を参照しながら進められる以下の詳細な説明からより明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】人工心臓弁の例示的な実施形態の斜視図である。
図2】半径方向拡張形態にある図1の人工心臓弁の例示的なフレームの斜視図である。
図3】半径方向折り畳み形態にある図2のフレームを示す図である。
図4図1の人工心臓弁を移植するために使用することができる例示的な人口弁搬送装置を示す図である。
図4A】搬送装置用のハンドルの例示的な実施形態の平面図である。
図5図4の人工弁搬送装置の入力トルクシャフト、ギアボックス、および出力トルクシャフトの斜視図である。
図6図5に示す入力トルクシャフト、ギアボックス、および出力トルクシャフトの断面図である。
図7図4図6のギアボックスの分解斜視図である。
図8A】ギアボックスの内部の歯車の動作を示す図5および図6のギアボックスの端面図である。
図8B】ギアボックスの内部の歯車の動作を示す図5および図6のギアボックスの端面図である。
図9】ギアボックスの代替実施形態の内部を示す端面図である。
図10】半径方向拡張状態にある人工弁を示す、図1に示す搬送装置の遠位端部および人工弁の斜視図である。
図11図10の人工弁および人工弁のアクチュエータに取外し可能に結合された出力トルクシャフトの遠位端部を示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書では、人工移植物搬送アセンブリおよびその構成要素であって、移植手術時に、人工弁(たとえば、人工心臓弁または静脈弁)、ステント、またはグラフトなどの機械的に拡張可能な人工移植物のサイズを制御する医師の能力を向上させることができ、かつ人工移植物搬送アセンブリからの人工移植物の分離を容易にすることができる、人工移植物搬送アセンブリおよびその構成要素の例について説明する。本開示はまた、そのような人工移植物とともに使用されるフレームを開示する。
【0029】
図1は、例示的な人工心臓弁100を示す。図示の人工弁は、自然大動脈弁輪内に移植されるように適合される。ただし、他の実施形態では、心臓の他の自然弁輪(たとえば、肺動脈弁、僧帽弁、および三尖弁)に移植されるように適合することができる。人工弁100はまた、体内の他の管状器官または通路内に移植されるように適合することができる。人工弁100は、ステントまたはフレーム102と、弁構造110と、内側および/または外側封止手段と、を備えることができる。人工弁100は、流入端部104と流出端部106とを備えることができる。
【0030】
図示の実施形態では、封止手段は外側スカート(図1には示さず)を備え、外側スカートは、縫合、接着剤、および/または他の適切な技法もしくは機構によってフレーム102の外面に固定することができる。外側スカートは、移植部位における自然組織に対する封止を確立するのを助け、弁漏れを防止するかまたは最小限に抑えることができる。代替実施形態では、人工弁100は、フレーム102の内部に取り付けられたスカートもしくは封止部材またはフレーム102の内側および外側に取り付けられたスカートもしくは封止部材を有することができる。スカートは、自然組織(たとえば、心膜組織)、または生体適合繊維(たとえば、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維)を含む様々な生体適合合成材料のうちのどれかから形成することができる。
【0031】
弁構造110は、三尖形態で折り畳まれるように構成することができるリーフレット構造を集合的に形成する3つのリーフレット112を備えることができる。リーフレット構造110の下縁部は、起伏のある、湾曲した波形形状を有することが望ましい。この波形幾何学形状を有するリーフレットを形成することによって、リーフレットに対する応力が低減し、それによって人工弁の耐久性が向上する。さらに、波形形状によって、対応する領域において早期に石灰化を生じさせることがある各リーフレット112のベリー(各リーフレットの中央領域)におけるフォールドおよびリップルをなくすかまたは少なくとも最小限に抑えることができる。波形幾何学形状はまた、リーフレット構造を形成するために使用される組織材料の量を低減させ、それによって、人工弁100の流入端104においてより小さくさらに圧縮された外形が得られる。リーフレット112は、当技術分野で公知であり特許文献1に記載された心膜組織(たとえば、ウシ心膜組織)、生体適合合成材料、または様々な他の適切な自然材料もしくは合成材料で形成することができる。
【0032】
人工弁100は、流入端部104および流出端部106を貫通して延びる長手方向軸を画定することができる。人工弁100はまた、スリーブ134を含む1つまたは複数のアクチュエータ130を備えることができ、スリーブ134は、図2に関連して以下により詳細に説明するようにフレーム102を半径方向に拡張させ圧縮するように構成される。図示の実施形態では、人工弁100は、3つのそのようなアクチュエータ130を含む。ただし、他の実施形態ではより多いかまたはより少ない数のアクチュエータを使用することができる。リーフレット112は、アクチュエータ130のスリーブ134を覆う交連アタッチメントを有することができる。図2は、図示のために弁構造110または外側スカートを有しないアクチュエータ130を含む図1のフレーム102を示す。フレーム102は、ステンレススチールまたはニッケルチタン合金(“NiTi”)などの様々な適切な材料のうちのどれか、たとえばニチノールで作ることができる。フレーム102は、ラティス型パターンに配置され、フレーム102の流出端124に複数の頂点114を形成する複数の相互接続ラティスストラット108を含むことができる。ストラット108はまた、フレーム102の流入端126に同様の頂点114を形成することができる。ラティスストラット108は、人工弁100の長手方向軸に対して斜めに位置するかまたは所定角度にずれて位置しかつ長手方向軸から半径方向にずれて位置するように示されている。他の実装形態では、ラティスストラット108は、図2とは異なる量だけずれることができ、またはラティスストラット108のうちのいくつかまたはすべてを人工弁100の長手方向軸に平行に位置させることができる。
【0033】
ラティスストラット108は互いに回動可能に結合することができる。図示の実施形態では、たとえば、フレーム102の流出端124および流入端126に頂点114を形成するストラット108の端部は、それぞれの開口部または孔116を有することができる。ストラット108はまた、各ストラットの両端間の長さに沿って間隔を置いて配置された開口部または孔118を備えて形成されることができる。頂点114、およびストラット108がフレームの端部間で重なり合う連結部/位置に、留め具122を介してそれぞれのヒンジを形成することができ、留め具122は、孔116、118を貫通して延びるリベットまたはピンを備えることができる。ヒンジは、人工弁100の組立て時、準備時、または移植時などの、フレーム102が拡張または収縮するときにストラット108が互いに対して回動するのを可能にすることができる。たとえば、フレーム102(したがって、人工弁100)を操作して半径方向圧縮形態または半径方向収縮形態(たとえば、図3参照)にし、患者に挿入して移植することができる。人工弁100は、体内に挿入した後、操作して拡張状態(たとえば、図2)にして、次いで以下にさらに説明するように搬送装置から解放することができる。
【0034】
フレーム102は、任意の適切な技法を使用して形成することができる。適切な技法は、フレームの個々の構成要素(たとえば、ストラット108および留め具122)を別々に形成し、次いで個々の構成要素を機械的に組み立て、接続してフレーム102を形成することを含むことができる。ストラット108および留め具122は、たとえば、金属のシートまたはチューブからそれらの構成要素をレーザ切断するか、あるいは電鋳(電気メッキもしくは電着)または物理蒸着によって形成することができる。いくつかの実施形態では、電鋳もしくは物理蒸着を使用してフレーム102の部分構成要素を形成するか、またはストラット108間の回動可能な接続部を含むフレーム102全体を形成することができる。一実装形態では、たとえば、電鋳または物理蒸着を使用して一体型留め具122を有するストラット108を形成することができる。各ストラットの一体型留め具122を隣接するストラットの対応する孔に挿入することによって個々のストラット108を共にフレームとして組み立てることができる。いくつかの実施形態では、電鋳または物理蒸着を使用してフレーム102全体をその最終的な円筒形に形成することができる。他の実施形態では、電鋳または物理蒸着を使用してフレーム全体を平坦形態に形成することができ、その後、平坦なフレームの各端部を互いに接続してフレームの最終的な円筒形を形成することができる。
【0035】
他の実施形態では、ラティスストラット108は、それぞれのヒンジ(たとえば、留め具122)によって互いに結合されることはないが、その他の形で互いに対して回動可能または屈曲可能であり、フレーム102を半径方向に拡張させ収縮させるのを可能にする。たとえば、フレーム102は、単一の材料(たとえば、金属チューブ)から(たとえば、レーザ切断、電鋳、または物理蒸着を介して)形成することができる。フレーム102の組立てに関するさらなる詳細は、特許文献2及び3で開示されている。
【0036】
弁構造110を人工弁100のフレーム102に結合することができる方法を含む、経カテーテル人工心臓弁に関するさらなる詳細は、たとえば、特許文献4~9に記載されている。
【0037】
アクチュエータ130の各々は、ねじまたはねじ山つきロッド132と、スリーブまたはシリンダ134の形をした第1のアンカー部材と、ねじ山つきナット136の形をした第2のアンカー部材と、を備えることができる。ロッド132は、スリーブ134およびナット136を貫通して延びる。スリーブ134は、2つのストラット108の連結部においてヒンジを形成する留め具122のうちの1つなどによってフレーム102に固定することができる。ナット136は、2つのストラット108の間の連結部における留め具122のうちの1つなどによって、スリーブ134の取付け位置から軸方向に間隔を置いた位置においてフレーム102に固定することができる。各アクチュエータ130は、それぞれのスリーブ134およびナット136の取付け位置間の距離を長くし、それによって、フレーム102を軸方向に伸長させかつ半径方向に圧縮し、かつそれぞれのスリーブ134およびナット136の取付け位置間の距離を短くし、それによって、フレーム102を軸方向に縮小させ半径方向に拡張させるように構成される。
【0038】
たとえば、各ねじ132の下端部(ナット136を貫通して延びる部分)は、ナット136の雌ねじに係合する雄ねじを有することができ、一方、ねじ132の上部(スリーブ134を貫通して延びる部分)は、スリーブ134に対して軸方向に固定することができるがスリーブ134に対して自由に回転することができる。このようにして、ねじ132を第1の方向に回転させると、ナット136は軸方向においてねじに沿ってスリーブ134から離れる方向に移動して、フレームを半径方向に圧縮し(ナットが、遠位方向に向けられた力をフレームに加え)、一方、ねじを第2の方向に回転させると、ナット136は軸方向においてねじに沿ってスリーブ134に向かう方向に移動して、フレームを半径方向に拡張させる(ナットが、近位方向に向けられた力をフレームに加える)。
【0039】
別の実施形態では、各アクチュエータ130のねじ132は、対応するスリーブ134の雌ねじに係合する雄ねじをねじ132の上部に沿って有することができ、一方、ねじ132の下部は、軸方向においてアンカー部材136に対して固定することができるがアンカー部材136に対して自由に回転することができる。この実施形態では、アンカー部材136は雌ねじを有する必要がなく、したがって、「ナット」とは呼ばない。この例におけるねじ132の回転によって、スリーブ134はアンカー部材136の方へ移動するかまたはアンカー部材136から離れる方向に移動して、ねじの回転方向に応じてフレームを半径方向に拡張させるかまたは圧縮する。
【0040】
別の実施形態では、各アクチュエータのねじ132は、スリーブ134およびナット136の雌ねじに係合する雄ねじをねじ132の上部および下部に沿って有することができる。スリーブ134およびナット136の雌ねじは逆方向にねじ山をつけられる。このように、ねじ132を第1の方向に回転させることによって、スリーブ134とナット136の両方がねじの長さに沿って互いの方へ移動し、フレームを半径方向に拡張させる。ねじ132を第2の方向に回転させると、スリーブ134とナット136の両方がねじの長さに沿って互いに離れる方向に移動してフレームを半径方向に圧縮する。
【0041】
各ねじ132は、ねじの近位端部に沿って取付け部材138を含むことができ、取付け部材138は、搬送装置の対応する駆動シャフトとの取外し可能な接続部を形成して搬送装置のトルクをねじに伝達するように構成されている。図示の構成における取付け部材138は、以下でさらに詳しく説明するように搬送装置の駆動シャフトの対応する突起に係合することができる切欠き140および突起142を備える。
【0042】
フレーム102を半径方向圧縮状態から半径方向拡張状態に拡張させるとき、各ねじ132を同期的に回転させることが望ましい。さらに、適切な量のトルクを搬送システムのハンドルからねじ132に伝達しなければならない。いくつかの実施形態では、搬送装置のハンドルから搬送装置のほぼ全長にわたって搬送装置の遠位端に結合された人工弁まで延びる別々の駆動シャフトを介して直接ハンドルからねじ132の各々までトルクを伝達することができる。この構成では、各ねじ132へのトルクを比較的小さい直径を有する比較的長い駆動シャフトを介して伝達する必要がある。以下の数式に示すように、シャフトの長さに沿って伝達することのできるトルクの量は、シャフトの長さに反比例し、シャフトの直径に正比例する。円形断面を有する中実シャフトの場合、T=DπGθ/32Lが成立し、管状シャフトの場合、T=(OD-ID)πGθ/32Lが成立し、ここで、T=トルク、D=直径、G=せん断弾性率、L=シャフト長、OD=チューブ外径、およびID=チューブ内径である。さらに、搬送装置が患者の血管系を通って前進するときに搬送装置が撓むことによって、駆動シャフトのうちの1つまたは複数を伸長させ、駆動シャフトのうちの1つまたは複数を収縮させることができ、それによって、所望のトルクにおいてアクチュエータの同期回転を実現する駆動シャフトの能力に悪影響を与えることがある。したがって、アクチュエータ130を作動させるために人工弁に隣接する搬送システムの遠位端に沿った機構を有すると有利であることがある。これによって、複数のより小さいシャフトではなく、搬送装置の長さの大部分に沿ってハンドルからトルクを伝達するための1つの頑丈なトルクシャフトを使用するのを可能にすることができる。これによってまた、実際にトルクを直接アクチュエータに伝達する個々の駆動シャフトの長さを最小限に抑えるのを可能にすることができ、トルクをアクチュエータに加えることが推進され、駆動シャフトの伸長および縮小が回避される。
【0043】
図4は、人工心臓弁100などの人工心臓弁を経皮的に患者の心臓に搬送し移植するのに使用することができる人工弁搬送装置200の例示的な実施形態を示す。図4の搬送装置200は、ハンドル210と、ハンドル210から遠位方向に延びる外側シャフトまたはカテーテル220と、ハンドル210から遠位方向に外側シャフト220を貫通して延びる入力トルクシャフト224と、入力トルクシャフト224の遠位端部に動作可能に接続されたギアボックスまたは歯車機構230と、複数の出力トルクシャフト240と、ノーズコーン250と、を備える。ノーズコーン250は、ガイドワイヤルーメンとして働く最内シャフト252の遠位端部上に取り付けることができ、最内シャフト252は、入力トルクシャフト224を貫通して同軸状に延びることができ、ハンドル210に結合された近位端部を有することができる。
【0044】
外側カテーテル220は、操作可能なカテーテルとすることができ、外側カテーテル220の湾曲を調整することによって患者の血管系を通して前進させるときにユーザによって操作することができる。特定の実施形態では、搬送装置は、外側カテーテルを貫通して延びる1本または複数のプルワイヤを有し、プルワイヤの近位端部がハンドル210の調整ノブに結合されることができる。調整ノブは、1本または複数のプルワイヤにおける張力を変化させるように構成され、外側カテーテル220およびシャフト224の湾曲を変化させるうえで有効である。搬送装置の湾曲を制御するための操作機構に関するさらなる詳細は、特許文献10に開示されている。
【0045】
各出力トルクシャフト240は、以下にさらに説明するように、ギアボックス230に接続された近位端部と、アクチュエータ130のそれぞれのねじ132に取外し可能に接続された遠位端部と、を有することができる。各出力トルクシャフト240は、たとえば、ロッド、剛性の高いチューブ、ケーブル、レーザ切断されたチューブ、ハイポチューブ、または任意の他の細長い環状構造(たとえば、任意の管状構造または円柱形構造)を備えることができる。入力トルクシャフト224の近位端部は、ハンドル210内に収容されるかまたはハンドル210に結合された、モータ212などのアクチュエータに動作可能に接続することができる。モータ212は、たとえば、ハンドル210内に収容することもできる、バッテリによって電力を供給される電気モータとすることができる。代替実施形態では、モータ212は、油圧駆動または空気圧駆動されるモータとすることができる。モータ212は、以下でさらに詳しく説明するように、入力トルクシャフト224を作動または回転させ、それによって、ギアボックス230を介して出力トルクシャフト240を作動または回転させ、それによってねじ132を回転させて人工弁を半径方向に拡張および圧縮するように動作可能である。トルクシャフト224にトルクを加えるために使用することができる電動ハンドルに関するさらなる詳細は、特許文献11において開示される。入力トルクシャフト224は、搬送装置の大部分にわたり、搬送システムよりも大きい直径を有することができ、複数のトルクシャフトがハンドルから人工弁まで延びる。
【0046】
搬送装置200は、搬送装置の動作を制御するための様々なユーザインターフェース制御要素を有することができる。たとえば、図4Aを参照するとわかるように、ハンドル210は、モータ212の動作を制御する1つまたは複数のボタン280a、280bを有することができる。ボタン280aは、トルクシャフト224を第1の方向に回転させて人工弁100を半径方向に拡張させるように動作可能とすることができる。ボタン280bは、トルクシャフト224を、第1の方向とは逆の第2の方向に回転させて、人工弁100を半径方向に圧縮するように動作可能とすることができる。
【0047】
ハンドル210はまた、人工弁の配置を制御することができるソフトウェアを記憶して実行するためのプロセッサおよびメモリを含むことができる。たとえば、ボタン280a、280bの代わりにまたはボタン280a、280bに加えて、モータの動作を制御するためのボタン282を設けることができる。一実装形態では、ボタン282は、ユーザによって押されたときにモータ212を作動させるように動作可能とすることができ、ボタン282が押されることによって、配置手順を開始することができ、それにより、人工弁は所定のアルゴリズムに従って自動的に拡張される。たとえば、人工弁は、特許文献11に開示されたようにパルス方式またはステップ方式で拡張させることができる。ハンドル210は、拡張プロセスの間の任意のときに人工弁の拡張を停止または中断するように動作可能である停止ボタン284を含むこともできる。ハンドル210は、ビジュアルディスプレイ286を含むこともでき、ビジュアルディスプレイ286は、文章、図、および/または人工弁の配置に関する他の情報を表示することができる。
【0048】
搬送装置は、(ハンドル210内に収容することのできる)別のモータと、外側カテーテル220およびシャフト224の湾曲を制御するための(たとえば、ハンドル上の)追加のボタン288a、288bと、をさらに含むことができる。たとえば、ボタン288aは、大動脈弓の周りを移動するときなどに、モータを第1の方向に回転させて1本または複数のプルワイヤに張力を加え、外側カテーテル220を屈曲または湾曲させるように動作可能とすることができる。ボタン288bは、第1の方向とは逆の第2の方向にモータを回転させて1本または複数のプルワイヤにおける張力を低減させ、外側カテーテルを真っすぐにすることができるように動作可能とすることができる。
【0049】
ボタン280a、280b、282、284、288a、288bは様々な形状およびサイズのうちの任意の形状およびサイズとすることができる。さらに、上述の機能のうちのいずれかを実行するために様々なスイッチまたはダイヤルのうちのいずれかを設けることができる。たとえば、3位置スイッチによってボタン280a、280bを置き換えることができる。スイッチは、モータ212を第1の方向へ回転させて人工弁を拡張させる第1の位置と、モータ212が停止される第2の中立位置と、モータ212を第2の方向に回転させて人工弁を圧縮する第3の位置と、の間で移動させることができる。代替実施形態では、ディスプレイ286は、ユーザインターフェースを有するタッチスクリーンとすることができ、ボタン280a、280b、282、284、288a、288bのうちのいずれかをタッチスクリーンディスプレイ上のボタンで置き換えることができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、ハンドル210は、ディスプレイおよび/またはソフトウェアを実行するためのプロセッサを含む別個の制御ユニットと(無線または有線通信リンクを介して)通信することができ、その場合、ハンドル210がそれらの機能を含む必要はない。
【0051】
代替実施形態では、搬送装置は、入力トルクシャフト224を回転させるためのモータを含む必要はなく、その代わり、ユーザによって入力トルクシャフト224を手動で回転させることができる。たとえば、トルクシャフト224の近位端部をハンドル上に取り付けられた回転可能なノブまたはホイールに接続することができ、ハンドルは、ユーザがノブまたはホイールを回転させたときにトルクシャフト224を回転させるように動作可能である。
【0052】
図5は、入力トルクシャフト224の遠位端部、ギアボックス230、出力トルクシャフト240の斜視図を示す。図示のために、外側カテーテル220は図5から省略されている。入力トルクシャフト224は、その近位端においてハンドル210に接続され、その遠位端においてギアボックス230に接続された頑丈なトルク伝達ケーブルを備えることができる。ギアボックス230は、入力トルクシャフト224から出力トルクシャフト240の各々にトルクを伝達することができる。ギアボックス230は、必要に応じて、入力トルクシャフト224の回転速度および/またはトルクを低下または増大させて、入力トルクシャフトとは異なる回転速度および/またはトルクで出力トルクシャフト240を回転させるように構成することもできる。
【0053】
図6は、ギアボックス230および入力トルクシャフト224の遠位端部の内部断面図を示す。図7は、分解状態にあるギアボックス230の斜視図である。図6および図7を参照するとわかるように、入力トルクシャフト224は固定(非回転可能)たわみ軸226内に収容することができ、固定たわみ軸226は外側シャフト220のルーメンを貫通して延びる。固定たわみ軸226は、ハンドル210に接続された近位端部と、外側シャフト220を越えて軸方向にギアボックスハウジング232の近位開口部256内に延びることができる遠位端部254と、を有することができる。遠位端部254は、ギアボックスハウジング232の開口部の内部に、接着剤、摩擦ばめ、留め具、溶接、および/または他の適切な技法もしくは機構などによって固定し、外側シャフト220およびたわみ軸226に対してギアボックスを固定することができる。
【0054】
ギアボックス230は、入力トルクシャフトの回転運動を各出力トルクシャフトに伝達するために駆動歯車と複数の被駆動歯車とを備える歯車列を画定する。図示の実施形態では、入力トルクシャフト224の遠位端部258は、たわみ軸226の遠位端を越えて軸方向に延びることができ、そこで駆動歯車234に接続され、駆動歯車234はさらに複数の被駆動歯車242に接続される。被駆動歯車242の各々はそれぞれの出力トルクシャフト240に接続されそれぞれの出力トルクシャフト240を回転させる。図示の実施形態では、入力トルクシャフト224の遠位端部258は駆動歯車234の中央開口部260内に延び、駆動歯車234は、歯車の内面上に歯を有する内歯歯車を備えることができる。遠位端部258は、接着剤、摩擦ばめ、留め具、溶接、および/または他の適切な技法もしくは機構などによって、中央開口部260の内部に固定することができる。被駆動歯車242は、駆動歯車234の歯と噛み合う外歯を有するピニオン歯車とすることができる。
【0055】
図示の構成におけるギアボックス230は、駆動歯車234内に収容された近位プレート238と、ハウジング232の遠位端に取り付けられた遠位プレート239と、近位プレート238から遠位プレート239まで延びる内側シャフトまたは管状部分236と、をさらに備える。管状部分236を近位プレート238および遠位プレート239に固定して近位プレート238と遠位プレート239とを互いに適切な間隔を置いて互いに平行に維持することができる。管状部分236は、最内シャフト252(図4)が歯車232、242に干渉せずにギアボックス230を貫通して延びるのを可能にするためのルーメンを構成する。ガイドワイヤ(図示せず)は、当技術分野において一般に公知であり、最内シャフト252を貫通して延びることができ、搬送装置200を患者の血管系を通して案内するために使用することができる。各出力トルクシャフト240は、接着剤、摩擦ばめ、溶接、および/または他の適切な技法もしくは機構などによって、それぞれの歯車242の開口部内に固定することができる。出力トルクシャフト240は、近位プレート238および遠位プレート239に垂直なままでありつつ、近位プレート238および遠位プレート239に対して自由に回転することができる。
【0056】
各出力トルクシャフト240は、近位プレート238のそれぞれの開口部262内に支持された近位端部と、遠位プレート239のそれぞれの開口部264内に支持された中間部と、を有することができる。出力トルクシャフト240は、近位プレート238および遠位プレート239内の各自に対応する開口部262、264内で回転することができ、このことは、駆動歯車234内の被駆動歯車242の適切な位置合わせの保持を助ける。各出力トルクシャフト240は、以下にさらに説明するように、アクチュエータ130のそれぞれのねじ132に取外し可能に接続された遠位端部を有する。
【0057】
入力トルクシャフト224がモータ212によって作動させられると、入力トルクシャフト224が回転し、それによって駆動歯車234が回転する。駆動歯車234を回転させると、図8および図9により詳細に示すように被駆動歯車242が回転する。各被駆動歯車242は出力トルクシャフト240を回転させ、それによって、アクチュエータのそれぞれのねじ132が回転し、人工弁のフレーム102の半径方向の拡張および圧縮を作用させる。特定の一実施形態では、内歯歯車234は、31個の歯を有することができ、弾性係数が0.2であり、圧力角が20°であり、バックラッシュが0.1mmであり得る。他の実施形態では、内歯歯車234は任意の他のパラメータを有することができる。ギアボックス230内のピニオン242の数は、出力トルクシャフト240の数と等しくすることができる。各ピニオン242は、10個の歯を有することができ、弾性係数が0.2であり、圧力角が20°であり、バックラッシュが0.1mmであり得る。他の実施形態では、内歯歯車234およびピニオン242は、特定の用途に応じて様々な他のパラメータを有することができる。
【0058】
図8Aおよび図8Bは、ギアボックス230の動作をさらに示す。内歯歯車234は、ピニオン242のそれぞれの歯243に係合することのできる複数の歯235を有することができる。図8Aに示すように、内歯歯車234を時計回りに回転させると、ピニオン242の対応する時計回りの回転が生じる。図8Bに示すように、内歯歯車234を反時計回りに回転させると、ピニオン242の対応する反時計回りの回転が生じる。ピニオン242は、それぞれの出力トルクシャフト240に接続することができ、それによって、ピニオン242を回転させると、同じ方向での出力トルクシャフト240の対応する回転が生じる。したがって、ギアボックス230は、入力トルクシャフト224からの単一の入力トルクを、ギアボックス230に接続された出力トルクシャフト240の数に等しい数の出力トルクに変換することができる。ギアボックス230はまた、(搬送装置の中央長手方向軸と同一線上にある)入力トルクシャフト224の中心軸からの回転軸を、搬送装置の長手方向軸からずれた出力トルクシャフト240の回転軸にシフトさせることができる。回転軸をシフトさせると、アクチュエータ130のねじ132もフレーム102の中央長手方向軸からずれるので有利である。
【0059】
図示の実施形態では、被駆動歯車に対する駆動歯車の歯車比は1よりも大きく(たとえば、31個の歯を有する内歯歯車と10個の歯を有するピニオンの場合の歯車比は3.1:1であり)、それによって、出力トルクシャフト240は入力トルクシャフト224よりも高速に回転する。代替実施形態では、ギアボックスは、出力トルクシャフトが入力トルクシャフトよりも低速で回転するように1よりも小さい被駆動歯車に対する駆動歯車の歯車比を有するように構成することができる。
【0060】
図9は、ギアボックスの代替実施形態を示す。図9のギアボックスは、内歯歯車234から被駆動ピニオン歯車242のうちの1つまたは複数への回転の方向を変更するために1つまたは複数のアイドラ歯車を追加できることを除いて図8Aおよび図8Bに示す構成と類似している。図示の実施形態では、それぞれの出力トルクシャフト240上に取り付けられた2つの被駆動ピニオン歯車242は、前述のように歯車234の内歯235に係合する歯243を有する。内歯歯車234内のそれぞれのシャフト276上にアイドラピニオン歯車274を取り付けることができ、アイドラピニオン歯車274は、内歯歯車234の歯235と噛み合う歯275を有することができる。第3の被駆動ピニオン歯車279は、出力トルクシャフト240のうちの1つに取り付けられ、アイドラピニオン歯車274の歯と噛み合う歯279を有する。したがって、使用時には、内歯歯車234を回転させると、ピニオン歯車242とそのそれぞれの出力シャフト240とが同じ方向に回転し、ピニオン歯車278とそのそれぞれの出力シャフト240とが(アイドラ歯車を介して)逆方向に回転する。そのような構成は、アクチュエータ130のねじ132のうちの1つまたは複数が他のねじとは異なる方向にねじ山が設けられている(たとえば、1つまたは複数のねじ132が右ねじであり、一方、1つまたは複数のねじが左ねじである)場合に有利であることがある。代替実施形態では、ギアボックスは、被駆動ピニオン歯車のうちの2つの回転方向を変更するために2つのアイドラ歯車など1つよりも多くのアイドラ歯車を有するか、またはすべての3つの被駆動ピニオン歯車の回転方向を変更するために3つのアイドラ歯車を有することができる。
【0061】
図10および図11は、人工弁100のフレーム102に取外し可能に接続された搬送装置200の遠位端部を示す。図示のように、各出力トルクシャフト240は、アクチュエータ130のねじ132の対応する取付け部材138と噛み合うように構成された遠位端部266を有することができる。図示の実施形態では、たとえば、遠位端部266は、取付け部材138の切欠き140において受け取られるように形作られた突起268と、取付け部材138の突起142を受け取るように形作られた切欠きと、を備えて形成されることができる。スリーブ270は各出力シャフト240の遠位端部266およびねじ132の噛み合い取付け部材138を覆って延びて出力シャフト240とねじ132との間の接続を維持することができる。各スリーブ270は、人工弁から搬送装置まで近位方向に延びることができ、長手方向に移動して取付け部材138と出力シャフトの遠位端部266との間の噛み合い接続部を覆わなくするように構成される。特定の実施形態では、たとえば、各スリーブ270をワイヤまたはシャフトに接続することができ、ワイヤまたはシャフトは、ユーザによって関連するシャフト240に対してスリーブ270の近位方向への移動を生じさせるように操作することができる。スリーブ270が近位方向に退避されてねじ132とシャフト240との間の接続部を覆わなくなると、シャフト240をねじ132に対してわずかに退避させるかまたは引くことによってシャフト240をねじ132から解放/結合解除することができる。
【0062】
特許文献11に記載されたような搬送装置の駆動シャフトと人工弁フレームの回転可能なねじとの間の取外し可能な接続部を形成するための他の構成およびデバイスを使用して、各トルクシャフト240とねじ132との間の取外し可能な接続部を形成することができる。
【0063】
搬送装置200を使用して人工弁100を搬送して心臓内の所望の位置(たとえば、自然大動脈弁)に移植するには、図3に示すように、人工弁100をまず半径方向に圧縮するかまたは波形にして圧縮状態にすることができる。代替として、人工弁100は、図2に示す半径方向拡張状態から開始することができる。出力トルクシャフト240の遠位端部266をねじ132の取付け部材138に接続することができ、スリーブ270を遠位端部266および取付け部材138を覆って配置することができる。
【0064】
出力トルクシャフト240が取付け部材138に接続された後、人工弁100が半径方向拡張状態である場合、出力トルクシャフト240を(たとえば、時計回り方向に)回転させることができ、それによって、ねじ132を回転させフレーム102を半径方向に圧縮する。次いで、従来の技法およびデバイスを使用して搬送装置200および人工弁100を患者の血管系を通して挿入し所望の移植部位に前進させることができる。たとえば、搬送装置を大腿動脈および大動脈を通して自然大動脈弁まで前進させることによって人工大動脈弁を逆行性アプローチにおいて搬送することができる。
【0065】
移植部位においてまたは移植部位に隣接する位置において、ハンドル210は、ボタン(たとえば、ボタン280aまたはボタン282)を押すか、スイッチをオンにするか、ダイヤルを回すか、または代替方法を使用してモータ212をオンにして出力トルクシャフト240を(たとえば、反時計回り方向に)回転させ、それによって、ねじ132を回転させ人工弁100のフレーム102を半径方向に拡張させることなどによって作動させることができる。たとえば、人工弁の大動脈位置への逆行性搬送の間、搬送装置を下行大動脈、大動脈弓、および上行大動脈を通して前進させ、人工弁を自然大動脈弁輪内に位置させる。入力トルクシャフト224は、入力トルクシャフト224が大動脈弓を貫通して延び、ギアボックス230および出力トルクシャフト240が、人工弁が所望の移植部位に位置するときに上行大動脈内に位置するようなサイズを有することが望ましい。このようにして、弁配置の間、出力トルクシャフト240の撓みおよびその結果としての伸長ならびに収縮を回避することができる。したがって、人工弁の均一で予測可能な拡張の場合でも、すべての出力トルクシャフト240を同じトルクで同期的に回転させることができる。
【0066】
有利なことには、人工弁100は、搬送装置200に接続されている間完全に動作可能である(順行性血液が弁を通って一方向に流れるのを可能にし、かつ逆行性血液が弁を通って流れるのを妨げる)。したがって、医師は、人工弁が搬送装置から解放される前に人工弁の動作を試験することができる。必要に応じて、モータ212の回転を反転させる(たとえば、モータを時計回り方向に回転させる)ことによって人工弁100を体内で折り畳み直し、位置を変更し、次いで再拡張させることができる。モータ212の回転の反転は、たとえば、ボタン280bを押すことによって実現することができる。
【0067】
医師が人工弁の位置および/または動作にまだ満足していない場合、人工弁を折り畳み直して人体から取り出すことができる。アクチュエータ130によってもたらされる別の利点は、人工弁を患者の弁輪に最適な拡張後直径の範囲内の最終拡張後直径まで拡張させることができることである。特定の実施形態では、アクチュエータ130は自己ロック式アクチュエータであり、これはすなわち、アンカー134および/またはアンカー136のねじ山に係合するねじ132のねじ山が、アクチュエータに作用する押す力または引く力に抵抗し、人工弁が搬送装置から解放された後でフレーム102の拡張後直径を保持することができることを意味する。フレーム102が半径方向に所望のサイズまで拡張された後、スリーブ270を退避させることができ、出力トルクシャフトをねじ132から取り外すことができる。次いで、搬送装置200を患者から取り出すことができる。
【0068】
一般的な要件
開示された実施形態を、心臓の自然弁輪(たとえば、肺動脈弁輪、僧帽弁輪、および三尖弁輪)のいずれかに人工デバイスを搬送し移植するように適合することができ、かつ様々な搬送手法(たとえば、逆行性、順行性、経中隔、経心室、経心房)のいずれかとともに使用することができることを理解されたい。開示された実施形態は、人体の他の内腔にプロテーゼを移植するために使用することもできる。さらに、本明細書に記載された搬送アセンブリ実施形態を、人工弁に加えて、ステントおよび/または他の人工修復デバイスなどの様々な他の人工デバイスを搬送し移植するように適合することができる。
【0069】
この説明のために、本明細書では、この開示の実施形態のいくつかの態様、利点、および新規の特徴が記載されている。開示された方法、装置、およびシステムは、いかなる点でも限定と解釈されるべきではない。その代わり、本開示は、様々な開示された実施形態のすべての新規の自明ではない特徴および態様を、単独で、ならびに様々な組合せおよび部分的な組合せで対象とするものである。方法、装置、およびシステムは、任意の特定の態様もしくは特徴またはその組合せに限定されず、また開示された実施形態は、任意の1つまたは複数の特定の利点が存在することまたは問題が解決されることを必要としない。任意の例による技術は、他の例のうちの1つまたは複数において記載された技術と組み合わせることができる。開示された技術の原則が適用される場合がある多数の考えられる実施形態に鑑みて、図示の実施形態が好ましい例に過ぎず、開示された技術の範囲を限定するものと見なされるべきではないことを認識されたい。
【0070】
開示された実施形態のうちのいくつかの実施形態の動作について、好都合に提示するために特定の順序で説明したが、この説明方法が、以下に記載する特定の文言によって特定の順序が必要とされない限り再構成を包含することを理解されたい。たとえば、順を追って記載された動作は、場合によっては、再構成されるかまたは同時に実行されてもよい。さらに、便宜上、添付の図は、開示された方法を他の方法とともに使用することができる様々な方法を示さない場合がある。さらに、説明は、場合によっては、開示された方法を説明するために「提供する」または「実現する」のような用語を使用する。これらの用語は、実行される実際の動作を高度に抽象化したものである。これらの用語に対応する実際の動作は、特定の実装形態に応じて異なる場合があるが、当業者によって容易に識別可能である。
【0071】
本出願および特許請求の範囲では、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈において明確な指定がない限り複数形を含む。さらに、「含む」という用語は「備える」を意味する。さらに、「結合される」および「関連付けられる」という用語は一般に、電気的、電磁的、および/または物理的(たとえば、機械的または化学的)に結合または連結されることを意味し、特定の矛盾する文言がない限り結合されるかまたは関連付けられた品目の間の中間要素の存在を除外しない。
【0072】
本明細書では、「近位」という用語は、ユーザにより近くかつ移植部位からより遠いデバイスの位置、方向、または部分を指す。本明細書では、「遠位」という用語は、ユーザからより遠くかつ移植部位により近いデバイスの位置、方向、または部分を指す。したがって、たとえば、デバイスの近位運動は、ユーザに向かうデバイスの運動であり、一方、デバイスの遠位運動は、ユーザから離れるデバイスの運動である。「長手方向」および「軸方向」という用語は、他に明示的な定義がない限り、近位方向および遠位方向に延びる軸を指す。
【0073】
本明細書では、「一体的に形成された」および「一体構成」という用語は、溶接部、留め具、または材料の別々に形成された部片を互いに固定するための他の手段を含まない構成を指す。
【0074】
本明細書では、「同時に」または「並行して」生じる動作は概して互いに同時に生じる。ただし、たとえば、ねじ山、歯車などの機械的連結部における構成要素間の間隔、遊び、またはバックラッシュに起因する一方の動作の他方の動作に対する発生遅延は、特定の矛盾する文言がない限り明示的に上記の用語の範囲内である。
【0075】
本開示の原則が適用される場合がある多数の考えられる実施形態を考慮して、図示の実施形態が好ましい例に過ぎず、本開示の範囲を限定すると見なされるべきではないことを認識されたい。むしろ、本開示の範囲は特許請求の範囲によって定義される。
【符号の説明】
【0076】
100 人工弁
102 フレーム
104 流入端部
106 流出端部
108 ラティスストラット
110 弁構造
112 リーフレット
114 頂点
118 孔
122 留め具
124 流出端
130 アクチュエータ
132 ロッド
134 スリーブ
136 ナット
138 取付け部材
140 切欠き
142 突起
200 人工弁搬送装置
210 ハンドル
212 モータ
220 カテーテル
224 入力トルクシャフト
226 たわみ軸
230 ギアボックス
232 ギアボックスハウジング
234 駆動歯車
235 内歯
236 管状部分
238 近位プレート
239 遠位プレート
240 出力トルクシャフト
242 被駆動歯車
250 ノーズコーン
252 最内シャフト
254 遠位端部
256 近位開口部
258 遠位端部
260 中央開口部
264 開口部
266 遠位端部
268 突起
270 スリーブ
274 アイドラピニオン歯車
275 歯
278 ピニオン歯車
279 被駆動ピニオン歯車
280a、280b、282 ボタン
284 停止ボタン
286 ビジュアルディスプレイ
288a、288b ボタン
図1
図2
図3
図4
図4A
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
【外国語明細書】