(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010188
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】圧電アクチュエータ、リニア駆動装置及び電子機器
(51)【国際特許分類】
H02N 2/04 20060101AFI20230113BHJP
H10N 30/50 20230101ALI20230113BHJP
H10N 30/20 20230101ALI20230113BHJP
H10N 30/87 20230101ALI20230113BHJP
H10N 30/06 20230101ALI20230113BHJP
B06B 1/06 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
H02N2/04
H01L41/083
H01L41/09
H01L41/047
H01L41/29
B06B1/06 Z
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021114147
(22)【出願日】2021-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】316006783
【氏名又は名称】新思考電機有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 啓
(72)【発明者】
【氏名】矢野 智義
【テーマコード(参考)】
5D107
5H681
【Fターム(参考)】
5D107AA03
5D107BB20
5D107CC03
5D107CC10
5D107CC11
5H681AA06
5H681BB01
5H681BB13
5H681BC01
5H681CC01
5H681DD02
5H681DD15
5H681DD24
5H681DD35
5H681DD44
5H681DD55
5H681DD65
5H681DD67
5H681DD87
5H681DD95
5H681EE10
5H681FF24
5H681FF27
5H681GG23
(57)【要約】
【課題】低い電圧の印加でも所定の大きさの駆動軸の変位量を得ることができる圧電アクチュエータ、リニア駆動装置及び電子機器を提供する。
【解決手段】圧電アクチュエータ10は、平板状の圧電素子18が複数積層され、板面方向に伸縮する圧電体12と、前記圧電体12がその板面上に形成される弾性板34と、前記圧電体12又は前記弾性板34の一方に前記圧電体12の板面方向と直交する方向に一端が固定された駆動軸14と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の圧電素子が複数積層され、板面方向に伸縮する圧電体と、
前記圧電体がその板面上に形成される弾性板と、
前記圧電体又は前記弾性板の一方に前記圧電体の板面方向と直交する方向に一端が固定された駆動軸と、
を有する圧電アクチュエータ。
【請求項2】
前記弾性板の両側の板面上のそれぞれに前記圧電体が形成されている請求項1記載の圧電アクチュエータ。
【請求項3】
前記圧電素子は、圧電素子本体と、この圧電素子本体を挟んで設けられ、互いに異なる電圧が印加される電極層とを有している請求項1又は2記載の圧電アクチュエータ。
【請求項4】
前記複数の圧電素子には2つのスルーホールが形成され、前記スルーホールにはそれぞれ接続電極部が設けられており、一方の前記接続電極部には奇数番目の前記電極層が接続され、他方の前記接続電極部には偶数番目の前記電極層が接続されている請求項3記載の圧電アクチュエータ。
【請求項5】
前記一方の接続電極部と前記偶数番目の前記電極層は互いに離隔するように形成され、前記他方の接続電極部と前記奇数番目の前記電極層は互いに離隔するように形成されている請求項4記載の圧電アクチュエータ。
【請求項6】
奇数の前記圧電素子が積層されている請求項1又は2記載の圧電アクチュエータ。
【請求項7】
請求項1から6いずれか記載の圧電アクチュエータを備えたリニア駆動装置。
【請求項8】
請求項7に記載のリニア駆動装置を備えた電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電アクチュエータ、リニア駆動装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の圧電アクチュエータとして、弾性板上に形成された平板状の圧電素子に駆動軸を固定し、圧電素子を弾性板とともにおわん型に変形させて駆動軸を軸方向に往復動させるようにしたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の圧電アクチュエータは、駆動軸の変位量を大きくしようとすると、高い電圧を印加しなければならないという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記従来の問題点を解消し、低い電圧の印加でも所定の大きさの駆動軸の変位量を得ることができる圧電アクチュエータ、リニア駆動装置及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様は、圧電アクチュエータであり、
平板状の圧電素子が複数積層され、板面方向に伸縮する圧電体と、前記圧電体がその板面上に形成される弾性板と、前記圧電体又は前記弾性板の一方に前記圧電体の板面方向と直交する方向に一端が固定された駆動軸と、を有する。
【0007】
好適には、前記弾性板の両側の板面上のそれぞれに前記圧電体が形成されている。
【0008】
また、好適には、前記圧電素子は、圧電素子本体と、この圧電素子本体を挟んで設けられ、互いに異なる電圧が印加される電極接続層とを有する。また。前記複数の圧電素子には2つのスルーホールが形成され、前記スルーホールにはそれぞれ接続電極部が設けられており、一方の前記接続電極部には奇数番目の前記電極層が接続され、他方の前記接続電極部には偶数番目の前記電極層が接続されている。
【0009】
また、好適には、前記一方の接続電極部と前記偶数番目の前記電極層は互いに離隔するように形成され、前記他方の接続電極部と前記奇数番目の前記電極層は互いに離隔するように形成されている。
【0010】
また、好適には、圧電素子の積層数は、奇数である。
【0011】
本発明の他の態様は、上記圧電アクチュエータを備えたリニア駆動装置である。
【0012】
また、本発明の他の態様は、上記リニア駆動装置を備えた電子機器である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、積層することによって各圧電素子の厚さが薄くなり、そのため低い電圧でも従来と同等の伸縮量が得られる。そのため、低い電圧の印加でも所定の大きさの駆動軸の変位量を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る圧電アクチュエータを示す斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に用いた圧電体の平面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に用いた圧電体の底面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に用いた圧電体の断面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る圧電アクチュエータの特性を比較例と比較して示す特性線図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る圧電アクチュエータを示す側面図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る圧電アクチュエータを用いた駆動装置を示す側面図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る圧電アクチュエータを用いた駆動装置に印加する入力電圧を示すタイミングチャートである。
【
図9】本発明の第2実施形態に係るアクチュエータの配線構造を示し、フレキシブル配線基板を透明にして斜め上から見た斜視図である。
【
図10】本発明の第2実施形態に係るアクチュエータの配線構造を示し、フレキシブル配線基板を透明にして斜め下から見た斜視図である。
【
図11】本発明の第2実施形態に係るアクチュエータの配線構造を示し、フレキシブル配線基板を透明にして斜め横から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1には、本発明の第1実施形態に係る圧電アクチュエータ10が示されている。この第1実施形態に係る圧電アクチュエータ10は、ユニモルフ型である。
【0017】
圧電アクチュエータ10は、圧電体12と、弾性板34と、駆動軸14とを有する。圧電体12及び弾性板34は、例えば円板状に形成されていて、圧電体12は弾性板34の板面上に形成されている。駆動軸14は、該駆動軸14の一端が圧電体12の中心に接着剤16を介して接続されている。圧電体12は、平板状の圧電素子18が複数積層されて構成された圧電素子本体20を有する。圧電素子18は、直径が数mmから1cm程度であり、厚さが例えば0.005mmから0.05mmであり、圧電体12としては、0.05mmから0.5mmである。また、弾性板34は、直径が数mmから1cm程度であり、厚さが例えば0.05mmから0.2mmである。また、駆動軸14の直径は1mm前後である。また、圧電体12の表裏両側には、外部電極層22a,22b(
図2から
図4に示す)が接続されている。さらに、この外部電極層22a,22bには、フレキシブル配線基板24が接続されている。弾性板34は、圧電体12,12が板面内方向で伸縮するのに伴いおわん型に変形可能である。この弾性板34は、例えばリン青銅から構成されている
【0018】
図2及び
図3に示すように、上部及び下部に配置された外部電極層22a,22bのそれぞれは、圧電素子18よりもやや外形が小さい円板状に形成されているが、下部に配置された外部電極層22bに限って、該外部電極層22bの周囲には切欠き部26が形成されている。この切欠き部26は、外部電極層22a,22bの上下を区別するために設けられている。
【0019】
圧電素子本体20は、
図4に示すように、奇数枚の圧電素子18が積層されて構成されている。この第1実施形態においては7枚の圧電素子18から構成されている。各圧電素子18の間には内部電極層28aと内部電極層28bが交互に設けられている。外部電極層22aを含めて奇数番目の電極層には符号“a”を付し、外部電極層22a、内部電極層28aとした。偶数番目の電極層には符号“b”を付して、外部電極層22b、内部電極層28bとした。最も上部に配置された圧電素子18は、外部電極層22aと内部電極層28bに挟まれ、上部から2番目の圧電素子はこの内部電極層28bと内部電極層28aに挟まれている。以下、上部から6番目までの圧電素子18は、上下を内部電極層28a,28bに挟まれ、最も下部に配置された圧電素子18は、内部電極層28aと外部電極層22bとに挟まれている。1つの圧電素子18の厚さ方向に、電圧が印加される必要があり、そのために、外部電極層22aと内部電極層28aが同電位、外部電極層22bと内部電極層28bが同電位となるように接続する。そして、2つの外部電極層28a、28bに電圧を印加することが必要であることから、電極層の数は全部で偶数であり、圧電素子18の数は奇数となる。
【0020】
最上部及び最下部の圧電素子18を除いた圧電素子18には、2つのスルーホール30a,30bが形成されている。最上部の圧電素子18には、1つのスルーホール30aが形成され、最下部の圧電素子18には、他の1つのスルーホール30bが形成されている。各圧電素子18のスルーホール30aには、例えばプラス用の接続用電極32aが埋設され、また、スルーホール30bにはマイナス用の接続用電極32bが埋設されている。そして、上部の外部電極層22aは、接続用電極32aを介して3つの内部電極層28aに接続され、下部の外部電極層22bは、接続用電極32bを介して3つの内部電極層28bに接続されている。
【0021】
スルーホール30a,30bは、圧電体12の中心と周縁とのほぼ中央に位置している。この部分の振動は、圧電体12の中心よりも小さいので、中心にスルーホールを設ける場合と比較して振動によるダメージを受けにくい。また、各内部電極層28aと接続用電極32bは互いに離隔するように形成され、各内部電極層28bと接続用電極32aは互いに離隔するように形成されている。
【0022】
上記構成において、例えば外部電極層22aと外部電極層22bとの間にパルス電圧を繰り返し印加すると、接続用電極32a,32bを介して全ての圧電素子18が同時に圧電素子18の径方向の同じ向きに伸び縮みし、弾性板34は伸び縮みしないために、圧電素子18は弾性板34とともにおわん型に変形し、弾性板34の弾性で急速に元の平板状に戻ろうとするのを繰り返す。それに伴い駆動軸14も軸方向に微小な往復移動を繰り返す。このとき、例えば周波数一定で、パルス幅を変えると、この往復移動において往路と復路で移動速度を変えることができる。駆動軸14には、図示しない移動体が摩擦接続され、駆動軸14のこの往復動の速度の違いから移動体が駆動軸14に対して一方向に向けて移動する。
【0023】
上記第1実施形態においては、圧電体12は、圧電素子18を積層して形成され、積層された圧電素子18のそれぞれにパルス電圧を印加するので、圧電素子18が単層で形成された同じ厚さの圧電体12の場合と比較して、低い電圧で同様の伸び縮みをする。即ち、積層することによって各圧電素子18の厚さが薄くなり、そのため低い電圧でも従来と同等の伸縮量が得られる。そのため、従来よりも低い電圧で従来と同等の駆動軸14の軸方向に微小な往復移動の変位量を得ることができる。
【0024】
図5には、第1実施形態に係る圧電アクチュエータ10の特性を比較例と比較して示されている。比較例は、圧電素子18が単層ではあるが、圧電体12の厚さ及び外形が第1実施形態に係る圧電アクチュエータ10と同じである。
単層の比較例においては、求められる駆動軸端の最大変位量が7μmとすると、15Vを印加する必要があったが、第1実施形態に係る圧電アクチュエータ10によれば、6.5Vで同じ最大変位量7μmを得ることができる。
【0025】
図6には、本発明の第2実施形態に係る圧電アクチュエータ10が示されている。この第2実施形態の圧電アクチュエータ10は、2つの圧電体12,12の間に弾性板34が挟まれており、バイモルフ型である。即ち、弾性板34の両側の板面上にそれぞれ圧電体12が形成されている。弾性板34は、圧電体12,12の伸び縮みにより圧電体12,12とともにおわん型に変形可能である。この弾性板34は、例えばリン青銅から構成され、外部電極を兼ねている。
【0026】
図7には、圧電アクチュエータ10を用いた駆動装置36が示されている。この駆動装置36は、2つの支持部材38,38を有し、この支持部材38,38には駆動軸14が挿通され、この支持部材38,38により駆動軸14が軸方向に移動自在に支持されている。支持部材38,38は、例えばゴム部材から構成されている。また、支持部材38,38は、固定部材40により固定されている。そして、支持部材38,38の間で駆動軸14には移動体42が挿通されている。
【0027】
弾性板34には入力電圧Aが印加され、外部電極層(
図7には図示せず)には入力電圧Bが印加される。入力電圧Aと入力電圧Bとは、
図8に示すように、予め定められたデューティ比を持つ逆極性のパルス電圧であり、この入力電圧A,Bにより圧電体12及び弾性板34がおわん型に変形し、移動体42を駆動軸14の軸方向に移動させる。
【0028】
図9から
図11には、第2実施形態における圧電アクチュエータ10の配線構造が示されている。
【0029】
圧電アクチュエータ10には、フレキシブル配線基板24を介して外部と配線されている。フレキシブル配線基板24は、入力電圧Aを印加するための第1配線44と、入力電圧Bを印加するための第2配線46とが設けられている。第1配線44は、
図11に示すように、一端から圧電体12側へ延び、はんだ部48に接続されている。この第1配線44は、はんだ部48へ至る途中で第1高さ変更部50により高くなり、第2配線46と高さが異なるように交差している。また、弾性板34の周辺から突出し、上方へ曲げられた突出部52が設けられている。この突出部52は、フレキシブル配線基板24に形成されたスルーホール内を通して、はんだ部48に接続されている。
【0030】
第2配線46は、第1配線44と同様に一端から圧電体12側に延びている。この第2配線44は、途中で2つに分かれ、分かれた一方が上方の圧電体12に上方から接続されている。分かれた他方には第2高さ変更部54が設けられ、この第2高さ変更部54により高くなり、下方の圧電体12に下方から接続されている。
【0031】
なお、上記実施形態においては、圧電素子を円板状としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば四角板状等、平板状の圧電素子を積層するようなものであれば、形状を問わない。ただし、なるべく対称性が高い形状が好ましい。また、駆動軸14は、圧電体12ではなく、弾性板34に接着してもよい。また、各圧電素子18の厚さは同じである必要は無く、層ごとで厚さを変えてもよい。また、上側の圧電体12と下側の圧電体12の層数も同じである必要は無く、極論すれば、一方を単層の圧電体としてもよい。
【符号の説明】
【0032】
10 圧電アクチュエータ
12 圧電体
14 駆動軸
16 接着剤
18 圧電素子
20 圧電素子本体
22a,22b 外部電極層
24 フレキシブル配線基板
26 切欠き部
28 内部電極層
30a,30b スルーホール
32a,32b 接続用電極
34 弾性板
36 駆動装置
38,38 支持部材
40 固定部材
42 移動体
44 第1配線
46 第2配線
48 はんだ部
50 第1高さ変更部
52 突出部
54 第2高さ変更部