(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101892
(43)【公開日】2023-07-24
(54)【発明の名称】溶融塩ポンプの液面検出装置
(51)【国際特許分類】
F04D 13/08 20060101AFI20230714BHJP
【FI】
F04D13/08 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002104
(22)【出願日】2022-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】500561931
【氏名又は名称】JFEプロジェクトワン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】小山 斎
(72)【発明者】
【氏名】本間 陽子
(72)【発明者】
【氏名】牧坂 光浩
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA02
3H130AB23
3H130AB46
3H130AC01
3H130AC11
3H130BA36F
3H130BA87F
3H130BA87H
3H130DA02Z
3H130DC02Z
3H130DF03X
3H130EA07A
3H130EA07F
3H130EA07H
(57)【要約】
【課題】水希釈溶融塩に含まれる水分がポンプ内で蒸発して凝縮した場合でも、溶融塩の液面を導通式で正確に検出できる、溶融塩ポンプの液面検出装置の提供。
【解決手段】溶融塩を吸入/吐出するポンプ室3と、ポンプ室3を貫通する回転軸23を中心に回転する羽根車9と、回転軸23の貫通部の外周回りに設けられたポンプ室メカニカルシール11と、ポンプ室3内にガスを充填して溶融塩の液面高さをポンプ室メカニカルシールより下方に維持するガス導入口13を備える溶融塩ポンプ104のポンプ室3内の溶融塩の液面高さを検出する、液面検出装置1であって、電気的に接地されたコモン電極17と、ポンプ室3内に露出した表面の少なくとも一部が絶縁層46で覆われる検出電極19と、コモン電極17と検出電極19が溶融塩を介して導通した場合に、検出電極19の下端55の高さを溶融塩の液面高さとして検出する液面計21を備える液面検出装置1。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水で希釈した溶融塩を吸入/吐出するポンプ室と、軸方向が上方を向いて前記ポンプ室を貫通する回転軸を中心に回転することで前記溶融塩を吸入/吐出する、前記ポンプ室内に配置された羽根車と、前記ポンプ室における前記回転軸の貫通部の外周回りに設けられたポンプ室メカニカルシールと、前記ポンプ室内にガスを充填して前記溶融塩を押し下げることで前記ポンプ室内の前記溶融塩の液面高さを前記ポンプ室メカニカルシールより下方に維持する液面調整手段を備える溶融塩ポンプの前記ポンプ室内の前記溶融塩の液面高さを検出する、溶融塩ポンプの液面検出装置であって、
前記ポンプ室の上方から前記ポンプ室の内部に下方に向けて突設され、電気的に接地された棒状のコモン電極と、
前記ポンプ室の上方から前記ポンプ室の内部に下方に向けて突設され、前記ポンプ室と絶縁部材を介して連結されており、前記ポンプ室内に露出した表面のうち、下端を除く表面の少なくとも一部が絶縁層で覆われている棒状の検出電極と、
前記コモン電極及び前記検出電極と電気的に接続され、前記コモン電極と前記検出電極が前記溶融塩を介して導通した場合に、前記ポンプ室内の前記検出電極の下端の高さを前記溶融塩の液面高さとして検出する液面計を備えることを特徴とする溶融塩ポンプの液面検出装置。
【請求項2】
前記絶縁層は、アルミナで構成される、請求項1に記載の溶融塩ポンプの液面検出装置。
【請求項3】
前記絶縁層は、前記検出電極の表面に被覆された絶縁体の溶射膜である、請求項1又は2に記載の溶融塩ポンプの液面検出装置。
【請求項4】
前記絶縁層は、管状の絶縁体である絶縁管であり、前記絶縁管の中空部を前記検出電極が挿通することで、前記検出電極の周囲を前記絶縁層が覆う、請求項1又は2に記載の溶融塩ポンプの液面検出装置。
【請求項5】
前記絶縁管の内径は、前記検出電極の外径よりも大きく、前記絶縁管と前記検出電極の間には径方向に隙間が設けられ、
前記絶縁管の上端と前記検出電極の間の前記隙間に嵌合されることで前記絶縁管を前記検出電極に固定する絶縁体である筒状の上端側キャップと、
前記絶縁管の下端と前記検出電極の間の前記隙間に嵌合されることで前記絶縁管を前記検出電極に固定する筒状の下端側キャップと、
を備える請求項4に記載の溶融塩ポンプの液面検出装置。
【請求項6】
前記検出電極は、
前記ポンプ室に設けられた開口部から上方に突設され前記開口部を介して前記ポンプ室と連通する管状の電極収納管内に絶縁体の管である絶縁スリーブを介して固定され、
前記絶縁層は、
前記検出電極の外周面と、前記開口部の内周及び/又は前記電極収納管の内周との最短距離が20mm以下の領域に設けられる、請求項1~5のいずれか一項に記載の溶融塩ポンプの液面検出装置。
【請求項7】
前記絶縁層は、
前記検出電極の外周面と、前記開口部の内周及び/又は前記電極収納管の内周との最短距離が18mm以下の領域に設けられる、請求項6に記載の溶融塩ポンプの液面検出装置。
【請求項8】
前記絶縁層は、
前記検出電極の外周面と、前記開口部の内周及び/又は前記電極収納管の内周との最短距離が8mm以下の領域に設けられる、請求項6に記載の溶融塩ポンプの液面検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融塩ポンプの液面検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融塩は陽イオンと陰イオンからなる塩で常温では凝固しているが、一定以上の温度になると融解し溶融状態になる物質である。溶融塩の中には相変化を伴わずに蓄熱/放熱を行う顕熱型の熱媒体として、熱交換器や反応器等を加温するために用いられるHTS(Heat Transfer Salt)と呼ばれる物質がある。HTSとしては、亜硝酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウムの混合物を例示できる。この混合物は硝酸カリウムの結晶の英語名に由来してナイター(Niter)とも呼ばれる。
【0003】
HTSのような溶融塩を熱媒体として用いる場合は、HTSを加熱する加熱装置から加熱対象又は保温対象にHTSを送出する溶融塩ポンプが必要になる。溶融塩ポンプの構造は渦巻ポンプを例示できる。一方でHTSは一定温度以下になると凝固する材料なので、HTSを送出する溶融塩ポンプが吸入/吐出する溶融塩が、メカニカルシール等のポンプを構成する部品に接触して一定温度以下になると凝固する。この状態では凝固した溶融塩がメカニカルシールに固着して、メカニカルシールに軸支された駆動軸が動かなくなったり、固着した溶融塩がメカニカルシールを損傷させることで潤滑油が損傷部から漏れたりする等の不具合を起こす。そのため溶融塩ポンプにはこのような部品とHTSを接触させないようにする構造が必要になる。
例えば特許文献1では溶融塩ポンプ内にガスを充填して溶融塩を下方に加圧して、室内の溶融塩の液面をインペラの回転軸の軸受であるメカニカルシールより下に押し下げることで、溶融塩がメカニカルシールに接触するのを防いでいる。より具体的には、ポンプ内のレベルスイッチで溶融塩の液面を計測して、計測結果に基づきガスの充填量を調整し、ポンプ内圧力をタンク液面からポンプ間の揚程圧力とポンプ循環液圧の中間となる圧力に保つことにより液面高さを調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液面検出装置には接地されたコモン電極と、接地されていない検出電極が溶融塩を介して通電した場合に、検出電極の下端の高さを溶融塩の液面として検出する導通式のものがある。また溶融塩には凝固点を下げるために水で希釈する水希釈溶融塩もある。
しかしながら、水希釈溶融塩を溶融塩ポンプで吸入/吐出しつつ、導通式の液面検出装置で液面を検出しようとすると、溶融塩から蒸発した水蒸気が検出電極と溶融塩ポンプを連結するように凝縮して検出電極と溶融塩ポンプを導通させる場合がある。この場合、実際には溶融塩の液面高さが導通した検出電極の下端未満の高さであるのにも関わらず、導通した検出電極の下端の高さに対応する液面高さであると液面検出装置が誤検出する場合があり、液面高さを正確に検出できない場合があった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、水希釈溶融塩に含まれる水分がポンプ内で蒸発して凝縮した場合でも、溶融塩の液面高さを導通式で正確に検出できる、溶融塩ポンプの液面検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するために、本発明は水で希釈した溶融塩を吸入/吐出するポンプ室と、軸方向が上方を向いて前記ポンプ室を貫通する回転軸を中心に回転することで前記溶融塩を吸入/吐出する、前記ポンプ室内に配置された羽根車と、前記ポンプ室における前記回転軸の貫通部の外周回りに設けられたポンプ室メカニカルシールと、前記ポンプ室内にガスを充填して前記溶融塩を押し下げることで前記ポンプ室内の前記溶融塩の液面高さを前記ポンプ室メカニカルシールより下方に維持する液面調整手段を備える溶融塩ポンプの前記ポンプ室内の前記溶融塩の液面高さを検出する、溶融塩ポンプの液面検出装置であって、前記ポンプ室の上方から前記ポンプ室の内部に下方に向けて突設され、電気的に接地された棒状のコモン電極と、前記ポンプ室の上方から前記ポンプ室の内部に下方に向けて突設され、前記ポンプ室と絶縁部材を介して連結されており、前記ポンプ室内に露出した表面のうち、下端を除く表面の少なくとも一部が絶縁層で覆われている棒状の検出電極と、前記コモン電極及び前記検出電極と電気的に接続され、前記コモン電極と前記検出電極が前記溶融塩を介して導通した場合に、前記ポンプ室内の前記検出電極の下端の高さを前記溶融塩の液面高さとして検出する液面計を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、水希釈溶融塩に含まれる水分が蒸発して検出電極の近傍で凝縮した場合でも、検出電極の表面を覆う絶縁層と、ポンプ室の内壁との間で凝縮するため、凝縮水を介したポンプ室と検出電極の間の通電が絶縁層によって阻止される。
そのため、ポンプ室と検出電極が凝縮水を介して通電することで生じる、液面計による液面高さの誤検出が防止され、溶融塩の液面高さを導通式で正確に検出できる。
よって本発明によれば、水希釈溶融塩に含まれる水分がポンプ内で蒸発して凝縮した場合でも、溶融塩の液面高さを導通式で正確に検出できる、溶融塩ポンプの液面検出装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る液面検出装置を備えた溶融塩ポンプを用いた溶融塩の循環システムの概略図である。
【
図2】
図1の溶融塩ポンプを示す縦断面図であり、モータと回転軸は正面図で示す。
【
図3】
図1の検出電極近傍の拡大図であって、検出電極と端子は側面図で示す。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係る液面検出装置を備えた溶融塩ポンプを示す図であって、第1の実施形態における
図3に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づき本発明に好適な実施形態を詳細に説明する。
まず
図1及び
図2を参照して本発明の第1の実施形態に係る液面検出装置1を備えた溶融塩ポンプ104を用いた溶融塩の循環システム100の概略構成を説明する。
【0011】
ここでは循環システム100として、溶融塩の一種であるHTSを水で希釈した水希釈溶融塩としての水希釈HTSを循環させ、水希釈HTSでHTS使用設備103を加熱・保温するシステムを例示している。
【0012】
図1に示すように循環システム100はHTSタンク101、溶融塩ポンプ104、HTS使用設備103、及び膨張タンク105を備える。
HTSタンク101は水希釈HTSを貯留するとともに、水希釈HTSを加熱したり、水を加えて希釈したりして水希釈HTSの温度と濃度を調整する装置である。
【0013】
図1に示すHTSタンク101は、貯留槽102、ヒータ115、電源117、注水管119、及びベント管121を備える。
貯留槽102は水希釈HTSを貯蔵する容器であり、
図1では両端が半球状の円筒形の容器を横置きしたものを例示している。ヒータ115は水希釈HTSを加熱する装置であり貯留槽102内に配置される。ヒータ115は水希釈HTSを所望の温度まで昇温できるのであれば公知の加熱方式を用いることができる。
図1ではヒータ115として抵抗加熱式を例示している。電源117はヒータ115を駆動する電源であり、ヒータ115が抵抗加熱式の場合はヒータ115に通電して加熱させる電源となる。注水管119は、水希釈HTSを希釈する希釈水を貯留槽102内に注水する管であり、
図1では貯留槽102の上端に接続される。ベント管121は貯留槽102内の水蒸気等の気体を大気放出する管であり、図示しないサイクロン等の集塵機を介して貯留槽102に接続される。
【0014】
溶融塩ポンプ104は循環システム100内で加熱された水希釈HTSを循環させるためのポンプであり、加熱された水希釈HTSが流れる配管107を介して
図2に示す吸入口5が貯留槽102に接続され、加熱された水希釈HTSを吸入して所望の流量で吐出口7から吐出する。
【0015】
図1に示すHTS使用設備103は、HTSタンク101のヒータ115で加熱された水希釈HTSの熱を利用する設備である。より具体的なHTS使用設備103としては、熱交換器や反応器等のように、設備が使用する流体等を加温するための熱媒体として水希釈HTSを使用する設備である。
【0016】
HTS使用設備103は配管108を介して溶融塩ポンプ104の
図2に示す吐出口7に接続され、溶融塩ポンプ104が吐出した、加熱された水希釈HTSが配管108を介して流入する。なお、
図1では配管108に中途でバイパス配管109が分岐している。バイパス配管109は溶融塩ポンプ104が吐出した、加熱された水希釈HTSをHTS使用設備103に送出せずにHTSタンク101に戻す配管であり、下流側の端部がHTSタンク101の貯留槽102に接続される。配管108のバイパス配管109との接続部よりもHTS使用設備103寄りの部分、及びバイパス配管109には図示しないバルブが設けられている。循環システム100の稼働を停止する場合、配管108のバルブを閉鎖して、バイパス配管109のバルブを開放することで、溶融塩ポンプ104が吐出した水希釈HTSをHTS使用設備103に送出せずにHTSタンク101に戻す。
【0017】
また、循環システム100の稼働中にHTS使用設備103が必要とする、加熱された水希釈HTSの流量に対して溶融塩ポンプ104が吐出した、加熱された水希釈HTSの流量が多すぎる場合、配管108のバルブ及び、バイパス配管109のバルブの両方を開放する。これにより、溶融塩ポンプ104が吐出した、加熱された水希釈HTSの一部をHTSタンク101に戻すことで、配管108からHTS使用設備103に流入する、加熱された水希釈HTSの流量を減らす。
【0018】
膨張タンク105は循環システム100の稼働を停止する際に、HTS使用設備103内に残留する、加熱された水希釈HTSを吸入してHTSタンク101に戻すサイフォンブレーカ―である。具体的には膨張タンク105は循環システム100の稼働時に加熱された水希釈HTSが流れる配管111を介してHTS使用設備103と連結されている。膨張タンク105は加熱された水希釈HTSが流れる配管113を介してHTSタンク101の貯留槽102と接続されている。膨張タンク105はさらに均圧管123を介して貯留槽102と接続されている。均圧管123はHTSタンク101と膨張タンク105内の気体の圧力を等しくするために気体が流れる配管である。このように膨張タンク105は、均圧管123でHTSタンク101と膨張タンク105内の気体の圧力を等しくすることで、加熱された水希釈HTSの流路がサイフォンとして働かないようにサイフォンブレーカ―として常に機能している。
【0019】
この構成で循環システム100を稼働させると、ヒータ115で所望の温度に加熱された水希釈HTSが溶融塩ポンプ104で、HTSタンク101→溶融塩ポンプ104→HTS使用設備103→膨張タンク105→HTSタンク101と循環する。
図1では矢印A1→A2→A3→A5→A6の順に循環する。この際、加熱された水希釈HTSがHTS使用設備103内の流体を加温する。また必要に応じて溶融塩ポンプ104が吐出した、加熱された水希釈HTSの一部をバイパス配管109から
図1のA4の向きに流してHTSタンク101に戻す。なお、この構成では、HTSの凝固点を扱いやすい温度まで下げるために、HTSの媒体としての性能を損なわない程度の量の希釈水を注水管119からHTSタンク内に注水してHTSを希釈する必要がある。
【0020】
以上が第1の実施形態に係る液面検出装置1を備えた溶融塩ポンプ104を用いた溶融塩の循環システム100の概略構成の説明である。
次に、
図2及び
図3を参照して、溶融塩ポンプ104及び液面検出装置1の構造の詳細を説明する。
【0021】
図2に示す溶融塩ポンプ104は遠心ポンプであり、ポンプ室3、羽根車9、回転軸23、モータ27、ポンプ室メカニカルシール11、軸室25、モータ室29、ガス導入口13、ガス排出口15、及び液面検出装置1を備える。
【0022】
ポンプ室3は水希釈HTSを吸入/吐出する容器であり、
図2では縦断面が楕円形になっている。ポンプ室3は下面に水希釈HTSを吸入する開口である吸入口5が設けられ、側面には水希釈HTSを吐出する開口である吐出口7が設けられる。なお、ポンプ室3には吸入する水希釈HTSの量が急増した場合にポンプ室3内の水希釈HTSの液面が急上昇するのを緩和する仕切板31が設けられる場合がある。ただし仕切板31は開口が設けられているため、仕切板31はポンプ室3内に水密区画を構成することはなく、ポンプ室3内の水希釈HTSの液面高さが場所によって異なることはない。ポンプ室3には、溶融塩ポンプ104を停止して循環システム100を停止する際にポンプ室3内に水希釈HTSが残留して凝固しないように、溶融塩ポンプ104の停止時にポンプ室3内の水希釈HTSを排出する図示しないドレン管も設けられている。
【0023】
羽根車9はインペラとも呼ばれ、ポンプ室3内で回転することで水希釈HTSに生じる遠心力で水希釈HTSを吸入口5からポンプ室3内に吸入し、さらに吐出口7から吐出する。羽根車9は平面視で円形であり、表面に羽根が配置される。
図2に示す羽根車9はポンプ室3の下面において、吸入口5の真上に設けられ、下面が吸入口5と対向する。また、
図1に示す羽根車9は上方、ここでは鉛直方向を中心軸として回転する。なお、このように羽根車9が回転する軸が鉛直方向を向いている遠心ポンプを縦型ポンプとも呼ぶ。
【0024】
回転軸23は羽根車9を回転させる軸であり、羽根車9は回転軸23を中心に回転する。回転軸23は軸方向が上方、ここでは鉛直方向を向いてポンプ室3の上端を貫通している。また回転軸23の下端は羽根車9の回転中心にボルト等で締結される。
【0025】
モータ27は羽根車9を回転する動力を生成する電動機であり、ポンプ室3の上方に配置される。モータ27の出力軸は回転軸23の上端に連結され、モータ27が生成した動力は回転軸23を介して羽根車9に伝達される。
【0026】
ポンプ室メカニカルシール11は回転軸23がポンプ室3を貫通した部分から回転軸23の潤滑用のオイル等がポンプ室3に漏洩するのを防止する機械式の軸封装置であり、ポンプ室3における回転軸23の貫通部の外周回りに設けられる。
【0027】
軸室25はポンプ室3を貫通して上方に延在する回転軸23を囲む、上下端が閉じた筒状の容器である。軸室25は、上端と下端を回転軸23が貫通しており、下端の貫通部の外周回りにはポンプ室メカニカルシール11が設けられ、上端の貫通部の外周回りには軸室メカニカルシール12が設けられる。軸室メカニカルシール12はポンプ室メカニカルシール11と同様に、回転軸23が軸室25を貫通した部分から回転軸23の潤滑用のオイル等が軸室25の外部に漏洩するのを防止する機械式の軸封装置である。
軸室25の下端はポンプ室3の上端と図示しないボルト等で締結される。軸室25の内部にはポンプ室メカニカルシール11及び軸室メカニカルシール12への潤滑性及び冷却性能を保つため、冷却された潤滑油が溶融塩ポンプ104の稼働中は常時循環している。
モータ室29はモータ27を収容する容器であり、ポンプ室3及び軸室25の上方に設けられ、下端が軸室25の上端と図示しないボルト等で締結される。
【0028】
ガス導入口13はポンプ室3内にガスを充填して水希釈HTSをガス圧で加圧して
図2の白矢印Z1に示すように押し下げることで、ポンプ室3内の水希釈HTSの液面高さをポンプ室メカニカルシール11より下方にするガス管である。ガス導入口13はポンプ室3の外壁を貫通してポンプ室3の内外を連通する。ガス導入口13の上流側、つまりガス導入口13のポンプ室3の外側の端部は図示しない電磁弁を介してコンプレッサ等のガス供給源に接続される。この構成では、水希釈HTSの液面高さがポンプ室メカニカルシール11の設けられた高さを超えそうになると、電磁弁を開いてポンプ室3内にガスを充填させ、水希釈HTSの液面を下げる。
なお、充填するガスはHTSやポンプ室3を構成する材料と反応しないガスであればよく、例えば窒素ガス等のイナートガスが用いられる。
【0029】
ガス排出口15は、ポンプ室3内のガスをポンプ室3外に排気する管であり、ポンプ室3の外壁を貫通してポンプ室3の内外を連通する。ガス排出口15には図示しない電磁弁が設けられており、水希釈HTSの液面高さが予め定められた所定の高さ以下になると、電磁弁を開いてポンプ室内のガスを排気する。
【0030】
このように、ガス導入口13からガスを導入して水希釈HTSを押し下げることで、水希釈HTSを吸入/吐出しつつ、ポンプ室3内の水希釈HTSの液面高さをポンプ室メカニカルシール11より下方に維持できる。よってガス導入口13はポンプ室3内の水希釈HTSの液面高さをポンプ室メカニカルシール11より下方に維持する液面調整手段として機能する。また、ポンプ室3内の水希釈HTSの液面を押し下げ過ぎた場合にガス排出口15からガスを排気することで、水希釈HTSの液面が下がり過ぎて吐出できなくなるのを防止する。なお、ガス導入口13及びガス排出口15に水希釈HTSが流れ込まないようにするため、ガス導入口13及びガス排出口15の設置高さは、溶融塩ポンプ104の駆動時に許容されるポンプ室3内の水希釈HTSの最高液面高さより高い。また、ガス導入口13から導入するガスの圧力はポンプ室3内のガスの圧力より高くなるように調節される。
【0031】
液面検出装置1はポンプ室3内の水希釈HTSの液面高さを検出する装置である。ガス導入口13がポンプ室3に充填するガスの圧力はポンプ室3内のガスの圧力より高い必要があり、かつ水希釈HTSの液面高さで決まる。そのため、液面検出装置1はガス導入口13やガス排出口15に接続された図示しない電磁弁又は電磁弁を操作する制御部と電気的に接続され、検出した液面高さをこれらに送信する。また、溶融塩ポンプ104はポンプ室3内の水希釈HTSの液面高さがポンプ室メカニカルシール11の高さを超えそうな場合や、あるいは水希釈HTSの吐出が困難なほど低い場合は運転を停止する。そのため、液面検出装置1は溶融塩ポンプ104のモータ27の駆動を制御する図示しない制御部とも電気的に接続され、検出した液面高さを送信する。ただし、溶融塩ポンプ104が吸入/吐出する水希釈HTSのモータ27による流量制御と、ガス導入口13による水希釈HTSの液面高さの制御は独立した制御でよい。
【0032】
図2及び
図3に示す液面検出装置1は、接地されたコモン電極17と、接地されていない検出電極19が水希釈HTSを介して通電した場合に、検出電極19の下端55の高さを水希釈HTSの液面高さとして検出する導通式である。そのため、液面検出装置1はコモン電極17、検出電極19、及び液面計21を備える。
【0033】
コモン電極17はポンプ室3の上方からポンプ室3の内部に下方に向けて突設され、電気的に接地された棒状の導電性の電極である。具体的にはコモン電極17はポンプ室3と電気的に接続されることで接地される。コモン電極17は液面検出装置1が水希釈HTSの液面高さを検出する際の基準電位、ここでは0Vを示す電極であるため、水希釈HTSの液面高さを検出する際は、常に水希釈HTSと接している必要がある。そのため、コモン電極17の下端の高さは、溶融塩ポンプ104の駆動時に許容されるポンプ室3内の水希釈HTSの液面高さの最低高さL0に対応した高さである。
【0034】
コモン電極17は、導電性を有し、水希釈HTSで変質せず、循環システム100の稼働時のポンプ室3内のガスの温度や雰囲気で変形、変質しない材料であれば、公知の材料を適宜選択できる。例えばSUS304、SUS316等のオーステナイト系ステンレス鋼をコモン電極17の材料として例示できる。
【0035】
検出電極19はポンプ室3の上方からポンプ室3の内部に下方に向けて突設され、ポンプ室3と絶縁部材を介して連結された棒状の導電性の電極であり、一般にはコモン電極17と同じ材料で構成される。
図3に示すように検出電極19の上端には液面計21と接続する際の電線を接続する端子53が設けられる。端子53はコモン電極17の上端にも設けられる。
検出電極19とポンプ室3の連結構造についてより具体的に説明すると、ポンプ室3の上端の側端近傍には
図3に示すように円形の開口部41が設けられている。さらに開口部41から上方に突設され、開口部41を介してポンプ室3と連通する管状の電極収納管51が設けられている。電極収納管51は検出電極19を固定する管であり、下部電極収納管43、上部電極収納管45、締結ボルト47、及び絶縁スリーブ49を備える。
【0036】
下部電極収納管43はポンプ室3に固定された管であり、軸方向の下端が開口部41の内周に嵌合して溶接等で接続される。下部電極収納管43の軸方向の上端43aは内周にネジが切られている。
【0037】
上部電極収納管45は検出電極19を支持する部材である。上部電極収納管45は軸方向の下端45aの外周にネジが切られており、下端45aの外周のネジが、下部電極収納管43の上端43aの内周のネジと螺合することで、下部電極収納管43に固定される。
上部電極収納管45は上端45bの内周にもネジが切られている。
【0038】
締結ボルト47は絶縁スリーブ49及び検出電極19を支持して上部電極収納管45に固定する部材であり、軸方向に形成された貫通孔47aを有するボルトである。締結ボルト47は、ボルトの外周に形成されたネジ47bが上部電極収納管45の上端45bの内周のネジと螺合することで、上部電極収納管45に固定される。
【0039】
絶縁スリーブ49は締結ボルト47と検出電極19の間を絶縁して、かつ連結する絶縁部材としての管である。絶縁スリーブ49の外径は締結ボルト47の貫通孔47aの内径と同程度であり、締結ボルト47の貫通孔47aに嵌合又は螺合されることで固定される。絶縁スリーブ49の内径は検出電極19の外径と同程度であり、検出電極19が絶縁スリーブ49の内周部分に挿入されて嵌合されることで検出電極19が電極収納管51に固定される。
【0040】
絶縁スリーブ49の材料は絶縁性の材料で、検出電極19を保持できる程度の強度を備えればよく、例えばアルミナ(Al2О3)が用いられる。なお、下部電極収納管43、上部電極収納管45、及び締結ボルト47は導電性の材料でよい。
【0041】
なお、コモン電極17も同様に電極収納管51に固定されるが、コモン電極17は接地される電極であり、ポンプ室3と導通させてよいため、絶縁スリーブ49の替わりに導電性のスリーブを設けるか、締結ボルト47に直接固定してもよい。
【0042】
図2に示す液面計21はポンプ室3内の水希釈HTSの液面高さを検出する装置であり、コモン電極17及び検出電極19と電気的に接続される。液面計21はコモン電極17と検出電極19が水希釈HTSを介して導通した場合に、ポンプ室3内の検出電極19の下端55の高さを水希釈HTSの液面高さとして検出する導通式である。
【0043】
例えば、ポンプ室3内の水希釈HTSの液面高さが
図2の液面高さL1の場合、コモン電極17は水希釈HTSと接しているが、検出電極19は水希釈HTSと接していない。そのため、コモン電極17と検出電極19は水希釈HTSを介して導通せず、液面計21は検出電極19の下端55の高さを水希釈HTSの液面高さとして検出しない。
【0044】
一方で、ポンプ室3内の水希釈HTSの液面高さが
図2の検出電極19の下端55の高さと同じ高さである液面高さL2に達した場合、コモン電極17と検出電極19の両方が水希釈HTSと接する。これにより、コモン電極17と検出電極19が水希釈HTSを介して導通する。そのため液面計21は検出電極19の下端55の高さを水希釈HTSの液面高さとして検出する。
【0045】
なお、液面検出装置1は導通式なので、コモン電極17と検出電極19の間で水希釈HTSを介した導通が有るか無いかの2通りの状態しか検出できない。そのため、1本の検出電極19で1通りの液面高さしか検出できない。例えば
図2に示す1本の検出電極19では、液面高さがL2以上であるか、L2未満であるかの検出しかできない。よって、複数の液面高さを検出したい場合は、検出したい液面高さに応じた高さに検出電極19の下端55の高さが位置するように、複数の検出電極19をポンプ室3内に設置してコモン電極17及び液面計21と電線等で電気的に接続する必要がある。
【0046】
ここで、
図3に示すように、検出電極19は、ポンプ室3内に露出した表面のうち、下端55を除く表面の少なくとも一部が絶縁層46で覆われている。
このように検出電極19を絶縁層46で覆う理由について説明する。
水希釈HTSを循環システム100内で循環させる場合、循環システム100内で水希釈HTSから水が蒸発する場合がある。蒸発した場所がポンプ室3内の場合、蒸発した水は水蒸気としてポンプ室3内に滞留するが、
図2に示すようにポンプ室3内の水希釈HTSの高さはガスを充填することでポンプ室メカニカルシール11より下方に維持されている。よって、ポンプ室メカニカルシール11付近にあるポンプ室3の壁部や電極収納管51のように、検出電極19の上端近傍の壁部は水希釈HTSに接しておらず、水希釈HTSに接している壁部よりも温度が低い。
【0047】
そのため、
図3の破線で示すように、検出電極19の近傍で水蒸気が壁部を介した大気との熱交換で凝縮して液体の凝縮水81となった場合、凝縮水81が検出電極19とポンプ室3の内壁を連結するように凝縮する可能性がある。この場合、検出電極19とポンプ室3が導通するため、検出電極19とコモン電極17もポンプ室3を介して導通する。そのため、凝縮水81が生成された時点で検出電極19の下端55が水希釈HTSに接していない場合であっても水希釈HTSの液面高さを、検出電極19の下端55の液面高さであると液面計21が誤検出する場合がある。特に、
図3に示す検出電極19と電極収納管51の隙間82、83、84のように、電極収納管51の内径が小さくなっている部分と検出電極19の間の径方向の隙間は、隙間寸法も小さく、水平高さもポンプ室3より離れている。そのため、水蒸気が凝縮しやすく、検出電極19とポンプ室3の内壁を連結するように水蒸気が凝縮することで、液面計21による水位の誤検出が生じやすい。
【0048】
例えば溶融塩ポンプ104に許容される最高液面高さを超える高さを検出する検出電極19が凝縮水81を介してポンプ室3と導通したとする。この場合、検出電極19の下端55が水希釈HTSと接触していなくても、液面計21はポンプ室3内の液面高さが最高液面高さを超えたと誤検出する。
また、溶融塩ポンプ104のモータ27の制御装置は、ポンプ室メカニカルシール11等の部品が水希釈HTSと接触するのを防止するため、液面計21の検出する液面高さが許容される最高液面高さを超えると運転を停止する。
そのため、最高液面高さを超える高さを検出する検出電極19が凝縮水81を介してポンプ室3と導通して液面高さが最高液面高さを超えたと誤検出した場合、溶融塩ポンプ104の制御装置は溶融塩ポンプ104の動作を停止してしまう。そのため、凝縮水81が検出電極19とポンプ室3を導通させた場合、循環システム100の稼働が停止する恐れがある。この状態で循環システム100を再起動させるためには、検出電極19とポンプ室3を導通させている凝縮水81が自重で落下する等して自然に除去されるまで待つ必要があり、再起動に非常に時間と工数が必要となる場合がある。また、溶融塩ポンプ104の動作が停止すると配管107、108の内部及び溶融塩ポンプ104の内部に水希釈HTSが滞留する。そのため、再起動のために凝縮水81が自然に除去されるのを待っている間に、滞留した水希釈HTSが凝固点以下になると凝固し、配管107、108の内部及び溶融塩ポンプ104の内部を閉塞する恐れもある。
【0049】
そこで、第1の実施形態では、検出電極19のポンプ室3内に露出した表面のうち、下端55を除く表面の少なくとも一部が絶縁層46で覆われている。ここでいう「露出した表面」とは絶縁スリーブ49で覆われていない表面である。
この構成では、水希釈HTSに含まれる水分が蒸発して検出電極19の近傍で凝縮した場合でも、絶縁層46とポンプ室3の内壁又は電極収納管51の内壁の間で凝縮する。そのため、
図3に示すように、ポンプ室3と検出電極19の間の凝縮水81を介した通電が絶縁層46によって阻止される。
よって、ポンプ室3と検出電極19が凝縮水81で通電することで生じる、液面計21による液面高さの誤検出が防止でき、水希釈HTSの液面高さを導通式で正確に検出できる。
そのため、液面検出装置1は、水希釈溶融塩である水希釈HTSに含まれる水分がポンプ室3内で蒸発して凝縮した場合でも、水希釈HTSの液面高さを導通式で正確に検出できる。
【0050】
なお、電極を用いた液面検出装置には導通式ではなくインピーダンス式もある。インピーダンス式は2つの電極間のインピーダンスから液面高さを検出する装置である。インピーダンス式の場合は、凝縮水81が検出電極19とポンプ室3を導通させたとしても、その際に検出されるインピーダンスが、水希釈HTSを介して導通した場合のインピーダンスと異なるため、凝縮水81による液面高さの誤検出が生じない。そのため、本実施形態のように検出電極19のポンプ室3内に露出した表面のうち、下端55を除く表面の少なくとも一部が絶縁層46で覆われた構成は導通式の液面検出装置1にのみ適用され、インピーダンス式には適用されない。
また、一般的な溶融塩ポンプは液面高さが最大でも300mm程度であるが、この程度の高さのHTSの液面をインピーダンス式で検出する場合、HTSの水希釈の濃度や温度によりインピーダンスが変化し、液面測定時の誤差が大きくなる。そのため、インピーダンス式の液面検出装置は、本実施形態のような溶融塩ポンプの液面検出装置としては、液面の検出精度が導通式の液面検出装置よりも低く、検出精度の面で導通式の液面検出装置と比べて不適格である。また、溶融塩のような比較的高温の液体の液面検出に使用できるインピーダンス式の液面検出装置は導通式の液面検出装置と比べて非常に高価であり、コスト面でも導通式の液面検出装置と比べて不適格である。
【0051】
絶縁層46を構成する材料はポンプ室3と検出電極19の間の凝縮水81を介した通電を阻止できる絶縁性の材料で、かつポンプ室3内の温度や雰囲気で劣化しない材料が好ましい。このような材料としてはアルミナが挙げられるが、アルミナにSiO2等を添加した材料でもよい。
【0052】
また、
図3に示す絶縁層46は絶縁体の溶射膜を例示している。
この構成では、水希釈HTSに含まれる水分が蒸発して検出電極19の近傍で凝縮した場合でも、検出電極19の表面に被覆された溶射膜が絶縁層46として、凝縮水81を介したポンプ室3と検出電極19の間の通電を阻止する。
また、この構成では絶縁層46が溶射膜なので検出電極19の表面と絶縁層46を密着させることができ、絶縁層46と検出電極19の隙間から凝縮水81が侵入して検出電極19とポンプ室3の間で凝縮水81を介した通電の恐れが無い。
【0053】
絶縁層46が溶射膜である場合、絶縁体としてアルミナを溶射した膜を例示できる。また溶射方法としては大気圧プラズマ溶射法(Atmospheric Plasma Spraying, ASP)を例示できる。
絶縁層46は、ポンプ室3内に露出した検出電極19の表面の全てを覆ってしまうと、水希釈HTSが検出電極19と導通しなくなり、液面高さの検出ができない。そのため、ポンプ室3内に露出した表面のうち、検出する液面高さに対応した下端55以外の部分を覆う必要がある。
【0054】
絶縁層46はポンプ室3内に露出した検出電極19の表面のうち、検出する液面高さに対応した下端55以外の全ての部分を覆っても良い。ただし、生成する凝縮水81の大きさには限度がある。そのため、ポンプ室3や電極収納管51の内壁と検出電極19の表面がある程度離れると、仮に凝縮水81が検出電極19に付着しても、ポンプ室3や電極収納管51の内壁との距離が遠すぎて凝縮水81がこれらの内壁と検出電極19を連結できない。
そのため、絶縁層46は、検出電極19の外周面と、開口部41の内周及び/又は電極収納管51の内周との最短距離が予め定められた所定の上限距離以下となる領域に設ければよい。
【0055】
例えば
図2に示す距離D1は検出電極19の外周面と、電極収納管51の内周の最短距離であり、沿面距離ともいう。沿面距離としての予め定められた所定の範囲の上限距離が距離D1の場合、距離D1の位置にある検出電極19の外周面は、絶縁層46を設ける必要がある。また、
図3に示す距離D2の位置にある検出電極19の外周面は、電極収納管51との最短距離が、上限距離である距離D1以下なので、絶縁層46を設ける必要がある。一方で、
図3に示す距離D2の位置よりも下方の検出電極19の外周面は、開口部41の内周及び電極収納管51の内周との最短距離がいずれも上限距離である距離D1よりも長いので、絶縁層46を設ける必要はない。
【0056】
このように、ポンプ室3及び電極収納管51の内壁と、検出電極19間の隙間が狭く、水希釈HTSから蒸発した水蒸気が凝縮した際に、凝縮水81がポンプ室3と検出電極19を導通させる可能性がある部分にのみ絶縁層46を設けてもよい。
この構成では、凝縮水81によるポンプ室3と検出電極19間の導通が生じる可能性が無い部分に絶縁層46を設けないので、下端55以外の露出部分を全て絶縁層46で覆う場合と比べて絶縁層46の量を減らすことができ、コストを低減できる。
【0057】
なお、絶縁層46を設ける上限距離を短くするほど絶縁層46の量を減らすことができ、コストを低減できるが、短くし過ぎると凝縮水81がポンプ室3と検出電極19を導通させて液面高さを誤検出させる可能性がある。そのため上限距離は、コストと、液面高さの誤検出を防止する信頼性との兼ね合いで設定する。
具体的には絶縁層46を設ける範囲は、コストを重視する場合でも少なくとも上限距離が8mm以下の範囲であるのが好ましい。つまり上限を8mmとするのが好ましい。18mm以下であればコストと信頼性を高いレベルで両立できるので、より好ましい。また、液面高さの誤検出を防止する信頼性を重視する場合は20mm以下でもよい。
また、検出電極19が複数ある場合でも、すべての検出電極19を絶縁層46で覆うのが好ましい。検出電極19が複数ある場合、絶縁層46で覆う上限距離はいずれの検出電極19でも同じである。
一方で、コモン電極17は接地された電極であるため、絶縁層46で覆う必要はない。
【0058】
なお、
図3に示すように、絶縁層46の上端は絶縁スリーブ49の下端と接している必要がある。絶縁層46の上端と絶縁スリーブ49の間に凝縮水81が侵入してポンプ室3と検出電極19を導通させるのを防ぐためである。
また、絶縁層46の径方向の被覆厚さは、ポンプ室3と検出電極19を導通させないためには、少なくとも被覆面に検出電極19が露出しない程度の厚さが必要である。ただし、被覆厚さが厚すぎると絶縁層46が電極収納管51に干渉して検出電極19が電極収納管51に収納できなくなったり、絶縁層46が重くなり剥離しやすくなったりする恐れがある。そのため、絶縁層46の被覆厚さはポンプ室3と検出電極19を導通させない範囲で、かつ電極収納管51に検出電極19が収納でき、絶縁層46が剥離しない範囲で適宜選択する。
以上が溶融塩ポンプ104及び液面検出装置1の構造の詳細の説明である。
【0059】
このように第1の実施形態によれば、溶融塩ポンプ104のポンプ室3内の水希釈HTSの液面高さを検出する液面検出装置1の検出電極19が、ポンプ室3内に露出した表面のうち、下端55を除く表面の少なくとも一部が絶縁層46で覆われている。
【0060】
この構成では、水希釈HTSに含まれる水分が蒸発して検出電極19の近傍で凝縮した場合でも絶縁層46とポンプ室3の内壁の間で凝縮するため、凝縮水81を介したポンプ室3と検出電極19の間の通電が絶縁層46によって阻止される。
そのため、ポンプ室3と検出電極19が凝縮水81を介して通電することによる液面検出装置1の液面計21による液面高さの誤検出が防止でき、水希釈HTSの液面高さを導通式で正確に検出できる。
よって、液面検出装置1は、水希釈HTSに含まれる水分がポンプ室3内で蒸発して凝縮した場合でも、水希釈HTSの液面高さを導通式で正確に検出できる。
【0061】
次に、
図4を参照して第2の実施形態に係る液面検出装置1aの構造を説明する。第2の実施形態に係る液面検出装置1aは、第1の実施形態において、絶縁層46として絶縁体の溶射膜ではなく、管状の絶縁体である絶縁管61を用いたものである。
なお、第2の実施形態において第1の実施形態と同様の機能を果たす要素については同一の番号を付し、主に第1の実施形態と異なる部分について説明する。
【0062】
図4に示すように第2の実施形態に係る液面検出装置1aは絶縁管61、上端側キャップ67、及び下端側キャップ65を備える。
絶縁管61は管状の絶縁体である。この構成では、絶縁管61の中空部を検出電極19が挿通することで、検出電極19の周囲を絶縁層46としての絶縁管61が覆う。
【0063】
この構成では、水希釈HTSに含まれる水分が蒸発して検出電極19の近傍で凝縮した場合でも、検出電極19の外周回りに設けられた絶縁管61が絶縁層46として、凝縮水81を介したポンプ室3と検出電極19の間の通電を阻止する。
そのため、ポンプ室3と検出電極19が凝縮水81で通電することによる液面検出装置1aの液面計21による液面高さの誤検出が防止でき、溶融塩の液面高さを導通式で正確に検出できる。
なお、絶縁管61を構成する材料は管としての形状を維持できる強度を持ち、ポンプ室3内の温度や水希釈HTSで変質しない材料であればよい。具体的には第1の実施形態と同様にアルミナを用いればよいが、アルミナにSiO2等を添加した材料でもよい。
【0064】
上端側キャップ67は絶縁管61の内径D3が、検出電極19の外径D4より大きく、絶縁管61と検出電極19の間に、径方向に隙間Gが設けられる場合に隙間Gを埋めることで絶縁管61を検出電極19に固定する部材である。
【0065】
より具体的は、上端側キャップ67は筒状であり、外径が絶縁管61の内径D3以上で、内径が検出電極19の外径D4以下である。また上端側キャップ67は
図4に示すように絶縁管61の上端と検出電極19の間の隙間Gに嵌合されることで、絶縁管61を検出電極19に固定する。
【0066】
なお、例えば
図4に示す距離D1が絶縁層46を被覆する際の予め定められた所定の範囲の上限距離の場合、上端側キャップ67と電極収納管51の内周の最短距離は、通常はD1以下である。そのため、上端側キャップ67はアルミナ等の絶縁体である。また、上端側キャップ67の上端は絶縁スリーブ49の下端と接している必要がある。上端側キャップ67の上端と絶縁スリーブ49の間に凝縮水81が侵入してポンプ室3と検出電極19を導通させるのを防ぐためである。なお、絶縁スリーブ49の外径が絶縁管61の内径D3以上の場合は、絶縁スリーブ49を上端側キャップ67として用い、絶縁管61の上端を絶縁スリーブ49の下端に嵌合してもよい。
【0067】
下端側キャップ65も絶縁管61の内径D3が、検出電極19の外径D4よりも大きく、絶縁管61と検出電極19の間に、径方向に隙間Gが設けられる場合に、隙間Gを埋めることで絶縁管61を検出電極19に固定する部材である。
【0068】
より具体的は、下端側キャップ65も筒状であり、外径が絶縁管61の内径D3以上で、内径が検出電極19の外径D4以下である。また下端側キャップ65は
図4に示すように絶縁管61の下端と検出電極19の間の隙間Gに嵌合されることで、絶縁管61を検出電極19に固定する。
【0069】
下端側キャップ65は設置位置における検出電極19の外周面と、開口部41との最短距離が、上限距離以下の場合はアルミナ等の絶縁体である必要がある。ただし、下端側キャップ65が設けられる位置は検出電極19の下端55の近傍であり、水希釈HTSと接触する部分であるため、通常は、最短距離が上限距離より長い。この場合、下端側キャップ65は導電体でよく、例えば検出電極19と同様にオーステナイト系のステンレス鋼でよい。
【0070】
このように、絶縁管61と検出電極19の間に径方向に隙間Gが設けられる場合でも、上端側キャップ67と下端側キャップ65を設けることで、検出電極19に絶縁管61を固定できる。また上端側キャップ67が絶縁管61と検出電極19の隙間Gを塞ぐことで、凝縮水81が隙間Gに侵入してポンプ室3と導通するのを防ぎつつ、絶縁も担う。さらに、下端側キャップ65が絶縁管61と検出電極19の隙間を塞ぐことで、凝縮水81が隙間Gに侵入してポンプ室3と導通するのを防ぐ。
【0071】
よって、絶縁管61の内径D3が検出電極19の外径D4よりも大きい場合でも、絶縁管61が電極収納管51に収納できる大きさであれば、検出電極19の表面を絶縁管61で被覆できる。
【0072】
なお、絶縁管61の内径D3が検出電極19の外径D4以下の場合は隙間Gが生じないため絶縁管61を検出電極19に嵌合できる。この場合、上端側キャップ67及び下端側キャップ65は不要である。
また、絶縁管61及び上端側キャップ67で検出電極19を覆う範囲は、第1の実施形態と同様であり、検出電極19の外周面と、開口部41の内周又は電極収納管51の内周との最短距離が予め定められた所定の上限距離以下となる領域である。
【0073】
このように第2の実施形態によれば、溶融塩ポンプ104のポンプ室3内の水希釈HTSの液面高さを検出する液面検出装置1aの検出電極19が、ポンプ室3内に露出した表面のうち、下端55を除く表面の少なくとも一部が絶縁管61で覆われている。
そのため、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0074】
なお、第1の実施形態のように絶縁層46を絶縁体の溶射膜とするか、第2の実施形態のように絶縁層46を絶縁管61とするかは、各々の利点を考慮して適宜選択すればよい。
例えば第1の実施形態のように絶縁層46を絶縁体の溶射膜とする場合、絶縁層46を検出電極19の表面と密着させられる。そのため、第2の実施形態と比べて絶縁層46と検出電極19の隙間から凝縮水81が侵入して検出電極19とポンプ室3の間で通電する恐れが無い点で有利である。
【0075】
一方で第2の実施形態のように絶縁層46を絶縁管61とする場合、絶縁管61自体が管としての形状を保持できる。そのため、絶縁層46を溶射膜とする場合と比べて絶縁層46の強度が高く、絶縁層46が崩壊して検出電極19から剥離し難い点で有利である。また、検出電極19の外径によっては、既製品のアルミナチューブ等をそのまま絶縁管61として使用できる。この場合は、検出電極19専用の絶縁管61を製造する必要が無いので、絶縁管61を検出電極19に設ける際のコストや工数の面で有利である。
【実施例0076】
以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
図1に示す循環システム100で
図2に示す溶融塩ポンプ104を用いて水希釈溶融塩を吸入/吐出させ、水希釈溶融塩の液面高さを検出した。具体的な手順は以下の通りである。
【0077】
(比較例)
溶融塩ポンプ104として株式会社帝国電機製作所製の溶融塩用モータポンプを用い、液面検出装置1として導通式の液面検出装置を用意した。検出電極19としてSUS316の直径4mm、長さ230mm、295mm、340mm、390mmの4本の電極を用意した。また、コモン電極17としてSUS316の直径4mm、長さ390mmの電極を用意し、これらの電極を溶融塩用モータポンプに搭載した。
ただし、コモン電極17及び4本の検出電極19には絶縁層46を被覆しなかった。
次に溶融塩として亜硝酸ナトリウム40質量%、硝酸ナトリウム7質量%、硝酸カリウム53質量%の組成で凝固点が150℃のナイターを用意し、水を添加してナイターが85質量%の水希釈溶融塩とした。この水希釈溶融塩の凝固点は70℃程度であった。次に、この水希釈溶融塩を400℃~500℃の範囲に加熱したものを溶融塩用モータポンプで循環システム100内を循環させた。さらにガスとしてイナートガスを溶融塩用モータポンプに充填してポンプ室3内の液面高さをポンプ室メカニカルシール11の下方に維持した状態に保持しようとした。
しかしながら試験開始後に溶融塩用モータポンプ内の溶融塩の液面高さが許容される最高液面高さ未満であるはずの状況で、最高液面高さを超える液面高さを液面計21が検出したため、溶融塩用モータポンプが非常停止してしまった。
非常停止した溶融塩用モータポンプから検出電極19を引き抜いて検出電極19及び溶融塩用モータポンプ内を調べた所、検出電極19、及び溶融塩用モータポンプ内の検出電極19との対向面の両方に水が付着していた。また、溶融塩の液面高さは最高液面高さに達していなかった。そのため、付着していた水が検出電極19と溶融塩用モータポンプを通電させたことで液面計21が液面高さを誤検出したものと考えられた。
このように、検出電極19の表面を絶縁層46で被覆しない場合、水希釈溶融塩の液面高さを導通式の液面検出装置で正確に検出できなかった。
【0078】
(実施例1)
液面検出装置1の検出電極19の外周において、開口部41及び/又は電極収納管51との最短距離が18mm以下の露出面にアルミナを絶縁層46として大気圧プラズマ溶射法にて検出電極19が露出しない厚さまで被覆した。それ以外は比較例と同じ条件で水希釈溶融塩を溶融塩用モータポンプで循環させた。
その結果、試験開始後で溶融塩用モータポンプ内の溶融塩の液面高さが最高液面高さ未満であるはずの状況で、最高液面高さ未満の液面高さを液面計21が検出し、溶融塩用モータポンプが非常停止することもなかった。
よって、検出電極19の表面を溶射層である絶縁層46で覆うことで、水希釈溶融塩の液面高さを導通式の液面検出装置1で正確に検出できた。
【0079】
(実施例2)
液面検出装置1の検出電極19を覆う絶縁管61として株式会社ハギテック製アルミナ保護管(形式2551-2373-03、型番SSA-S 6C、内径9mm、外径13mm)を用意した。また上端側キャップ67として外径9mm、内径4mmのアルミナチューブ、下端側キャップ65として外径9mm、内径4mmのSUS316を用いて絶縁管61を検出電極19の外周回りに固定した。絶縁管61を設ける位置は、検出電極19の外周において、開口部41及び/又は電極収納管51との最短距離が18mm以下となる露出面とした。それ以外は比較例と同じ条件で水希釈溶融塩を溶融塩用モータポンプで循環させた。
その結果、試験開始後で溶融塩用モータポンプ内の溶融塩の液面高さが最高液面高さ未満であるはずの状況で、最高液面高さ未満の液面高さを液面計21が検出し、溶融塩用モータポンプが非常停止することもなかった。
よって、検出電極19の表面を絶縁管61で覆うことで、水希釈溶融塩の液面高さを導通式の液面検出装置1aで正確に検出できた。
【0080】
以上の結果から、水希釈溶融塩を溶融塩用モータポンプで吸入/吐出する際に導通式の液面検出装置でポンプ内の水希釈溶融塩の液面高さを検出する場合、検出電極19の表面を絶縁層46で覆わないと正確な検出ができないことが分かった。