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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101893
(43)【公開日】2023-07-24
(54)【発明の名称】施工支援システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/08 20120101AFI20230714BHJP
【FI】
G06Q50/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002107
(22)【出願日】2022-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】505466295
【氏名又は名称】株式会社イクシス
(71)【出願人】
【識別番号】507366717
【氏名又は名称】JIPテクノサイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】山崎 文敬
(72)【発明者】
【氏名】狩野 高志
(72)【発明者】
【氏名】三橋 徹
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC07
(57)【要約】
【課題】鉄筋コンクリート構造物について配筋検査を高精度に実現することによって、鉄筋コンクリート構造物の施工を支援する施工支援システムを提供する。
【解決手段】コンピュータ装置は、鉄筋コンクリート構造物に係る点群データを解析して、当該点群データを計測した時点において既に形成されているコンクリート部分の上面を特定し(ステップS102)、特定した上面又は上面の近傍に存在する点群を抽出し(ステップS103)、抽出した点群に基づいて、上面から突出している主鉄筋の中心位置を算出し(ステップS105)、算出した主鉄筋の中心位置と、設計データにおける主鉄筋の中心位置と、を照合し(ステップS106)、照合した結果に基づいて記憶装置に記憶されている設計データを更新する(ステップS107)。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート構造物の施工を支援する施工支援システムであって、
前記鉄筋コンクリート構造物に係る鉄筋の配置を三次元に表すBIM(ビルディングインフォメーションモデリング)又はCIM(コンストラクションインフォメーションモデリング)に対応している設計データを記憶している記憶装置と、
施工中の前記鉄筋コンクリート構造物の形状を非接触に計測し、前記鉄筋コンクリート構造物に係る点群データを生成する計測装置と、
前記計測装置によって計測された前記鉄筋コンクリート構造物に係る点群データに基づく解析結果と、前記記憶装置に記憶されている前記設計データと、を照合するコンピュータ装置と、
を備え、
前記コンピュータ装置は、
前記鉄筋コンクリート構造物に係る点群データを解析して、当該点群データを計測した時点において既に形成されているコンクリート部分の上面を特定し、
特定した前記上面又は前記上面の近傍に存在する点群を抽出し、
抽出した点群に基づいて、前記上面から突出している主鉄筋の中心位置を算出し、
算出した主鉄筋の中心位置と、前記設計データにおける主鉄筋の中心位置と、を照合し、
照合した結果に基づいて前記記憶装置に記憶されている前記設計データを更新する、
ことを特徴とする施工支援システム。
【請求項2】
前記コンピュータ装置は、
前記鉄筋コンクリート構造物に係る点群データを解析して、水平方向に延在する平面のうち最大面積を有する平面を、前記上面として特定する、
請求項1に記載の施工支援システム。
【請求項3】
前記コンピュータ装置は、
抽出した点群と、特定した前記上面の縁の位置と、の位置関係に基づいて、主鉄筋を表す点群を特定して主鉄筋の中心位置を算出する、
請求項1又は2に記載の施工支援システム。
【請求項4】
前記コンピュータ装置は、
特定した前記上面を基準として、高さ方向に前記上面より上方側に所定寸法内に収まる点群を抽出し、
抽出した点群の中から水平方向に線状に延在している点群を除いて、残りの点群から主鉄筋を表す点群を特定して主鉄筋の中心位置を算出し、
前記所定寸法は、帯鉄筋の径を超えている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の施工支援システム。
【請求項5】
前記コンピュータ装置は、
算出した主鉄筋の中心位置と、前記設計データにおける主鉄筋の中心位置と、を照合して双方の位置ズレが許容寸法を超えている場合、当該主鉄筋の属性ファイルを編集して、位置ズレが生じている旨の情報を付加する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の施工支援システム。
【請求項6】
前記鉄筋コンクリート構造物は、型枠に複数回コンクリートの打ち込みを繰り返して形成される構造物であり、
前記コンピュータ装置は、
第一段階のコンクリートの打ち込み後に計測された前記鉄筋コンクリート構造物の形状を表す第一の点群データを解析して、前記第一段階において前記上面から突出している主鉄筋の中心位置である第一位置を算出し、
前記第一段階より後に行われる第二段階のコンクリートの打ち込み後に計測された前記鉄筋コンクリート構造物の形状を表す第二の点群データを解析して、前記第二段階において形成されている前記上面から突出している主鉄筋の中心位置である第二位置を算出し、
前記第一位置と前記第二位置とを比較して、双方の位置が水平方向に許容寸法を超えている場合、前記第一位置及び前記第二位置の双方に関連する主鉄筋の属性ファイルを編集して、不具合が生じている旨の情報を付加する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の施工支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート構造物の施工支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート構造物を構成する鉄筋の配置(配筋)は、その耐久性や強度に直接影響するものであるため、鉄筋が設計通りに配置されていることを施工中に検査することは重要である。
鉄筋コンクリート構造物に関する配筋検査について、従来種々の発明が特許出願されている(例えば、特許文献1や特許文献2)。
【0003】
特許文献1には、鉄筋を計測して得られた点群データを水平方向に切断した切断断面に基づいて鉄筋の中心位置候補を抽出し、切断断面毎の中心位置候補を鉛直方向に重ね合わせて作成される三次元画像から鉄筋位置を判定する検査装置が開示されている。
特許文献2には、鉄筋を計測して得られた点群データを学習データとして機械学習することによって、鉄筋の中心位置を推定するモデルと、鉄筋の半径を推定するモデルと、を生成し、これらの推定モデルを用いて配筋検査を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-151577号公報
【特許文献2】特開2021-60199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1と特許文献2に開示されている発明は、鉄筋を計測して得られた点群データに基づいて配筋検査を行う点において共通している。
しかしながら、これらの文献に開示されている態様は一具体例に過ぎず、未開示の態様を提案する余地がある。
【0006】
本発明は、鉄筋コンクリート構造物について配筋検査を高精度に実現することによって、鉄筋コンクリート構造物の施工を支援する施工支援システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、鉄筋コンクリート構造物の施工を支援する施工支援システムであって、前記鉄筋コンクリート構造物に係る鉄筋の配置を三次元に表すBIM(ビルディングインフォメーションモデリング)又はCIM(コンストラクションインフォメーションモデリング)に対応している設計データを記憶している記憶装置と、施工中の前記鉄筋コンクリート構造物の形状を非接触に計測し、前記鉄筋コンクリート構造物に係る点群データを生成する計測装置と、前記計測装置によって計測された前記鉄筋コンクリート構造物に係る点群データに基づく解析結果と、前記記憶装置に記憶されている前記設計データと、を照合するコンピュータ装置と、を備え、前記コンピュータ装置は、前記鉄筋コンクリート構造物に係る点群データを解析して、当該点群データを計測した時点において既に形成されているコンクリート部分の上面を特定し、特定した前記上面又は前記上面の近傍に存在する点群を抽出し、抽出した点群に基づいて、前記上面から突出している主鉄筋の中心位置を算出し、算出した主鉄筋の中心位置と、前記設計データにおける主鉄筋の中心位置と、を照合し、照合した結果に基づいて前記記憶装置に記憶されている前記設計データを更新する、ことを特徴とする施工支援システムが提供される。
【0008】
本発明は、施工中の鉄筋コンクリート構造物の計測結果として得られる点群データを解析することによって、その計測時点において既に形成されているコンクリート部分(コンクリートの打込みが済んでいる部分)の上面を特定する。そして、本発明は、特定した上面に基づいて主鉄筋の中心位置を算出して、設計データにおける主鉄筋の中心位置と照合するので、配筋検査を高精度に実現することができる。
また、本発明は、その配筋検査の結果を、BIM又はCIMに対応している設計データに反映させることによって、設計データ上で鉄筋コンクリート構造物の出来形管理をすることが容易となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、鉄筋コンクリート構造物について配筋検査を高精度に実現することによって、鉄筋コンクリート構造物の施工を支援する施工支援システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態における施工支援システムの構成図である。
図2】コンピュータ装置の処理手順を示すフローチャートである。
図3】鉄筋コンクリート構造物に係る点群データを模式的に示す図である。
図4】鉄筋コンクリート構造物に係る点群データから、解析に必要な点群を抽出する手法を模式的に示す図である。
図5】鉄筋コンクリート構造物に係る点群データから主鉄筋を表す点群を特定する手法を模式的に示す図である。
図6】コンピュータ装置による照合結果を、設計データに反映させる具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
【0012】
<施工支援システム100のシステム構成>
先ず、施工支援システム100のシステム構成について説明する。
図1は、本発明の実施形態における施工支援システム100の構成図である。
施工支援システム100は、鉄筋コンクリート構造物の施工を支援するシステムである。ここで鉄筋コンクリート構造物とは、コンクリートと鉄筋とが一体になった構造物である。
【0013】
施工支援システム100は、記憶装置30と、計測装置20と、コンピュータ装置10と、を備える。
コンピュータ装置10は、計測装置20の計測結果として取得された点群データを受信可能に構成されている。コンピュータ装置10が計測装置20から点群データを受信する通信経路は、特に制限されず、有線通信、無線通信、これらの組合せのいずれであってもよい。
コンピュータ装置10と記憶装置30とは、ネットワークNWを介して相互にデータ通信可能に構成されている。ネットワークNWは、コンピュータネットワークであり、ローカルに形成されるローカルネットワークであってもよく、インターネットに形成されるインターネットワークであってもよい。従って、記憶装置30は、ローカルに設置されるローカルサーバであってもよく、インターネット上に設置されているクラウドサーバであってもよい。コンピュータ装置10が記憶装置30にアクセスすることにより、その解析結果(配筋に関する照合結果)を、記憶装置30に記憶されている設計データに反映させることができる。
【0014】
記憶装置30は、鉄筋コンクリート構造物に係る鉄筋の配置を三次元に表すBIM又はCIMに対応している設計データを記憶している。
ここでBIMとは、ビルディングインフォメーションモデリング(Building Information Modeling)の略称であり、コンピュータ上に作成した建築物の三次元モデルに、種々の属性データを追加したものである。また、CIMとは、コンストラクションインフォメーションモデリング(Construction Information Modeling)の略称であり、BIMの概念を土木分野に応用したものである。
BIM/CIMを計画、調査、設計段階から導入することによって、その後の施工、維持管理の各段階における情報共有を容易にし、一連の作業や業務の効率化、高度化を図ることができる。また、BIM/CIMの導入の副次的な効果として、よりよいインフラの整備・維持管理による国民生活の向上、建設分野や土木分野に従事する従業員のモチベーション向上等も期待される。
【0015】
計測装置20は、施工中の鉄筋コンクリート構造物の形状を非接触に計測し、鉄筋コンクリート構造物に係る点群データを生成する。
本実施形態における計測装置20は、具体的には3Dレーザスキャナであり、計測対象物にレーザを照射することによって、計測対象物の空間位置情報の集合体である点群データを取得することができる。
計測装置20による測定は必ずしも一方向から行われる必要はなく、複数方向から行われた計測装置20の測定によって生成された点群データを組み合わせて、鉄筋コンクリート構造物に係る点群データとしてもよい。
【0016】
なお、本発明の実施において、計測装置20を実現する手段は、必ずしも3Dレーザスキャナである必要はない。例えば、計測装置20は、フォトグラメトリ等の他の技術で実現されてもよいし、当技術術と3Dレーザスキャナと組み合わせによって実現されてもよい。
【0017】
コンピュータ装置10は、計測装置20によって計測された鉄筋コンクリート構造物に係る点群データに基づく解析結果と、記憶装置30に記憶されている設計データと、を照合する。
そして、コンピュータ装置10は、上記のように照合した結果に基づいて、記憶装置30に記憶されている設計データを更新する。ここで、「設計データを更新する」とは、更新後の設計データを参照することによってユーザが照合結果を認識可能となるように設計データを変更すること、と言い換えることができる。
例えば、照合の結果として実測上の主鉄筋の中心位置と、設計上の主鉄筋の中心位置と、がズレている場合において、コンピュータ装置10が以下の処理を行うことは、全て「設計データを更新する」に該当する。
(i)設計データに定められている主鉄筋の中心位置を、実測上の主鉄筋の中心位置に合わせて修正すること。
(ii)実測上の主鉄筋の中心位置、設計上の主鉄筋の中心位置との間の寸法(主鉄筋の位置ズレ寸法)を、当該主鉄筋の属性ファイルを編集して記録すること。
(iii)実測上の主鉄筋の中心位置と設計上の主鉄筋の中心位置とがズレていることを警告するアラート情報を、当該主鉄筋の属性ファイルを編集して付加すること。
【0018】
<コンピュータ装置10の処理手順について>
以下、コンピュータ装置10の処理手順の詳細について、図2図6を用いて説明する。
図2は、コンピュータ装置10の処理手順を示すフローチャートである。
図3は、鉄筋コンクリート構造物RCに係る点群データを模式的に示す図である。
図4は、鉄筋コンクリート構造物RCに係る点群データから、解析に必要な点群を抽出する手法を模式的に示す図である。
図5は、鉄筋コンクリート構造物RCに係る点群データから主鉄筋を表す点群を特定する手法を模式的に示す図である。
図6は、コンピュータ装置10による照合結果を、設計データに反映させる具体例を示す図である。
【0019】
本実施形態における鉄筋コンクリート構造物RCに係る点群データを、図3に模式的に示す。なお、以下の説明において、当該点群データのことを、単に鉄筋コンクリート構造物RCと称する場合がある。
本実施形態における鉄筋コンクリート構造物RCは、図3に図示するとおり柱状の構造物である。なお、本発明が適用される鉄筋コンクリート構造物の形状は、必ずしも柱状である必要はなく、様々な形状の鉄筋コンクリート構造物に適用可能である。
【0020】
鉄筋コンクリート構造物RCは、計測装置20による計測時点において、コンクリートの打込みが既に済んだコンクリートの基礎部分であるコンクリート部分CFを有する。コンクリート部分CFは、図3に図示するとおり、上面から複数の主鉄筋MRが突出している。
主鉄筋MRは、鉛直方向に延在する鉄筋であり、鉄筋コンクリート構造物RCにかかる曲げや引張の力を負担する。鉄筋コンクリート構造物RCの表面から主鉄筋MRの中心位置までの寸法のことを、かぶり量又はかぶり寸法といい、配筋検査における重要な検査項目の一つである。
帯鉄筋LTは、主鉄筋MRに対して垂直に(すなわち水平方向)に一定の間隔で巻かれる鉄筋であり、主鉄筋MRに比べて細い。帯鉄筋LTは、主鉄筋MRの座屈防止、内部のコンクリートの拘束、地震力に対するせん断補強等の役割を担う。
【0021】
先ず、コンピュータ装置10は、計測装置20によって計測された鉄筋コンクリート構造物RCに係る点群データを解析して、当該点群データを計測した時点において既に形成されているコンクリート部分の上面を特定する(ステップS101)。
具体的には、ステップS101におけるコンピュータ装置10は、鉄筋コンクリート構造物RCに係る点群データを解析して、水平方向に延在する平面を特定する。点群データから平面である部分(厳密には、平面と近似しうる部分)を解析する手法は、本発明の目的を達成する範囲において既知の技術をいかように適用してもよく、その手法は特に限定されない。
更に、コンピュータ装置10は、上記のように特定した平面のうち最大面積を有する平面を、コンクリート部分CFの上面として特定する。図4(a)は、ステップS101の処理において、コンピュータ装置10が特定した上面T1を図示した模式図であり、ハッチングした部分が上面T1に該当する。
【0022】
次に、コンピュータ装置10は、ステップS101において特定した上面又は上面の近傍に存在する点群を抽出する(ステップS102)。
本実施形態におけるコンピュータ装置10は、特定した上面T1を基準として、高さ方向に上面T1より上方側に所定寸法内に収まる点群T2を抽出する(図4(b)参照)。
図4(b)に図示したように、或る程度の厚みを有する点群T2を抽出することによって、後述するステップS104の処理において、厚みのない平面(上面T1)を解析する手法に比べて、より高い精度で主鉄筋MRを表す点群を特定することができる。
なお、上記の所定寸法(点群T2の厚み寸法Z)は、帯鉄筋LTの径を超えていることが好ましい。上記のような効果を奏するためには、或る程度の厚み寸法が必要であり、且つ、後述するステップS103の処理によって帯鉄筋LTを表す点群は除かれるので、点群T2に帯鉄筋LTを表す点群が含まれたとしても、解析上の不都合は生じないからである。
また、上記の所定寸法(点群T2の厚み寸法Z)は、帯鉄筋LTの間の寸法より小さいことが好ましい。この寸法が大きすぎると、却って解析精度が落ちる場合があるからである。
【0023】
図5(a)は、ステップS102において抽出した点群T2を、上方向から視た図である。図5(a)は、計測装置20が測定した方向から視た主鉄筋MRに係る点群を実線で示し、その反対方向から視た主鉄筋MRに係る点群を破線で表している。
計測装置20(3Dレーザスキャナ)が鉄筋コンクリート構造物RCに対して一方向からレーザをスキャンした場合、測定した方向から視た点群は密に揃っており、主鉄筋MRのように細い柱状部材であっても、点群を解析して形状を特定することは可能である。一方で、計測した方向の反対方向から視た点群は疎らであり、点群を解析して形状を特定することが困難な場合がある。従って、単純に点群の形状を解析するのみでは、それぞれの主鉄筋MRの中心位置を正確に算出できないことが懸念される。
上記のような事情を鑑みて、コンピュータ装置10は、主鉄筋MRの中心位置を算出する処理(ステップS105の処理)の前に、以下のような事前処理(ステップS103及びステップS104の処理)を行う。
【0024】
図5(a)に図示したように、点群T2には帯鉄筋LTに相当する点群が含まれる。本実施形態において帯鉄筋LTの配置は検査対象になっていないので、当該点群は検査上不要なものである。
そこで、コンピュータ装置10は、ステップS102において抽出した点群T2の中から水平方向に線状に延在している点群を、帯鉄筋LTに相当する点群であるものと見做して、ステップS104の解析に用いる点群から除外する(ステップS103)。この処理により、後述するステップS104とステップS105の精度を高めることができる。
なお、ステップS103の処理で除外されなかった残りの点群を、以下の説明において、点群T3と称する。
【0025】
図5(b)は、ステップS103の処理で除外されなかった残りの点群T3を図示したものである。コンピュータ装置10は、点群T3を解析して、主鉄筋MRを表す点群を特定する。(ステップS104)。ここで、図5(b)においてハッチングした部分が、ステップS104の処理において特定した主鉄筋MRを表す点群に該当する。
より詳細には、コンピュータ装置10は、ステップS103において除外されなかった残りの点群T3と、ステップS101において特定した上面T1の縁の位置と、の位置関係に基づいて、主鉄筋MRを表す点群を特定する。
例えば、コンピュータ装置10は、図5(b)における右下隅部に位置する主鉄筋MRについて、その主鉄筋MRから下方の縁E1までのかぶり寸法Xと、その主鉄筋MRから右方の縁E2までのかぶり寸法Yと、に基づいて、その主鉄筋MRを表す点群を特定する。また、図5(b)に図示する他のMRについても同様に、コンピュータ装置10は、上面T1の縁の位置と、それぞれの縁から対象となる主鉄筋MRまでのかぶり寸法と、に基づいて、主鉄筋MRを表す点群を特定することができる。なお、上記のかぶり寸法は、記憶装置30に記憶されている設計データからコンピュータ装置10が読み込んだものである。
【0026】
次に、コンピュータ装置10は、ステップS104において特定した点群(図5(b)に図示したハッチング部分のそれぞれ)に基づいて、上面から突出している主鉄筋MRの中心位置を算出する(ステップS105)。
例えば、コンピュータ装置10は、一つの主鉄筋MRを表す点群が存在する領域を水平に切断し、その水平断面の中心位置を当該主鉄筋MRの中心位置として算出する。
【0027】
なお、上記に述べたステップS104の処理(主鉄筋MRを表す点群を特定する処理)及びステップS105の処理(主鉄筋MRの中心位置を算出する処理)は本発明の一具体例であり、その手法はここで述べた内容に限られず、本発明の目的を達成する範囲において変更可能である。
【0028】
次に、コンピュータ装置10は、ステップS105において算出した実測上の主鉄筋MRAの中心位置と、記憶装置30に記憶されている設計データにおける主鉄筋MRDの中心位置と、を照合する(ステップS106)。
図6(a)は、実測上の主鉄筋MRAの位置と、設計上の主鉄筋MRDの位置と、を照合した様子を模式的に描いたものである。また、図6(b)は、図6(a)の破線で囲っている領域を拡大したものである。
図6に図示したように、算出した主鉄筋MRAの位置と、設計上の主鉄筋MRDの位置と、は必ずしも一致しない。本実施形態におけるコンピュータ装置10は、算出した主鉄筋の中心位置と、設計データにおける主鉄筋の中心位置と、を照合して双方の位置ズレ(縦方向の位置ズレ寸法d1又は横方向の位置ズレ寸法d2のうち少なくとも一方)が許容寸法を超えている場合、当該主鉄筋の属性ファイルを編集して、位置ズレが生じている旨を判定する。
【0029】
最後に、コンピュータ装置10は、ステップS106において照合した結果に基づいて記憶装置30に記憶されている設計データを更新する(ステップS107)。具体的には、コンピュータ装置10は、ステップS106において位置ズレが生じている旨を判定した主鉄筋MRの属性ファイルを編集して、当該主鉄筋MRに位置ズレが生じている旨の情報を付加する。
【0030】
なお、上記に述べたステップS107の処理(設計データを更新する処理)は本発明の一具体例である。上述したように、「設計データを更新する」に該当する処理の態様は様々であり、その態様はここで述べた内容に限られず、本発明の目的を達成する範囲において変更可能である。
【0031】
ステップS101~ステップS106の処理がコンピュータ装置10によって実行されることによって、計測装置20によって鉄筋コンクリート構造物RCが計測される度に、鉄筋コンクリート構造物RCについて配筋検査を高精度に実現することができる。
更に、ステップS107の処理がコンピュータ装置10によって実行されることによって、計測装置20によって鉄筋コンクリート構造物RCが計測される度に、記憶装置30に記憶されている設計データが更新されるので、鉄筋コンクリート構造物RCの施工に関する進捗管理(鉄筋コンクリート構造物RCの出来形管理)を容易に行うことができ、一連の作業の効率化を図ることができる。
【0032】
<変形例>
以上に説明した本発明の実施形態は、本発明の目的と達成する範囲において、種々の変形が可能である。以下、未だ説明していない本発明の変形例について、言及する。
【0033】
図1に図示したシステム構成は、本発明の実施について最低限必要となるものを図示したに過ぎず、図示していない構成が追加される態様によって本発明が実施されてもよい。
また、図1において、コンピュータ装置10、計測装置20、記憶装置30のそれぞれが単一の装置であるかのように図示したが、それぞれが複数の装置を組み合わせることによって実現されてもよい。
【0034】
図2に図示したフローチャートは、本発明に係るコンピュータ装置10による処理手順の一具体例を示したに過ぎず、本発明の目的を達成する範囲において、一部の処理を省いたり、図示していない処理を追加したり、図示した処理の順序を変更したり、することができる。
【0035】
上記の実施形態の説明では、鉄筋コンクリート構造物RCに対して一回の計測を行った場合におけるコンピュータ装置10の処理を説明した。しかしながら、鉄筋コンクリート構造物RCが、型枠に複数回のコンクリートの打ち込みを繰り返して形成される構造物である場合、その打ち込み毎に計測が行われる(鉄筋コンクリート構造物RCの完成までに複数回の計測が行われる)ことが好ましい。
そして、上記のような鉄筋コンクリート構造物RCである場合、コンピュータ装置10は、以下のような処理を実行しても良い。
先ず、コンピュータ装置10は、第一段階のコンクリートの打ち込み後に計測された鉄筋コンクリート構造物RCの形状を表す第一の点群データを解析して、第一段階において上面から突出している主鉄筋の中心位置(以下、第一位置とする)を算出する。
続いて、コンピュータ装置10は、第一段階より後に行われる第二段階のコンクリートの打ち込み後に計測された鉄筋コンクリート構造物RCの形状を表す第二の点群データを解析して、第二段階において形成されている上面から突出している主鉄筋の中心位置(以下、第二位置とする)を算出する。
そして、コンピュータ装置10は、第一位置と第二位置とを比較して、双方の位置が水平方向に許容寸法を超えている場合、第一位置及び第二位置の双方に関連する主鉄筋の属性ファイルを編集して、不具合が生じている旨の情報(位置ズレに関するアラート)を付加する。
すなわち、上記の実施形態において説明したステップS106とステップS107の処理は、実測値と設計値とを比較して位置ズレを検出する処理である一方、上記の変形例において説明した処理は、実測上の主鉄筋の中心位置が経時的にズレたことを検出する処理である。
【0036】
本実施形態は以下の技術思想を包含する。
(1)鉄筋コンクリート構造物の施工を支援する施工支援システムであって、前記鉄筋コンクリート構造物に係る鉄筋の配置を三次元に表すBIM(ビルディングインフォメーションモデリング)又はCIM(コンストラクションインフォメーションモデリング)に対応している設計データを記憶している記憶装置と、施工中の前記鉄筋コンクリート構造物の形状を非接触に計測し、前記鉄筋コンクリート構造物に係る点群データを生成する計測装置と、前記計測装置によって計測された前記鉄筋コンクリート構造物に係る点群データに基づく解析結果と、前記記憶装置に記憶されている前記設計データと、を照合するコンピュータ装置と、を備え、前記コンピュータ装置は、前記鉄筋コンクリート構造物に係る点群データを解析して、当該点群データを計測した時点において既に形成されているコンクリート部分の上面を特定し、特定した前記上面又は前記上面の近傍に存在する点群を抽出し、抽出した点群に基づいて、前記上面から突出している主鉄筋の中心位置を算出し、算出した主鉄筋の中心位置と、前記設計データにおける主鉄筋の中心位置と、を照合し、照合した結果に基づいて前記記憶装置に記憶されている前記設計データを更新する、ことを特徴とする施工支援システム。
(2)前記コンピュータ装置は、前記鉄筋コンクリート構造物に係る点群データを解析して、水平方向に延在する平面のうち最大面積を有する平面を、前記上面として特定する、(1)に記載の施工支援システム。
(3)前記コンピュータ装置は、抽出した点群と、特定した前記上面の縁の位置と、の位置関係に基づいて、主鉄筋を表す点群を特定して主鉄筋の中心位置を算出する、(1)又は(2)に記載の施工支援システム。
(4)前記コンピュータ装置は、特定した前記上面を基準として、高さ方向に前記上面より上方側に所定寸法内に収まる点群を抽出し、抽出した点群の中から水平方向に線状に延在している点群を除いて、残りの点群から主鉄筋を表す点群を特定して主鉄筋の中心位置を算出し、前記所定寸法は、帯鉄筋の径を超えている、(1)から(3)のいずれか一つに記載の施工支援システム。
(5)前記コンピュータ装置は、算出した主鉄筋の中心位置と、前記設計データにおける主鉄筋の中心位置と、を照合して双方の位置ズレが許容寸法を超えている場合、当該主鉄筋の属性ファイルを編集して、位置ズレが生じている旨の情報を付加する、(1)から(4)のいずれか一つに記載の施工支援システム。
(6)前記鉄筋コンクリート構造物は、型枠に複数回コンクリートの打ち込みを繰り返して形成される構造物であり、前記コンピュータ装置は、第一段階のコンクリートの打ち込み後に計測された前記鉄筋コンクリート構造物の形状を表す第一の点群データを解析して、前記第一段階において前記上面から突出している主鉄筋の中心位置である第一位置を算出し、前記第一段階より後に行われる第二段階のコンクリートの打ち込み後に計測された前記鉄筋コンクリート構造物の形状を表す第二の点群データを解析して、前記第二段階において形成されている前記上面から突出している主鉄筋の中心位置である第二位置を算出し、前記第一位置と前記第二位置とを比較して、双方の位置が水平方向に許容寸法を超えている場合、前記第一位置及び前記第二位置の双方に関連する主鉄筋の属性ファイルを編集して、不具合が生じている旨の情報を付加する、(1)から(5)のいずれか一つに記載の施工支援システム。
【符号の説明】
【0037】
100 施工支援システム
10 コンピュータ装置
20 計測装置
30 記憶装置
NW ネットワーク
RC 鉄筋コンクリート構造物
CF コンクリート部分
MR 主鉄筋
LT 帯鉄筋
図1
図2
図3
図4
図5
図6