(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101838
(43)【公開日】2023-07-24
(54)【発明の名称】グリッパ
(51)【国際特許分類】
B25J 15/08 20060101AFI20230714BHJP
【FI】
B25J15/08 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002003
(22)【出願日】2022-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000108498
【氏名又は名称】タイガースポリマー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山田 圭史
(72)【発明者】
【氏名】八幡 宗夫
(72)【発明者】
【氏名】松尾 來輝
(72)【発明者】
【氏名】工藤 啓悟
(72)【発明者】
【氏名】三浦 貴嗣
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707BS09
3C707DS01
3C707ES03
3C707ET08
3C707EU01
3C707EV14
3C707EV16
3C707EW04
3C707HS27
(57)【要約】
【課題】 把持対象物を柔軟に把持しながら、かつ、繰り返しの把持が確実に行われうるグリッパを提供する。
【解決手段】 グリッパ10は、爪部材11と、グリップ部材12とを有する。グリップ部材12は、樹脂製の板状の弾性部材131を含み、131弾性部材は、中空部133Vを有する複数の中空突起133,133と、平板状の基部132とを有する。中空突起133は、基部上に散在するように突出形成されている。中空突起133は、基部から立設された中空筒状の側壁134を有するとともに、基部132とは反対側の末端が閉じられている。互いに隣接する中空突起133,133の中空部133V、133Vを連絡するように、空気の連絡通路137が設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持対象物を把持するよう開閉可能に設けられた爪部材と、
把持対象物を把持する際に把持対象物と接触するように爪部材に取り付けられたグリップ部材とを有するグリッパであって、
前記グリップ部材は、樹脂製の板状の弾性部材を含み、
前記弾性部材は、中空部を有する複数の中空突起と、平板状の基部とを有するとともに、
中空突起は、基部上に散在するように突出形成されており、
前記中空突起は、基部から立設された中空筒状の側壁を有するとともに、
基部とは反対側の末端が閉じられており、
互いに隣接する中空突起の中空部を連絡するように、空気の連絡通路が設けられている、
グリッパ。
【請求項2】
把持対象物を把持するよう開閉可能に設けられた爪部材と、
把持対象物を把持する際に把持対象物と接触するように爪部材に取り付けられたグリップ部材とを有するグリッパであって、
前記グリップ部材は、樹脂製の板状の弾性部材を含み、
前記弾性部材は、中空部を有する複数の中空凸条と、平板状の基部とを有するとともに、
中空凸条は、基部上に並んで突出形成されており、
前記中空凸条は、基部から立設された一対の側壁を有するとともに、
基部とは反対側の末端が閉じられており、
互いに隣接する中空凸条の中空部を連絡するように、空気の連絡通路が設けられている、
グリッパ。
【請求項3】
前記連絡通路は、互いに隣接する中空突起もしくは中空凸条の側壁の間に設けられた、トンネル状の通路である、
請求項1または請求項2に記載のグリッパ。
【請求項4】
前記基部には、中空突起もしくは中空凸条が設けられた部分に貫通穴が設けられており、
前記基部には、中空突起もしくは中空凸条とは反対側に突出する突起が設けられて、基部と爪部材が離間するようにされており、
当該離間した空間と貫通穴によって前記連絡通路が構成される、
請求項1または請求項2に記載のグリッパ。
【請求項5】
前記基部には、中空突起もしくは中空凸条が設けられた部分に貫通穴が設けられており、
基部に隣接して通気性シート材料が設けられていて、
通気性シート材料と貫通穴によって前記連絡通路が構成される、
請求項1または請求項2に記載のグリッパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用ロボットなどに使用されるグリッパ、特に、開閉動作により作業対象物を把持するグリッパに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、産業用ロボットが部材の搬送や組立等、多彩な用途に使用されている。産業用ロボットによって、作業対象物を搬送する、いわゆるマテリアルハンドリングのための産業用ロボットも実用化されている。産業用ロボットにより、作業対象物の搬送を行う場合には、産業用ロボットのアームに、グリッパ(エンドエフェクタと呼ばれる場合もある)が取り付けられて、グリッパにより作業対象物が操作される。作業対象物の性質や形状により、グリッパが使い分けられるが、グリッパには、磁力や真空引きなどの吸引力を利用するものや、開閉動作により作業対象物を把持するものなどがある。
【0003】
開閉動作により作業対象物を把持するグリッパとしては、例えば、特許文献1に開示されるものが知られている。特許文献1のグリッパは、板バネとクッション材がアクチュエータにより開閉される。当該グリッパによれば、脆弱な機械的特性を持つ物の把持や搬送ができることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のグリッパは、グリッパが把持対象物(搬送作業の対象物)を把持する部分にクッション材を用いているため、把持の際の衝撃力が緩和される。
また、グリッパが産業用ロボットなどに使用される場合には、把持動作が繰り返され、毎回、正確な把持や搬送が求められる。
【0006】
本発明の目的は、把持対象物を柔軟に把持しながら、かつ、繰り返しの把持が確実に行われうるグリッパを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者は、鋭意検討の結果、グリッパが柔軟になると、繰り返しの把持の確実性が損なわれやすいことを発見した。そして、その一因が、把持が繰り返される際に、把持によるグリップ部材の変形の復元が間に合わず、グリップ部材がつぶれた状態のまま、次の把持動作に入ってしまうことにあることを発見した。また、発明者らは、グリップ部材に中空部が存在するような場合に、復元が遅れる現象が発生しやすいことを突き止めた。
そして、発明者は、鋭意検討の結果、グリップ部材に設けられた中空突起や中空凸条の中空部を互いに連絡するように空気の連絡通路を設けると、上記課題が解決されることを知見し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明は、把持対象物を把持するよう開閉可能に設けられた爪部材と、把持対象物を把持する際に把持対象物と接触するように爪部材に取り付けられたグリップ部材とを有するグリッパであって、前記グリップ部材は、樹脂製の板状の弾性部材を含み、前記弾性部材は、中空部を有する複数の中空突起と、平板状の基部とを有するとともに、中空突起は、基部上に散在するように突出形成されており、前記中空突起は、基部から立設された中空筒状の側壁を有するとともに、基部とは反対側の末端が閉じられており、互いに隣接する中空突起の中空部を連絡するように、空気の連絡通路が設けられている、グリッパである(第1発明)。
【0009】
また、本発明は、把持対象物を把持するよう開閉可能に設けられた爪部材と、把持対象物を把持する際に把持対象物と接触するように爪部材に取り付けられたグリップ部材とを有するグリッパであって、前記グリップ部材は、樹脂製の板状の弾性部材を含み、前記弾性部材は、中空部を有する複数の中空凸条と、平板状の基部とを有するとともに、中空凸条は、基部上に並んで突出形成されており、前記中空凸条は、基部から立設された一対の側壁を有するとともに、基部とは反対側の末端が閉じられており、互いに隣接する中空凸条の中空部を連絡するように、空気の連絡通路が設けられている、グリッパである(第2発明)。
【0010】
第1発明もしくは第2発明において、好ましくは、前記連絡通路は、互いに隣接する中空突起もしくは中空凸条の側壁の間に設けられた、トンネル状の通路である(第3発明)。また、第1発明もしくは第2発明において、好ましくは、前記基部には、中空突起もしくは中空凸条が設けられた部分に貫通穴が設けられており、前記基部には、中空突起もしくは中空凸条とは反対側に突出する突起が設けられて、基部と爪部材が離間するようにされており、当該離間した空間と貫通穴によって前記連絡通路が構成される(第4発明)。また、第1発明もしくは第2発明において、好ましくは、前記基部には、中空突起もしくは中空凸条が設けられた部分に貫通穴が設けられており、基部に隣接して通気性シート材料が設けられていて、通気性シート材料と貫通穴によって前記連絡通路が構成される(第5発明)。
【0011】
本発明のグリッパ(第1発明、第2発明)によれば、中空部を有する中空突起や中空凸条が柔軟に変形できるので、把持対象物を柔軟に把持できる。また、中空突起や中空凸条の中空部を連絡する空気の連絡通路が設けられているので、把持の際につぶされた中空突起や中空凸条が吸盤のように爪部材などに張り付いてしまうことが抑制されて、繰り返しの把持が確実に行われうる。さらに、第3発明によれば、保持力も高められる。また、第3発明、第4発明、第5発明によれば、そのような優れたグリッパが製造しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のグリッパを取り付けた産業用ロボットの模式図である。
【
図3】本発明第1実施形態のグリッパの爪部材やグリップ部材の構造を示す断面図である。
【
図4】本発明第1実施形態のグリッパにおける弾性部材の斜視図である。
【
図5】本発明第1実施形態のグリッパにより把持対象物を把持する際の、グリップ部材の変形形態を示す断面図である。
【
図6】参考例のグリッパにより把持対象物を把持する際の、グリップ部材の変形形態を示す断面図である。
【
図7】中空突起や連絡通路の配置の他の例を示す図である。
【
図8】本発明第2実施形態のグリッパに用いられる弾性部材の正面図、断面図および背面図である。
【
図9】本発明第3実施形態のグリッパの爪部材やグリップ部材の構造を示す断面図である。
【
図10】本発明第4実施形態のグリッパに用いられる弾性部材の正面図、断面図および斜視図である。
【
図11】従来のグリッパにより把持対象物を把持した際の、クッション部材の変形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下図面を参照しながら、産業用ロボットに取り付けられるグリッパを例として、発明の実施形態について説明する。なお、発明は以下に示す個別の実施形態に限定されるものではなく、その形態を変更して実施することもできる。例えば、本発明のグリッパは、産業用ロボットだけでなく、家庭内や病院等で用いられるロボットにも使用できる。
【0014】
図1は、本発明第1実施形態のグリッパ10を取り付けた産業用ロボットの模式図である。グリッパ10は、ロボットのアームAの先端部に取り付けられて使用される。ロボットのアームの具体的形式や形態は特に限定されない。アームAは多関節式であってもよいし、平行移動式のアームであってもよい。
【0015】
図2は、本発明のグリッパ10の構成を示す図である。本発明のグリッパは、開閉動作によって、把持対象物99(作業対象物とも記載する)を把持することができ、本発明のグリッパを備える産業用ロボットは把持対象物を把持して搬送することができる。
【0016】
グリッパ10は、駆動部19と爪基部18,18を有する。駆動部19に備えられた動力装置(例えばモータや圧力シリンダー等)と機構(例えば減速機構や、リンク、カム等)により爪基部18,18が開閉運動し、後述する爪部材11,11やグリップ部材12,12を開閉する。例えば、本実施形態では、電動モータとボールねじを組み合わせて、爪基部18,18が平行に開閉するよう、駆動部19が構成されている。なお、駆動部19や爪基部18の具体的構成や機構は、特に限定されず、爪部材やグリップ部材を平行に開閉させるものであってもよく、コンパス状に開閉させるものであってもよい。また、爪基部18,18は必須ではなく、駆動部19により後述する爪部材11,11が直接開閉駆動されてもよい。爪基部18,18があれば、グリッパ10において爪部材11やグリップ部材12を交換しやすくなって便利である。
【0017】
グリッパ10は、爪部材11,11とグリップ部材12,12とを有する。爪部材11は、グリッパ10が把持対象物99を把持するよう、開閉可能に設けられている。本実施形態では、爪部材11は爪基部18にネジ等によって取り付けられて、開閉可能とされている。グリップ部材12は、爪部材11に取り付けられており、爪部材とともに開閉動作する。また、グリップ部材12は、把持対象物99を把持する際に、把持対象物99と直接接触するように設けられる。
【0018】
グリッパ10の把持動作に伴い、爪部材11およびグリップ部材12が移動する方向を以下、「把持方向」という。
図2において、把持方向は、図の左右方向である。
また、本実施形態では、爪部材11とグリップ部材12とが、それぞれ、対をなすように2つ設けられている。これにより、グリップ部材12,12の間に置かれた把持対象物が、爪部材11,11の間隔が狭まることにより、グリップ部材12,12の間に把持される。爪部材11とグリップ部材12の数は、2つに限定されず、1つ、もしくは3つ以上であってもよい。
【0019】
爪部材11やグリップ部材12の構成について、以下、より詳細に説明する。
図3は、第1実施形態のグリッパ10における爪部材11とグリップ部材12の構造を示す断面図である。
図3の左上の図が、
図2における左側の爪部材11とグリップ部材12に対応した視点での断面図となっている。
図3の左上の図および、
図3左下の図(X-X断面図)において、把持方向は図の左右方向となっており、
図3右上の図(Y-Y断面図)において、把持方向は紙面奥行き方向となっている。
【0020】
爪部材11は、駆動部19により与えられる爪基部18の開閉運動が、グリップ部材12に良く伝わるように、金属やプラスチック等、グリップ部材12に比べ硬質な材料で形成されている。必須ではないが、グリッパ10による把持が行われる際に、爪部材11と把持対象物99の間にグリップ部材12が挟まれるようになって、爪部材11が、グリップ部材12を介して把持対象物99を押すように、爪部材11が構成されていることが好ましい。
【0021】
グリップ部材12は、爪部材11に比べ柔軟であり、グリッパ10が把持対象物99を把持する際には、グリップ部材12が変形しながら、把持対象物99が把持される。
グリップ部材12は、弾性部材131を含む。必須ではないが、好ましくは、グリップ部材12は把持層121も含む。把持層121が設けられる場合には、グリップ部材12は、把持層121と弾性部材131が把持対象物(99)の側から順番に並ぶ構造に構成される。
【0022】
弾性部材131は、把持対象物99を把持した際に弾性変形可能な可撓性を有するよう、樹脂により形成されている。弾性部材131を構成する樹脂は、ゴムや熱可塑性エラストマーや、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などであってもよい。限定はされないが、典型的には、弾性部材131を構成する樹脂はゴム又はエラストマーであり、その硬度は、デュロA硬度で50度~85度程度であることが好ましい。また、必須ではないが、好ましくは本実施形態のように、弾性部材131を構成する樹脂の硬度が、把持層121を構成する樹脂の硬度よりも高くされる。
【0023】
弾性部材131は板状である。弾性部材131は、平板状の基部132と、中空部133Vを有する複数の中空突起133,133を有する。中空突起133,133は、所定の間隔を隔てて散在するように基部132上に突出形成されている。本実施形態では、直交する格子状に、中空突起133,133が散在して設けられている。基部132に複数の中空突起133,133が立設された弾性部材131の斜視図を
図4に示す。
必須ではないが、本実施形態では、基部132が爪部材11側に位置し、突出する中空突起133の先端側(一端)131aが把持対象物(99)側に位置するよう、弾性部材131が爪部材11に取り付けられている。
【0024】
中空突起133は、筒状の側壁134を有している。側壁134は、平板状の基部132から基部の厚み方向に立ち上がるように筒状に立設されている。筒状の側壁134の内部空間が、中空突起133の中空部133Vとなっている。側壁134は、典型的には、円筒状に設けられる。側壁134は、角筒状であってもよい。側壁134は、テーパ状に設けられていてもよい。
【0025】
また、中空突起133は、基部132とは反対側の末端が頂部135により閉じられている。頂部135は、側壁134の先端を閉じるよう設けられている。本実施形態では、頂部135は、基部132と略平行な平板状に設けられている。頂部135は、半球状やドーム状、円錐面状に設けられていてもよい。また、頂部135に、突起や凹部が設けられていてもよい。
【0026】
弾性部材131では、互いに隣接する中空突起133,133の中空部133V,133Vを連絡するように、空気の連絡通路137,137が設けられている、本実施形態においては、連絡通路137は、互いに隣接する中空突起133,133の側壁134,134の間に設けられた、トンネル状に形成された通路である。必須ではないが、本実施形態のように、連絡通路137が中空突起133,133の間に直線状に設けられることが好ましい。
【0027】
本実施形態では、連絡通路137は、通路壁138により画定されている。通路壁138は例えば逆U字状の断面を有し、基部132から立設されている。通路壁138と中空突起133が接続する部分で、中空突起の側壁134には穴が設けられていて、中空突起の中空部133Vと連絡通路137が連通している。通路壁138の断面形状は特に限定されず、逆V字状や円弧状、矩形状であってもよい。
【0028】
また、好ましくは、空気の連絡通路137,137は、散在する中空突起133,133を2次元的に接続するように、ネットワーク状に設けられる。
中空突起のすべてが相互に連絡されるように連絡通路137,137が設けられてもよいが、複数の中空突起がいくつかのグループに分けられて、同じグループ内で中空部が連絡するように空気の連絡通路137,137が設けられていてもよい。また、連絡通路が設けられていない中空突起があってもよい。
【0029】
必須ではないが、好ましくは本実施形態のように、弾性部材の周縁部に設けられた中空突起133と、弾性部材の周縁Eをつなぐように、トンネル状の連絡通路137が設けられ、連絡通路137が弾性部材131の周縁Eで解放される。
【0030】
なお、必須ではないが、本実施形態においては、弾性部材131は、基部132と中空突起133が連続した1枚のシート状に一体成型されて構成されている。すなわち、中空突起133が設けられた部分には、基部132に穴が開けられている。このような形態の弾性部材131は、射出成型や真空成形、プレス成型などにより成型できる。
【0031】
必須ではないが、本実施形態のように、グリップ部材12は、把持層121を有していてもよい。把持層121は、把持対象物と接触するように設けられた層である。また、把持層121の外表面を、以後、把持面12Sと呼ぶ。
把持層121は、平板状に形成された層である。好ましくは、把持層121は、JIS-K6253に準拠するデュロA硬度で30~80HDAの樹脂により構成される。把持層121が樹脂により構成される場合には、把持層121を構成する樹脂は、シリコーンゴムやアクリロニトリルブタジエンゴムや、ウレタンゴム等のゴムや熱硬化性樹脂であってもよく、オレフィン系熱可塑性エラストマーやスチレン系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマーであってもよく、軟質塩化ビニル樹脂や酢酸ビニル樹脂(EVA樹脂)などの熱可塑性樹脂であってもよい。これら樹脂には、必要に応じ、各種添加剤やフィラー等が配合されていてもよい。
【0032】
把持層121を構成する材料は樹脂に限定されない。また、把持層121を構成する材料にやや硬質な材料が含まれていても、把持層121の厚みを薄く、例えば0.3~1mmとすれば、把持層121を把持方向に柔軟に変形可能にできる。把持層を構成する他の材料や素材の例としては、例えば布材に樹脂を塗布もしくは含浸させた材料(例えば、人工皮革素材やターポリン材等)や、布(織布や不織布)や紙や樹脂シート等を積層した積層材料などが例示できる。もちろん、把持層121は単層で構成されていてもよい。
【0033】
また、必須ではないが、本実施形態では、弾性部材131は、中空突起の先端131aが把持層121に当接するように設けられる。必須ではないが、弾性部材131が、把持層121に対し、接着されていてもよい。また、弾性部材131が、把持層121に対し、粘着、溶着もしくは一体成型されていてもよい。
【0034】
弾性部材131が把持層121の背後に、把持層121に当接しつつ配置されることにより、弾性部材131の中空突起の先端131aと把持層121が接触する部位と、弾性部材131と把持層121が接触しない部位とが、把持方向に沿って見て海島状に分布することになる。把持層121は把持方向に柔軟に変形しうるが、弾性部材131と接触する部位では、把持層121は弾性部材131により支持されて、把持方向の変形が制限される。かかる海島構造となるような弾性部材と把持層の組み合わせは、柔軟性と保持力を高めることに貢献する。
【0035】
また、必須ではないが、好ましくは、本実施形態のように、グリップ部材12は、外皮部材120を含むように構成される。本実施形態では、外皮部材120は、その一部が把持層121となるように構成された中空構造の部材である。そして、弾性部材131が、外皮部材120の内側(中空構造の中空部)に配置されることが好ましい。
【0036】
また、必須ではないが、好ましくは本実施形態のように、グリップ部材12には、把持対象物99を把持した際に外皮部材120内部の空気が外皮部材の外に抜ける通気口124が設けられている。通気口124が設けられることにより、把持対象物を把持する際のグリップ部材12の柔軟な変形が促される。
本実施形態においては、中空箱状に形成された外皮部材120の一側面が取り除かれたようになっており、その部分が通気口124となっている。通気口の具体的形態は他の形態であってもよい。
【0037】
必須ではないが、本実施形態におけるグリップ部材12の外皮部材120は、以下の形態を有していてもよい。外皮部材120は、把持層121となる平板状の壁(以下「把持壁」とも記載する)と、側壁122,123を有するような、箱状の中空形状に一体成型されている。
ここで、外皮部材の側壁122,123とは、把持動作の開閉方向(把持方向)に沿って延在する壁部のことであり、かつ、側壁122,123は、把持壁(121)に対し把持対象物99と反対方向に延在している。把持方向に沿って延在する側壁122,123は、好ましくは、平板状もしくは円筒状に設けられる。
【0038】
平板状の把持層121は、完全な平板である必要はなく、やや膨らんだりへこんだりした湾曲面や球面の把持層であっても、おおむね平らであれば、平板状の把持層に含まれる。
また、把持層121が把持対象物99と接触する把持面12Sには、摩擦力や表面の粘着性を調節するために、突起、穴、凸条や凹溝、チェッカリング、ドットパターンや、梨地、しわ、シボ、などの地模様が設けられていてもよい。把持層121の把持面12S側が樹脂により構成される場合には、樹脂にシリカ粒やゴム粒などの粒状体を練りこんで、当該粒状体が把持面12Sに露出するようにしてもよい。あるいは、把持面12Sには、シリコーンゴムやEVA樹脂、不織布、樹脂フィルム(ポリイミドフィルム、PETフィルム等)などの、把持壁とは異なる材料で構成される表面層が設けられていてもよい。
【0039】
グリップ部材12と爪部材11の一体化(取り付け)は、特に限定されない。本実施形態では、外皮部材120に、袋状の穴を設けた取り付け部125を設けておき、取り付け部125の穴に爪部材11を挿入して、グリップ部材12と爪部材11の一体化が行われる。脱落防止等の必要に応じて、外皮部材120と爪部材11の間をねじ止めしたり、両者を接着剤や粘着剤、粘着テープなどで固定したりしてもよい。あるいは、爪部材11に、弾性部材131、把持層121を、接着剤等により順次一体化して、グリップ部材12を構成しつつ爪部材11に一体化してもよい。
【0040】
上記グリッパ10を構成するための部材等の製造方法について説明する。
駆動部19や爪基部18、爪部材11等については、従来公知の産業用ロボットの部材と同様に製造できる。グリップ部材12の把持層121(外皮部材120)については、ゴム材料や熱可塑性エラストマー材料の射出成型や注型成形等により製造することができる。また、グリップ部材12の弾性部材131については、ゴム材料や熱可塑性エラストマー材料を射出成型したり、ゴム材料や熱可塑性エラストマー材料のシート材をプレス加工したりして製造できる。得られた弾性部材131を外皮部材120の内側に押し込んでこれらを互いに外れないように一体化すれば、上記グリップ部材12が得られる。
【0041】
上記第1実施形態のグリッパ10の作用効果について説明する。
上記グリッパ10によれば、把持対象物99を把持する際に、弾性部材131の中空突起133,133がつぶれるように変形して把持対象物99を把持するので、把持対象物を柔軟に把持できる。そして、把持対象物を柔軟に把持できれば、多様な形状の把持対象物を多様な姿勢で把持できるようになり、把持操作のロバスト性が高められる。
【0042】
図5に、本実施形態のグリッパ10が把持対象物99を把持した際の、グリップ部材の変形状態を示す。特に、上記グリッパ10では、中空突起133は、基部132から立設された中空筒状の側壁134を有し、基部とは反対側の末端が閉じられており、さらに、互いに隣接する中空突起の中空部133V,133Vを連絡するように、空気の連絡通路137が設けられているので、把持に伴って中空突起133がつぶれる際に、中空突起の中空部133Vの空気が、閉じ込められずに、隣接する中空突起や、さらには外部空間へと流れていくことができる。
図5では、そうした空気の流れを矢印で示している。そのため、空気が閉じ込められてしまって、中空突起133の変形が妨げられることが抑制され、中空突起133が柔軟に変形可能となる。
【0043】
また、中空突起133の中空部133Vを連絡する空気の連絡通路137が設けられているので、把持が解放される際には、連絡通路137を通じて中空部133Vに空気が戻され、把持の際につぶされた中空突起が吸盤のように爪部材などに張り付いてしまうことが抑制されて、繰り返しの把持が確実に行われうる。
【0044】
図6には、参考例のグリッパについて、把持対象物99を把持した際の変形形態を示す。参考例のグリッパは、弾性部材931に連絡通路137が設けられていない点で、第1実施形態のグリッパ10とは異なるが、他の点ではおおむね同じ構成である。参考例のグリッパでは、
図6の把持状態から、把持を解放しても、つぶれた中空突起933が復元しにくい。中空部933Vに空気が戻りにくく、つぶされた中空突起933が吸盤のように爪部材11や外皮部材120などに張り付いてしまうからである。
【0045】
参考例のように、つぶれた中空突起933が復元しにくいと、把持が繰り返される際に、把持の解放の後のグリップ部材の復元が間に合わず、グリップ部材がつぶれた状態のまま、次の把持動作に入ってしまい、繰り返しの把持の確実性が損なわれやすくなる。
【0046】
一方、上記第1実施形態のグリッパ10によれば、連絡通路137が設けられているので、把持が解放される際には、連絡通路137を通じて、つぶされていた中空突起133の中空部133Vに空気が供給され、中空突起が元の形状に復帰しやすくなる。したがって、繰り返しの把持が確実に行われうる。
【0047】
以上のように、上記第1実施形態のグリッパによれば、把持対象物を柔軟に把持しながら、かつ、把持の際につぶされた中空突起が吸盤のように爪部材などに張り付いてしまうことが抑制されて、繰り返しの把持が確実に行われうる。
なお、上記実施形態の説明では、弾性部材131と把持対象物(99)の間に把持層121が配される例を示したが、上記効果は、把持層がない実施形態であっても生ずる効果である。
【0048】
また、必須ではないが、本実施形態のグリッパ10のように、連絡通路137が、互いに隣接する中空突起133,133の側壁134,134の間にまたがって設けられた、トンネル状の通路である場合には、把持対象物99を把持する際の保持力も向上する。
【0049】
ここで、把持対象物99を把持する際の保持力とは、把持方向に対し直交する方向(例えば
図2における上下方向)に把持対象物を動かそうとする際に、それに抗しうる力の大きさのことである。保持力が小さいと、
図1や
図2のようなグリッパの姿勢で把持対象物99を鉛直方向上方に持ち上げようとしても、把持対象物が落ちやすい。
【0050】
特許文献1にあるような従来のクッション材(例えばウレタンスポンジ)82,82を爪部材81,81の先端に備えるグリッパを
図11に示すが、こうした従来技術では、保持力がもっぱら、クッション材82と把持対象物の間の摩擦力に依存していたため、クッション材82が柔軟であるとクッション材が把持方向と直交する方向に変形して保持力が低下しやすく、把持対象物99が滑って、簡単に抜け落ちやすい。すなわち、従来公知のクッション材では、クッション材の柔軟さとグリッパの保持力を共に向上させることはできなかった。
【0051】
上記第1実施形態のグリッパにおいては、
図5に示されるように、把持対象物が把持された状態では、把持対象物99が、所定の間隔を隔てて設けられた中空突起133,133の間に、すなわち海島構造の海の部分に、入り込むようになって、把持対象物99がグリッパ10に把持されるが、このような状態となると、把持対象物が
図5の上下方向に抜けようとしても、中空突起133が把持対象物に引っかかるようになって、保持力が高められる。
【0052】
そして、本実施形態のグリッパ10のように、連絡通路137が、互いに隣接する中空突起133,133の側壁134,134の間に設けられたトンネル状の通路であれば、トンネル通路を画定する通路壁138が、中空突起の側壁134,134の間を結ぶことになり、中空突起133が
図5の上下方向に支持されることになって、中空突起133の剛性(
図5における上下方向の剛性)が高められる。これにより、
図5の把持状態から、把持対象物が抜ける方向に力が働いても、中空突起が横倒しになって把持対象物が抜け出してしまうことが、より確実に抑制される。すなわち、保持力がより高められる。
【0053】
また、さらに、上記第1実施形態のグリッパ10のように、把持層121を有する場合には、
図5に示されるように、把持層121が把持対象物99の表面に密着するように変形するため、把持層121と把持対象物99の間に十分大きな摩擦力を発生させることができて、保持力が特に高められる。
【0054】
保持力をより高める観点からは、把持層121は、JIS-K6253に準拠するデュロA硬度で30~80HDAの樹脂製であり、かつ、弾性部材が樹脂製であり、弾性部材を構成する樹脂の硬度が、把持層を構成する樹脂の硬度および支持体を構成する樹脂の硬度よりも高いことが好ましい。このようにされていると、グリップ部材12がより柔軟なものとなるとともに、弾性部材131が当接する部分が把持層121を裏側からしっかりと支えることになり、把持層121がより把持対象物99に引っかかりやすくなって、より保持力が高められるからである。
【0055】
また、本実施形態のように、連絡通路137が、互いに隣接する中空突起133,133の側壁134,134の間に設けられたトンネル状の通路であれば、弾性部材131にあらかじめ連絡通路137,137が作りこまれていることになって、爪部材11に弾性部材131を取り付けるだけで、連絡通路137を含むグリッパの構成が完成するため、優れたグリッパが製造しやすくなる。
【0056】
また、弾性部材131を把持層121と簡単に一体化させるとの観点からは、本実施形態のように、グリップ部材12は、外皮部材120を含むように構成され、外皮部材120の一部が前記把持層121となるように、外皮部材120は中空構造に構成され、弾性部材131が、外皮部材120の内側(中空部)に配置されていることが好ましい。
【0057】
上記第1実施形態のグリッパ10にかかる発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変をして実施することができる。以下に発明の他の実施形態について説明するが、以下の説明においては、上記実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様である部分については同じ番号を付して説明し、その詳細な説明を省略する。また、これら実施形態は、その一部を互いに組み合わせて、あるいは、その一部を置き換えて実施できる。
【0058】
上記実施形態における弾性部材131の具体的構成は変更可能である。上記第1実施形態の説明では、中空突起133,133が、直交格子の交点上に配置されるような弾性部材131の形態を例示したが、把持方向に沿って見てこれら中空突起133,133が配置される平面パターンは、三角形や六角形を仮想的に敷き詰めた際の各頂点に中空突起133,133が位置するような平面パターンであってもよい。
図7に、弾性部材の変形例として、把持方向に沿って見た際の中空突起133,133や連絡通路137,137の配置の平面パターンを例示する。
図7では、円筒状の中空突起133,133が、正三角形を敷き詰めたような平面パターンで配置され、連絡通路137,137が正三角形のパターンで中空突起を接続するように設けられた例を示す。本実施形態においても、一部の連絡通路が、中空突起133と弾性部材の周縁(図の上側の縁部)を結んでいる。また、中空突起133,133は、基部上にランダムに散在していてもよい。
【0059】
図8には、第2実施形態のグリッパに用いられる弾性部材231の正面図、断面図および背面図を示す。この弾性部材231は、上記第1実施形態の弾性部材131と同様な形態でグリッパを構成できる。
図8に示した弾性部材231は、平板状の基部232から、所定の平面パターンで中空部を有する中空突起233,233が突出形成されている点は、第1実施形態の弾性部材131と同様である。
図8に示した弾性部材231では、さらに、基部232には、中空突起233が設けられた部分に貫通穴234が設けられており、中空突起233の中空部233Vが基部232の裏側の空間に連通している。
【0060】
さらに、基部232には、中空突起233とは反対側に突出する突起235,235が設けられている。突起235は、典型的には、貫通穴234の周囲や、中空突起の間等に設けられる。突起235,235があることにより、弾性部材231を爪部材11に取り付けた際に、基部232と爪部材11が密着せず、離間するようにされている。
【0061】
第2実施形態のグリッパにおいては、当該離間した空間S、すなわち爪部材11と基部232が離間することにより生じた空間Sと貫通穴234によって空気の連絡通路が構成される。
【0062】
係る構成により、本実施形態の弾性部材231を用いても、中空突起233,233の中空部233V,233Vが互いに連通して、空気が互いに通流可能とされている。したがって、このような弾性部材231を備えさせれば、中空突起が柔軟になるとともに、弾性部材の復元性が特に良くなり、繰り返し把持する際の把持の確実さが向上する。
【0063】
基部232の裏側に設けられる突起235,235の具体的形態は特に限定されず、ドット状であってもよいし、長円状や紐状の形態の突起であってもよい。弾性部材の復元性をより良くするとの観点からは、突起235が空気の流れを妨げるようなシールラインを構成しないように、これら突起が設けられれば良い。
【0064】
また、本実施形態のように、基部232には、中空突起233が設けられた部分に貫通穴234が設けられており、基部232には、中空突起233とは反対側に突出する突起235が設けられて、基部232と爪部材11が離間するようにされており、当該離間した空間Sと貫通穴234によって前記連絡通路が構成されるのであれば、爪部材11に弾性部材231を取り付けるだけで、連絡通路を含むグリッパの構成が完成するため、優れたグリッパが製造しやすくなる。
【0065】
図9には、第3実施形態のグリッパの爪部材やグリップ部材の断面図を示す。第3実施形態のグリッパは、弾性部材331の形態が異なる点と、通気性シート材料335が設けられる点を除いて、第1実施形態のグリッパと同様の構成となっている。
本実施形態の弾性部材331は、平板状の基部332と、中空部を有する複数の中空突起333,333を有する。中空突起333,333は、所定の間隔を隔てて並ぶように、基部332上に突出形成されている。基部332には、中空突起333,333が設けられた部分に貫通穴334,334が設けられている。
【0066】
通気性シート材料335は、基部332に隣接して、設けられている。通気性シート材料335は、シートの厚み方向や面内方向に空気が透過可能なものであればよく、例えば、織布や不織布、綿、連続気泡構造の発泡樹脂シートなどが例示される。本実施形態では、貫通穴334,334と通気性シート材料335によって、空気の連絡通路が構成される。係る構成により、中空突起333,333の中空部333V,333Vが互いに連通して、空気が互いに通流可能とされる。したがって、このようなグリッパによれば、中空突起が柔軟になるとともに、弾性部材の復元性が特に良くなり、繰り返し把持する際の把持の確実さが向上する。
【0067】
また、本実施形態のように、基部332には、中空突起333が設けられた部分に貫通穴334が設けられており、基部332に隣接して通気性シート材料335が設けられていて、通気性シート材料335と貫通穴334によって連絡通路が構成されるのであれば、爪部材11に弾性部材331と通気性シート材料335を取り付けるだけで、連絡通路を含むグリッパの構成が完成するため、優れたグリッパが製造しやすくなる。
【0068】
図10には、第4実施形態のグリッパに用いられる弾性部材431の正面図、断面図および斜視図を示す。この弾性部材431は、上記第1実施形態の弾性部材131と同様な形態でグリッパを構成できる。
図10に示した弾性部材431は、平板状の基部432と、中空部を有する複数の中空凸条433,433を有する。中空凸条433,433は、所定の間隔を隔てて並ぶように、基部432上に突出形成されている。中空凸条433は、直線状であってもよく、折れ線状であってもよい。本実施形態では、曲線状、特に円弧状である。なお、中空凸条433,433の間の間隔は一定であってもよいが、変化していてもよく、凸条の間ごとに異なる間隔であってもよい。
【0069】
必須ではないが、中空凸条433は、基部432から立設された中空の第1凸条部434と、階段状に設けられた板状の段差部435と、基部432から遠ざかる方向に、段差部435の凸条中心側から立設された第2凸条部436と、を有している。
そして、中空凸条433では、筒状の第1凸条部434の内側の幅D3が、第2凸条部436の外側の幅D4よりも大きくされていて、把持対象物を把持する際に、中空凸条433が圧縮されて、第1凸条部434の内側に第2凸条部436の一部が入り込むように、階段状の中空凸条とされている。
【0070】
かかる構成の中空凸条433,433を弾性部材431が備えることにより、第4実施形態のグリッパも、第1実施形態と同様に、特にグリップ部材の柔軟性が高められる。なお、中空凸条が階段状にされることは必須ではなく、中空凸条433は、基部432から立設された一対の側壁を有するとともに、基部432とは反対側の末端が閉じられているものであればよい。本実施形態のように、中空凸条433が階段状である場合には、特に柔軟性が高められる。
【0071】
本実施形態のように、中空凸条が円弧状に設けられる場合には、把持動作の際に円弧が鉛直方向下側に向かって凸となるように、グリッパに取り付けられることが好ましい。このようにすると、保持力が特に高くなる。
【0072】
また、本実施形態においても、互いに隣接する中空凸条433,433の中空部433V,433Vを連通させる連絡通路437,437が設けられている。連絡通路437は、例えば、第1実施形態における弾性部材における連絡通路と同様に、隣接する中空凸条433,433の側壁の間を逆U字状の通路壁438で接続するものであってもよい。
連絡通路が設けられることにより、弾性部材431がより柔軟となるとともに、把持が解放された際の中空凸条433の復元性が良くなって、繰り返し把持する際の把持の確実さが向上する。
【0073】
好ましくは、本実施形態の弾性部材431も、把持層121と併用される。また、好ましくは、本実施形態の弾性部材431も、基部432が爪部材11の側に位置し、中空凸条433が把持対象物に向かう方向に突出するように、爪部材11に取り付けられる。
【0074】
なお、第4実施形態の説明では、弾性部材に設けられる中空凸条433,433が、階段状にされた例を示したが、第1実施形態や第2実施形態の弾性部材における中空突起133(233)等に関しても、これらを階段状の中空突起の構成として、中空突起の柔軟性が特に高められたものとしてもよい。
【0075】
また、第4実施形態のような中空凸条433,433を有する弾性部材431に、第2実施形態(
図8)にあるような突起(235)を備えさせて、中空凸条433が設けられた基部432を爪部材から離間させて、当該離間させた空間を利用して連絡通路を構成してもよい。
また、第4実施形態のような中空凸条433,433を有する弾性部材431に、第3実施形態(
図9)にあるような通気性シート材料(335)を備えさせて、通気性シート材料の部分を利用して連絡通路を構成してもよい。
これら変形例においても、同様に、把持対象物を柔軟に把持しながら、かつ、繰り返しの把持が確実に行われうる。
【0076】
また、連絡通路の具体的構成は上記実施形態に例示されたものに限定されない。例えば、
図9の第3実施形態において使用されていた弾性部材331に、さらに、溝を備えさせて、溝の部分を連絡通路としてもよい。この場合、溝は、基部332の爪部材側の面に、中空部333V,333Vを連通するように設けられる。このような溝により、同様に、弾性部材の中空部が連通して、同様の効果が発揮される。
【0077】
また、上記実施形態の説明では、連絡通路を弾性部材に作りこんだり、連絡通路を弾性部材と爪部材の間に設けたりしたが、連絡通路を設ける形態はこれらに限定されない。例えば、外皮部材や爪部材に連絡通路の一部となるべき溝や穴、通路を設けておいて、これら溝や穴、通路を利用して弾性部材の中空部を連通させるようにしてもよい。
【0078】
上記実施形態の説明では、主に爪部材が硬質な部材である形態を中心に説明したが、把持の際に、爪部材と把持対象物の間に柔軟なグリップ部材を介して、把持する力を把持対象物に伝えられるものである限りにおいて、爪部材は特に限定されない。例えば、爪部材は金属製や硬質プラスチック製などの剛性の高い部材であってもよいが、爪部材はゴム製や軟質プラスチック製であってもよい。また、爪部材を中空として、内部に気体や液体を入れて爪部材の剛性を可変にしてもよい。また、爪部材は、可動部を有し、屈曲等の能動的な変形が可能となるように構成されたものであってもよい。
【0079】
グリッパにより把持されるべき把持対象物の形状や性質は、把持操作が可能なものであれば、特に限定されない。上記実施形態のグリッパは柔軟性に富んでいるため、直方体状や円筒、多角錘、多面体、球体、楕円体など、多彩な形状の把持対象物を、多様な姿勢で把持することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0080】
グリッパはロボットアームの先端に取り付けられて、例えば搬送作業に使用でき、産業上の利用価値が高い。
【符号の説明】
【0081】
A ロボットアーム
10 グリッパ
11 爪部材
12 グリップ部材
120 外皮部材
121 把持層
131 弾性部材
132 基部
133 中空突起
133V 中空部
134 側壁
137 連絡通路
138 通路壁
99 把持対象物