(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010170
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】ガラス基板及び光電変換モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 31/048 20140101AFI20230113BHJP
【FI】
H01L31/04 560
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021114113
(22)【出願日】2021-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】513009668
【氏名又は名称】ソーラーフロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187218
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 宏光
(72)【発明者】
【氏名】那須 洋平
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151AA10
5F151BA11
5F151FA02
5F151FA04
5F151FA06
5F151FA14
5F151FA15
5F151JA03
5F151JA04
5F151JA05
5F151JA27
(57)【要約】
【課題】意匠性を向上できるガラス基板及び光電変換モジュールを提供する。
【解決手段】光電変換モジュール用、又は光電変換モジュールのダミーモジュール用のガラス基板600は、厚み方向において互いに異なる少なくとも2つの位置に施された第1彩色加工660及び第2彩色加工670を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換モジュール用、又は光電変換モジュールのダミーモジュール用のガラス基板であって、
前記ガラス基板は、厚み方向において互いに異なる少なくとも2つの位置に施された第1彩色加工及び第2彩色加工を含む、ガラス基板。
【請求項2】
前記第1彩色加工及び前記第2彩色加工は、それぞれ無彩色加工又は有彩色加工である、請求項1に記載のガラス基板。
【請求項3】
前記第1彩色加工は、前記第2彩色加工よりも表面側に施されており、
前記第1彩色加工は、凹凸加工であり、
前記第2彩色加工は、印刷加工である、請求項1又は2に記載のガラス基板。
【請求項4】
前記凹凸加工は、型板ガラス加工、ブラスト加工及びフロスト加工を含む群から選択された少なくとも1つを含む、請求項3に記載のガラス基板。
【請求項5】
前記ガラス基板は、第1ガラス層と、第2ガラス層と、を有し、
前記第1彩色加工は、前記第1ガラス層に施されており、
前記第2彩色加工は、前記第2ガラス層に施されている、請求項1から4のいずれか1項に記載のガラス基板。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のガラス基板と、
前記ガラス基板の裏面側に設けられた光電変換素子と、を有する、光電変換モジュール。
【請求項7】
前記ガラス基板は、前記光電変換素子よりも大きく、
前記第1彩色加工及び前記第2彩色加工は、前記厚み方向からみて、前記光電変換素子に重なる領域から前記光電変換素子の外側の領域にわたって施されている、請求項6に記載の光電変換モジュール。
【請求項8】
前記光電変換素子は、電力供給又は電力取り出し用の配線を有し、
前記ガラス基板は、前記第1彩色加工及び前記第2彩色加工よりも前記光電変換素子に近いところに、黒色層を有し、
前記黒色層は、前記厚み方向からみて、前記配線に重なる領域から前記光電変換素子の外側の領域にわたって施されている、請求項6又は7に記載の光電変換モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板及び光電変換モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールのように、光電変換パネルを備えた光電変換モジュールが知られている(下記特許文献1)。特許文献1に記載された光電変換モジュールは、太陽光受光面側から順に、破損防止層、表面保護層、光電変換層及び裏面保護層を含む。破損防止層は透明性の樹脂シートであり、表面保護層は透明性の高いガラスシートである。光電変換層は、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換する層である。
【0003】
特許文献1には、意匠性向上の観点から、発電能力が著しく低下しない範囲であれば、表面保護層に着色あるいは部分加飾を施してもよいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光電変換モジュールは通常光の吸収する層を有するため、黒色の光電変換素子を有する。したがって、光電変換モジュールの表面は通常は黒色であり、光電変換モジュールの意匠性は低い。特許文献1では、意匠性向上の観点から表面保護層に着色あるいは部分加飾を施してもよいことが記載されているが、光電変換モジュール及び光電変換モジュール用のガラス基板の意匠性に関しては、未だ検討の余地がある。
【0006】
このような背景の下、意匠性を向上できるガラス基板及び光電変換モジュールが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様に係る光電変換モジュール用、又は光電変換モジュールのダミーモジュール用のガラス基板は、厚み方向において互いに異なる少なくとも2つの位置に施された第1彩色加工及び第2彩色加工を含む。
【0008】
一態様に係る光電変換モジュールは、上記のガラス基板と、前記ガラス基板の裏面側に設けられた光電変換素子と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
上記態様によれば、意匠性を向上できるガラス基板及び光電変換モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る光電変換モジュールの平面図である。
【
図2】
図1の2A-2A線に沿った光電変換モジュールの模式的断面図である。
【
図4】第1実施形態に係るガラス基板の模式的断面図である。
【
図5】第2実施形態に係るガラス基板の模式的断面図である。
【
図6】第1実施例に係る光電変換モジュールの一部の表面を撮影した写真である。
【
図7】第2実施例に係る光電変換モジュールの一部の表面を撮影した写真である。
【
図8】第3実施例に係る光電変換モジュールの表面を撮影した写真である。
【
図9】参考例に係る光電変換モジュールの表面を撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。以下の図面において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがあることに留意すべきである。
【0012】
[第1実施形態]
図1は、一実施形態に係る光電変換モジュールの平面図である。
図2は、
図1の2A-2A線に沿った光電変換モジュールの模式的断面図である。
図3は、
図2の領域3A付近の拡大断面図である。
【0013】
光電変換モジュール1は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池モジュールであってよい。この代わりに、光電変換モジュール1は、電気エネルギーを光エネルギーに変換するモジュールであってもよい。光電変換モジュール1は、例えば薄膜型の光電変換モジュールであってもよく、結晶型の光電変換モジュールであってもよい。
【0014】
光電変換モジュール1は、光電変換素子10を含む光電変換パネル100と、光電変換パネル100の縁に取り付けられたフレーム200と、を有していてよい。
【0015】
光電変換パネル100は、光電変換素子10と、光電変換素子10の第1面側(以下、「表面側」と称する。)に設けられたガラス基板600と、光電変換素子10に関してガラス基板600とは反対側(以下、「裏面側」と称する。)に設けられたシート状の保護材900と、を有していてよい。
【0016】
ここで、「表面側」は、光電変換素子10へ光が入射する側、又は光電変換素子10から光が出射する側に相当する。また、「裏面側」は、表面側とは反対側の面に相当する。例えば、光電変換モジュール1が太陽電池モジュールである場合、「表面側」は光が入射する受光面側に相当し、「裏面側」は非受光面側に相当する。
【0017】
ガラス基板600は、光電変換モジュール1の表面側に位置していてよい。ガラス基板600は、ガラス基板600の表面に直交する方向(以下、単に「厚み方向」と称することがある。)からみて、後述する光電変換素子10よりも大きい。
【0018】
光電変換パネル100は、ガラス基板600と光電変換素子10との間に、第1封止層400を有していてよい。第1封止層400は、少なくとも光電変換素子10の表面側を覆っていてよい。
【0019】
第1封止層400は、透明又は半透明な絶縁体によって構成されていてよい。例えば、第1封止層400は、合成樹脂によって形成されていてよい。そのような合成樹脂として、例えばEVA樹脂(エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂)、オレフィン系樹脂、PVB(ポリビニルブチラール)樹脂、アイオノマー樹脂もしくはシリコーン樹脂、又はこれらの組み合わせを用いることができる。
【0020】
光電変換素子10は、基板20上に層状に設けられていてよい。光電変換素子10は、基板20のほぼ全域にわたって形成されていてよい。基板20は、光電変換素子10を形成する基体となる部分である。基板20は、例えば、樹脂基板、ガラス基板又は金属基板により構成されていてよい。基板20の、光電変換素子10側の表面には、不図示の絶縁層が形成されていてもよい。
【0021】
光電変換パネル100は、基板20と保護材900との間に、第2封止層800を有していてよい。第2封止層800は、合成樹脂のような絶縁体によって形成されていてよい。そのような合成樹脂として、例えばEVA樹脂(エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂)、オレフィン系樹脂、PVB(ポリビニルブチラール)樹脂、アイオノマー樹脂もしくはシリコーン樹脂、又はこれらの組み合わせを用いることができる。なお、第2封止層800の厚みは、第1封止層400の厚みと同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0022】
保護材900は、光電変換モジュール1の裏面側で、光電変換素子10及び基板20を覆っていてよい。保護材900は、基板20の表面に沿った面内において、基板20のサイズよりも大きくてよい。保護材900の縁は、光電変換素子10の側部で、ガラス基板600の裏面又はその付近まで延びていてよい。
【0023】
保護材900の少なくとも一部は、光電変換モジュール1の裏面側に露出していてよい。すなわち、保護材900の少なくとも一部は、光電変換モジュール1の最も裏面側に位置していてよい。
【0024】
保護材900は、少なくとも樹脂を含んでいてよい。保護材900は、例えば、樹脂製の基材と接着剤が互いに積層された積層シートであってもよい。保護材900は、例えばPET樹脂、PVF(ポリフッ化ビニル)樹脂、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)樹脂、ナイロン樹脂もしくはポリアミド樹脂、又はこれらの組み合わせによって構成されていてよい。第2封止材900が複数層の基材を有する場合、各層の基材は、同じ材料によって構成されていてもよく、異なる材料によって構成されていてもよい。
【0025】
光電変換モジュール1は、光電変換素子10の側部にシール材500を有していてもよい。シール材500は、光電変換素子10及び基板20の周縁部を囲んでおり、ガラス基板600の裏面側にも付着していてよい。シール材500は、光電変換パネル100の表面に直交する断面において、第2封止材800の裏面側の一面と、ガラス基板600の裏面側の一面とをなだらかに結ぶよう、傾斜していてよい(
図2)。シール材500の材料として、例えば、ポリイソブチレン(PIB)、ブチルゴムもしくは合成ゴム、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0026】
シール材500は、遮光性を有していてもよい。シール材500の材料としては、例えば、ポリイソブチレン(PIB)、ブチルゴムもしくは合成ゴム、又はこれらの組み合わせを含む材料によって構成されていてもよい。また、シール材500は、カーボンブラックを含有した黒色のブチルゴム等によって構成されていてもよい。
【0027】
フレーム200は、光電変換パネル100の縁に沿って設けられている。フレーム200は、光電変換パネル100の縁を実質的に取り囲むように配置されていてよい。各々のフレーム200は、光電変換パネル100の縁に沿って延びていてよい。
【0028】
フレーム200は、フレーム200の延在方向に直交する断面において略C字型の壁部によって構成された受け入れ部210を有していてよい。光電変換パネル100の縁、具体的にはガラス基板600の縁は、この略C字型の壁部によって構成された受け入れ部210内に挿入されている。
【0029】
光電変換モジュール1は、少なくともフレーム200の受け入れ部210内に、接着材250を有していてよい。具体的には、接着材250は、光電変換パネル100の裏面側であって、光電変換パネル100とフレーム200を構成する壁部との間に設けられていてよい。フレーム200は、接着材250により、光電変換パネル100に固定される。具体的には、接着材250の少なくとも一部は、受け入れ部210内において、少なくとも光電変換パネル100とフレーム200の両方に接していてよい。
【0030】
光電変換モジュール1は、保護材900の裏面側に、不図示の中継器(ジャンクションボックス)を有していてもよい。中継器は、光電変換素子10から引き回された一対の配線50と電気的に接続されていてよい。一対の配線50は、光電変換素子10の表面側で光電変換素子10の端部付近に設けられていてよい。一対の配線50は、光電変換素子10の表面側から、第2封止層800及び保護材900を貫通して裏面側に引き出され、中継器と接続されていてよい。
【0031】
光電変換パネル100に設けられた光電変換素子10の構成の一例について
図3を用いて詳細に説明する。
図3では、光電変換素子10の厚み方向において、ガラス基板600と第2封止層800との間の領域が示されていることに留意されたい。
【0032】
光電変換素子10は、少なくとも、第1電極層22と、第2電極層24と、光電変換層26と、を含んでいてよい。光電変換層26は、光電変換素子10の厚み方向において、第1電極層22と第2電極層24との間に設けられている。第1電極層22は、光電変換層26と基板20との間に設けられている。第2電極層24は、光電変換層26に関して基板20とは反対側に位置する。
【0033】
第2電極層24は透明電極層によって構成されていてよい。第2電極層24が透明電極層によって構成されている場合、光電変換層26へ入射する光、又は光電変換層26から出射する光は、第2電極層24を通過する。
【0034】
第2電極層24が透明電極層によって構成される場合、第1電極層22は、不透明電極層によって構成されていてもよく、透明電極層によって構成されていてもよい。第1電極層22は、例えば、モリブデン、チタン又はクロムのような金属によって形成されていてよい。
【0035】
本実施形態では、好ましい一例として、第2電極層24は、n型半導体、より具体的には、n型の導電性を有し、禁制帯幅が広く、比較的低抵抗の材料によって形成される。第2電極層24は、例えば、III族元素を添加した酸化亜鉛(ZnO)や、酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide:ITO)によって構成されていてよい。この場合、第2電極層24は、n型半導体と透明電極層の機能を兼ねることができる。
【0036】
光電変換層26は、例えば、p型の半導体を含んでいてよい。CIS系の光電変換モジュールの一例では、光電変換層26は、I族元素(Cu、Ag、Au等)、III族元素(Al、Ga、In等)及びVI族元素(O、S、Se、Te等)を含む化合物半導体で形成される。光電変換層26は、前述したものに限定されず、光電変換を起こす任意の材料によって構成されていてよい。
【0037】
光電変換素子10の構成は、上記態様に限定されず、様々な態様をとり得ることに留意されたい。例えば、光電変換素子10は、n型半導体とp型半導体の両方が第1電極層と第2電極層との間に挟まれた構成を有していてもよい。この場合、第2電極層はn型半導体によって構成されていなくてよい。また、光電変換素子10は、p-n結合型の構造に限らず、n型半導体とp型半導体との間に真性半導体層(i型半導体)を含むp-i-n結合型の構造を有していてもよい。また、光電変換素子10は、前述したような薄膜型の構成に限らず、例えば結晶シリコンのような結晶型の構成を有していても良い。
【0038】
変換光電変換素子10は、光電変換層26と第2電極層24との間、及び/又は光電変換層26と第1電極層22との間に、不図示のバッファ層を有していてもよい。バッファ層は、公知の任意の構成を有していてよい。
【0039】
光電変換素子10は、光電変換素子10と電気的に接続された前述の一対の配線50を有する。一対の配線50は、外部から光電変換素子10に電力を供給したり、光電変換素子10から外部へ電力を取り出したりする電力供給又は電力取り出し用の配線であってよい。一対の配線50は、基板20とガラス基板600との間で、
図3のX方向における光電変換素子10の端付近に設けられていてよい。
【0040】
次に、前述したガラス基板600の構成について説明する。
図4は、第1実施形態に係るガラス基板の模式的断面図である。すなわち、以下で説明するガラス基板600は、光電変換モジュール用のガラス基板である。
【0041】
本実施形態において、ガラス基板600は、厚み方向において互いに異なる少なくとも2つの位置に施された第1彩色加工660及び第2彩色加工670を含む。典型的には、第1彩色加工660は、ガラス基板600の表面側に形成されており、第2彩色加工670は、ガラス基板600の裏面側に形成されていてよい。
【0042】
第1彩色加工660及び第2彩色加工670は、それぞれ有彩色加工又は無彩色加工であってよい。有彩色加工又は無彩色加工は、ガラス基板600への有彩色材料又は無彩色材料の塗布、例えば拡散印刷加工のような印刷加工を含んでいてよい。具体的には、有彩色加工又は無彩色加工は、ガラス基板600の表面又は裏面への有彩色又は無彩色のセラミック材料の拡散印刷によって実施できる。無彩色の拡散印刷は、例えば白色のセラミック材料の拡散印刷によって実施できる。
【0043】
本明細書において、無彩色加工は、ガラス基板600に対して白、黒、グレーのような無彩色の見た目を施す加工全般を指すものとする。無彩色加工は、前述した例の他に、例えばガラス基板600の表面又は裏面に凹凸を施す凹凸加工であってもよい。このような凹凸加工は、型板ガラス加工、ブラスト加工及びフロスト加工を含む群から選択された少なくとも1つを含んでいてよい。ここで、型板ガラス加工は、ガラス基板600を型板ガラスとして形成する加工である。ガラス基板600の表面又は裏面に施された凹凸は光を乱反射させるため、白色又は白色に近づけるような彩色がガラス基板600に付与される。乱反射の利用によって、反射率の増加に伴う光電変換効率の低下を抑制することができる。
【0044】
第1彩色加工660及び第2彩色加工670は、ガラス基板600に一様に施されていてもよく、ガラス基板600に部分的に施されていてもよい。好ましくは、第1彩色加工660及び第2彩色加工670は、所望の図形、模様やパターンを形成するよう施されていてもよい。
【0045】
前述したように、第1彩色加工660及び第2彩色加工670が、厚み方向において互いに異なる位置に施されている。これにより、人がガラス基板600を視認したときに、第1彩色加工660及び第2彩色加工670により形成された図形、模様やパターンの奥行きを感じられるようなデザインになり易く、高い意匠性が実現できる。特に、光電変換素子10による光電変換効率を著しく低下させないという制約を維持しつつ意匠性に関する加工を1箇所のみに行うと、上記制約のせいで多様な意匠性の表現が困難になり易い。本実施形態では、厚み方向において互いに異なる位置に施された第1彩色加工660及び第2彩色加工670によって、上記制約を維持しつつ、多様な意匠性の実現が可能となる。
【0046】
好ましい一例では、第1彩色加工660は、第2彩色加工670よりも表面側に施されている。この場合に、第1彩色加工660は凹凸加工であり、かつ第2彩色加工670は印刷加工であってよい。このような彩色加工の組み合わせにより、木材、サイディング材又はモルタル材のような外壁に似た意匠性を奏することができる。より具体的には、第2彩色加工670としての印刷加工と光電変換素子10としての黒色との重ね合わせにより、前述した外壁に似た色が創出できる。これ加えて、第1彩色加工660としての凹凸加工によって、前述した外壁に似た凹凸感が創出されるので、より外壁に似た意匠性を有する光電変換素子10を提供することができる。このような光電変換モジュールは、建造物の外壁用として好適に用いられる。
【0047】
木材、サイディング材又はモルタル材のような外壁に似た意匠性を有する光電変換モジュールを提供するという観点では、凹凸加工は、ブラスト加工又は型板ガラス加工であることが好ましい。なお、凹凸加工による凹凸感を十分に発揮させるためには、凹凸加工は、ガラス基板600の表面側に施されることが好ましい。
【0048】
第1彩色加工660及び第2彩色加工670が無い場合、光電変換素子10は黒色の見た目を有するため、一般的に光電変換モジュールの中央部は、光電変換モジュールの縁部よりもより黒い見た目になる。そのため、一般には、厚み方向からみて、光電変換素子10の縁のラインに沿って見た目の色が変わる境界が視認されることになる。この境界を視認し難くさせるため、第1彩色加工660及び第2彩色加工670は、厚み方向からみて、光電変換素子10に重なる領域から光電変換素子10の外側の領域にわたって施されていることが好ましい。これにより、より意匠性の高い光電変換モジュール10を提供することができる。
【0049】
ガラス基板600は、第1彩色加工660及び第2彩色加工670よりも光電変換素子10に近いところに、黒色層680を有することが好ましい。黒色層680は、ガラス基板600に、例えば黒色のセラミックを拡散印刷することによって形成することができる。この場合、黒色層680は、ガラス基板600の裏面に形成された第2彩色加工670の裏面側に印刷されてもよい。
【0050】
黒色層680は、厚み方向からみて、配線50に重なる領域から光電変換素子10の外側の領域にわたって施されていることが好ましい(
図2も参照)。より具体的には、黒色層680は、厚み方向からみて、配線50に重なる領域から少なくともフレーム200に重なる領域にわたって施されていることが好ましい。これにより、第1彩色加工660及び第2彩色加工670が無かったとしても、光電変換モジュール10の縁部付近が黒い見た目になる。そのため、光電変換素子10の縁のラインに沿って見た目の色が変わる境界がより目立ちにくくなり、より意匠性の高い光電変換モジュール10を提供することができる。
【0051】
黒色層680は、光電変換素子10の端部付近には存在するが、光電変換素子10の中央部には存在しないことが望ましい。これは、光電変換素子10へ透過する光の量が著しく低下することに伴う光電変換効率の低下を抑制するためである。
【0052】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係るガラス基板及び光電変換モジュールについて説明する。
図5は、第2実施形態に係るガラス基板の模式的断面図である。第2実施形態に係る光電変換モジュールは、ガラス基板を除き、第1実施形態と同様の構成であってよい。したがって、以下では、ガラス基板600以外の構成については、その説明を省略することがある。
【0053】
第2実施形態において、第1実施形態と同様又は類似の構成要素については同じ符号が付されていることに留意されたい。また、第1実施形態と同様又は類似の構成要素については、その説明を省略することがあることに留意されたい。
【0054】
第2実施形態に係るガラス基板600は、第1ガラス層610と、第2ガラス層620と、中間膜630と、を有していてよい。第1ガラス層610及び第2ガラス層620は、ガラスによって構成されている。第1ガラス層610は、第2ガラス層620よりも表面側に位置する。中間膜630は、第1ガラス層610と第2ガラス層620を接着する膜であり、樹脂製の膜であってよい。このように、第2実施形態では、ガラス基板600は、いわゆる合わせガラスであってよい。
【0055】
第2実施形態に係るガラス基板600において、第1彩色加工660及び第2彩色加工670が、厚み方向において互いに異なる位置に施されている。第1彩色加工660は、第2彩色加工670よりも表面側に施されている。ガラス層が複数存在することによって、彩色加工を施すガラスの表面又は界面の位置が増えるため、彩色加工を施す位置を柔軟に変えることができる。
【0056】
第1彩色加工660は第1ガラス層610に施されており、かつ第2彩色加工670は第2ガラス層620に施されていてよい。このように、互いに異なるガラス層に彩色加工を施すことによって、より奥行き感を奏するガラス基板600及び光電変換モジュールを提供することができる。
【0057】
また、互いに異なるガラス層に対して彩色加工ができるため、ガラス基板600の製造が容易になる。詳細には、第1ガラス層610及び第2ガラス層620の表面と裏面のうちの一方の面のみに彩色加工を施すことで、第1彩色加工660及び第2彩色加工670を有するガラス基板600を製造ラインで容易に製造することができる。
【0058】
また、ある製造ラインにおいて施される彩色加工を途中で変更することは一般的に困難である。しかしながら、複数の製造ライン、例えば少なくとも3つの製造ラインのそれぞれにおいて施される彩色加工をそれぞれ予め決めておけば、ある製造ラインで製造されたガラス層と別の製造ラインで製造されたガラス層との組み合わせによって、第1彩色加工660及び第2彩色加工670の組み合わせを様々に変更することができる。例えば、彩色加工が施されるガラス層を4つの製造ラインで製造する場合、第1彩色加工660及び第2彩色加工670の組み合わせとして6通り(4C2通り)の彩色加工を実現することができる。
【0059】
第1彩色加工660が凹凸加工である場合、凹凸感を十分に発揮させるためには、凹凸加工は、ガラス基板600の第1ガラス層610の表面側に施されることが好ましい。一方、装飾の奥行き感を十分に発揮させるためには、第2彩色加工670は、第2ガラス層620の裏面側に施されていてよい。
【0060】
前述した実施形態では、第1彩色加工660及び第2彩色加工670の2つがガラス基板600に施されている。この代わりに、3つ以上の彩色加工がガラス基板600に施されていてもよい。また、ガラス基板600は、3層以上のガラス層が接合された基板であってもよい。
【0061】
[実施例]
次に、光電変換モジュールの実施例について例示する。
図6は、第1実施例に係る光電変換モジュールの一部の表面を撮影した写真である。
図7は、第2実施例に係る光電変換モジュールの一部の表面を撮影した写真である。
図6及び
図7において、光電変換モジュールは、ガラス基板600の表面に直交する方向から見た写真であり、ガラス基板600の右上側の1/4の領域が示されている。
図8は、第3実施例に係る光電変換モジュールの表面を撮影した写真である。
図9は、参考例に係る光電変換モジュールの表面を撮影した写真である。
【0062】
第1実施例に係る光電変換モジュールでは、ガラス基板600は、第2実施形態で説明した第1ガラス層610と第2ガラス層620を含む。第1ガラス層610の表面側にフロスト加工が施されている。第2ガラス層620の裏面側に白色のセラミック材料による拡散印刷加工が施されている。なお、ガラス基板600は、拡散印刷加工の裏面側に、黒色層680を有する。
【0063】
第2実施例に係る光電変換モジュールでは、ガラス基板600は、第2実施形態で説明した第1ガラス層610と第2ガラス層620を含む。第1ガラス層610の表面側にブラスト加工が施されている。第2ガラス層620の裏面側に白色のセラミック材料による拡散印刷加工が施されている。なお、ガラス基板600は、拡散印刷加工の裏面側に、黒色層680を有する。
【0064】
第3実施例に係る光電変換モジュールでは、ガラス基板600は、第2実施形態で説明した第1ガラス層610と第2ガラス層620を含む。第1ガラス層610は型板ガラスであり、第1ガラス層610の表面側に凹凸が施されている。第2ガラス層620の裏面側に白色のセラミック材料による拡散印刷加工が施されている。なお、ガラス基板600は、拡散印刷加工の裏面側に、黒色層680を有する。
【0065】
参考例に係る光電変換モジュールでは、第2ガラス層620の裏面側に白色のセラミック材料による拡散印刷加工が施されていない。参考例に係る光電変換モジュールは、この点を除き、第3実施例と同じ構成である。
【0066】
第1実施例から第3実施例のいずれも、光電変換モジュールは、彩色加工によって、参考例における光電変換モジュールのような通常の黒色の外観ではなく、グレーの無彩色の外観を有している。また、第2実施例では、ブラスト加工によって、光電変換素子10の縁の境界がより視認され難くなっている。
【0067】
さらに、第2実施例及び第3実施例に係る光電変換モジュールは、第2ガラス層620に施された彩色加工と、第1ガラス層610に施された凹凸加工(ブラスト加工又は型板ガラス加工)の組み合わせによって、より外壁に似た見た目を有する。
【0068】
前述した実施例では、拡散印刷加工、ブラスト加工及び型板ガラス加工は概ね一様に施されているが、これらの加工は、前述したように図形、模様又はパターン状に施されてもよい。例えば、ブラスト加工された領域とブラスト加工されていない領域との組み合わせによって、ガラス基板の表面上に所望の模様を描くことができる。これにより、より意匠性の高い光電変換モジュールを提供できる。
【0069】
前述した実施形態及び実施例に係るガラス基板600は、光電変換モジュールのダミーモジュール用のガラス基板としても利用できることに留意されたい。ダミーモジュールは、光電変換素子10を含まないダミーのモジュールである。より具体的には、ダミーモジュールは、前述したガラス基板600と、フレーム200と、を有していてよい。
【0070】
ダミーモジュールは、アレイ状に配列された光電変換モジュール1の隙間、又は端に設けられることがある。光電変換モジュール1のサイズや形状は柔軟に変更できない一方、ダミーモジュールのサイズや形状は切断により柔軟に変更できる。したがって、アレイ状に配列された光電変換モジュール1の隙間、又は端にダミーモジュールを設置することによって、アレイ状に配列されたモジュール全体の意匠性を高めることができる。この場合、ダミーモジュールのガラス基板600は、光電変換モジュール1のガラス基板600と同じ構造、及び同じ彩色加工660,670を有していてよい。
【0071】
上述したように、実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替の実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0072】
1 光電変換モジュール
10 光電変換素子
50 配線
600 ガラス基板
610 第1ガラス層
620 第2ガラス層
660 第1彩色加工
670 第2彩色加工
680 黒色層