(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101797
(43)【公開日】2023-07-21
(54)【発明の名称】ガス保安装置
(51)【国際特許分類】
G01F 3/22 20060101AFI20230713BHJP
G01F 1/66 20220101ALI20230713BHJP
【FI】
G01F3/22 B
G01F1/66 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092097
(22)【出願日】2023-06-05
(62)【分割の表示】P 2019093461の分割
【原出願日】2019-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】行徳 太一
(72)【発明者】
【氏名】安田 憲司
(72)【発明者】
【氏名】内田 健太
(57)【要約】
【課題】ガス供給圧を測定できるガス保安装置において、ガス供給圧の測定精度を改善すること。
【解決手段】流路101と、流路101を流れるガスの流量を計測する流量計測部103と、ガスの絶対圧力を測定するガス側絶対圧圧力センサ105と、大気圧の絶対圧力を測定する大気側絶対圧圧力センサ106と、所定の測定時間において、ガス側絶対圧圧力センサ105および、大気側絶対圧圧力センサ106で同じタイミングで測定された圧力値の差分値をn個採取する差圧値採取手段201と、差圧値採取手段201で採取したn個の差圧値の平均値でガス供給圧を算出するガス圧力判定手段209と、流路101を遮断する遮断弁102と、流量計測部103を制御すると共に、流量計測部103で測定した流量やガス圧力判定手段209で測定した圧力変化で異常と判定した場合に遮断弁102で流路101を遮断する制御回路204とを備えた。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを流すための流路と、
前記流路を流れるガスの流量を測定するための流量計測部と、
前記流路の内部に配置され、前記ガスの絶対圧力を測定する第1の圧力センサと、
前記流路の外部に配置され、大気圧の絶対圧力を測定する第2の圧力センサと、
前記第1の圧力センサで測定された圧力値と前記第1の圧力センサの測定の同じタイミングで前記第2の圧力センサで測定された圧力値の差圧値をn個採取する差圧値採取手段と、
前記差圧値採取手段で採取したn個の差圧値の平均値でガス供給圧を算出するガス圧力判定手段と、
前記流路を遮断する遮断弁と、
前記流量計測部を制御すると共に、前記流量計測部で測定した流量や前記ガス圧力判定手段で算出したガス供給圧から異常と判定した場合に前記遮断弁で前記流路を遮断する制御回路と、
を備えたガス保安装置。
【請求項2】
前記差圧値採取手段で採取された差圧値を比較する差圧値比較手段を備え、
前記ガス圧力判定手段は、前記差圧値比較手段において、値が他の差圧値と明らかに異なると判断された差圧値を除いて前記平均値を算出する請求項1に記載のガス保安装置。
【請求項3】
前記流量計測部は、前記流路の内部に配置された計測回路を有し、前記第1の圧力センサは前記計測回路上に構成され、
前記制御回路は、前記流路の外部に配置され、前記第2の圧力センサは前記制御回路上に配置された請求項1又は2に記載のガス保安装置。
【請求項4】
前記流量計測部は、超音波センサと前記超音波センサを駆動して流量計測を行う計測回路を一体とした超音波流量計測部を備え、
前記超音波流量計測部をガス雰囲気中に設置するとともに、前記超音波流量計測部に前記第1の圧力センサを備え、前記制御回路で前記超音波流量計測部を制御することによって、超音波センサ駆動回路上の前記第1の圧力センサも制御する請求項1~3のいずれか1項に記載のガス保安装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガス流量を計測し、異常流量が計測された場合にはガス通路を遮断し、ガス使用上の安全性を確保するガス保安装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ガスの使用量を測定するガスメータが、異常と判定してガス通路を遮断し、安全性を確保するガス保安装置を開示する。このガス保安装置は、超音波センサと、超音波センサ駆動回路が構成された回路基板を一体とした超音波流量計測部と、供給圧側と、大気圧の差圧を測定する圧力センサと、圧力センサで測定した圧力が異常であると判断した場合は、流路を遮断してガスの供給を停止する制御機能と、通報する機能を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガス保安装置に内蔵された圧力センサは、ガスの圧力を大気圧基準として測定する差圧測定型である為、ガスを圧力センサに導入する貫通孔を有しており、周囲の火災等により、ガス保安装置周辺が非常に高温になった場合、圧力センサが変形または焼失することによって、貫通孔からガスが漏れ出し、ガス爆発等の二次被害を拡大してしまう可能性がある。そこで、貫通孔が不要な構成として、大気圧を測定する絶対圧圧力センサとガスの圧力を測定する絶対圧圧力センサの測定値の差からガス供給圧の変化を測定する手段がある。
【0005】
しかしながら、2個のセンサの個体バラつきや測定タイミングの誤差の影響で測定精度が低下する課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示におけるガス保安装置は、ガスを流すための流路と、前記流路を流れるガスの流量を測定するための流量計測部と、前記流路の内部に配置され、前記ガスの絶対圧力を測定する第1の圧力センサと、前記流路の外部に配置され、大気圧の絶対圧力を測定する第2の圧力センサと、前記第1の圧力センサで測定された圧力値と前記第1の圧力センサの測定の同じタイミングで前記第2の圧力センサで測定された圧力値の差圧値をn個採取する差圧値採取手段と、前記差圧値採取手段で採取したn個の差圧値の平均値でガス供給圧を算出するガス圧力判定手段と、前記流路を遮断する遮断弁と、前記流量計測部を制御すると共に、前記流量計測部で測定した流量や前記ガス圧力判定手段で算出したガス供給圧から異常と判定した場合に前記遮断弁で前記流路を遮断する制御回路と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示は、ガス保安装置周辺が高温になってもガスが噴出することのないガス保安装置において、ガス供給圧を精度よく測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
第1の発明は、ガスを流すための流路と、前記流路を流れるガスの流量を測定するための流量計測部と、前記流路内部に配置され、前記ガスの絶対圧力を測定する第1の圧力センサと、前記流路外部に配置され、大気圧の絶対圧力を測定する第2の圧力センサと、前記第1の圧力センサで計測された圧力値をn個、前記第2の圧力センサで測定された圧力値をm個採取する圧力値採取手段と、前記圧力値採取手段で得られたそれぞれの圧力値の平均値の差からガス供給圧を算出するガス圧力判定手段と、前記流路を遮断する遮断弁と、前記流量計測部を制御すると共に、前記流量計測部で測定した流量や前記ガス圧力判定手段で算出したガス供給圧から異常と判定した場合に前記遮断弁で前記流路を遮断する制御部と、を備えることで、2つの絶対圧圧力センサの平均値を用いてガス供給圧を検知するため、2つのセンサの個体ばらつきや測定タイミングの誤差による測定精度の改善ができ、差圧測定型の圧力センサを用いる場合に必要な貫通孔が不要となり、火災等でガス保安装置の周囲が高温になってもガスが噴出することを防止でき、より安全性の高いガス保安装置が実現できる。
【0010】
第2の発明は、ガスを流すための流路と、前記流路を流れるガスの流量を測定するための流量計測部と、前記流路内部に配置され、前記ガスの絶対圧力を測定する第1の圧力センサと、前記流路外部に配置され、大気圧の絶対圧力を測定する第2の圧力センサと、前記第1の圧力センサで測定された圧力値と前記第1の圧力センサの測定の同じタイミングで前記第2の圧力センサで測定された圧力値の差圧値をn個採取する差圧値採取手段と、前記差圧値採取手段で採取したn個の差圧値の平均値でガス供給圧を算出するガス圧力判定手段と、前記流路を遮断する遮断弁と、前記流量計測部を制御すると共に、前記流量計測部で測定した流量や前記ガス圧力判定手段で算出したガス供給圧から異常と判定した場合に前記遮断弁で前記流路を遮断する制御回路と、を備えることで、2つの絶対圧圧力センサの平均値を用いてガス供給圧を検知するため、2つのセンサの個体ばらつきや測定タイミングの誤差による測定精度の改善ができ、差圧測定型の圧力センサを用いる場合に必要な貫通孔が不要となり、火災等でガス保安装置の周囲が高温になってもガスが噴出することを防止でき、より安全性の高いガス保安装置が実現できる。
【0011】
第3の発明は、特に第1の発明において、前記圧力値採取手段で採取された前記第1の圧力センサおよび前記第2の圧力センサのそれぞれの圧力値と前記平均値を比較する平均値比較手段を備え、前記ガス圧力判定手段は、前記平均値比較手段において、値が前記平均値と明らかに異なると判断された圧力値を除いて前記平均値を算出することで、2つの絶対圧圧力センサの平均値を用いてガス供給圧を検知するため、2つのセンサの個体ばらつきや測定タイミングの誤差による測定精度の改善ができ、差圧測定型の圧力センサを用いる場合に必要な貫通孔が不要となり、火災等でガス保安装置の周囲が高温になってもガスが噴出することを防止でき、より安全性の高いガス保安装置が実現できる。
【0012】
第4の発明は、特に第2の発明において、前記差圧値採取手段で採取された差圧値を比較する差圧値比較手段を備え、前記ガス圧力判定手段は、前記差圧値比較手段において、値が他の差圧値と明らかに異なると判断された差圧値を除いて前記平均値を算出することで、2つの絶対圧圧力センサの平均値を用いてガス供給圧を検知するため、2つのセンサの個体ばらつきや測定タイミングの誤差による測定精度の改善ができ、差圧測定型の圧力センサを用いる場合に必要な貫通孔が不要となり、火災等でガス保安装置の周囲が高温になってもガスが噴出することを防止でき、より安全性の高いガス保安装置が実現できる。
【0013】
第5の発明は、特に第1~4の何れか1つの発明において、前記流量計測部は、前記流路内部に配置された計測回路を有し、前記第1の圧力センサは前記計測回路上に構成され、前記制御回路は、前記流路外部に配置され、前記第2の圧力センサは前記制御回路上に配置されたものである。
【0014】
第6の発明は、特に第1~5の何れか1つの発明において、前記流量計測部は、超音波センサと前記超音波センサを駆動して流量計測を行う計測回路を一体とした超音波流量計測部を備え、前記超音波流量計測部をガス雰囲気中に設置するとともに、前記超音波流量計測部に前記第1の圧力センサを備え、前記制御回路で前記超音波流量計測部を制御することによって、超音波センサ駆動回路上の前記第1の圧力センサも制御するものである。
【0015】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。
【0016】
(実施の形態1)
以下、実施の形態1について、
図1~
図2を用いて説明する。
【0017】
図1において、ガス保安装置100は、流路101、遮断弁102、流路101に流れるガスの流量を計測する流量計測部103、流量計測部103で計測した流量測定データを用いて、ガスの使用量を積算する制御回路104、絶対圧力が測定できるガス側を計測するガス側絶対圧圧力センサ105、大気側を測定する大気側絶対圧圧力センサ106、ガス雰囲気中に設置されている電子回路107、所定の測定時間において、ガス側絶対圧圧力センサ105および、大気側絶対圧圧力センサ106で測定した圧力値をそれぞれ所定個採取する圧力値採取手段108、圧力値採取手段108で採取されたそれぞれの圧力値の平均値を算出し、その差分からガス供給圧を算出するガス圧力判定手段109を備える。
【0018】
ガス側絶対圧圧力センサ105は、流路101内のガス雰囲気中に設置されている電子回路107上に電子部品として実装されており、制御回路104からの信号で流路101内のガスの絶対圧力を測定する。また、大気側絶対圧圧力センサ106は、流路101外の大気側に設置されている制御回路104上に電子部品として実装されており、制御回路104からの信号で大気側の絶対圧力を測定する。
【0019】
次に、
図2を用いて、具体的な動作説明を行う。ガス圧力判定手段109による圧力測定は、予め定めた時間間隔T(例えば、2秒から10秒)で定期的に実行される。
図2において、圧力測定時間T1、T2は圧力測定のタイミングを示しており、圧力測定時間T1において、圧力値採取手段108によりガス側の絶対圧がn個、大気側の絶対圧力がm個採取される。
【0020】
即ち、圧力測定時間T1において、ガス側絶対圧圧力センサ105で所定間隔(例えば、5ms)毎に圧力値Pg(1)、Pg(2)、・・・Pg(n-1)、Pg(n)の計n個(例えば、32個)の圧力値が測定され、大気側絶対圧圧力センサ106により、所定間隔(例えば、5ms)毎に圧力値Pa(1)、Pa(2)、・・・Pa(m-1)、Pa(m)の計m個(例えば、32個)の圧力値が測定され、圧力値採取手段108で採取される。
【0021】
そして、ガス圧力判定手段109は、ガス側のn個の平均で求めたガス側圧力値Pgと大気側のm個の平均で求めた大気側圧力値Paの差分(Pg-Pa)をガス供給圧として算出する。
【0022】
制御回路104は、流量計測部103で計測した流量測定データやガス圧力判定手段109で算出されたガス供給圧やその変化を判定し、ガス漏れ等の異常がないかを判定し、異常と判断した場合には、遮断弁102で流路101を遮断して、ガスの供給を停止する。
【0023】
以上のように、本実施の形態においては、絶対圧力を計測できる2つの絶対圧圧力センサのn個及びm個の平均値を用いてガス供給圧の変動を検知するため、2つのセンサの個体ばらつきや測定タイミングの誤差による測定精度の改善ができ、差圧測定型の圧力センサを用いる場合に必要な貫通孔が不要となり、火災等でガス保安装置の周囲が高温になってもガスが噴出することを防止でき、より安全性の高いガス保安装置が実現できる。
【0024】
なお、本実施の形態において、平均値を使用する構成で説明したが、平均値の代わりに中央値を使用しても同等なことができることは言うまでもない。
【0025】
なお、本実施の形態において、流量計測部を超音波流量計測として使用しても同等なことができることは言うまでもない。
【0026】
また、本実施の形態では、ガス側の圧力値の測定個数(n)と大気側の圧力値の測定個数(m)は同じ32個として説明したが、圧力変動やノイズの影響など測定環境等に応じて異なる数にしても良い。或いは、変動の少ないことが予想される大気側の測定個数(m個)はガス側の測定個数(n個)よりも少なくしても良く、この場合、大気側絶対圧圧力センサ106による消費電力を少なくすることができる。
【0027】
なお、本実施の形態において、ガス側絶対圧圧力センサ105を流路101内のガス雰囲気中に設置されている電子回路107上に実装する構成で説明したが、流路内であれば何処に実装してもよいことはいうまでも無い。また、大気側絶対圧圧力センサ106を流路101外の大気側に設置されている制御回路104上に実装する構成で説明したが、大気圧を測定できれば実装する場所に制限は無い。
【0028】
(実施の形態2)
以下、実施の形態2について、
図3~
図4を用いて説明する。なお、
図3おいて、
図1で説明した同一機能については同一符号で示す。
【0029】
ガス保安装置200は、流路101、遮断弁102、流路101に流れるガスの流量を計測する流量計測部103、流量計測部103で計測した流量測定データを用いて、ガスの使用量を積算する制御回路204、絶対圧力が測定できるガス側を計測するガス側絶対圧圧力センサ105、大気側を計測する大気側絶対圧圧力センサ106、ガス雰囲気中に設置されている電子回路107、所定の測定時間において、ガス側絶対圧圧力センサ105および、大気側絶対圧圧力センサ106で同じタイミングで測定された圧力値の差分値をn個採取する差圧値採取手段201、差圧値採取手段201で採取されたn個の差圧値の平均値からガス供給圧を算出するガス圧力判定手段209を備える。
【0030】
図4おいて、具体的な動作説明を行う。なお、
図2で説明した同一機能については同一符号で示す。
【0031】
ガス圧力判定手段209による圧力測定は、予め定めた時間間隔T(例えば、2秒から10秒)で定期的に実行される。
図4において、圧力測定時間T1、T2は圧力測定のタイミングを示しており、圧力測定時間T1において、差圧値採取手段201によりガスの絶対圧と大気の絶対圧力の差圧値がn個採取される。
【0032】
実施の形態1との差異は、ガス側絶対圧圧力センサ105、106により同じタイミングで計測した、ガスの圧力と大気圧の差分を圧力値採取手段108でn個取得する点である。
【0033】
即ち、圧力測定時間T1において、ガス側絶対圧圧力センサ105により、所定間隔(例えば、5ms)毎に圧力値Pg(1)、Pg(2)、・・・Pg(n-1)、Pg(n)の計n個の圧力値が測定され、一方、大気側絶対圧圧力センサ106では、ガス側絶対圧圧力センサ105による各測定と同じタイミングで圧力値Pa(1)、Pa(2)・・・Pa(n-1)、Pa(n)の計n個(例えば、32個)の圧力値が測定され、同じタイミングで測定された圧力値同士の差分値ΔP(1)=Pg(1)-Pa(1)、ΔP(2)=Pg(2)-Pa(2)、・・・ΔP(n-1)=Pg(n-1)-Pa(n-1)、ΔP(n)=Pg(n)-Pa(n)を算出する。
【0034】
そして、ガス圧力判定手段209は、n個の差分値を平均してガス供給圧を算出する。
【0035】
制御回路204は、流量計測部103で計測した流量測定データやガス圧力判定手段209で算出されたガス供給圧やその変化を判定し、ガス漏れ等の異常がないかを判定し、異常と判断した場合には、遮断弁102で流路101を遮断して、ガスの供給を停止する。
【0036】
以上のように、本実施の形態においては、絶対圧力を測定できる2つの絶対圧圧力センサで同じタイミングで測定された圧力値の差分の平均値を用いてガス供給圧の変動を検知するため、2つのセンサの個体ばらつきや測定タイミングの誤差による測定精度の改善ができ、差圧測定型の圧力センサを用いる場合に必要な貫通孔が不要となり、火災等でガス保安装置の周囲が高温になってもガスが噴出することを防止でき、より安全性の高いガス保安装置が実現できる。
【0037】
なお、本実施の形態において、平均値を使用する構成で説明したが、平均値の代わりに中央値を使用しても同等なことができることは言うまでもない。
【0038】
(実施の形態3)
以下、実施の形態3について、
図5~
図6を用いて説明する。なお、
図5において、
図1で説明した同一機能については同一符号で示す。
【0039】
ガス保安装置300は、流路101、遮断弁102、流路101に流れるガスの流量を計測する流量計測部103、流量計測部103で計測した流量測定データを用いて、ガスの使用量を積算する制御回路304、絶対圧力が測定できるガス側を計測するガス側絶対圧圧力センサ105、大気側を計測する大気側絶対圧圧力センサ106、ガス雰囲気中に設置されている電子回路107、任意の計測時間において、ガス側絶対圧圧力センサ105および、大気側絶対圧圧力センサ106で測定された圧力をそれぞれ所定個採取する圧力値採取手段108、圧力値比較手段301、異常値無視手段302、ガス圧力判定手段309からなる。
【0040】
ここで、圧力値比較手段301は、圧力値採取手段108で得られたそれぞれの圧力値を比較する。異常値無視手段302は、圧力値比較手段301において、値が他の圧力値と明らかに異なる(例えば、3つの連続する圧力の測定値を比較し、その1つが他の測定値と1000パスカル以上の差がある、或いは、全体の平均に対しての所定割合以上の差があることで、異常と判定する)と判断された値は異常値と判断し、この異常値を除く圧力値をガス圧力判定手段309に出力する。ガス圧力判定手段309は、異常値無視手段302から出力されたガス側と大気側の圧力値でそれぞれの平均値を計算し、平均値の差分をガス供給圧として算出する。
【0041】
次に、
図6を用いて、具体的な動作説明を行う。
図2、
図5で説明した同一機能については同一符号で示す。
【0042】
ガス圧力判定手段309による圧力測定は、予め定めた時間間隔T(例えば、2秒から10秒)で定期的に実行される。
図6において、圧力測定時間T1、T2は圧力測定のタイミングを示しており、圧力測定時間T1において、圧力値採取手段108によりガスの絶対圧と大気の絶対圧力がそれぞれn個測定され、圧力値採取手段108で採取される。
【0043】
即ち、圧力測定時間T1において、ガス側絶対圧圧力センサ105により、所定間隔(例えば、5ms)毎に圧力値Pg(1)、Pg(2)、・・・Pg(n-1)、Pg(n)の計n個(例えば、32個)の圧力値が測定され、大気側絶対圧圧力センサ106により、所定間隔(例えば、5ms)毎に圧力値Pa(1)、Pa(2)、・・・Pa(m-1)、Pa(m)の計m個(例えば、32個)の圧力値が測定される。
【0044】
そして、例えば、ガス側の2回目の圧力値Pg(2)が、他の測定値と明らかに異なっている場合、圧力値比較手段301で他の値との比較によって異常値と判断され、ガス側の圧力測定時間T1では、異常値無視手段302において、2回目の圧力値Pg(2)を除いたn-1個の圧力値がガス圧力判定手段109に出力され、平均してガス側圧力値Pgが計算される。一方、大気側の圧力値で異常な値が無かった場合にはm個の圧力値がガス圧力判定手段109に出力され、平均して大気側圧力値Paが計算される。
【0045】
そして、ガス圧力判定手段109は、異常値である圧力値Pg(2)を除いたn-1個の圧力値を平均して求めたガス側圧力値Pgと大気側の絶対圧のm個の圧力値を平均しても求めた大気側圧力値Paの差分(Pg-Pa)をガス供給圧として算出する。
【0046】
制御回路304は、流量計測部103で計測した流量測定データやガス圧力判定手段109で算出されたガス供給圧やその変化を判定し、ガス漏れ等の異常がないかを判定し、異常と判断した場合には、遮断弁102で流路101を遮断して、ガスの供給を停止する。
【0047】
以上のように、本実施の形態においては、絶対圧力を計測できる2つの絶対圧圧力センサを用いてガス供給圧の変動を検知する場合に、異常な測定値を除外することで、2つのセンサの個体ばらつきや測定タイミングの誤差による測定精度の改善ができ、差圧測定型の圧力センサを用いる場合に必要な貫通孔が不要となり、火災等でガス保安装置の周囲が高温になってもガスが噴出することを防止でき、より安全性の高いガス保安装置が実現できる。
【0048】
(実施の形態4)
以下、実施の形態4について、
図7~
図8を用いて説明する。なお、
図7おいて、
図1、
図3で説明した同一機能については同一番号で示す。
【0049】
ガス保安装置400は、流路101、遮断弁102、流路101に流れるガスの流量を計測する流量計測部103、流量計測部103で計測した流量測定データを用いて、ガスの使用量を積算する制御回路404、絶対圧力が測定できるガス側を計測するガス側絶対圧圧力センサ105、大気側を計測する大気側絶対圧圧力センサ106、ガス雰囲気中に設置されている電子回路107、所定の測定時間において、ガス側絶対圧圧力センサ105および、大気側絶対圧圧力センサ106で同じタイミングで測定された圧力値の差分をn個採取する差圧値採取手段201、差圧値比較手段401、差圧異常値無視手段402、ガス圧力判定手段409からなる。
【0050】
ここで、差圧値比較手段401は、差圧値採取手段201で得られたn個の差圧値をそれぞれ比較するする。差圧異常値無視手段402は、差圧値比較手段401において、値が他の差圧値と明らかに異なる(例えば、3つの連続する圧力の測定値を比較し、その1つが他の測定値と1000パスカル以上の差がある、或いは、全体の平均に対しての所定割合以上の差があることで、異常と判定する)と判断された値は異常値として判断し、この異常値を除くn-1個の差圧値をガス圧力判定手段409に出力する。
【0051】
ガス圧力判定手段409は、差圧値比較手段401から出力されたn-1個の差圧値の平均値を計算してガス供給圧として算出する。
【0052】
次に、
図8を用いて、具体的な動作説明を行う。
図2、
図4、
図7で説明した同一機能については同一番号で示す。
【0053】
ガス圧力判定手段209による圧力測定は、予め定めた時間間隔T(例えば、2秒から10秒)で定期的に実行される。
図8において、圧力測定時間T1、T2は圧力測定のタイミングを示しており、圧力測定時間T1において、差圧値採取手段201によりガスの絶対圧と大気の絶対圧力の差圧値がn個採取される。
【0054】
即ち、圧力測定時間T1において、ガス側絶対圧圧力センサ105により、所定間隔(例えば、5ms)毎に圧力値Pg(1)、Pg(2)、・・・Pg(n-1)、Pg(n)の計n個の圧力値が測定され、一方、大気側絶対圧圧力センサ106では、ガス側絶対圧圧力センサ105による各測定と同じタイミングで圧力値Pa(1)、Pa(2)・・・Pa(n-1)、Pa(n)の計n個(例えば、32個)の圧力値が測定され、同じタイミングで測定された圧力値同士の差分値ΔP(1)=Pg(1)-Pa(1)、ΔP(2)=Pg(2)-Pa(2)、・・・ΔP(n-1)=Pg(n-1)-Pa(n-1)、ΔP(n)=Pg(n)-Pa(n)を算出する。
【0055】
ここで、例えば、ガス側の2回目の圧力値Pg(2)が、他の測定値と明らか異なっている場合、Pg(2)とPa(2)で算出された差圧値ΔP(2)は差圧値比較手段401で他の値と比較によって異常値と判断され、ガス側の圧力測定時間T1では、差圧異常値無視手段402において、2回目の差圧値ΔP(2)を除いたn-1個の差圧値がガス圧力判定手段409に出力され、差圧値でn-1回測定の平均値をガス供給圧として算出される。
【0056】
そして、ガス圧力判定手段409は、差圧異常値無視手段402から出力された異常値ΔP(2)を除くn-1個の差圧値を平均してガス供給圧力を算出する。
【0057】
制御回路404は、流量計測部103で計測した流量測定データやガス圧力判定手段409で算出されたガス供給圧やその変化を判定し、ガス漏れ等の異常がないかを判定し、異常と判断した場合には、遮断弁102で流路101を遮断して、ガスの供給を停止する。
【0058】
以上のように、本実施の形態においては、絶対圧力を計測できる2つの絶対圧圧力センサを用い、同じタイミングで計測した圧力値の差圧値の内、異常な測定値を除いてガス供給圧を算出することで、ガス供給圧の変動を正確に検知することで、2つのセンサの個体ばらつきや測定タイミングの誤差による測定精度の改善ができ、差圧測定型の圧力センサを用いる場合に必要な貫通孔が不要となり、火災等でガス保安装置の周囲が高温になってもガスが噴出することを防止でき、より安全性の高いガス保安装置が実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本開示は、ガス保安装置は、火災等でガス保安装置の周囲が高温になっても圧力センサ用の貫通穴からガスが噴出することを防止できるため、より安全性を向上できるだけでなく、より安価なガス保安装置が実現でき、一般家庭用及び業務用ガスメータ等の用途に適用できる。
【符号の説明】
【0060】
100、200、300、400 ガス保安装置
101 流路
102 遮断弁
103 流量計測部
104、204、304、404 制御回路
105 ガス側絶対圧圧力センサ(第1の圧力センサ)
106 大気側絶対圧圧力センサ(第2の圧力センサ)
107 電子回路(計測回路)
108 圧力値採取手段
109、209、309、409 ガス圧力判定手段
201 差圧値採取手段
301 圧力値比較手段
302 異常値無視手段
401 差圧値比較手段
402 差圧異常値無視手段