(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101534
(43)【公開日】2023-07-21
(54)【発明の名称】ロータリー式水力発電システム
(51)【国際特許分類】
E02B 9/00 20060101AFI20230713BHJP
E03F 3/04 20060101ALI20230713BHJP
E03F 5/14 20060101ALI20230713BHJP
E03C 1/12 20060101ALI20230713BHJP
E03C 1/264 20060101ALI20230713BHJP
B01D 29/11 20060101ALI20230713BHJP
【FI】
E02B9/00 Z
E03F3/04 Z
E03F5/14
E03C1/12 Z
E03C1/264
B01D23/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076597
(22)【出願日】2023-05-08
(62)【分割の表示】P 2019130790の分割
【原出願日】2019-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】518368711
【氏名又は名称】中島 隆道
(74)【代理人】
【識別番号】100115200
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修之
(72)【発明者】
【氏名】中島 隆道
(57)【要約】
【課題】生活廃水として処理されている水を浄化して再利用することとし、再利用出来るまでに浄化する過程において、送水路が螺旋状に構成されているロータリー式水力発電システムを提案する。
【解決手段】ロータリー式水力発電システム1は、シンク下などの排水管3から分岐して流入する排水を送水可能な送水管11と、送水管11内の各所に設置されたスクリュー12と、スクリュー12の支軸に接続されてスクリュー12からの動力を受ける発電機13と、発電機13からの電力を蓄電する蓄電機14と、送水管11の下流に接続された貯水槽15とを有する。送水管11は、上流側が排水管3と接続されて高所に位置し、下流側が貯水槽15と接続されて低所に位置し、螺旋状に形成する。送水管11の下流側には貯水槽15に通じる排出管5が設けられるほか、送水管11の下流側の水を再び上流側に戻す還流管6が設けられ、送水管11と還流管6とで水を循環する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を高所から低所に送水可能で、略一様な断面の円筒状の送水管と、
前記送水管内の管径に応じて回転可能に配置した回転体と、
前記回転体による回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機と、を有し、
前記送水管を螺旋状に配置したことを特徴とするロータリー式水力発電システム。
【請求項2】
前記送水管の管径は、高所側から低所側にかけて小さくなっていることを特徴とする請
求項1記載のロータリー式水力発電システム。
【請求項3】
前記送水管の高所側及び低所側に開閉可能な制御弁を有することを特徴とする請求項1
又は2記載のロータリー式水力発電システム。
【請求項4】
前記送水管の高所側は、下水へと通じる排水管と接続されていることを特徴とする請求
項1から3のいずれか記載のロータリー式水力発電システム。
【請求項5】
前記送水管の低所側は、再利用可能な水を貯留する貯水槽と接続されていることを特徴
とする請求項1から4のいずれか記載のロータリー式水力発電システム。
【請求項6】
前記排水管は、排水を浄化する浄化フィルターが設けられていることを特徴とする請求
項4記載のロータリー式水力発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水力発電技術に関し、具体的には、送水路が螺旋状で構成されているロータリー式水力発電システムである。
【背景技術】
【0002】
水力発電は、高低差による水の位置エネルギーを利用して水車やタービンと直結した発電機により発電するシステムとして、他の再生可能エネルギーを用いた発電システムに比べて驚異的な変換効率が期待できるものとされている。
【0003】
高低差の利用は、単純な川の流れや、水を上方に汲み上げて落下することなどで実現可能である。前者は自然エネルギーを利用するもの、後者は揚水式水力発電といわれるもので上方と下方に調整池を整備するなど設備が大掛かりとなり、ともに家庭内や企業内で自家発電するような利用には不向きである。
【0004】
家庭内や企業内には上水道と下水道が整備され、上水道から供給された水が利用されると排水として下水道に流れ出る管路が設けられている。排水管から排出される水は垂直降下で下水道に導かれており、例えばシンク台のような1m弱の有効落差が見込める低落差又は超低落差を利用して電力を取り出す技術はこれまでのところ発見できない。
【0005】
また、このような低落差又は超低落差を利用して電力を得る場合に、流路を螺旋状に構成した技術は発見できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、生活廃水として処理されている水を浄化して再利用することとし、再利用出来るまでに浄化する過程において、送水路が螺旋状で構成されているロータリー式水力発電システムを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するために、本発明は、再利用出来るまでに浄化する過程において送水管内にスクリューを点在させて設置し、送水管内に流れる水力でスクリューが回転することにより、ダイナモ発電に移行するロータリー式水力発電システムである。
【0009】
より具体的には、第1に、ロータリー式水力発電システムは、流体を高所から低所に送水可能な送水管と、前記送水管内に配置したスクリューと、前記スクリューの回転軸と接続され、前記回転軸の回転による回転動力を受ける発電機と、を有し、前記送水管を螺旋状に配置したことを特徴とする。第2に、前記送水管の管径は、高所側から低所側にかけて小さくなっていることを特徴とする。第3に、前記送水管の高所側及び低所側に開閉可能な制御弁を有することを特徴とする。第4に、前記送水管の高所側は、下水へと通じる排水管と接続されていることを特徴とする。第5に、前記送水管の低所側は、再利用可能な水を貯留する貯水槽と接続されていることを特徴とする。第6に、前記排水管は、排水を浄化する浄化フィルターが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、スクリューが点在的に設置された送水管を螺旋状に配置したことから、シンク下などに省スペースで設置が可能な発電システムを提供可能である。また、水の落下による重力と回転による遠心力が相俟って水流に勢いがつき、この水流によってスクリューを回転させることによる回転エネルギーを動力源として発電機で発電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係るロータリー式水力発電システムが設置されたシンク下の外観概略図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係るロータリー式水力発電システム1が設置されたシンク下の外観構成の概略を示す図であり、シンク下に設置されたディスポーザー2及びディスポーザー2のドレイン側に接続された排水管3を有し、排水管3の分岐路にロータリー式水力発電システム1が接続されている。
【0013】
ロータリー式水力発電システム1は、排水管3から分岐して流入する排水を送水可能な送水管11と、送水管11内の各所に設置されたスクリュー12と、スクリュー12の支軸に接続されてスクリュー12からの動力を受ける発電機13と、発電機13からの電力を蓄電する蓄電機14と、送水管11の下流に接続された貯水槽15とを有する。
【0014】
送水管11は、上流側が排水管3と接続されて高所に位置し、下流側が貯水槽15と接続されて低所に位置する。高所から低所に至るまでは、直線状ではなく螺旋状に形成することで、排水の流路を長くしている。送水管11は、略同一の径で螺旋状に形成されているものや、高所では管径が大きく低所では管径が小さくなるような先細りで螺旋状に形成されているものなど、種々の態様が選択可能である。
【0015】
送水管11は、上流の高所側に二尖弁21が、下流の低所側に二尖弁22が設けられている。排水の流入口と排出口の双方に設置することで排水を安定的に供給して、水流を維持することができる。二尖弁21,二尖弁22を開くことで、送水管11内にスクリュー12を回転させるために必要な水が導入される。
【0016】
例えば、送水管11内のスクリュー12が常時恒常的に回転し続ける為の方法の一つとして、送水管11内の水量を一定に保つ必要に鑑み、流入する水に対して二尖弁21、送水管11内の水が多くなれば排出する為の二尖弁22をそれぞれ設けている。
【0017】
また、送水管11の下流側には貯水槽15に通じる排出管5が設けられるほか、送水管11の下流側の水を再び上流側に戻す還流管6が設けられてもよく、送水管11と還流管6とで水を循環することで、送水管11内に絶えず水が供給されてスクリュー12を回転して発電する循環型のロータリー式水力発電システムを構築することができる。送水管11の水を循環するか排出するかは二尖弁22の開閉によって制御することとしてもよい。
【0018】
ディスポーザー2は、シンクの排水口の下に投入される生ゴミを粉砕するものであり、排水管3には、排水を浄化する浄化フィルター4が設けられており、浄化フィルター4で段階的に排水を濾過することにより、飲料水に近い純度にまで戻した水を循環させることができる。例えば、粗目フィルター,細目フィルター,繊維フィルター,糸目活性炭入りフィルターの4段階の工程が組み込まれた浄化フィルター4とすることができる。本実施形態においては、送水管11を流れる排水中にスクリュー12の回転を阻害する異物が混入する状態を少なくとも回避すればよいことから、ディスポーザー2及び浄化フィルター4は必要に応じて採用することができる。
【0019】
発電機13は、スクリュー12の回転で得られる回転軸16の回転エネルギーを電気エネルギーに変換する変換機構を含み、各々の回転軸に対応して発電部13a,・・・が接続されている。蓄電機14は、各々の発電部13a,・・・で発電された電力を統合して蓄電する。なお、ダイナモ発電機のような整流子発電では整流された電流をそのまま蓄電機14に供給することで蓄電が可能である一方、交流発電では周波数調整等を行って蓄電機14に供給する。蓄電機14に蓄電された電気は、配電盤等を介して所望の電気機器に配電される。
【0020】
図2及び
図3は、送水管11に取り付けた回転軸16とスクリュー12の態様を示す図である。送水管11の内壁に回転軸16を回転可能に係合する一対の係合凹部11a,11bが離間して設けられ、回転軸16は係合凹部11a,11bに回転可能に係合された状態となっていて、上下一対の半割状の送水管を対向し、軸受け19を間に挟み込んで接着する(
図7参照)。上下の送水管に取り付けられた軸受け20は、発電機へと動力が伝導される回転軸16の一端に設けられ、送水管11内の水が外部に漏れないように防水機能を有する。回転軸16には複数のスクリュー12(12a,12b,12c,12d)が取り付けられている。回転軸16とスクリュー12とは一条ネジで取り付けられても多条ネジで取り付けられてもよい。スクリュー12の羽根までの回転径rは送水管11の内径に応じて定められるが、送水管11の内壁寄り2つはrが小さく中心寄り2つはrが大きいとすることで、効率的な送水を行うことに資する。また、1つのスクリュー12の回転径を、一方側は大きくし(r2)、他方側は小さくして(r2)、送水管11内を流れる水の水位に応じた効率的なスクリュー12の回転が可能となる。さらに、送水管11内の外側寄りに設けられたスクリューは、螺旋状に流れる水に加わる遠心力で回転が強まる一方、内側寄りに設けられたスクリューは、螺旋状に流れる水に加わる向心力で回転が弱まることとなるが、内側寄りのスクリューの羽根の数を増やすなどして、回転の強さを適切に維持することができる。
【0021】
図4は、貯水槽15の断面図であり、送水管11の下流側から流入する排水を木炭等の濾過媒体Aで濾過する濾過区域17と、濾過された整水を貯水する貯水区域18と、に区画されている。貯水区域18の整水は、ポンプPで汲み上げて再利用する。
【0022】
図5は、送水管11の例を示しており、送水管11は、曲げ半径の曲率により水圧及び流速が異なってくることから、螺旋状の特殊設計を利用して発電量の制御ができる。
【0023】
図5(A)は、上流端から下流端にかけての曲げ半径の曲率が大から徐々に小になるように巻回した送水管である。曲げ半径の曲率は下流に向かうにつれて回転湾曲し徐々に小さくなっていく。上流側の曲げ半径の曲率が大きいので回転流速も早くなる。曲げ半径の曲率が大から徐々に小になるにつれて瞬間的に水圧及び流速は増大する。
【0024】
図5(B)は、上流端から下流端にかけての曲げ半径の曲率が同じであるように巻回した送水管である。上流端から下流端にかけて、管内の水は同じ圧力と流速で持続的に流れることができる。
【0025】
図6は、本発明の実施形態に係るロータリー式水力発電システム1に使用するロータリー式水力発電ユニットの設置例を示す図である。
図6(A)は、送水管11の中心内部に発電機13及び蓄電機14を環設する例であり、
図6(B)は、排水管3を中心として送水管11、発電機13及び蓄電機14を環設する例である。このような設置を可能とする各機器をユニット化したロータリー式水力発電ユニットは、シンク下の省スペース化に資することとなる。
【0026】
図8は、螺旋状の送水管を横一直線に展開した状態を示しており、
図8(A)は管径が先端から末端にかけて終始同一の送水管11a、
図8(B)は、管径が先端から末端にかけて区画(1)・区画(2)・区画(3)と段階的に先細りしていく送水管11bである。送水管11bは管を狭めた分だけ水流が強くなるため、設置したスクリューの回転数が増えることになる。管径が狭まり、水が管に当たって下に流れ落ちることで、水力(水圧)が増してスクリューにかかる力が増すことになるので、スクリューの回転数の増加が期待できる。
【0027】
以上、本発明をシンク下に設置して台所排水を利用する場合について説明したが、これ以外にも、洗面台からの排水、浴室からの排水、洗濯機からの排水など、あらゆる排水を利用したロータリー式水力発電システムとして適用可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 ロータリー式水力発電システム
2 ディスポーザー
3 排水管
4 浄化フィルター
5 排出管
6 還流管
11 送水管(11a,11b)
12 スクリュー
13 発電機
14 蓄電機
15 貯水槽(17:濾過区域、18:貯水区域)
16 回転軸
19,20 軸受け
21,22 二尖弁