(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101869
(43)【公開日】2023-07-24
(54)【発明の名称】ショーツ型吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/49 20060101AFI20230714BHJP
A61F 13/532 20060101ALI20230714BHJP
A61F 13/533 20060101ALI20230714BHJP
【FI】
A61F13/49 312A
A61F13/49 311A
A61F13/49 313A
A61F13/49 410
A61F13/49 317
A61F13/532 200
A61F13/533 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002058
(22)【出願日】2022-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】則元 由美
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BA12
3B200CA03
3B200CA06
3B200DA01
3B200DA15
3B200DA21
3B200DB05
3B200DD07
(57)【要約】
【課題】吸収体の保液性を維持したままで、吸収性物品を臀部の谷間や膨らみに沿って変形し易くし、背側からの漏れを防止する。
【解決手段】吸収性本体10の防漏シート12側面に、着用者の臀部溝に対応する部位に沿って、表面シート11側に窪ませたエンボス溝18が設けられている。エンボス溝18を横断するとともに、エンボス溝18に沿って間隔を空けた複数の第1線状伸縮部30が設けられ、かつ着用者の臀部の膨らみの頂部を囲うように、ショーツ型吸収性物品1の略幅方向に沿う第2線状伸縮部31、及びショーツ型吸収性物品1の略前後方向に沿う第3線状伸縮部32が設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透液性の表面シートと不透液性の防漏シートとの間に吸収体が介在された吸収性本体と、前記吸収性本体の外面側に一体的に設けられた外装体とからなり、製品状態で、前記外装体の前身頃と後身頃とが両側部において接合されることによりウエスト開口部及び左右一対のレッグ開口部が形成されたショーツ型吸収性物品であって、
前記吸収性本体の前記防漏シート側面に、着用者の臀部溝に対応する部位に沿って、前記表面シート側に窪ませたエンボス溝が設けられており、
前記エンボス溝を横断するとともに、前記エンボス溝に沿って間隔を空けた複数の第1線状伸縮部が設けられ、
かつ着用者の臀部の膨らみの頂部を囲うように、ショーツ型吸収性物品の略幅方向に沿う第2線状伸縮部、及びショーツ型吸収性物品の略前後方向に沿う第3線状伸縮部が設けられていることを特徴とするショーツ型吸収性物品。
【請求項2】
前記第1線状伸縮部及び第2線状伸縮部は、前記外装体に設けられ、前記第3線状伸縮部は、前記吸収性本体に設けられている請求項1記載のショーツ型吸収性物品。
【請求項3】
前記第3線状伸縮部は、着用者の臀部の膨らみの幅方向外側部分にのみ設けられ、幅方向内側部分には設けられていない請求項1、2いずれかに記載のショーツ型吸収性物品。
【請求項4】
前記第1線状伸縮部、第2線状伸縮部及び第3線状伸縮部は、前記吸収体と厚み方向に重なる領域に設けられている請求項1~3いずれかに記載のショーツ型吸収性物品。
【請求項5】
前記第1線状伸縮部、第2線状伸縮部及び第3線状伸縮部はそれぞれ、糸状弾性伸縮部材で構成されている請求項1~4いずれかに記載のショーツ型吸収性物品。
【請求項6】
前記外装体が、伸縮性を有しない第1シート層と、第2シート層との間に伸縮可能な弾性フィルムが積層されており、かつ、前記第1シート層及び前記第2シート層が、直接又は弾性フィルムを介して、間隔を開けた多数の接合部で接合されており、前記弾性フィルムの収縮力により収縮し、外力を加えると伸長可能である伸縮シートからなり、
前記第1線状伸縮部及び第2線状伸縮部は、前記伸縮シートの所定部位に設けられた前記接合部の面積率が隣接する領域と異なる部位によって構成され、前記第3線状伸縮部は、糸状弾性伸縮部材で構成されている請求項1~4いずれかに記載のショーツ型吸収性物品。
【請求項7】
前記吸収体の背側端縁の外形線は、中央部に前後方向の中央側に向けて凹んだ括れ部が形成されるとともに、その両側にそれぞれ前後方向外側に向けて膨出する曲線からなる膨出部が形成されている請求項1~6いずれかに記載のショーツ型吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショーツ型の生理用ナプキンや使い捨ておむつ等のショーツ型吸収性物品に関し、特に、吸収体の背側領域を臀部の谷間や膨らみに沿って変形しやすくしたショーツ型吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、フィット性を向上して、漏れの発生を防止したショーツ型の吸収性物品が数多く提案されている。例えば、特許文献1には、吸収性コアに、縦方向における吸収性物品の中央位置より後方に位置するコア後部に、縦方向及び横方向に分散した状態に複数の凹部が形成され、前記凹部が貫通部又は低坪量部によって形成された吸収性物品が開示されている。また、特許文献2には、吸収体が、長手方向に沿って延びる少なくと一本のチャネル(吸収体の低坪量部)を有し、背側ウエストベルト及び腹側ウエストベルトの少なくとも一方は、幅方向の中央部に位置し、長手方向の内側の端縁から外側に延び、幅方向の伸縮性が低い低伸縮域と、前記低伸縮域の幅方向の両側に隣接し、幅方向の伸縮性が高い一対の高伸縮域とを有し、前記チャネルの長手方向の後側及び前側の少なくとも一方の部分が、前記低伸縮域と厚さ方向に重なり、平面視で、一対の高伸縮域の各々における幅方向の内側の端縁は、吸収体における幅方向の当該高伸縮域に対向する端縁と前記チャネルとの間に位置するパンツ型おむつが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-102716号公報
【特許文献2】特開2020-108746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1、2記載のように吸収体の歪みなどを防止してフィット性を向上するため吸収体に貫通部又は低坪量部を形成すると、その分だけ吸収体の保液性が低下して外部への漏れが生じる可能性が高くなる。
【0005】
また、使い捨てのショーツ型或いはパンツ型の生理用ナプキンの使用者は、どのような寝相でも漏れが発生せず、シーツや布団などの寝具を汚さないこと、及び布製のショーツを履かなくて済むため洗う手間がないことなどを期待して使用しているが、吸収体が臀部の谷間に沿って変形しにくいため、経血が臀部溝を伝って背側に流れやすく、背側ウエスト部から漏れることがあった。特に、経血量が多い夜は不安になり、睡眠の質が低下する。
【0006】
そこで本発明の主たる課題は、吸収体の保液性を維持したままで、吸収性物品を臀部の谷間や膨らみに沿って変形しやすくし、背側からの漏れを防止したショーツ型吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために第1の態様として、透液性の表面シートと不透液性の防漏シートとの間に吸収体が介在された吸収性本体と、前記吸収性本体の外面側に一体的に設けられた外装体とからなり、製品状態で、前記外装体の前身頃と後身頃とが両側部において接合されることによりウエスト開口部及び左右一対のレッグ開口部が形成されたショーツ型吸収性物品であって、
前記吸収性本体の前記防漏シート側面に、着用者の臀部溝に対応する部位に沿って、前記表面シート側に窪ませたエンボス溝が設けられており、
前記エンボス溝を横断するとともに、前記エンボス溝に沿って間隔を空けた複数の第1線状伸縮部が設けられ、
かつ着用者の臀部の膨らみの頂部を囲うように、ショーツ型吸収性物品の略幅方向に沿う第2線状伸縮部、及びショーツ型吸収性物品の略前後方向に沿う第3線状伸縮部が設けられていることを特徴とするショーツ型吸収性物品が提供される。
【0008】
上記第1の態様では、前記吸収性本体の前記防漏シート側面に、着用者の臀部溝に対応する部位に沿って、前記表面シート側に窪ませたエンボス溝が設けられ、このエンボス溝を横断するように複数の前記第1線状伸縮部が設けられているため、前記第1線状伸縮部の収縮力によって前記エンボス溝が折れ基端となって、吸収性本体が臀部溝に沿って、肌側に突条に変形しやすくなり、吸収性本体が臀部の谷間に確実にフィットする。また、着用者の臀部の膨らみの頂部を囲うように、前記第2線状伸縮部及び第3線状伸縮部が設けられているため、これら第2線状伸縮部及び第3線状伸縮部の収縮力によって吸収性本体が臀部の膨らみに沿って立体的に変形する。このように、吸収性本体が臀部の谷間及び膨らみに沿って変形し、着用者の臀部の形状にフィットするため、背側からの漏れが確実に防止できる。このような効果は、吸収性本体の吸収体に貫通部や低坪量部を設けることなく、吸収体の保液性が維持されたままの状態で発揮される。
【0009】
第2の態様として、前記第1線状伸縮部及び第2線状伸縮部は、前記外装体に設けられ、前記第3線状伸縮部は、前記吸収性本体に設けられている請求項1記載のショーツ型吸収性物品が提供される。
【0010】
上記第2の態様では、生産ラインにおける流れ方向と各線状伸縮部が延びる方向とを一致させることにより、製造を容易化する製造上の観点から、前記第1線状伸縮部及び第2線状伸縮部を外装体に設け、前記第3線状伸縮部を吸収性本体に設けている。
【0011】
第3の態様として、前記第3線状伸縮部は、着用者の臀部の膨らみの幅方向外側部分にのみ設けられ、幅方向内側部分には設けられていない請求項1、2いずれかに記載のショーツ型吸収性物品が提供される。
【0012】
上記第3の態様では、着用者の臀部の膨らみの頂部を囲うように配置された第2線状伸縮部および第3線状伸縮部のうち、前記第3線状伸縮部を、臀部の膨らみの幅方向外側部分にのみ配置し、幅方向内側部分には配置しないようにしている。これによって、前記第2線状伸縮部及び第3線状伸縮部が、着用者の臀部の膨らみの頂部を略コの字形に囲うように配置されるようになる。幅方向内側は臀部溝に近接するため、前後方向への収縮力が強すぎると、臀部の谷間に沿って変形した部分に前後方向に凹凸が生じ、吸収性本体が臀部溝にフィットしにくくなる。
【0013】
第4の態様として、前記第1線状伸縮部、第2線状伸縮部及び第3線状伸縮部は、前記吸収体と厚み方向に重なる領域に設けられている請求項1~3いずれかに記載のショーツ型吸収性物品が提供される。
【0014】
上記第4の態様では、各線状伸縮部は、主として吸収体を臀部の谷間や膨らみに沿って変形させる役割を有するものであるため、吸収体と厚み方向に重なる領域にのみ配置し、吸収体から延出して配置しないようにしている。
【0015】
第5の態様として、前記第1線状伸縮部、第2線状伸縮部及び第3線状伸縮部はそれぞれ、糸状弾性伸縮部材で構成されている請求項1~4いずれかに記載のショーツ型吸収性物品が提供される。
【0016】
上記第5の態様では、前記第1線状伸縮部、第2線状伸縮部及び第3線状伸縮部をそれぞれ、糸状弾性伸縮部材で構成している。このため、糸状弾性伸縮部材の収縮力によって吸収性本体が臀部の谷間や膨らみに沿って確実に変形できるようになる。
【0017】
第6の態様として、前記外装体が、伸縮性を有しない第1シート層と、第2シート層との間に伸縮可能な弾性フィルムが積層されており、かつ、前記第1シート層及び前記第2シート層が、直接又は弾性フィルムを介して、間隔を開けた多数の接合部で接合されており、前記弾性フィルムの収縮力により収縮し、外力を加えると伸長可能である伸縮シートからなり、
前記第1線状伸縮部及び第2線状伸縮部は、前記伸縮シートの所定部位に設けられた前記接合部の面積率が隣接する領域と異なる部位によって構成され、前記第3線状伸縮部は、糸状弾性伸縮部材で構成されている請求項1~4いずれかに記載のショーツ型吸収性物品が提供される。
【0018】
上記第6の態様では、前記外装体が、第1シート層と第2シート層との間に弾性フィルムが積層された伸縮シートからなり、前記第1線状伸縮部及び第2線状伸縮部を、前記伸縮シートの接合部面積率を変化させた部位によって構成しているため、外装体に糸状弾性伸縮部材を配置する工程を設けなくて済み、製造が簡略化できる。
【0019】
第7の態様として、前記吸収体の背側端縁の外形線は、中央部に前後方向の中央側に向けて凹んだ括れ部が形成されるとともに、その両側にそれぞれ前後方向外側に向けて膨出する曲線からなる膨出部が形成されている請求項1~6いずれかに記載のショーツ型吸収性物品が提供される。
【0020】
上記第7の態様では、吸収体の背側端縁の外形線を所定の形状に形成することにより、吸収体の背側領域を臀部の谷間や膨らみに沿って変形しやすくしている。
【発明の効果】
【0021】
以上詳説のとおり本発明によれば、吸収体の保液性を維持したままで、吸収性物品が臀部の谷間や膨らみに沿って変形しやすくなり、背側からの漏れが防止できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係るショーツ型ナプキン1を示す斜視図である。
【
図6】(A)は
図5のVIA-VIA線矢視図、(B)は
図5のVIB-VIB線矢視図、(C)は
図5のVIC-VIC線矢視図である。
【
図8】伸縮シートの接合状態の説明用断面図である。
【
図9】伸縮シートの収縮状態の説明用断面図である。
【
図10】貫通孔が形成される伸縮シートの接合状態の説明用断面図である。
【
図13】接合部面積率が相違する例の概略平面図である。
【
図15】態様を異にする貫通孔の形成例の説明用平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0024】
本発明に係るショーツ型ナプキン1は、
図1及び
図2に示されるように、透液性の表面シート11と不透液性の防漏シート12との間に吸収体13が介在された吸収性本体10と、この吸収性本体10の外面側に一体的に設けられた外装体20とからなり、
図1に示される製品状態で、前記外装体20の前身頃と後身頃とが両側部のサイドシール部2において接合されることによりウエスト開口部W及び左右一対のレッグ開口部L、Lが形成されたショーツ型に形成された生理用ナプキンである。
【0025】
(吸収性本体10の構造)
先ず最初に、前記吸収性本体10の構造の一例について、
図2~
図5に基づいて説明する。前記吸収性本体10は、体液を吸収保持するものであり、不織布などからなる透液性の表面シート11とポリエチレンなどからなる不透液性の防漏シート12との間に、綿状パルプなどからなる吸収体13を介在させたものである。
【0026】
前記表面シート11は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高で圧縮復元性が高い点で優れている。前記表面シート11に多数の透孔を形成した場合には、体液が速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。不織布の繊維は、長繊維または短繊維のいずれでもよいが、好ましくはタオル地の風合いを出すため短繊維を使用するのがよい。また、エンボス処理を容易とするために、比較的低融点のポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系繊維のものを用いるのがよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド-バイ-サイド型繊維、分割型繊維の複合繊維を好適に用いることもできる。
【0027】
前記防漏シート12は、ポリエチレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、蒸れ防止の観点から透湿性を有するものを用いるのが望ましい。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートであり、仮にシート厚が同じであれば無孔シートよりも剛性が低下するため、柔軟性の点で勝るものとなる。前記防漏シート12としては、プラスチックフィルムと不織布とを積層させたポリラミ不織布を用いてもよい。
【0028】
前記表面シート11及び防漏シート12は、
図3及び
図4の横断面図に示されるように、吸収体12の外縁より外側に延出して設けられ、前記表面シート11と防漏シート12との積層シート部分により、吸収体13の外縁部に吸収体13が介在しないフラップ部を形成している。
【0029】
前記防漏シート12と表面シート11との間に介在される吸収体13は、体液を吸収保持できるものであればよく、たとえば綿状パルプと吸水性ポリマーとにより構成されている。前記吸水性ポリマーは吸収体を構成するパルプ中に、例えば粒状粉として混入されている。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。
【0030】
また、前記吸収体13には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド-バイ-サイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0031】
図示例の吸収体13は、前記吸収体13の形状保持および拡散性向上のためにクレープ紙又は不織布などからなる被包シート14で囲繞されているが、この被包シート14は設けなくてもよい。
【0032】
前記吸収体13の平面形状は、
図2に示されるように、着用者の腹側より背側の方が大きな面積で形成されている。具体的な平面形状としては、着用者の股下部に相当する部位の両側部に幅方向中央側に向けて窪む括れ部13aが形成されるとともに、その腹側端縁からそれぞれ前方に向けて延びる前後方向に沿ってほぼ直線の前側側縁が形成され、その左右の端縁同士を接続する腹側端縁の外形線13bが外方側に向けて膨出する円弧状の曲線で形成されている。一方、前記括れ部13aの前記腹側端縁と幅方向位置がほぼ同じ背側端縁からそれぞれ後方に向けて、背側に向かうに従って徐々に左右の離隔幅を拡大させた傾斜する直線からなる後側側縁が形成されるとともに、その端縁から更に後方に向けて延びる前後方向に沿ってほぼ直線の後側側縁が形成され、その左右の端縁同士を接続する背側端縁の外形線15が所定の形状で形成されている。
【0033】
前記吸収体13の背側端縁の外形線15は、中央部に前後方向の中央側に向けて凹んだ括れ部16が形成されるとともに、その両側にそれぞれ前後方向外側に向けて膨出する曲線からなる膨出部17が形成されている。前記括れ部16を設けることにより、吸収体13の背側端縁及びその近傍部分が、この括れ部16の底部を基端とする幅方向中央部に前後方向に延びる折り線で折れ曲がりやすくなり、吸収体13の後側部分が臀部の谷間に沿って変形しやすくなる。また、前記括れ部16の両側に膨出部17を設けることにより、幅方向中央部で折れ曲がった両側の領域がそれぞれ臀部の膨らみに沿って変形しやすくなる。
【0034】
本ショーツ型ナプキン1では、
図2及び
図4に示されるように、前記吸収性本体10の前記防漏シート12側(非肌当接面側)の面に、着用者の臀部溝に対応する部位に沿って、前記表面シート11側(肌当接面側)に窪ませたエンボス溝18が設けられている。前記エンボス溝18は、防漏シート12の外面側から、少なくとも防漏シート12及び吸収体13を一体的に圧搾したものであり、ショーツ型ナプキン1の前後方向に沿って形成されている。前記エンボス溝18は、ショーツ型ナプキン1の前後方向中央(CL:
図2参照。)より背側の領域であって、着用者の肛門付近に対応する部位から、吸収体13の背側端縁の外形線15まで延びている。前記エンボス溝18を設けることにより、このエンボス溝18を折れ曲がり基端として、吸収性本体10の背側部分の幅方向中央部が、着用者の臀部の谷間に沿って変形しやすくなる。
【0035】
特に、前記エンボス溝18は、背側の端縁が、吸収体13の背側端縁の外形線15の中央部に形成された括れ部16の底部に接続して設けられるようにするのが好ましい。これにより、前記括れ部16を形成することによって吸収性本体10が臀部の谷間に沿って変形する効果と、前記エンボス溝18によって吸収性本体10が臀部の谷間に沿って変形する効果との連続性が生じ、両者の効果が相俟って、吸収性本体10の背側部分の幅方向中央部が、着用者の臀部の谷間に沿ってより一層変形しやすくなる。
【0036】
前記エンボス溝18の寸法としては、幅が5~15mm、長さが50~150mmとするのが好ましい。
【0037】
前記吸収性本体10の変形例として、図示しないが、前記表面シート11の幅寸法を、吸収体13の幅よりも若干長めとし、吸収体13を覆うだけに止まり、それより外方側は前記表面シート11とは別のサイドシート、具体的には経血やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの目的に応じて、適宜の撥水処理または親水処理を施した不織布素材を用いて構成されたサイドシートを配設してもよい。かかるサイドシートとしては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができるが、好ましくはゴワ付き感を無くすとともに、ムレを防止するために、坪量を抑えて通気性を持たせた不織布を用いるのがよい。
【0038】
このサイドシートは、幅方向中間部より外側部分を所定の内側位置から防漏シート12の外縁までの範囲に亘ってホットメルトなどの接着剤によって接着され、当該サイドシートと防漏シート12との積層シート部分により、吸収体13の両側部に吸収体13が介在しないサイドフラップ部を形成する。
【0039】
前記サイドシートの内方側部分は、ほぼ二重に折り返されるとともに、この二重シート内部の長手方向中間部に、両端または長手方向の適宜の位置が固定された1又は複数本の糸状弾性伸縮部材が伸長状態で配設されており、この二重シート部分が前後端部では積層された状態で吸収体13側に接着された非起立部分を形成することによって、長手方向中間部に肌側に起立する左右対の立体ギャザーを形成するようにしてもよい。
【0040】
(外装体20の構造)
次に、前記外装体20について、
図2~
図6に基づいて説明する。前記外装体20は、少なくとも前身頃F及び後身頃Bの胴周り領域が、肌側に配置される内面用不織布21及び非肌側に配置される外面用不織布22を含む積層シート構造とされ、前記内面用不織布21と外面用不織布22との間の所定領域に弾性伸縮部材が配設され、幅方向の伸縮性が付与されている。
【0041】
前記内面用不織布21及び外面用不織布22を含む積層シート構造は、外装体20の全長に亘って設けてもよいが、図示例のように、前記内面用不織布21が前後に二分割し、股下部で前後方向に離間するように配置し、股下部には外面用不織布22のみが延在するように構成してもよい。また、外装体20は、前後に二分割し、両者が股下部で前後方向に離間するように配置してもよい。
【0042】
前記外装体20の平面形状は、中間両側部に夫々レッグ開口部Lを形成するための凹状の脚周りカットライン23により、全体として擬似砂時計形状を成している。
【0043】
前記外装体20は、
図2及び
図5に示されるように、該外装体20における前身頃Fの胴周り領域3、後身頃Bの胴周り領域3及びそれらの間の中間領域4の一部に、所定の弾性伸縮部材が配置されることにより、幅方向の伸縮性が付与されている。前記胴周り領域3とは、前身頃Fと後身頃Bとが接合されたサイドシール部2の縦方向範囲として定まる領域である。前記胴周り領域3は、ウエスト開口部Wの開口縁近傍に設けられるウエスト周り領域5と、それより前後方向中央側の腰周り領域6とに区画できる。ここに、胴周り領域3=ウエスト周り領域5+腰周り領域6の関係にある。
【0044】
前記外装体20は、
図2及び
図5に示されるように、前記ウエスト周り領域5において、内面用不織布21及び外面用不織布22の間に、幅方向に沿うとともに、前後方向に間隔を開けて複数本の、図示例では5本の糸状弾性伸縮部材24が伸長状態で適宜の位置がホットメルト接着剤で固定されることにより、幅方向の伸縮領域が形成されている。また、前記腰周り領域6において、内面用不織布21及び外面用不織布22の間に、弾性フィルム25が幅方向に伸長された状態で、内面用不織布21及び外面用不織布22が、幅方向及び前後方向にそれぞれ間隔を空けて配列された多数の接合部26で接合されている。本実施形態例では、前身頃Fの胴周り領域3、後身頃Bの胴周り領域3及びそれらの間の中間領域4の一部が、上述の弾性伸縮部材(糸状弾性伸縮部材24及び弾性フィルム25)による伸縮領域を構成している。中間領域4の前後方向中央部は、弾性フィルム25が存在しないために非伸縮領域である。
【0045】
(弾性フィルム25を用いた伸縮シート)
前記弾性フィルム25を用いた伸縮シートとしては、特許第6052746号公報に記載された伸縮シートを用いることができる。同公報では、幅方向に伸縮可能な伸縮領域を有する使い捨ておむつに関して記述されている。同公報に記載された概要を以下に説明する。
【0046】
前記伸縮領域は、
図7~
図10に示すように、伸縮性を有しない例えば不織布からなる内面用不織布21と、伸縮性を有しない例えば不織布からなる外面用不織布22との間に、幅方向に伸縮可能な弾性フィルム25が積層されており、かつ、前記内面用不織布21及び前記外面用不織布22が、直接又は弾性フィルム25を介して、間隔を空けた多数の接合部26で接合されている。ここで、内面用不織布21及び外面用不織布22が「伸縮性を有しない」とは全く伸縮しないことを意味するのではなく、弾性フィルムの伸縮性度合いとの比較では、実質的に伸縮しないことを意味する。
【0047】
接合に際しては、
図11に示すように、外面に所定のパターンで形成した突起部60aを有するアンビルロール60と超音波ホーン61との間に、内面用不織布21、弾性フィルム25及び外面用不織布22を供給し、超音波ホーン61により超音波溶融エネルギーを与え、例えば主に弾性フィルム25を溶融することによって、内面用不織布21及び外面用不織布22と接合する。
【0048】
前記アンビルロール60に対向して対向ロール63が配置されている。この対向ロール63に対して駆動ロール65が設けられ、弾性フィルム25を挟み付けるニップロールとされている。
【0049】
かかる装置の構造において、弾性フィルム25を、対向ロール63に巡らせた後、駆動ロール65とのニップ位置に達し、その後は、アンビルロール60を巡らせる。
【0050】
その際に、駆動回転するアンビルロール60の周速を駆動ロール65の周速(したがって対向ロール63の周速でもある。)より速くすることにより、弾性フィルム25を伸長するとともに、アンビルロール60の突部60aの群と超音波ホーン61とにより接合を行う。
【0051】
このとき、アンビルロール60の周速を駆動ロール65の周速より速くする速度差を選択することにより、弾性フィルム25の製造過程における伸長率(自然状態の長さを100%としたときを基準とする)を設定できる。
【0052】
図8には接合後の伸縮シートについて、伸長状態における断面を模式的に図示してある。伸縮シートの伸長状態を解放すると、
図9(模式図)に示すように、弾性フィルム25の収縮力により収縮し、幅方向(
図9の左右方向)に外力を加えると伸長可能である。したがって、この伸縮シートを、例えばショーツ型ナプキンの腰周り方向に使用すると、腰部あるいはウエスト部を収縮させるようになる。
【0053】
そして、伸縮シートは、所定の面積をもって製造できるので、所望の面積全体に収縮力を作用させたい場合に、その伸縮シートを適用すればよい。この点、従来の使い捨ておむつなどの吸収性物品においては、シートに糸ゴムを複数本並列に固定することにより行うのが一般的であるが、これでは糸ゴムやシートへの固定用のホットメルト接着剤の劣化による品質低下、並びに製造時における安定した生産性の点で劣る。これらの問題点は本発明に係る伸縮シートによって解決できる。
【0054】
しかも、
図9の収縮状態を見ると分かるように、伸縮シートの外面が規則的な細かい皺またはひだか生成されるので、着用者の肌への感触性が良好である。
【0055】
他方、上記例では、内面用不織布21と外面用不織布22とを、弾性フィルム25を溶融させて接合した例である。この場合、(1)内面用不織布21又は外面用不織布22が弾性フィルム25の表面で接合する態様、(2)弾性フィルム25の表面部分が溶融し、内面用不織布21及び外面用不織布22のそれぞれの繊維間に侵入して接合する態様、(3)弾性フィルム25のほぼ全体が溶融し、内面用不織布21及び外面用不織布22のそれぞれの繊維間に侵入して接合する態様などがある。本発明において、層間の接合態様についてこれらのこれらの例に限定されるものではない。
【0056】
これらの態様のうち(3)などの態様においては、内面用不織布21と外面用不織布22とが、直接、すなわち弾性フィルム25を介在することなく接合していると評価することができる。
【0057】
上記(1)~(3)の態様は、弾性フィルム25の融点が、内面用不織布21及び外面用不織布22の融点より低い場合であるが、弾性フィルム25の融点が、内面用不織布21及び/又は外面用不織布22の融点より高い場合であってもよい。この場合は、内面用不織布21及び/又は外面用不織布22の弾性フィルム25側表面部分が活性化あるいは溶融して弾性フィルム25に接合する形態である。
【0058】
さらに、弾性フィルム25が一部溶融するほか、内面用不織布21及び/又は外面用不織布22も溶融することによって接合するものでもよい。
【0059】
内面用不織布21及び/又は外面用不織布22が不織布であり、その繊維が芯・鞘構造を有していてもよい。この場合において、例えば繊維の鞘成分のみが溶融して、接合に寄与させることができる。
【0060】
さて、伸縮シートの領域内において、単位面積内に含まれる前記接合部の総和面積が占める接合部面積率が、所定の領域で異なっていることにより、伸縮応力が相違しているのが望ましい。
【0061】
ここに接合部面積率とは、
図12が参照されるように、単位面積S内に含まれる接合部26、26…の総和面積が単位面積S中に占める割合を百分率で示したものである。この場合における単位面積Sとしては、接合部が10個以上含まれるような大きさに設定することが望ましい(少ない個数では伸縮応力の比較をし難い。)。
図12の例では、13個の接合部を含んでいる。また、単位面積Sを定める外形は、正方形以外に長方形や円などの他の形状であってもよい。
【0062】
接合部26の一例は、
図12に示す円形である。もちろん、楕円や長方形などの形状であっても良い。
図12のLmはマシン方向の配列間隔長、Lcはマシン方向と直交する直交方向(クロス方向)の配列間隔長、Pmはマシン方向(MD)のピッチ長、Pcは直交方向(クロス方向:CD)のピッチ長である。
【0063】
伸縮シート内における領域によって、接合部面積率が異なる態様を
図13に示した。
【0064】
図13は、領域α、β、γについて、接合部面積率をα<β<γとすることによって、伸縮応力をα>β>γの関係にしたものである。
【0065】
例えば、ピッチ長Pm及びピッチ長Pcが長い場合αと、ピッチ長Pm及びピッチ長Pcが短い場合γとを比較すると、ピッチ長Pm・Pcが長い場合α(接合部面積率が低い場合)の方が、ピッチ長Pm・Pcが短い場合γ(接合部面積率が高い場合)より伸長率が大きい。その結果、伸縮応力は、α>β>γの関係になる。βは中間のケースの場合である。
【0066】
図13の形態では、伸長応力を領域ごと異なるものとなるので、吸収性物品を着用したとき、領域ごと収縮力が異なるものとなり有用である。
【0067】
ところで、本発明における弾性フィルム25は、幅方向のみに伸長可能なものでもよいが、直交する方向にも伸縮する2方向伸縮フィルムが好適である。
【0068】
弾性フィルム25の厚み、材料、ひずみ・応力特性、融点などの物性は適宜選択できる。この弾性フィルム25と、これに与える超音波溶融エネルギーと、伸縮シートの製造時における弾性フィルム25の伸長率との関係を選択することにより、
図10に示すように、結合部26の周囲に貫通孔27を形成することができる。内面用不織布21及び外面用不織布22として例えば不織布により形成した場合、不織布は通気性を示すので、貫通孔27の形成によって、伸縮シートの表裏に通気性を示す。したがって、例えばショーツ型ナプキンの腰周りの部材として使用した場合、通気性が良好な腰周りシートとなる。
【0069】
通気貫通孔27が形成される理由は必ずしも明確ではないが、超音波溶融エネルギーによって弾性フィルム25が溶融し、かつ、アンビルロール60の突起部60aによる押圧によって結合部26は薄層化する。このとき弾性フィルム25も薄層化しながら、結合部26の周囲部が破断強度に達し、伸長弾性フィルムに作用している伸縮応力によって破断が開始し、釣り合い個所まで収縮し、開孔するものと考えられる。
【0070】
図14には円形の貫通孔の場合における貫通孔27の形成例を模式的に示した。結合部26のマシン方向(伸長方向)の両側にほぼ三日月状の貫通孔27が形成される。
【0071】
結合部は、マシン方向(伸長方向)と直交する方向(クロス方向:CD方向)に長い形状とすることができる。この場合には、例えば
図15に示すように、大きく開孔する半円形の貫通孔27を形成でき、通気性を高めたい場合に好適な手段である。
【0072】
他方、全ての結合部に貫通孔27が形成されることは必須ではない。もし、確実に貫通孔27を形成すること、あるいは大きく開孔することが要請される場合には、
図16に示す手法を採ることができる。
【0073】
すなわち、結合部26を形成した伸縮シートを、
図16(B)に示すように、突条又は、突起64aを有する一対のロール64間に通し、一方のロール64の隣接する突起64a、突起64a間に他方のロール64の突起64aを食い込ませて、伸縮シートに変形力を加えて貫通孔27を形成することができる。
【0074】
本発明に係るショーツ型ナプキン1では、
図2及び
図5に示されるように、外装体20における前身頃Fの腰周り領域6、後身頃Bの腰周り領域6及びそれらの間の中間領域4の一部に、既述の伸縮シートによる積層伸縮構造7が形成されている。この積層伸縮構造7の全体にわたり、内面用不織布21と外面用不織布22との間に弾性フィルム25が積層されてなるとともに、弾性フィルム25が幅方向に伸長された状態で、内面用不織布21及び外面用不織布22が、伸縮方向(幅方向)及びこれと直交する方向(前後方向)にそれぞれ間隔を空けて配列された多数の接合部26で、(図示の例では弾性フィルム25に形成された貫通孔27を通じて)接合されている。
【0075】
個々の接合部26及び貫通孔27の自然長状態での形状は、真円形、楕円形、長方形等の多角形(線状や角丸のものを含む)、星形、雲形等、任意の形状とすることができる。個々の接合部26の大きさは、適宜定めれば良いが、大きすぎると接合部26の硬さが感触に及ぼす影響が大きくなり、小さすぎると接合面積が少なく資材同士が十分に接着できなくなるため、通常の場合、個々の接合部26の面積は0.14~3.5mm2 程度とすることが好ましい。個々の貫通孔27の開口面積は、貫通孔27を介して接合部26が形成されるため接合部以上であれば良いが、接合部26の面積の1~1.5倍程度とすることが好ましい。
【0076】
また、個々の接合部26の面積及び面積率は、通常の場合次のようにするのが好ましい。接合部26の面積:0.14~3.5mm2(特に0.14~1.0mm2)、接合部26の面積率:1.8~19.1%(特に1.8~10.6%)。
【0077】
接合部26及び貫通孔27の平面配列は適宜定めることができるが、規則的に繰り返される平面配列が好ましく、
図17(A)に示すような斜方格子状や、
図17(B)に示すような六角格子状(これらは千鳥状ともいわれる)、
図17(C)に示すような正方格子状、
図17(D)に示すような矩形格子状、
図17(E)に示すような平行体格子(図示のように、多数の平行な斜め方向の列の群が互いに交差するように2群設けられる形態)状等(これらが伸縮方向に対して90度未満の角度で傾斜したものを含む)のように規則的に繰り返されるものの他、接合部26の群(群単位の配列は規則的でも不規則でも良く、模様や文字状等でも良い)が規則的に繰り返されるものとすることもできる。接合部26及び貫通孔27の配列形態は、適宜の領域において同じものとする他、異なるものとすることもできる。
【0078】
弾性フィルム25は特に限定されるものではなく、それ自体弾性を有する樹脂フィルムであれば特に限定なく用いることができ、例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー及びポリウレタン系エラストマー等の熱可塑性エラストマーの1種又は2種以上のブレンド物を、Tダイ法やインフレーション法などの押出成形によりフィルム状に加工したものを用いることができる。また、弾性フィルム25としては、無孔のものの他、通気のために多数の孔やスリットが形成されたものも用いることができる。特に、伸縮方向における引張強度が8~25N/35mm、伸縮方向と直交する方向における引張強度が5~20N/35mm、伸縮方向における引張伸度が450~1050%、及び伸縮方向と直交する方向における引張伸度が450~1400%の弾性フィルム25であると好ましい。なお、引張強度及び引張伸度(破断伸び)は、引張試験機(例えばSHIMADZU社製のAOUTGRAPHAGS-G100N)を用い、試験片を幅35mm×長さ80mmの長方形状とした以外は、JIS K7127:1999「プラスチック-引張特性の試験方法-」に準じて、初期チャック間隔を50mmとし、引張速度を300mm/minとして測定される値を意味する。弾性フィルム25の厚みは特に限定されないが、20~40μm程度であるのが好ましい。また、弾性フィルム25の目付は特に限定されないが、30~45g/m2程度であるのが好ましく、特に30~35g/m2程度であるのが好ましい。
【0079】
前記伸縮シートの各構成部材の融点は適宜選定できるが、好適な例は、弾性フィルム25の融点が95~125℃、より望ましくは100~120℃であり、内面用不織布21の融点が125℃超~160℃、より好ましくは130~160℃、外面用不織布22の融点が125℃超~160℃、より好ましくは130~160℃である。
【0080】
超音波溶着温度は、ホーンからの超音波エネルギーの選択により変更可能である。このホーンからの超音波エネルギーを直接温度に換算することはできないが、非接触式温度計で測定した場合、ホーン側の温度で40℃~30℃、アンビルロール側の温度で38℃~28℃が安定した生産性を示す。
【0081】
また、この安定した操業の下で、接合状況の観察から推測するに、弾性フィルム25の融点温度より高く、ホーン側から弾性フィルム25に125℃~145℃に換算する溶融エネルギーを与えるのが好適である。また、内面用不織布21及び外面用不織布22の融点温度より低いのが望ましい。また、内面用不織布21及び外面用不織布22の融点と弾性フィルム25の融点との差は10~45℃程度であるのが好ましい。
【0082】
内面用不織布21及び外面用不織布22として、ショーツ型ナプキン1の腰周りシートの場合には、最適な不織布はスパンボンド不織布である。
【0083】
ショーツ型ナプキン1においては、
図2に示されるように、前後の胴周り領域3、3間に中間領域4を有し、胴周り領域3の前後方向の中央側終端(前身頃Fでは
図2基準で下方端)から中間領域にかけて幅方向中央側に括れた脚周り部8が形成されている。
【0084】
前記脚周り部8は、前身頃F及び後身頃Bの少なくとも一方に形成されていれば足りる。もちろん、前身頃F及び後身頃Bに脚周り部8が形成されているのが望ましい。
【0085】
本発明において、
図2に示されるように、伸縮シートで形成した外装体20内において、単位面積内に含まれる接合部26の総和面積が占める接合部面積率が、脚周り部8とこれに隣接する領域Qとで異なっている形態であるのが望ましい。
【0086】
繰り返しの説明になるが、接合部面積率が小さいと伸縮応力が大きい。したがって、脚周り部8の接合部面積率については小さくし伸縮応力を大きくし、隣接する領域Qにおいては、接合部面積率を大きくし伸縮応力を小さくすることで、脚周り部8に大きな伸縮力が作用するようになるのでフィット性に優れたものとなる。
【0087】
(線状伸縮部)
本発明に係るショーツ型ナプキン1では、
図2に示されるように、前記エンボス溝18を横断するとともに、前記エンボス溝18に沿って間隔を空けた複数の第1線状伸縮部30が設けられている。さらに、着用者の臀部の膨らみの頂部を囲うように、ショーツ型ナプキン1の略幅方向に沿う第2線状伸縮部31、及びショーツ型ナプキン1の略前後方向に沿う第3線状伸縮部32が設けられている。
【0088】
前記第1線状伸縮部30は、エンボス溝18を溝幅方向に横断するとともに、エンボス溝18の両側にそれぞれ所定の長さで延在した直線状に設けられるものである。前記第1線状伸縮部30は、エンボス溝18に沿って複数、好ましくは3~10箇所、図示例では5箇所に設けられている。
【0089】
前記第2線状伸縮部31は、着用者の臀部の膨らみの頂部の前側及び後側にそれぞれ、幅方向に沿って直線状に設けられるものである。すなわち、左右にそれぞれ、前後方向に離隔する2箇所に設けられている。
【0090】
前記第3線状伸縮部32は、着用者の臀部の膨らみの頂部の幅方向外側に、前後方向に沿って直線状に設けられるものである。
【0091】
着用者の臀部の膨らみの頂部とは、着用者が立位状態において、臀部溝を境として左右それぞれに背側に膨出する臀部の頂部を指すものであり、体型によって違いがあるが、概ね、ショーツ型ナプキン1の前後方向中央(CL)からの高さが120~300mm、好ましくは150~250mmの範囲であり、幅方向中心線から左右にそれぞれ20~110mm、好ましくは30~95mmの範囲である。したがって、前記第2線状伸縮部31及び第3線状伸縮部32は、この範囲の外側を囲むように設けられている。
【0092】
前記第1線状伸縮部30、第2線状伸縮部31及び第3線状伸縮部32は、それぞれ独立して設けられており、互いに接続したり交差して設けられていない。
【0093】
前記第1線状伸縮部30をエンボス溝18を横断するように設けることによって、前記第1線状伸縮部30の収縮力によってエンボス溝18が折れ基端となって、吸収性本体10が臀部溝に沿って、肌側に突条に変形しやすくなり、吸収性本体10が臀部の谷間に確実にフィットできるようになる。
【0094】
さらに、着用者の臀部の膨らみの頂部を囲うように前記第2線状伸縮部31及び第3線状伸縮部32が設けられているため、これらの線状伸縮部31、32の収縮力によって、吸収性本体10が臀部の膨らみに沿って立体的に変形しやすくなる。
【0095】
このように、吸収性本体10が臀部の谷間及び膨らみに沿って変形し、着用者の臀部の形状にフィットするため、背側からの体液の漏れが確実に防止できる。
【0096】
前記第1線状伸縮部30、第2線状伸縮部31及び第3線状伸縮部32は、
図2~
図6に示される実施形態例では、糸状弾性伸縮部材で構成されている。前記糸状弾性伸縮部材の繊度は470dtex以上とするのがよい。
【0097】
前記第1線状伸縮部30及び第2線状伸縮部31は、
図6(A)、(B)に示されるように、前記外装体20に設けられ、前記第3線状伸縮部32は、
図6(C)に示されるように、前記吸収性本体10に設けられている。具体的には、前記第1線状伸縮部30及び第2線状伸縮部31は、外装体20の吸収性本体10との対向面にそれぞれ設けられ、前記第3線状伸縮部32は、防漏シート12の外装体20との対向面に設けられている。
【0098】
より詳細に説明すると、前記第1線状伸縮部30は、そのほとんどが内面用不織布21の吸収性本体10との対向面に設けられており、エンボス溝18の前端側に配置される1乃至数本、図示例では1本が、内面用不織布21より前側に延在する外面用不織布22の吸収性本体10との対向面に設けられているが、全ての第1線状伸縮部30が内面用不織布21の吸収性本体10との対向面に設けられるようにしてもよい。
【0099】
また、前記第2線状伸縮部31は、内面用不織布21の吸収性本体10との対向面に設けられており、好ましくは前記弾性フィルム25の配置領域と厚み方向に重なる領域に設けられている。
【0100】
前記第1線状伸縮部30及び第2線状伸縮部31が外装体20に設けられ、前記第3線状伸縮部32が吸収性本体10に設けられるのは、主に製造上の理由からである。つまり、外装体20に設けられる第1線状伸縮部30及び第2線状伸縮部31がショーツ型ナプキン1の幅方向に沿って配置されるため、この幅方向をライン流れ方向とする外装体20の製造において、ライン流れ方向に沿って糸状弾性伸縮部材を配置しやすくなる。また、吸収性本体10に設けられる第3線状伸縮部32についても同様に、吸収性本体10の前後方向に沿って配置されるため、この前後方向をライン流れ方向とする吸収性本体10の製造において、ライン流れ方向に沿って糸状弾性伸縮部材を配置しやすくなる。
【0101】
前記第3線状伸縮部32は、着用者の左右の臀部の膨らみ部分に対して、それぞれ幅方向外側及び幅方向内側の両方に設けてもよいが、図示例のように、幅方向外側部分にのみ配置し、幅方向内側部分には配置しないようにするのが好ましい。臀部の左右の各膨らみ部分の幅方向内側は、臀部溝に近接するため、前後方向への収縮力を大きくすると、吸収性本体10の幅方向中央部分が臀部の谷間に沿って突条に変形したときに、この突条に変形した部分が前後方向に凹凸を生じるおそれがある。前記第3線状伸縮部32が幅方向外側部分にのみ設けられることにより、臀部の膨らみの頂部が、前記第2線状伸縮部31及び第3線状伸縮部32によって略コの字形に囲われるようになる。
【0102】
前記第1線状伸縮部30、第2線状伸縮部31及び第3線状伸縮部32は、吸収性本体10の吸収体13と厚み方向に重なる領域にのみ配置され、吸収体13の外側に延在していない。これによって、吸収体13が臀部の谷間や膨らみに沿って変形しやすくなる。
【0103】
また、前記第1線状伸縮部30、第2線状伸縮部31及び第3線状伸縮部32が配置された領域には、これらを構成する糸状弾性伸縮部材の他に、他の糸状弾性伸縮部材が近接して又は重ねて配置されないようにするのが好ましい。他の糸状弾性伸縮部材を近接して又は重ねて配置した場合には、この糸状弾性伸縮部材の収縮力によって、前記第1線状伸縮部30、第2線状伸縮部31及び第3線状伸縮部32の収縮力の効果が低減したり、収縮方向が変化し、臀部の谷間や膨らみにフィットしにくくなる。ただし、上述の弾性フィルム25のように、外装体20のうちこれらの線状伸縮部30、31、32が配置された領域のほぼ全体を一様に収縮させる弾性部材を重ねて配置する場合は、第1線状伸縮部30、第2線状伸縮部31及び第3線状伸縮部32の収縮方向が変化することがないので構わない。
【0104】
前記第1線状伸縮部30の伸縮率は、外装体20の前記弾性フィルム25が配置された他の領域より高くするのが好ましく、275%以上(自然状態の長さを100%としたときを基準とする)とするのがよい。また、引張力が作用したときと解放したときの変化する長さ範囲である伸縮幅は、10~30mmとするのがよい。
【0105】
前記第2線状伸縮部31の伸縮率は、外装体20の前記弾性フィルム25が配置された他の領域より高くするのが好ましく、275%以上(自然状態の長さを100%としたときを基準とする)とするのがよい。また、引張力が作用したときと解放したときの変化する長さ範囲である伸縮幅は、70~90mmとするのがよい。
【0106】
前記第3線状伸縮部32の伸縮率は、臀部の谷間への変形を邪魔しない範囲であり、前記第1線状伸縮部30及び第2線状伸縮部31より小さくするのが好ましく、200%以上(自然状態の長さを100%としたときを基準とする)とするのがよい。また、引張力が作用したときと解放したときの変化する長さ範囲である伸縮幅は、70~90mmとするのがよい。
【0107】
上記形態例では、前記第1線状伸縮部30及び第2線状伸縮部31を糸状弾性伸縮部材で構成していたが、上記(弾性フィルム25を用いた伸縮シート)の欄で説明したように、前記伸縮シートの所定部位に設けられた前記接合部26の面積率が隣接する領域と異なる部位によって構成してもよい。すなわち、上述したように、接合部面積率が小さいと伸縮応力が大きくなるので、前記第1線状伸縮部30及び第2線状伸縮部31において、隣接する領域より接合部面積率を小さくし、伸縮応力を大きくする。
【0108】
(製造方法)
次に、本発明に係るショーツ型ナプキン1の製造方法について説明する。先ず、前記吸収性本体10の製造は、表面シート11と防漏シート12との間に吸収体13を介在した積層構造体を、前記エンボス溝18に対応する部位に凸部が備えられたエンボスロールと、表面がフラットのアンビルロールとの間に導入することにより、前記防漏シート12の所定部位に前記エンボス溝18を形成した後、防漏シート12の外面に前記第3線状伸縮部32を伸長状態でホットメルト接着剤により固定する。
【0109】
次いで、前記外装体20の製造は、内面用不織布21と外面用不織布22との間に、弾性フィルム25を介在させるとともに、ウエスト周りに糸状弾性伸縮部材24を伸長状態でホットメルト接着剤により固定した後、吸収性本体10との対向面に、糸状弾性伸縮部材からなる前記第1線状伸縮部30及び第2線状伸縮部31を伸長状態でホットメルト接着剤により固定する。
【0110】
その後、前記吸収性本体10を表裏反転して、外装体20の吸収性本体10対向面に接合してショーツ型ナプキン1が完成する。
【0111】
〔他の形態例〕
上記形態例では、
図2に示されるように、外装体20の脚周り部8に、これに隣接する領域Qより接合部面積率を小さくした領域を設けることにより、この脚周り部8に大きな伸縮力を作用させ、脚周りのフィット性を向上させているが、この構成に加えて、又はこのような接合部面積率を小さくした領域を設けることなく、外装体20の内面用不織布21と外面用不織布22との間に、脚周りカットライン23に沿って1又は複数条の糸状又は帯状の弾性伸縮部材を伸長状態で配置することにより、前記脚周り部8に伸縮力を作用させ、脚周りのフィット性を向上させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0112】
1…ショーツ型ナプキン、2…サイドシール部、3…胴周り領域、4…中間領域、5…ウエスト周り領域、6…腰周り領域、7…積層伸縮構造、8…脚周り部、10…吸収性本体、11…表面シート、12…防漏シート、13…吸収体、14…被包シート、15…背側端縁の外形線、16…括れ部、17…膨出部、18…エンボス溝、20…外装体、21…内面用不織布、22…外面用不織布、23…脚周りカットライン、24…糸状弾性伸縮部材、25…弾性フィルム、26…接合部、27…貫通孔、30…第1線状伸縮部、31…第2線状伸縮部、32…第3線状伸縮部、60…アンビルロール、61…超音波ホーン、63…対向ロール、64…ロール、65…駆動ロール、B…後身頃、F…前身頃、L…レッグ開口部、W…ウエスト開口部