(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101583
(43)【公開日】2023-07-21
(54)【発明の名称】ガス発生器
(51)【国際特許分類】
B60R 21/264 20060101AFI20230713BHJP
B01J 7/00 20060101ALI20230713BHJP
【FI】
B60R21/264
B01J7/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082219
(22)【出願日】2023-05-18
(62)【分割の表示】P 2019158996の分割
【原出願日】2019-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】三鍋 篤
(72)【発明者】
【氏名】加藤 万濫
(57)【要約】
【課題】金属製の取付部に樹脂を介して点火器を取り付けるための、ガス発生器用の点火器保持構造において、樹脂の損傷と湿気の侵入とを抑制可能な技術を提供する。
【解決手段】点火器保持構造は、着火薬を含む着火部と、着火部から延びる導電ピンと、を有する点火器と、点火器と取付部との間に設けられ、着火部と導電ピンの先端とが貫通孔を挟んで互いに反対側に位置し、且つ、導電ピンが周壁部に取り囲まれるように、点火器を保持する樹脂製の第1樹脂部と、周壁部に設けられ、導電ピンに接続されるコネクタを挿入可能な空間であるコネクタ挿入部を周壁部の内側に形成する樹脂製の第2樹脂部と、を備え、第2樹脂部は、コネクタ挿入部に露出する金属製の露出面が周壁部に形成されるように、周壁部の内側において第1樹脂部と隔てられて設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の取付部に点火器を取り付けるための、ガス発生器用の点火器保持構造であって、
前記取付部には、前記点火器が貫通する貫通孔と前記貫通孔の内面を含む周壁部とが形成されており、
前記点火器保持構造は、
着火薬を含む着火部と、前記着火部から延びる導電ピンと、を有する前記点火器と、
前記点火器と前記取付部との間に設けられ、前記着火部と前記導電ピンの先端とが前記貫通孔を挟んで互いに反対側に位置し、且つ、前記導電ピンが前記周壁部に取り囲まれるように、前記点火器を保持する樹脂製の第1樹脂部と、
前記周壁部に設けられ、前記導電ピンに接続されるコネクタを挿入可能な空間であるコネクタ挿入部を前記周壁部の内側に形成する樹脂製の第2樹脂部と、を備え、
前記第2樹脂部は、前記コネクタ挿入部に露出する金属製の露出面が前記周壁部に形成されるように、前記周壁部の内側において前記第1樹脂部と隔てられて設けられている、
点火器保持構造。
【請求項2】
前記露出面は、前記第2樹脂部が前記周壁部の内側において前記第1樹脂部と隔てられることで前記コネクタ挿入部に露出した、前記周壁部の一部として形成されている、
請求項1に記載の点火器保持構造。
【請求項3】
前記取付部には、前記貫通孔以外で、前記周壁部を挟んだ前記第1樹脂部の側から前記第2樹脂部の側に貫通する接続孔が形成されており、
前記第1樹脂部と前記第2樹脂部とが、前記接続孔の内部で接続されている、
請求項1又は2に記載の点火器保持構造。
【請求項4】
前記周壁部は、前記露出面が形成される奥側周壁部と、前記コネクタ挿入部に対する前記コネクタの挿入方向において前記奥側周壁部よりも手前側に形成され、前記露出面よりも前記周壁部の外側に広がる手前側周壁部と、を有しており、
前記第2樹脂部は、前記コネクタ挿入部への前記コネクタの挿入が阻害されないように、前記手前側周壁部に設けられている、
請求項1から3の何れか一項に記載の点火器保持構造。
【請求項5】
前記第2樹脂部において前記コネクタと対向する面であるコネクタ導入面は、前記露出面と面一となるように形成されている、
請求項4に記載の点火器保持構造。
【請求項6】
前記第2樹脂部において前記コネクタと対向する面であるコネクタ導入面が、前記露出面よりも前記周壁部の内側に位置するように、前記露出面と前記コネクタ導入面との間に段差部が形成され、
前記段差部は、前記コネクタが前記コネクタ挿入部に挿入された場合に、前記コネクタから突出する突出部が前記段差部に係合することで、前記コネクタの前記コネクタ挿入部からの抜去が規制されるように構成されている、
請求項4に記載の点火器保持構造。
【請求項7】
前記露出面は、接地端子が設けられた前記コネクタが前記コネクタ挿入部に挿入された場合に前記接地端子が接触可能となるように形成される、
請求項1から6の何れか一項に記載の点火器保持構造。
【請求項8】
前記第1樹脂部は、
前記着火部と前記導電ピンの先端とが前記貫通孔を挟んで互いに反対側に位置し、且つ、前記導電ピンが前記周壁部に取り囲まれるように、前記点火器を保持する保持部と、
一端部が前記保持部に繋がる筒状に形成され、他端部が閉塞された筒状部であって、内側に前記着火部の一部を収容すると共に、前記着火部の作動により燃焼するガス発生剤が収容される燃焼室を前記着火部との間に形成する、筒状部と、を含み、
前記保持部と前記筒状部とが一体に形成されている、
請求項1から7の何れか一項に記載の点火器保持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス発生器の点火器保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
点火器は、エアバッグ用ガス発生器やシートベルトリトラクタ用ガス発生器等の起動装置として用いられ、主に着火電流によって作動する電気式点火器が広く知られている。点火器をガス発生器に取り付けるための構造としては、ハウジングに設けられた筒状の部材に対して、樹脂を介して点火器を取り付ける構造が知られている。
【0003】
これに関連して、特許文献1に示すガス発生器では、ハウジングの底板の中心部に、点火器が取り付けられる筒状の取付部が形成されており、点火器と取付部との間に設けられた樹脂により、点火器が取付部の一端側に固定されている。この樹脂は、更に、点火器に電流を供給するためのコネクタが挿入される空間を取付部の他端側に形成している。
【0004】
特許文献2に示すガス発生器では、更に、樹脂に導電部材を埋設し、コネクタのアース端子が該導電部材と接触するように、導電部材をコネクタの挿入空間に露出させている。これにより、金属製のハウジングに静電気が蓄積されることが抑制され、点火器の誤作動が防止されている。また、特許文献2のガス発生器では、射出成形時に樹脂材料が流れる溝を導電部材に形成することで、点火器を保持するための樹脂と、コネクタの挿入空間を形成するための樹脂とを取付部の内側で繋ぎ、これらを一体に形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7540241号明細書
【特許文献2】特開2013-227010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術のように、樹脂を介して点火器を取り付ける構造において、コネクタの挿入空間を十分に確保しつつも、点火器を保持するための樹脂とコネクタの挿入空間を形成するための樹脂とを取付部の内側で繋げようとすると、樹脂同士が繋がる部分は、取付部の内面に沿って薄肉に形成され易くなる。これにより、当該部分における強度が低下し、樹脂に損傷が生じ易くなることが懸念される。また、樹脂の種類によっては、湿気を吸収する性質があり、その場合、厚さが薄いと湿気を吸収し易い傾向がある。そのため、樹脂に薄肉の部分が形成されると、湿気が該薄肉の部分を伝わってガス発生器の内部に侵入し易くなることも懸念される。湿気がガス発生器の内部に侵入すると、ガス発生器の内部に収容されたガス発生剤を乾燥状態に維持し難くなり、ガス発生器の性能が不安定となる虞がある。
【0007】
本願開示の技術は、上記した問題に鑑みてなされたものであり、金属製の取付部に樹脂を介して点火器を取り付けるための、ガス発生器用の点火器保持構造において、樹脂の損傷と湿気の侵入とを抑制可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本願開示の点火器保持構造は、取付部の内側において、点火器を保持するための樹脂とコネクタの挿入空間を形成するための樹脂とを隔てることで、取付部の内側において樹脂が薄肉となることを抑制した。
【0009】
より詳細には、本願開示の技術は、金属製の取付部に点火器を取り付けるための、ガス発生器用の点火器保持構造であって、前記取付部には、前記点火器が貫通する貫通孔と前記貫通孔の内面を含む周壁部とが形成されており、前記点火器保持構造は、着火薬を含む着火部と、前記着火部から延びる導電ピンと、を有する前記点火器と、前記点火器と前記取付部との間に設けられ、前記着火部と前記導電ピンの先端とが前記貫通孔を挟んで互いに反対側に位置し、且つ、前記導電ピンが前記周壁部に取り囲まれるように、前記点火器を保持する樹脂製の第1樹脂部と、前記周壁部に設けられ、前記導電ピンに接続されるコネクタを挿入可能な空間であるコネクタ挿入部を前記周壁部の内側に形成する樹脂製の第2樹脂部と、を備え、前記第2樹脂部は、前記コネクタ挿入部に露出する金属製の露出面が前記周壁部に形成されるように、前記周壁部の内側において前記第1樹脂部と隔てられて設けられている、点火器保持構造である。
【0010】
本願開示の点火器保持構造によると、点火器を保持するための樹脂とコネクタの挿入空間を形成するための樹脂とを周壁部の内側、即ち、取付部の内側で繋ぐことを回避することで、取付部の内側において樹脂が薄肉に形成されることを抑制できる。その結果、取付部の内側における樹脂の強度を確保し、樹脂の損傷を抑制できる。また、樹脂が薄肉に形成されることに起因する湿気のガス発生器の内部への侵入を好適に抑制できる。より詳細には、湿気が樹脂の薄肉部分を伝わって、点火器周辺、即ち、点火器により燃焼するガス発生剤が収容される空間である燃焼室に侵入することを好適に抑制できる。その結果、燃焼室のガス発生剤の乾燥状態が好適に維持され、ガス発生器の性能を安定化できる。
【0011】
なお、本願開示の点火器保持構造は、エアバッグ用のガス発生器やシートベルトリトラクタ用のガス発生器に適用できる。また、適用されるガス発生器は、点火器を1つのみ備えたシングルタイプのガス発生器であってもよいし、点火器を2つ備えたデュアルタイプのガス発生器であってもよい。また、取付部は、ガス発生器が備えるハウジングの一部によって形成されてもよいし、独立したカラーとして形成されてもよい。また、点火器保持構造は、ガス発生器に組み込まれた状態に限定されず、点火器と第1樹脂部と第2樹脂部とを含む点火器保持構造と取付部としてのカラーとを合わせた点火器組立体の状態も有り得る。
【0012】
また、上記の点火器保持構造において、前記露出面は、前記第2樹脂部が前記周壁部の内側において前記第1樹脂部と隔てられることで前記コネクタ挿入部に露出した、前記周壁部の一部として形成されてもよい。これによると、露出面を形成するための部品を周壁部とは別に設ける必要がなく、部品点数及び組立工数の増加を抑制できる。
【0013】
また、上記の点火器保持構造において、前記取付部には、前記貫通孔以外で、前記周壁部を挟んだ前記第1樹脂部の側から前記第2樹脂部の側に貫通する接続孔が形成されており、前記第1樹脂部と前記第2樹脂部とが、前記接続孔の内部で接続されてもよい。これによると、接続孔の内部で第1樹脂部と第2樹脂部とを接続する樹脂が接続孔の内面と係合することとなり、以て第1樹脂部及び第2樹脂部の取付部に対する回転を抑制できる。また、点火器保持構造の製造の観点では、射出成形で第1樹脂部と第2樹脂部とを成形する場合に、第1樹脂部側と第2樹脂部側のうちの一方から成形用金型に流れ込んだ樹脂材料は、接続孔を通って他方へ流れ込むことができる。これにより、一度の射出成形で第1樹脂部と第2樹脂部とを同時に成形できるため、工数を低減できる。また、第1樹脂部側から樹脂材料を流し込むゲートと第2樹脂部側から樹脂材料を流し込むゲートのうち、何れか一方のゲートがあればよくなるため、製造設備を簡素化できる。
【0014】
また、上記の点火器保持構造において、前記周壁部は、前記露出面が形成される奥側周壁部と、前記コネクタ挿入部に対する前記コネクタの挿入方向において前記奥側周壁部よ
りも手前側に形成され、前記露出面よりも前記周壁部の外側に広がる手前側周壁部と、を有しており、前記第2樹脂部は、前記コネクタ挿入部への前記コネクタの挿入が阻害されないように、前記手前側周壁部に設けられてもよい。これによると、第2樹脂部を、露出面よりも周壁部の外側に広がる手前側周壁部に設けることで、つまり、広い空間に第2樹脂部を設けることで、コネクタ挿入部の大きさを十分に確保しつつも、第2樹脂部をより厚肉に形成することができる。その結果、第2樹脂部の強度を高めることができる。
【0015】
更に、点火器保持構造において、前記第2樹脂部において前記コネクタと対向する面であるコネクタ導入面は、前記露出面と面一となるように形成されてもよい。これによると、コネクタは、露出面に阻害されることなくコネクタ導入面よりも奥側(露出面側)に滞りなく案内され、コネクタのコネクタ挿入部への挿入を円滑に行うことができる。
【0016】
また、点火器保持構造において、前記コネクタ導入面が、前記露出面よりも前記周壁部の内側に位置するように、前記露出面と前記コネクタ導入面との間に段差部が形成され、前記段差部は、前記コネクタが前記コネクタ挿入部に挿入された場合に、前記コネクタから突出する突出部が前記段差部に係合することで、前記コネクタの前記コネクタ挿入部からの抜去が規制されるように構成されてもよい。これにより、露出面とコネクタ導入面との間に形成された段差をコネクタの抜け止めに利用することができる。
【0017】
また、上記の点火器保持構造において、前記露出面は、接地端子が設けられた前記コネクタが前記コネクタ挿入部に挿入された場合に前記接地端子が接触可能となるように形成されてもよい。ここで、接地端子とは、外部のグラウンド回路と電気的に接続された端子のことを指す。このような点火器保持構造によると、金属製の露出面と接地端子とが接触することで、露出面が設けられる取付部と接地端子とが電気的に接続される。これにより、ガス発生器のハウジングに電荷が蓄積された場合に、電荷が取付部から接地端子を介してグラウンド回路に流れる。その結果、ガス発生器の電荷が安全に放電され、静電気による点火器の誤作動を防止することができる。例えば、ハウジングの一部で取付部を形成する場合、ハウジングに蓄積された電荷が安全に放電される。但し、本願開示の点火器保持構造は、接地端子が設けられたコネクタに対応するものでなくともよく、接地端子を有しないコネクタが接続されるものであってもよい。つまり、露出面がコネクタの接地端子と接触可能に形成されていなくともよい。
【0018】
また、上記の点火器保持構造において、前記第1樹脂部は、前記着火部と前記導電ピンの先端とが前記貫通孔を挟んで互いに反対側に位置し、且つ、前記導電ピンが前記周壁部に取り囲まれるように、前記点火器を保持する保持部と、一端部が前記保持部に繋がる筒状に形成され、他端部が閉塞された筒状部であって、内側に前記着火部の一部を収容すると共に、前記着火部の作動により燃焼するガス発生剤が収容される燃焼室を前記着火部との間に形成する、筒状部と、を含み、前記保持部と前記筒状部とが一体に形成されてもよい。これによると、第1樹脂部の一部(筒状部)によって燃焼室を形成することで、別部材により燃焼室を形成する場合よりも部品点数及び組立工数を低減することができる。更に、燃焼室を第1樹脂部の内部に形成することになるため、湿気が取付部と第1樹脂部との間を通って燃焼室に侵入することを防止できる。
【発明の効果】
【0019】
本願開示の技術によれば、ガス発生器用の点火器保持構造において、樹脂の損傷と湿気の侵入とを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態1に係る点火器保持構造を備えるガス発生器の軸方向断面図である。
【
図2】実施形態1に係るガス発生器における点火器保持構造付近を示す軸方向断面図である。
【
図3】実施形態1に係るガス発生器にコネクタが接続された状態を示す軸方向断面図である。
【
図4】実施形態1に係る点火器保持構造の製造工程を示す図である。
【
図5】実施形態1の変形例1に係るガス発生器における点火器保持構造付近を示す軸方向断面図である。
【
図6】実施形態1の変形例1に係る点火器保持構造の製造工程を示す図である。
【
図7】実施形態1の変形例2に係るガス発生器における点火器保持構造付近を示す軸方向断面である。
【
図8】実施形態1の変形例2に係るガス発生器にコネクタが接続された状態を示す軸方向断面である。
【
図9】実施形態1の変形例3に係るガス発生器における点火器保持構造付近を示す軸方向断面図である。
【
図10】実施形態2に係る点火器保持構造を備えるガス発生器の軸方向断面図である。
【
図11】実施形態2の変形例に係る点火器保持構造を備えるガス発生器の軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照して本願開示の実施形態に係る点火器保持構造について説明する。なお、以下の実施形態の構成は例示であり、本願開示の技術はこれらの実施の形態の構成に限定されるものではない。
【0022】
<実施形態1>
実施形態1として、本願開示の点火器保持構造をエアバッグ用のガス発生器に適用した場合について説明する。
【0023】
[全体構成]
図1は、実施形態1に係る点火器保持構造を備えるガス発生器の軸方向断面図である。ガス発生器100は、符号4で示す点火器を1つ備える所謂シングルタイプのガス発生器として構成されている。詳細には、
図1に示すように、ガス発生器100は、ハウジング1、点火器4、第1樹脂部5、第2樹脂部6、及びフィルタ7を備えている。ガス発生器100は、点火器4を作動させることで、ハウジング1に収容されたガス発生剤110を燃焼させ、その燃焼生成物である燃焼ガスをハウジング1に形成されたガス排出孔13から放出することで、エアバッグ(図示せず)を膨張させるように構成されている。
図1に示すように、点火器4は、第1樹脂部5に保持された状態でハウジング1に取り付けられている。また、第2樹脂部6は、点火器4に電力(着火電流)を供給するためのコネクタ200(
図3参照)を挿入可能な空間であるコネクタ挿入部A1を形成している。本明細書において、点火器4と第1樹脂部5と第2樹脂部6とを含む、点火器4をハウジング1に取り付けるための構造を、点火器保持構造10と称する。以下、ガス発生器100の各構成について詳しく説明する。
【0024】
[ハウジング]
図1に示すように、ハウジング1は、夫々が有底筒状に形成された金属製の上部シェル2及び下部シェル3が互いの開口端同士を向き合わせた状態で接合されることによって、軸方向の両端が閉塞した短尺筒状に形成されている。但し、上部シェル2及び下部シェル3の構成についてはこれに限定されず、公知のものを適宜使用できる。ここで、ハウジング1の軸方向に沿う方向をガス発生器100の上下方向と定義し、上部シェル2側(即ち、
図1における上側)をガス発生器100の上側とし、下部シェル3側(即ち、
図1にお
ける下側)をガス発生器100の下側とする。
【0025】
上部シェル2は、筒状の上筒部21と該上筒部21の上端を閉塞する天板部22とを有する。天板部22は、上面視で概ね円形状を有している。上筒部21は、天板部22の周縁から概ね垂直に延在することで、筒状の周壁を形成する。上筒部21の上端側には天板部22が繋がり、上筒部21の下端側は開口部を形成する。また、上筒部21の下端部には、半径方向外側に延在した接合部23が繋がっている。下部シェル3は、筒状の下筒部31と該下筒部31の下端を閉塞する底板部32とを有する。底板部32は、上部シェル2の天板部22と同様に、上面視で概ね円形状を有している。下筒部31の上端部には、半径方向外側に延在した接合部33が繋がっている。上部シェル2の接合部23と下部シェル3の接合部33とが重ね合わされてレーザ溶接等によって接合されることで、ハウジング1が形成されている。また、上部シェル2の上筒部21には、ハウジング1の内外を連通するガス排出孔13が周方向に沿って複数並んで形成されている。ガス排出孔13は、図示しないシールテープにより閉塞されている。
【0026】
ここで、
図1に示すように、ハウジング1の下部シェル3には、点火器4が取り付けられる取付部34が設けられている。本実施形態では、取付部34が底板部32と一体となって形成されている。つまり、ハウジング1の一部によって取付部34が形成されている。そのため、取付部34は金属製である。
図2は、実施形態1に係るガス発生器100における点火器保持構造10付近を示す軸方向断面図である。
図2に示すように、取付部34は、下部シェル3の一部が底板部32から上方に突出することで、略筒状に形成されている。取付部34の上端部には点火器4の通電ピン42が貫通する貫通孔h1が形成され、貫通孔h1の周縁からは貫通孔h1の内面を含む周壁部35が延びて底板部32に繋がっている。より詳細には、周壁部35は、貫通孔h1の内面を含んで貫通孔h1の径方向外側に延びる孔形成部350と、孔形成部350の外周端部から下方に延びる筒状の奥側周壁部351と、奥側周壁部351の下端部から径方向外側に延びる接続部352と、接続部352の外周端部から下方に延びて底板部32と繋がる筒状の手前側周壁部353と、を有している。
図2に示すように、手前側周壁部353は、奥側周壁部351よりも内径が大きくなるように形成されている。接続部352は、このような奥側周壁部351と手前側周壁部353とを接続することで、奥側周壁部351と手前側周壁部353との間に環状の段差を形成している。なお、以降の説明において、周壁部35の内側及び取付部34の内側とは、周壁部35によって囲まれた領域の内側のことを指し、貫通孔h1の内側も含む。また、周壁部35の内面とは、周壁部35のうち内側に面した壁面のことを指し、貫通孔h1の内面も含む。
図2に示すように、周壁部35の内面と底板部32の下面とが繋がることで、周壁部35の下端部がハウジング1の下方空間に開口している。なお、本例では、周壁部35の接続部352が水平方向に延びる面を形成しているが、接続部352が奥側周壁部351と手前側周壁部353とを繋ぐ環状傾斜面を形成してもよい。また、周壁部35は、接続部352と手前側周壁部353に代えて、奥側周壁部351の下端から底板部32にかけて環状傾斜面を形成する周壁を有してもよい。
【0027】
[フィルタ]
フィルタ7は、筒状に形成されており、
図1に示すように、上端部が上部シェル2の天板部22に支持され、下端部が下部シェル3の底板部32に支持された状態で、点火器4とガス排出孔13との間に配置されている。点火器4とフィルタ7との間には、燃焼室11が形成されている。燃焼室11には、点火器4の作動により燃焼するガス発生剤110が収容される。また、フィルタ7とハウジング1(上筒部21及び下筒部31)との間には、環状の間隙12が形成されている。フィルタ7は、燃焼ガスが通過可能に構成されており、燃焼室11で発生した燃焼ガスは、フィルタ7を通過することで冷却される。このとき、フィルタ7は、燃焼ガスの燃焼残渣を捕集することで燃焼ガスを濾過する。
【0028】
[ガス発生剤]
燃焼室11に収容されるガス発生剤110としては、公知の組成のものが使用できる。ガス発生剤110として比較的燃焼温度の低いガス発生剤を使用する場合は、例えば、硝酸グアニジン(41重量%)、塩基性硝酸銅(49重量%)及びバインダーや添加物からなる公知のものを用いることができる。また、ガス発生剤110には、例えば顆粒状、ペレット状、円柱状、ディスク状等、種々の形状を採用できる。
【0029】
[点火器保持構造]
図2に示すように、点火器保持構造10は、ガス発生剤110を燃焼させる点火器4と、点火器4を保持する樹脂製の第1樹脂部5と、コネクタ200を挿入可能な空間であるコネクタ挿入部A1を形成する樹脂製の第2樹脂部6と、を含む。ここで、
図3は、実施形態1に係るガス発生器100にコネクタ200が接続された状態を示す軸方向断面図である。コネクタ200には、ガス発生器100に電力を供給するための外部電源(図示せず)と接続された給電用リードワイヤ300と、ガス発生器100に蓄積した電荷を放電するためのグラウンド回路(図示せず)に接続された接地用リードワイヤ400と、が接続されている。このコネクタ200は、ガス発生器100の下方からコネクタ挿入部A1に挿入される。つまり、本例において、コネクタ200がコネクタ挿入部A1に対して挿入される方向である挿入方向は、
図3等に示す上方向と一致する。
【0030】
図2及び
図3に示すように、点火器保持構造10では、第1樹脂部5と第2樹脂部6とが周壁部35を挟んで分離して設けられている。本実施形態に係る点火器保持構造10は、周壁部35の内側において第1樹脂部5と第2樹脂部6とを隔てることで、点火器保持構造10における樹脂の強度を確保すると共に、ガス発生器100の内部への湿気の侵入を抑制することができる。以下、
図2及び
図3を参照しながら、点火器保持構造10の各構成について説明する。
【0031】
[点火器]
図2及び
図3に示すように、点火器4は、ガス発生剤110を着火させるための着火薬120を含む着火部41と、着火部41から下方に延びる一対の通電ピン42,42と、を有する。一対の通電ピン42,42には、コネクタ200が接続される。点火器4は、外部電源からコネクタ200を介して各通電ピン42に供給される電力により作動することで、着火部41の着火薬120を点火し、燃焼室11に収容されたガス発生剤110を着火させる。着火部41は、上端が閉塞し下端が開口した有底筒状のカップ体411と、カップ体411の下端に形成された開口を閉塞するように配置された円柱状の金属ヘッダ412と、を有する。金属ヘッダ412は、その外周面においてカップ体411の内壁と溶接されている。カップ体411と金属ヘッダ412とによって画定された空間である着火室413には、ガス発生剤110を燃焼させるための着火薬120が収容されている。金属ヘッダ412の中央部には、上下に貫通する貫通孔が形成されている。一対の通電ピン42,42の一方は、金属ヘッダ412の貫通孔に挿通された状態で、絶縁体43を介して金属ヘッダ412と接合されている。また、着火室413の底部には、該一方の通電ピン42と金属ヘッダ412とを電気的に接続する抵抗体であるブリッジワイヤ44が配線されている。一対の通電ピン42,42の他方は、金属ヘッダ412の下面に接合されている。以下、一対の通電ピン42,42の夫々を区別しないときは、単に、通電ピン42と称する。
【0032】
[第1樹脂部]
第1樹脂部5は、樹脂材料により形成され、点火器4と取付部34との間に設けられることで、点火器4を取付部34に対して固定する。このとき、
図2及び
図3に示すように、第1樹脂部5は、着火部41と通電ピン42の先端421とが取付部34の貫通孔h1を挟んで互いに反対側に位置し、且つ、通電ピン42が取付部34の周壁部35に取り囲
まれる姿勢となるように、点火器4を保持している。つまり、点火器4は、貫通孔h1を挟んで着火部41が上側に位置すると共に通電ピン42の先端421が下側に位置するように、第1樹脂部5に保持されている。
【0033】
第1樹脂部5は、周壁部35に対しては、その外側においては、孔形成部350と奥側周壁部351と接続部352とを覆い、その内側においては、孔形成部350(貫通孔h1の内面を含む)と奥側周壁部351の一部とを覆っている。また、第1樹脂部5は、点火器4に対しては、カップ体411の上端部を含む着火部41の一部が燃焼室11に露出し、先端421を含む通電ピン42の一部がコネクタ挿入部A1に露出するように、着火部41の下部と通電ピン42の上部を覆っている。
【0034】
ここで、
図3に示すように、コネクタ200には、コネクタ200がコネクタ挿入部A1に挿入されたときに通電ピン42が差し込まれるピン差し込み孔201が形成されており、ピン差し込み孔201の内部には、給電用リードワイヤ300に接続された導電端子202が設けられている。
図3に示すように、コネクタ200がコネクタ挿入部A1に挿入されると、ピン差し込み孔201に差し込まれた通電ピン42が導電端子202に接触する。通電ピン42が導電端子202に接触することで、点火器4にコネクタ200が接続され、点火器4に対して給電可能な状態となる。
【0035】
この第1樹脂部5は、樹脂材料を射出成形することで形成される。第1樹脂部5を形成する樹脂材料としては、射出成形に一般に用いられる熱可塑性樹脂、例えば、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリプロピレンスルフィド樹脂、ポリプロピレンオキシド樹脂等を用いることができる。なお、第1樹脂部5が配置される範囲も、
図2や
図3に限定されない。例えば、周壁部35の外側においては、第1樹脂部が孔形成部350のみを覆い、奥側周壁部351の外周面と接続部352の外周面が露出していてもよい。また、第1樹脂部5が周壁部35の内側において孔形成部350のみを覆う状態としてもよい。
【0036】
[第2樹脂部]
第2樹脂部6は、樹脂材料により形成され、
図2及び
図3に示すように、周壁部35の内側に設けられることで、コネクタ200を挿入可能な空間であるコネクタ挿入部A1を、周壁部35の内側に形成する。第2樹脂部6は、周壁部35の内側において、接続部352と手前側周壁部353とを覆うように筒状又は環状に形成されており、第2樹脂部6の内面によってコネクタ挿入部A1が形成されている。ここで、
図3に示すように、コネクタ200には、コネクタ200がコネクタ挿入部A1に挿入された状態で周壁部35の外側に向かって突出する突出部203が形成されている。これに対応して、第2樹脂部6の内面には、その一部が外側に凹むことで、コネクタ挿入部A1に挿入されたコネクタ200の突出部203と係合する係合凹部61が形成されている。コネクタ200がコネクタ挿入部A1に挿入される過程では、突出部203が弾性変形しながらコネクタ200が挿入され、突出部203が係合凹部61に到達したときに再び突出部が外側に開くように復元する。そのため、コネクタ200の挿入が完了すると、突出部203と係合凹部61とが係合する。これにより、意図せずにコネクタ200がコネクタ挿入部A1から抜去されることが規制されている。
【0037】
この第2樹脂部6は、樹脂材料を射出成形することで形成され、第2樹脂部6を形成する樹脂材料としては、第1樹脂部5と同様に、射出成形に一般に用いられる熱可塑性樹脂を用いることができる。なお、第1樹脂部5と第2樹脂部6は、同じ樹脂材料で形成してもよいし、異なる樹脂材料で形成してもよい。
【0038】
ここで、
図2及び
図3に示すように、第2樹脂部6は、周壁部35の内面の一部がコネ
クタ挿入部A1に露出するように、周壁部35の内側において第1樹脂部5と隔てられて設けられている。より詳細には、周壁部35の内側において第2樹脂部6が第1樹脂部5と隔てられることで、奥側周壁部351の一部(第1樹脂部5によって覆われていない部分)がコネクタ挿入部A1に露出している。この、周壁部35の内面のうちコネクタ挿入部A1に露出した部分を、露出面S1と称する。周壁部35が金属製であることから、露出面S1は金属面となる。この露出面S1は、環状に形成されている。つまり、露出面S1は、周壁部35の内周方向において全周に亘って連続して形成されており、これにより、周壁部35の内側において第1樹脂部5と第2樹脂部6とが隔てられている。また、露出面S1は、コネクタ挿入部A1に露出することで、第2樹脂部6の内面と共にコネクタ挿入部A1を画定している。
【0039】
これら第1樹脂部5と第2樹脂部6とは、周壁部35の内側において、露出面S1が形成されるように上下に隔てられている。第2樹脂部6は、露出面S1の下方に、即ち、挿入方向における手前側に設けられている。このとき、
図3に示すように、第2樹脂部6は、コネクタ挿入部A1へのコネクタ200の挿入が阻害されないように、露出面S1よりも周壁部35の外側に広がった手前側周壁部353に設けられている。
【0040】
ここで、第2樹脂部6の内面において、コネクタ挿入部A1に挿入されたコネクタ200と対向する面を、コネクタ導入面S2と称する。コネクタ導入面S2は、露出面S1の下方(即ち、挿入方向における手前側)に、露出面S1と隣接して形成されている。コネクタ導入面S2は、コネクタ200がコネクタ挿入部A1に挿入されるときに、コネクタ200をコネクタ導入面S2よりも奥側へ案内する面となる。
図2及び
図3に示すように、コネクタ導入面S2は、露出面S1と面一となるように形成されている。
【0041】
ここで、コネクタ200には、コネクタ200がコネクタ挿入部A1に挿入された状態でコネクタ挿入部A1に露出する接地端子204が形成されている。接地端子204は、接地用リードワイヤ400を介してグラウンド回路と電気的に接続されている。このとき、
図3に示すように、露出面S1は、コネクタ挿入部A1に挿入されたコネクタ200の接地端子204が、露出面S1に接触するように形成されている。露出面S1がハウジング1の一部であることから、露出面S1と接地端子204とが接触することで、ハウジング1と接地端子204とが電気的に接続される。これにより、ハウジング1に電荷が蓄積された場合に、電荷が接地端子204及び接地用リードワイヤ400を介してグラウンド回路に流れる。
【0042】
[動作]
次に、ガス発生器100の動作について説明する。ガス発生器100が自動車に組み付けられた状態では、
図3に示すようにコネクタ挿入部A1に挿入されたコネクタ200が点火器4と接続されており、点火器4に対して給電可能な状態となっている。この状態で、自動車に搭載されたセンサ(図示せず)が衝撃を感知すると、外部電源からの電力がコネクタ200の導電端子202を介して通電ピン42に供給されることで、ブリッジワイヤ44に電流が流れ、ブリッジワイヤ44に生じるジュール熱により着火室413内の着火薬120が燃焼する。これに伴って着火室413内の圧力が上昇することでカップ体411が破裂し、着火薬120の燃焼生成物である高温の火炎が上方に放出される。これにより、燃焼室11のガス発生剤110が着火する。ガス発生剤110の燃焼ガスは、フィルタ7によって冷却及び濾過された後に、間隙12を通り、ガス排出孔13からハウジング1の外部へと放出され、エアバッグ(図示せず)内に流入する。これにより、エアバッグが膨張し、乗員と堅い構造物の間にクッションが形成され、衝撃から乗員が保護される。
【0043】
[点火器保持構造の製造方法]
次に、点火器保持構造10の製造方法について説明する。本実施形態に係る点火器保持構造10の製造方法では、成形用金型を用いた射出成形によって第1樹脂部5と第2樹脂部6とを成形する。本例では、第1樹脂部5と第2樹脂部6とを同一の樹脂材料により成形する。
図4は、実施形態1に係る点火器保持構造10の製造工程を示す図である。まずステップS101の準備工程では、点火器4と、点火器4の取り付け対象となる取付部34を含む下部シェル3と、第1樹脂部5及び第2樹脂部6の原料となる樹脂材料と、を準備し、成形用の金型内に点火器4と下部シェル3とを配置する。次に、ステップS102の第1樹脂部成形工程では、第1樹脂部5の原料となる樹脂材料(以下、第1樹脂材料)を溶融し、金型内で射出した後に硬化することで、第1樹脂部5を射出成形する。ステップS102では、金型に設けられた第1樹脂材料用のゲートから溶融状態の第1樹脂材料を流し込み、硬化させる。これにより、点火器4が第1樹脂部5により保持された状態で取付部34に固定される。次に、ステップS103の第2樹脂部成形工程では、第2樹脂部6の原料となる樹脂材料(以下、第2樹脂材料)を溶融し、金型内で射出した後に硬化することで、第2樹脂部6を射出成形する。
図2で示すように、点火器保持構造10では、第1樹脂部5と第2樹脂部6とが周壁部35を挟んで隔てられているため、ステップS103では、第1樹脂材料用のゲートとは異なる第2樹脂材料用のゲートから溶融状態の第2樹脂材料を流し込み、硬化させる。これにより、周壁部35の内側にコネクタ挿入部A1が形成される。このとき、周壁部35の内側において第2樹脂部6と第1樹脂部5とが隔てられるように第2樹脂部6を成形することで、周壁部35の内側には、周壁部35の一部がコネクタ挿入部A1に露出した露出面S1が形成される。以上により、点火器保持構造10が製造される。なお、上述したステップS102による第1樹脂部5の成形とステップS103による第2樹脂部6の成形は、ステップS103を先に行ってもよいし、ステップS102とステップS103とを同時に行ってもよい。
【0044】
[作用・効果]
ところで、特許文献1や特許文献2に記載された技術では、点火器を保持するための樹脂とコネクタの挿入空間を形成するための樹脂とを、ハウジングに設けられた筒状の取付部の内側で繋ぎ、これらを一体に形成している。しかしながら、取付部の内側の限られた空間の中でコネクタの挿入空間を確保しようとすると、樹脂を設けることができる空間の大きさは制限される。そのため、上述の技術のように、点火器を保持するための樹脂とコネクタの挿入空間を形成するための樹脂とを取付部の内側で繋ごうとすると、樹脂同士が繋がる部分は、取付部の内面に沿って薄く形成され易くなる。つまり、取付部の内側において、樹脂が薄肉に形成される虞がある。樹脂が薄肉に形成されると、樹脂の強度が低下し、樹脂に損傷が発生し易いことが懸念される。また、樹脂材料の種類によっては、湿気を吸収する性質があり、その場合、薄肉だと湿気を吸収し易い傾向がある。そのため、上述の技術では、湿気が樹脂の薄肉部分を伝わって燃焼室に侵入することにより、燃焼室に収容されたガス発生剤の着火や燃焼性能に影響を及ぼす虞がある。
【0045】
これに対して、本実施形態に係る点火器保持構造10では、コネクタ挿入部A1に露出する金属製の露出面S1が取付部34の周壁部35に形成されるように、第2樹脂部6が周壁部35の内側において第1樹脂部5と隔てられて設けられている。つまり、点火器を保持するための樹脂とコネクタの挿入空間を形成するための樹脂とを周壁部35の内側(即ち、取付部34の内側)で繋ぐことを回避している。これにより、取付部34の内側において樹脂が薄肉に形成されることを抑制できる。その結果、取付部34の内側における樹脂の強度を確保し、樹脂の損傷を抑制できる。また、樹脂が薄肉に形成されることに起因する湿気の燃焼室11への侵入を好適に抑制できる。その結果、燃焼室11のガス発生剤110の乾燥状態が好適に維持され、ガス発生器100の性能を安定化できる。
【0046】
更に、点火器保持構造10では、第1樹脂部5と第2樹脂部6とが周壁部35を挟んで完全に隔てられているため、第2樹脂部6で吸収された湿気が第1樹脂部5に伝わって燃
焼室11に侵入することを完全に防止できる。
【0047】
また、点火器保持構造10では、露出面S1は、第2樹脂部6が周壁部35の内側において第1樹脂部5と隔てられることでコネクタ挿入部A1に露出した、周壁部35の一部として形成されている。これによると、周壁部35によって第1樹脂部5と第2樹脂部6とを隔てるための露出面S1を形成することとなるため、露出面S1を形成するための部品を周壁部35(下部シェル3)とは別に設ける必要がなく、部品点数及び組立工数の増加を抑制できる。
【0048】
また、ガス発生器100では、周壁部35が、露出面S1が形成される奥側周壁部351と、奥側周壁部351よりも下方(挿入方向の手前側)に形成されると共に露出面S1よりも周壁部35の外側に広がる手前側周壁部353と、を有しており、点火器保持構造10では、第2樹脂部6は、コネクタ挿入部A1へのコネクタ200の挿入が阻害されないように、手前側周壁部353に設けられている。これによると、第2樹脂部6を、露出面S1よりも周壁部35の外側に広がる手前側周壁部353に設けることで、つまり、広い空間に第2樹脂部6を設けることで、コネクタ挿入部A1の大きさを十分に確保しつつも、第2樹脂部6をより厚肉に形成することができる。その結果、第2樹脂部6の強度を高めることができる。但し、本願開示の点火器保持構造において第2樹脂部が設けられる箇所は、これに限定されない。
【0049】
更に、点火器保持構造10では、第2樹脂部6においてコネクタ200と対向する面であるコネクタ導入面S2が、露出面S1と面一となるように形成されている。これにより、コネクタ200が露出面S1に阻害されることなくコネクタ導入面S2よりも奥側(露出面S1側)に滞りなく案内され、コネクタ200のコネクタ挿入部A1への挿入を円滑に行うことができる。
【0050】
更に、点火器保持構造10では、接地端子204が設けられたコネクタ200がコネクタ挿入部A1に挿入された場合に、露出面S1が、接地端子204と接触可能となるように形成されている。これによると、金属製の露出面S1と接地端子204とが接触することで、露出面S1が設けられるハウジング1と接地端子204とが電気的に接続される。これにより、ハウジング1に電荷が蓄積された場合に、電荷が接地端子204及び接地用リードワイヤ400を介してグラウンド回路に流れる。その結果、ハウジングの電荷が安全に放電され、静電気による点火器4の誤作動を防止することができる。但し、本願開示の点火器保持構造は、接地端子が設けられたコネクタに対応するものでなくともよく、接地端子を有しないコネクタが接続されるものであってもよい。つまり、露出面がコネクタの接地端子と接触可能に形成されていなくともよい。
【0051】
なお、本願開示の点火器保持構造において、露出面は、上述の奥側周壁部に形成されなくともよい。本願開示の点火器保持構造は、周壁部の内側において第1樹脂部と第2樹脂部とが隔てられていればよく、例えば、露出面が貫通孔の内面により形成されるように、第1樹脂部と第2樹脂部とが隔てられてもよい。
【0052】
[変形例1]
図5は、実施形態1の変形例1に係るガス発生器100Aにおける点火器保持構造10A付近を示す軸方向断面図である。以下、ガス発生器100A及び点火器保持構造10Aについて、ガス発生器100及び点火器保持構造10との相違点を中心に説明し、同様の構成については同一の符号を付すことにより詳細な説明は割愛する。
図5に示すように、ガス発生器100Aでは、取付部34Aに、貫通孔h1以外に、周壁部35を挟んだ第1樹脂部5側から第2樹脂部6側に貫通する接続孔h2が形成されている。そして、点火器保持構造10Aでは、第1樹脂部5と第2樹脂部6とが、接続孔h2の内部で接続されて
いる。接続孔h2は、周壁部35において環状の段差を形成する接続部352に設けられており、周壁部35の内側から外側まで貫通している。そして、接続孔h2に樹脂が充填されることで、第1樹脂部5と第2樹脂部6とが繋がっており、これらが一体に形成されている。なお、周壁部35において接続孔h2が形成される箇所は、接続部352に限定されない。また、接続孔h2は、周壁部35の周方向に並んで等間隔に複数形成されてもよい。
【0053】
点火器保持構造10Aによると、第1樹脂部5と第2樹脂部6とが接続孔h2の内部で接続されることで、接続孔h2の内部の樹脂が接続孔h2の内面と係合することとなり、以て第1樹脂部5及び第2樹脂部6の取付部34Aに対する回転を抑制できる。
【0054】
また、
図6は、実施形態1の変形例1に係る点火器保持構造10Aの製造工程を示す図である。点火器保持構造10Aの製造方法では、第1樹脂部5と第2樹脂部6とを一度の射出成形で成形できる点で、
図4で説明した点火器保持構造10の製造方法と異なる。本例においても、第1樹脂部5と第2樹脂部6とを同一の樹脂材料により成形する。先ず、ステップS101の準備工程では、点火器4と、点火器4の取り付け対象となる取付部34Aを含む下部シェル3と、第1樹脂部5及び第2樹脂部6の原料となる樹脂材料と、を準備し、成形用の金型内に点火器4と下部シェル3とを配置する。このとき、取付部34Aには、接続孔h2が形成されている。次に、ステップS104の樹脂部成形工程では、第1樹脂部5及び第2樹脂部6の原料となる樹脂材料を溶融し、金型で射出成形した後に硬化することで、第1樹脂部5及び第2樹脂部6を一度に射出成形する。ステップS104では、金型に設けられた樹脂材料用のゲートから溶融状態の樹脂材料を流し込み、硬化させる。ステップS104により、第1樹脂部5と第2樹脂部6とが一体に成形される。ここで、上述のように、本例における取付部34Aには、点火器保持構造10Aにおいて第1樹脂部5側から第2樹脂部6側に貫通する接続孔h2が形成されている。そのため、ステップS104では、金型内で第1樹脂部5側と第2樹脂部6側のうちの一方に流れ込んだ樹脂材料は、接続孔h2を通って他方へ流れ込むことができる。これにより、一度の射出成形で第1樹脂部5と第2樹脂部6とを同時に成形できるため、工数を低減できる。また、第1樹脂部5側から樹脂材料を流し込むゲートと第2樹脂部6側から樹脂材料を流し込むゲートのうち、何れか一方のゲートがあればよくなるため、製造設備を簡素化できる。
【0055】
[変形例2]
図7は、実施形態1の変形例2に係るガス発生器100Bにおける点火器保持構造10B付近を示す軸方向断面である。また、
図8は、実施形態1の変形例2に係るガス発生器100Bにコネクタ200Bが接続された状態を示す軸方向断面である。以下、ガス発生器100B、点火器保持構造10B及びコネクタ200Bについて、ガス発生器100、点火器保持構造10及びコネクタ200との相違点を中心に説明し、同様の構成については同一の符号を付すことにより詳細な説明は割愛する。
図7に示すように、ガス発生器100Bでは、第2樹脂部6においてコネクタ200Bと対向する面であるコネクタ導入面S2が、露出面S1よりも周壁部35の内側に位置するように、露出面S1とコネクタ導入面S2との間に係合段差部E1が形成されている。また、
図8に示すように、点火器保持構造10Bに適用されるコネクタ200Bは、コネクタ挿入部A1に挿入された状態で、突出部203Bと接地端子204Bとが周壁部35の外側に向かって突出するように形成されている。
【0056】
コネクタ200Bがコネクタ挿入部A1に挿入される過程では、突出部203Bと接地端子204Bとがそれぞれ内側へ弾性変形しながらコネクタ導入面S2を乗り越える。そして、コネクタ200の挿入が完了すると、これらが弾性により元の形に復元する。これにより、突出部203Bが係合段差部E1に係合し、接地端子204Bが露出面S1に接
触する。突出部203Bが係合段差部E1に係合することで、コネクタ200Bのコネクタ挿入部A1からの抜去が規制される。このように、点火器保持構造10Bによれば、露出面S1とコネクタ導入面S2との間に形成された段差をコネクタの抜け止めに利用することができる。なお、上述の変形例1や変形例2においても周壁部35は、接続部352が奥側周壁部351と手前側周壁部353とを繋ぐ環状傾斜面を形成してもよく、接続部352と手前側周壁部353に代えて、奥側周壁部351の下端から底板部32にかけて環状傾斜面を形成する周壁を有してもよい。また、第1樹脂部5と第2樹脂部6とが周壁部35を覆う範囲は、
図1や
図2で説明した範囲であってもよい。
【0057】
[変形例3]
図9は、実施形態1の変形例3に係るガス発生器100Cにおける点火器保持構造10C付近を示す軸方向断面図である。以下、ガス発生器100C及び点火器保持構造10Cについて、ガス発生器100及び点火器保持構造10との相違点を中心に説明し、同様の構成については同一の符号を付すことにより詳細な説明は割愛する。
図9に示すように、点火器保持構造10Cでは、下部シェル3とは別部材である環状部材8によって露出面S1が形成されている。環状部材8は、周壁部35Cに対して部分的に溶接で固定されてもよい。ガス発生器100Cの周壁部35Cは、露出面S1が形成される奥側周壁部351と第2樹脂部6が設けられる手前側周壁部353とが同じ径に形成されており、奥側周壁部351の内側には、環状に形成された金属製の環状部材8が設けられている。環状部材8の内面の一部が第1樹脂部5によって覆われ、残部がコネクタ挿入部A1に露出するように、第2樹脂部6が周壁部35Cの内側において第1樹脂部5と隔てられることで、露出面S1が形成されている。環状部材8の内面により露出面S1が形成されるため、手前側周壁部353が露出面S1よりも周壁部35Cの外側に広がった状態となっている。これにより、手前側周壁部353に設けられる第2樹脂部6を厚肉とすることができる。
【0058】
<実施形態2>
次に、実施形態2として、本願開示の点火器保持構造をシートベルトリトラクタ用のガス発生器に適用した場合について説明する。
図10は、実施形態2に係る点火器保持構造10Dを備えるガス発生器100Dの軸方向断面図である。以下、ガス発生器100D及び点火器保持構造10Dについて、ガス発生器100及び点火器保持構造10との相違点を中心に説明し、同様の構成については同一の符号を付すことにより詳細な説明は割愛する。
【0059】
図10に示すように、ガス発生器100Dは、点火器4と第1樹脂部5Dと第2樹脂部6とを含む点火器保持構造10D、金属製のカラー9、及び蓋部材101を備えている。実施形態2に係る点火器保持構造10Dは、カラー9に対して点火器4を取り付ける。また、点火器保持構造10Dでは、第1樹脂部5Dの一部によって、ガス発生剤110が収容される燃焼室11Dが形成されている。ガス発生器100Dは、シートベルトリトラクタ(図示せず)に組み込まれ、点火器4を作動させることで燃焼室11Dに収容されたガス発生剤110を燃焼させ、その燃焼生成物である燃焼ガスを放出することで、シートベルトの緩みを巻き取るように構成されている。
【0060】
図10に示すように、点火器4は、第1樹脂部5Dに保持された状態でカラー9に取り付けられている。また、第2樹脂部6は、点火器4に電力(着火電流)を供給するためのコネクタ(図示せず)を挿入可能な空間であるコネクタ挿入部A1を形成している。
【0061】
カラー9は、筒状に形成された金属製の部材である。カラー9は、「取付部」に相当する。カラー9には、点火器4の通電ピン42が貫通する貫通孔h1と、貫通孔h1の内面を含む周壁部91と、が形成されている。より詳細には、周壁部91は、貫通孔h1の内面を含む筒状の孔形成部910と、孔形成部910よりも大きな内径を有して孔形成部9
10の下端部から下方に延びる筒状の奥側周壁部911と、奥側周壁部911よりも大きな内径を有して奥側周壁部911の下端部から下方に延びる手前側周壁部913と、を有している。奥側周壁部911と手前側周壁部913との内径の違いにより、奥側周壁部911と手前側周壁部913との間には、環状の段差が形成されている。また、周壁部91の下端部は、ガス発生器100Dの下方空間に開口している。なお、以降の説明において、周壁部91の内側及びカラー9の内側とは、周壁部91によって囲まれた領域の内側のことを指し、貫通孔h1の内側も含む。また、周壁部91の内面とは、周壁部91のうち内側に面した壁面のことを指し、貫通孔h1の内面も含む。
【0062】
樹脂材料により形成された第1樹脂部5Dは、点火器4を保持する保持部51と、保持部51と一体に形成され、燃焼室11Dを点火器4の着火部41との間に形成する筒状部52と、を有する。
図10に示すように、保持部51は、着火部41の下部と通電ピン42の上部と貫通孔h1の内面とを覆いながら点火器4をカラー9に対して固定する。点火器4は、着火部41と通電ピン42の先端421とが貫通孔h1を挟んで互いに反対側に位置し、且つ、通電ピン42が周壁部91に取り囲まれる姿勢となるように、第1樹脂部5に保持される。また、筒状部52は、一端部が保持部51に繋がる筒状に形成されており、その他端部は、蓋部材101によって閉塞されている。筒状部52の内側に着火部41の一部(保持部51によって覆われていない部分)が収容されることで、着火部41と筒状部52との間に、燃焼室11Dが形成されている。
【0063】
コネクタ挿入部A1を形成する第2樹脂部6は、周壁部91の内側において手前側周壁部913を覆うように筒状又は環状に形成されている。つまり、第2樹脂部6は、周壁部91の内面の一部がコネクタ挿入部A1に露出するように、周壁部91の内側において第1樹脂部5と隔てられて設けられている。これにより、奥側周壁部911の内面がコネクタ挿入部A1に露出し、金属製の露出面S1を形成している。露出面S1は、周壁部91の内周方向において全周に亘って形成されている。
【0064】
ガス発生器100Dが自動車に組み付けられた状態では、コネクタ挿入部A1に挿入されたコネクタが点火器4と接続されており、点火器4に対して給電可能な状態となっている。この状態で、自動車に搭載されたセンサ(図示せず)が衝撃を感知すると、外部電源からの電力が点火器4に供給され、着火部41から高温の火炎が上方に放出される。これにより、燃焼室11のガス発生剤110が着火する。ガス発生剤110の燃焼ガスの圧力により蓋部材101が開裂し、燃焼ガスは、筒状部52の外部へと放出され、シートベルトの緩みを巻き取る。これにより、乗員が拘束され、衝撃から保護される。
【0065】
実施形態2に係る点火器保持構造10Dにおいても、コネクタ挿入部A1に露出する金属製の露出面S1がカラー9の周壁部91に形成されるように、第2樹脂部6が周壁部91の内側において第1樹脂部5Dと隔てられているため、実施形態1に係る点火器保持構造10と同様の効果を奏する。即ち、取付部としてのカラー9の内側において樹脂が薄肉に形成されることを抑制できる。その結果、カラー9の内側における樹脂の強度を確保し、樹脂の損傷を抑制できる。また、樹脂が薄肉に形成されることに起因する湿気の燃焼室11Dへの侵入を好適に抑制することができる。その結果、燃焼室11Dのガス発生剤110の乾燥状態が好適に維持され、ガス発生器100Dの性能が安定する。更に、点火器保持構造10Dによると、第1樹脂部5の一部(筒状部52)によって燃焼室11Dを形成することで、部品点数及び組立工数を低減することができる。ここで、
図10の符号M1で示す矢印は、カラー9と第1樹脂部5Dとの間に侵入した湿気の経路を表している。樹脂を介して点火器をカラー(取付部)に取り付ける態様のガス発生器においては、湿気が取付部と樹脂との間に侵入することも起こり得る。これに対して、点火器保持構造10Dでは、第1樹脂部5Dの一部によって燃焼室11Dを形成することで、つまり、燃焼室11Dを第1樹脂部5Dの内部に形成することで、
図10に示すように、湿気がカラー9
と第1樹脂部5Dとの間を通って燃焼室11Dに侵入することを防止できる。なお、点火器保持構造10Dは、蓋部材101を含まなくともよい。
【0066】
[変形例]
図11は、実施形態2の変形例に係る点火器保持構造10Eを備えるガス発生器100Eの軸方向断面図である。以下、ガス発生器100E及び点火器保持構造10Eについて、ガス発生器100D及び点火器保持構造10Dとの相違点を中心に説明し、同様の構成については同一の符号を付すことにより詳細な説明は割愛する。
図11に示すように、ガス発生器100Eは、点火器4と第1樹脂部5Eと第2樹脂部6とを含む点火器保持構造10E、カラー9、及びカップ部材102を備えている。点火器保持構造10Eは、ガス発生剤110が収容される燃焼室11Eが第1樹脂部5Eとは別部材であるカップ部材102で形成されている点で、点火器保持構造10Dと相違する。
【0067】
点火器保持構造10Eの第1樹脂部5Eは、点火器保持構造10における第1樹脂部5や点火器保持構造10Dにおける保持部51に相当する構成であり、点火器4を保持した状態で点火器4をカラー9に対して固定する。このような点火器保持構造10Eとカラー9とを合わせた構成を、点火器組立体20と称する。
【0068】
カップ部材102は、上端が閉塞し下端が開口した有底筒状に形成されており、その下端部がカラー9の内壁とかしめられることで、カラー9に固定されている。カップ部材102の内側に着火部41の一部(保持部51によって覆われていない部分)が収容されることで、着火部41とカップ部材102との間に、燃焼室11Eが形成されている。ガス発生器100Eにおいて点火器4が作動すると、ガス発生剤110の燃焼ガスの圧力によりカップ部材102の上端部が開裂し、燃焼ガスがカップ部材102の外部へと放出される。以上のように、本願開示の点火器保持構造は、点火器組立体に対してカップ部材を固定することで燃焼室を形成するガス発生器にも適用することができる。
【0069】
以上、実施形態2では、シートベルトリトラクタ用のガス発生器に本願開示の点火器保持構造を適用した場合について説明したが、実施形態2における、取付部としてのカラーに点火器を取り付ける構造は、エアバッグ用のガス発生器にも適用することができる。その場合、点火器は、カラーを介してハウジングに取り付けられる。例えば、実施形態2の変形例で説明した点火器組立体を、ハウジングに取り付けてもよい。
図10及び
図11で示したガス発生器においても、接地端子が設けられたコネクタを接続して、接地端子を露出面と接触させる使い方が可能である。また、接地端子を有しないコネクタを接続して使用してもよい。
<その他の実施例>
以上、本願開示の好適な実施形態について説明したが、上述した種々の形態は、可能な限り組み合わせることができる。例えば、上述の実施例では、点火器保持構造がガス発生器の一部として説明されているが、例えば特開2003-161599号公報の
図1に示されるような、ガス発生器に組み込まれて使用される点火器(イニシエータ)組立体にも適用することができる。また、本願開示の点火器保持構造は、点火器を2つ備える所謂デュアルタイプのガス発生器にも適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1・・・・ハウジング
2・・・・上部シェル
3・・・・下部シェル
34・・・取付部
35・・・周壁部
351・・奥側周壁部
353・・手前側周壁部
4・・・・点火器
41・・・着火部
42・・・通電ピン
5・・・・第1樹脂部
51・・・保持部
52・・・筒状部
6・・・・第2樹脂部
9・・・・カラー(取付部)
10・・・点火器保持構造
20・・・点火器組立体
100・・ガス発生器
200・・コネクタ
h1・・・貫通孔
h2・・・接続孔
S1・・・露出面
S2・・・コネクタ導入面
A1・・・コネクタ挿入部
E1・・・係合段差部
【手続補正書】
【提出日】2023-06-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着火薬を含む着火部と、前記着火部から延びる導電ピンと、を有する点火器と、
前記点火器を取り付けるために、前記点火器が貫通する貫通孔と前記貫通孔の内面を含む周壁部とが形成された、金属製の取付部と、
前記点火器と前記取付部との間に設けられ、前記着火部と前記導電ピンの先端とが前記貫通孔を挟んで互いに反対側に位置し、且つ、前記導電ピンが前記周壁部に取り囲まれるように、前記点火器を保持する樹脂製の第1樹脂部と、
前記周壁部に設けられ、前記導電ピンに接続されるコネクタを挿入可能な空間であるコネクタ挿入部を前記周壁部の内側に形成する樹脂製の第2樹脂部と、を備え、
前記第2樹脂部は、前記コネクタ挿入部に露出する金属製の露出面が前記周壁部に形成されるように、前記周壁部の内側において前記第1樹脂部と隔てられて設けられている、
ガス発生器。
【請求項2】
前記露出面は、前記第2樹脂部が前記周壁部の内側において前記第1樹脂部と隔てられることで前記コネクタ挿入部に露出した、前記周壁部の一部として形成されている、
請求項1に記載のガス発生器。
【請求項3】
前記取付部には、前記貫通孔以外で、前記周壁部を挟んだ前記第1樹脂部の側から前記第2樹脂部の側に貫通する接続孔が形成されており、
前記第1樹脂部と前記第2樹脂部とが、前記接続孔の内部で接続されている、
請求項1又は2に記載のガス発生器。
【請求項4】
前記周壁部は、前記露出面が形成される奥側周壁部と、前記コネクタ挿入部に対する前記コネクタの挿入方向において前記奥側周壁部よりも手前側に形成され、前記露出面よりも前記周壁部の外側に広がる手前側周壁部と、を有しており、
前記第2樹脂部は、前記コネクタ挿入部への前記コネクタの挿入が阻害されないように、前記手前側周壁部に設けられている、
請求項1から3の何れか一項に記載のガス発生器。
【請求項5】
前記第2樹脂部において前記コネクタと対向する面であるコネクタ導入面は、前記露出面と面一となるように形成されている、
請求項4に記載のガス発生器。
【請求項6】
前記第2樹脂部において前記コネクタと対向する面であるコネクタ導入面が、前記露出面よりも前記周壁部の内側に位置するように、前記露出面と前記コネクタ導入面との間に段差部が形成され、
前記段差部は、前記コネクタが前記コネクタ挿入部に挿入された場合に、前記コネクタから突出する突出部が前記段差部に係合することで、前記コネクタの前記コネクタ挿入部からの抜去が規制されるように構成されている、
請求項4に記載のガス発生器。
【請求項7】
前記露出面は、接地端子が設けられた前記コネクタが前記コネクタ挿入部に挿入された場合に前記接地端子が接触可能となるように形成される、
請求項1から6の何れか一項に記載のガス発生器。
【請求項8】
前記第1樹脂部は、
前記着火部と前記導電ピンの先端とが前記貫通孔を挟んで互いに反対側に位置し、且つ、前記導電ピンが前記周壁部に取り囲まれるように、前記点火器を保持する保持部と、
一端部が前記保持部に繋がる筒状に形成され、他端部が閉塞された筒状部であって、内側に前記着火部の一部を収容すると共に、前記着火部の作動により燃焼するガス発生剤が収容される燃焼室を前記着火部との間に形成する、筒状部と、を含み、
前記保持部と前記筒状部とが一体に形成されている、
請求項1から7の何れか一項に記載のガス発生器。
【請求項9】
前記周壁部には、金属製の環状部材が設けられており、
前記第2樹脂部は、前記環状部材の内面により前記露出面が形成されるように、前記周壁部の内側において前記第1樹脂部と隔てられて設けられている、
請求項1に記載のガス発生器。
【請求項10】
前記手前側周壁部は、前記奥側周壁部よりも内径が大きくなるよう形成されており、
前記周壁部は、前記手前側周壁部と前記奥側周壁部とを接続する接続部を有し、
前記第2樹脂部は、前記周壁部の内側において、前記接続部と前記手前側周壁部とを覆っている、
請求項4に記載のガス発生器。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
【
図1】実施形態1に係る点火器保持構造を備えるガス発生器の軸方向断面図である。
【
図2】実施形態1に係るガス発生器における点火器保持構造付近を示す軸方向断面図である。
【
図3】実施形態1に係るガス発生器にコネクタが接続された状態を示す軸方向断面図である。
【
図4】実施形態1に係る点火器保持構造の製造工程を示す図である。
【
図5】実施形態1の変形例1に係るガス発生器における点火器保持構造付近を示す軸方向断面図である。
【
図6】実施形態1の変形例1に係る点火器保持構造の製造工程を示す図である。
【
図7】実施形態1の変形例2に係るガス発生器における点火器保持構造付近を示す軸方向断面
図である。
【
図8】実施形態1の変形例2に係るガス発生器にコネクタが接続された状態を示す軸方向断面
図である。
【
図9】実施形態1の変形例3に係るガス発生器における点火器保持構造付近を示す軸方向断面図である。
【
図10】実施形態2に係る点火器保持構造を備えるガス発生器の軸方向断面図である。
【
図11】実施形態2の変形例に係る点火器保持構造を備えるガス発生器の軸方向断面図である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0056
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0056】
コネクタ200Bがコネクタ挿入部A1に挿入される過程では、突出部203Bと接地端子204Bとがそれぞれ内側へ弾性変形しながらコネクタ導入面S2を乗り越える。そして、コネクタ200
Bの挿入が完了すると、これらが弾性により元の形に復元する。これにより、突出部203Bが係合段差部E1に係合し、接地端子204Bが露出面S1に接触する。突出部203Bが係合段差部E1に係合することで、コネクタ200Bのコネクタ挿入部A1からの抜去が規制される。このように、点火器保持構造10Bによれば、露出面S1とコネクタ導入面S2との間に形成された段差をコネクタの抜け止めに利用することができる。なお、上述の変形例1や変形例2においても周壁部35は、接続部352が奥側周壁部351と手前側周壁部353とを繋ぐ環状傾斜面を形成してもよく、接続部352と手前側周壁部353に代えて、奥側周壁部351の下端から底板部32にかけて環状傾斜面を形成する周壁を有してもよい。また、第1樹脂部5と第2樹脂部6とが周壁部35を覆う範囲は、
図1や
図2で説明した範囲であってもよい。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0062
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0062】
樹脂材料により形成された第1樹脂部5Dは、点火器4を保持する保持部51と、保持部51と一体に形成され、燃焼室11Dを点火器4の着火部41との間に形成する筒状部52と、を有する。
図10に示すように、保持部51は、着火部41の下部と通電ピン42の上部と貫通孔h1の内面とを覆いながら点火器4をカラー9に対して固定する。点火器4は、着火部41と通電ピン42の先端421とが貫通孔h1を挟んで互いに反対側に位置し、且つ、通電ピン42が周壁部91に取り囲まれる姿勢となるように、第1樹脂部5
Dに保持される。また、筒状部52は、一端部が保持部51に繋がる筒状に形成されており、その他端部は、蓋部材101によって閉塞されている。筒状部52の内側に着火部41の一部(保持部51によって覆われていない部分)が収容されることで、着火部41と筒状部52との間に、燃焼室11Dが形成されている。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0063
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0063】
コネクタ挿入部A1を形成する第2樹脂部6は、周壁部91の内側において手前側周壁部913を覆うように筒状又は環状に形成されている。つまり、第2樹脂部6は、周壁部91の内面の一部がコネクタ挿入部A1に露出するように、周壁部91の内側において第1樹脂部5Dと隔てられて設けられている。これにより、奥側周壁部911の内面がコネクタ挿入部A1に露出し、金属製の露出面S1を形成している。露出面S1は、周壁部91の内周方向において全周に亘って形成されている。