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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101669
(43)【公開日】2023-07-21
(54)【発明の名称】光学ユニット
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/076 20060101AFI20230713BHJP
   B60Q 1/14 20060101ALI20230713BHJP
   F21S 41/148 20180101ALI20230713BHJP
   F21S 41/153 20180101ALI20230713BHJP
   F21S 41/155 20180101ALI20230713BHJP
   F21S 41/16 20180101ALI20230713BHJP
   F21S 41/33 20180101ALI20230713BHJP
   F21S 41/663 20180101ALI20230713BHJP
   F21S 41/675 20180101ALI20230713BHJP
   F21V 14/04 20060101ALI20230713BHJP
   F21V 23/00 20150101ALI20230713BHJP
   F21W 102/145 20180101ALN20230713BHJP
   F21W 102/155 20180101ALN20230713BHJP
   F21W 102/20 20180101ALN20230713BHJP
   F21Y 105/10 20160101ALN20230713BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20230713BHJP
   F21Y 115/20 20160101ALN20230713BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20230713BHJP
【FI】
B60Q1/076
B60Q1/14 A
F21S41/148
F21S41/153
F21S41/155
F21S41/16
F21S41/33
F21S41/663
F21S41/675
F21V14/04
F21V23/00 140
F21W102:145
F21W102:155
F21W102:20
F21Y105:10
F21Y115:10
F21Y115:20
F21Y115:30
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088596
(22)【出願日】2023-05-30
(62)【分割の表示】P 2022076536の分割
【原出願日】2018-05-08
(31)【優先権主張番号】P 2017098228
(32)【優先日】2017-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀忠
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 一利
(72)【発明者】
【氏名】相磯 良明
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で複数の配光パターンを形成可能な新たな光学ユニットを提供する。
【解決手段】光学ユニット18は、複数の発光素子がアレイ状に配置されている第1の光源20と、第1の光源20から出射した光を反射しながら回転する回転リフレクタ22と、複数の発光素子の点灯状態を制御する制御部29と、を備える。回転リフレクタ22は、回転しながら反射した光を光源像として走査することで配光パターンを形成するように反射面が設けられており、複数の発光素子は、第1の発光素子および第2の発光素子を含む。制御部29は、第1の発光素子の点灯時間T1が、第2の発光素子の点灯時間T2(T2>0)よりも長くなるように、第1の発光素子および第2の発光素子の点灯状態を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子がアレイ状に配置されている光源と、
前記光源から出射した光を反射しながら回転する回転リフレクタと、
前記複数の発光素子の点灯状態を制御する制御部と、を備え、
前記回転リフレクタは、回転しながら反射した光を光源像として走査することで配光パターンを形成するように反射面が設けられており、
前記複数の発光素子は、第1の発光素子、第2の発光素子および第3の発光素子を含み、
前記第3の発光素子は、出射した光が、前記第1の発光素子から出射された光が走査される領域および前記第2の発光素子から出射された光が走査される領域と重複する領域で、水平線に沿って走査されるように配置されており、
前記制御部は、前記第1の発光素子の点灯時間T1が、前記第2の発光素子の点灯時間T2(T2>0)よりも長くなるように、前記第1の発光素子および前記第2の発光素子の点灯状態を制御することを特徴とする光学ユニット。
【請求項2】
前記光源は、光源像として走査される方向に対して交差する方向に前記第1の発光素子および前記第2の発光素子が並んでいることを特徴とする請求項1に記載の光学ユニット。
【請求項3】
前記制御部は、前記第3の発光素子を点灯している時間T3が、T1>T3>T2を満たすように、前記第3の発光素子の出力を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の光学ユニット。
【請求項4】
前記制御部は、前記配光パターンの自車線側カットオフラインが外側に向かって斜めまたは階段状に高くなるように前記複数の発光素子の点灯状態を制御することを特徴とする請求項3に記載の光学ユニット。
【請求項5】
前記光源は、複数の発光素子がm行×n列(m、nは2以上の整数)のマトリックス状に配置されており、第(k-1)列の発光素子に対して第k列(kはn以下の整数)の発光素子が1/nピッチずれて配置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光学ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ユニットに関し、特に車両用灯具に用いられる光学ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光源から出射した光を車両前方に反射し、その反射光で車両前方の領域を走査することで所定の配光パターンを形成する装置が考案されている。例えば、光源から出射した光を反射しながら回転軸を中心に一方向に回転する回転リフレクタと、発光素子からなる複数の光源と、を備え、回転リフレクタは、回転しながら反射した光源の光が所望の配光パターンを形成するように反射面が設けられている光学ユニットが考案されている(特許文献1)。
【0003】
また、この光学ユニットは、所定のタイミングで発光素子を消灯することで、配光パターンの一部に非照射領域を形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-26628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の光学ユニットは、形成できる配光パターンの形状が限られており、更なる改良の余地がある。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡易な構成で複数の配光パターンを形成可能な新たな光学ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の光学ユニットは、複数の発光素子がアレイ状に配置されている光源と、光源から出射した光を反射しながら回転する回転リフレクタと、複数の発光素子の点灯状態を制御する制御部と、を備える。回転リフレクタは、回転しながら反射した光を光源像として走査することで配光パターンを形成するように反射面が設けられており、複数の発光素子は、第1の発光素子および第2の発光素子を含む。制御部は、第1の発光素子の点灯時間T1が、第2の発光素子の点灯時間T2(T2>0)よりも長くなるように、第1の発光素子および第2の発光素子の点灯状態を制御する。
【0008】
この態様によると、第1の発光素子から出射した光を光源像として走査することで形成される領域の長さと、第2の発光素子から出射した光を光源像として走査することで形成される領域の長さを異ならせることができる。これにより、各発光素子の状態を常に点灯、常に消灯のいずれかからしか選択できない場合と比較して、形状の異なるより多くの配光パターンを形成できる。
【0009】
光源は、光源像として走査される方向に対して交差する方向に第1の発光素子および第2の発光素子が並んでいてもよい。これにより、少ない数の発光素子で階段状の配光パターンを形成できる。
【0010】
複数の発光素子は、第3の発光素子を更に含んでもよい。第3の発光素子は、第1の発光素子が走査する領域と第2の発光素子が走査する領域と重複する領域を走査するように配置されており、制御部は、第3の発光素子を点灯している時間T3が、T1>T3>T2を満たすように、第3の発光素子の出力を制御してもよい。これにより、より段差の少ない階段状の配光パターンを形成できる。
【0011】
制御部は、配光パターンの自車線側カットオフラインが外側に向かって斜めまたは階段状に高くなるように複数の発光素子の点灯状態を制御してもよい。これにより、例えば、車両用前照灯に適した斜めカットオフラインを有する配光パターンを形成できる。
【0012】
光源は、複数の発光素子がm行×n列(m、nは2以上の整数)のマトリックス状に配置されており、第(k-1)列の発光素子に対して第k列(kはn以下の整数)の発光素子が1/nピッチずれて配置されていてもよい。これにより、より段差の少ない階段状の配光パターンを形成できる。
【0013】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡易な構成で複数の配光パターンを形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施の形態に係る車両用前照灯の水平断面図である。
図2】本実施の形態に係る車両用前照灯の正面図である。
図3】本実施の形態に係る回転リフレクタの構成を模式的に示した側面図である。
図4】本実施の形態に係る回転リフレクタの構成を模式的に示した上面図である。
図5】本実施の形態に係る第1の光源を正面から見た場合の模式図である。
図6図6(a)は、点灯した状態の第1の発光部および第3の発光部が静止した回転リフレクタに反射されて前方へ光源像として投影された様子を示す模式図、図6(b)は、回転リフレクタが回転することで図6(a)に示す光源像が走査されて形成された第1の配光パターンを示す図である。
図7図7(a)は、点灯した状態の第2の発光部が静止した回転リフレクタに反射されて前方へ光源像として投影された様子を示す模式図、図7(b)は、回転リフレクタが回転することで図7(a)に示す光源像が走査されて形成された第2の配光パターンを示す図である。
図8図8(a)は、点灯した状態の第4の発光部が静止した回転リフレクタに反射されて前方へ光源像として投影された様子を示す模式図、図8(b)は、回転リフレクタが回転することで図8(a)に示す光源像が走査されて形成された第3の配光パターンを示す図である。
図9】第1の光源および第2の光源の全ての発光素子を点灯し、走査した場合に形成されるハイビーム用配光パターンPH’を示す図である。
図10】本実施の形態に係る車両用前照灯の制御装置を示す図である。
図11図11(a)は、点灯した状態の第1の発光部~第3の発光部が静止した回転リフレクタに反射されて前方へ光源像として投影された様子を示す模式図、図11(b)は、回転リフレクタが回転することで図11(a)に示す光源像が走査されて形成された第4の配光パターンを示す図である。
図12図12(a)は、第2の実施の形態に係る光源を正面から見た場合の模式図、図12(b)は、第2の実施の形態に係る光学ユニットにより形成されるハイビーム用配光パターンを示す図、図12(c)は、第2の実施の形態に係る光学ユニットにより形成される他のハイビーム用配光パターンを示す図である。
図13】第3の実施の形態に係る車両用前照灯の水平断面図である。
図14】矩形の発光面を有する発光素子の出力が異なる場合の光源像の大きさを比較する模式図である。
図15】配光パターンの一例を示す模式図である。
図16図16(a)は、第4の実施の形態に係る点灯した発光部が静止した回転リフレクタに反射されて前方へ光源像として投影された様子を示す模式図、図16(b)は、回転リフレクタが回転することで図16(a)に示す光源像が走査されて形成された第5の配光パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述される全ての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0017】
本実施の形態に係る光学ユニットは、種々の車両用灯具に用いることができる。以下では、車両用灯具のうち車両用前照灯に本実施の形態に係る光学ユニットを適用した場合について説明する。
【0018】
[第1の実施の形態]
(車両用前照灯)
図1は、本実施の形態に係る車両用前照灯の水平断面図である。図2は、本実施の形態に係る車両用前照灯の正面図である。なお、図2においては、一部の部品を省略してある。
【0019】
本実施の形態に係る車両用前照灯10は、自動車の前端部の右側に搭載される右側前照灯であり、左側に搭載される前照灯と左右対称である以外は同じ構造である。そのため、以下では、右側の車両用前照灯10について詳述し、左側の車両用前照灯については説明を省略する。
【0020】
図1に示すように、車両用前照灯10は、前方に向かって開口した凹部を有するランプボディ12を備えている。ランプボディ12は、その前面開口が透明な前面カバー14によって覆われて灯室16が形成されている。灯室16は、1つの光学ユニット18が収容される空間として機能する。光学ユニット18は、可変ハイビームとロービームの両方を照射できるように構成されたランプユニットである。可変ハイビームとは、ハイビーム用の配光パターンの形状を変化させるように制御されているものをいい、例えば、配光パターンの一部に非照射領域(遮光部)を生じさせることができる。
【0021】
本実施の形態に係る光学ユニット18は、第1の光源20と、第1の光源20から出射した第1の光L1の光路を変化させて回転リフレクタ22のブレード22aに向かわせる1次光学系(光学部材)としての集光用レンズ23と、第1の光L1を反射しながら回転軸Rを中心に回転する回転リフレクタ22と、投影レンズ24と、第1の光源20と投影レンズ24との間に配置された第2の光源26と、第2の光源26から出射した第2の光L2をブレード22aに向かわせる1次光学系(光学部材)としての拡散用レンズ28と、制御部29と、を備える。
【0022】
第1の光源20は、16個の素子がマトリックス状に配置されている。第2の光源26は、4個の素子が一列に配置されている。
【0023】
投影レンズ24は、回転リフレクタ22で反射された第1の光L1を光学ユニットの光照射方向(図1左方向)に集光し投影する集光部24aと、回転リフレクタ22で反射された第2の光L2を光学ユニットの光照射方向に拡散し投影する拡散部24bと、を備える。これにより、光学ユニット18の前方に光源像を鮮明に投影できる。
【0024】
図3は、本実施の形態に係る回転リフレクタの構成を模式的に示した側面図である。図4は、本実施の形態に係る回転リフレクタの構成を模式的に示した上面図である。
【0025】
回転リフレクタ22は、モータ34などの駆動源により回転軸Rを中心に一方向に回転する。また、回転リフレクタ22は、回転しながら反射した各光源の光を走査することで所望の配光パターンを形成するように反射面としてのブレード22aが設けられている。つまり、回転リフレクタは、その回転動作により、発光部からの可視光を照射ビームとして出射するものであり、かつ、該照射ビームを走査せしめることによって所望の配光パターンを形成する。
【0026】
回転リフレクタ22は、反射面として機能する、形状の同じ2枚のブレード22aが筒状の回転部22bの周囲に設けられている。回転リフレクタ22の回転軸Rは、光軸Axに対して斜めになっており、光軸Axと各光源とを含む平面内に設けられている。換言すると、回転軸Rは、回転によって左右方向に走査する各光源の光(照射ビーム)の走査平面に略平行に設けられている。これにより、光学ユニットの薄型化が図られる。ここで、走査平面とは、例えば、走査光である各光源の光の軌跡を連続的につなげることで形成される扇形の平面ととらえることができる。
【0027】
また、回転リフレクタ22のブレード22aの形状は、回転軸Rを中心とする周方向に向かうにつれて、光軸Axと反射面とが成す角が変化するように捩られた形状を有している。これにより、図4に示すように第1の光源20や第2の光源26の光を用いた走査が可能となる。
【0028】
各光源には、LED、EL素子、LD素子などの半導体発光素子が用いられる。集光部24aおよび拡散部24bを有する凸状の投影レンズ24の形状は、要求される配光パターンや照度分布などの配光特性に応じて適宜選択すればよいが、非球面レンズや自由曲面レンズを用いることも可能である。
【0029】
制御部29は、外部からの制御信号に基づいて、第1の光源20および第2の光源26の点消灯制御と、モータ34の回転制御を行う。第1の光源20は、ヒートシンク30に搭載され、第2の光源26は、ヒートシンク32に搭載されている。
【0030】
図5は、本実施の形態に係る第1の光源を正面から見た場合の模式図である。なお、図5では、集光用レンズ23の図示を省略している。また、図5の光源像は、投影レンズ24によって上下が反転する。
【0031】
図5に示すように、第1の光源20は、主として水平線より下方の範囲を照射する第1の配光パターンを形成する際に点灯する第1の発光部36と、少なくとも水平線より上方の範囲を照射する第2の配光パターンを形成する際に点灯する第2の発光部38と、第1の配光パターンを形成する際に水平線近傍の自車線側カットオフラインを構成する光を発する第3の発光部40と、を有する。第3の発光部40は、第1の発光部36と第2の発光部38との間の領域に配置されている。
【0032】
第1の発光部36は、5つの第1の発光素子S11~S15が水平方向(H-H線)に沿ってジグザグ(換言すると、ある素子の鉛直方向の位置が隣接している素子に対して上方または下方にずれている。)に配置されている。第1の発光素子S11~S15は、それぞれ矩形の発光面を有し、該矩形の一辺が水平方向に沿うように配置されている。
【0033】
第2の発光部38は、9個の第2の発光素子S21~S29が水平方向に沿ってジグザグに配置されている。第2の発光素子S21~S29は、それぞれ矩形の発光面を有し、該矩形の一辺が水平方向に沿うように配置されている。
【0034】
第3の発光部40は、第1の発光素子S11~15と第2の発光素子S21~S29の間に配置された2個の第3の発光素子S31~S32を有し、第3の発光素子の矩形の発光面の一辺が水平方向に沿うように配置されている。これにより、素子間の隙間による暗部が配光パターンに生じにくくなる。
【0035】
なお、各発光素子は、短時間での点消灯制御が容易な半導体発光素子が好適であり、例えば、LED(Light Emitting Device)、LD(Laser Diode)、EL(Electroluminescent)素子が挙げられる。
【0036】
図6(a)は、点灯した状態の第1の発光部および第3の発光部が静止した回転リフレクタに反射されて前方へ光源像として投影された様子を示す模式図、図6(b)は、回転リフレクタが回転することで図6(a)に示す光源像が走査されて形成された第1の配光パターンを示す図である。
【0037】
図6(a)に示す光源像L11~L15は、第1の発光素子S11~S15の各発光面に対応したものである。また、光源像L31~L32は、第3の発光素子S31~S32の各発光面に対応したものである。また、光源像L11~L15、L31~L32が走査されることで、図6(b)に示す走査パターンP11~P15、P31~P32が形成され、各走査パターンが重畳されることで、主として水平線より下方の範囲を照射する第1の配光パターンとしてのロービーム用配光パターンPLが形成される。
【0038】
なお、第3の発光素子S31~S32を第1の発光素子S11~S15と同様に点灯し続けていると、図6(b)に示すように、ロービーム用配光パターンPLにおいて自車線側のカットオフラインCL1だけでなく対向車線側のカットオフラインCL2も水平線より上に形成されてしまう。この場合、対向車の乗員にグレアを与える可能性がある。
【0039】
そこで、制御部29は、ロービーム用配光パターンPLを形成する際の第3の発光素子S31~S32の点灯時間が第1の発光素子S11~S15の点灯時間よりも短くなるように、第1の光源20の点灯状態を制御する。より詳述すると、制御部29は、第3の発光素子S31~S32の光源像L31~L32が、図6(b)に示すV-V線の左側領域を通過するタイミングで対応する素子を点灯させ、V-V線の右側領域を通過するタイミングで対応する素子を消灯させる。これにより、例えば、自車線側のカットオフラインCL1の上端だけを高くするといったことが可能となる。また、第3の発光素子S31~S32から出射する光を走査しつつ第3の発光素子S31~S32の点消灯を制御することで、自車線側のカットオフラインCL1の位置(長さ)を変更できる。
【0040】
図7(a)は、点灯した状態の第2の発光部が静止した回転リフレクタに反射されて前方へ光源像として投影された様子を示す模式図、図7(b)は、回転リフレクタが回転することで図7(a)に示す光源像が走査されて形成された第2の配光パターンを示す図である。
【0041】
図7(a)に示す光源像L21~L29は、第2の発光素子S21~S29の各発光面に対応したものである。また、光源像L21~L29が走査されることで、図7(b)に示す走査パターンP21~P29が形成され、各走査パターンが重畳されることで、少なくとも水平線より上方の範囲を照射する第2の配光パターンとしてのハイビーム用配光パターンPHが形成される。なお、第1の発光部36は、ハイビーム用配光パターンPHを形成する際に点灯してもよい。これにより、ロービーム用配光パターンPLとハイビーム用配光パターンPHとが重畳された新たな配光パターンを実現できる。
【0042】
次に、第2の光源26についても説明する。第2の光源26から出射した第2の光L2は、第1の光源20が出射した第1の光L1が回転リフレクタ22のブレードで反射される位置よりも、投影レンズ24に近い位置で回転リフレクタ22のブレードに反射される。そのため、広範囲を照射するためには、第2の光源26から出射した光が広がっている方がよい。そこで、第2の光源26の発光面の近傍には拡散用レンズ28が配置されている。これにより、回転リフレクタ22で反射され、投影レンズ24の拡散部24bを通過した第2の光L2による光源像を大きくできる。なお、第2の光源26は、4つの第4の発光素子S41~S44が一列に並んだ第4の発光部42(図1参照)を有する。
【0043】
図8(a)は、点灯した状態の第4の発光部が静止した回転リフレクタに反射されて前方へ光源像として投影された様子を示す模式図、図8(b)は、回転リフレクタが回転することで図8(a)に示す光源像が走査されて形成された第3の配光パターンを示す図である。
【0044】
図8(a)に示す光源像L41~L44は、第4の発光素子S41~S44の各発光面に対応したものである。また、光源像L41~L44が走査されることで、図8(b)に示す走査パターンP41~P44が形成され、各走査パターンが重畳されることで、主として水平線より下方の広い範囲を照射する第3の配光パターンとしての拡散ロービーム用配光パターンPL’が形成される。
【0045】
図9は、第1の光源および第2の光源の全ての発光素子を点灯し、走査した場合に形成されるハイビーム用配光パターンPH’を示す図である。図9に示すように、第1の配光パターンおよび第2の配光パターン以外の新たな配光パターンを実現できる。
【0046】
上述のように、本実施の形態に係る光学ユニット18は、第1の光源20や第2の光源26から出射した光を反射しながら回転軸を中心に一方向に回転する回転リフレクタ22を用いて、照射範囲が異なる複数の配光パターン(PL、PL’、PH、PH’)を形成できる。
【0047】
なお、第1の発光部36と第2の発光部38は、本実施の形態の第1の光源20のように、完全に異なる領域として設けられていてもよいが、一部の発光素子や発光領域が重複していてもよい。つまり、第1の配光パターンおよび第2の配光パターンのいずれの場合にも利用される発光素子や発光領域があってもよい。
【0048】
図10は、本実施の形態に係る車両用前照灯の制御装置を示す図である。図10に示すように、本実施の形態に係る車両用前照灯10の制御装置100は、車両前方や周囲を撮影するカメラ44と、車両前方の他車両や歩行者までの距離や存在を検出するレーダ46と、ドライバにより車両用前照灯の点灯状態や照射モード(ハイビーム用配光パターンやロービーム用配光パターンの選択や自動制御モード等)を制御するスイッチ48と、操舵状態を検出する検知部50と、車速センサや加速度センサ等のセンサ52と、制御部29と、モータ34と、第1の光源20と、第2の光源26と、を備える。
【0049】
制御部29は、カメラ44、レーダ46、スイッチ48、検知部50およびセンサ52から取得した情報に基づいて、モータ34の回転や、第1の光源20や第2の光源26が有する第1の発光部36~第4の発光部42における各発光素子の点消灯を制御する。これにより、簡易な構成で複数の配光パターンを形成可能な新たな光学ユニット18を実現できる。
【0050】
なお、図6(b)に示す、走査パターンP11~P15、P31~P32を重畳することで得られるロービーム用配光パターンPLや、図7(b)に示す、走査パターンP21~P29を重畳することで得られるハイビーム用配光パターンPHの場合、各走査パターンの長さは実質的に同じである。つまり、各走査パターンに対応する各発光素子の点灯時間は概ね同じである。そのため、発光素子の点灯または消灯を制御することで形成できる配光パターンの形状には限りがある。
【0051】
そこで、制御部29は、各光源が備える複数の発光素子の点灯時間を個々にあるいはグループ毎に制御できるように構成されている。これにより、長さの異なる走査パターンを組み合わせて所望の配光パターンを形成できるため、非常に多くの形状の配光パターンを形成可能な光学ユニットを実現できる。
【0052】
図11(a)は、点灯した状態の第1の発光部~第3の発光部が静止した回転リフレクタに反射されて前方へ光源像として投影された様子を示す模式図、図11(b)は、回転リフレクタが回転することで図11(a)に示す光源像が走査されて形成された第4の配光パターンを示す図である。
【0053】
図11(a)に示す光源像L11~L15は、第1の発光素子S11~S15の各発光面に対応したものである。また、光源像L21~L23、L26、L27は、第2の発光素子S21~S23、S26、S27の各発光面に対応したものである。また、光源像L31~L32は、第3の発光素子S31~S32の各発光面に対応したものである。なお、第4の配光パターンPH”を形成する際には、第2の発光素子S24、S25、S28、S29は全期間消灯したままである。つまり、第2の発光素子S24、S25、S28、S29は、点灯時間が最も短いということもできる。
【0054】
一方、第1の発光素子S11~S15は、一周期の点灯時間T1が最も長く、図11(b)に示す走査パターンP11~P15が形成され、各走査パターンが重畳されることで、主として水平線より下方の範囲R1を照射する。
【0055】
発光素子S31は、一周期の点灯時間がT31(T31<T1)であり、発光素子S32は、一周期の点灯時間がT32(T32<T31<T1)であり、図11(b)に示すように、主として自車線側のH-H線を含む範囲R2を照射する。範囲R2は範囲R1と一部が重複している。
【0056】
発光素子S21は、一周期の点灯時間がT21(T21<T1)であり、発光素子S23は、一周期の点灯時間がT23(T23<T21<T1)であり、図11(b)に示すように、主として自車線側のH-H線の直上の範囲R3を照射する。範囲R3は範囲R2と一部が重複している。
【0057】
発光素子S22は、一周期の点灯時間がT22(T22<T1)であり、図11(b)に示すように、範囲R3の上部と重複する範囲R4を照射する。
【0058】
発光素子S27は、一周期の点灯時間がT27(T27<T1)であり、図11(b)に示すように、範囲R4の上部と重複する範囲R5を照射する。
【0059】
発光素子S26は、一周期の点灯時間がT26(T26<T1)であり、図11(b)に示すように、範囲R5の上部と重複する範囲R6を照射する。
【0060】
なお、各発光素子の点灯時間の関係は、T27≦T32<T26<T23<T22<T31<T21<T1である。
【0061】
制御部29は、点消灯する発光素子の選択だけでなく、点灯する複数の発光素子の点灯時間をそれぞれ制御することで、図11(b)に示すように、配光パターンの自車線側カットオフラインが外側に向かって斜めまたは階段状に高くなる第4の配光パターンを形成できる。このように、本実施の形態に係る光学ユニットは、車両用前照灯に適した斜めカットオフラインを有する配光パターンを形成できる。
【0062】
上述のように、本実施の形態に光学ユニット18、複数の発光素子(S11~S15、S21~S29、S31~S32)がアレイ状に配置されている第1の光源20と、第1の光源20から出射した光を反射しながら回転する回転リフレクタ22と、複数の発光素子の点灯状態を制御する制御部29と、を備える。回転リフレクタ22は、回転しながら反射した光を光源像(L11~L15、L21~L29、L31~L32)として走査することで配光パターンを形成するように反射面が設けられており、複数の発光素子は、第1の発光素子(S11~S15)および第2の発光素子(S21~S29、S31~S32)を含む。制御部29は、第1の発光素子(S11~S15)の点灯時間T1が、第2の発光素子(S21~S29)の点灯時間T2(T2>0)よりも長くなるように、第1の発光素子および第2の発光素子(または第3の発光素子)の点灯状態を制御する。なお、点灯時間を異ならせる複数の発光素子は、どのような組合せであっても可能である。
【0063】
本実施の形態に係る光学ユニット18は、第1の発光素子(S11~S15)から出射した光を光源像として走査することで形成される領域の長さと、第2の発光素子(S21~S29)から出射した光を光源像として走査することで形成される領域の長さを異ならせることができる。これにより、各発光素子の状態を常に点灯、常に消灯のいずれかからしか選択できない場合と比較して、形状の異なるより多くの配光パターンを形成できる。
【0064】
第1の光源20は、光源像として走査される方向D1に対して交差する方向に第1の発光素子(S12)、第2の発光素子(S22、S26)および第3の発光素子(S31)が並んでいる。これにより、少ない数の発光素子で階段状の配光パターンを形成できる。
【0065】
本実施の形態に係る第3の発光素子S32は、第1の発光素子S11~S15が走査する領域(範囲R1)と第2の発光素子S21~S29が走査する領域(R3~R6)と重複する領域(R2)を走査するように配置されている。制御部29は、第3の発光素子を点灯している時間T3(T32)が、T1>T3>T2を満たすように、第3の発光素子S32の出力を制御している。これにより、より段差の少ない階段状の配光パターンを形成できる。
【0066】
また、本実施の形態に係る第1の光源20は、複数の発光素子がm行×n列(m、nは2以上の整数であり、第1の光源20ではm=5、n=4)のマトリックス状に配置されており、第(k-1)列の発光素子に対して第k列(kはn以下の整数)の発光素子が約1/2ピッチずれて配置されている。この場合、隣接する列の発光素子が1/2ピッチずれていない場合と比較して、より段差の少ない階段状の配光パターンを形成できる。
【0067】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態に係る光学ユニットは、第1の光源の構成が異なることが主な特徴であり、それ以外は第1の実施の形態と実質的な違いはない。したがって、以下では第1の光源について詳述する。
【0068】
図12(a)は、第2の実施の形態に係る光源を正面から見た場合の模式図、図12(b)は、第2の実施の形態に係る光学ユニットにより形成されるハイビーム用配光パターンを示す図、図12(c)は、第2の実施の形態に係る光学ユニットにより形成される他のハイビーム用配光パターンを示す図である。
【0069】
図12(a)に示す第1の光源120は、9個の発光素子S11’~S31’がm行×n列(m、nは2以上の整数であり、第1の光源120ではm=3、n=3)のマトリックス状に配置されており、第(k-1)列の発光素子S11’~S13’に対して第k列(kはn以下の整数)の発光素子S21’~S23’が1/3ピッチ(1ピッチ=P’)ずれて配置されている。
【0070】
このように構成された第1の光源120を用いた光学ユニット18は、図12(b)に示すハイビーム用配光パターンPHだけでなく、図12(c)に示す斜めカットオフラインを有する部分ハイビーム用配光パターンPH”も形成できる。
【0071】
図12(b)に示すハイビーム用配光パターンPHは、発光素子S11’~S33’の光源像が走査されることで形成される走査パターンP11’~P33’が重畳されたものである。
【0072】
また、図12(c)に示す部分ハイビーム用配光パターンPH”も、発光素子S11’~S3’の光源像が走査されることで形成される走査パターンP11’~P33’が重畳されたものであるが、各発光素子の点灯時間が異なる。
【0073】
発光素子S11’、S21’、S31’は、一周期の点灯時間T1’が最も長く、図12(c)に示す走査パターンP11’、P21’、P31’が形成され、各走査パターンが重畳されることで、主として水平線より下方の範囲R1’を照射する。
【0074】
発光素子S12’は、一周期の点灯時間がT12’(T12’<T1’)であり、発光素子S22’は、一周期の点灯時間がT22’(T22’<T1’)であり、発光素子S32’は、一周期の点灯時間がT32’(T32’<T1’)であり、図12(c)に示すように、主として自車線側のH-H線およびその直上を含む範囲R2’を照射する。範囲R2’は範囲R1’と一部が重複している。
【0075】
発光素子S13’は、一周期の点灯時間がT13’(T13’<T1’)であり、発光素子S23’は、一周期の点灯時間がT23’(T23’<T1’)であり、発光素子S33’は、一周期の点灯時間がT33’(T33’<T1’)であり、図12(c)に示すように、主として自車線側のH-H線の上方の範囲R3’を照射する。範囲R3’は範囲R2’と一部が重複している。
【0076】
なお、各発光素子の点灯時間の関係は、T13’、T23’、T33’<T12’、T22’、T32’<T1である。
【0077】
制御部29は、点消灯する発光素子の選択だけでなく、点灯する複数の発光素子の点灯時間をそれぞれ制御することで、図12(c)に示すように、配光パターンの自車線側カットオフラインが外側に向かって斜めまたは階段状に高くなる配光パターンを形成できる。このように、本実施の形態に係る光学ユニットは、車両用前照灯に適した斜めカットオフラインを有する配光パターンを形成できる。
【0078】
加えて、第2の実施の形態に係る第1の光源120は、隣接する列の発光素子と1/3ピッチずれて配置されている。そのため、第1の実施の形態の第1の光源20のように約1/2ピッチずれて配置されている場合と比較して、斜めカットオフラインの形成に関与する走査パターン同士の段差が小さい。その結果、よりスムーズな斜めカットオフラインを有する配光パターンが得られる。
【0079】
[第3の実施の形態]
第1の実施の形態に係る車両用前照灯10においては、回転リフレクタ22のブレード22aの形状が、回転軸Rを中心とする周方向に向かうにつれて、光軸Axと反射面とが成す角が変化するように捩られた形状を有している。一方、第3の実施の形態に係る車両用前照灯10においては、回転リフレクタとしてポリゴンミラーを用いており、それ以外は第1の実施の形態と実質的な違いはない。したがって、以下の説明においては、回転リフレクタについて詳述し、第1の実施の形態と同じ構成については同じ符号を付して説明を適宜省略する。
【0080】
図13は、第3の実施の形態に係る車両用前照灯の水平断面図である。第3の実施の形態に係る車両用前照灯110は、前方に向かって開口した凹部を有するランプボディ12を備えている。ランプボディ12は、その前面開口が透明な前面カバー14によって覆われて灯室16が形成されている。灯室16は、1つの光学ユニット118が収容される空間として機能する。光学ユニット118は、可変ハイビームとロービームの両方を照射できるように構成されたランプユニットである。
【0081】
本実施の形態に係る光学ユニット118は、光源220と、光源220から出射した第1の光L1の光路を変化させてポリゴンミラー122の反射面122aに向かわせる1次光学系(光学部材)としての集光用レンズ23と、第1の光L1を反射しながら回転軸Rを中心に回転するポリゴンミラー122と、投影レンズ124と、制御部29と、を備える。
【0082】
光源220は、複数の素子がマトリックス状に配置されている。投影レンズ124は、ポリゴンミラー122で反射された第1の光L1を光学ユニットの光照射方向(図1左方向)に集光し投影する。これにより、光学ユニット118の前方に光源像を鮮明に投影できる。
【0083】
ポリゴンミラー122は、モータなどの駆動源により回転軸Rを中心に一方向に回転する。また、ポリゴンミラー122は、回転しながら反射した各光源の光を走査することで所望の配光パターンを形成するように反射面122aが設けられている。つまり、ポリゴンミラー122は、その回転動作により、発光部からの可視光を照射ビームとして出射するものであり、かつ、該照射ビームを走査せしめることによって所望の配光パターンを形成する。
【0084】
ポリゴンミラー122の回転軸Rは、光軸Axに対してほぼ垂直になっており、光軸Axと光源220とを含む平面と交差するように設けられている。換言すると、回転軸Rは、回転によって左右方向に走査する光源の光(照射ビーム)の走査平面と略直交するように設けられている。このようなポリゴンミラー122を用いた車両用前照灯110においても、前述の各種配光パターンの形成が可能である。
【0085】
[第4の実施の形態]
上述の各実施の形態において、静止した回転リフレクタに反射されて前方へ投影された光源像は、いずれも同じ大きさの矩形として説明されている。しかしながら、矩形の発光面を有する各発光素子は、入力する電流(電力)の大きさを制御する(変化させる)ことで、静止状態での光源像としての大きさを変化させることができる。
【0086】
図14は、矩形の発光面を有する発光素子の出力が異なる場合の光源像の大きさを比較する模式図である。図14に示す光源像L21は、例えば発光素子の使用上限出力で発光(光量100%)させた場合であり、実線で囲まれた範囲R21が所定の光度より高い領域を示している。なお、LED等の一般的な発光素子の場合、発光面の中央が一番明るく、発光面の外縁に近づくに従って暗くなる傾向がある。また、所定の光度とは、例えば、光源像を走査して配光パターンを形成した際に、光学ユニットの使用者が配光パターンの輪郭として認識する程度の明るさである。
【0087】
図14に示す光源像L21’は、例えば発光素子の使用上限出力の半分で発光(光量50%)させた場合であり、実線で囲まれた範囲51’が所定の光度より高い領域を示している。なお、光源像L21’の範囲R21’は、光源像L21の範囲R21よりも小さい。
【0088】
図14に示す光源像L21”は、例えば発光素子の使用上限出力の10%で発光(光量10%)させた場合であり、実線で囲まれた範囲51”が所定の光度より高い領域を示している。なお、光源像L21”の範囲R21”は、光源像L21’の範囲R21’よりも小さい。
【0089】
このように、発光素子の出力を変化させることで所定の光度で照射される範囲(光源像の大きさ)が変化する。そこで、制御部29は、回転リフレクタ22が回転しながら反射した光を光源像として走査する際に、発光素子の出力を変化させることで、新たな形状の配光パターンを形成できる。
【0090】
図15は、配光パターンの一例を示す模式図である。図15に示すように、制御部29は、発光素子を使用上限出力で駆動し、光源像L21が図の左から右に向かって走査される。その後、制御部29は、所定のタイミングで発光素子の出力を下げ始め、光源像L21から光源像L21’、光源像L21”へと徐々に光源像の大きさを小さくする。これにより、配光パターンP21”が形成される。配光パターンP21”は、左端領域から中央領域までが矩形であり、右端領域の上辺E1および下辺E2が斜めになっている。したがって、配光パターンP21”は、斜めの上辺E1を斜めカットオフラインとして用いることができる。
【0091】
図16(a)は、第4の実施の形態に係る点灯した発光部が静止した回転リフレクタに反射されて前方へ光源像として投影された様子を示す模式図、図16(b)は、回転リフレクタが回転することで図16(a)に示す光源像が走査されて形成された第5の配光パターンを示す図である。
【0092】
図16(a)に示す光源像L11,L21,L22,L31は、発光素子S11,S21,S22,S31の各発光面に対応したものである。なお、第5の配光パターンPH'''を形成する際には、発光素子S11は、一周期の点灯時間T1が最も長く、図16(b)に示す走査パターンP11”が形成される。また、発光素子S21,S22,S31は、一周期の点灯時間の後半で徐々に出力が低下するように制御され、図15に示す配光パターンP21”や、類似の配光パターンP22”,P31”が形成される。また、各走査パターンは、隣接する走査パターンと一部が重畳するように形成されている。
【0093】
制御部29は、点消灯する発光素子の選択だけでなく、点灯する複数の発光素子の点灯時間や出力をそれぞれ制御することで、図16(b)に示すように、配光パターンの自車線側カットオフラインが外側に向かって斜めまたは階段状に高くなる第5の配光パターンPH'''を形成できる。なお、一周期の点灯時間の前半から徐々に出力が増大するように制御することで、配光パターンの対向車線側カットオフラインが外側に向かって斜めまたは階段状に高くなる配光パターンPH'''を形成することもできる。このように、本実施の形態に係る光学ユニットは、車両用前照灯に適した斜めカットオフラインを有する配光パターンを形成できる。
【0094】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0095】
10 車両用前照灯、 18 光学ユニット、 20 第1の光源、 22 回転リフレクタ、 24 投影レンズ、 26 第2の光源、 29 制御部、 34 モータ、 36 第1の発光部、 38 第2の発光部、 40 第3の発光部、 42 第4の発光部、 100 制御装置、 110 車両用前照灯、 118 光学ユニット、 120 第1の光源、 122 ポリゴンミラー、 124 投影レンズ、 220 光源。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16