(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101899
(43)【公開日】2023-07-24
(54)【発明の名称】水栓
(51)【国際特許分類】
E03C 1/044 20060101AFI20230714BHJP
F16K 27/00 20060101ALI20230714BHJP
【FI】
E03C1/044
F16K27/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002118
(22)【出願日】2022-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000144072
【氏名又は名称】SANEI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富成 巧磨
【テーマコード(参考)】
2D060
3H051
【Fターム(参考)】
2D060BA03
2D060BA05
2D060BB01
2D060BC01
2D060BC30
2D060BD01
2D060BD03
2D060BE01
2D060BE09
2D060BE15
2D060BF03
3H051AA03
3H051BB01
3H051BB02
3H051CC11
3H051FF02
(57)【要約】
【課題】水栓本体から側方に向けて吐水する水栓において、製造コストの安価な構造の水栓を提供する。
【解決手段】水栓本体2から側方に向けて吐水する水栓1である。水栓本体2は、天板に取付けられ天板の下方から供給される湯及び水を混合して温調した吐出水を吐出する温調バルブ部10と、温調バルブ部10から供給された吐出水を前方に向けて吐出する略円筒状の吐水部20と、を有する。温調バルブ部10は、略円筒状のケーシング部11の内筒部を上下を区画する隔壁部12を有し、隔壁部12の下方には吐水部20を通す吐水部取付孔11dが設けられている。吐水部20は、一端部側が吐水部取付孔11dに挿入された状態でその一部が隔壁部12に対して大ボルト17で締結固定されている。吐水部20は、主部21と副部22が組み合わされて形成されており、外周面の主部21と副部22の合わせ目にオーリングを配置する溝23が形成されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水栓本体から側方に向けて吐水する水栓であって、
前記水栓本体は、設置面に取付けられ該設置面の下方から供給される湯及び水を混合して吐出水として吐出する温調バルブ部と、
該温調バルブ部から供給された前記吐出水を前記温調バルブ部の側方に向けて吐出する略円筒状の吐水部と、を有し、
前記温調バルブ部は、略円筒状のケーシング部の内筒部を軸方向に区画する隔壁部を有し、該隔壁部の下方の前記ケーシング部には前記吐水部を通す外筒面と内筒面との間を貫通する第1取付孔が設けられており、
前記吐水部は、前記第1取付孔に一端部側が挿入されて前記ケーシング部に対して互いに軸線の方向が交差するように配置された状態でその一部が前記隔壁部に対してボルトで締結されることにより連結されており、
前記吐水部は、軸方向先端側の第1部品と軸方向根元側の第2部品とが組み合わされて形成されており、
前記吐水部の外周面に形成されて前記ケーシング部の前記第1取付孔の内周縁部との間を水密状態に保持するためのオーリングを配置する溝部が前記第1部品と前記第2部品の合わせ目に形成されている水栓。
【請求項2】
請求項1において、前記吐水部の前記一端部側には外径を一般部より小さく設定した縮径部が形成されており、
該縮径部が前記第1取付孔に挿入されて前記一般部の外表面と前記縮径部の外表面とを連結する立壁面が、前記ケーシング部における前記第1取付孔周りの前記外筒面に当接した状態で、前記吐水部が前記ケーシング部に対して取付けられている水栓。
【請求項3】
請求項2において、前記ケーシング部の前記内筒部の中には略円筒状で外径面と内径面を有する補助部材が下方から挿入されており、
前記隔壁部は、前記内筒面に前記外径面が摺接して挿入された前記補助部材の上面部に固定されて支持されており、
前記補助部材には前記第1取付孔と同軸同径の第2取付孔が前記外径面と前記内径面との間を貫通して設けられており、
前記補助部材における前記第2取付孔の内周縁部の一部には、前記ボルトを通すためのボルト孔が設けられている水栓。
【請求項4】
請求項3において、前記補助部材と前記第2部品には、それぞれ、組み付けられたとき前記第2部品が前記補助部材に対して前記第2部品の軸方向に移動するのを防ぐための被係止部と係止部が設けられている水栓。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、前記第1部品と前記第2部品には、それぞれ、組み合わされたとき周方向に相対回転するのを防ぐための係合部と被係合部が設けられている水栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水栓に関する。詳しくは、水栓本体から側方に向けて吐水する水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、設置面に対し略垂直に配設された水栓本体の上面部に開閉ハンドル部が設けられ側面部に吐水管が設けられて、側方に向けて水を吐出させることができる水栓が知られている。かかる水栓において、特許文献1には、水栓本体に対して吐水管を嵌合又はねじ止めにより取付け、鋳造等の複雑な製造工程を採らずに製造が可能な水栓が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された技術においては、吐水管における水栓本体に対する結合部の形状が複雑であり、射出成形で成形したのち切削加工を施す必要があり製造コストを抑えるためにさらなる構造の変更が要請されていた。
【0005】
このような問題に鑑み本発明の課題は、水栓本体から側方に向けて吐水する水栓において、製造コストの安価な構造の水栓を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1発明は、水栓本体から側方に向けて吐水する水栓であって、前記水栓本体は、設置面に取付けられ該設置面の下方から供給される湯及び水を混合して吐出水として吐出する温調バルブ部と、該温調バルブ部から供給された前記吐出水を前記温調バルブ部の側方に向けて吐出する略円筒状の吐水部と、を有し、前記温調バルブ部は略円筒状のケーシング部の内筒部を軸方向に区画する隔壁部を有し、該隔壁部の下方の前記ケーシング部には前記吐水部を通す外筒面と内筒面との間を貫通する第1取付孔が設けられており、前記吐水部は、前記第1取付孔に一端部側が挿入されて前記ケーシング部に対して互いに軸線の方向が交差するように配置された状態でその一部が前記隔壁部に対してボルトで締結されることにより連結されており、前記吐水部は、軸方向先端側の第1部品と軸方向根元側の第2部品とが組み合わされて形成されており、前記吐水部の外周面に形成されて前記ケーシング部の前記第1取付孔の内周縁部との間を水密状態に保持するためのオーリングを配置する溝部が前記第1部品と前記第2部品の合わせ目に形成されていることを特徴とする。
【0007】
第1発明によれば、水栓本体は、温調バルブ部のケーシング部と吐水部がそれぞれ略円筒状に形成されているので鋳造等の複雑な工程を使用しなくても射出成形や切削加工等により製造ができる。また、温調バルブ部に対する吐水部の取付けは、吐水部の一端部側が第1取付孔に挿入されてケーシング部に対して互いに軸線の方向が交差するように配置された状態でその一部が隔壁部に対してボルト締めされることにより行われているので製造コストの安価な構造の水栓を提供することができる。また、吐水部が一部品で形成されていると加工が煩雑なオーリングを配置する溝を、第1部品に対し第2部品を組み合わせたとき第1部品と第2部品の合わせ目に形成するように構成しているので吐水部の製造が容易である。ここで、温調バルブ部の側方とは、温調バルブ部のケーシング部における径方向外側に向かう方向のことをいう。
【0008】
本発明の第2発明は、上記第1発明において、前記吐水部の前記一端部側には外径を一般部より小さく設定した縮径部が形成されており、該縮径部が前記第1取付孔に挿入されて前記一般部の外表面と前記縮径部の外表面とを連結する立壁面が、前記ケーシング部における前記第1取付孔周りの前記外筒面に当接した状態で、前記吐水部が前記ケーシング部に対して取付けられていることを特徴とする。
【0009】
第2発明によれば、吐水部がケーシング部に対して、縮径部が第1取付孔に挿入されて立壁面がケーシング部における第1取付孔周りの外筒面に当接した状態で取付けられるので、吐水部はケーシング部に対して軸方向に垂直な方向に揺動しにくくより強固に連結される。
【0010】
本発明の第3発明は、上記第2発明において、前記ケーシング部の前記内筒部の中には略円筒状で外径面と内径面を有する補助部材が下方から挿入されており、前記隔壁部は、前記内筒面に前記外径面が摺接して挿入された前記補助部材の上面部に固定されて支持されており、前記補助部材には前記第1取付孔と同軸同径の第2取付孔が前記外径面と前記内径面との間を貫通して設けられており、前記補助部材における前記第2取付孔の内周縁部の一部には、前記ボルトを通すためのボルト孔が設けられていることを特徴とする。
【0011】
第3発明によれば、隔壁部が補助部材により支持された状態で、第1取付孔及び第2取付孔に一端部側が挿入された吐水部が、ボルトにより補助部材を介して隔壁部に締結固定されるので吐水部は温調バルブ部に対して強固に取付けられる。
【0012】
本発明の第4発明は、上記第3発明において、前記補助部材と前記第2部品には、それぞれ、組み付けられたとき前記第2部品が前記補助部材に対して前記第2部品の軸方向に移動するのを防ぐための被係止部と係止部が設けられていることを特徴とする。
【0013】
第4発明によれば、第2部品は温調バルブ部に対して第2部品の軸方向に移動するのを抑制された状態で組み付けられているので、吐水部に軸方向の力が印加されたときのガタを抑制することができる。
【0014】
本発明の第5発明は、上記第1発明ないし上記第4発明のいずれかにおいて、前記第1部品と前記第2部品には、それぞれ、組み合わされたとき周方向に相対回転するのを防ぐための係合部と被係合部が設けられていることを特徴とする。
【0015】
第5発明によれば、第1部品と第2部品とは周方向に相対回転するのを抑制された状態で組み合わされるので軸方向に対して垂直な力が吐水部に印加されたときのガタを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態である水栓を斜め前方から見た斜視図である。
【
図2】上記実施形態における水栓を斜め前方から見た分解斜視図である。
【
図3】上記実施形態における水栓において水栓本体を斜め前方から見た斜視図である。カートリッジと操作ハンドルは省いている。
【
図4】上記実施形態における水栓において水栓本体の正面図である。カートリッジと操作ハンドルは省いている。
【
図7】上記実施形態における水栓において吐水部と補助部材を説明する斜視図である。
【
図8】吐水部における主部と副部の連結構造を説明する部分断面図である。
【
図9】吐水部と温調バルブ部の連結構造を説明する部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係る水栓1の構成について、
図1~
図9を用いて説明する。以下の説明において、方向に関する説明は各図に示された上下前後左右の方向に基づいて行うものとする。
【0018】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る水栓1は、流し台や洗面台の天板Mの上に設置される湯水混合水栓である。水栓1は、天板Mの下側から供給された湯と水を混合して前方に向けて吐出する水栓本体2と、水栓本体2の前部に前方に向けて引き出し可能に取付けられた引出吐出管3と、を有する。引出吐出管3は、円筒状をしており水栓本体2からフレキシブルパイプ4c1を通じて供給された吐出水である湯水を前方の吐出口3aから円筒の軸に対して直角方向に吐出する。フレキシブルパイプ4c1は、自在に曲げ伸ばしが可能なパイプでコネクト部材4c2を介して引出吐出管3に水密状態を保って連結されている。引出吐出管3は、水栓本体2とフレキシブルパイプ4c1で連結されているので、手でつかんで操作することにより湯水の吐出方向を自由に変えることができる。ここで、天板Mが、特許請求の範囲の「設置面」に相当する。
【0019】
図1~
図4に示すように、水栓本体2は、供給された湯と水を混合して吐出水の温度を調節する機能と吐出水の水量を調節する機能とを果たす温調バルブ部10と、温調バルブ部10の前部に連結されフレキシブルパイプ4c1の向きを前方に向ける吐水部20と、を有する。
【0020】
温調バルブ部10は、略円筒状をしているケーシング部11と、ケーシング部11の内筒部を軸方向に区画する隔壁部12と、隔壁部12の上部に配置されるカートリッジ13と、カートリッジ13を操作する操作ハンドル14と、ケーシング部11の内筒部の下部に配置される略円筒状の補助部材15と、を有する。
【0021】
図2~
図6に示すように、ケーシング部11は、樹脂の射出成形により略円筒状に形成されており、円筒の軸線A1が天板Mに対して垂直になるような状態で天板Mに対し固定できるように形成されている。なお、ケーシング部11は、金属の削り出し加工で形成されてもよい。ケーシング部11は、外筒面11S1と内筒面11S2とを有する。内筒面11S2は、ケーシング部11の上下方向中央部の若干上方位置から上端面部にかけて形成された上内筒部11bと、上内筒部11bの下端部からケーシング部11の下端部にかけて形成された上内筒部11bより内径が小さい下内筒部11cと、を有する。上内筒部11bは、ケーシング部11の上端面部をカバーするカバー部材16を取り付け可能な内径に形成されている。具体的には、カバー部材16は上端部側のカバー部16aと、下端部側の円筒状の取付部16bと、を有し、上内筒部11bの内径は取付部16bの外径よりわずかに大きいものとされている。取付部16bの内径はカートリッジ13の外径よりわずかに大きいものとされている。取付部16bの下端部側の内径部分には雌ねじ16b1が形成されている。下内筒部11cは、下側から補助部材15を取り付け可能に形成されている。具体的には、下内筒部11cの下端部側には、ケーシング部11の下内筒部11cの中に補助部材15を挿入したとき、補助部材15の上下方向中央部の若干下方寄りの位置に設けられ2段階に直径が拡大された拡径部15cが嵌合して上方への補助部材15の移動を止める嵌合部11c1が設けられている。ケーシング部11における下内筒部11cの上部前側には、ケーシング部11に対して吐水部20を取付けるための外筒面11S1から内筒面11S2に貫通する吐水部取付孔11dが設けられている。吐水部取付孔11dは、円筒状の吐水部20を挿入するための孔で吐水部20がケーシング部11と反対側の端部を前上方に向けて吐水部20の軸線A2がケーシング部11の軸線A1に対して約70度の角度をなして取付くような形状に形成されている。ケーシング部11は、樹脂の削り出し加工又は射出成形によって製造してもよい。ここで、吐水部取付孔11dが、特許請求の範囲の「第1取付孔」に相当する。また、上内筒部11bと下内筒部11cが、特許請求の範囲の「内筒部」に相当する。
【0022】
図2、
図5及び
図6に示すように、ケーシング部11における上内筒部11bと下内筒部11cに跨る上下位置に、軸線A1に対して垂直な径方向に延びる隔壁部12が配置されてケーシング部11の内部は上下に分割されている。隔壁部12は、略円盤状をしており、水供給管4aを水密状態で連結する第1貫通孔12a1と、湯供給管4bを水密状態で連結する第2貫通孔12a2と、湯水吐出管4cを水密状態で連結する第3貫通孔12a3と、がそれぞれ上下方向に貫通して設けられている。さらに、隔壁部12には、前側に大ボルト17を締め付けるための雌ねじを切った有底のねじ孔12a4が開口を下側にして設けられ、後側に小ボルト18を締め付けるための雌ねじを切った左右一対のねじ孔(図示せず)が設けられている。
図2に示す左右一対の有底の孔12a5は、隔壁部12に対しカートリッジ13の相対回転を止める位置決めのためのものである。隔壁部12は、補助部材15の上面部15a1に密着した状態で取付けられている。具体的な取付け方については後述する。隔壁部12の上側外周部には、雄ねじ12bが切られている。雄ねじ12bは、カバー部材16の雌ねじ16b1が螺合するものである。
【0023】
図2、
図4~
図6に示すように、カートリッジ13は、円筒状のケーシング13aの中に配置された固定ディスク(図示せず)に対して可動ディスク(図示せず)を操作部13bの操作で相対移動させることにより供給された湯と水を混合して吐出水の温度を調節する機能と吐出水の水量を調節する機能とを果たす部品である。カートリッジ13は、ケーシング13aの下側の面を隔壁部12の上面に対して密着した状態で配置されることにより第1貫通孔12a1と第2貫通孔12a2を第3貫通孔12a3に連結してその機能を果たす。
【0024】
図1及び
図2に示すように、操作ハンドル14は、ケーシング部11と同径の円柱状の基体部14aと、基体部14aの上端部から径方向外側に向かって延びる板状のグリップ部14bと、を有する。操作ハンドル14は、カバー部材16が取付けられたケーシング部11に対して上方から取付けられると、基体部14aの下端部がカートリッジ13の操作部13bに嵌合する。そして、グリップ部14bを左右に回転させることにより操作部13bを左右に回転させて湯と水の混合比を変更し、グリップ部14bを上下に回転させることにより操作部13bを上下に回転させて吐出水の水量を調節することができる。
【0025】
図2及び
図5~
図7に示すように、吐水部20は、略円筒状の主部21と、主部21の後側に取付けられた副部22と、が組み合わされて形成されている。主部21と副部22は、樹脂の射出成形により形成されている。主部21は、前端部から後方に向かって、外径が大きい前側の大径部21aと、外径が大径部21aより小さい中径部21bと、外径が中径部21bより小さい小径部21cと、がこの順に並んで配置されている。中径部21bの外径は、大径部21aの外径と小径部21cの外径を足して2で割った程度に設定されている。大径部21aの外表面の後端部と中径部21bの外表面の前端部とをつなぐ面が第1接続面21dであり、中径部21bの外表面の後端部と小径部21cの外表面の前端部とをつなぐ面が第2接続面21eである。中径部21bの外径は、ケーシング部11の吐水部取付孔11dの内径よりわずかに小さく設定されている。第1接続面21dは、吐水部20の後端部(ケーシング部11に取付く側の端部)をケーシング部11の吐水部取付孔11dと補助部材15の吐水部取付孔15a2に挿入して、吐水部20をケーシング部11に取り付けたとき、ケーシング部11における吐水部取付孔11dの周りの外筒面11S1に当接するように形成されている。小径部21cの上側部には、吐水部20をケーシング部11に取り付けたとき、上下方向に貫通して大ボルト17を通すボルト孔21c1が設けられている。また、
図5及び
図8に示すように、小径部21cの後側左右端部には、左右一対の係合凸部21c2が軸線A2の後方向に向かって突出するように設けられている。主部21の内径部21fは、略円柱側面状をしているが、小径部21cの上側部は径方向内側に向かって膨らんで大ボルト17の締付座21c3とされている。この締付座21c3にボルト孔21c1が設けられている。ここで、主部21と副部22が、それぞれ特許請求の範囲の「第1部品」と「第2部品」に相当する。また、吐水部取付孔11dと吐水部取付孔15a2が、それぞれ特許請求の範囲の「第1取付孔」と「第2取付孔」に相当する。さらに、第1接続面21dと大ボルト17と係合凸部21c2が、それぞれ特許請求の範囲の「立壁面」と「ボルト」と「係合部」に相当する。加えて、大径部21aが、特許請求の範囲の「一般部」に相当する。
【0026】
図2及び
図5~
図7に示すように、副部22は、略円筒状をしており、外径部22aと内径部22bを有する。外径部22aの外径は、主部21の中径部21bの外径と等しく設定され、内径部22bの内径は、主部21の小径部21cの外径よりわずかに大きく設定されている。これによって、副部22は、主部21の小径部21cに対して軸方向に嵌め合わせることができ、嵌め合わせたときに前側端面部22cは、主部21の第2接続面21eに対して軸線A2方向に離隔して対向する。主部21の第2接続面21eと、小径部21cの外径面と、前側端面部22cによって形成された径方向に開口する溝23にオーリング(図示せず)が配置される。副部22の上側部には、主部21に対して嵌め合わせたとき、主部21のボルト孔21c1に一致して延びる同軸同径のボルト孔22dが設けられている。また、副部22の上側部には、軸線A2の後方向に延びる延長部22eが設けられ、延長部22eの上面部には、径方向に突出して吐水部20を温調バルブ部10に取り付けたとき、補助部材15の一部に係合して抜け止めとして作用する突起部22e1が設けられている。さらに、副部22の後側左右端部には、副部22を主部21に対して嵌め合わせたとき、主部21の左右一対の係合凸部21c2に係合して周方向に相対回転するのを防ぐための係合凹部22fが配設されている。副部22を主部21に対して嵌め合わせたとき、副部22の外径部22aの外径と主部21の中径部21bの外径とは一致する。吐水部20における中径部21bと小径部21cに副部22が嵌め合わされた部分が、特許請求の範囲の「縮径部」に相当する。また、溝23が、特許請求の範囲の「溝部」に相当する。さらに、突起部22e1と係合凹部22fが、それぞれ特許請求の範囲の「係止部」と「被係合部」に相当する。
【0027】
図2及び
図5~
図7に示すように、補助部材15は、樹脂の射出成形によりケーシング部11の下内筒部11cの内径よりわずかに小さい外径を有する略円筒状の大径部15aと、大径部15aの下側に設けられた大径部15aより小さい外径を有する小径部15bと、大径部15aと小径部15bの間に設けられた拡径部15cと、を有する。拡径部15cの外径は、大径部15aより大きい。大径部15aと小径部15bと拡径部15cは同軸で、補助部材15がケーシング部11に取付けられたとき、軸線A1に一致する。大径部15aをケーシング部11の下内筒部11cの中に下から挿入すると、拡径部15cが嵌合部11c1に嵌合して上方への移動が止められる。この状態で、大径部15aの前側には、ケーシング部11の吐水部取付孔11dに一致して軸線A2方向に延びる同軸同径の吐水部取付孔15a2が設けられている。また、大径部15aの後側には、後方から見て開口を上方として略U字状をした切欠15a3が設けられている。大径部15aの上面部15a1には、前側に径方向内側に向かって突出した前突出部15a4が設けられ、後側に径方向内側に向かって突出する左右一対の後突出部15a5が設けられている。前突出部15a4の下面部15a6は、吐水部20を温調バルブ部10に取り付けたとき、副部22の外径部22aの上面に当接し、下面部15a6の径方向内側の端部が突起部22e1に係合する。前突出部15a4には、吐水部20を温調バルブ部10に取り付けたとき、吐水部20のボルト孔21c1とボルト孔22dに一致して上方向に延びるボルト孔15a7が上下に貫通して設けられている。左右一対の後突出部15a5には、それぞれ、上下方向に延びるボルト孔15a8が貫通して設けられている。小径部15bには、雄ねじ15b1が設けられている。補助部材15には、軽量化を図るため複数の肉盗み穴15dが設けられている。ここで、下面部15a6の径方向内側の端部が、特許請求の範囲の「被係止部」に相当する。また、ボルト孔15a7が、特許請求の範囲の「ボルト孔」に相当する。
【0028】
図2及び
図5~
図7を参照して、水栓1の組み立てと天板Mへの取付けの手順について説明する。予め、隔壁部12の下側に、水供給管4aと湯供給管4bと湯水吐出管4cのそれぞれ上端部側を水密状態を保って取付けておく。具体的には、水供給管4aの上端部側を第1貫通孔12a1の下端部側に水密状態を保ってロー付けで取付けておく。また、湯供給管4bの上端部側を第2貫通孔12a2の下端部側に水密状態を保ってロー付けで取付けておく。さらに、湯水吐出管4cの上端部側を第3貫通孔12a3の下端部側に水密状態を保ってロー付けで取付けておく。この状態で、下方から補助部材15を、水供給管4aと湯供給管4bと湯水吐出管4cを内筒部分に通すように持ち上げて、隔壁部12の下側に上面部15a1を当接させる。そして、ねじ孔12a4とボルト孔15a7、左右一対のねじ孔12a5と左右一対のボルト孔15a8をそれぞれ一致させ、左右一対のねじ孔12a5と左右一対のボルト孔15a8の中にそれぞれ小ボルト18を通して、左右一対の後突出部15a5を隔壁部12に対して締付固定する。隔壁部12が取付けられた補助部材15を、ケーシング部11の下内筒部11cに、下方から隔壁部12の側から拡径部15cが嵌合部11c1に嵌合するまで挿入する。この状態で、吐水部20を副部22の側から吐水部取付孔11dと吐水部取付孔15a2に挿入し、ボルト孔21c1とボルト孔22dをボルト孔15a7とねじ孔12a4に一致させるとともに、突起部22e1を前突出部15a4の下面部15a6の径方向内側の端部に係合させる。この状態で、ボルト孔21c1とボルト孔22dとボルト孔15a7に下方から大ボルト17を通し、隔壁部12のねじ孔12a4に対して締め付ける。このとき、吐水部20は前もって主部21に対して副部22を嵌め合わせて、形成された溝23にオーリングを配置しておく。次に、ケーシング部11の上内筒部11bの中にカートリッジ13を挿入しカバー部材16の取付部16bを挿入して隔壁部12に対して固定する。具体的には、隔壁部12の上端部側に設けられた雄ねじ12bに対して取付部16bの下端部側に設けられた雌ねじ16b1を螺合させることにより固定する。そして、基体部14aの下端部をカートリッジ13の操作部13bに嵌合させて操作ハンドル14を取付ける。湯水吐出管4cの下端部にフレキシブルパイプ4c1の一端部を水密状態を保って連結するとともに、他端部を補助部材15の内筒部から吐水部20の内筒部を通すように配置して先端にコネクト部材4c2を取付ける。コネクト部材4c2は引出吐出管3の内筒部に水密状態を保って連結されるとともに、吐水部20の前端部側の内径部21fに脱着可能に支持される。こうして水栓1の組み立てが完了する。組み立てられた水栓1は、小径部15bが、天板Mに設けられた小径部15bの外径より大きく拡径部15cの外径より小さい内径の孔(図示せず)を通して下方に挿入され、拡径部15cの下端部が天板Mの上面に当接するように配置される。この状態で、小径部15bの雄ねじ15b1に対して図示しないナットが締め付けられることにより、拡径部15cの下端部とナットで天板Mを挟みつけて天板Mに対し固定する。こののち、水供給管4aの下端部は水の供給配管に連結され、湯供給管4bの下端部は湯の供給配管に連結される。
【0029】
以上のように構成される本実施形態は、以下のような作用効果を奏する。水栓本体2は、温調バルブ部10のケーシング部11と吐水部20がそれぞれ略円筒状に形成されているので鋳造等の複雑な工程を使用しなくても射出成形や例えば切削加工により製造ができる。また、温調バルブ部10に対する吐水部20の取付けは、吐水部20の一端部側が吐水部取付孔11dと吐水部取付孔15a2に挿入されてケーシング部11に対して互いに軸線の方向が交差するように配置された状態で小径部21cの上側部と副部22の上側部が隔壁部12に対して大ボルト17で締結されることにより行われているので製造コストの安価な構造の水栓1を提供することができる。また、吐水部20が一部品で形成されていると加工が煩雑なオーリングを配置する溝が、主部21に対し副部22を組み合わせたとき第2接続面21eと、小径部21cの外径面と、前側端面部22cによって形成された径方向に開口する溝23として形成されるので吐水部20の製造が容易である。
【0030】
また、吐水部20がケーシング部11に対して、中径部21bと副部22を取付けた小径部21cが吐水部取付孔11dと吐水部取付孔15a2に挿入されて、第1接続面21dがケーシング部11における吐水部取付孔11dの周りの外筒面11S1に当接した状態で取付けられる。これによって、吐水部20はケーシング部11に対して軸線A2方向に垂直な方向に揺動しにくくより強固に連結される。
【0031】
さらに、隔壁部12が補助部材15の左右一対の後突出部15a5に対してそれぞれ小ボルト18で締結され支持された状態で、吐水部取付孔11dと吐水部取付孔15a2に一端部側が挿入された吐水部20が、大ボルト17により補助部材15の前突出部15a4を介して隔壁部12に締結固定される。これによって、吐水部20は温調バルブ部10に対して強固に取付けられる。
【0032】
さらに、吐水部20は、突起部22e1を温調バルブ部10の前突出部15a4の下面部15a6の径方向内側の端部に係合させた状態で、温調バルブ部10に対して取付けられている。これによって、吐水部20は、温調バルブ部10から離隔する軸線A2方向に移動するのを抑制され、吐水部20に軸線A2方向の力が印加されたときのガタを抑制することができる。
【0033】
加えて、主部21と副部22とは、主部21の左右一対の係合凸部21c2が副部22の左右一対の係合凹部22fに係合した状態で組み合わされるので、軸線A2を中心とする相対回転が抑制され、軸線A2方向に垂直な方向に力が吐水部20に印加されたときのガタを抑制することができる。
【0034】
以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、次のようなものが挙げられる。
【0035】
1.上記実施形態においては、隔壁部12は、ケーシング部11の下内筒部11cに挿入された補助部材15によって支持されるように構成した。しかし、これに限らず、ケーシング部11の下内筒部11cに対して螺合によって取付けるように構成することもできる。
【0036】
2.上記実施形態においては、主部21に左右一対の係合凸部21c2を設け、副部22に左右一対の係合凹部22fを設けた。しかし、これに限らず、係合凸部21c2と係合凹部22fは一組であってもよい。さらに、主部21に係合凹部を設け副部22に係合凸部を設けることもできる。ただし、その場合、係合凸部の突出する向きは上記実施形態とは逆向きとなり、それに応じて係合凹部の凹む向きも変更する必要がある。
【符号の説明】
【0037】
1 水栓
2 水栓本体
4a 水供給管
4b 湯供給管
4c 湯水吐出管
10 温調バルブ部
11 ケーシング部
11b 上内筒部(内筒部)
11c 下内筒部(内筒部)
11d 吐水部取付孔(第1取付孔)
11S1 外筒面
11S2 内筒面
12 隔壁部
13 カートリッジ
15 補助部材
15a 大径部
15a1 上面部
15a2 吐水部取付孔(第2取付孔)
15a6 下面部(被係止部)
15a7 ボルト孔(ボルト孔)
17 大ボルト(ボルト)
20 吐水部
21 主部(第1部品)
21a 大径部(一般部)
21b 中径部
21c 小径部
21c2 係合凸部(係合部)
21d 第1接続面(立壁面)
21e 第2接続面
22 副部
22c 前側端面部
22e 延長部
22e1 突起部(係止部)
22f 係合凹部(被係合部)
23 溝(溝部)
A1 軸線
A2 軸線
M 天板