(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101815
(43)【公開日】2023-07-21
(54)【発明の名称】髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)組成物およびその方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/095 20060101AFI20230713BHJP
A61K 39/29 20060101ALI20230713BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230713BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20230713BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230713BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230713BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230713BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20230713BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230713BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230713BHJP
C07K 14/22 20060101ALI20230713BHJP
C12N 15/31 20060101ALI20230713BHJP
【FI】
A61K39/095
A61K39/29
A61K47/02
A61K47/34
A61P31/04
A61P37/04
A61K47/26
A61K47/18
A61K9/08
A61P43/00 121
C07K14/22 ZNA
C12N15/31
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092374
(22)【出願日】2023-06-05
(62)【分割の表示】P 2021031816の分割
【原出願日】2014-09-05
(31)【優先権主張番号】61/875,068
(32)【優先日】2013-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/926,717
(32)【優先日】2014-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/989,432
(32)【優先日】2014-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】593141953
【氏名又は名称】ファイザー・インク
(74)【代理人】
【識別番号】100133927
【弁理士】
【氏名又は名称】四本 能尚
(74)【代理人】
【識別番号】100147186
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 眞紀
(74)【代理人】
【識別番号】100174447
【弁理士】
【氏名又は名称】龍田 美幸
(74)【代理人】
【識別番号】100185960
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 理愛
(72)【発明者】
【氏名】アンナリーサ シビル アンダーソン
(72)【発明者】
【氏名】ラサッパ ガウンダー アルマグハム
(72)【発明者】
【氏名】ジョン アーウィン ファーリー
(72)【発明者】
【氏名】リア ダイアン フレチャー
(72)【発明者】
【氏名】シャノン ハリス
(72)【発明者】
【氏名】キャサリン ウテ ジャンセン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス リチャード ジョーンズ
(72)【発明者】
【氏名】ラクシュミ カンドキ
(72)【発明者】
【氏名】バウソン ローン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ランス ペレズ
(72)【発明者】
【氏名】ガリー ウォレン ズロトゥニック
(57)【要約】
【課題】多様なMnB分離株に対して有効な交差防御ワクチンまたは組成物を提供すること。
【解決手段】一態様において、本発明は、配列番号1に記載の配列を有する第一のポリペプチドと、配列番号2に記載の配列を有する第二のポリペプチドとを含む組成物に関する。一実施形態では、組成物は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む約120μg/mlの第一のポリペプチド、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む120μg/mlの第二のポリペプチド、第一のポリペプチドに対して約2.8のモル比のポリソルベート80、第二のポリペプチドに対して約2.8のモル比のポリソルベート80、約0.5mg/mlのアルミニウム、約10mMのヒスチジン、および約150mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、組成物の用量は、合計体積で約0.5mlである。一実施形態では、2用量の組成物によって、多様な異種のサブファミリーAおよびサブファミリーB株に対する殺菌力価がヒトにおいて誘導される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型BサブファミリーA株およびB株に対して免疫応答を誘発するために用いる、
a)配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む第一の脂質付加ポリペプチドと、
b)配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む第二の脂質付加ポリペプチドと
を含む液体組成物。
【請求項2】
組成物が、ポリソルベート80、アルミニウム、ヒスチジン、および塩化ナトリウムをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
組成物が、約120μg/mlの第一のポリペプチド;約120μg/mlの第二のポリペプチド;約2.8モル比のポリソルベート80;約0.5mg/mlのアルミニウム;約10mMのヒスチジン;および約150mMの塩化ナトリウムを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
組成物が、0.5ml用量につき、約60μg/mlの第一のポリペプチド;約60μg/mlの第二のポリペプチド;約18μgのポリソルベート80;約250μgのアルミニウム;約780μgのヒスチジン;および約4380μgの塩化ナトリウムを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
組成物が、配列番号1との配列同一性が100%未満であるポリペプチドをさらに含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
第一のポリペプチドが合計で258アミノ酸を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
第一のポリペプチドがポリペプチドのN末端に配列番号3に記載のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
組成物が、配列番号2との配列同一性が100%未満であるポリペプチドをさらに含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
第二のポリペプチドが合計で261アミノ酸を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
第二のポリペプチドがポリペプチドのN末端に配列番号3に記載のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
組成物が、多くとも2つの脂質付加ポリペプチドを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
第一のポリペプチドが配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
第二のポリペプチドが配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
組成物が凍結乾燥されていない、髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型BサブファミリーA株およびB株に対して免疫応答を誘発するために用いる、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、その全体がそれぞれ参照により本明細書に援用される、2013年9月8日出願の米国仮特許出願第61/875,068号、2014年1月13日出願の米国仮特許出願第61/926,717号、および2014年5月6日出願の米国仮特許出願第61/989,432号の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)組成物およびその方法に関する。
【背景技術】
【0003】
髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)は、敗血症、髄膜炎、および死を引き起こしうるグラム陰性被包性細菌である。髄膜炎菌(N.meningitidis)は、化学的におよび抗原に関して特徴的な多糖莢膜に基づき、少なくとも12の血清型(血清型A、B、C、29E、H、I、K、L、W-135、X、YおよびZが含まれる)に分類することができる。その血清型のうちの5つ(A、B、C、Y、W135)である菌株が、疾患の大部分の原因である。
【0004】
髄膜炎菌性髄膜炎は、抗生物質が利用可能であるにもかかわらず、小児および若年成人を数時間で死に至らしめることのある破壊的な疾患である。髄膜炎菌の血清型A、B、C、YおよびW135および/またはXに対する、改良された免疫原性組成物が求められている。
【0005】
現在のところ、広範なMnB分離株に対して有効な交差防御ワクチンまたは組成物は、まだ市販されていない。たとえば、B血清型疾患に対する防御について認可されている多成分組成物に関するこれまでの公表結果では、非相同のLP2086(fHBP)変異体を発現する複数菌株に対する直接の殺菌性免疫応答は、少なくとも青年では実証されていない。B血清型疾患に対する防御用の多成分組成物に関するこれまでの公表結果は、せいぜい、多成分組成物中のLP2086(fHBP)変異体と相同であるLP2086(fHBP)変異体に対する免疫原性を示しているにすぎないと思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国仮特許出願第61/875,068号
【特許文献2】米国仮特許出願第61/926,717号
【特許文献3】米国仮特許出願第61/989,432号
【特許文献4】WO/2012/032489
【特許文献5】WO/2013/132452
【特許文献6】米国特許公開第US20120093852号
【特許文献7】米国特許公開第US20130243807号
【特許文献8】米国特許公開US2012/0093852
【特許文献9】WO2012025873
【特許文献10】米国特許公開US2013/0171194
【特許文献11】米国特許公開US2009/0016946
【特許文献12】米国特許第7479283号
【特許文献13】WO1990/013313
【特許文献14】EP1666057B1
【特許文献15】米国特許第5,820,870号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】UK Marketing Authorisation PL06745/0121
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、多様なMnB分離株に対して有効な交差防御ワクチンまたは組成物が求められており、同様に(たとえば、異なる地理的領域を代表する)多様なまたは異種の髄膜炎菌株の一団に対する現実世界でのワクチン有効範囲を明らかにする必要もある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これらおよび他の要求に応じるために、本発明は、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)組成物およびその方法に関する。
【0010】
一態様において、本発明は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む約120μg/mlの第一の脂質付加ポリペプチド、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む120μg/mlの第二の脂質付加ポリペプチド、第一のポリペプチドに対して約2.8のモル比のポリソルベート80、第二のポリペプチドに対して約2.8のモル比のポリソルベート80、約0.5mg/mlのアルミニウム、約10mMのヒスチジン、および約150mMの塩化ナトリウムを含む組成物に関する。一実施形態では、初回用量は、合計体積で約0.5mlである。一実施形態では、組成物は、髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型Bに対する殺菌免疫応答を誘発する。一実施形態では、組成物は、髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型A、C、29E、H、I、K、L、W-135、X、Y、またはZに対する殺菌免疫応答を誘発する。一実施形態では、組成物は、配列番号1との配列同一性が100%未満であるポリペプチドをさらに含まない。一実施形態では、組成物は、配列番号2との配列同一性が100%未満であるポリペプチドをさらに含まない。一実施形態では、第一のポリペプチドは、合計で258アミノ酸を有する。一実施形態では、第二のポリペプチドは、合計で261アミノ酸を有する。一実施形態では、組成物は、初回用量を投与された後のヒトにおいて、初回用量を投与される前のヒトにおける血清免疫グロブリンの殺菌力価の少なくとも2倍の強さである血清免疫グロブリンの殺菌力価を誘導し、殺菌力価の増大は、ヒト補体を使用する血清殺菌検定において同一条件下で測定される。一実施形態では、第一の脂質付加ポリペプチドは、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる。一実施形態では、第二の脂質付加ポリペプチドは、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる。
【0011】
別の態様において、本発明は、ヒトにおいて髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)に対する免疫応答を誘発する方法に関する。方法は、ヒトに有効量の組成物の初回用量および二回目用量を投与することを含み、前記組成物は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む120μg/mlの第一の脂質付加ポリペプチド、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む120μg/mlの第二の脂質付加ポリペプチド、第一のポリペプチドに対して2.8のモル比のポリソルベート80、第二のポリペプチドに対して2.8のモル比のポリソルベート80、0.5mg/mlのアルミニウム、10mMのヒスチジン、および150mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、組成物の用量は、合計体積0.5mlである。一実施形態では、ヒトに多くとも2用量の組成物を投与する。一実施形態では、ヒトに組成物の追加免疫用量をさらに投与しない。一実施形態では、ヒトに組成物の三回目用量を投与する。一実施形態では、三回目用量の後、ヒトに組成物の追加免疫用量をさらに投与しない。一実施形態では、ヒトに組成物の四回目用量をさらに投与しない。一実施形態では、三回目用量は、初回用量の後約6か月の期間内にヒトに投与する。一実施形態では、二回目用量は、初回用量から少なくとも30日後に投与する。一実施形態では、方法は、組成物の三回目用量を投与することをさらに含み、三回目用量は、二回目用量から少なくとも90日後に投与する。一実施形態では、組成物は、ヒト補体を使用する血清殺菌検定において同一条件下で測定したとき、初回用量を投与された後のヒトにおいて、初回用量を投与される前のヒトにおける血清免疫グロブリンの殺菌力価の少なくとも2倍の強さである血清免疫グロブリンの殺菌力価を誘導する。一実施形態では、免疫応答は、A05を発現する髄膜炎菌(N.meningitidis)株と異種である髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型BサブファミリーA株に対して殺菌性である。一実施形態では、免疫応答は、B01を発現する髄膜炎菌(N.meningitidis)株と異種である髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型BサブファミリーB株に対して殺菌性である。一実施形態では、免疫応答は、髄膜炎菌(N.meningitidis)株M98250771と異種である髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型BサブファミリーA株に対して殺菌性である。一実施形態では、免疫応答は、髄膜炎菌(N.meningitidis)株CDC1127と異種である髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型BサブファミリーB株に対して殺菌性である。好ましい実施形態では、免疫応答は、髄膜炎菌(N.meningitidis)株CDC1573と異種である髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型BサブファミリーB株に対して殺菌性である。一実施形態では、第一のポリペプチドは、合計で258アミノ酸を有する。一実施形態では、第二のポリペプチドは、合計で261アミノ酸を有する。一実施形態では、第一の脂質付加ポリペプチドは、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる。一実施形態では、第二の脂質付加ポリペプチドは、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる。
【0012】
別の態様において、本発明は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む60μgの第一の脂質付加ポリペプチド、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む60μgの第二の脂質付加ポリペプチド、第一のポリペプチドに対して2.8のモル比のポリソルベート80、第二のポリペプチドに対して2.8のモル比のポリソルベート80、0.5mg/mlのアルミニウム、10mMのヒスチジン、および150mMの塩化ナトリウムを含み、合計体積が約0.5mlである組成物に関する。一実施形態では、組成物は、A05を発現する髄膜炎菌(N.meningitidis)株と異種である髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型BサブファミリーA株に対する殺菌免疫応答を誘発する。一実施形態では、組成物は、B01を発現する髄膜炎菌(N.meningitidis)株と異種である髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型BサブファミリーB株に対する殺菌免疫応答を誘発する。一実施形態では、組成物は、ヒト補体を使用する血清殺菌検定において同一条件下で測定したとき、初回用量を投与された後のヒトにおいて、初回用量を投与される前のヒトにおける血清免疫グロブリンの殺菌力価の少なくとも2倍の強さである血清免疫グロブリンの殺菌力価を誘導する。一実施形態では、組成物は、配列番号1との配列同一性が100%未満であるポリペプチドをさらに含まない。一実施形態では、組成物は、配列番号2との配列同一性が100%未満であるポリペプチドをさらに含まない。一実施形態では、第一のポリペプチドは、合計で258アミノ酸を有する。一実施形態では、第二のポリペプチドは、合計で261アミノ酸を有する。一実施形態では、第一の脂質付加ポリペプチドは、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる。一実施形態では、第二の脂質付加ポリペプチドは、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】hSBA力価がLLOQ以上に達する対象の割合を示すグラフである。hSBA=ヒト補体を使用する血清殺菌検定、LLOQ=定量下限。
【
図2】rLP2086で免疫処置後の個々のヒト対象のうち、プリンストン大学アウトブレイク株およびUCSBアウトブレイク株に対するhSBA力価の上昇が4倍に達する対象の百分率を示すグラフである(B1971012試験-実施例5、実施例6に記載)。臨床試験B1971012において2価rLP2086で免疫処置した9人のヒト対象からの血清サンプルを、プリンストン大学およびUCSBからのMnBアウトブレイク株を使用する試験的hSBAにおいて評価した。実施例9を参照されたい。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明者らは、意外にも、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む第一の脂質付加ポリペプチドと、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む第二の脂質付加ポリペプチドとを含む組成物を発見した。組成物は、ヒトにおいて、許容される安全性プロファイルを有し、組成物は、驚いたことに、ヒトにおいて、少なくとも2種類を超える多様な髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)株に対して、広く交差反応性の殺菌免疫応答を惹起する。
【0015】
本発明者らは、意外にも、2用量投与スケジュールおよび3用量投与スケジュールによって、高い割合のヒト対象において、ワクチンと非相同のLP2086(H因子結合タンパク質(fHBP))を有する髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型BサブファミリーAおよびBからの試験株に対して、8以上のhSBA力価が得られたことをさらに発見した。3用量投与スケジュールでは、2用量投与スケジュールと比較したとき、ヒトにおいて、多様なMnB臨床菌株に対する最も広い防御を得ることができる。
【0016】
本発明者らは、意外にも、rLP2086組成物と、ヒトパピローマウイルスに対する四価の免疫原性組成物(HPV4)を同時に投与した後、ヒトパピローマウイルスおよび髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型Bに対する活発な免疫応答が生じたことも発見した。たとえば、rLP2086組成物とHPV4組成物の同時投与によって、少なくとも、rLP2086組成物中のfHBPと非相同であるfHBPを発現する髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型B試験株に対する免疫応答が生じた。このような異種試験株としては、それぞれがrLP2086組成物中のfHBPと非相同であるA22 fHBP、A56 fHBP、B24 fHBP、またはB44 fHBPを発現する野生型髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型B株が挙げられる。数ある中でもA22 fHBP、A56 fHBP、B24 fHBP、およびB44 fHBPを始めとする変異体fHBPタンパク質について記載している、WO/2012/032489、WO/2013/132452、米国特許公開第US20120093852号、および米国特許公開第US20130243807号を参照されたい。これら参考文献は、その全体がそれぞれ参照により本明細書に援用される。意外にも、同時投与によって、少なくともHPV型6、11、16、および/または18に対する免疫応答も生じた。rLP2086組成物とHPV4組成物の同時投与後のHPV型に対する免疫応答は、rLP2086組成物不在でHPV4組成物を投与して生じた免疫応答と比べても劣っていなかった。
【0017】
加えて、本発明者らは、意外にも、rLP2086組成物と、ジフテリア、破傷風、百日咳、および灰白髄炎に対する免疫原性組成物を同時に投与した後、ジフテリア、破傷風、百日咳、および灰白髄炎と、髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型Bに対する活発な免疫応答が生じたことを発見した。たとえば、rLP2086組成物とREPEVAX組成物の同時投与によって、少なくとも、rLP2086組成物中のfHBPと非相同であるfHBPを発現する髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型B試験株に対する免疫応答が生じた。同時投与によって、意外にも、少なくともREPEVAXの9種類の抗原:ジフテリア、破傷風、百日咳トキソイド、百日咳線維状赤血球凝集素、百日咳パータクチン、百日咳線毛凝集原2+3型、ポリオウイルス1型、ポリオウイルス2型、ポリオウイルス3型に対する免疫応答も生じた。rLP2086組成物とREPEVAX組成物の同時投与後のREPEVAX抗原に対する免疫応答は、rLP2086組成物不在でREPEVAX組成物を投与して生じた免疫応答と比べても劣っていなかった。
【0018】
さらに、本発明者らは、意外にも、rLP2086組成物が、fHBP B153変異体を発現するST409髄膜炎菌(N.meningitidis)株に対する殺菌免疫応答を誘発することを発見した。たとえば、fHBP B153変異体を発現する菌株は、ヒト補体を使用する血清殺菌検定(hSBA)において、2価のヒトrLP2086組成物抗血清と接触させたとき、死滅しやすくなることが判明した。
【0019】
組成物およびワクチン
一態様において、本発明は、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)に対する組成物に関する。組成物は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有する第一の脂質付加ポリペプチドと、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有する第二の脂質付加ポリペプチドとを含む。
【0020】
本発明者らは、意外にも、髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型Bの複数菌株に対して有効な広域防御免疫応答を誘発する単一の髄膜炎菌(N.meningitidis)ポリペプチド成分を発見した。したがって、一実施形態では、組成物は、融合タンパク質を含まない。一実施形態では、組成物は、キメラタンパク質を含まない。一実施形態では、組成物は、ハイブリッドタンパク質を含まない。一実施形態では、組成物は、ペプチド断片をさらに含まない。別の実施形態では、組成物は、fHBPでないナイセリアポリペプチドをさらに含まない。たとえば、一実施形態では、組成物は、PorAタンパク質を含まない。別の実施形態では、組成物は、NadAタンパク質を含まない。別の実施形態では、組成物は、ナイセリアヘパリン結合抗原(NHBA)をさらに含まない。別の実施形態では、組成物は、ナイセリア外膜小胞(OMV)をさらに含まない。好ましい実施形態では、組成物は、第一のポリペプチドおよび第二のポリペプチド以外の抗原をさらに含まない。
【0021】
別の態様において、本発明者らは、意外にも、多くとも2種類の髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型B株由来のポリペプチド抗原が、髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型Bの複数菌株に対して有効な広域防御免疫応答を誘発することを発見した。したがって、一実施形態では、組成物は、髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型BサブファミリーA M98250771株および/または髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型BサブファミリーB CDC1573株由来のものでないポリペプチドをさらに含まない。
【0022】
一実施形態では、組成物は、配列番号1との配列同一性が100%未満であるポリペプチドをさらに含まない。別の実施形態では、組成物は、配列番号2との配列同一性が100%未満であるポリペプチドをさらに含まない。たとえば、組成物は、配列番号1および/または配列番号2の全長との配列同一性が100%未満であるポリペプチドをさらに含まない。
【0023】
一実施形態では、組成物は、ポリソルベート80、アルミニウム、ヒスチジン、および塩化ナトリウムをさらに含む。一実施形態では、組成物は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む約60μgの第一の脂質付加ポリペプチド、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む約60μgの第二の脂質付加ポリペプチド、各ポリペプチドに対して2.8のモル比のポリソルベート80、リン酸アルミニウムとしての0.5mgアルミニウム/ml、10mMのヒスチジン、および150mMの塩化ナトリウムを含み、組成物は、合計体積が約0.5mlであることが好ましい。
【0024】
別の態様において、組成物は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む約120μg/mlの第一の脂質付加ポリペプチド、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む約120μg/mlの第二の脂質付加ポリペプチド、各ポリペプチドに対して2.8のモル比のポリソルベート80、リン酸アルミニウムとしての0.5mgアルミニウム/ml、10mMのヒスチジン、および150mMの塩化ナトリウムを含む。
【0025】
別の態様において、組成物は、a)配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む60μgの第一の脂質付加ポリペプチド、b)配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む60μgの第二の脂質付加ポリペプチド、c)18μgのポリソルベート80、d)250μgのアルミニウム、e)780μgのヒスチジン、およびf)4380μgの塩化ナトリウムを含む。
【0026】
例示的一実施形態では、組成物は、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる約60μgの第一の脂質付加ポリペプチド、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる約60μgの第二の脂質付加ポリペプチド、第一の脂質付加ポリペプチドに対して、また第二の脂質付加ポリペプチドに対して2.8のモル比のポリソルベート80、0.5mg/mlのリン酸アルミニウム、10mMのヒスチジン、および150mMの塩化ナトリウムを含み、組成物は、合計体積が約0.5mlである。この例示的実施形態において、組成物は、緩衝剤処理された等張性滅菌液体懸濁液である。この例示的実施形態において、組成物は、pHが6.0である。この例示的実施形態において、第一のポリペプチドおよび第二のポリペプチドは、アルミニウムに吸着されている。
【0027】
一実施形態では、組成物は、合計体積が約0.5mlである。一実施形態では、組成物の初回用量は、合計体積が約0.5mlである。「初回用量」とは、0日目に投与される組成物の用量を指す。「二回目用量」または「三回目用量」とは、初回用量に引き続いて投与される組成物の用量を指し、初回用量と同じ量でも、そうでなくてもよい。
【0028】
組成物は、初回用量がヒトに投与された後、免疫原性を有する。一実施形態では、初回用量は、合計体積で約0.5mlである。
【0029】
組成物は、ヒト補体を使用する血清殺菌検定(hSBA)において同一条件下で測定したとき、初回用量を投与された後のヒトにおいて、初回用量を投与される前のヒトにおける血清免疫グロブリンの殺菌力価の少なくとも1倍の強さ、好ましくは少なくとも2倍の強さを超える血清免疫グロブリンの殺菌力価を誘導する。
【0030】
殺菌力価または殺菌免疫応答は、髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型Bに対するものである。好ましい実施形態では、殺菌力価または殺菌免疫応答は、髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型BサブファミリーA株および髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型BサブファミリーB株に対するものである。殺菌力価または殺菌免疫応答は、少なくとも髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型B、サブファミリーB、B01菌株に対するものであることが最も好ましい。
【0031】
一実施形態では、組成物は、ヒト補体を使用する血清殺菌検定において同一条件下で測定したとき、組成物の用量を投与された後のヒトにおいて、前記用量を投与される前のヒトにおける血清免疫グロブリンの殺菌力価の少なくとも1倍を超える、たとえば、少なくとも1.01倍、1.1倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、または16倍の強さである血清免疫グロブリンの殺菌力価を誘導する。
【0032】
一実施形態では、組成物は、免疫原性組成物である。一実施形態では、組成物は、ヒト用の免疫原性組成物である。別の実施形態では、組成物は、ワクチンである。「ワクチン」とは、その抗原に特異的である免疫応答を誘発する少なくとも1つのエピトープを含んでいる抗原を含む組成物を指す。ワクチンは、皮下、経口、口鼻、または鼻腔内の投与経路によって、直接対象に投与することができる。ワクチンは、筋肉内投与することが好ましい。一実施形態では、組成物は、ヒトワクチンである。一実施形態では、組成物は、髄膜炎菌(N.meningitidis)に対する免疫原性組成物である。
【0033】
一実施形態では、組成物は、液体組成物である。好ましい実施形態では、組成物は、液体懸濁液組成物である。別の好ましい実施形態では、組成物は、凍結乾燥されていない。
【0034】
第一のポリペプチド
一実施形態では、組成物は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有する第一のポリペプチドを含む。好ましい一実施形態では、組成物は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む約60μgの第一のポリペプチドを含み、組成物は、合計体積が0.5mlであることが好ましい。別の実施形態では、組成物は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む約120μg/mlの第一のポリペプチドを含む。ポリペプチドは、髄膜炎菌(N.meningitidis)株M98250771からの改変されたH因子結合タンパク質(fHBP)である。fHBPについての記述は、その全体がそれぞれ参照により本明細書に援用される、WO2012032489および米国特許公開US2012/0093852で開示されている。ポリペプチドは、ポリペプチドの3箇所の位置において共有結合で連結した主な3種の脂肪酸C16:0、C16:1、およびC18:1によって、N末端側が脂質付加されている。第一のポリペプチドは、合計で258アミノ酸を含む。
【0035】
第一のポリペプチドは、髄膜炎菌(N.meningitidis)株M98250771からの対応する野生型配列と比べると、ポリペプチドのN末端側領域に導入された2つの変更を含む。2番目の位置にあるグリシンは、クローン化部位を導入する結果として付加される。第二の変更は、4つのアミノ酸の欠失を含む。したがって、一実施形態では、第一のポリペプチドは、N末端にC-G-S-S配列(配列番号3)を含む。配列番号1の最初の4つのアミノ酸残基を参照されたい。
【0036】
第一のポリペプチド配列と野生型ナイセリア配列のN末端側の相違点を以下に示す。したがって、一実施形態では、第一のポリペプチドは、配列番号1に記載のアミノ酸配列の少なくとも最初の2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、またはそれ以上のアミノ酸残基を含む。第一のポリペプチドは、配列番号1の少なくとも最初の4つ、より好ましくは少なくとも最初の6つ、最も好ましくは少なくとも最初の8つのアミノ酸残基を含むことが好ましい。
【0037】
組換えとナイセリアサブファミリーA LP2086ポリペプチドの予想N末端側配列の比較
rLP2086 M98250771 CGSS-----GGGGVAAD(配列番号4)
ナイセリアLP2086 M98250771 C-SSGS-GSGGGGVAAD(配列番号5)
>A05(配列番号1)
CGSSGGGGVAADIGTGLADALTAPLDHKDKGLKSLTLEDSISQNGTLTLSAQGAEKTFKVGDKDNSLNTGKLKNDKISRFDFVQKIEVDGQTITLASGEFQIYKQDHSAVVALQIEKINNPDKIDSLINQRSFLVSGLGGEHTAFNQLPSGKAEYHGKAFSSDDAGGKLTYTIDFAAKQGHGKIEHLKTPEQNVELASAELKADEKSHAVILGDTRYGSEEKGTYHLALFGDRAQEIAGSATVKIREKVHEIGIAGKQ
【0038】
一実施形態では、第一のポリペプチドは、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、第一のポリペプチドは、合計で258アミノ酸を有する。一実施形態では、第一のポリペプチドは、配列番号1との配列同一性が100%未満であるアミノ酸配列を含まない。別の実施形態では、第一のポリペプチドは、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる。別の実施形態では、第一のポリペプチドは、アミノ酸配列KDNを含む。たとえば、配列番号1のアミノ酸残基73~75を参照されたい。別の実施形態では、第一のポリペプチドは、ポリペプチドのN末端に配列番号3に記載のアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、第一のポリペプチドは、ポリペプチドのN末端に配列番号4に記載のアミノ酸配列を含む。
【0039】
好ましい実施形態では、第一のポリペプチドは、当技術分野で知られている標準技術を使用して、組換え宿主細胞において容易に発現される。別の好ましい実施形態では、第一のポリペプチドは、配列番号1のNおよび/またはCドメイン上に殺菌性エピトープを含む。一実施形態では、第一のポリペプチドは、配列番号1に記載のアミノ酸配列の少なくとも最初の4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100アミノ酸残基を含む。第一のポリペプチドは、配列番号1の少なくとも最初の2つ、より好ましくは少なくとも最初の4つ、最も好ましくは少なくとも最初の8つのアミノ酸残基を含むことが好ましい。
【0040】
別の実施形態では、第一のポリペプチドは、配列番号1に記載のアミノ酸配列の少なくとも最後の4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100アミノ酸残基を含む。
【0041】
第二のポリペプチド
一実施形態では、組成物は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有する第二のポリペプチドを含む。好ましい一実施形態では、組成物は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む約60μgの第二のポリペプチドを含み、組成物は、合計体積が0.5mlであることが好ましい。別の実施形態では、組成物は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む120μg/mlの第二のポリペプチドを含む。ポリペプチドは、髄膜炎菌(N.meningitidis)株CDC1573からのH因子結合タンパク質(fHBP)である。fHBPについての記述は、その全体がそれぞれ参照により本明細書に援用される、WO2012032489および米国特許公開US2012/0093852で開示されている。ポリペプチドは、ポリペプチドの3箇所の位置において共有結合で連結した主な3種の脂肪酸C16:0、C16:1、およびC18:1によって、N末端側が脂質付加されている。第二のポリペプチドは、合計で261アミノ酸を含む。一実施形態では、第二のポリペプチドは、N末端にC-G-S-S配列(配列番号3)を含む。配列番号2の最初の4つのアミノ酸残基を参照されたい。
>B01(配列番号2)
CGSSGGGGSGGGGVTADIGTGLADALTAPLDHKDKGLKSLTLEDSISQNGTLTLSAQGAEKTYGNGDSLNTGKLKNDKVSRFDFIRQIEVDGQLITLESGEFQVYKQSHSALTALQTEQEQDPEHSEKMVAKRRFRIGDIAGEHTSFDKLPKDVMATYRGTAFGSDDAGGKLTYTIDFAAKQGHGKIEHLKSPELNVDLAVAYIKPDEKHHAVISGSVLYNQDEKGSYSLGIFGEKAQEVAGSAEVETANGIHHIGLAAKQ
【0042】
一実施形態では、第二のポリペプチドは、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、第二のポリペプチドは、合計で261アミノ酸を有する。一実施形態では、第二のポリペプチドは、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる。別の実施形態では、第二のポリペプチドは、配列番号2との配列同一性が100%未満であるポリペプチドをさらに含まない。好ましい実施形態では、第一のポリペプチドおよび第二のポリペプチドは、それぞれのポリペプチドのN末端にC-G-S-S(配列番号3)配列を含む。
【0043】
好ましい実施形態では、第二のポリペプチドは、当技術分野で知られている標準技術を使用して、組換え宿主細胞において容易に発現される。別の好ましい実施形態では、第二のポリペプチドは、配列番号2のNおよび/またはCドメイン上に殺菌性エピトープを含む。一実施形態では、第二のポリペプチドは、配列番号2に記載のアミノ酸配列の少なくとも最初の2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100アミノ酸残基を含む。第二のポリペプチドは、配列番号2の少なくとも最初の2つ、より好ましくは少なくとも最初の4つ、最も好ましくは少なくとも最初の8つのアミノ酸残基を含むことが好ましい。
【0044】
別の実施形態では、第二のポリペプチドは、配列番号2に記載のアミノ酸配列の少なくとも最後の4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100アミノ酸残基を含む。
【0045】
ポリソルベート80
ポリソルベート80(PS-80)は、非イオン性界面活性剤である。モノクローナル抗体に基づくin vitro効力検定を使用しての安定性加速試験では、最終製剤においてPS-80のMnB rLP2086タンパク質に対するモル比がより大きい場合のサブファミリーBタンパク質の不安定性が実証された。様々な比率のPS-80を用いた別の実験では、効力の保持に最適な、PS-80のMnB rLP2086タンパク質に対するモル比は、およそ2.8±1.4であることが示された。
【0046】
組成物中のPS-80の濃度は、PS-80のポリペプチドに対するモル比に応じて決まる。一実施形態では、組成物は、第一のポリペプチドに対して、また第二のポリペプチドに対して2.8±1.4のモル比のPS-80を含む。一実施形態では、組成物は、第一のポリペプチドに対して、また第二のポリペプチドに対して2.8±1.1のモル比のPS-80を含む。一実施形態では、組成物は、ポリペプチドに対して少なくとも1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、または3.3のモル比のPS-80を含む。組成物は、ポリペプチドに対して2.8のモル比のPS-80を含むことが好ましい。
【0047】
PS-80の対ポリペプチドモル比は、どちらの値もモルで示される、PS-80の測定濃度および合計ポリペプチド測定濃度から算出することにより求める。たとえば、PS-80の対タンパク質モル比は、(たとえば、逆相高圧液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)による)PS-80の測定濃度を、(たとえば、イオン交換高圧液体クロマトグラフィー(IEX-HPLC)による)最終原薬中の合計タンパク質測定濃度に対して算出することにより求められ、どちらの値もモルで示される。
【0048】
ワクチン製剤中のポリソルベート80の濃度の定量化には、RP-HPLCを使用する。界面活性剤の濃度は、脂肪酸部分のけん化によって求められ、ポリソルベート80は、40℃でのアルカリ加水分解によって遊離オレイン酸に変換される。C18カラムを使用するRP-HPLCによってサンプルを分離し、UV検出器を200nmの波長で使用して定量化する。
【0049】
第一および第二のポリペプチドは、陰イオン交換HPLCによって分割される。rLP2086(fHBP)サブファミリーAおよびBタンパク質は、異なる保持時間で溶離し、それぞれのrLP2086タンパク質基準材料に対して生成された検量線を使用して定量化される。
【0050】
用語「モル比」ならびにfHBPおよびPS-80を含む免疫原性組成物についての記述は、その全体がそれぞれ参照により本明細書に援用される、WO2012025873および米国特許公開US2013/0171194でさらに開示されている。
【0051】
本明細書で使用する用語「モル比」とは、組成物中の2種の異なる要素のモル数の比を指す。一部の実施形態では、モル比は、界面活性剤のモルのポリペプチドのモルに対する比である。一部の実施形態では、モル比は、PS-80のモルのタンパク質のモルに対する比である。一実施形態では、モル比は、タンパク質濃度およびポリソルベート80濃度に基づき、次式を使用して算出することができる。
【0052】
【0053】
一実施形態では、組成物は、約0.0015、0.0017、0.0019、0.0021、0.0023、0.0025、0.0027、0.0029、0.0031、0.0033、0.0035、0.0037、0.0039、0.0041、0.0043、0.0045、0.0047、0.0049、0.0051mg/mLのPS-80を含む。組成物は、約0.0035mg/mLのPS-80を含むことが好ましい。
【0054】
別の実施形態では、組成物は、約10μg、11μg、12μg、13μg、14μg、15μg、16μg、17μg、18μg、19μg、20μg、21μg、22μg、23μg、24μg、または25μgのPS-80を含む。好ましい実施形態では、組成物は、約18μgのPS-80を含む。
【0055】
別の実施形態では、組成物は、0.0005%~1%の範囲に及ぶPS-80濃度を含む。たとえば、組成物中のPS-80濃度は、少なくとも0.0005%、0.005%、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.10%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、または1.1%のPS-80でよい。好ましい実施形態では、組成物は、約0.07%のPS-80を含む。
【0056】
任意の最小値を本明細書に記載の任意の最大値と組み合わせて、範囲を規定してもよい。
【0057】
アルミニウム
組成物は、約0.5mg/mlのリン酸アルミニウムを含むことが好ましい。一実施形態では、組成物は、リン酸アルミニウムとしての約0.5mgのアルミニウム/mlを含む。0.50mg/mlのAlPO4を安定剤として加えると、製造しやすさおよび安定性が向上する。この濃度により、サブファミリーAおよびBタンパク質のアルミニウムへの結合(90%以上の結合)が維持される。
【0058】
リン酸アルミニウムの製造方法は、その全体が参照により援用される、米国特許公開US2009/0016946に記載されている。
【0059】
一実施形態では、組成物は、アルミニウム以外に多価カチオンをさらに含まない。一実施形態では、組成物は、Al(OH)3またはAl(SO4)3をさらに含まない。
【0060】
添加剤
一実施形態では、組成物は、ヒスチジンを含む。一実施形態では、組成物は、塩化ナトリウムを含む。組成物は、約10mMのヒスチジンおよび約150mMの塩化ナトリウムを含むことが好ましい。一実施形態では、組成物は、10mMのヒスチジンおよび150mMの塩化ナトリウムを含む。
【0061】
別の実施形態では、組成物は、約650μg、660μg、670μg、680μg、690μg、700μg、710μg、720μg、730μg、740μg、750μg、760μg、770μg、780μg、790μg、800μg、810μg、820μg、830μg、840μg、または850μgのヒスチジンを含む。組成物は、約780μgのヒスチジンを含むことが好ましい。任意の最小値を本明細書に記載の任意の最大値と組み合わせて、範囲を規定してもよい。
【0062】
一実施形態では、組成物は、トリス、リン酸、またはコハク酸緩衝剤を含む。好ましい実施形態では、組成物は、トリス緩衝剤を含まない。好ましくは、組成物は、リン酸緩衝剤を含まない。好ましい一実施形態では、組成物は、コハク酸緩衝剤を含まない。好ましい実施形態では、組成物は、ヒスチジン緩衝剤を含む。
【0063】
好ましい実施形態では、組成物のpHは、6.0~7.0の間であり、pH6.0が最も好ましい。一実施形態では、組成物のpHは、高くとも6.1である。
【0064】
殺菌活性
組成物をヒトに投与することによって誘発される免疫応答は、4つの髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型B(MnB)株に対して、ヒト補体を使用する血清殺菌検定(hSBA)を使用して明らかにされる。hSBAにおいて使用する4MnB株は、菌株プールから選択した。菌株プールは、米国およびヨーロッパから臨床的に関係のある髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型B株を体系的に集めた収蔵物であった。SBA用の4菌株のうちの2種類は、髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型B LP2086(fHBP)サブファミリーAからのものであり、4菌株のうちの別の2種類は、髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型B LP2086(fHBP)サブファミリーBからのものである。
【0065】
すべての試験株、特に、第一のポリペプチドと非相同である配列を有するリポタンパク質2086変異体を発現する菌株に高い割合のhSBAが応答することは、組成物が防御性の広いワクチンであること、および少なくとも髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型BサブファミリーA株に対して、高い血清防御を付与するのに2用量で十分であることを示唆する。
【0066】
すべての試験株、特に、第一のポリペプチドおよび第二のポリペプチドの両方と非相同である配列を有するリポタンパク質2086変異体を発現する菌株に高い割合のhSBAが応答することは、組成物が防御性の広いワクチンであること、およびrLP2086(FHBP)サブファミリーAおよび/またはサブファミリーBを発現する髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型B株に対して高い血清防御を付与するのに、約6か月の期間内に多くとも3用量で十分であることを示唆する。
【0067】
一実施形態では、hSBA菌株は、LP2086(fHBP)サブファミリーA株である。一実施形態では、hSBA菌株は、A05を発現する髄膜炎菌(N.meningitidis)株と異種である、リポタンパク質2086変異体を発現するLP2086(fHBP)サブファミリーA株である。たとえば、一実施形態では、hSBA菌株は、菌株M98250771と異種である、リポタンパク質2086変異体を発現するLP2086(fHBP)サブファミリーA株である。一実施形態では、hSBA菌株は、LP2086(fHBP)A22株である。別の実施形態では、hSBA菌株は、LP2086(fHBP)A56株である。別の実施形態では、hSBA菌株は、LP2086(fHBP)A22およびLP2086(fHBP)A56株である。別の実施形態では、hSBA菌株は、LP2086A04株である。一実施形態では、hSBA菌株は、LP2086 A05株である。一実施形態では、hSBA菌株は、LP2086 A12株である。一実施形態では、hSBA菌株は、LP2086 A22株である。一実施形態では、hSBA菌株は、LP2086 A12株である。一実施形態では、hSBA菌株は、LP2086 A04株である。一実施形態では、hSBA菌株は、LP2086 A19株である。一実施形態では、hSBA菌株は、LP2086 A07株である。別の実施形態では、hSBA菌株には、A22、A12、A19、A05、およびA07、またはこれらのいずれかの組合せが含まれる。一実施形態では、hSBA菌株には、A06、A15、およびA29、またはこれらのいずれかの組合せが含まれる。
【0068】
一実施形態では、免疫応答は、A05を発現する髄膜炎菌(N.meningitidis)株と異種である髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型BサブファミリーA株に対して殺菌性である。一実施形態では、免疫応答は、髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型B A22株に対するものである。一実施形態では、免疫応答は、髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型B A56株に対するものである。一実施形態では、免疫応答は、髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型B A06株に対するものである。一実施形態では、免疫応答は、髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型B A15株に対するものである。一実施形態では、免疫応答は、髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型B A29株に対するものである。一実施形態では、免疫応答は、髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型B A62株に対するものである。一実施形態では、免疫応答は、髄膜炎菌(N.meningitidis)株M98250771と異種である髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型BサブファミリーA株に対して殺菌性である。一実施形態では、免疫応答は、第一のポリペプチドとの同一性が少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%であるアミノ酸配列を含むH因子結合タンパク質を発現する髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型BサブファミリーA株に対して殺菌性である。別の実施形態では、免疫応答は、髄膜炎菌(N.meningitidis)株M98250771が発現するH因子結合タンパク質との同一性が少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%であるアミノ酸配列を含むH因子結合タンパク質を発現する髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型BサブファミリーA株に対して殺菌性である。好ましい実施形態では、免疫応答は、髄膜炎菌(N.meningitidis)株M98250771が発現するH因子結合タンパク質との同一性が少なくとも80%、より好ましくは少なくとも84%であるアミノ酸配列を含むH因子結合タンパク質を発現する髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型BサブファミリーA株に対して殺菌性である。
【0069】
別の実施形態では、免疫応答は、第一のポリペプチドとの同一性が多くとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%であるアミノ酸配列を含むH因子結合タンパク質を発現する髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型BサブファミリーA株に対して殺菌性である。別の実施形態では、免疫応答は、髄膜炎菌(N.meningitidis)株M98250771が発現するH因子結合タンパク質との同一性が多くとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%であるアミノ酸配列を含むH因子結合タンパク質を発現する髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型BサブファミリーA株に対して殺菌性である。好ましい実施形態では、免疫応答は、髄膜炎菌(N.meningitidis)株M98250771が発現するH因子結合タンパク質との同一性が多くとも85%、より好ましくは多くとも99%であるアミノ酸配列を含むH因子結合タンパク質を発現する髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型BサブファミリーA株に対して殺菌性である。任意の最小値を本明細書に記載の任意の最大値と組み合わせて、範囲を規定してもよい。
【0070】
一実施形態では、hSBA菌株は、LP2086(fHBP)サブファミリーB株である。一実施形態では、hSBA菌株は、B01を発現する髄膜炎菌(N.meningitidis)株と異種である、リポタンパク質2086変異体を発現するLP2086(fHBP)サブファミリーB株である。たとえば、一実施形態では、hSBA菌株は、菌株CDC1127と異種である、リポタンパク質2086変異体を発現するLP2086(fHBP)サブファミリーB株である。好ましい実施形態では、hSBA菌株は、菌株CDC1573と異種である、リポタンパク質2086変異体を発現するLP2086(fHBP)サブファミリーB株である。
【0071】
一実施形態では、免疫応答は、B01を発現する髄膜炎菌(N.meningitidis)株と異種である髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型BサブファミリーB株に対して殺菌性である。一実施形態では、免疫応答は、髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型B B24株に対するものである。一実施形態では、免疫応答は、髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型B B44株に対するものである。一実施形態では、免疫応答は、髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型B B16株に対するものである。一実施形態では、免疫応答は、髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型B B03株に対するものである。一実施形態では、免疫応答は、髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型B B09株に対するものである。一実施形態では、免疫応答は、髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型B B15株に対するものである。一実施形態では、免疫応答は、髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型B B153株に対するものである。一実施形態では、免疫応答は、髄膜炎菌(N.meningitidis)株CDC1573と異種である髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型BサブファミリーB株に対して殺菌性である。一実施形態では、免疫応答は、第二のポリペプチドとの同一性が少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%であるアミノ酸配列を含むH因子結合タンパク質を発現する髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型BサブファミリーB株に対して殺菌性である。別の実施形態では、免疫応答は、髄膜炎菌(N.meningitidis)株CDC1573が発現するH因子結合タンパク質との同一性が少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%であるアミノ酸配列を含むH因子結合タンパク質を発現する髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型BサブファミリーB株に対して殺菌性である。好ましい実施形態では、免疫応答は、髄膜炎菌(N.meningitidis)株CDC1573が発現するH因子結合タンパク質との同一性が少なくとも80%、より好ましくは少なくとも87%であるアミノ酸配列を含むH因子結合タンパク質を発現する髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型BサブファミリーB株に対して殺菌性である。別の好ましい実施形態では、免疫応答は、髄膜炎菌(N.meningitidis)株CDC1573が発現するH因子結合タンパク質との同一性が100%であるアミノ酸配列を含むH因子結合タンパク質を発現する髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型BサブファミリーB株に対して殺菌性である。
【0072】
別の実施形態では、免疫応答は、第二のポリペプチドとの同一性が多くとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%であるアミノ酸配列を含むH因子結合タンパク質を発現する髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型BサブファミリーB株に対して殺菌性である。別の実施形態では、免疫応答は、髄膜炎菌(N.meningitidis)株CDC1573が発現するH因子結合タンパク質との同一性が多くとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%であるアミノ酸配列を含むH因子結合タンパク質を発現する髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型BサブファミリーB株に対して殺菌性である。好ましい実施形態では、免疫応答は、髄膜炎菌(N.meningitidis)株CDC1573が発現するH因子結合タンパク質との同一性が多くとも88%、より好ましくは少なくとも99%であるアミノ酸配列を含むH因子結合タンパク質を発現する髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型BサブファミリーB株に対して殺菌性である。任意の最小値を本明細書に記載の任意の最大値と組み合わせて、範囲を規定してもよい。
【0073】
一実施形態では、hSBA菌株は、LP2086(fHBP)B24株である。別の実施形態では、hSBA菌株は、LP2086(fHBP)B44株である。別の実施形態では、hSBA菌株には、LP2086(fHBP)B24およびLP2086(fHBP)B44株が含まれる。一実施形態では、hSBA菌株には、LP2086(fHBP)A22、LP2086(fHBP)A56、LP2086(fHBP)B24、およびLP2086(fHBP)B44株が含まれる。一実施形態では、hSBA菌株には、B15が含まれる。一実施形態では、hSBA菌株には、B153が含まれる。別の実施形態では、hSBA菌株は、LP2086 B16株である。一実施形態では、hSBA菌株は、LP2086 B03株である。一実施形態では、hSBA菌株は、LP2086 B09株である。別の実施形態では、hSBA菌株には、B24、B16、B44、B03、およびB09、またはこれらのいずれかの組合せが含まれる。別の実施形態では、hSBA菌株には、B24、B16、B44、A22、B03、B09、A12、A19、A05、およびA07、またはこれらのいずれかの組合せが含まれる。別の実施形態では、hSBA菌株には、A06、A07、A12、A15、A19、A29、B03、B09、B15、およびB16、またはこれらのいずれかの組合せが含まれる。
【0074】
一実施形態では、方法は、髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型BサブファミリーA株に対して、また髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型BサブファミリーB株に対して免疫応答を誘発する。免疫応答は、髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型BサブファミリーA株に対して、また髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型BサブファミリーB株に対して殺菌性であることが好ましい。
【0075】
一実施形態では、髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型BサブファミリーA株に対する免疫応答が、髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型BサブファミリーB株に対する免疫応答より強い。たとえば、一実施形態では、免疫原性組成物は、同一条件下で試験したとき、髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型BサブファミリーA株に対して、髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型BサブファミリーB株に対してよりも高い殺菌力価を誘発する。一実施形態では、髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型BサブファミリーA株に対する、より高い殺菌力価は、髄膜炎菌(N.meningitidis)に対する免疫原性組成物の二回目用量の後30日以内に生じる。一実施形態では、髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型BサブファミリーA株に対する、より高い殺菌力価は、髄膜炎菌(N.meningitidis)に対する免疫原性組成物の三回目用量なしで生じる。
【0076】
別の実施形態では、髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型BサブファミリーB株に対する免疫応答が、髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型BサブファミリーA株に対する免疫応答より強い。たとえば、一実施形態では、免疫原性組成物は、同一条件下で試験したとき、髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型BサブファミリーB株に対して、髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型BサブファミリーA株に対してよりも高い殺菌力価を誘発する。一実施形態では、髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型BサブファミリーB株に対する、より高い殺菌力価は、髄膜炎菌(N.meningitidis)に対する免疫原性組成物の二回目用量の後30日以内に生じる。一実施形態では、髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型BサブファミリーB株に対する、より高い殺菌力価は、髄膜炎菌(N.meningitidis)に対する免疫原性組成物の三回目用量なしで生じる。
【0077】
力価
一実施形態では、組成物は、hSBAにおいて同一条件下で測定したとき、組成物の用量が投与される前のヒトにおける殺菌力価と比べて、ヒトにおける殺菌力価を増大させる。一実施形態では、殺菌力価の増大は、hSBAにおいて同一条件下で測定したとき、組成物の初回用量が投与される前のヒトにおける殺菌力価と比べて、初回用量が投与される前のヒトにおける殺菌力価と比較される。一実施形態では、力価の増大は、hSBAにおいて同一条件下で測定したとき、組成物の二回目用量が投与される前のヒトにおける殺菌力価と比べて、組成物の二回目用量の後に認められる。別の実施形態では、殺菌力価の増大は、hSBAにおいて同一条件下で測定したとき、組成物の三回目用量が投与される前のヒトにおける殺菌力価と比べて、組成物の三回目用量の後に認められる。
【0078】
一実施形態では、組成物は、用量が投与された後のヒトにおいて殺菌力価を誘導し、殺菌力価は、hSBAにおいて同一条件下で測定したとき、用量が投与される前のヒトにおける殺菌力価の少なくとも1倍の強さを超える。たとえば、殺菌力価は、hSBAにおいて同一条件下で測定したとき、組成物の用量を投与された後のヒトにおいて、用量が投与される前のヒトにおける殺菌力価と比べて、少なくとも1.01倍、1.1倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、または16倍の高さでよい。
【0079】
一実施形態では、「応答者」とは、ヒトを指し、その場合、組成物は、用量が投与された後のヒトにおいて殺菌力価を誘導し、殺菌力価は、用量が投与される前のヒトにおける殺菌力価の少なくとも1倍の強さを超える。好ましい実施形態では、応答者は、用量が投与される前のヒトにおける殺菌力価と比べて、hSBA力価の上昇が少なくとも4倍以上に達する。このような応答者は、防御性力価を有すると呼ぶことができる。
【0080】
一実施形態では、hSBA力価は、測定可能な効果を生じる血清サンプルの最高希釈度の逆数である。たとえば、一実施形態では、hSBA力価は、T30CFU値(すなわち、試験血清を除くすべての検定成分を含有する検定ウェルにおいてインキュベートした後に生存する細菌の数、100%細菌生存)と比べてMnB細菌を少なくとも50%減少させる(50%細菌生存)、試験血清の最も高い2倍希釈度の逆数である。
【0081】
一実施形態では、組成物は、hSBAにおいて同一条件下で測定したとき、初回用量を投与された後のヒトにおいて、初回用量を投与される前のヒトにおける殺菌力価(たとえば、初回用量なしでのヒトにおける殺菌力価)の少なくとも2倍の強さである殺菌力価を誘導する。一実施形態では、組成物は、ヒト補体を利用するヒト血清殺菌検定(hSBA)において同一条件下で測定したとき、ヒトにおいて、初回用量を投与される前のヒトにおける殺菌力価の少なくとも4倍の強さである殺菌力価を誘導する。一実施形態では、組成物は、ヒト補体を利用するヒト血清殺菌検定(hSBA)において同一条件下で測定したとき、ヒトにおいて、初回用量を投与される前のヒトにおける殺菌力価の少なくとも8倍の強さである殺菌力価を誘導する。
【0082】
好ましい実施形態では、ヒト血清補体は、所与のSBA試験株について固有の殺菌活性が弱いヒトから得たものである。固有の殺菌活性が弱いとは、たとえば、所与のSBA試験株に対して少なくとも1:4希釈度未満である殺菌力価をいう。一実施形態では、ヒト補体は、所与のSBA試験株に対して少なくとも1:4未満、たとえば1:2希釈度であるhSBA力価を有し、組成物が投与されなかったヒトから得たものである。
【0083】
ヒトは、二価rLP2086組成物などの組成物が投与される前に1:4未満のhSBA力価を示すこともあり、または組成物が投与される前に1:4以上のhSBA力価を示すこともある。したがって、好ましい実施形態および実施例において、組成物の少なくとも1用量をヒトに投与すると、hSBA力価は、少なくとも1:4を超える、たとえば、1:8以上のhSBA力価、1:16以上のhSBA力価、1:32以上のhSBA力価となる。本明細書に記載のそれぞれの実施例は、hSBA力価が1:8以上および/または1:16以上であるヒト対象の割合の評価を含み、二価rLP2086組成物をヒトに投与した。hSBA力価が1:4を超えるという好ましい評価は、ヒトにおいて誘発された防御、すなわち、殺菌免疫応答が、組成物と関連付けられることを示す。
【0084】
一実施形態では、ヒトは、組成物の初回用量が投与された後、hSBAの定量下限(LLOQ)以上のhSBA力価を有する。別の実施形態では、ヒトは、組成物の二回目用量が投与された後、hSBAのLLOQ以上のhSBA力価を有する。別の実施形態では、ヒトは、組成物の三回目用量が投与された後、hSBAのLLOQ以上のhSBA力価を有する。
【0085】
付加的免疫原性組成物
本発明者らは、意外にも、髄膜炎菌(N.meningitidis)に対する免疫原性組成物は、髄膜炎菌(N.meningitidis)に対する殺菌応答に悪影響を及ぼすことなく、ヒトパピローマウイルス(HPV)に対する免疫原性組成物と共に投与できることを発見した。実施例7および実施例8で説明するとおり、髄膜炎菌(N.meningitidis)試験株への実質的なhSBA応答は、髄膜炎菌(N.meningitidis)に対する免疫原性組成物およびGARDASILが投与されたヒトの中で、また髄膜炎菌(N.meningitidis)対する免疫原性組成物および食塩水が投与されたヒトにおいて認められた。髄膜炎菌(N.meningitidis)に対する免疫原性組成物の三回目用量から約1か月後に、hSBA応答の付加的な増大が認められた。
【0086】
さらに、本発明者らは、意外にも、髄膜炎菌(N.meningitidis)に対する免疫原性組成物およびHPVに対する免疫原性組成物の両方が投与された後のヒトにおいて、組成物が投与される前のヒトにおける免疫応答と比べて、髄膜炎菌(N.meningitidis)およびHPV両方に対する活発な免疫応答が生じたことを発見した。実施例7および実施例8で説明するとおり、HPVに対する力価は、髄膜炎菌(N.meningitidis)に対する免疫原性組成物およびGARDASILが投与された後のヒトにおいて、免疫原性組成物が投与される前のヒトにおける力価と比べて増大した。HPVに対する力価の増大は、少なくとも1倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍を超える、またはそれ以上であった。
【0087】
したがって、一実施形態では、方法は、ヒトにおいて、髄膜炎菌(N.meningitidis)に対する免疫応答を誘発することを含み、ヒトパピローマウイルスに対する免疫原性組成物をそのヒトに投与することをさらに含む。免疫応答は、髄膜炎菌(N.meningitidis)に対して殺菌性であることが好ましい。一実施形態では、方法は、HPVに対する免疫応答を誘発することをさらに含む。好ましい実施形態では、方法は、ヒトパピローマウイルス6、11、16、および18型のいずれか1種、またはこれらのいずれかの組合せに対する免疫応答を誘発することをさらに含む。一実施形態では、HPVに対する免疫原性組成物は、髄膜炎菌(N.meningitidis)に対する前記組成物の投与から24時間以内にそのヒトに投与する。
【0088】
一実施形態では、方法は、ヒトにおいて、髄膜炎菌(N.meningitidis)に対する免疫応答を誘発することを含み、HPVに対する免疫原性組成物をそのヒトに投与することをさらに含む。免疫応答は、髄膜炎菌(N.meningitidis)に対して殺菌性であることが好ましい。一実施形態では、方法は、HPVに対する免疫応答を誘発することをさらに含む。好ましい実施形態では、方法は、ヒトパピローマウイルス6、11、16、および18型のいずれか1種、またはこれらのいずれかの組合せに対する免疫応答を誘発することをさらに含む。一実施形態では、ヒトパピローマウイルスに対する免疫原性組成物は、髄膜炎菌(N.meningitidis)に対する前記組成物の投与から24時間以内にそのヒトに投与する。
【0089】
別の態様において、本発明者らは、意外にも、髄膜炎菌(N.meningitidis)に対する免疫原性組成物は、髄膜炎菌(N.meningitidis)に対する殺菌応答に悪影響を及ぼすことなく、ジフテリア、破傷風、無細胞百日咳、および不活化灰白髄炎ウイルス(dTaP)に対する免疫原性組成物と共に投与できることを発見した。実施例4で説明するとおり、髄膜炎菌(N.meningitidis)試験株への実質的なhSBA応答は、髄膜炎菌(N.meningitidis)に対する免疫原性組成物およびREPEVAXが投与されたヒトの中で認められた。髄膜炎菌(N.meningitidis)に対する免疫原性組成物の三回目用量から約1か月後に、hSBA応答の付加的な増大が認められた。
【0090】
さらに、本発明者らは、意外にも、髄膜炎菌(N.meningitidis)に対する免疫原性組成物およびdTaPに対する免疫原性組成物の両方が投与された後のヒトにおいて、組成物が投与される前のヒトにおける免疫応答と比べて、髄膜炎菌(N.meningitidis)およびdTaP両方に対する活発な免疫応答が生じたことを発見した。実施例4で説明するとおり、dTaPに対する力価は、髄膜炎菌(N.meningitidis)に対する免疫原性組成物およびREPEVAXが投与された後のヒトにおいて、免疫原性組成物が投与される前のヒトにおける力価と比べて増大した。dTaPに対する力価の増大は、少なくとも1倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍を超える、またはそれ以上であった。
【0091】
方法および投与
一態様において、本発明は、ヒトにおいて、髄膜炎菌(N.meningitidis)に対する免疫応答を誘発する方法に関する。別の態様において、本発明は、ヒトにワクチン接種する方法に関する。一実施形態では、方法は、上述の組成物の少なくとも1用量をヒトに投与することを含む。別の実施形態では、方法は、上述の組成物の少なくとも初回用量および二回目用量をヒトに投与することを含む。
【0092】
意外にも、本発明者らは、組成物の2用量スケジュールにより、ヒトにおいて、多様な異種サブファミリーA株に対して、また多様な異種サブファミリーB株に対して殺菌力価が誘導されることを発見した。たとえば、上述の組成物の2用量スケジュールに従って、hSBA力価が1:8以上であるヒトの百分率は、LP2086(fHBP)A22またはLP2086(fHBP)A56を発現するSBA試験株で90%以上であった。実施例1を参照されたい。
【0093】
一実施形態では、二回目用量は、初回用量から少なくとも20、30、50、60、100、120、160、170、または180日後、かつ初回用量から多くとも250、210、200、または190日後に投与する。任意の最小値を本明細書に記載の任意の最大値と組み合わせて、範囲を規定してもよい。
【0094】
別の実施形態では、二回目用量は、初回用量から約30日後に投与する。別の実施形態では、二回目用量は、初回用量から約60日後、たとえば、0、2か月免疫処置スケジュールで投与する。別の実施形態では、二回目用量は、初回用量から約180日後、たとえば、0、6か月免疫処置スケジュールで投与する。さらに別の実施形態では、二回目用量は、初回用量から約120日後、たとえば、2、6か月免疫処置スケジュールで投与する。
【0095】
一実施形態では、方法は、ヒトに組成物を2用量、多くとも2用量投与することを含む。一実施形態では、2用量は、初回用量の後約6か月の期間内に投与する。一実施形態では、方法は、ヒトへの追加免疫のさらなる投与を含まない。本明細書で使用する「追加免疫」とは、組成物をヒトに追加投与することを指す。多くとも2用量の組成物をヒトに投与することが有利となりうる。その利点として、たとえば、ヒトが完全な投与スケジュールを遵守するのを容易にすること、およびスケジュールの費用効果を促進することが挙げられる。
【0096】
一実施形態では、初回用量および二回目用量は、初回用量後約25、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、または200日の期間、また400、390、380、370、365、350、340、330、320、310、300、290、280、270、260、250、240、230、220、210、または200日の期間にわたりヒトに投与する。任意の最小値を本明細書に記載の任意の最大値と組み合わせて、範囲を規定してもよい。
【0097】
一実施形態では、初回用量および二回目用量は、約30日の期間にわたりヒトに投与する。別の実施形態では、初回用量および二回目用量は、約60日の期間にわたりヒトに投与する。別の実施形態では、初回用量および二回目用量は、約180日の期間にわたりヒトに投与する。
【0098】
3用量
本発明者らはさらに、意外にも、組成物の3用量スケジュールによって、2用量スケジュールより高い百分率のヒトにおいて、非相同のLP2086(fHBP)を発現する菌株に対するより広い殺菌力価が誘導されたことを発見した。たとえば、上述の組成物の2用量スケジュールに従って、hSBA力価が1:8以上であるヒトの百分率は、SBA試験株LP2086(fHBP)B24およびLP2086(fHBP)B44について65%以上であった。上述の組成物の3用量スケジュールに従って、hSBA力価が1:8以上であるヒトの百分率は、SBA試験株B24およびB44について86%以上であった。実施例1を参照されたい。
【0099】
したがって、一実施形態では、組成物の3用量スケジュールによって、2用量スケジュールより高い百分率のヒトにおいて、第一および/または第二のポリペプチドと非相同であるLP2086(fHBP)を発現する複数菌株に対する殺菌力価が誘導される。
【0100】
一実施形態では、方法は、ヒトに組成物を3用量投与することを含む。別の実施形態では、方法は、多くとも3用量の組成物を投与することを含む。一実施形態では、3用量は、初回用量の後約6か月の期間内に投与する。一実施形態では、方法は、三回目用量の後に追加免疫用量をヒトに投与することを含む。別の実施形態では、方法は、三回目用量の後にヒトに追加免疫用量を投与することを含まない。別の実施形態では、方法は、ヒトに組成物の4回目用量または追加免疫用量を投与することをさらに含まない。別の実施形態では、約6か月の期間内に多くとも3用量をヒトに投与する。
【0101】
例示的実施形態では、二回目用量は、初回用量から約30日後に投与し、三回目用量は、二回目用量から約150日後、たとえば、0、1、6か月免疫処置スケジュールで投与する。別の例示的実施形態では、二回目用量は、初回用量から約60日後に投与し、三回目用量は、二回目用量から約120日後、たとえば、0、2、6か月免疫処置スケジュールで投与する。
【0102】
一実施形態では、初回用量、二回目用量、および三回目用量は、約150、160、170、または180日の期間、また多くとも240、210、200、または190日の期間にわたりヒトに投与する。任意の最小値を本明細書に記載の任意の最大値と組み合わせて、範囲を規定してもよい。初回用量、二回目用量、および三回目用量は、約180日または6か月の期間にわたりヒトに投与することが好ましい。たとえば、二回目用量は、初回用量から約60日後にヒトに投与することができ、三回目用量は、二回目用量から約120日後にヒトに投与することができる。したがって、例示的な投与スケジュールは、約0、2、および6か月の時点でヒトに用量を投与することを含む。
【0103】
上述のとおり、複数の用量の免疫原性組成物をヒトに投与することができ、各用量の間の日数は、様々となりうる。この方法の利点としては、たとえば、ヒトが柔軟に投与スケジュールを遵守できることが挙げられる。
【0104】
実施例
以下の実施例により、本発明の実施形態を例示する。本明細書において別段指摘しない限り、以下の実施例では、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む、0.5mL用量あたり60μgの第一の脂質付加ポリペプチド、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む、0.5mL用量あたり60μgの第二の脂質付加ポリペプチド、第一のポリペプチドに対して2.8のモル比のポリソルベート80、第二のポリペプチドに対して2.8のモル比のポリソルベート80、組成物に対しての0.5mgAl3+/ml、10mMのヒスチジン、および150mMの塩化ナトリウムを含む組成物の好ましい例示的実施形態である、治験用二価組換えワクチン(rLP2086)に言及する。より詳細には、治験用二価組換えrLP2086ワクチンは、(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む60μgの第一の脂質付加ポリペプチド、(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む60μgの第二の脂質付加ポリペプチド、(c)18μgのポリソルベート80、(d)250μgのアルミニウム、(e)780μgのヒスチジン、および(f)4380μgの塩化ナトリウムを含む。各用量は、0.5mLとした。
【実施例0105】
実施例1:11才~18才の健康な対象において2または3用量のレジメンで投与したときの、治験用髄膜炎菌血清型B二価(MnB)rLP2086ワクチンの、健康な青年における安全性、忍容性、および免疫原性
背景:11~18才の健康な青年において、2または3回のワクチン処置を含む5種類の用量レジメン(表1)を使用して、治験用二価組換えワクチン(rLP2086)の安全性、忍容性、および免疫原性を試験した。
【0106】
ワクチンは、それぞれ60μgの精製サブファミリーAおよび精製サブファミリーB rLP2086タンパク質、2.8のモル比のポリソルベート80、およびAlPO4としての0.25mgのAl3+、10mMのヒスチジンで緩衝剤処理したpH6.0の食塩水を含有するように、0.5ml用量で製剤する。
【0107】
活性対照として役立てることのできる、安全性、免疫原性、および有効性が実証済みの対MnBワクチンは知られていないため、食塩水を偽薬として使用する。標準食塩水は、0.5ml用量中に0.9%の塩化ナトリウムを含む。
【0108】
方法:この第二相無作為化偽薬対照単盲検試験におけるすべての対象が、0、1、2および6か月の時点でワクチン処置訪問に参加した。盲検化のために、ワクチンの予定がなかったときは、食塩水対照を与えた。すべてワクチン中の変異体とは異なる、LP2086(fHBP)fHBP変異体A22、A56、B24およびB44を発現する4種のMnB試験株(すなわち、主要評価項目分析における4種の「主要hSBA試験株」)を用い、ヒト補体を使用する血清殺菌検定(hSBA)を実施した。不要な有害事象(AE)、必要な局所および全身応答、ならびに解熱剤の使用について評価した。
【0109】
hSBA力価幾何平均値を、両側95%信頼区間(CI)と共に、各血液採取の時点で、各主要菌株について計算した。幾何平均上昇倍率を、95%CIと共に計算した。
【0110】
応答者とは、hSBA力価がhSBA検定の定量下限(LLOQ)以上である対象であると定義した。主要評価項目分析における4種のhSBA試験株それぞれのLLOQは、1:8に相当するhSBA力価であった。各主要試験株の検出限界(LOD)は、1:4に相当する力価であった(髄膜炎菌疾患に対する防御の相関現象であると広くみなされる)。
【0111】
結果:最後のワクチン用量から1か月後、86~99%の対象(3用量後、P<0.001)および69~100%の対象(2用量後)は、各MnB試験株に対してhSBA力価が8以上であった。試験用量1の後、まとめて、rLP2086受容者の19~27%(重度1.1~4.3%)および23~27%(重度0.0~1.0%)が、それぞれ発赤および腫脹を経験した。注射部位疼痛は、試験用量1の後、最もよくある局所反応であった(重度7.6~13.1%)。二価rLP2086ワクチンの初回試験用量後の38℃以上の発熱は、食塩水受容者における2.1%と比べて、まとめて3.3~6.5%が経験した。局所および全身反応は、一般に、後続の用量の後よりも、用量1の後に頻繁に起こった。1712人のうち43人の対象(2.5%)が、51例の重篤なAEを報告し、2症例が、関連ありとみなされた(めまい、悪寒、および頭痛の1症例と発熱および嘔吐の1症例)。死亡は報告されなかった。
【0112】
【0113】
結論:二価rLP2086は、許容される安全性プロファイルを示した。5種類すべての投与レジメンによって、高い割合の対象において、4種類すべての試験株に対して8以上のhSBA力価が得られた。一部の試験株に対して、3用量の後の割合が、2用量と比べて高いことは、3用量によって、多様なMnB臨床株に対して最も広い防御がもたらされうることを示唆している。世界的な第3相臨床試験が、二価rLP2086ワクチンで進行中である。
【0114】
この研究の目的の一つは、1群対象(無作為化される0、1、および6か月スケジュール)および2群対象(無作為化される0、2、および6か月スケジュール)において、二価rLP2086での3回目のワクチン処置から1か月後、LP2086サブファミリーAおよびBタンパク質を発現するMnB株で実施するhSBAによって測定される免疫応答を評価することであった。免疫原性分析の評価項目は、4種の主要MnB試験株(A22、A56、B24、およびB44)それぞれについて、7か月目(または二価rLP2086の3回目用量から1か月後)にhSBA力価がLLOQ以上に達している、1群および2群の対象の割合であった。LLOQは、4種の主要MnB試験株について1:8であった。
【0115】
評価可能な免疫原性集団について、3用量の二価rLP2086の後、hSBA力価が1:8以上に達する1群の対象の割合は、A22では91.7%、A56では99.4%、B24では89%、B44では88.5%であった(上の表1を参照されたい)。97.5%CIの下限がすべての菌株について50%を超えていたので(菌株A22、A56、B24、およびB44について、それぞれ、87.8%、p<0.001;97.8%、p<0.001;84.7%、p<0.001;および84.1%、p<0.001)、1群の対象について、研究の目的は果たされた。
【0116】
2群について、3用量の二価rLP2086の後、hSBA力価が1:8以上に達する対象の割合は、A22では95.0%、A56では98.9%、B24では88.4%、B44では86.1%であった(上の表1を参照されたい)。1群でわかったのと同様に、97.5%CIの下限は、すべての菌株について50%を超えており(菌株A22、A56、B24、およびB44について、それぞれ、91.7%、p<0.001;96.9%、p<0.001;84.1%、p<0.001;および81.4%、p<0.001)、2群の対象についても目的が果たされたことが示された。
【0117】
第二の目的は、3群対象(無作為化される0および6か月スケジュール)において、二価rLP2086の二回目用量から1か月後、LP2086サブファミリーAおよびBタンパク質を発現するMnB株で実施したhSBAによって測定される免疫応答を評価することであった。この第二の目的は、4種の主要MnB試験株それぞれについて、7か月目(または二価rLP2086の二回目用量から1か月後)にhSBA力価がLLOQ(1:8)以上に達している3群の対象の割合であった。
【0118】
2用量の二価rLP2086の後にhSBA力価が1:8以上に達する3群の対象の割合は、主要MnB試験株について93.5%、98.4%、81.1%、および77.5%であり、97.5%CIの下限がすべての菌株で50%を超えていたので(菌株A22、A56、B24、およびB44について、それぞれ、90.0%、p<0.001;96.2%、p<0.001;76.0%、p<0.001;および72.2%、p<0.001。上の表1を参照されたい)、この第二の目的も果たされた。
【0119】
別の第二の目的は、1群~5群の対象について、各血液採取の時点で、4種の主要MnB試験株それぞれについてのhSBA力価がLLOQ以上である対象の割合であった。4種の主要hSBA試験株それぞれについてのLLOQは、1:8の力価であった。評価可能な免疫原性集団について、試験時までにhSBA力価が1:8以上である対象の割合を上の表1に示す。
【0120】
1用量の二価rLP2086の後にhSBA力価が1:8以上であった対象の割合(注射3から1か月後の5群[2および6か月スケジュール])は、A22では55.9%、A56では67.6%、B24では56.9%、B44では23.8%であった。
【0121】
2用量の二価rLP2086から1か月後にhSBA力価が1:8以上であった対象の割合は、サブファミリーA株では74.6%~100%、サブファミリーB株では54.0%~81.1%の範囲であった。3用量の後、割合は増加し、サブファミリーA株およびB株について、それぞれ、91.7%~99.4%および86.1%~89.0%の範囲となった。
実施例に記載のhSBAでは、評価項目の判定に4種の主要MnB試験株を使用した。すなわち、これらの菌株を使用して、hSBA免疫原性評価項目を用いるワクチン有効性の推定を行った。これら試験株は、米国およびヨーロッパを循環する疾患分離株の90%超を占める6種の系統発生的fHBP亜群のうちの4種である。
侵襲性疾患分離株から4種の主要MnB試験株を選択する際、in vitroでのLP2086表面発現の集団分布を考慮に入れた手法を使用した。さらに、髄膜炎菌疾患のリスクのある集団は、大部分の菌株に対してベースライン殺菌活性が存在しないまたは低いことを特徴とするため、hSBA試験株は、低いベースラインhSBA陽性度を示す必要があった。加えて、4種の主要MnB試験株はそれぞれ、ワクチン中のLP2086変異体とは異なるLP2086変異体を発現し、したがって、集団の中を循環する侵襲性髄膜炎菌疾患(IMD)菌株に対する機能免疫原性および有効性に関する目的の評価が可能になる。
hSBAでは、補体が媒介する殺菌活性を始動することのできる、血清中の抗髄膜炎菌血清型B(MnB)抗体の量が測定される。簡潔に述べると、試験血清は、2倍ずつ段階希釈し、96ウェル検定プレートに加える。MnB SBA試験株およびヒト血清補体を加えて、殺菌反応を開始する。検定プレートを37℃で30~60分間(SBA試験株次第、T30と呼ぶ)インキュベートした後、このインキュベートを経ても生存する細菌を含有する反応混合物を希釈し、マイクロフィルタープレートに移す。終夜インキュベートした後、コロニー形成単位(CFU)として示される生存細菌を、Immunospot分析装置を使用して数え上げる。生CFUデータを電子的に記録し、hSBA力価を算出するデータ解析アプリケーションに移す。hSBA力価は、T30CFU値(すなわち、試験血清を除くすべての検定成分を含有する検定ウェルにおいてインキュベートした後に生存する細菌の数、100%細菌生存)と比べて、MnB細菌を少なくとも50%減少させる(50%細菌生存)、試験血清の最も高い2倍希釈度の逆数である。力価は、段階力価、すなわち、1:4、1:8、1:16などとして報告することができる。血清サンプルは、2個体で試験し、同じ検定で判定を繰り返す。反復測定値が同一でないサンプルについて報告する最終力価は、システム適性およびサンプル適性判断基準(たとえば、反復力価は、1段階の2倍希釈度内で一致しなければならない)を満たすとき、2つの反復測定値の低い方である。
hSBA検定は、試験血清をダルベッコリン酸緩衝食塩水で段階希釈した後に行った。96ウェルプレート中の連続希釈された血清に、細菌(おおよそ2000コロニー形成単位)およびヒト血清補体(最終濃度20重量%)を加え、小半径オービタルシェーカーにおいて、37℃、700rpmで(hSBA試験株に応じて)30~40分間インキュベートした。インキュベートした後、反応混合物の一部分をマイクロフィルタープレートに移した。終夜インキュベートした後、生存細菌をImmunospot分析装置(Cellular Technology Limited、米国オハイオ州シェーカーハイツ)で計数し、hSBA力価をSAS(バージョン9.2)で分析した。hSBA力価は、試験血清にさらされていない対照(すなわち、hSBA反応終盤の生存細菌)と比べて細菌を50%減少させる、内挿された試験血清希釈度の逆数として算出した。実施例1の表1で列挙する菌株を用いた検定の資格付与の際に確立された、hSBA検定の定量下限以上であったhSBA力価に基づき、パープロトコールhSBAを実施した。
ヒト血清は、SBA用の補体供給源である。しかし、hSBA力価は、使用するヒト補体ロットに応じて様々となりうる。したがって、ヒト補体は、厳密なスクリーニングおよび資格付与によって管理して、hSBAにおいて一貫した性能を確保することが好ましい。hSBAについては、ヒト血清補体を何人もの健常な成人からプールしてもよいし、または個々のドナーから使用(すなわち、プールしない)してもよい。