(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010161
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】チャック装置
(51)【国際特許分類】
E02D 13/04 20060101AFI20230113BHJP
E02D 7/20 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
E02D13/04
E02D7/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021114091
(22)【出願日】2021-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】000214847
【氏名又は名称】長野油機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 宣行
(72)【発明者】
【氏名】寒川 清徳
【テーマコード(参考)】
2D050
【Fターム(参考)】
2D050CB23
2D050EE04
(57)【要約】
【課題】地盤への鋼管杭の圧入作業の間に入り込むことがある土砂の除去が容易であるチャック装置を提供すること。
【解決手段】チャック装置10は、外枠部材12と、外枠部材内に回転可能に配置された内枠部材14と、外枠部材内周面に取り付けられた複数の板部材16とを備える。内枠部材は鋼管杭Pが通される2つの開口22aを有する一対の環状部材22と、両環状部材に固定され両環状部材間を伸びる複数の軸部材24と、複数の軸部材の周囲をそれぞれ取り巻く複数の管部材であって複数の軸部材に対して直交する方向へそれぞれ変位可能である複数の管部材26とを有する。複数の板部材は正多角形の辺上に位置し、また、各軸部材及び各管部材は正多角形の各角に相対している。各管部材は、内枠部材を外枠部材の軸線Lの周りに角度的に回転させるとき、各板部材と前記鋼管杭とに接し、内枠部材の回転を阻害する大きさの外径を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転力及び鉛直方向力を受けて地中に圧入される鋼管杭に適用されるチャック装置であって、
両端面及び該両端面にそれぞれ開放する一対の凹所を有する外枠部材と、
前記外枠部材内に該外枠部材の軸線の周りに回転可能に配置された内枠部材と、
前記外枠部材に取り付けられ前記外枠部材の内部をその軸線の伸長方向へ伸びる複数の板部材であって前記外枠部材の横断面で見て各板部材が正多角形の各辺上に位置する複数の板部材とを備え、
前記内枠部材は、前記外枠部材の両凹所内にそれぞれ受け入れられた一対の環状部材であって前記鋼管杭が通される2つの開口を有する一対の環状部材と、両環状部材に固定され両環状部材間を前記外枠部材の軸線と平行に伸びる複数の軸部材であって前記外枠部材の横断面で見て各軸部材が前記正多角形の各角に相対する複数の軸部材と、前記複数の軸部材の周囲をそれぞれ取り巻く複数の管部材であって前記複数の軸部材に対して直交する方向へそれぞれ変位可能である複数の管部材とを有し、
各管部材は、前記内枠部材を前記外枠部材の軸線の周りに角度的に回転させるとき、各板部材と前記鋼管杭とに接し、前記内枠部材の回転を阻害する大きさの外径を有する、チャック装置。
【請求項2】
各軸部材は、両環状部材間に位置する胴部と両環状部材を経てそれぞれ伸びる2つのねじ部とを有する両ねじボルトからなり、
各軸部材はその両ねじ部にそれぞれ螺合された2つのナットにより両環状部材に固定され、また、各管部材は前記軸部材の胴部の周囲を取り巻いている、請求項1に記載のチャック装置。
【請求項3】
各板部材は、前記外枠部材12を外部からその内部に向けて伸びる一対のボルトを介して、前記外枠部材に取り付けられている、請求項1又は2に記載のチャック装置。
【請求項4】
さらに、両環状部材の一方に取り付けられた、前記内枠部材に回転力を与えるためのハンドルを備える、請求項1~3のいずれか1項に記載のチャック装置。
【請求項5】
さらに、前記外枠部材に設けられ該外枠部材の周囲に張り出すフランジを有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のチャック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転力及び鉛直方向力を受けて地中に埋設される鋼管杭(回転埋設杭)に適用されるチャック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地中に埋設される鋼管杭を把持し、鋼管杭に加えられる回転力及び鉛直方向力を鋼管杭に伝達するチャック装置が提案されている。
【0003】
このチャック装置は、環状の支持板と、支持板上に固定された、内周面が正多角形の横断面形状を呈する外筒と、外筒内に配置され支持板上において外筒の軸線の周りに回転可能である内筒と、内外両筒の上端面上に被せられた、支持板に相対する環状のキャップとを備える。これらの支持板、外筒、内筒及びキャップは鋼管杭が通される空間を規定する。チャック装置は、さらに、前記多角形における角と同数のピンを備える。これらのピンは、それぞれ、内筒にその周方向へ互いに間隔をおいて設けられ内筒の下端面から上方へ伸びる、ピンと同数の開口部内に保持されている。
【0004】
ここに、各開口部は内筒の内外両周面にそれぞれ開放する内外両開放面を有し、内側の開放面が外側の開放面よりも小さい周方向長さを有する。各ピンはその一部において各開口部の内外両開放面にそれぞれ張り出した状態におかれ、外筒の内周面の横断面形状である前記正多角形の各角に相対している。
【0005】
前記チャック装置によれば、その使用に際し、外筒に対して内筒を角度的に回転させることにより、各開口部内に保持された各ピンが、外筒の内周面の横断面形状である前記正多角形の各角に隣接する各辺に相対する位置へと移動される。これにより、各ピンが鋼管杭に対して非接触状態から接触状態におかれる。その結果、鋼管杭が各ピンを介してチャック装置に把持される。チャック装置に把持された鋼管杭はチャック装置を介して回転力及び鉛直方向力を付与され、その一部が地盤に圧入される。チャック装置は、地盤への鋼管杭のさらなる圧入のため、回転力及び鉛直方向力の付与の停止の間、外筒に対する内筒の反対方向への角度的回転により鋼管杭に対する把持を解除され、鋼管杭に沿って上方位置へ移動される。その後、再度、チャック装置により鋼管杭が把持され、チャック装置を介して鋼管杭に回転力及び鉛直方向力が伝達される。
【0006】
ところで、地盤への鋼管杭の圧入作業の間、地盤中の土砂がチャック装置の外筒と内筒との間に入り込み、入り込んだ土砂のために外筒に対する内筒の回転操作が阻害され、鋼管杭の繰り返しの圧入作業に支障を来すことがある。前記従来のチャック装置にあっては、内筒の各開口部が各ピンによって実質的に閉鎖されている。このため、内筒内からその開口部を通しての前記土砂の取り除きを行うことができず、チャック装置の分解作業を必要とする。
【0007】
また、内筒に設けられる開口部は、その内外両開放面の周方向長さが異なるため、その製作上、比較的高精度の金属加工が求められる。さらに、外筒は各ピンとの接触に伴う摩滅が生じたとき、その取り換えを必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、前記従来の事情に鑑み、地盤への鋼管杭の圧入作業の間に入り込むことがある土砂の除去が容易であるチャック装置を提供することにある。また、本発明の他の目的は、製作上、高精度の金属加工を必要としないチャック装置を提供することにある。本発明のさらに他の目的は、部品交換が比較的容易であるチャック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、回転力及び鉛直方向力を受けて地中に圧入される鋼管杭に適用されるチャック装置に係る。チャック装置は、両端面及び該両端面にそれぞれ開放する一対の凹所を有する外枠部材と、前記外枠部材内に該外枠部材の軸線の周りに回転可能に配置された内枠部材と、前記外枠部材に取り付けられ前記外枠部材の内部をその軸線の伸長方向へ伸びる複数の板部材であって前記外枠部材の横断面で見て各板部材が正多角形の各辺上に位置する複数の板部材とを備える。前記内枠部材は、前記外枠部材の両凹所内にそれぞれ受け入れられた一対の環状部材であって前記鋼管杭が通される2つの開口を有する一対の環状部材と、両環状部材に固定され両環状部材間を前記外枠部材の軸線と平行に伸びる複数の軸部材であって前記外枠部材の横断面で見て各軸部材が前記正多角形の各角に相対する複数の軸部材と、前記複数の軸部材の周囲をそれぞれ取り巻く複数の管部材であって前記複数の軸部材に対して該軸部材に直交する方向へそれぞれ変位可能である複数の管部材とを有する。各管部材は、前記内枠部材を前記外枠部材の軸線の周りに角度的に回転させるとき、各板部材と前記鋼管杭とに接し、前記内枠部材の回転を阻害する大きさの外径を有する。
【0011】
前記チャック装置は、その使用に当たり、その内枠部材を構成する両環状部材の開口に鋼管杭が通された状態におかれる。この状態下において、前記チャック装置の外枠部材に対して該外枠部材の軸線の周りに前記内枠部材を角度的に回転させる。回転により、前記多角形の各角に相対する位置にあった各軸部材及びこれを取り巻く管部材が、前記多角形の各辺上に位置する各板部材に相対する位置へと回転移動する。各管部材は、その回転移動の間に、各板部材及び鋼管杭の双方に接し、また、各軸部材に対してこれと直交する方向へと変位する。回転力を受けている前記内枠部材の各管部材は、各板部材及び鋼管杭に押し付けられ、前記内枠部材の回転が阻害される状態に至る。その結果、鋼管杭はその周囲から複数の管部材の締め付けを受け、チャック装置により把持された状態におかれる。前記チャック装置による鋼管杭の把持は、前記内枠部材を反対方向へ角度的に回転させ、前記外枠部材に対する前記内枠部材の回転位置を元に戻すことにより、解除することができる。
【0012】
地盤に圧入される鋼管杭への前記回転力及び鉛直方向力の付与は、鋼管杭を把持するチャック装置を介して行われる。チャック装置を介して前記回転力及び鉛直方向力が鋼管杭に伝達されると、前記チャック装置と共に鋼管杭が下降(沈下)し、鋼管杭の一部が地盤に圧入される。また、地盤への鋼管杭のさらなる圧入のために、前記回転力及び鉛直方向力の付与の停止の間に、前記外枠部材に対して前記内枠部材を反対方向へ回転させ、鋼管杭に対するチャック装置の把持を解除する。次に、前記チャック装置を鋼管杭に沿って上方位置へ移動させる。その後、再度、前記チャック装置により鋼管杭を把持し、前記チャック装置を介しての鋼管杭への回転力及び鉛直方向力の伝達を行う。
【0013】
ところで、鋼管杭の地盤への圧入は、通常、予め地盤を開削して形成された凹所内で行われ、圧入により鋼管杭と共に下降する前記チャック装置の外枠部材と内枠部材との間に前記凹所の側壁から崩れ落ちる土砂が入り込むことがある。また、地盤中に存する礫のような障害物が鋼管杭の圧入を妨げることがあり、これを解消すべく前記チャック装置に対して鋼管杭を相対的に上昇させるとき、鋼管杭の周囲に付着した土砂が、鋼管杭を取り巻く前記チャック装置の内枠部材とその周囲の外枠部材との間に入り込むことがある。前記土砂は前記外枠部材に対する前記内枠部材の回転動作を阻害することから、取り除く必要がある。本発明に係るチャック装置にあっては、前記内枠部材を構成する複数の管部材相互間に隙間が存することから、前記チャック装置を一旦鋼管杭から取り外し、両環状部材の一方の開口から前記内枠部材の内部に手を差し入れ、前記隙間を通して、前記土砂の排除作業を行うことができる。このため、前記土砂の除去に際し、前記従来のチャック装置におけるような分解作業を必要としない。
【0014】
前記内枠部材は、一対の環状部材、複数の軸部材及び複数の管部材の組立体からなる。このことから、前記従来の内筒と比べて、その製作上、高精度の金属加工を必要としない。
【0015】
前記チャック装置にあっては、鋼管杭の地盤への圧入作業に伴って摩滅が生じる部品は、互いに接触する前記板部材及び前記管部材であり、これらの部品の交換は、前記従来における外筒の交換に比べて容易であり、また交換に要する費用は比較的安価である。
【0016】
各軸部材は、両環状部材間に位置する胴部と両環状部材を経てそれぞれ伸びる2つのねじ部とを有する両ねじボルトからなるものとすることができる。各軸部材はその両ねじ部にそれぞれ螺合される2つのナットにより両環状部材に固定され、また、各管部材は前記軸部材の胴部の周囲を取り巻いている。これによれば、前記ナットを緩めることにより、部品としての前記管部材の取り外しを比較的容易に行うことができ、またその後の新しい管部材の配置を比較的容易に行うことができる。
【0017】
各板部材は、前記外枠部材をその外部からその内部に向けて伸びる一又は複数のボルトを介して前記外枠部材に取り付けられているものとすることができる。これによれば、前記ボルトを緩めることにより、部品としての前記板部材の取り外しを比較的容易に行うことができ、また、その後の新しい板部材の取り付けを比較的容易に行うことができる。
【0018】
前記チャック装置は、さらに、両環状部材の一方に取り付けられた、前記内枠部材に回転力を与えるためのハンドルを備えるものとすることができる。これによれば、前記ハンドルを介して、前記内枠部材を角度的に回転させることができる。
【0019】
前記チャック装置は、また、前記外枠部材に設けられ該外枠部材の周囲に張り出すフランジを有するものとすることができる。前記フランジは、前記回転力を出力する例えば液圧モータ及び前記鉛直方向力を出力する例えば液圧ジャッキのような機器の取付部として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図5】
図4の線5-5に沿って得たチャック装置の横断面図である。
【
図6】外枠部材に対して内枠部材を角度的に回転させたときの回転途上におけるチャック装置の横断面図である。
【
図7】外枠部材に対して内枠部材を角度的に回転させたときの回転後におけるチャック装置の縦断面図である。
【
図8】
図7の線8-8に沿って得たチャック装置の横断面図である。
【
図9】他の例に係るチャック装置の横断面図である。
【
図10】外枠部材に対して内枠部材を角度的に回転させたときの回転後における、
図9に示すチャック装置の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1~
図3を参照すると、回転力及び鉛直方向力を受けて地中に埋設される鋼管杭(回転埋設杭)Pに適用されるチャック装置が全体に符号10で示されている。鋼管杭Pはチャック装置10により把持され、前記回転力及び鉛直方向力がチャック装置10を通して鋼管杭Pに伝達される。
【0022】
チャック装置10は、外枠部材12と、外枠部材12内に該外枠部材の軸線L(
図3)の周りに回転可能に配置され、外枠部材12と同軸をなす内枠部材14と、外枠部材12に取り付けられ外枠部材12の内部をその軸線Lの伸長方向へ伸びる複数の板部材16とを備える。
【0023】
チャック装置10は、さらに、好ましくは内枠部材14に回転力を与えるためのハンドル18を備え、また、好ましくは外枠部材12に設けられ該外枠部材の周囲に張り出すフランジ20を備える。ハンドル18を介して、内枠部材14を、両方向矢印Aが示す一方向又はその反対方向へ角度的に回転させることができる。また、フランジ20は、前記回転力を出力する例えば液圧モータ及び前記鉛直方向力を出力する例えば液圧ジャッキのような機器(図示せず)の取付部として利用することができる。
【0024】
図示の外枠部材12は全体に円筒状を呈し、互いに相対する両端面(図上、上端面及び下端面)12aと、両端面12aにそれぞれ開放する一対の凹所12bと、内周面12c(
図2)とを有する。両凹所12bは、それぞれ、円環形の平面形状を有し、内周面12cが規定する外枠部材12の内部空間に連なっている。フランジ20は、図上、外枠部材12の下端部に設けられている。
【0025】
内枠部材14は、外枠部材12の軸線Lの伸長方向に関して互いに相対する一対の環状部材22と、複数の軸部材24と、複数の軸部材24の周囲をそれぞれ取り巻く複数の管部材26とを有する。
【0026】
図示の両環状部材22は、それぞれ、板状を呈し、鋼管杭Pが通される2つの円形の開口22aを有する。両環状部材22は、それぞれ、外枠部材12の両凹所12b内に受け入れられ、外枠部材12の軸線Lの周りに回転可能である。内枠部材14を回転させるためのハンドル18は、両環状部材22の一方である、図上、上方の環状部材22上に載置され、2つのボルト27を介して上方の環状部材22に取り付けられている。
【0027】
複数の軸部材24は両環状部材22に固定され両環状部材22間を外枠部材12の軸線Lと平行に伸びている。図示の軸部材24は両ねじボルトからなり、胴部24aと該胴部の両端にそれぞれ連なる2つのねじ部24bとを有する(
図2参照)。胴部24aの直径は各ねじ部24bの直径より大きい。他方、各環状部材22はその軸線(図上、外枠部材12の軸線L)の周りに等間隔をおいて設けられた、軸部材24と同数の孔28を有する。両環状部材22の複数の孔28は軸線Lの伸長方向に関して互いに相対している。
【0028】
各軸部材24はその両ねじ部24bにおいて両環状部材22の各孔28に通されている。各軸部材24は、各孔28を経て伸びる各ねじ部24bに螺合されたナット30により両環状部材22に固定されている。また、各軸部材24の胴部24aは両環状部材22間にあってその両端において両環状部材22に接している。これにより、両環状部材22は、複数の軸部材24を介して、互いに連結されている。
【0029】
各軸部材24の周囲、より正確には各軸部材24の胴部24aの周囲を取り巻く各管部材26は、軸部材24の胴部24aの直径より大きい内径を有する。このため、各管部材26は各軸部材24に対してこれに直交する方向へ変位可能であり、各軸部材24の周りに回転可能である。また、各管部材26は、内枠部材14を外枠部材12の軸線Lの周りに角度的に回転させるとき、各板部材16と鋼管杭P、より詳細には各板部材16の表面16a(
図5参照)と鋼管杭Pの外周面とに接し、内枠部材14の回転を阻害する大きさ、より詳細には阻害するに足る大きさの外径を有する。
【0030】
図示の例にあっては、軸部材24がそのねじ部24bに螺合されたナット30により両環状部材22に固定されている。このことから、ナット30を緩めることにより、部品としての管部材26の取り外しを比較的容易に行うことができる。また、その後の新しい管部材26の配置を比較的容易に行うことができる。
【0031】
外枠部材12に取り付けられた図示の板部材16は、全体に矩形の平面形状を有する。各板部材16は、
図4~
図8に示すように、その表裏両面16a、16bが平坦でありかつ互いに平行である平板からなる。この板部材16に代えて、例えば、
図9及び
図10に示すように、その表裏両面16a、16bのうちの表面16aが2つの傾斜部16a1と、両傾斜部16a1間の非傾斜部16a2とからなるものとすることができる。両傾斜部16a1は、板部材16の両側面16cから互いに他の一方の側面16cに向けて板部材16の厚さが漸増するように傾斜している。また、非傾斜部16a2は板部材16の裏面16bと平行である。
【0032】
複数の板部材16は、外枠部材12の横断面で見て、想像線(二点鎖線)で示す正多角形Q(
図5)の各辺q
1上に位置する。これに対して、各軸部材24及び該板部材の周囲の管部材26は、正多角形Qの各角q
2に相対している。図示の例において正多角形Qは正六角形である。したがって、板部材16、軸部材24及び管部材26の数はそれぞれ同じであり、図示の例において6である。正多角形Qは、前記正六角形以外の例えば正八角形からなるものとすることができる。
【0033】
各板部材16は、図示の例では、外枠部材12に設けられ該外枠部材の内周面12cに開放する凹所32内に配置され、外枠部材12をその外部からその内部に向けて伸びる一対のボルト34を介して、外枠部材12に固定されている。図示の例では、各ボルト34はその先端部において各板部材16に螺合され、その先端面が板部材16の表面16a上に位置する。但し、固定のためのボルト34の数は任意である。これによれば、ボルト34を緩めることにより、部品としての板部材16の取り外しを比較的容易に行うことができる。また、その後の新しい板部材の取り付けを比較的容易に行うことができる。
【0034】
チャック装置10は、その使用に当たり、内枠部材14の両環状部材22の開口22aに鋼管杭Pが通された状態におかれる(
図1、
図4及び
図5に示す状態)。この状態下において、ハンドル18の回転操作により、外枠部材12に対して矢印B(
図6、
図9)の方向へ内枠部材14を角度的に回転させる。内枠部材14の回転に伴って、多角形Qの各角q
2に相対する位置(
図5に示す位置)にあった各軸部材24及びこれを取り巻く管部材26が、多角形Qの各辺q
1上に位置する各板部材16の表面16a(
図9に示す例にあっては両傾斜部16a1の一方)に相対する位置(
図6、
図9に示す位置)へと回転移動する。続いて、各管部材26は各板部材16の表面16a(
図9に示す例にあっては傾斜部16a1)及び鋼管杭Pの外周面に接する。各管部材26は、この間に、各軸部材24に対してこれと直交する方向へと変位する。内枠部材14は矢印Bの方向へ回転力を受けていることから、各管部材26は各板部材16及び鋼管杭Pに押し付けられ、内枠部材14の回転、したがって各管部材26の回転移動が阻害(又は阻止)される状態に至る(
図8、
図10)。その結果、鋼管杭Pはその周囲から複数の管部材26により締め付けられ、チャック装置10により把持された状態におかれる。また、チャック装置10による鋼管杭Pの把持は、内枠部材14を反対方向へ角度的に回転させ、外枠部材12に対する内枠部材14の回転位置を
図5、
図9に示す元の位置に戻すことにより、解除することができる。
【0035】
鋼管杭Pを地盤に圧入するための前記回転力及び鉛直方向力は、鋼管杭Pを把持するチャック装置10に加えられ、チャック装置10を通して鋼管杭Pに伝達される。これにより、チャック装置10と共に鋼管杭Pが下降し、鋼管杭Pの一部が地盤に圧入される。その後、地盤への鋼管杭Pのさらなる圧入のため、次の一連の作業が繰り返し行なわれる。すなわち、前記回転力及び鉛直方向力の付与の停止の間に、外枠部材12に対して内枠部材14を反対方向へ回転させ、鋼管杭Pに対するチャック装置10の把持を解除する作業、チャック装置10を鋼管杭Pに沿って上方位置へ移動させる作業、チャック装置10により鋼管杭Pを把持する作業、及び、チャック装置10を介して鋼管杭Pに前記回転力及び鉛直方向力を伝達する作業が繰り返される。
【0036】
ところで、鋼管杭Pの地盤への圧入は、通常、予め地盤を開削して形成され地表に開放する凹所(図示せず)内で行われ、圧入の間に鋼管杭Pと共に下降するチャック装置10の内部、すなわち外枠部材12と内枠部材14との間に前記凹所の側壁から崩れ落ちる土砂が入り込むことがある。また、地盤中に存する礫のような障害物が鋼管杭Pの圧入を妨げることがあり、これを解消すべくチャック装置10に対して鋼管杭Pを相対的に上昇させるとき、鋼管杭Pの周囲に付着した土砂が、鋼管杭Pを取り巻くチャック装置10の内枠部材14とその周囲の外枠部材12との間に入り込むことがある。前記土砂は、外枠部材12に対する内枠部材14の回転を阻害する原因となることから、取り除く必要がある。このチャック装置10にあっては、内枠部材14を構成する複数の管部材26相互間に隙間36が存する。このことから、チャック装置10を鋼管杭Pから一旦取り外し、その後、両環状部材22の開口22aから両環状部材22間に手を差し入れ、隙間36を通して前記土砂の排除することができる。これには、前記従来のチャック装置と異なり、チャック装置10の分解作業を必要としない。
【0037】
また、チャック装置10を構成する内枠部材14は、一対の環状部材22、複数の軸部材24及び複数の管部材26の組立体からなる。このことから、前記従来のチャック装置の内筒と比べて、その製作上、高精度の金属加工を必要としない。さらに、チャック装置10にあっては、鋼管杭Pの地盤への圧入作業に伴って摩滅が生じる部品は、互いに接する各板部材16及び各管部材26であり、これらの部品の取り換えは、前記従来における外筒の取り換えに比べて容易であり、また取り換えに要する費用は比較的安価である。
【符号の説明】
【0038】
10 チャック装置
12 外枠部材
12a 外枠部材の端面
12b 外枠部材の凹所
14 内枠部材
16 板部材
18 ハンドル
20 フランジ
22 環状部材
22a 環状部材の開口
24 軸部材
26 管部材
30 ナット
34 ボルト
L 外枠部材の軸線