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特開2023-101717膜性増殖性糸球体腎炎患者の処置のための抗C5抗体の投薬量および投与
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101717
(43)【公開日】2023-07-21
(54)【発明の名称】膜性増殖性糸球体腎炎患者の処置のための抗C5抗体の投薬量および投与
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20230713BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230713BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20230713BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20230713BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230713BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61K9/08
A61P13/12
C07K16/18 ZNA
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089908
(22)【出願日】2023-05-31
(62)【分割の表示】P 2020519138の分割
【原出願日】2018-10-02
(31)【優先権主張番号】62/652,615
(32)【優先日】2018-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/568,060
(32)【優先日】2017-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503102674
【氏名又は名称】アレクシオン ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ジュゼッペ レムッツィ
(72)【発明者】
【氏名】ピエロ ルッジェネンティ
(72)【発明者】
【氏名】シャン ガオ
(57)【要約】
【課題】膜性増殖性糸球体腎炎患者の処置のための抗C5抗体の投薬量および投与の提供。
【解決手段】抗C5抗体またはその抗原結合性断片を投与することによる、膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)の臨床処置のための方法が提供される。患者に抗C5抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップを含む、ヒト患者におけるMPGNを処置するための組成物および方法が、本明細書に提供される。一実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合性断片は、特定の臨床投薬計画に従って(すなわち、特定の投与量で、特異的な投与スケジュールに従って)投与される(または投与のためのものである)。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2018年4月4日に出願された米国特許仮出願第62/652,615号および2017年10月4日に出願された米国特許仮出願第62/568,060号に対する優先権を主張する。上述の出願の内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本願は、ASCII形式で電子提出された配列表を含有し、その全体は、これにより参照により組み込まれる。2018年9月27日に作成された前記ASCIIの複製は、AXJ-201PC_SL.txtと名付けられ、そのサイズは33,104バイトである。
【背景技術】
【0003】
背景
膜性増殖性糸球体腎炎(「MPGN」としても公知)は、どの年齢でも発生し得るが、主に、子供および若年成人において発生し得る慢性腎炎の稀な原因である(例えば、Alchi B., et al., Pediatr. Nephrol. (2010) 25:1409-1418を参照)。MPGNは、不均一疾患群に続発し得、慢性感染症(C型肝炎およびB型肝炎、細菌性、真菌性ならびに寄生生物性感染症)、自己免疫性疾患(LES、時に、シェーグレン症候群、関節リウマチおよび混合性結合組織障害)、悪性病変(モノクローナルガンマグロブリン血症、B細胞リンパ腫、慢性リンパ球性白血病)に続発し得る、または原発性であり得る、糸球体傷害パターンに基づいて診断される(例えば、Sethi S., et al., Semin. Nephrol.
2011; 31:341-8を参照)。
【0004】
MPGNは、生検により確認される糸球体腎炎の全症例のおよそ7~10%を占め、原発性糸球体腎炎の中で末期腎疾患(ESRD)の3番目または4番目に多い原因としてランク付けされる。光学顕微鏡法におけるMPGNの典型的な特色は、メサンギウム細胞過形成、管内増殖および管壁リモデリング(二重輪郭の形成による)を含む;これらは全て、糸球体係蹄の小葉強調をもたらす。これらの変化は、糸球体メサンギウム中のおよび糸球体管壁に沿った、免疫グロブリン、補体因子または両者の沈着に起因する(例えば、Sethi S., et al., N. Engl. J. Med., 2012; 366(12):1119-31を参照)。
【0005】
補体系の過剰活性化は、免疫複合体によって活性化される古典的経路を介して、また、代替経路を介して、MPGNの病態形成における主要な役割を果たす(例えば、Fakhouri
F., et al., Nat. Rev. Nephrol., 2010; 6:494-499を参照)。代替経路の調節不全は、C3bおよび終末補体因子を含む活性化された補体産物をもたらし、これは、糸球体毛細血管表面を含むあらゆる細胞表面へと無差別に送達され、そこで、これの沈着がMPGNの続発による炎症を誘発する(例えば、Fervenza FC, et al., Nephrol. Dial Transplant 2012; 27: 4288-4294を参照)。
【0006】
補体C3、C4またはその両方の持続的に減少した血清レベルは、一般的に、MPGN患者で見られる。低いC3および低いC4補体レベルは、免疫複合体媒介性MPGNにおいてより一般的である一方、低いC3および正常なC4レベルは、特に急性期の、代替経路機能不全においてより一般的である。正常なC3レベルは、代替経路機能不全を除外しない(例えば、Sethi S, Fervenza FC., N. Engl. J. Med., 2012; 366(12):1119-31を参照)。
【0007】
全ての型のMPGNについて家族性形態が報告されており、遺伝的異常が、この疾患の素因的な役割を果たしている可能性があることを示唆する。原発性MPGNにおける補体系の過剰活性化に関連する後天的および遺伝的異常は、補体調節タンパク質[C3コンバターゼ(C3ネフローゼ因子)、H因子、I因子、B因子]に対する抗体、補体および補体調節タンパク質(C3、H因子、I因子、MCP、CFHR5、CFHR3-1)における変異(例えば、Bomback et al., Nat. Rev. Nephrol., 2012; 8,634-642;およびServais A, et al., Kidney Int., 2012 82, 454-464を参照)、ならびに対立遺伝子バリアント(H因子、C3、MCP)(例えば、Sethi S., et al., Kidney
Int., 2012 82, 465-473を参照)を含む。
【0008】
臨床像および経過は、極めて多様であり(腎機能における良性およびゆっくり進行する低下から、急速に進行する低下)、大部分のネフローゼ/ネフローゼ表現型患者は、ESRDへと進行する(例えば、Sethi S, Fervenza FC., N. Engl. J. Med., 2012;
366(12):1119-31を参照)。再発性疾患も、腎移植を受けるMPGN患者における一般
的な特色(30~65%)である(Lorenz EC, et al., Kidney Int., 2010; 77:721-8)。
【0009】
続発性MPGN患者において、処置は、原発性疾患(感染症、自己免疫性疾患、血液学的悪液質)の寛解の達成を目標とするべきである。正常な腎臓機能を有し、活性尿沈渣がなく、非ネフローゼ範囲タンパク尿の患者は、アンジオテンシンII遮断により保存的に処置して、血圧を制御し、タンパク尿を低下させることができる(例えば、Ruggenenti P, et al., Lancet 1999; 354:359-364を参照)。
ネフローゼ-ネフローゼ表現型を有する原発性MPGN患者に関して、コルチコステロイドおよび免疫抑制薬(シクロホスファミド、ミコフェノール酸モフェチル、シクロスポリン、リツキシマブ)、抗凝固薬、血栓溶解薬、プラスマフェレーシスおよび血漿交換の使用を含む、多数の治療レジメンが試された(例えば、Alchi B, Jayne D., Pediatr. Nephrol. (2010) 25:1409-1418を参照)。コルチコステロイド療法は、子供に有効
であるようであるが、ステロイドが、特発性MPGNを有する成人における疾患進行の改変において有効であることの証拠はない(例えば、Tarshish P, et al., Pediatr. Nephrol. 1992;6:123-30を参照)。ヒト化モノクローナル抗CD20抗体リツキシマブ
は、C3NeF産生の原因となるB細胞を枯渇させる試みにおいて使用されてきたが、その結果は、今までのところ限定的であった(例えば、Smith R, et al., J. Am. Soc. Nephrol, 2007; 18:2247-2456を参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Alchi B., et al., Pediatr. Nephrol. (2010) 25:1409-1418
【非特許文献2】Sethi S., et al., Semin. Nephrol. 2011; 31:341-8
【非特許文献3】Sethi S., et al., N. Engl. J. Med., 2012; 366(12):1119-31
【非特許文献4】Fakhouri F., et al., Nat. Rev. Nephrol., 2010; 6:494-499
【非特許文献5】Fervenza FC, et al., Nephrol. Dial Transplant 2012; 27: 4288-4294
【非特許文献6】Bomback et al., Nat. Rev. Nephrol., 2012; 8,634-642
【非特許文献7】Servais A, et al., Kidney Int., 2012 82, 454-464
【非特許文献8】Sethi S., et al., Kidney Int., 2012 82, 465-473
【非特許文献9】Lorenz EC, et al., Kidney Int., 2010; 77:721-8
【非特許文献10】Ruggenenti P, et al., Lancet 1999; 354:359-364
【非特許文献11】Tarshish P, et al., Pediatr. Nephrol. 1992;6:123-30
【非特許文献12】Smith R, et al., J. Am. Soc. Nephrol, 2007; 18:2247-2456
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
無作為化対照治験の欠如、および複数の病原性過程がMPGNをもたらすことに関する現在の理解のため、この患者集団において、特に、原発性形態およびより重症な疾患を有する患者に対して強い処置を推奨することが不可能となる。したがって、本発明の目的は、MPGN患者を処置するための改善された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
概要
患者に抗C5抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップを含む、ヒト患者におけるMPGNを処置するための組成物および方法が、本明細書に提供される。一実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合性断片は、特定の臨床投薬計画に従って(すなわち、特定の投与量で、特異的な投与スケジュールに従って)投与される(または投与のためのものである)。
【0013】
一実施形態では、MPGNは、「免疫複合体媒介性MPGN」(IC媒介性MPGN)である。別の実施形態では、MPGNは、「補体媒介性MPGN」(例えば、「C3糸球体症」(「C3G」としても公知))である。一実施形態では、C3糸球体症は、デンスデポジット病(DDD)またはC3糸球体腎炎である。
【0014】
例示的な抗C5抗体は、それぞれ配列番号10および11に示す配列を有する重鎖および軽鎖を含むエクリズマブ、またはその抗原結合性断片およびバリアントである。他の実施形態では、抗体は、エクリズマブの重鎖および軽鎖CDRまたは可変領域を含む。別の実施形態では、抗体は、配列番号7に表記される配列を有するエクリズマブのVH領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、ならびに配列番号8に表記される配列を有するエクリズマブのVL領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号1、2および3に表記される配列を有する重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、ならびにそれぞれ配列番号4、5および6に表記される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号7および配列番号8に表記されるアミノ酸配列を有するVHおよびVL領域を含む。
【0015】
別の例示的な抗C5抗体は、それぞれ配列番号14および11に示す配列を有する重鎖および軽鎖を含む抗体BNJ441(ALXN1210としても公知)、またはその抗原結合性断片およびバリアントである。他の実施形態では、抗体は、抗体BNJ441の重鎖および軽鎖相補性決定領域(CDR)または可変領域(VR)を含む。別の実施形態では、抗体は、配列番号12に示す配列を有する抗体BNJ441の重鎖可変(VH)領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、ならびに配列番号8に示す配列を有する抗体BNJ441の軽鎖可変(VL)領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号19、18および3に表記するCDR1、CDR2およびCDR3重鎖配列、ならびにそれぞれ配列番号4、5および6に表記するCDR1、CDR2およびCDR3軽鎖配列を含む。
【0016】
別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号12および配列番号8に表記されるアミノ酸配列を有するVHおよびVL領域を含む。
【0017】
別の実施形態では、抗体は、配列番号13に表記する重鎖定常領域を含む。
【0018】
別の実施形態では、抗体は、ヒト新生児Fc受容体(FcRn)に結合するバリアントヒトFc定常領域を含み、ここで、バリアントヒトFc CH3定常領域は、それぞれEUナンバリングでメチオニン428およびアスパラギン434に対応する残基にMet-429-LeuおよびAsn-435-Ser置換を含む。
【0019】
別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号19、18および3に表記するCDR1、CDR2およびCDR3重鎖配列、ならびにそれぞれ配列番号4、5および6に表記するCDR1、CDR2およびCDR3軽鎖配列、ならびにヒト新生児Fc受容体(FcRn)に結合するバリアントヒトFc定常領域を含み、ここで、バリアントヒトFc CH3定常領域は、それぞれEUナンバリングでメチオニン428およびアスパラギン434に対応する残基にMet-429-LeuおよびAsn-435-Ser置換を含む。
【0020】
別の例示的な抗C5抗体は、それぞれ配列番号20および11に示す配列を有する重鎖および軽鎖を含む抗体BNJ421(ALXN1211としても公知)、またはその抗原結合性断片およびバリアントである。別の実施形態では、抗体は、BNJ421の重鎖および軽鎖CDRまたは可変領域を含む。別の実施形態では、抗体は、配列番号12に表記される配列を有するBNJ421のVH領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、ならびに配列番号8に表記される配列を有するBNJ421のVL領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号19、18および3に表記される配列を有する重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、ならびにそれぞれ配列番号4、5および6に表記される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号12および配列番号8に表記されるアミノ酸配列を有するVHおよびVL領域を含む。
【0021】
別の実施形態では、抗体は、上述の抗体と同じ、C5におけるエピトープと結合に関して競合する、および/またはこのエピトープに結合する。別の実施形態では、抗体は、上述の抗体と少なくとも約90%可変領域アミノ酸配列同一性(例えば、配列番号12および配列番号8と少なくとも約90%、95%または99%可変領域同一性)を有する。
【0022】
したがって、一態様では、ヒトMPGN患者を処置する方法であって、有効量の抗C5抗体またはその抗原結合性断片を患者に投与するステップを含む方法が提供される。一実施形態では、患者は、生検により証明されたMPGN、1.73m当たり20ml/分を超えるクレアチニンクリアランス、および/または3.5gを超える24時間タンパク尿を有することが決定された成人患者である。別の実施形態では、患者は、生検により証明されたMPGN、1.73m当たり20ml/分を超えるクレアチニンクリアランス、および/または40mg/時間/mを超える(またはスポット尿試料において2mgタンパク質/mgクレアチニンを超える)24時間タンパク尿を有することが決定された小児患者である。さらなる実施形態では、患者(例えば、小児または成人患者)は、少なくとも2回の連続した評価における持続的に低いC3レベル、および/または少なくとも2回の以前の連続した評価における持続的に高いsC5b9レベル(>1000ng/ml)を有することも決定されている。
【0023】
一実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合性断片の用量は、一律に固定された用量である。例えば、抗C5抗体またはその抗原結合性断片は、300mg、600mg、900mgまたは1,200mgの固定用量で投与することができる。ある特定の実施形態では、投薬計画は、最適で所望の応答(例えば、有効な応答)をもたらすように調整される。
【0024】
一実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合性断片(例えば、エクリズマブ)は、(a)毎週900mgの用量で4週間、および(b)1,200mgの用量でその後14±2日間(例えば、約2週間)毎に1回、成人患者に投与される。別の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合性断片(例えば、エクリズマブ)は、(a)誘導相と、それに続く(b)維持相を含む投与サイクルに従って成人患者に投与され、(a)誘導相は、4週間の期間を含み、抗C5抗体またはその抗原結合性断片は、1週間に1回900mgの用量で投与され、(b)維持相の間、抗C5抗体またはその抗原結合性断片は、投与サイクルの第5の週に1200mgの用量で1回、続いてその後14±2日毎に1200mg投与される。
【0025】
別の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合性断片(例えば、エクリズマブ)は、投与サイクルに従って小児患者に投与され、投与サイクルは、(a)誘導相と、それに続く(b)維持相を含み、
(a)抗C5抗体またはその抗原結合性断片は、誘導相の間、次の用量:
1. 40kg以上の患者に対し、1週間に1回900mgを4週間;
2. 30kgから40kg未満の患者に対し、1週間に1回600mgを2週間;
3. 20kgから30kg未満の患者に対し、1週間に1回600mgを2週間;
4. 10kgから20kg未満の患者に対し、1週間に1回600mgを1週間;
5. 5kgから10kg未満の患者に対し、1週間に1回300mgを1週間
で投与され、
(b)抗C5抗体またはその抗原結合性断片は、維持相の間、次の用量:
1. 40kg以上の患者に対し、投与サイクルの第5の週に1200mg、続いてその後2週間毎に1200mg;
2. 30kgから40kg未満の患者に対し、投与サイクルの第3の週に900mg、続いてその後2週間毎に900mg;
3. 20kgから30kg未満の患者に対し、投与サイクルの第3の週に600mg、続いてその後2週間毎に600mg;
4. 10kgから20kg未満の患者に対し、投与サイクルの第2の週に300mg、続いてその後2週間毎に300mg;または
5. 5kgから10kg未満の患者に対し、投与サイクルの第2の週に300mg、続いてその後3週間毎に300mg
で投与される。
【0026】
別の実施形態では、小児ヒトMPGN患者を処置する方法であって、それぞれ配列番号1、2および3に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3重鎖配列、ならびにそれぞれ配列番号4、5および6に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3軽鎖配列を含む抗C5抗体またはその抗原結合性断片を患者に投与するステップを含み、(a)誘導相と、それに続く(b)維持相を含む投与サイクルを含み、抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、次の用量:
a)40kg以上の患者に対し、誘導相の間1週間に1回900mgを4週間、維持相の間、投与サイクルの第5の週に1200mg、続いてその後、2週間毎に1200mg;b)30kgから40kg未満の患者に対し、誘導相の間1週間に1回600mgを2週間、維持相の間、投与サイクルの第3の週に900mg、続いてその後、2週間毎に900mg;
c)20kgから30kg未満の患者に対し、誘導相の間1週間に1回600mgを2週間、維持相の間、投与サイクルの第3の週に600mg、続いてその後、2週間毎に600mg;
d)10kgから20kg未満の患者に対し、誘導相の間1週間に1回600mgを1週間、維持相の間、投与サイクルの第2の週に300mg、続いてその後、2週間毎に300mg;
e)5kgから10kg未満の患者に対し、誘導相の間1週間に1回300mgを1週間、維持相の間、投与サイクルの第2の週に300mg、続いてその後、3週間毎に300mg
で投与される、方法が提供される。
【0027】
別の実施形態では、40kg以上の小児ヒトMPGN患者を処置する方法であって、それぞれ配列番号1、2および3に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3重鎖配列、ならびにそれぞれ配列番号4、5および6に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3軽鎖配列を含む抗C5抗体またはその抗原結合性断片を患者に投与するステップを含み、(a)誘導相と、それに続く(b)維持相を含む投与サイクルを含み、
(a)抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、1週間に1回900mgの用量で4週間、誘導相の間、投与され;
(b)抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、投与サイクルの第5の週に1200mg、続いてその後2週間毎に1200mgの用量で、維持相の間、投与される、方法が提供される。
【0028】
別の実施形態では、30kgから40kg未満の小児ヒトMPGN患者を処置する方法であって、それぞれ配列番号1、2および3に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3重鎖配列、ならびにそれぞれ配列番号4、5および6に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3軽鎖配列を含む抗C5抗体またはその抗原結合性断片を患者に投与するステップを含み、(a)誘導相と、それに続く(b)維持相を含む投与サイクルを含み、(a)抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、1週間に1回600mgの用量で2週間、誘導相の間、投与され;
(b)抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、投与サイクルの第3の週に900mg、続いてその後2週間毎に900mgの用量で、維持相の間、投与される、方法が提供される。
【0029】
別の実施形態では、20kgから30kg未満の小児ヒトMPGN患者を処置する方法であって、それぞれ配列番号1、2および3に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3重鎖配列、ならびにそれぞれ配列番号4、5および6に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3軽鎖配列を含む抗C5抗体またはその抗原結合性断片を患者に投与するステップを含み、(a)誘導相と、それに続く(b)維持相を含む投与サイクルを含み、(a)抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、1週間に1回600mgの用量で2週間、誘導相の間、投与され;
(b)抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、投与サイクルの第3の週に600mg、続いてその後2週間毎に600mgの用量で、維持相の間、投与される、方法が提供される。
【0030】
別の実施形態では、10kgから20kg未満の小児ヒトMPGN患者を処置する方法であって、それぞれ配列番号1、2および3に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3重鎖配列、ならびにそれぞれ配列番号4、5および6に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3軽鎖配列を含む抗C5抗体またはその抗原結合性断片を患者に投与するステップを含み、(a)誘導相と、それに続く(b)維持相を含む投与サイクルを含み、(a)抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、1週間に1回600mgの用量を1週間、誘導相の間、投与され;
(b)抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、投与サイクルの第2の週に300mg、続いてその後2週間毎に300mgの用量で、維持相の間、投与される、方法が提供される。
【0031】
別の実施形態では、5kgから10kg未満の小児ヒトMPGN患者を処置する方法であって、それぞれ配列番号1、2および3に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3重鎖配列、ならびにそれぞれ配列番号4、5および6に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3軽鎖配列を含む抗C5抗体またはその抗原結合性断片を患者に投与するステップを含み、(a)誘導相と、それに続く(b)維持相を含む投与サイクルを含み、
(a)抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、1週間に1回300mgの用量を1週間、誘導相の間、投与され;
(b)抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、投与サイクルの第2の週に300mg、続いてその後3週間毎に300mgの用量で、維持相の間、投与される、方法が提供される。
【0032】
別の実施形態では、成人ヒトMPGN患者を処置する方法であって、方法が、それぞれ配列番号1、2および3に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3重鎖配列、ならびにそれぞれ配列番号4、5および6に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3軽鎖配列を含む抗C5抗体またはその抗原結合性断片を患者に投与するステップを含み、
患者が、生検により証明されたMPGN、1.73m当たり20ml/分を超えるクレアチニンクリアランス、および/または成人における3.5gを超える24時間タンパク尿を有することが決定されており、
方法が、(a)誘導相と、それに続く(b)維持相を含む投与サイクルを含み、
(a)誘導相が、4週間の期間を含み、抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、1週間に1回900mgの用量で投与され;
(b)維持相の間、抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、投与サイクルの第5の週に1200mgの用量で1回、続いてその後14±2日毎に1200mg投与される、方法が提供される。
【0033】
別の実施形態では、小児ヒトMPGN患者を処置する方法であって、方法が、それぞれ配列番号1、2および3に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3重鎖配列、ならびにそれぞれ配列番号4、5および6に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3軽鎖配列を含む抗C5抗体またはその抗原結合性断片を患者に投与するステップを含み、
患者が、生検により証明されたMPGN、1.73m当たり20ml/分を超えるクレアチニンクリアランス、および/または子供における40mg/時間/mを超える(または子供スポット尿試料における2mgタンパク質/mgクレアチニンを超える)24時間タンパク尿を有することが決定されており、
方法が、(a)誘導相と、それに続く(b)維持相を含む投与サイクルを含み、
(a)抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、誘導相の間、次の用量:
1. 40kg以上の患者に対し、1週間に1回900mgを4週間;
2. 30kgから40kg未満の患者に対し、1週間に1回600mgを2週間;
3. 20kgから30kg未満の患者に対し、1週間に1回600mgを2週間;
4. 10kgから20kg未満の患者に対し、1週間に1回600mgを1週間;
5. 5kgから10kg未満の患者に対し、1週間に1回300mgを1週間
で投与され、
(b)抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、維持相の間、次の用量:
1. 40kg以上の患者に対し、投与サイクルの第5の週に1200mg、続いてその後2週間毎に1200mg;
2. 30kgから40kg未満の患者に対し、投与サイクルの第3の週に900mg、続いてその後2週間毎に900mg;
3. 20kgから30kg未満の患者に対し、投与サイクルの第3の週に600mg、続いてその後2週間毎に600mg;
4. 10kgから20kg未満の患者に対し、投与サイクルの第2の週に300mg、続いてその後2週間毎に300mg;または
5. 5kgから10kg未満の患者に対し、投与サイクルの第2の週に300mg、続いてその後3週間毎に300mg
で投与される、方法が提供される。
【0034】
別の実施形態では、2400mgまたは3000mgの抗C5抗体またはその抗原結合性断片(例えば、BNJ441)が、体重40kg以上60kg未満の患者に投与される。別の実施形態では、2700mgまたは3300mgの抗C5抗体またはその抗原結合性断片(例えば、BNJ441)が、体重60kg以上100kg未満の患者に投与される。別の実施形態では、3000mgまたは3600mgの抗C5抗体またはその抗原結合性断片(例えば、BNJ441)が、体重100kg以上の患者に投与される。
【0035】
別の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合性断片(例えば、BNJ441)は、1回または複数回の投与サイクルにわたって投与される。一実施形態では、投与サイクルは、26週間である。一実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合性断片(例えば、BNJ441)は、投与サイクルの1日目に1回、投与サイクルの15日目に1回、その後8週間毎に投与される。
【0036】
別の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合性断片(例えば、BNJ441)は、
(a)投与サイクルの1日目に1回、体重40kg以上60kg未満の患者に対し2400mg、体重60kg以上100kg未満の患者に対し2700mg、または体重100kg以上の患者に対し3000mgの用量で、
(b)投与サイクルの15日目に、およびその後8週間毎に、体重40kg以上60kg未満の患者に対し3000mg、体重60kg以上100kg未満の患者に対し3300mg、または体重100kg以上の患者に対し3600mgの用量で
投与される。
【0037】
別の実施形態では、成人ヒトMPGN患者を処置する方法であって、方法が、それぞれ配列番号19、18および3に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3重鎖配列、ならびにそれぞれ配列番号4、5および6に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3軽鎖配列を含む抗C5抗体またはその抗原結合性断片を患者に投与するステップを含み、
患者が、生検により証明されたMPGN、1.73m当たり20ml/分を超えるクレアチニンクリアランス、および/または3.5gを超える24時間タンパク尿を有することが決定されており、
方法が、投与サイクルを含み、抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、
(a)投与サイクルの1日目に1回、体重40kg以上60kg未満の患者に対し2400mg、体重60kg以上100kg未満の患者に対し2700mg、または体重100kg以上の患者に対し3000mgの用量で、
(b)投与サイクルの15日目に、およびその後8週間毎に、体重40kg以上60kg未満の患者に対し3000mg、体重60kg以上100kg未満の患者に対し3300mg、または体重100kg以上の患者に対し3600mgの用量で
投与される、方法が提供される。
【0038】
別の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合性断片は、少なくとも20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59または60週間投与される。別の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合性断片は、少なくとも1、2、3、4、5または6年間投与される。別の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合性断片は、慢性的にかつ継続的に投与される。
【0039】
抗C5抗体またはその抗原結合性断片は、いずれか適した手段によって患者に投与することができる。一実施形態では、抗体は、静脈内投与のために製剤化される。一実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合性断片は、25分間~45分間の期間にわたる静脈内注入によって成人ヒト患者に投与される。別の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合性断片は、2時間を超えない期間にわたる静脈内注入によって成人ヒト患者に投与される。別の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合性断片は、2時間を超えない期間にわたる静脈内注入によって、12歳から18歳未満の年齢の小児ヒト患者に投与される。別の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合性断片は、4時間を超えない期間にわたる静脈内注入によって、12歳未満の小児ヒト患者に投与される。
【0040】
加えて、患者は、抗C5抗体またはその抗原結合性断片の投与の前に、1種または複数種の適した治療剤を投与されてよい。例えば、一実施形態では、患者は、抗C5抗体またはその抗原結合性断片による処置の前に、抗髄膜炎菌(antimeningococcal)ワクチンを投与される。別の実施形態では、患者は、抗C5抗体またはその抗原結合性断片による処置の前に、1種または複数種の抗生物質を投与される。
【0041】
抗C5抗体またはその抗原結合性断片による処置に先立ち、患者は、「タンパク尿」(血液から尿へのタンパク質の漏出)、「血尿」(尿中の血液)、精神状態の変化(例えば、注意力減少または集中力減少)、濁った、暗色のもしくは泡立った尿、尿体積の減少、補体C3もしくはC4の血清レベル減少、sC5b9のレベル増加(例えば、1000mg/ml超)、および/または身体のいずれかの部分の腫脹が挙げられるがこれらに限定されない、1種または複数種の特定の特徴を示す場合がある。
【0042】
本明細書に提供される処置方法の有効性は、いずれか適した手段を使用して査定することができる。本明細書に開示されている方法に従って処置された患者は、好ましくは、MPGNの少なくとも1つの徴候における改善を経験する。例えば、処置は、タンパク尿および/または血尿の低下または休止、MPGNの完全または部分寛解、腫脹減少、腎臓機能および腎血行力学パラメータ改善、および/またはC3、C4および/またはsC5b9のベースラインレベルからなる群から選択される少なくとも1つの治療効果をもたらすことができる。
【0043】
別の実施形態では、処置は、ベースラインと比較して、4週目(1ヶ月)、8週目(2ヶ月)、12週目(3ヶ月)、16週目(4ヶ月)、20週目(5ヶ目)、24週目(6ヶ月)、28週目(7ヶ月)、32週目(8ヶ月)、36週目(9ヶ月)、40週目(10ヶ月)、44週目(11ヶ月)または48週目(12ヶ月)に24時間タンパク尿を低下させる。特定の実施形態では、処置は、ベースラインと比較して、24週目(6ヶ月)に24時間タンパク尿を低下させる。別の特定の実施形態では、処置は、ベースラインと比較して、48週目(12ヶ月)に24時間タンパク尿を低下させる。一実施形態では、処置は、処置なしと比較して、タンパク尿を約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%またはそれよりも多く低下させる。
【0044】
別の実施形態では、処置は、MPGNの完全または部分寛解をもたらす。別の実施形態では、処置は、尿中アルブミン/クレアチニン比、血清クレアチニン、クレアチニンクリアランス、血清総タンパク質、血清アルブミン、LDL、HDLコレステロールおよびトリグリセリドレベル、ヘマトクリット、および/またはヘモグロビン濃度の正常レベルへのシフトをもたらす。別の実施形態では、処置は、糸球体濾過速度(GFR)(例えば、イオヘキソール血漿クリアランス測定によって査定される)、アルブミン、IgG、ナトリウム、カリウム分画クリアランス、および腎抵抗指数(例えば、超音波評価によって査定される)からなる群から選択される1種または複数種の腎機能パラメータを改善する。
【0045】
本明細書に記載されている方法における使用に適合した治療有効量で、エクリズマブ、BNJ441またはBNJ421等の抗C5抗体またはその抗原結合性断片、および薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物を含むキットが、さらに提供される。
【0046】
一実施形態では、キットは、それぞれ配列番号1、2および3に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3重鎖配列、ならびに配列番号4、5および6に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3軽鎖配列を含む抗C5抗体またはその抗原結合性断片の用量;ならびに本明細書に記載されている方法のいずれかにおいて抗C5抗体またはその抗原結合性断片を使用するための指示を含む。
【0047】
別の実施形態では、キットは、それぞれ配列番号19、18および3に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3重鎖配列、ならびに配列番号4、5および6に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3軽鎖配列を含む抗C5抗体またはその抗原結合性断片の用量;ならびに本明細書に記載されている方法のいずれかにおいて抗C5抗体またはその抗原結合性断片を使用するための指示を含む。
【0048】
特定の臨床投薬計画に従った(すなわち、特定の投与量での、特異的な投与スケジュールに従った)投与のための、抗C5抗体またはその抗原結合性断片も提供される。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)を有する成人ヒト患者を処置する方法であって、前記方法が、それぞれ配列番号1、2および3に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3重鎖配列、ならびにそれぞれ配列番号4、5および6に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3軽鎖配列を含む抗C5抗体またはその抗原結合性断片を前記患者に投与するステップを含み、
前記患者が、生検により証明されたMPGN、1.73m当たり20ml/分を超えるクレアチニンクリアランス、および/または成人における3.5gを超える24時間タンパク尿を有することが決定されており、
前記方法が、(a)誘導相と、それに続く(b)維持相を含む投与サイクルを含み、
(a)前記誘導相が、4週間の期間を含み、前記抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、1週間に1回900mgの用量で投与され、
(b)前記維持相の間、前記抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、前記投与サイクルの第5の週に1200mgの用量で1回、続いてその後14±2日毎に1200mg投与される、方法。
(項目2)
前記患者が、少なくとも2回の連続した評価における持続的に低いC3レベル、および少なくとも2回の以前の連続した評価における持続的に高いsC5b9レベル(>1000ng/ml)を有することが決定されている、項目1に記載の方法。
(項目3)
膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)を有する小児ヒト患者を処置する方法であって、前記方法が、それぞれ配列番号1、2および3に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3重鎖配列、ならびにそれぞれ配列番号4、5および6に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3軽鎖配列を含む抗C5抗体またはその抗原結合性断片を前記患者に投与するステップを含み、
前記患者が、生検により証明されたMPGN、1.73m当たり20ml/分を超えるクレアチニンクリアランス、および/または40mg/時間/mを超える(またはスポット尿試料において2mgタンパク質/mgクレアチニンを超える)24時間タンパク尿を有することが決定されており、
前記方法が、(a)誘導相と、それに続く(b)維持相を含む投与サイクルを含み、
(a)前記抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、前記誘導相の間、次の用量:
1. 40kg以上の患者に対し、1週間に1回900mgを4週間;
2. 30kgから40kg未満の患者に対し、1週間に1回600mgを2週間;
3. 20kgから30kg未満の患者に対し、1週間に1回600mgを2週間;
4. 10kgから20kg未満の患者に対し、1週間に1回600mgを1週間;
5. 5kgから10kg未満の患者に対し、1週間に1回300mgを1週間
で投与され、
(b)前記抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、前記維持相の間、次の用量:
1. 40kg以上の患者に対し、前記投与サイクルの第5の週に1200mg、続いてその後2週間毎に1200mg;
2. 30kgから40kg未満の患者に対し、前記投与サイクルの第3の週に900mg、続いてその後2週間毎に900mg;
3. 20kgから30kg未満の患者に対し、前記投与サイクルの第3の週に600mg、続いてその後2週間毎に600mg;
4. 10kgから20kg未満の患者に対し、前記投与サイクルの第2の週に300mg、続いてその後2週間毎に300mg;または
5. 5kgから10kg未満の患者に対し、前記投与サイクルの第2の週に300mg、続いてその後3週間毎に300mg
で投与される、方法。
(項目4)
前記患者が、少なくとも2回の連続した評価における持続的に低いC3レベル、および少なくとも2回の以前の連続した評価における持続的に高いsC5b9レベル(>1000ng/ml)を有することが決定されている、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号7に示される重鎖可変領域、および配列番号8に示される軽鎖可変領域を含む、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目6)
前記抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号9に示される重鎖定常領域をさらに含む、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目7)
前記抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む重鎖ポリペプチド、および配列番号11に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖ポリペプチドを含む、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目8)
前記抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、静脈内注入によって投与される、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目9)
前記抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、25分間~45分間の期間にわたる静脈内注入によって、成人ヒト患者に投与される、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目10)
前記抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、2時間を超えない期間にわたる静脈内注入によって、成人ヒト患者に投与される、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目11)
前記抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、2時間を超えない期間にわたる静脈内注入によって、12歳から18歳未満の年齢の小児ヒト患者に投与される、項目3に記載の方法。
(項目12)
前記抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、4時間を超えない期間にわたる静脈内注入によって、12歳未満の小児ヒト患者に投与される、項目3に記載の方法。
(項目13)
前記抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、次の用量:
a)40kg以上の患者に対し、前記誘導相の間1週間に1回900mgを4週間、前記維持相の間、前記投与サイクルの第5の週に1200mg、続いてその後、2週間毎に1200mg;
b)30kgから40kg未満の患者に対し、前記誘導相の間1週間に1回600mgを2週間、前記維持相の間、前記投与サイクルの第3の週に900mg、続いてその後、2週間毎に900mg;
c)20kgから30kg未満の患者に対し、前記誘導相の間1週間に1回600mgを2週間、前記維持相の間、前記投与サイクルの第3の週に600mg、続いてその後、2週間毎に600mg;
d)10kgから20kg未満の患者に対し、前記誘導相の間1週間に1回600mgを1週間、前記維持相の間、前記投与サイクルの第2の週に300mg、続いてその後、2週間毎に300mg;
e)5kgから10kg未満の患者に対し、前記誘導相の間1週間に1回300mgを1週間、前記維持相の間、前記投与サイクルの第2の週に300mg、続いてその後、3週間毎に300mg
で投与される、項目3に記載の方法。
(項目14)
前記抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、前記維持相後に毎月投与される、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目15)
前記処置が、ベースラインと比較して、24週目に24時間タンパク尿を低下させる、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目16)
前記処置が、ベースラインと比較して、48週目に24時間タンパク尿を低下させる、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目17)
前記処置が、MPGNの完全または部分寛解をもたらす、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目18)
前記処置が、尿中アルブミン/クレアチニン比、血清クレアチニン、クレアチニンクリアランス、血清総タンパク質、血清アルブミン、LDL、HDLコレステロールおよびトリグリセリドレベル、ヘマトクリット、および/またはヘモグロビン濃度の正常レベルへのシフトをもたらす、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目19)
前記処置が、糸球体濾過速度(GFR)(イオヘキソール血漿クリアランス測定によって査定される)、アルブミン、IgG、ナトリウム、カリウム分画クリアランス、および腎抵抗指数(超音波評価によって査定される)からなる群から選択される1種または複数種の腎機能パラメータを改善する、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目20)
前記MPGNが、免疫複合体媒介性MPGN(IC媒介性MPGN)である、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目21)
前記MPGNが、C3糸球体症である、項目1~19のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
前記C3糸球体症が、デンスデポジット病(DDD)またはC3糸球体腎炎である、項目21に記載の方法。
(項目23)
ヒト患者におけるMPGNを処置するためのキットであって、それぞれ配列番号1、2および3に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3重鎖配列、ならびに配列番号4、5および6に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3軽鎖配列を含む抗C5抗体またはその抗原結合性断片の用量;ならびに先行する項目のいずれか一項に記載の方法において前記抗C5抗体またはその抗原結合性断片を使用するための指示を含むキット。
(項目24)
膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)を有する成人ヒト患者を処置する方法であって、前記方法が、それぞれ配列番号19、18および3に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3重鎖配列、ならびにそれぞれ配列番号4、5および6に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3軽鎖配列を含む抗C5抗体またはその抗原結合性断片を前記患者に投与するステップを含み、
前記患者が、生検により証明されたMPGN、1.73m当たり20ml/分を超えるクレアチニンクリアランス、および/または3.5gを超える24時間タンパク尿を有することが決定されており、
前記方法が、投与サイクルを含み、前記抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、
(a)前記投与サイクルの1日目に1回、体重40kg以上60kg未満の患者に対し2400mg、体重60kg以上100kg未満の患者に対し2700mg、または体重100kg以上の患者に対し3000mgの用量で、
(b)前記投与サイクルの15日目に、およびその後8週間毎に、体重40kg以上60kg未満の患者に対し3000mg、体重60kg以上100kg未満の患者に対し3300mg、または体重100kg以上の患者に対し3600mgの用量で、
投与される、方法。
(項目25)
前記患者が、少なくとも2回の連続した評価における持続的に低いC3レベル、および少なくとも2回の以前の連続した評価における持続的に高いsC5b9レベル(>1000ng/ml)を有することが決定されている、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、体重40kg以上60kg未満の患者に
(a)前記投与サイクルの1日目に1回、2400mgの用量で、
(b)前記投与サイクルの15日目に、およびその後8週間毎に、3000mgの用量で、
投与される、項目24または25に記載の方法。
(項目27)
前記抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、体重60kg以上100kg未満の患者に
(a)前記投与サイクルの1日目に1回、2700mgの用量で、
(b)前記投与サイクルの15日目に、およびその後8週間毎に、3300mgの用量で、
投与される、項目24または25に記載の方法。
(項目28)
前記抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、体重100kg以上の患者に
(a)前記投与サイクルの1日目に1回、3000mgの用量で、
(b)前記投与サイクルの15日目に、およびその後8週間毎に、3600mgの用量で、
投与される、項目24または25に記載の方法。
(項目29)
前記抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、ヒト新生児Fc受容体(FcRn)に結合するバリアントヒトFc定常領域を含み、前記バリアントヒトFc CH3定常領域が、それぞれEUナンバリングで、メチオニン428およびアスパラギン434に対応する残基においてMet-429-LeuおよびAsn-435-Ser置換を含む、項目24~28のいずれかに記載の方法。
(項目30)
前記抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号12に示される重鎖可変領域、および配列番号8に示される軽鎖可変領域を含む、項目24~28のいずれかに記載の方法。
(項目31)
前記抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号13に示される重鎖定常領域をさらに含む、項目24~28のいずれかに記載の方法。
(項目32)
前記抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号9に示される重鎖定常領域をさらに含む、項目24~28のいずれかに記載の方法。
(項目33)
前記抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号14に示されるアミノ酸配列を含む重鎖ポリペプチド、および配列番号11に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖ポリペプチドを含む、項目24~28のいずれかに記載の方法。
(項目34)
前記抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号20に示されるアミノ酸配列を含む重鎖ポリペプチド、および配列番号11に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖ポリペプチドを含む、項目24~28のいずれかに記載の方法。
(項目35)
前記抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、静脈内注入によって投与される、項目24~34のいずれかに記載の方法。
(項目36)
前記抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、25分間~45分間の期間にわたる静脈内注入によって、成人ヒト患者に投与される、項目24~35のいずれかに記載の方法。
(項目37)
前記抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、2時間を超えない期間にわたる静脈内注入によって、成人ヒト患者に投与される、項目24~36のいずれかに記載の方法。
(項目38)
前記抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、前記維持相後に毎月投与される、項目24~37のいずれかに記載の方法。
(項目39)
前記処置が、ベースラインと比較して、24週目に24時間タンパク尿を低下させる、項目24~38のいずれかに記載の方法。
(項目40)
前記処置が、ベースラインと比較して、48週目に24時間タンパク尿を低下させる、項目24~39のいずれかに記載の方法。
(項目41)
前記処置が、MPGNの完全または部分寛解をもたらす、項目24~40のいずれかに記載の方法。
(項目42)
前記処置が、尿中アルブミン/クレアチニン比、血清クレアチニン、クレアチニンクリアランス、血清総タンパク質、血清アルブミン、LDL、HDLコレステロールおよびトリグリセリドレベル、ヘマトクリット、および/またはヘモグロビン濃度の正常レベルへのシフトをもたらす、項目24~41のいずれかに記載の方法。
(項目43)
前記処置が、糸球体濾過速度(GFR)(イオヘキソール血漿クリアランス測定によって査定される)、アルブミン、IgG、ナトリウム、カリウム分画クリアランス、および腎抵抗指数(超音波評価によって査定される)からなる群から選択される1種または複数種の腎機能パラメータを改善する、項目24~42のいずれかに記載の方法。
(項目44)
前記MPGNが、免疫複合体媒介性MPGN”(IC媒介性MPGN)である、項目24~43のいずれかに記載の方法。
(項目45)
前記MPGNが、C3糸球体症である、項目24~43のいずれかに記載の方法。
(項目46)
前記C3糸球体症が、デンスデポジット病(DDD)またはC3糸球体腎炎である、項目45に記載の方法。
(項目47)
ヒト患者におけるMPGNを処置するためのキットであって、それぞれ配列番号19、18および3に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3重鎖配列、ならびに配列番号4、5および6に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3軽鎖配列を含む抗C5抗体またはその抗原結合性断片の用量;ならびに項目25~46のいずれか一項に記載の方法において前記抗C5抗体またはその抗原結合性断片を使用するための指示を含むキット。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1図1は、試験訪問スケジュールを示すフローチャートである。
【0050】
図2図2は、患者登録を示すフローチャートである。
【0051】
図3A-3B】図3Aおよび図3Bは、処置(1年間)、回復(3ヶ月間)および延長相(1年間)の経過にわたる、sC5b9レベル(図3A)および24時間尿タンパク質排泄量(図3B)を示す。
【0052】
図4A-4B】図4Aおよび図4Bは、処置(1年間)、回復(3ヶ月間)および延長相(1年間)の経過にわたる、血清24時間尿アルブミン排泄レベル(図4A)および糸球体濾過速度(図4B)を示す。
【0053】
図5A-5B】図5Aおよび図5Bは、明らかな「非応答者」に関する、処置(1年間)、回復(3ヶ月間)および延長相(1年間)の経過にわたる、sC5b9レベル(図5A)および24時間尿タンパク質排泄量(図5B)を示す。
【0054】
図6A-6B】図6Aおよび図6Bは、明らかな「非応答者」に関する、処置(1年間)、回復(3ヶ月間)および延長相(1年間)の経過にわたる、血清24時間尿アルブミン排泄レベル(図6A)および糸球体濾過速度(図6B)を示す。
【0055】
図7図7は、ベースラインと比較した、エクリズマブによる2回の処置期間(0週目a~48週目aおよび0週目b~48週目b)およびウォッシュアウト期間(48週目a~0週目b)の間の臨床パラメータおよび検査室パラメータの変化を表記する。
【0056】
図8A-8D】図8A図8Dは、ベースライン(図8Aおよび図8B)および2年間(図8Cおよび図8D)における、明らかな「非応答者」の組織学を示す。
【0057】
図9図9は、エクリズマブ処置患者に関する、処置(1年間)、回復(3ヶ月間)および延長相(1年間)の経過にわたる、推定糸球体濾過速度(eGFR)および測定糸球体濾過速度(mGFR)を示す。
【0058】
図10A-10D】図10A図10Dは、IC-MPGNと診断された2名の患者由来の、代表的な処置前および後の腎生検所見である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
詳細な説明
I.定義
本明細書で使用される場合、用語「対象」または「患者」は、ヒト患者(例えば、膜性増殖性糸球体腎炎を有する小児または成人患者)である。
【0060】
本明細書で使用される場合、用語「糸球体腎炎」は、糸球体(血液からの老廃物および流体の濾過を助けて尿を生成する、腎臓の構造)の炎症を指す。
【0061】
本明細書で使用される場合、「膜性増殖性糸球体腎炎」(「MPGN」、「メサンギウム毛細管性糸球体腎炎(mesangiocapillary glomerulonephritis)」または「MCGN
」としても公知)は、異常免疫応答に起因する糸球体腎炎の一形態である。抗体の沈着物は、糸球体基底膜(これは、血液からの老廃物および余分な流体の濾過を助ける)と呼ばれる腎臓の一部に集積する。この膜に対する損傷は、正常に尿を作る腎臓の能力に影響を与える。このような損傷は、血液およびタンパク質を、尿中に漏出させる場合がある。十分なタンパク質が、尿中に漏出する場合、流体は、血管から体組織へと漏出し、浮腫(例えば、腫脹)を生じ得る。窒素老廃産物が、血液中に集積する場合もある(「高窒素血症」としても公知)。症状として、「タンパク尿」(血液から尿へのタンパク質の漏出)、「血尿」(尿中の血液)、精神状態の変化(例えば、注意力減少または集中力減少)、濁った、暗色のもしくは泡立った尿、尿体積の減少、補体C3もしくはC4の血清レベル減少、sC5b9のレベル増加(例えば、>1000mg/ml)、および/または身体のいずれかの部分の腫脹が挙げられるがこれらに限定されない。
【0062】
MPGNは、原発性、またはC型肝炎ウイルスおよび他の感染症、自己免疫性疾患、ならびに悪性病変に続発し得る、慢性タンパク尿腎症の稀な原因である(発生率は、年間百万人にほぼ5人である)(Marina Noris, et al., American Journal of Kidney
Diseases, Volume 66, Issue 2, August 2015, Pages 359-375を参照)。MPGNの開始は、幼児期から成人後期に発生し得る。臨床像は、多様であり、無症候性血尿およびタンパク尿から、急性腎炎症候群、ネフローゼ症候群、慢性腎臓疾患またはさらには、末期腎疾患をもたらす急速に進行する糸球体腎炎に及ぶ。
【0063】
MPGNは、糸球体毛細血管肥厚による(二重輪郭の形成による)メサンギウム細胞過形成およびマトリックス拡大、白血球およびメサンギウム細胞の介入、ならびに糸球体係蹄の小葉強調をもたらす新たなGBMの合成によって特徴付けされる(Marina Noris, et al., American Journal of Kidney Diseases, Volume 66, Issue 2, August 2015, Pages 359-375を参照)。このパターンの傷害は、糸球体メサンギウム中の
および糸球体管壁に沿った免疫複合体および/または補体因子の沈着に起因し、光学および免疫蛍光顕微鏡法によって容易に認識される。
【0064】
従来より、電子顕微鏡法による所見に基づいて、MPGNは、内皮下高電子密度沈着物を有するI型;膜内高度高電子密度沈着物を有するII型(「デンスデポジット病」または「DDD」とも呼ばれる);ならびに内皮下および上皮下沈着物の両方を有するIII型として分類されてきた。しかし、このようなカテゴリーは、その複雑さと、同じ生検試料中で2以上の型を示唆する特色の出現のため、限定的な予後値を有していた。
【0065】
免疫蛍光顕微鏡法によって解析される病態形成および糸球体沈着物組成に基づく新たな分類が提案された。実質的な免疫グロブリン沈着物に関連したMPGNは、「免疫複合体媒介性MPGN」(「IC媒介性MPGN」)と命名され、一般的に、慢性感染症または自己免疫性疾患に関連する(Marina Noris, et al., American Journal of Kidney Diseases, Volume 66, Issue 2, August 2015, Pages 359-375を参照)。こ
れらの続発性形態において、沈着物の慎重な特徴付けは、多くの場合、根底にある原因の同定を助けることができる。IgM、IgG、C3ならびにκおよびλ軽鎖の沈着物は典型的に、C型肝炎ウイルス感染症に関連するMPGNに見出される。複数の免疫グロブリンおよび補体タンパク質(IgG、IgM、IgA、C1q、C3ならびにκおよびλ軽鎖)は、自己免疫性疾患に関連するMPGNにも観察される。しかし、κおよびλ軽鎖制限による単型免疫グロブリンが、モノクローナルガンマグロブリン血症に関連するMPGNに観察される。免疫複合体媒介性MPGNは、古い方の分類に従ったMPGN IおよびIII型の大部分の症例を含むものと考察されており、電子顕微鏡法は典型的に、メサンギウム沈着物および内皮下沈着物、ならびに一部の症例では、膜内沈着物および上皮下沈着物を明らかにする。
【0066】
免疫グロブリンが存在しないまたは乏しい、明らかな糸球体C3染色を呈するMPGN症例は、「補体媒介性MPGN」と考察され、「C3糸球体症」(「C3G」としても公知)と称される。C3Gは、免疫複合体媒介性MPGNほど一般的でなく、住民百万名当たり約1~2症例の有病率を有し、電子顕微鏡法で糸球体に見られる沈着物の質に基づいてさらに分割される。DDDは、糸球体基底膜(GBM)内に典型的に見出される特徴的な高度高電子密度オスミウム酸親和性沈着物を有する症例において診断される。このような沈着物は、GBMの中心部分に沿って延在するが、内皮下および上皮下領域が関与する場合もある。球状沈着物は、メサンギウムに、また、DDD患者の約半数に現れ、ボーマン嚢および尿細管基底膜にも見られる。
【0067】
DDDの高電子密度沈着物を欠如するC3Gの症例は、「C3糸球体腎炎」と呼ばれる。C3糸球体腎炎において、沈着物は、内皮下ならびに場合により上皮下および膜内に局在化し、MPGN IおよびIII型に似ている可能性がある形態的特徴を有する。よって、DDDを除いて、電子顕微鏡法は、免疫複合体媒介性MPGNおよびC3Gの間を区別することができない。
【0068】
しかし、免疫グロブリンは、C3G患者の糸球体に存在する場合があるため、免疫蛍光顕微鏡法は、診断を必ずしも確認できるとは限らない。少量の免疫グロブリンは、タンパク尿糸球体疾患患者の硬化症の区域または有足細胞にトラップされるようになる可能性があり、DDD患者の約3分の1は、糸球体IgG染色を有する。よって、近年のコンセンサス報告によって提案されるC3Gのその後のより広い分類は、他のいずれかの免疫反応物よりも2またはそれよりも多い桁大きい免疫蛍光顕微鏡法でのC3の優勢な染色を有する全症例を含むことを示唆した(0~3のスケールを使用)。このより広い分類でも、DDD患者の相当な割合(20%)が、C3Gを有すると分類されないことになる。逆に、免疫蛍光顕微鏡法におけるC3の隔離された染色(isolated staining)が、感染後糸球体腎炎の症例において観察され得る。したがって、MPGN分類の問題は、未だ十分に解決されていない(Marina Noris, et al., American Journal of Kidney Diseases, Volume 66, Issue 2, August 2015, Pages 359-375を参照)。
【0069】
臨床像および経過の高い変動性は、臨床経過と比べた、疾患の病態形成、腎臓における組織学的病変、および診断のタイミング(これは腎臓生検に基づく)の差に起因する可能性がある。
【0070】
II.抗C5抗体
本明細書に記載されている抗C5抗体は、補体成分C5(例えば、ヒトC5)に結合し、C5から断片C5aおよびC5bへの切断を阻害する。本発明における使用に適した抗C5抗体(またはそれに由来するVH/VLドメイン)は、当該技術分野で周知の方法を使用して作製することができる。あるいは、当該技術分野で認識されている抗C5抗体を使用することができる。C5への結合に関してこれらの当該技術分野で認識されている抗体のいずれかと競合する抗体を使用することもできる。
【0071】
用語「抗体」は、少なくとも1個の抗体由来抗原結合部位(例えば、VH/VL領域またはFvまたはCDR)を含むポリペプチドについて記載する。抗体は、公知の形態の抗体を含む。例えば、抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体またはキメラ抗体であり得る。抗体は、Fab、Fab’2、ScFv、SMIP、Affibody(登録商標)、ナノボディまたはドメイン抗体でもあり得る。抗体は、次のアイソタイプのいずれかの抗体でもあり得る:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgAsec、IgDおよびIgE。抗体は、天然起源の抗体であっても、(例えば、変異、欠失、置換、非抗体部分へのコンジュゲーションによって)変更された抗体であってもよい。例えば、抗体は、抗体の特性(例えば、機能特性)を変化させる1個または複数個のバリアントアミノ酸(天然起源の抗体と比較して)を含むことができる。例えば、多数のかかる変更は、当該技術分野で公知であり、これらは、例えば、患者における半減期、エフェクター機能および/または抗体に対する免疫応答に影響を与える。用語、抗体は、少なくとも1個の抗体由来抗原結合部位を含む人工ポリペプチド構築物も含む。
【0072】
例示的な抗C5抗体は、それぞれ配列番号10および11に示す配列を有する重鎖および軽鎖を含むエクリズマブ、またはその抗原結合性断片およびバリアントである。エクリズマブ(Soliris(登録商標)としても公知)は、米国特許第6,355,245号に記載されており、その教示するところは、参照により本明細書に組み込まれている。エクリズマブは、終末補体阻害剤である、ヒト化モノクローナル抗体である。
【0073】
他の実施形態では、抗体は、エクリズマブの重鎖および軽鎖CDRまたは可変領域を含む。したがって、一実施形態では、抗体は、配列番号7に表記される配列を有するエクリズマブのVH領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、ならびに配列番号8に表記される配列を有するエクリズマブのVL領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号1、2および3に表記される配列を有する重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、ならびにそれぞれ配列番号4、5および6に表記される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号7および配列番号8に表記されるアミノ酸配列を有するVHおよびVL領域を含む。
【0074】
別の例示的な抗C5抗体は、それぞれ配列番号14および11に示す配列を有する重鎖および軽鎖を含む抗体BNJ441、またはそれらの抗原結合性断片およびバリアントである。BNJ441(ALXN1210としても公知)は、PCT/US2015/019225および米国特許第9,079,949号に記載されており、それらの教示(the teachings or which)は参照により本明細書に組み込まれている。BNJ441は、エクリズマブ(Soliris(登録商標))に構造的に関係するヒト化モノクローナル抗体である。BNJ441は、ヒト補体タンパク質C5に選択的に結合し、補体活性化の間のC5aおよびC5bへのその切断を阻害する。この阻害は、微生物のオプソニン化および免疫複合体のクリアランスに必須の補体活性化の近位または初期成分(例えば、C3およびC3b)を保存しつつ、炎症促進性メディエータC5aの放出および細胞溶解ポア形成膜攻撃複合体C5b-9の形成を防止する。
【0075】
他の実施形態では、抗体は、BNJ441の重鎖および軽鎖CDRまたは可変領域を含む。したがって、一実施形態では、抗体は、配列番号12に表記される配列を有するBNJ441のVH領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、ならびに配列番号8に表記される配列を有するBNJ441のVL領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号19、18および3に表記される配列を有する重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、ならびにそれぞれ配列番号4、5および6に表記される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号12および配列番号8に表記されるアミノ酸配列を有するVHおよびVL領域を含む。
【0076】
別の例示的な抗C5抗体は、それぞれ配列番号20および11に示す配列を有する重鎖および軽鎖を含む抗体BNJ421、またはその抗原結合性断片およびバリアントである。BNJ421(ALXN1211としても公知)は、PCT/US2015/019225および米国特許第9,079,949号に記載されており、それらの教示は参照により本明細書に組み込まれている。
【0077】
他の実施形態では、抗体は、BNJ421の重鎖および軽鎖CDRまたは可変領域を含む。したがって、一実施形態では、抗体は、配列番号12に表記される配列を有するBNJ421のVH領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、ならびに配列番号8に表記される配列を有するBNJ421のVL領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号19、18および3に表記される配列を有する重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、ならびにそれぞれ配列番号4、5および6に表記される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号12および配列番号8に表記されるアミノ酸配列を有するVHおよびVL領域を含む。
【0078】
CDRの正確な境界は、異なる方法に従って異なって定義された。一部の実施形態では、軽鎖または重鎖可変ドメイン内のCDRまたはフレームワーク領域の位置は、Kabatら[(1991年)「Sequences of Proteins of Immunological Interest.」NIH出版番号91-3242、米国保健社会福祉省(U.S. Department of Health and Human
Services)、Bethesda、MD]によって定義されたものであってよい。このような場合、CDRは、「Kabat CDR」(例えば、「Kabat LCDR2」または「Kabat HCDR1」)と称することができる。一部の実施形態では、軽鎖または重鎖可変領域のCDRの位置は、Chothiaら(1989年)Nature 342巻:877~883頁によって定義されたものであってよい。したがって、これらの領域は、「Chothia CDR」(例えば、「Chothia LCDR2」または「Chothia HCDR3」)と称することができる。一部の実施形態では、軽鎖および重鎖可変領域のCDRの位置は、Kabat-Chothiaの組み合わせた定義によって定義されたものであってよい。かかる実施形態では、これらの領域は、「組み合わせたKabat-Chothia CDR」と称することができる。Thomasら[(1996年)Mol Immunol 33巻(17/18号):1389~1401頁]は、KabatおよびChothia定義に従ったCDR境界の同定を例証する。
【0079】
抗体がタンパク質抗原に結合するかどうか、および/またはタンパク質抗原に対する抗体の親和性を決定するための方法は、当該技術分野で公知である。例えば、タンパク質抗原への抗体の結合は、ウエスタンブロット、ドットブロット、表面プラズモン共鳴(SPR)方法(例えば、BIAcoreシステム;Pharmacia Biosensor AB、Uppsala、SwedenおよびPiscataway、N.J.)または酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)等が挙げられるがこれらに限定されない、種々の技法を使用して検出および/または定量化することができる。例えば、Benny K.
C. Lo(2004年)「Antibody Engineering: Methods and Protocols」Humana Press(ISBN:1588290921);Johneら(1993年)J Immunol Meth 160巻:191~198頁;Jonssonら(1993年)Ann Biol Clin 51巻:19~26頁;およびJonssonら(1991年)Biotechniques 11巻:620~627頁を参照されたい。
【0080】
一実施形態では、抗体は、本明細書に記載されている抗体と同じ、C5におけるエピトープと結合に関して競合する、および/またはこのエピトープに結合する。2種またはそれよりも多い抗体に関する用語「同じエピトープに結合する」は、抗体が、所定の方法によって決定される通り、アミノ酸残基の同じセグメントに結合することを意味する。抗体が、本明細書に記載されている抗体と「同じ、C5におけるエピトープ」に結合するかどうかを決定するための技法は、例えば、エピトープの原子分解能をもたらす抗原:抗体複合体の結晶のx線解析等、エピトープマッピング方法および水素/重水素交換質量分析(HDX-MS)を含む。他の方法は、ペプチド抗原断片または抗原の変異した変種への抗体の結合をモニタリングし、この方法において、抗原配列内のアミノ酸残基の改変による結合の喪失は、多くの場合、エピトープ成分の指標と考慮される。加えて、エピトープマッピングのための計算的コンビナトリアル方法を使用することもできる。これらの方法は、コンビナトリアルファージディスプレイペプチドライブラリーから特異的な短いペプチドを親和性単離する、目的の抗体の能力に頼る。同じVHおよびVLまたは同じCDR1、2および3配列を有する抗体は、同じエピトープに結合すると予想される。
【0081】
「標的への結合に関して別の抗体と競合する」抗体は、該標的への他の抗体の結合を阻害する(部分的にまたは完全に)抗体を指す。2種の抗体が、標的への結合に関して互いに競合するかどうか、すなわち、一方の抗体が、標的への他方の抗体の結合を阻害するかどうかおよびどの程度まで阻害するかは、公知の競合実験を使用して決定することができる。ある特定の実施形態では、抗体は、別の抗体と競合し、標的への別の抗体の結合を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%阻害する。阻害または競合のレベルは、どちらの抗体が「遮断抗体」(すなわち、標的と最初にインキュベートされるコールドな(cold)抗体)であるかに応じて異なる場合がある。競合抗体は、同じエピトープ、重複するエピトープまたは隣接するエピトープに結合する(例えば、立体障害によって証明される通り)。
【0082】
本明細書に記載されている方法において使用される、本明細書に記載されている抗C5抗体またはその抗原結合性断片は、種々の当該技術分野で認識されている技法を使用して作製することができる。モノクローナル抗体は、当業者によく知られている様々な技法によって得ることができる。簡潔に説明すると、一般的に、所望の抗原で免疫した動物由来の脾臓細胞を骨髄腫細胞と融合することにより不死化する(Kohler & Milstein、Eur. J. Immunol.6巻:511~519頁(1976年)を参照)。不死化の代替方法は、エプスタイン・バーウイルス、癌遺伝子もしくはレトロウイルスによる形質転換、または当該技術分野で周知の他の方法を含む。単一の不死化細胞から生じるコロニーを、抗原に対する所望の特異性および親和性の抗体の産生に関してスクリーニングし、かかる細胞によって産生されるモノクローナル抗体の収量を、脊椎動物宿主の腹膜腔への注射を含む様々な技法によって増強することができる。あるいは、Huseら、Science 246巻:1275~1281頁(1989年)に概要が述べられている一般プロトコールに従ってヒトB細胞由来のDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、モノクローナル抗体またはその結合断片をコードするDNA配列を単離することができる。
【0083】
III.組成物
また、抗C5抗体またはその抗原結合性断片を含む組成物が本明細書に提供される。一実施形態では、組成物は、配列番号7に表記される配列を有するエクリズマブのVH領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、ならびに配列番号8に表記される配列を有するエクリズマブのVL領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む抗体を含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号1、2および3に表記される配列を有する重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、ならびにそれぞれ配列番号4、5および6に表記される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号7および配列番号8に表記されるアミノ酸配列を有するVHおよびVL領域を含む。
【0084】
別の実施形態では、抗体は、BNJ441の重鎖および軽鎖CDRまたは可変領域を含む。別の実施形態では、抗体は、配列番号12に表記される配列を有するBNJ441のVH領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、ならびに配列番号8に表記される配列を有するBNJ441のVL領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号19、18および3に表記される配列を有する重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、ならびにそれぞれ配列番号4、5および6に表記される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号12および配列番号8に表記されるアミノ酸配列を有するVHおよびVL領域を含む。
【0085】
別の実施形態では、抗体は、配列番号12に表記される配列を有するBNJ421のVH領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、ならびに配列番号8に表記される配列を有するBNJ421のVL領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号19、18および3に表記される配列を有する重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、ならびにそれぞれ配列番号4、5および6に表記される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号12および配列番号8に表記されるアミノ酸配列を有するVHおよびVL領域を含む。
【0086】
組成物は、例えば、補体関連の障害の処置または防止のための対象への投与のための、医薬品溶液として製剤化することができる。医薬組成物は一般に、薬学的に許容される担体を含むであろう。本明細書において使用する場合、「薬学的に許容される担体」は、生理的に適合性である、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤その他を指し、これらを含む。組成物は、薬学的に許容される塩、例えば、酸付加塩もしくは塩基付加塩、糖、炭水化物、ポリオールおよび/または浸透圧修飾因子を含むことができる。
【0087】
組成物は、標準方法に従って製剤化することができる。医薬品製剤は、十分に確立された技術であり、例えば、Gennaro(2000年)「Remington: The
Science and Practice of Pharmacy」、第20版、Lippincott, Williams & Wilkins(ISBN:0683306472);Anselら(1999年)「Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems」、第7版、Lippincott Williams & Wilkins Publishers(ISBN:0683305727);およびKibbe(2000年)「Handbook of Pharmaceutical Excipients American Pharmaceutical Association」、第3版(ISBN:091733096X)にさらに記載されている。一部の実施形態では、組成物は、例えば、適した濃度で、2~8℃(例えば、4℃)における貯蔵に適した緩衝溶液として製剤化することができる。一部の実施形態では、組成物は、0℃を下回る温度(例えば、-20℃または-80℃)における貯蔵のために製剤化することができる。一部の実施形態では、組成物は、2~8℃(例えば、4℃)における最大2年間(例えば、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、1年間、1年半または2年間)の貯蔵のために製剤化することができる。よって、一部の実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、少なくとも1年間、2~8℃(例えば、4℃)における貯蔵で安定している。
【0088】
医薬組成物は、種々の形態をとることができる。これらの形態は、例えば、液体の溶液(例えば、注射可能および注入可能(infusible)な溶液)、分散液(dispersion)または懸濁液、錠剤、丸剤、粉末、リポソームおよび坐剤等、液体、半固体および固体剤形を含む。好ましい形態は、一部には、意図される投与機序および治療適用に依存する。例えば、全身性または局所的送達を意図される組成物を含有する組成物は、注射可能または注入可能な溶液の形態をとることができる。したがって、組成物は、非経口的機序(例えば、静脈内、皮下、腹腔内または筋肉内注射)による投与のために製剤化することができる。「非経口的投与」、「非経口的に投与される」およびその他の文法上同等な語句は、本明細書において使用する場合、通常、注射による、経腸および外用投与以外の投与機序を指し、静脈内、鼻腔内、眼球内、肺、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、関節内、眼窩内、心臓内、真皮内、肺内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節腔内、嚢下、クモ膜下、脊髄内、硬膜外、脳内、頭蓋内、頸動脈内および胸骨内(intrasternal)注射および注入を限定することなく含む。
【0089】
IV.処置方法
ヒト患者(例えば、成人および小児ヒト患者)におけるMPGNを処置するための方法であって、特定の臨床投薬計画に従って(すなわち、特定の投与量で、特異的な投与スケジュールに従って)、患者に抗C5抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップを含む方法が、本明細書に提供される。一実施形態では、MPGNは、「免疫複合体媒介性MPGN」(IC媒介性MPGN)である。別の実施形態では、MPGNは、「補体媒介性MPGN」(例えば、「C3糸球体症」(「C3G」としても公知))である。一実施形態では、C3糸球体症は、デンスデポジット病(DDD)またはC3糸球体腎炎である。
【0090】
用語「処置する」、「処置すること」および「処置」は、本明細書で使用される場合、本明細書に記載されている治療方策を指す。処置方法は、MPGNの1つもしくは複数の症状を治癒し、それを遅延させ、その重症度を低下させる、もしくはそれを軽減するために、または斯かる処置の非存在下で予想される生存を越えて対象の生存を延長させるために、ヒトへの、本明細書に開示されている組合せの投与を用いる。
【0091】
本明細書において使用する場合、「有効な処置」は、有益な効果、例えば、疾患または障害の少なくとも1種の改善を生じる処置を指す。有益な効果は、ベースラインを上回る改善、すなわち、本方法に従った治療の開始前に為された測定または観察を上回る改善の形態をとることができる。有効な処置は、MPGNの少なくとも1種の症状(例えば、タンパク尿、血尿、精神状態の変化(例えば、注意力減少または集中力減少)、濁った、暗色のもしくは泡立った尿、尿体積の減少、補体C3もしくはC4の血清レベル減少、sC5b9のレベル増加、および/または身体のいずれかの部分の腫脹)の軽減を指すことができる。例えば、処置は、タンパク尿および/または血尿の低下または休止、MPGNの完全または部分寛解、腫脹減少、腎臓機能および腎血行力学パラメータ改善、および/またはC3、C4および/またはsC5b9のベースラインレベルからなる群から選択される少なくとも1つの治療効果をもたらすことができる。
【0092】
用語「有効量」は、所望の生物学的、治療的および/または予防的結果をもたらす薬剤の量を指す。この結果は、疾患の徴候、症状または原因のうち1種または複数の低下、改善、緩和、低減、遅延および/または軽減、あるいは生物システムの任意の他の所望の変更であり得る。一例では、「有効量」は、MPGNの少なくとも1種の症状を軽減することが臨床的に判明した、抗C5抗体またはその抗原結合性断片の量である。有効量は、1回または複数回で投与することができる。
【0093】
一実施形態では、患者は、生検により証明されたMPGN、1.73m当たり20ml/分を超えるクレアチニンクリアランス、および/または3.5gを超える24時間タンパク尿を有することが決定された成人患者である。別の実施形態では、患者は、生検により証明されたMPGN、1.73m当たり20ml/分を超えるクレアチニンクリアランス、および/または40mg/時間/mを超える(またはスポット尿試料において2mgタンパク質/mgクレアチニンを超える)24時間タンパク尿を有することが決定された小児患者である。さらなる実施形態では、患者(例えば、小児または成人患者)は、少なくとも2回の連続した評価における持続的に低いC3レベル、および/または少なくとも2回の以前の連続した評価における持続的に高いsC5b9レベル(>1000ng/ml)を有することも決定されている。
【0094】
抗C5抗体またはその抗原結合性断片による処置に先立ち、患者は、「タンパク尿」(血液から尿へのタンパク質の漏出)、「血尿」(尿中の血液)、精神状態の変化(例えば、注意力減少または集中力減少)、濁った、暗色のもしくは泡立った尿、尿体積の減少、補体C3もしくはC4の血清レベル減少、sC5b9のレベル増加(例えば、>1000mg/ml)、および/または身体のいずれかの部分の腫脹が挙げられるがこれらに限定されない、1種または複数種の特定の特徴を示すことができる。
【0095】
一態様では、ヒトMPGN患者を処置する方法であって、有効量の抗C5抗体またはその抗原結合性断片を患者に投与するステップを含む方法が提供される。一実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合性断片の用量は、一律に固定された用量である。例えば、抗C5抗体またはその抗原結合性断片は、300mg、600mg、900mgまたは1,200mgの固定用量で投与することができる。ある特定の実施形態では、投薬計画は、最適で所望の応答(例えば、有効な応答)をもたらすように調整される。
【0096】
一実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合性断片(例えば、エクリズマブ)は、(a)毎週900mgの用量で4週間、および(b)1,200mgの用量でその後14±2日間(例えば、約2週間)毎に1回、成人患者に投与される。別の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合性断片(例えば、エクリズマブ)は、(a)誘導相と、それに続く(b)維持相を含む投与サイクルに従って成人患者に投与され、(a)誘導相は、4週間の期間を含み、抗C5抗体またはその抗原結合性断片は、1週間に1回900mgの用量で投与され、(b)維持相の間、抗C5抗体またはその抗原結合性断片は、投与サイクルの第5の週に1200mgの用量で1回、続いてその後14±2日毎に1200mg投与される。
【0097】
別の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合性断片(例えば、エクリズマブ)は、投与サイクルに従って小児患者に投与され、投与サイクルは、(a)誘導相と、それに続く(b)維持相を含み、
(a)抗C5抗体またはその抗原結合性断片は、誘導相の間、次の用量:
1. 40kg以上の患者に対し、1週間に1回900mgを4週間;
2. 30kgから40kg未満の患者に対し、1週間に1回600mgを2週間;
3. 20kgから30kg未満の患者に対し、1週間に1回600mgを2週間;
4. 10kgから20kg未満の患者に対し、1週間に1回600mgを1週間;
5. 5kgから10kg未満の患者に対し、1週間に1回300mgを1週間
で投与され、
(b)抗C5抗体またはその抗原結合性断片は、維持相の間、次の用量:
1. 40kg以上の患者に対し、投与サイクルの第5の週に1200mg、続いてその後2週間毎に1200mg;
2. 30kgから40kg未満の患者に対し、投与サイクルの第3の週に900mg、続いてその後2週間毎に900mg;
3. 20kgから30kg未満の患者に対し、投与サイクルの第3の週に600mg、続いてその後2週間毎に600mg;
4. 10kgから20kg未満の患者に対し、投与サイクルの第2の週に300mg、続いてその後2週間毎に300mg;または
5. 5kgから10kg未満の患者に対し、投与サイクルの第2の週に300mg、続いてその後3週間毎に300mg
で投与される。
【0098】
別の実施形態では、小児ヒトMPGN患者を処置する方法であって、それぞれ配列番号1、2および3に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3重鎖配列、ならびにそれぞれ配列番号4、5および6に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3軽鎖配列を含む抗C5抗体またはその抗原結合性断片を患者に投与するステップを含み、(a)誘導相と、それに続く(b)維持相を含む投与サイクルを含み、抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、次の用量:
a)40kg以上の患者に対し、誘導相の間1週間に1回900mgを4週間、維持相の間、投与サイクルの第5の週に1200mg、続いてその後、2週間毎に1200mg;b)30kgから40kg未満の患者に対し、誘導相の間1週間に1回600mgを2週間、維持相の間、投与サイクルの第3の週に900mg、続いてその後、2週間毎に900mg;
c)20kgから30kg未満の患者に対し、誘導相の間1週間に1回600mgを2週間、維持相の間、投与サイクルの第3の週に600mg、続いてその後、2週間毎に600mg;
d)10kgから20kg未満の患者に対し、誘導相の間1週間に1回600mgを1週間、維持相の間、投与サイクルの第2の週に300mg、続いてその後、2週間毎に300mg;
e)5kgから10kg未満の患者に対し、誘導相の間1週間に1回300mgを1週間、維持相の間、投与サイクルの第2の週に300mg、続いてその後、3週間毎に300mg
で投与される、方法が提供される。
【0099】
別の実施形態では、40kg以上の小児ヒトMPGN患者を処置する方法であって、それぞれ配列番号1、2および3に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3重鎖配列、ならびにそれぞれ配列番号4、5および6に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3軽鎖配列を含む抗C5抗体またはその抗原結合性断片を患者に投与するステップを含み、(a)誘導相と、それに続く(b)維持相を含む投与サイクルを含み、
(a)抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、1週間に1回900mgの用量で4週間、誘導相の間、投与され;
(b)抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、投与サイクルの第5の週に1200mg、続いてその後2週間毎に1200mgの用量で、維持相の間、投与される、方法が提供される。
【0100】
別の実施形態では、30kgから40kg未満の小児ヒトMPGN患者を処置する方法であって、それぞれ配列番号1、2および3に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3重鎖配列、ならびにそれぞれ配列番号4、5および6に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3軽鎖配列を含む抗C5抗体またはその抗原結合性断片を患者に投与するステップを含み、(a)誘導相と、それに続く(b)維持相を含む投与サイクルを含み、(a)抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、1週間に1回600mgの用量で2週間、誘導相の間、投与され;
(b)抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、投与サイクルの第3の週に900mg、続いてその後2週間毎に900mgの用量で、維持相の間、投与される、方法が提供される。
【0101】
別の実施形態では、20kgから30kg未満の小児ヒトMPGN患者を処置する方法であって、それぞれ配列番号1、2および3に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3重鎖配列、ならびにそれぞれ配列番号4、5および6に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3軽鎖配列を含む抗C5抗体またはその抗原結合性断片を患者に投与するステップを含み、(a)誘導相と、それに続く(b)維持相を含む投与サイクルを含み、(a)抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、1週間に1回600mgの用量で2週間、誘導相の間、投与され;
(b)抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、投与サイクルの第3の週に600mg、続いてその後2週間毎に600mgの用量で、維持相の間、投与される、方法が提供される。
【0102】
別の実施形態では、10kgから20kg未満の小児ヒトMPGN患者を処置する方法であって、それぞれ配列番号1、2および3に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3重鎖配列、ならびにそれぞれ配列番号4、5および6に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3軽鎖配列を含む抗C5抗体またはその抗原結合性断片を患者に投与するステップを含み、(a)誘導相と、それに続く(b)維持相を含む投与サイクルを含み、(a)抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、1週間に1回600mgの用量を1週間、誘導相の間、投与され;
(b)抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、投与サイクルの第2の週に300mg、続いてその後2週間毎に300mgの用量で、維持相の間、投与される、方法が提供される。
【0103】
別の実施形態では、5kgから10kg未満の小児ヒトMPGN患者を処置する方法であって、それぞれ配列番号1、2および3に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3重鎖配列、ならびにそれぞれ配列番号4、5および6に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3軽鎖配列を含む抗C5抗体またはその抗原結合性断片を患者に投与するステップを含み、(a)誘導相と、それに続く(b)維持相を含む投与サイクルを含み、
(a)抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、1週間に1回300mgの用量を1週間、誘導相の間、投与され;
(b)抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、投与サイクルの第2の週に300mg、続いてその後3週間毎に300mgの用量で、維持相の間、投与される、方法が提供される。
【0104】
別の実施形態では、成人ヒトMPGN患者を処置する方法であって、方法が、それぞれ配列番号1、2および3に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3重鎖配列、ならびにそれぞれ配列番号4、5および6に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3軽鎖配列を含む抗C5抗体またはその抗原結合性断片を患者に投与するステップを含み、
患者が、生検により証明されたMPGN、1.73m当たり20ml/分を超えるクレアチニンクリアランス、および/または成人における3.5gを超える24時間タンパク尿を有することが決定されており、
方法が、(a)誘導相と、それに続く(b)維持相を含む投与サイクルを含み、
(a)誘導相が、4週間の期間を含み、抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、1週間に1回900mgの用量で投与され;
(b)維持相の間、抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、投与サイクルの第5の週に1200mgの用量で1回、続いてその後14±2日毎に1200mg投与される、方法が提供される。
【0105】
別の実施形態では、小児ヒトMPGN患者を処置する方法であって、方法が、それぞれ配列番号1、2および3に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3重鎖配列、ならびにそれぞれ配列番号4、5および6に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3軽鎖配列を含む抗C5抗体またはその抗原結合性断片を患者に投与するステップを含み、
患者が、生検により証明されたMPGN、1.73m当たり20ml/分を超えるクレアチニンクリアランス、および/または子供における40mg/時間/mを超える(または子供スポット尿試料における2mgタンパク質/mgクレアチニンを超える)24時間タンパク尿を有することが決定されており、
方法が、(a)誘導相と、それに続く(b)維持相を含む投与サイクルを含み、
(a)抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、誘導相の間、次の用量:
1. 40kg以上の患者に対し、1週間に1回900mgを4週間;
2. 30kgから40kg未満の患者に対し、1週間に1回600mgを2週間;
3. 20kgから30kg未満の患者に対し、1週間に1回600mgを2週間;
4. 10kgから20kg未満の患者に対し、1週間に1回600mgを1週間;
5. 5kgから10kg未満の患者に対し、1週間に1回300mgを1週間
で投与され、
(b)抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、維持相の間、次の用量:
1. 40kg以上の患者に対し、投与サイクルの第5の週に1200mg、続いてその後2週間毎に1200mg;
2. 30kgから40kg未満の患者に対し、投与サイクルの第3の週に900mg、続いてその後2週間毎に900mg;
3. 20kgから30kg未満の患者に対し、投与サイクルの第3の週に600mg、続いてその後2週間毎に600mg;
4. 10kgから20kg未満の患者に対し、投与サイクルの第2の週に300mg、続いてその後2週間毎に300mg;または
5. 5kgから10kg未満の患者に対し、投与サイクルの第2の週に300mg、続いてその後3週間毎に300mg
で投与される、方法が提供される。
【0106】
別の実施形態では、2400mgまたは3000mgの抗C5抗体またはその抗原結合性断片(例えば、BNJ441)が、体重40kg以上60kg未満の患者に投与される。別の実施形態では、2700mgまたは3300mgの抗C5抗体またはその抗原結合性断片(例えば、BNJ441)が、体重60kg以上100kg未満の患者に投与される。別の実施形態では、3000mgまたは3600mgの抗C5抗体またはその抗原結合性断片(例えば、BNJ441)が、体重100kg以上の患者に投与される。
【0107】
別の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合性断片(例えば、BNJ441)は、1回または複数回の投与サイクルにわたって投与される。一実施形態では、投与サイクルは、26週間である。一実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合性断片(例えば、BNJ441)は、投与サイクルの1日目に1回、投与サイクルの15日目に1回、その後8週間毎に投与される。
【0108】
別の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合性断片(例えば、BNJ441)は、
(a)投与サイクルの1日目に1回、体重40kg以上60kg未満の患者に対し2400mg、体重60kg以上100kg未満の患者に対し2700mg、または体重100kg以上の患者に対し3000mgの用量で、
(b)投与サイクルの15日目に、およびその後8週間毎に、体重40kg以上60kg未満の患者に対し3000mg、体重60kg以上100kg未満の患者に対し3300mg、または体重100kg以上の患者に対し3600mgの用量で
投与される。
【0109】
別の実施形態では、成人ヒトMPGN患者を処置する方法であって、方法が、それぞれ配列番号19、18および3に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3重鎖配列、ならびにそれぞれ配列番号4、5および6に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3軽鎖配列を含む抗C5抗体またはその抗原結合性断片を患者に投与するステップを含み、
患者が、生検により証明されたMPGN、1.73m当たり20ml/分を超えるクレアチニンクリアランス、および/または3.5gを超える24時間タンパク尿を有することが決定されており、
方法が、投与サイクルを含み、抗C5抗体またはその抗原結合性断片が、
(a)投与サイクルの1日目に1回、体重40kg以上60kg未満の患者に対し2400mg、体重60kg以上100kg未満の患者に対し2700mg、または体重100kg以上の患者に対し3000mgの用量で、
(b)投与サイクルの15日目に、およびその後8週間毎に、体重40kg以上60kg未満の患者に対し3000mg、体重60kg以上100kg未満の患者に対し3300mg、または体重100kg以上の患者に対し3600mgの用量で
投与される、方法が提供される。
【0110】
別の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合性断片は、少なくとも20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59または60週間投与される。別の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合性断片は、少なくとも1、2、3、4、5または6年間投与される。
【0111】
抗C5抗体またはその抗原結合性断片は、いずれか適した手段によって患者に投与することができる。一実施形態では、抗体は、静脈内投与のために製剤化される。一実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合性断片は、25分間~45分間の期間にわたる静脈内注入によって成人ヒト患者に投与される。別の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合性断片は、2時間を超えない期間にわたる静脈内注入によって成人ヒト患者に投与される。別の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合性断片は、2時間を超えない期間にわたる静脈内注入によって、12歳から18歳未満の年齢の小児ヒト患者に投与される。別の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合性断片は、4時間を超えない期間にわたる静脈内注入によって、12歳未満の小児ヒト患者に投与される。
【0112】
加えて、患者には、抗C5抗体またはその抗原結合性断片の投与に先立ち、1種または複数種の適した治療剤を投与することができる。例えば、一実施形態では、患者は、抗C5抗体またはその抗原結合性断片による処置に先立ち、抗髄膜炎菌(antimeningococcal
)ワクチンを投与される。別の実施形態では、患者は、抗C5抗体またはその抗原結合性断片による処置に先立ち、1種または複数種の抗生物質を投与される。
【0113】
V.アウトカム
ヒト患者におけるMPGNを処置するための方法であって、抗C5抗体またはその抗原結合性断片を患者に投与するステップを含む方法が、本明細書に提供される。MPGNの症状として、タンパク尿、血尿、精神状態の変化(例えば、注意力減少または集中力減少)、濁った、暗色のもしくは泡立った尿、尿体積の減少、補体C3もしくはC4の血清レベル減少、sC5b9のレベル増加(例えば、>1000mg/ml)、および/または身体のいずれかの部分の腫脹が挙げられるがこれらに限定されない。
【0114】
開示されている方法に従って処置される患者(例えば、成人患者)は、生検により証明されたMPGN、1.73m当たり20ml/分を超えるクレアチニンクリアランス、および/または3.5gを超える24時間タンパク尿を有することが決定されている。本明細書に開示されている方法に従って処置される小児患者は、生検により証明されたMPGN、1.73m当たり20ml/分を超えるクレアチニンクリアランス、および/または40mg/時間/mを超える(またはスポット尿試料において2mgタンパク質/mgクレアチニンを超える)24時間タンパク尿を有することが決定されている。一実施形態では、患者(例えば、小児または成人患者)は、少なくとも2回の連続した評価における持続的に低いC3レベル、および/または少なくとも2回の以前の連続した評価における持続的に高いsC5b9レベル(>1000ng/ml)を有することも決定されている。
【0115】
本明細書に開示されている方法に従って処置される患者は、好ましくは、MPGNの少なくとも1つの徴候における改善を経験する。例えば、処置は、タンパク尿および/または血尿の低下または休止、MPGNの完全または部分寛解、腫脹減少、腎臓機能および腎血行力学パラメータ改善、および/またはC3、C4および/またはsC5b9のベースラインレベルからなる群から選択される少なくとも1つの治療効果をもたらすことができる。
【0116】
一実施形態では、処置は、ベースラインと比較して、4週目(1ヶ月)、8週目(2ヶ月)、12週目(3ヶ月)、16週目(4ヶ月)、20週目(5ヶ月)、24週目(6ヶ月)、28週目(7ヶ月)、32週目(8ヶ月)、36週目(9ヶ月)、40週目(10ヶ月)、44週目(11ヶ月)または48週目(12ヶ月)に24時間タンパク尿を低下させる。特定の実施形態では、処置は、ベースラインと比較して、24週目(6ヶ月)に24時間タンパク尿を低下させる。別の特定の実施形態では、処置は、ベースラインと比較して、48週目(12ヶ月)に24時間タンパク尿を低下させる。別の実施形態では、処置は、処置なしと比較して、タンパク尿を約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%またはそれよりも多く低下させる。
【0117】
別の実施形態では、処置は、MPGNの完全または部分寛解をもたらす。別の実施形態では、処置は、尿中アルブミン/クレアチニン比、血清クレアチニン、クレアチニンクリアランス、血清総タンパク質、血清アルブミン、LDL、HDLコレステロールおよびトリグリセリドレベル、ヘマトクリット、および/またはヘモグロビン濃度の正常レベルへのシフトをもたらす。別の実施形態では、処置は、糸球体濾過速度(GFR)(例えば、イオヘキソール血漿クリアランス測定によって査定される)、アルブミン、IgG、ナトリウム、カリウム分画クリアランス、および腎抵抗指数(例えば、超音波評価によって査定される)からなる群から選択される1種または複数種の腎機能パラメータを改善する。
【0118】
VI.キットおよび単位剤形
先述の方法における使用に適応された治療有効量で、エクリズマブ等の抗C5抗体またはその抗原結合性断片と、薬学的に許容される担体とを含有する医薬組成物を含むキットも、本明細書に提供される。キットは、必要に応じて、例えば、投与スケジュールを含む指示を含むこともでき、この指示は、施術者(例えば、医師、看護師または患者)が、キットに含有される組成物を投与して、MPGNを有する患者に組成物を投与することを可能にする。キットは、シリンジを含むこともできる。
【0119】
必要に応じてで、キットは、上に提供する方法に従った単一投与のための、有効量の抗C5抗体またはその抗原結合性断片をそれぞれ含有する、単一用量医薬組成物の複数パッケージを含む。医薬組成物(複数可)の投与に必要な機器またはデバイスも、キットに含まれてよい。例えば、キットは、ある量の抗C5抗体またはその抗原結合性断片を含有する1個または複数の予め充填された(pre-filled)シリンジを提供することができる。
【0120】
一実施形態では、キットは、それぞれ配列番号1、2および3に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3重鎖配列、ならびに配列番号4、5および6に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3軽鎖配列を含む抗C5抗体またはその抗原結合性断片の用量;ならびに本明細書に記載されている方法のいずれかにおいて抗C5抗体またはその抗原結合性断片を使用するための指示を含む。
【0121】
別の実施形態では、キットは、それぞれ配列番号19、18および3に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3重鎖配列、ならびに配列番号4、5および6に表記されるCDR1、CDR2およびCDR3軽鎖配列を含む抗C5抗体またはその抗原結合性断片の用量;ならびに本明細書に記載されている方法のいずれかにおいて抗C5抗体またはその抗原結合性断片を使用するための指示を含む。
【0122】
本開示を読めば、当業者には多くの変種および均等物が明らかとなり、そのため、次の実施例は、単に説明を目的としており、決して本開示の範囲を限定するものと解釈するべきではない。
【0123】
本願を通して引用されているあらゆる参考文献、Genbankエントリ、特許および公開された特許出願の内容は、明示的に参照により本明細書に組み込まれている。
【実施例0124】
(実施例1)
「Eagle試験」
第II相治験(「Eagle試験」)を行って、PNH、生検により証明されたMPGNおよびネフローゼ症候群を有する患者におけるエクリズマブの有効性を探索する。
【0125】
1.目標
試験の一次目標は、エクリズマブ療法が、ベースラインに対して、6ヶ月(24週目)および12ヶ月(48週目)において、連続型パラメータとして考察される24時間タンパク尿を低下させることができるか評価することである。
【0126】
二次目標は、(1)エクリズマブ療法が、ネフローゼ症候群の持続的な、完全または部分のいずれかの寛解を達成することができるかどうか(それぞれ成人に関して0.3グラム未満もしくは3.5グラム未満への24時間尿タンパク質排泄量の低下と、ベースラインからの少なくとも50%低下、または子供に関して40mg/時間/m未満と、ベースラインからの少なくとも50%低下として定義される)、(2)完全または部分寛解の期間後の、成人に関して3.5グラムへの24時間尿タンパク質排泄量の増加、または子供に関して40mg/時間/m超として定義される、ネフローゼ症候群の再発におけるエクリズマブ療法の効果、(3)臨床(体重、収縮期および拡張期血圧)および検査室パラメータ(尿中アルブミン/クレアチニン比、血清クレアチニン、クレアチニンクリアランス、血清総タンパク質、血清アルブミン、LDL、HDLコレステロールおよびトリグリセリドレベル、ヘマトクリット、ならびにヘモグロビン濃度)におけるエクリズマブ療法の効果、(4)腎機能パラメータ(イオヘキソール血漿クリアランス測定による糸球体濾過速度(GFR)、アルブミン、IgG、ナトリウム、カリウム分画クリアランス、超音波評価による腎抵抗指数)におけるエクリズマブ療法の効果、(5)補体活性のマーカー(C3、C4、C3a、C5a、BbおよびsC5b9)におけるエクリズマブ療法の効果、(6)ネフローゼ症候群の完全または部分寛解の証拠を有する患者におけるタンパク尿の寛解に関連する免疫組織化学的(immunohystochemical)(C3、IgG、C4d
、C5b-9)、構造的および超微細構造的変化、(7)エクリズマブ処置の安全性プロファイル、(8)試験処置の費用対効果、ならびに(9)一次有効性変数における有意な処置効果の症例において検査されるべきバイオマーカーの評価(the evaluate biomarkers)の査定を含む。
【0127】
2.患者
組み入れ基準は次の通りである:
A.生検により証明された原発性MPGN;
B.1.73m当たりのクレアチニンクリアランス>20ml/分;
C.成人において3.5gを持続的に超える、または子供において40mg/時間/mを超える(または子供スポット尿試料における2mgタンパク質/mgクレアチニンを超える)、24時間タンパク尿;
D.少なくとも2回の連続した評価における持続的に低いC3レベル;
E.少なくとも2回の以前の連続した評価における持続的に高いsC5b9レベル(>1000ng/ml);および
G.書面によるインフォームドコンセント(未成年の場合は親または後見人による)。
【0128】
除外基準は次の通りである:
A.年齢75歳以上
B.続発性MPGN(感染症、血管炎を含む免疫学的疾患、全身性疾患および増殖性障害の証拠);
C.エクリズマブ療法の有益性がとてもありそうにないと考えられる重症慢性組織学的変化の、腎臓生検評価における証拠;
D.併用ステロイドまたは免疫抑制療法;
E.妊娠または授乳中;
F.妊娠可能性があり、有効な避妊をしていないこと;
G.試験参加の完了に影響を与え得る、および/または試験結果を混乱させ得る、いずれかの臨床的に関連する状態;
H.試験の潜在的なリスクおよび利益を理解できないこと;ならびに
I.法的無能力。
【0129】
3.試験設計
本試験は、パイロット病態生理学、前向き、逐次、非盲検試験である。原発性MPGNおよび持続的ネフローゼ範囲タンパク尿を有する10名の患者が本試験に登録される。これらの患者全員において、生化学的および遺伝的スクリーニング(補体調節タンパク質に対する抗体、補体および補体調節タンパク質における変異、ならびに対立遺伝子バリアントを含む)のための生体試料を採取した。
【0130】
腎生検、24時間尿採取、朝尿解析、ルーチン検査室検査(laboratory test)(補体活性のマーカー検査 - C3、C4、C3a、C5a、BbおよびsC5b9、腎機能プロファイル、タンパク質電気泳動、電解質、肝プロファイル、脂質プロファイル、炎症指数、ヘモクロム(hemocrome)および全血液細胞計数、血小板、フェリチン(ferritine)、CPK、LDH、グルコース)、糸球体濾過速度(GFR)ならびにIgG、アルブミンおよびナトリウム分画クリアランス、コントラスト増強剤による超音波評価のベースライン評価後に、患者は、エクリズマブの最初の静脈内注入を受ける。
【0131】
ベースライン評価は、24週目(腎生検を除外)および48週目に反復する。48週目に、ネフローゼ症候群の完全または部分寛解の証拠を有する患者のみにおいて腎生検を実行して、タンパク尿の寛解に関連する免疫組織化学的(C3、C4、IgG、C5b-9)、構造的および超微細構造的変化を評価する。誘導相(4週間)において、安全性パラメータおよび補体活性のマーカーを毎週測定する。維持相(44週間)において、安全性パラメータを毎月測定する。追加的な評価は、特に、安全性の理由のため、臨床上適切とみなされたときにいつでも認められる。追加的な血漿、血清および尿試料は、評価のため、基礎時点で、2、4、12、24、36および48週目に採取される。
【0132】
試験訪問スケジュールは、次の通りであり、図1に示される:
【0133】
訪問1(0週目)
-3日目:
ベースラインデータは、書面によるインフォームドコンセント、患者の人口統計データ、身長、生活習慣、配偶者区分、教育、職業上の地位、妊娠可能性、家族歴(familiar history)、以前の疾患および以前の処置、髄膜炎菌(Neisseria menin
gitidis)ワクチン接種証明書(最初のエクリズマブ注入の15日前に実行)およびインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)ワクチン接種証明書(子供のみ)を含む。
血液の臨床検査(laboratory examination)は、クレアチニン、尿素、ナトリウム、
カリウム、カルシウム、リン、GOT/AST、GPT/ALT、アルカリホスファターゼ、ガンマGT、尿酸、総コレステロール、HDL-コレステロール、LDL-コレステロール、CPK、グルコース、トリグリセリド、高感受性C反応性タンパク質、免疫グロブリン、総タンパク質、アルブミン、タンパク質電気泳動、赤血球、ヘマトクリット、ヘモグロビン、血小板、白血球、好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球および単球、フェリチン、LDH、PTおよびPTTの査定を含む。
補体活性は、C3、C4、C3a、C5a、BbおよびsC5b9レベルにより査定する。
ベータHcgに関する妊娠検査を行う。
完全尿解析ならびにクレアチニン、アルブミン、A/CおよびP/Cを含む検尿を実行する。具体的には、3回の24時間尿採取を実行して、ナトリウム、カリウム、クレアチニン、尿素、グルコース、リン、総タンパク質、アルブミン、クレアチニンクリアランス、A/C、P/C、アルブミン、IgG、ナトリウムおよびカリウム分画クリアランスを査定する。
12誘導ECGを安静時に実行する。
イオヘキソールクリアランスは、イオヘキソール血漿クリアランス(ml/分)によって査定する。
出血時間を生検評価のために査定する。
組み入れ/除外基準を査定する。
-2日目:
腎生検を実行して、免疫組織化学的(C3、IgG、C4d、C5b-9)、構造的および超微細構造的変化を査定する。
-1日目:
超音波評価を実行して、灌流および抵抗指数を評価する。
選択血液の臨床検査は、ヘモクロムおよび全血液細胞計数、クレアチニン、尿素、ナトリウム、カリウム、GOT/ASTおよびGPT/ALTの査定を含む。
0日目:
身体検査を実行し、体重/バイタルサインを評価する。
組み入れ/除外基準を査定する。
エクリズマブを投与する。
1日目:
血液の臨床検査は、ヘモクロムおよび全血液細胞計数、クレアチニン、尿素、ナトリウム、カリウム、GOT/ASTおよびGPT/ALTの査定を含む。
【0134】
訪問2(1週目)および訪問15(24週目)
身体検査を実行し、体重/バイタルサインを評価する。
血液の臨床検査は、クレアチニン、尿素、ナトリウム、カリウム、カルシウム、リン、GOT/AST、GPT/ALT、アルカリホスファターゼ、ガンマGT、尿酸、総コレステロール、HDL-コレステロール、LDL-コレステロール、CPK、グルコース、トリグリセリド、高感受性C反応性タンパク質、免疫グロブリン、総タンパク質、アルブミン、タンパク質電気泳動、赤血球、ヘマトクリット、ヘモグロビン、血小板、白血球、好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球および単球、フェリチン、LDH、シスタチンCの査定を含む。
補体活性は、C3、C4、C3a、C5a、BbおよびsC5b9レベルによって査定する。
血漿および尿バイオマーカーを、訪問15において査定する。
超音波評価を実行して、灌流および抵抗指数を評価する。
完全尿解析、ならびにクレアチニン、アルブミン、A/CおよびP/Cの査定を含む検尿を実行する。具体的には、3回の24時間尿採取を実行して、ナトリウム、カリウム、クレアチニン、尿素、グルコース、リン、総タンパク質、アルブミン、クレアチニンクリアランス、A/C、P/C、アルブミン、IgG、ナトリウムおよびカリウム分画クリアランスを評価する。
イオヘキソールクリアランスは、イオヘキソール血漿クリアランス(ml/分)によって査定する。
エクリズマブを投与する。
【0135】
訪問3(2週目)、訪問4(3週目)
身体検査を実行し、体重/バイタルサインを評価する。
血液の臨床検査は、ヘモクロムおよび全血液細胞計数、クレアチニン、尿素、ナトリウム、カリウム、GOT/ASTおよびGPT/ALTの査定を含む。
補体活性は、C3、C4、C3a、C5a、BbおよびsC5b9レベルによって査定する。
バイオマーカーを、訪問3において査定する。
完全尿解析、ならびにクレアチニン、アルブミン、A/CおよびP/Cの査定を含む検尿を実行する。
エクリズマブを投与する。
【0136】
訪問5(4週目)、訪問7(8週目)、訪問11(16週目)、訪問13(20週目)、訪問17(28週目)、訪問19(32週目)、訪問23(40週目)、訪問25(44週目)
身体検査を実行し、体重/バイタルサインを評価する。
血液の臨床検査は、クレアチニン、尿素、ナトリウム、カリウム、カルシウム、リン、GOT/AST、GPT/ALT、アルカリホスファターゼ、ガンマGT、尿酸、総コレステロール、HDL-コレステロール、LDL-コレステロール、CPK、グルコース、トリグリセリド、高感受性C反応性タンパク質、免疫グロブリン、総タンパク質、アルブミン、タンパク質電気泳動、赤血球、ヘマトクリット、ヘモグロビン、血小板、白血球、好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球および単球、フェリチンおよびLDHの査定を含む。
バイオマーカーを、訪問5において査定する。
検尿を実行し、これは、完全尿解析、ならびにクレアチニン、アルブミン、A/CおよびP/Cの査定を含む。
エクリズマブを投与する。
補体活性は、訪問5(4週目)についてのみ、C3、C4、C3a、C5a、BbおよびsC5b9レベルによって査定する。
【0137】
訪問6(6週目)、訪問8(10週目)、訪問10(14週目)、訪問12(18週目)、訪問14(22週目)、訪問16(26週目)、訪問18(30週目)、訪問20(34週目)、訪問22(38週目)、訪問24(42週目)、訪問26(46週目)
身体検査を実行し、体重/バイタルサインを評価する。
エクリズマブを投与する。
【0138】
訪問9(12週目)、訪問21(36週目)
身体検査を実行し、体重/バイタルサインを評価する。
血液の臨床検査は、クレアチニン、尿素、ナトリウム、カリウム、カルシウム、リン、GOT/AST、GPT/ALT、アルカリホスファターゼ、ガンマGT、尿酸、総コレステロール、HDL-コレステロール、LDL-コレステロール、CPK、グルコース、トリグリセリド、高感受性C反応性タンパク質、免疫グロブリン、総タンパク質、アルブミン、タンパク質電気泳動、赤血球、ヘマトクリット、ヘモグロビン、血小板、白血球、好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球および単球、フェリチンおよびLDHの査定を含む。
補体活性は、C3、C4、C3a、C5a、BbおよびsC5b9レベルによって査定する。
バイオマーカーを査定する。
検尿を実行し、これは、完全尿解析、ならびにクレアチニン、アルブミン、A/CおよびP/Cの査定を含む。具体的には、3回の24時間尿採取を実行して、ナトリウム、カリウム、クレアチニン、尿素、グルコース、リン、総タンパク質、アルブミン、クレアチニンクリアランス、A/CおよびP/Cを査定する。
エクリズマブを投与する。
【0139】
訪問27(48週目)
1日目:
身体検査を実行し、体重/バイタルサインを評価する。
血液の臨床検査は、クレアチニン、尿素、ナトリウム、カリウム、カルシウム、リン、GOT/AST、GPT/ALT、アルカリホスファターゼ、ガンマGT、尿酸、総コレステロール、HDL-コレステロール、LDL-コレステロール、CPK、グルコース、トリグリセリド、高感受性C反応性タンパク質、免疫グロブリン、総タンパク質、アルブミン、タンパク質電気泳動、赤血球、ヘマトクリット、ヘモグロビン、血小板、白血球、好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球および単球、フェリチン、LDH、PT、PTTおよびシスタチンCの査定を含む。
補体活性は、C3、C4、C3a、C5a、BbおよびsC5b9レベルによって査定する。
検尿を実行し、これは、クレアチニン、アルブミン、A/CおよびP/Cの査定を含む。具体的には、3回の24時間尿採取を実行して、ナトリウム、カリウム、クレアチニン、尿素、グルコース、リン、総タンパク質、アルブミン、クレアチニンクリアランス、A/C、P/C、アルブミン、IgG、ナトリウムおよびカリウム分画クリアランスを査定する。
イオヘキソールクリアランスは、イオヘキソール血漿クリアランス(ml/分)によって評価する。
出血時間を生検評価のために評価する。
2日目:
腎生検を実行して、免疫組織化学的(C3、IgG、C4d、C5b-9)、構造的および超微細構造的変化(ネフローゼ症候群の完全または部分寛解の証拠を有する患者においてのみ)を査定する。
超音波評価を実行して、灌流および抵抗指数を評価する。
最初の年の終わりに、患者を6ヶ月毎に経過観察する。検査は、次のものを含む:
- 身体検査/体重/バイタルサイン;
- 血液の臨床検査:クレアチニン、尿素、ナトリウム、カリウム、カルシウム、リン、GOT/AST、GPT/ALT、アルカリホスファターゼ、ガンマGT、尿酸、総コレステロール、HDL-コレステロール、LDL-コレステロール、CPK、グルコース、トリグリセリド、高感受性C反応性タンパク質、免疫グロブリン、総タンパク質、アルブミン、タンパク質電気泳動、赤血球、ヘマトクリット、ヘモグロビン、血小板、白血球、好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球および単球、フェリチン、LDH、PTおよびPTT;
- 補体活性の査定:C3、C4、C3a、C5a、BbおよびsC5b9レベル;
- 検尿:完全尿解析ならびにクレアチニン、アルブミン、A/CおよびP/C;
- 3回の24時間尿採取:ナトリウム、カリウム、クレアチニン、尿素、グルコース、リン、総タンパク質、アルブミン、クレアチニンクリアランス、A/C、P/C、アルブミン、IgG、ナトリウムおよびカリウム分画クリアランス;
- イオヘキソールクリアランス:イオヘキソール血漿クリアランス(ml/分);
- 超音波評価:灌流および抵抗指数の評価。
【0140】
4.アウトカム変数
一次有効性変数は、24時間タンパク尿の低下である。二次有効性変数は、(1)ネフローゼ症候群の完全または部分寛解および再発、(2)sC5b-9血漿レベルの(if)正常化(303ng/ml未満に低下)、(3)C3、C4、C3a、C5aおよびBbを含む補体系の他の成分の血漿レベルの正常化、(4)測定および推定糸球体濾過速度(GFR);アルブミン、IgG、ナトリウムおよびカリウム分画クリアランス;腎抵抗指数を含む腎臓機能/灌流パラメータの軽減、(5)ネフローゼ症候群の完全または部分寛解を達成する患者における腎免疫組織化学的(C3、C5b-9、IgG、IgA、IgM、C4d、C1q、カッパー軽鎖、ラムダ軽鎖、CD21、C5aR)、構造的および超微細構造的変化の軽減、ならびに(6)血清アルブミン、脂質ならびに他の臨床パラメータおよび検査室パラメータの変化を含む。
【0141】
安全性アウトカムは、エクリズマブ注入の間の急性反応、感染性エピソード(髄膜脳炎を含む)を含む、重篤および非重篤有害事象を含む。
アウトカムデータおよび処置費用を費用対効果解析に使用する。
【0142】
5.方法
血漿におけるsC5b-9の決定
血液をEDTAに採取し、2000×gで20分間、4℃にて遠心分離する。血漿は、-20℃(サンプリング後6ヶ月まで)または-80℃で貯蔵する。sC5b-9レベルは、Quidelから市販されている酵素結合イムノアッセイ(MicroVue SC5b-9 Plus)によって査定する。
【0143】
IgG、C3およびC5b9の免疫蛍光染色
凍結切片は、アセトン中で10分間、4℃にて固定する。非特異的結合の部位は、PBS1×/BSA3%でブロッキングする。次に、切片を次の特異的抗体と共にインキュベートする:フルオレセインイソチオシアネート(FITC)コンジュゲートウサギ抗ヒトC3(1:25、Dako)、FITCコンジュゲートウサギ抗ヒトIgG(1:25、Dako)およびウサギ抗ヒトC5b9(1:200、Calbiochem)。C5b9染色に関して、切片は、Cy3コンジュゲート二次抗体ヤギ抗ウサギIgG(1:100、Jackson ImmunoResearch Laboratories)と共にインキュベートする。陰性対照は、一次抗体を省略することにより得られる。
【0144】
2名の盲検の研究者によって評価を行う。切片毎に少なくとも10個の糸球体を解析し、シグナル強度を0~3のスケールでグレード分けする(0=染色なし;1=弱い染色;2=中等度の強度の染色;3=強い染色)。
【0145】
C4dの免疫ペルオキシダーゼ染色
デュボスク・ブラジル(Dubosq-Brazil)固定され、パラフィン包埋された切片は、ク
エン酸緩衝液(10mMクエン酸、pH6)およびプロテイナーゼK(10分間、37℃で20μg/ml)で抗原回復のために処置する。非特異的結合の部位は、PBS1×/BSA1%/5%ヤギ血清でブロッキングする。次に、切片を、一次抗体(C4d、1:50、Pantec-Biomedica)と、ビオチン化二次抗体ヤギ抗ウサギIgG(1:150、Vector Laboratories)と共にインキュベートする。3,3’-ジアミノベンジジン(DAB、Vector Laboratories)によりシグナルを発生させ、切片をヘマトキシリン・エオシンで対比染色する。陰性対照は、一次抗体を省略することにより得られる。
【0146】
切片毎に少なくとも10~20個の重複しない視野を、2名の盲検の研究者によって検査し、シグナル強度を0~3のスケールでグレード分けする(0=染色なし;1=弱い染色;2=中等度の強度の染色;3=強い染色)。
【0147】
糸球体濾過速度
GFRは、イオヘキソール血漿クリアランス技法を使用して、中心的に決定する。腎機能評価の朝に、5mlのイオヘキソール溶液(Omnipaque 300、GE Healthcare、Milan、Italy)を2分間にわたって静脈内注射する。異なる時点で複数の血液試料を採取し、血液イオヘキソール血漿レベルを高速液体クロマトグラフィーによって測定する。イオヘキソールのクリアランスを、1コンパートメントモデル(CL1)に従い、次式によって計算する:CL1=用量/AUC(式中、AUCは、血漿濃度-時間曲線下面積である)16。次に、式CL=(0.9907786CL11)-(0.0012186CL12)を使用することにより、血漿クリアランスを補正し、GFR値を体表面積(BSA)1.73mに対して正規化する。ほぼ末期の腎臓不全、正常GFRまたはさらには過剰濾過を有する対象における反復測定において観察される低い平均個体内(intra-individual)変動係数(5.59%)および優れた再現性指数(6.28%)によって考証される通り、この手順は、広範囲の腎臓機能にわたって注目すべき精度を有する。
【0148】
6.治験薬(IMP)
IMPの名称は、Soliris(登録商標)300mg輸注用濃縮物である。Soliris(登録商標)(エクリズマブ)は、組換えDNA技術によってNS0細胞系において産生されたヒト化モノクローナル(IgG2/4)抗体である。1本の30mlバイアルは、300mgのエクリズマブを含有する(10mg/ml)。希釈後に、注入される溶液の最終濃度は、5mg/mlである。
【0149】
既知の効果を有する賦形剤:ナトリウム(バイアル当たり5mmol)。賦形剤は、リン酸ナトリウム(一塩基性)、リン酸ナトリウム(二塩基性)、塩化ナトリウム、ポリソルベート80および注射用水を含む。
【0150】
エクリズマブは、冷蔵庫(2℃~8℃)で貯蔵し、凍結しない。エクリズマブは、光から保護するために、原包装内で貯蔵する。原包装内のエクリズマブバイアルは、最長3日間の単一の期間のみ、冷蔵貯蔵から取り出すことができる。この期間の終わりに、製品は、冷蔵庫に戻される。希釈後に、治験薬を直ちに使用する。しかし、化学的および物理的安定性は、2℃~8℃で24時間実証されている。
【0151】
感染症のリスクを低下させるために、全患者に、エクリズマブを受ける少なくとも2週間前にワクチン接種する。髄膜炎菌ワクチンを受けてから2週間未満の後にエクリズマブで処置される患者は、ワクチン接種2週間後まで、適切な予防的抗生物質による処置を受ける。ワクチン接種使用のための現在の医学ガイドラインに従って、患者にワクチン再接種する。血清型A、C、YおよびW135に対する四価ワクチン、好ましくは、コンジュゲートワクチンが、強く推奨される。ワクチン接種が禁忌となる患者は、全処置期間における適切な予防的抗生物質による処置を受ける。
【0152】
18歳未満の患者に、インフルエンザ菌および肺炎球菌感染症に対してワクチン接種し、年齢群毎に国のワクチン接種推奨を厳密に遵守する。
【0153】
エクリズマブは、医療従事者によって、および血液学的障害および/または腎障害を有する患者の管理の経験がある医師の監督下で投与される。最初の投与のため、集中治療医は、処置開始に付き添い、注入の持続時間全体にわたってオンコール待機する。他の全ての投与のため、集中治療医はオンコール待機する。
成人患者(18歳以上)のための投与レジメンは、表1に示す通り、4週間の初期相と、それに続く維持相からなる:
【0154】
【表1】
【0155】
小児患者(18歳未満)において、エクリズマブ投与レジメンは、表2に示す通りである:
【0156】
【表2】
【0157】
エクリズマブは、静脈内プッシュまたはボーラス注射として投与されない。エクリズマブは、後述する静脈内注入のみによって投与される。投与に先立ち、エクリズマブ溶液は、粒子状物質および変色に関して目視点検される。再構成および希釈は、特に、無菌状態の観点から、適正規範規則に従って実行される。エクリズマブの総量は、滅菌したシリンジを使用してバイアル(複数可)から引き出される。推奨される用量を輸液バッグに移す。希釈剤として塩化ナトリウム9mg/ml(0.9%)注射用溶液、塩化ナトリウム4.5mg/ml(0.45%)注射用溶液または5%デキストロース水を使用して、輸液バッグへの添加によって5mg/mlの最終濃度にエクリズマブを希釈する。5mg/ml希釈溶液の最終体積は、300mg用量では60ml、600mg用量では120ml、900mg用量では180ml、1200mg用量では240mlである。溶液は、清澄かつ無色である。希釈溶液を含有する輸液バッグを穏やかに撹拌して、製品と希釈剤の完璧な混合を確実にする。外界空気への曝露により、投与に先立ち希釈溶液を室温に温める。製品は、保存料を含有しないため、バイアルに残ったいかなる未使用部分も廃棄する。いかなる未使用の医薬品も廃棄材料も、地方自治体の要件に従って処分する。
【0158】
エクリズマブの希釈溶液は、重力送り、シリンジ型ポンプまたは注入ポンプによる25~45分間にわたる静脈内注入によって投与される。患者への投与の間に、光からエクリズマブの希釈溶液を保護する必要はない。患者は、注入後1時間モニターされる。有害事象が、エクリズマブの投与中に発生する場合、医師の裁量で注入を遅くするまたは停止する。注入を遅くする場合、総注入時間は、成人および青年期(12歳から18歳未満の年齢)では2時間を、12歳未満の年齢の子供では4時間を超えない。全患者は、最後のエクリズマブ投与から6ヶ月後まで、積極的経過観察において維持する。1年間の処置の後にネフローゼ症候群の完全または部分寛解の証拠を有する患者に関して、エクリズマブ療法を救済使用(compassionate use)として続ける。休薬の症例において(重篤感染症および白血球減少症等の副作用、患者の非遵守)、患者は、試験の初めから最大1年間、そのリファレンスセンターにおいて保存的治療および臨床モニタリングを続ける。
【0159】
ステロイドおよび免疫抑制(immunosoppressive)薬は、エクリズマブ投与の6ヶ月前
に中止する。
【0160】
試験薬物は、Alexion Pharmaceuticals,Inc.によって製造された。IMPのラベルの張り替え(re-label)は、認定企業(certified company)に委託される。ボトルは、「引きはがし(tear-off)」ラベルに張り替えられている。試験薬を投与する場合、治験責任医師は、各ボックスからラベルのそれぞれの部分を剥がし、与えられたスペースに適切な形で固定する。
【0161】
7.統計方法
後述する解析を詳述する統計解析計画(SAP)は、データベースロックに先立ち開発される。SAS(バージョン9.1)ソフトウェアもしくはより新しいものおよびStata(バージョン12)ソフトウェアもしくはより新しいもの、または他の検証されたソフトウェアを使用して、解析を遂行する。一次および二次エンドポイントに使用される方法を詳細に記載するSAPは、全統計解析の最終アービタ(arbiter)として機能する。
【0162】
試料サイズ推定
本試験は、探索目的による臨床パイロット試験であり、参加者の数は、考察されるアウトカム変数の予想される変化に基づき計算される試料サイズの代わりに、利用できる患者に基づく。
【0163】
統計解析
全ての連続的なアウトカム変数は、予め定義されたベースライン共変数を含む線形混合効果モデルによって評価される。上記のモデルは、変量効果(非構造化共分散マトリックスによる)を取り込んで、同じ患者における相関される観察を説明する。カプラン・マイヤー方法が生存データに使用される。生存時間は、第1の処置の初めから目的の事象まで決定される。多変数の文脈において、コックス回帰モデルが遂行される。タンパク尿、トリグリセリド、および持続的タンパク尿の持続時間が、歪曲分布を示すことが予想され、そこで、統計解析前に対数変換する。GFR低下の速度は、ベースラインを含む少なくとも3つのGFR値を使用することにより、単一の線形モデルによって評価される。経過観察におけるタンパク尿低下およびエクリズマブ投与後のGFR低下の間の相関は、スピアマンの順位相関検定を使用することにより評価される。ベースライン特徴のデータは、数およびパーセンテージ、平均およびSD、または中央値および四分位数間範囲(IQR)として適宜必要に応じて提示される。群の間の比較は、一元配置ANOVA、クラスカル・ワリス検定、カイ二乗検定または傾向のためのコクラン・アーミテッジ検定を適宜使用して為される。ボンフェローニ調整によって多重比較問題に取り組む。経過観察データは、中央値および範囲またはIQRとして表現される。連続変数の正規性は、Q-Qプロットによって査定される。全P値は両側性である。
【0164】
8.患者の脱退
(1)理由の説明なしに、患者自身の要求で、(2)治験責任医師の裁量で、または(3)試験薬の継続を除外する有害事象(介在性疾病を含む)が発生する場合、患者を脱退させる。
【0165】
脱退のための理由は、症例報告形式で、および患者の診療記録に記述される。実現可能なときにいつでも、早期に試験処置を停止する患者は、計画された観察期間の完了まで積極的経過観察が維持される。
【0166】
9.試験の早期中断
治験責任医師は、合理的な医学的なおよび/または管理上の理由から、いつでも試験を中断する権利を有する。中断の理由は、適切に記述され、情報は、地方自治体の要件(例えば、倫理委員会/当局)に従って発行される。
【0167】
10.有害事象
「有害事象」は、医薬製品を投与された患者または臨床研究患者における、いずれかの有害な医学的な出来事であり、これは、必ずしもこの処置と因果関係を有する必要はない。したがって、有害事象(AE)は、医薬品に関係すると考察されるか否かにかかわらず、医薬品の使用と時間的に関連する、いずれかの好ましくない意図しない徴候(例えば、異常な検査室所見を含む)、症状または疾患であってよい。
【0168】
「有害反応」は、投与されたいずれかの用量に関係するIMPに対するいずれかの有害な意図しない応答である。有害事象およびIMPの1種の間の因果関係が、少なくとも合理的な可能性である場合、医薬品に対する応答がもたらされる。
【0169】
「重篤有害事象」は、いずれかの用量で:
死をもたらす、直ちに生命を脅かす、入院患者の入院または既に入院している場合はその延長を要求する、持続的なまたは顕著な障害/機能不全をもたらす、先天性形成異常/出生時欠損、または他のいずれかの医学的に重要な状態である、
いずれかの有害な医学的な出来事である
【0170】
上述の定義を満たさない事象は、「重篤でない」と考察される。
【0171】
「疑われる予想外の重篤有害反応」(SAE)は、その性質または重症度が適用可能な製品情報と一致しない、反応である。
【0172】
(実施例2)
「Eagle試験」中間結果
第II相試験を行って、上の実施例1に記載のプロトコールに実質的に従って、PNH、生検により証明されたMPGNおよびネフローゼ症候群を有する患者におけるエクリズマブの有効性を探索した。
【0173】
1.データ
2015年6月24日までに、10名の組み入れ患者が、経過観察12週間の解析に利用できるフルセットのデータを有した(コホート1)。これらの10名の患者のうち8名は、24週間の解析に利用できるフルセットのデータも有した(コホート2)。ベースラインの患者特徴を表3に表記する。
【0174】
【表3】
【0175】
血清C5b9レベルの解析結果は、一次有効性変数(24時間尿タンパク質排泄量)、ならびに他の鍵となる有効性変数、例えば、血清24時間尿アルブミン排泄量、測定糸球体(glornerular)濾過速度(GER)、アルブミンおよびIgG分画クリアランス、血
清クレアチニン、アルブミン、総タンパク質、総、LDLおよびIIDLコレステロールならびにトリグリセリドレベルならびに収縮期(sytolic)および拡張期血圧に関するデ
ータと共に、最後の利用できる経過観察(それぞれ12および24週間)までの両方のコホートに関して報告されている。イオヘキソール血漿クリアランスは、報告されたアレルギー病歴のため、1名の患者では測定しなかった。別の患者において、データは、本報告の時点では未だ解析に利用できなかった。よって、アルブミンおよびIgG分画クリアランス等のGERおよびGER関連パラメータに関するデータは、コホート1の8名の患者およびコホート2の6名の患者に関して利用できた。
【0176】
考察される変数毎に、平均、標準偏差(SD)、平均値の標準誤差(SEM)、中央値、四分位数間範囲(IQR)、最小(Min)および最大(Max)として、組み入れ時(at inclusion)(ベースライン)および経過観察において利用できる各時点(ベース
ライン後の週数として表現)においてデータを報告した。患者内比較は、ベースラインに対して、各時点間であった。各比較の有意性のレベルは、各表の下部に報告する。統計の名目上の有意性(p≦0.05)を達成できなかったレベルは示していない。
【0177】
血清C5b9レベル
全患者において、血清C5b9レベルは、組み入れ時に正常範囲の上限を大きく超えており、全観察期間を通して正常化した。血清レベル減少は、全患者において1桁を超え、ベースラインと比較して、各時点において高度に有意であった(表4)。
【0178】
【表4-1】
【0179】
【表4-2】
【0180】
24時間尿タンパク質およびアルブミン排泄量
試験の一次有効性変数である24時間尿タンパク質排泄量、および尿アルブミン排泄量は、ベースラインと比較して、各考察される時点で両方のパラメータにおいて認識できる変化を示さなかった単一の患者を除いて、経過観察期間中に全患者において減少した。尿タンパク質排泄量は、両方のコホートにおいて各時点で有意に減少し、減少は、最後の利用できる経過観察まで経時的に進行性であった(表5)。尿アルブミン排泄量の減少も経時的に進行性であり、両方のコホートにおける1週目およびコホート2における24週目に名目上の有意性を達成した(表6)。両方のコホートにおいて12週目に名目上の有意性を達成できないことは、ベースラインに対する、観察される変化の大きい変動性によって主に説明された。
【0181】
【表5】
【0182】
【表6】
【0183】
糸球体濾過速度
GFRは、両方のコホートの全患者において進行性に増加した。増加は、両方のコホートにおいて処置後1週目に既に明らかであり、コホート2において24週目に名目上の有意性を達成した。コホート2において、GFR増加は、経時的に進行性であった(表7)。
【表7】
【0184】
アルブミンおよびIgG分画クリアランス
アルブミンおよびIgG分画クリアランスは、両方のコホートの全患者において改善された。両方のパラメータの減少は、両方のコホートにおいて1週目に、また、コホート2においては同様に24週目に有意であった。コホート2において、アルブミンおよびIgG分画クリアランスの低下は、経時的に進行性であった(表8および9)。
【0185】
【表8】
【0186】
【表9】
【0187】
血清クレアチニン
血清クレアチニンレベルは、両方のコホートにおいて全試験期間を通して感知できるほどには変化しなかった(表10)。
【0188】
【表10】
【0189】
血清アルブミンおよび総タンパク質
アルブミンおよび総タンパク質レベルは、1名の患者を除いて両方のコホートの全患者において増加した。増加は、両方のコホートにおいて両方の変数に関して経時的に進行性であった。両方のコホートにおいて、血清アルブミンおよび総タンパク質レベルの増加は、ベースラインと比較して、8週目に名目上の有意性を達成し、増加は、最後の利用できる経過観察まで、その後の訪問全てにおいて持続して有意であった(表11および12)。
【0190】
【表11】
【0191】
【表12】
【0192】
血清脂質
総およびLDLコレステロールは、全試験期間を通して両方のコホートにおいて進行性に減少した。総およびLDLコレステロールレベルの減少は、ベースラインと比較して、コホート1における8週目およびコホート2における12週目に、名目上の有意性を達成した。減少は、最後の利用できる経過観察まで、その後の訪問全てにおいて持続して有意であった(表13および14)。
【0193】
【表13】
【0194】
【表14】
【0195】
HDL血清レベルは、全観察期間を通して両方のコホートにおいて増加する傾向があった。しかし、増加は、ベースラインと比較して、各考察される時点において名目上のレベルを達成することができなかった(表15)。
【0196】
【表15】
【0197】
血清トリグリセリドレベルは、全観察期間を通して認識できるほど変化しなかった(表16)。
【0198】
【表16】
【0199】
収縮期および拡張期血圧
収縮期および拡張期血圧は、全試験期間を通して両方のコホートにおいて認識できるほどには変化しなかった(表17および18)。
【0200】
【表17】
【0201】
【表18】
【0202】
2.エンドポイントへの進行
本報告の時点で、2名の患者が、部分寛解を達成した(ベースラインと比較して少なくとも50%低下による、24時間尿タンパク質排泄量3.5グラム超)。エンドポイントは、12週目に達成された。3名の追加的な患者は、その24時間タンパク尿が3.5グラム未満に減少したが、低下は依然としてベースラインと比較して50%未満であったため、6ヶ月目のエンドポイントに近似した。
【0203】
3.安全性
【0204】
処置は全般的に耐容性が良かった。処置を中断させる必要がある症例はなく、全患者が、試験プロトコールガイドラインに従って、計画された注入を全て完了した。2時間にわたる十分に回復した一過性側頭半盲(temporal emyanopsia)の1つのエピソードが、1名の患者における単一の注入中に観察され、片頭痛(emicranic)エピソードの臨床徴候
として解釈された。エピソードは、処置関連とみなされ、患者の入院を要求した。一過性頭痛の1つのエピソードが、最初の2回の注入の日付に、1名の他の患者において報告された。両方のエピソードは、非重篤としてみなされ、自発的に十分に回復した。その次の処置投与の間、薬物注入の速度は、最も遅く、事象はもはや再発しなかった。
【0205】
4.考察
処置は、全患者において補体活性化を正常化し、安全であった。補体阻害は、試験に算組み入れた10名の患者のうち9名において、タンパク尿、アルブミン尿、糸球体濾過およびふるい機能(sieving function)、血清アルブミンならびに脂質異常症(血液中の
異常量の脂質(例えば、トリグリセリド、コレステロールおよび/または脂肪リン脂質))の有意で臨床的に関連する改善に関連した。考察されるパラメータ全てに関して処置効果が経時的に持続した、また、観察された変化が、名目上の有意性を達成した(相対的に少数の患者にもかかわらず)という事実は、試験所見の頑強性の確かな証拠を提供する。このことは、2名の患者が、処置12週目にネフローゼ症候群の部分寛解を既に達成した、また、2名の追加的な患者が、24週目にこのエンドポイントに近似していたという所見によってさらに確認される。血清アルブミン(および総タンパク質)レベルの変化が、血清総およびLDLコレステロールレベルにおいて観察された変化を反映したという所見は、脂質異常症の軽減が、低アルブミン血症の軽減によって媒介され、続いてこれが、腎臓のふるい機能およびタンパク尿の改善によって持続されたことを強く示唆する。
【0206】
組み入れ後1週目にGFRの増加が既に明らかであったことは、補助的だが興味深い所見であった。変化は、統計的有意性を達成できなかったが、全組み入れ患者にわたって一貫して観察された。他方では、有意なGFR増加にもかかわらず、全試験期間を通して血清クレアチニンレベルの有意な変化は観察されなかった。これらの所見は、血清クレアチニンが、腎臓機能の極めて貧弱なマーカーであり、特に、相対的に少数の患者における病態生理学試験において、血清クレアチニンレベル(またはクレアチニンに基づくGFR推定式)によって腎臓機能をモニターする場合、臨床的に関連する効果を見逃す可能性があることを確認する。
【0207】
注目すべきことに、9名の応答性患者において、ベースライン血清C5b9レベルは、組み入れのための限界(1000ng/ml)を大きく超えた(2~5倍)一方、処置から認識できるほど利益を得るとは思われない単一の患者において、血清C5b9レベル(998ng/ml)は、この限界に単に近似した。上述の所見のもっともらしい解釈を述べると、エクリズマブ療法に応答性の患者において、タンパク尿および他の疾患徴候は、強い補体活性化によって大きく持続した一方、(明らかに)非応答性患者において、これらは、慢性(残存腎臓様)機構によって主として説明された。しかし、特に、疾患が、持続的ネフローゼ症候群に関連する場合、原発性膜性増殖性糸球体腎炎は、経時的な速い腎機能増悪に関連するため、上述のデータは、注意して解釈される必要がある。「非応答性」患者において、GFRおよび疾患の他の臨床徴候が、12ヶ月間の観察期間を通して認識できるほどには変化しなかったという所見は、何らかの処置利益の証拠となり得る。
【0208】
まとめると、試験所見は、原発性膜性増殖性糸球体腎炎、ネフローゼ症候群および補体活性化を有する患者におけるエクリズマブ療法の強く、かつ臨床的に関連する利益の確かな証拠を提供する。長期的に、これらの効果は、末期腎臓疾患への進行を遅くし、可能であれば停止し、ネフローゼ症候群の合併症のリスクを低下または予防することが予想される。
【0209】
(実施例3)
「Eagle試験」延長
実施例1に記載されている試験の中間解析(実施例2において考察されたデータおよび結果を含む)は、エクリズマブ処置が、全患者において補体活性化を正常化し、安全であったことを一貫して見出した。補体阻害は、試験に組み入れた10名の患者のうち9名において、タンパク尿、アルブミン尿、糸球体濾過およびふるい機能、血清アルブミンならびに脂質異常症の有意で臨床的に関連する改善に関連した。
したがって、実施例1に記載されている試験のこの延長された経過観察において、最初の1年の処置期間および3ヶ月の回復期間を完了する患者は、第2の1年の処置期間(延長されたエクリズマブ処置)と、それに続く第2の3ヶ月の回復期間に進む。
【0210】
1.目標
この延長試験の一次目標は、回復値と比較してEagle延長の6ヶ月(24週目)および12ヶ月(48週目)に、エクリズマブ療法の再導入が、連続変数として考察される24時間タンパク尿を低下させることができるかを評価することである。
【0211】
共通の一次目標(co-primary objective)は、12ヶ月のエクリズマブ療法からの3
ヶ月のウォッシュアウト(EAGLE試験からの回復:回復期間1)および延長された1年のエクリズマブ処置期間からの3ヶ月のウォッシュアウト(回復期間1)にわたって、24時間尿タンパク質排泄量が、ベースライン、処置前レベルに向かって増加するかどうかを査定することである。
【0212】
二次目標は、次のものを含む:
i.エクリズマブ療法の再導入が、ネフローゼ症候群の持続的な、完全(成人では0.3グラム未満、子供では4mg/時間/m未満への24時間尿タンパク質排泄量の低下として定義される)または部分(成人ではベースラインからの少なくとも50%低下による3.5グラム未満、または子供ではベースラインからの少なくとも50%低下による40mg/時間/m未満への24時間尿タンパク質排泄量の低下として定義される)のいずれかの寛解を再度達成することができるかどうかを査定すること;
ii.完全または部分寛解の期間の後に、成人では3.5グラム超または子供では40mg/時間/m超への24時間尿タンパク質排泄量の増加として定義されるネフローゼ症候群の再発におけるエクリズマブ療法の効果を査定すること;
iii.臨床(体重、収縮期および拡張期血圧)および検査室パラメータ(尿中アルブミン/クレアチニン比、血清クレアチニン、クレアチニンクリアランス、血清総タンパク質、血清アルブミン、LDL、HDLコレステロールおよびトリグリセリドレベル、ヘマトクリットならびにヘモグロビン濃度)におけるエクリズマブ療法の効果を査定すること;iv.腎機能パラメータ(イオヘキソール血漿クリアランス技法によって直接的に測定され、クレアチニンおよびシスタチン(cistatin)Cに基づく推定式によって推定される糸球体濾過速度(GFR)、アルブミン、IgG、ナトリウム、カリウム分画クリアランス、超音波評価による腎抵抗指数)におけるエクリズマブ療法の効果を査定すること;
v.補体活性のマーカー(C3、C4、C3a、C5a、BbおよびsC5b9)におけるエクリズマブ療法の効果を査定すること;
vi.エクリズマブ処置の安全性プロファイルを査定すること;
vii.試験処置の費用対効果を評価すること;
viii.一次有効性変数における有意な処置効果の場合に検査されるべきバイオマーカーを評価すること。
【0213】
2.患者
除外基準は、Eagle試験(実施例1を参照)のものを反映している。組み入れ基準は次の通りである:
A.Eagle試験(実施例1を参照)の完了;
B.延長されたエクリズマブ処置に対する書面によるインフォームドコンセント(未成年の場合は親または後見人による)。
【0214】
3.試験設計
このEagle延長試験は、Eagle試験(実施例1を参照)の完了後の3ヶ月の回復相(回復1)と、それに続く第2の1年の延長されたエクリズマブ処置期間および第2の3ヶ月の回復相(回復2)で構成される。Eagle試験を完了する10名の患者が、本延長試験に参加する。
【0215】
回復相1
Eagle試験の完了後に、Eagle試験の最終訪問時に評価されたパラメータを、エクリズマブ休薬後1、2および3ヶ月間(回復期間)に再評価する。GFR、アルブミン、Igおよびナトリウム分画クリアランスは、回復期間の終わり(3ヶ月目)のみで評価する。回復期間の完了後に、患者は、エクリズマブの最初の静脈内注入を受け、第2の1年間のエクリズマブ処置期間に進む。しかし、治験責任医師は、試験患者を害する場合があるエクリズマブ休薬におそらく関連する事象の症例の場合、3ヶ月の回復期間を完了する前にエクリズマブ投与を予測する可能性がある。そのような事象は、完全寛解を以前に達成した患者におけるネフローゼ範囲への24時間尿タンパク質排泄量の増加、および/または1年の処置期間の終わりに達成されたレベルと比較して50%を超える増加を含むことができる。予測されるエクリズマブ投与を示し得る他の変化は、処置期間の終わりに観察された血清クレアチニンレベルの20%超を超える血清クレアチニン増加(少なくとも2回の連続した測定において確認)、または治験責任医師の判断において、患者にとって有害となり得るネフローゼ症候群の成分の他の変化を含むことができる。
【0216】
延長された1年間のエクリズマブ処置期間
延長された1年の処置期間において、患者は、Eagle試験について記載された通りに正確に処置される。回復期間の終わりに実行された評価は、24週目および48週目に反復される。誘導相(4週間)において、安全性パラメータおよび補体活性のマーカーは、毎週測定される。維持相(44週間)において、安全性パラメータは、毎月測定される。追加的な評価は、特に、安全性の理由のため、臨床上適切とみなされたときにいつでも認められる。
【0217】
追加的な血漿、血清および尿試料は、表19に詳述されている評価のため、最初のエクリズマブ投与の前に、2、4、12、24、36および48週目に採取される。試料を貯蔵し、試験所見に基づいて、一次または二次有効性変数におけるエクリズマブの予想される効果の機構を探索する。
【0218】
【表19】
【0219】
回復相2
1年の延長されたエクリズマブ処置期間の完了後に、延長された処置期間の最終訪問時に評価されたパラメータを、エクリズマブ休薬後1、2および3ヶ月間(回復期間2)に再評価する。GFR、アルブミン、Igおよびナトリウム分画クリアランスは、回復期間の終わり(3ヶ月目)のみで評価する。
【0220】
4.アウトカム変数
一次有効性変数は、回復値と比較してEAGLE延長の6ヶ月間(24週目)および12ヶ月間(48週目)における、連続変数として考察される24時間タンパク尿の変化を含む。
【0221】
共通の一次有効性変数は、第1および第2の回復期間の間の、連続変数として考察される24時間タンパク尿の変化を含む。
【0222】
二次有効性変数は、(1)ネフローゼ症候群の完全または部分寛解、(2)sC5b-9血漿レベルの正常化(303ng/ml未満に低下)、(3)C3、C4、C3a、C5aおよびBbを含む補体系の他の成分の血漿レベルにおける正常化、(4)測定および推定糸球体濾過速度(GFR);アルブミン、IgG、ナトリウムおよびカリウム分画クリアランスならびに腎抵抗指数を含む腎臓機能/灌流パラメータの軽減、(5)血清アルブミン、脂質ならびに他の臨床パラメータおよび検査室パラメータの変化を含む。
【0223】
安全性アウトカムは、エクリズマブ注入中の急性反応、感染性エピソード(髄膜脳炎を含む)を含む重篤および非重篤有害事象を含む。アウトカムデータおよび処置費用は、費用対効果解析に使用される。
【0224】
5.方法
Eagle延長試験のための方法は、Eagle試験(実施例1を参照)において使用されているものを反映している。
【0225】
6.治験薬(IMP)
Eagle延長試験のためのIMPおよび投与プロトコールは、Eagle試験(実施例1を参照)において使用されているものを反映している。
【0226】
成人患者(18歳以上)のための投与レジメンは、4週の初期相(1週間毎に25~45分間の静脈内注入による900mgのエクリズマブを、最初の4週間)と、それに続く維持相(第5の週に25~45分間の静脈内注入により投与される1200mgのエクリズマブと、それに続く14±2日間毎に25~45分間の静脈内注入により投与される1200mgのエクリズマブ)からなる。
【0227】
小児患者(18歳未満)において、エクリズマブ投与レジメンは、次のものからなる:
【0228】
【表20】
【0229】
7.統計方法
Eagle延長試験のための統計方法は、Eagle試験(実施例1を参照)において使用されているものを反映している。
【0230】
8.患者の脱退
【0231】
Eagle延長試験のための脱退プロトコールは、Eagle試験(実施例1を参照)に記載されているプロトコールを反映している。
【0232】
9.試験の早期中断
Eagle延長試験のための早期の中断プロトコールは、Eagle試験(実施例1を参照)に記載されているプロトコールを反映している。
【0233】
10.有害事象
Eagle延長試験のための有害事象基準は、Eagle試験(実施例1を参照)に記載されている基準を反映している。
【0234】
(実施例4)
「Eagle試験」延長の結果
上の実施例3に記載のプロトコールに実質的に従って、延長試験を行った。
【0235】
1.試験参加者
試験参加者は、イタリア、ベルガモにおける、IRCCS - Istituto di Ricerche Farmacologiche Mario Negriの希少疾患のための臨床研究センター(CRC)「Aldo e Cele Dacco」のイタリアMPGNレジストリに照会された患者の中から特定した。生検により証明されたMPGNとクレアチニンクリアランス20ml/分/1.73m超、成人における3.5g/24時間または子供における40mg/時間/m(またはスポット尿試料における2mg/mgタンパク質/クレアチニン比)を持続的に超えるタンパク尿、正常範囲の下限を下回る血清C3レベル、および1000ng/ml(本発明者らの健康な対照における値の平均+10SDを超えるレベル)を超える血清sC5b9レベルを有した対象を、少なくとも2回の連続した測定に含めた。75歳以上の患者、続発性MPGNの証拠を有する患者、試験処置によって影響されるとは予想されなかった、あまりにも重症の慢性腎臓組織学的変化を有する患者、過去6ヶ月間にわたってステロイドもしくは免疫抑制療法を用いた患者、または試験の完了に影響するもしくは試験所見を混乱させると予想されるいずれかの臨床状態を有する患者を除外した。除外基準は、試験の潜在的リスクおよび利益を理解できないこと、ならびに患者またはその親もしくは後見人の法的無能力を含んだ。妊娠中もしくは授乳中の女性または有効な避妊をしていない妊孕性がある女性は組み入れなかった。組み入れ患者は、最初のエクリズマブ注入の少なくとも2週間前に、血清型A、C、YおよびW135に対するコンジュゲート四価髄膜炎菌ワクチンならびに血清型Bに対する一価ワクチンを受けた。
【0236】
2014年3月4日から2015年1月7日に、図2に示す通り、6つのセンターから10名の患者(6名の男性および4名の女性)を組み入れた。6名の患者は、IC-MPGNを有し、4名の患者は、C3GNを有した。C3遺伝子における1個のp.D1625Hヘテロ接合性変異、およびCFHにおける1個のp.R78Gホモ接合性変異を、それぞれ2名のC3GN患者において同定した。C3腎炎因子が、6名の患者において観察された:うち、3名はIC-MPGNを有し、3名はC3GNを有した。組み入れ時の年齢は、13~33歳に及び、5名の患者が未成年であった。表21に示す通り、IC-MPGNおよびC3GN患者のベースライン特徴は同様であった。免疫抑制処置中の患者はいなかった。
【0237】
【表21-1】
【表21-2】
【0238】
2.試験設計
本パイロット、第2相、単アーム(arm)、前向き、オープン、縦断的試験は、オフ-
オン-オフ-オン設計の文脈での、12週のウォッシュアウト期間によって分割されたエクリズマブによる2回の48週の処置期間に構成されている(例えば、van der Lee JH, et al., J. Clin. Epidemiol. 2008;61:324-30およびGupta S, et al., J. Clin. Epidemiol. 2011;64:1085-94を参照)。必要に応じた自発的腎臓生検が、組み入れ時および試験終了時に、治験責任医師の判断において手順に対し禁忌がない患者に提案された。全ベースライン臨床測定および検査室測定は、CRCにおいて一元化した。3回の連続した24時間尿採取を提出して、タンパク質、アルブミン、ナトリウム、尿素およびリン酸塩排泄を測定した。3回の測定の中央値を記録した。sC5b-9血漿、C3およびC4血清レベルならびにルーチンの検査室パラメータは、一晩絶食の翌朝に測定した。糸球体濾過速度(GFR)は、イオヘキソール血漿クリアランス技法によって直接的に測定し(例えば、Gaspari F, et al., J. Am. Soc. Nephrol. 1995;6:257-63
を参照)、血清クレアチニンに基づく慢性腎臓疾患-疫学(CKD-Epi)方程式により推定した。IgGおよびアルブミン分画クリアランスは、標準式によって計算した。次に、患者は、ベルガモのAzienda Socio Sanitaria Territoriale(ASST)Ospedale Papa Giovanni XXIIIの腎臓学ユニットに移され、そこで、エクリズマブの最初の静脈内注入を受けた。40kgまたはそれよりも重い体重の(weighted)成人および未成年患者は、1週間毎に900mgのエクリズマブを4週間(誘導期間)、5週目に1200mg、次いで14±2日間毎に1200mg(維持期間)を48週間の処置の完了まで受けた。5~40kg未満の体重である子供における薬物の投与レジメンを表2に示す。2番目の同一の48週の処置経過は、12週のエクリズマブ休薬(「ウォッシュアウト期間」)後に開始した。ベースライン時に評価した臨床パラメータおよび検査室パラメータを、最初の処置期間の1、24および48週目に、処置中止の12週間後に、ならびに2番目の処置期間の24および48週目に中心的に再査定した。GFRならびにアルブミンおよびIgG分画クリアランスを除く同じパラメータを、各リファレンスセンターにおいて、両方の処置期間の12および36週目に評価した。sC5b-9血漿ならびにC3およびC4血清レベルは、各試験訪問において中心的に評価した。腎臓生検を実行し、評価した。試験中の食事または付随する薬物療法に対する系統的な変化は許可されなかった。
【0239】
3.試料サイズ推定および統計解析
本試験は、非常に希少な疾患におけるパイロット探索試験であり、試料サイズは、およそ1年間の予め定義されたリクルートメント期間において利用できる可能性がある患者の数に基づいて計算した。連続的なアウトカム変数は、適宜予め定義されたベースライン共変数を含む、対応t検定、ウィルコクソン符号順位検定、反復測定ANOVAまたは線形混合効果モデルにより評価した。マクネマーの検定またはカイ二乗検定またはフィッシャー直接検定は、カテゴリー変数に使用した。ベースライン特徴は、数およびパーセンテージ、平均およびSD、または中央値および四分位数間範囲(IQR)として提示した。ボンフェローニ調整によって多重比較問題に取り組んだ。連続変数の正規性は、Q-Qプロットおよびシャピロ・ウイルク検定によって査定した。全p値は両側性であった。
【0240】
4.安全性
全患者が、計画された注入を完了した。ESRDに進行する患者は、第1の透析セッションにおいてエクリズマブを停止した。全体的に見て、69回のエクリズマブ注入のうち8回(11.6%)において急性反応が見られた。全症例において、症状は、自発的に、かつ後遺症を伴わずに回復した。急性胸痛および悪心が、第1の注入中に1名の患者において結果として生じた。患者は、入院を要求せず、事象は、非重篤として考察された。頭痛と霧視および一過性側頭半盲は、最初の処置期間の20週目に同じ患者において結果として生じた。患者を1日間入院させ、事象を重篤としてカテゴリー化した。5つの他の頭痛エピソード、霧視による1つ、および低血圧の1症例が、エクリズマブ注入中に観察された。全事象が非重篤であった。ウォッシュアウト期間中に、一過性の腎臓機能悪化に伴う肺炎球菌肺炎のため、1名の患者が入院した。この事象は、重篤および処置関連であると考察された。この男性患者は、抗菌療法により十分に回復した。
【0241】
ウォッシュアウト中に、全患者でタンパク尿が増加した。予め定義されたプロトコールガイドラインに従って、腎臓機能の悪化のため、3名の患者においてエクリズマブによる処置が予期された。
【0242】
5.アウトカム/結果
一次有効性アウトカムは、最初の処置期間の24および48週間の24時間尿タンパク質排泄量であった。sC5b-9血漿レベルを測定して、終末補体経路活性をモニターした。GFR、ならびにアルブミンおよびIgG分画クリアランス、ならびにネフローゼ症候群の完全(24時間タンパク尿0.3グラム未満)または部分(24時間タンパク尿3.5グラム未満と、ベースラインからの50%を超える低下)寛解への進行は、二次アウトカム内にあった。
【0243】
図7は、ベースラインと比較して、エクリズマブによる2回の処置期間(0週目a~48週目aおよび0週目b~48週目b)およびウォッシュアウト期間(48週目a~0週目b)の間の、臨床パラメータおよび検査室パラメータの変化を表記する。一次有効性変数である24時間尿タンパク質排泄量(表23~25および図3Bを参照)、ならびに血清24時間尿アルブミン排泄量(表26~27および図4A)、測定糸球体濾過速度(GFR)(表28~29および図4B)、アルブミンおよびIgG分画クリアランス(表30~31)、血清クレアチニン(表32)、アルブミン(表33)、総タンパク質(表34)、総、LDLおよびIIDLコレステロール(表35~37)、トリグリセリドレベル(表38)ならびに収縮期(sytolic)および拡張期血圧(表39~40)を含む他の
鍵となる有効性変数に関するデータと共に、血清C5b9レベルの解析結果も、表22および図3Aに報告する。
【0244】
1名の明らかな「非応答者」に関する、血清C5b9レベル、24時間尿タンパク質排泄量、血清24時間尿アルブミン排泄量および測定糸球体濾過速度を、それぞれ図5A図5B図6Aおよび図6Bに示す。「非応答者」に関する組織学検査を図8A図8Dに示す。
【0245】
図9は、エクリズマブ処置患者に関する、処置(1年間)、回復(3ヶ月間)および延長相(1年間)の経過にわたる、推定糸球体濾過速度(eGFR)および測定糸球体濾過速度(mGFR)を示す。
【0246】
【表22】
【0247】
【表23】
【0248】
【表24】
【0249】
【表25】
【0250】
【表26】
【0251】
【表27】
【0252】
【表28】
【0253】
【表29】
【0254】
【表30】
【0255】
【表31】
【0256】
【表32】
【0257】
【表33】
【0258】
【表34】
【0259】
【表35】
【0260】
【表36】
【0261】
【表37】
【0262】
【表38】
【0263】
【表39】
【0264】
【表40】
【0265】
体重、BMIおよび血圧は、試験を通して相対的に安定していた。
組み入れ時に極めて上昇していたsC5b-9血漿レベルは、第1の48週の処置期間の間、迅速にかつ持続的に正常化し、ウォッシュアウト期間の終わりにベースライン値に向かって回復し、2番目の48週の処置期間の間、試験終了まで再び正常化した(図3Aおよび図7)。ウォッシュアウト期間の終わりにおける一過性増加にもかかわらず、C3血清レベルは、全試験期間を通して持続的に低下した。C4血清レベルは、安定であり、常に正常範囲内にあった。
【0266】
タンパク尿は、最初の処置期間の間に有意に減少し、ウォッシュアウト期間の終わりにベースライン値に向かって急激に増加した。この増加傾向は、2番目の処置期間の間に停止し元に戻ったが、タンパク尿低下は、試験終了まで名目上の有意性を達成しなかった(図3A図7および表23)。2名の患者は、両方の処置期間の完了時にネフローゼ症候群の部分寛解を達成し、1名の追加的な患者は、2番目の処置期間の完了時にエンドポイントを達成した(表23を参照)。アルブミン尿ならびにアルブミンおよびIgG分画クリアランスの変化は、タンパク尿の変化と同等であった(図7を参照)。一貫して、血清アルブミンおよび総タンパク質は、最初の処置期間において増加し、ウォッシュアウト期間において僅かに減少し、2番目の処置期間においてベースラインとは有意に異ならなかった(図4および図7)。総、LDLおよびLDL/HDLコレステロールは、最初の処置期間において有意に減少し、ウォッシュアウト期間においてベースラインに向かって回復し、2番目の処置期間においてベースラインとは異ならなかった。血清トリグリセリドレベルならびに24時間尿ナトリウム、尿素およびリン酸塩排泄は、試験を通して安定していた。
【0267】
測定GFRは、最初の処置期間の24週目に一過性に増加し、ウォッシュアウト期間後にベースライン値に向かって減少し、2番目の処置期間を通してベースラインとは認識できるほどには異ならなかった。推定GFRは、同様の傾向を示したが、真のGFRを大幅に過大推定した。
【0268】
自発的腎臓生検を、2名のIC-MPGN患者から組み入れ時および試験終了時に利用できた。両方の症例において、ベースライン腎臓生検は、局所的に重症の管内増殖と好中球浸潤を含む、初期糸球体分葉化と中等度メサンギウム増殖および滲出性特色を示した(図10A図10B図10Cおよび図10D)。
【0269】
「症例A」に関して、ベースライン腎臓生検は、局所的に重症の管内増殖と好中球浸潤を含む、初期糸球体分葉化、GBMの分節二重化、中等度メサンギウム増殖および滲出性特色を示した(図10A-前)。加えて、1個の糸球体は、係蹄から嚢への(tuft-to-capsule)接着と、関連する分節硬化を示した。間質に低密度の炎症性浸潤物が観察された
。免疫蛍光評価は、同様のパターンおよび分布による著しいC3およびC5b-9糸球体壁側沈着物(3+)(図10B-前)を、糸球体壁側IgM、IgGおよびC1q(2+)ならびにより強度の低いカッパーおよびラムダ軽鎖(1+)と一緒に示した。電子顕微鏡法は、高頻度の膜内および限局性内皮下高電子密度沈着物を検出した。散乱した高電子密度沈着物の蓄積、増加した細胞充実性およびマトリックスにより、メサンギウムは拡大した(図10A-前)。反復生検において、低下したメサンギウムおよび管内増殖、ただし増加したメサンギウムマトリックス、より強調された糸球体分葉化、ボーマン嚢への複数の接着、ならびにベースライン時の6%から30%への分節性糸球体硬化の増加により、炎症性特色が改善した。最初の生検において観察された低密度の間質性炎症性浸潤物は、限局性間質線維化および尿細管萎縮によって置き換えられた(図10A-後)。C3の免疫蛍光染色の強度は、反復生検において認識できるほどには変化しなかった。逆に、C5b-9の中央値(IQR)染色は、処置後生検においてベースライン時の15.8%(15.2~16.5%)から10.7%(8.5~15.0%]へと有意に(p=0.019)減少した(図10B-後)。C1q沈着物はほとんど消失した。反復生検において、膜内および内皮下沈着物は、ベースライン評価よりも高電子密度であり、GBMは、散在性に二重化し、隔離された粉状内皮下沈着物が新たに現れた(図10B-後)。メサンギウム沈着物の数に僅かな増加が見られた。
【0270】
「症例B」に関して、処置前生検は、軽度メサンギウム増殖および散在性管内増殖と著しい好中球浸潤を示し、糸球体に曖昧に分葉した外観を与えた。加えて、限局性中等度尿細管間質性炎症が見られた(図10C-前)。免疫蛍光は、同様のパターンおよび分布による散在性C3およびC5b-9糸球体沈着物(3+)を、軽度強度(1+)の糸球体壁側IgM染色と一緒に示した(図8D-前)。電子顕微鏡法は、GBMの限局性二重化を伴う高頻度内皮下高電子密度沈着物および所々の膜内帯状高電子密度沈着物を検出した。散乱した高電子密度沈着物の蓄積、増加した細胞充実性およびマトリックスにより、メサンギウムは拡大した(図10C-前)。上述のIC-MPGN症例において観察される通り、低下したメサンギウムおよび管内増殖、ただし増加したメサンギウムマトリックス、より強調された糸球体分葉化、ボーマン嚢への接着と、ベースライン時の15%から40%への分節性糸球体硬化の増加により、処置後反復生検は、炎症性特色の軽減を示した)(図8C-後)。尿細管間質性損傷は、ベースラインと比較して、認識できるほどには変化しなかった。また、C3およびIgMの免疫蛍光染色のパターンおよび強度は、2種の生検の間で同様であった。逆に、C5b-9の染色は、処置後生検において、ベースライン時の23.6%(22.7~24.9%)から18.22%(14.8~20.6%)へと有意に(p=0.021)減少した(図10D-後)。処置後生検は、糸球体毛細血管における分節性IgGおよびカッパー軽鎖(1+)の沈着、ならびにより高電子密度の内皮下および膜内沈着に関しても、メサンギウム沈着物の軽度減少と共に重要であった。一部の内皮下沈着物は、上述のIC-MPGN症例に記載されているものと同様の点状の(punctuate)粉状の質感を有した。加えて、所々の散乱した高電子密度沈着物が、糸球
体上皮下の場所において、尿細管基底膜およびボーマン嚢において同定された(図10C-後)。
【0271】
6.考察
上述のデータによって証明される通り、エクリズマブは、2年の経過観察にわたって、流体相の補体活性を十分に阻害し、タンパク尿を低下させ、血清アルブミンレベルを改善し、GFRを安定化した。しかし、処置効果は、3ヶ月の処置中止(回復期間)中に十分に消耗した。加えて、回復期間後のエクリズマブへの再曝露は、初期処置ほど有効であるようではなかった。
【0272】
流体相の補体活性の変化が、全ての考察される臨床パラメータの変化と同等であったという事実は、エクリズマブ誘導性補体阻害および処置効果の間の因果関係の確かな証拠を提供した。おそらく、流体相の補体活性化の程度は、疾患活動性を反映し、エクリズマブ療法に対する応答の予測を助けることができる。
【0273】
具体的には、終末補体経路の強い活性化およびネフローゼ範囲のタンパク尿を有する10名の患者において、sC5b-9血漿レベルは、最初のエクリズマブ処置期間において迅速にかつ十分に正常化され、エクリズマブ休薬後にベースラインに向かって回復し、再び、2番目の処置期間において迅速にかつ持続的に正常化された。C3血清レベルは持続的に低下した一方、C4レベルは、全試験期間において正常範囲内であった。24時間尿タンパク質排泄量(試験の一次有効性変数)は、最初の処置期間を通して有意にかつ持続的に減少し、エクリズマブ休薬後にベースラインに向かって急激に増加した。2番目の処置期間において、エクリズマブの第1の投与は、ウォッシュアウト期間において観察されたタンパク尿の増加する傾向を停止し、実際に逆転した。しかし、その後の訪問において、タンパク尿は、数値的に、ただし有意にではなく、ベースライン時よりも低かった。注目すべきことに、2名の患者は、最初の処置期間の終わりにネフローゼ症候群の部分寛解を達成し、エクリズマブ休薬後の疾患再発にもかかわらず、2番目の期間において部分寛解を再び達成した。1名の追加的な患者が、2番目の処置期間の終わりにエンドポイントを達成した。アルブミンおよびIgG分画クリアランスの両方が、最初の処置期間において有意に減少し、エクリズマブ休薬後にベースラインに向かって回復したという所見は、エクリズマブの抗タンパク尿効果が、少なくとも一部には、血漿巨大分子に対する糸球体関門の選択性改善によって媒介されたことの確かな証拠を提供した(例えば、Ruggenenti
P, Cravedi P, Remuzzi G. Mechanisms and treatment of CKD. J Am Soc
Nephrol 2012;23:1917-28を参照)。
【0274】
最初の処置期間において観察されたタンパク尿の低下は、血清アルブミンおよび総タンパク質レベルの増加、ならびに血清総および低密度リポタンパク質(LDL)コレステロールレベルの有意なかつ臨床的に関連する低下に関連した。重ねて、これらの効果は、処置中止後に弱まった(weaned)。体重および肥満度指数、血圧ならびに24時間尿ナトリウム、リン酸塩および尿素排泄、ならびにRAS阻害剤またはスタチンによる併用処置は、試験を通して変化しなかった。よって、最初の処置期間におけるタンパク尿およびネフローゼ症候群の徴候の軽減は、食事または併用処置の変化によって混乱させる可能性が低い、エクリズマブ療法の本当の効果を反映するようであった。
【0275】
よって、sC5b-9血漿レベルに基づいた層別化は、エクリズマブ等、C5コンバターゼの遮断薬による処置から利益を得ることができる終末補体経路の活性化を有する患者の同定を可能にした。顕性のネフローゼ症候群を有する患者における効果の証拠は、この患者がESRDへの加速された進行の最も高いリスクがある患者であることから、臨床的意味を有することができる(例えば、Riedl et al., Pediatr. Nephrol. 2017;32:43-57およびAppel GB, et al., J. Am. Soc. Nephrol. 2005;16:1392-403を参照
)。タンパク異常血症(dysprotidemia)および脂質異常症の軽減は、ネフローゼ症候群
に必ず関連する心血管事象の過剰リスクの低下に繋がる場合もある(Vaziri ND, et al., Kidney Int. 2016;90:41-52を参照)。他方では、処置ウォッシュアウトにおけるタンパク尿およびsC5b-9血漿レベルの急な増加ならびにネフローゼ症候群のマーカーの付随する悪化は、2名の患者における2番目の処置期間の予想される開始を必要とした疾患のリバウンドと一致する。このリバウンド後にエクリズマブの抗タンパク尿効果が減弱されたという所見は、少なくとも、初期臨床利益の証拠を有する患者において、処置を停止するべきではないことを示唆する。
【0276】
なぜ抗タンパク尿効果が最初の処置期間に制限されるのか、という疑問が残る。sC5b-9血漿レベルが、両方の処置期間において正常化されたという所見は、終末補体経路におけるエクリズマブの阻害効果が、試験中に進行性に消耗した可能性を合理的に除外する。この仮説は、自発的処置前および後の腎臓生検に同意した両方の患者において、C5b-9の糸球体染色が、ベースラインと比較して、反復生検において有意に減少したという所見と一致した。注目すべきことに、低下したC5b-9沈着は、慢性変化によって置き換えられる傾向がある糸球体炎症性病変の軽減に関連した。残念ながら、sC5b-9血漿レベルおよびタンパク尿の増加が、sC5B9沈着および糸球体炎症のリバウンドに関連するかについて査定するための、ウォッシュアウト期間の終わりの組織学データはない。よって、エクリズマブ休薬後の疾患の再活性化が、エクリズマブ療法の第2の経過において回復できなかったさらなる組織学損傷に繋がったという仮説を考え得るが、立証されていない。
【0277】
エクリズマブウォッシュアウトにおける一過性疾患再活性化にもかかわらず、腎臓機能は少なくとも2年間安定していた。この所見は、本試験において観察される通り、特にネフローゼ症候群患者においてGFRの信頼のおける推定を提供することができない血清クレアチニンに基づくGFR予測方程式ではなく、直接的GFR測定に基づいたため、頑強である(Hofstra JM, et al., Nephrol. Dial Transplant 2011;26:550-6を参照
)。よって、エクリズマブ療法および観察されたアウトカムの間の直接的因果関係を明確に結論付けることを不可能にする対照群の欠如にもかかわらず、データは、患者が、MPGNおよびネフローゼ症候群を有する患者を特徴付ける加速された腎機能喪失から保護されたことを示唆する(Riedl M, et al., Pediatr. Nephrol. 2017;32:43-57を参照)。
【0278】
別の興味深い試験所見は、sC5b-9血漿レベルおよび糸球体沈着は、エクリズマブによって低下したが、一方でC3血清レベルおよび糸球体染色は低下しなかったことであった。これらのデータは、MPGNが、代替補体経路のC3コンバターゼの調節不全によって駆動され、加速されたC3消費およびC3活性化断片の糸球体沈着をもたらし、これは、標的化されたC5阻害によって直接的に影響され得ないという仮説と一致する(Herlitz LC, et al., J. Am. Soc. Nephrol. 2012;23:1229-37を参照)。このことは、本試験に記載されている症例を含む報告された症例において、エクリズマブが、疾患の完全寛解を達成できなかった理由を説明することができる(例えば、Daina E, et al., N. Engl. J. Med. 2012;366:1161-3、Vivarelli M, Pasini A et al, N.
Engl. J. Med. 2012;366:1163-5、Radhakrishnan et al., N. Engl. J. Med
2012;366:1165-6、Bomback AS, et al., Clin. J. Am. Soc. Nephrol. 2012;7:748-56およびLe Quintrec M, et al., Am. J. Kidney Dis. 2018を参照)。
おそらく、代替補体経路のC3コンバターゼを標的化するD因子またはB因子阻害剤等、臨床開発中の新たな分子が、C5アンタゴニストよりも腎保護的(nephroprotective)であると証明し、可能であれば、大部分のMPGN患者のための処置パラダイムを変化させ得る(Ricklin D, et al., Semin. Immunol. 2016;28:208-22を参照)。
【0279】
結論として、エクリズマブによる処置は、おそらく糸球体炎症を軽減することにより、疾患進行を遅くするまたはさらには予防するのを助けることができるようであるため、エクリズマブは、IC-MPGNまたはC3GNおよび終末補体活性化を有する患者の処置における役割を有することができる。しかし処置中止は、持続的C5遮断の可能な長期利益を相殺し得る疾患のリバウンドを伴う。sC5b-9血漿レベルおよびおそらく腎組織におけるC5b-9沈着に基づく層別化は、エクリズマブ療法の大部分から利益を得ることができる患者を同定するための合理的なアプローチとなることができる。さらに、一過性処置中止であっても、処置再曝露後に十分に回復するようではない、疾患活動性のリバウンドを伴うため、継続的な慢性治療法が必要とされる。
【0280】
【表41-1】
【表41-2】
【表41-3】
【表41-4】
図1
図2
図3A-3B】
図4A-4B】
図5A-5B】
図6A-6B】
図7
図8A-8D】
図9
図10A-10D】
【配列表】
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