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  • 特開-非接触受電装置及び方法 図1
  • 特開-非接触受電装置及び方法 図2
  • 特開-非接触受電装置及び方法 図3
  • 特開-非接触受電装置及び方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101905
(43)【公開日】2023-07-24
(54)【発明の名称】非接触受電装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/12 20160101AFI20230714BHJP
【FI】
H02J50/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002129
(22)【出願日】2022-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】320012037
【氏名又は名称】ラピステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中西 康喜
(57)【要約】
【課題】過大な磁界に受電装置が晒された場合でも電子機器の破壊とならず無線電力供給の停止もない受電装置を提供する。
【解決手段】受電装置は、受電コイルの両端子に接続され、磁界により両端子間に発生する電圧によって給電を受ける受電制御回路と、受電コイルの両端子間に並列に接続されるマッチングキャパシタと、マッチングキャパシタに直列に接続され受電制御回路に接続されたスイッチ素子と、を有する。受電制御回路は、受電コイルが受ける磁界の強度の変化に応じて受電制御回路において生ずる変化を検知する検知部と、検知部が所定以上の変化を検知した場合にスイッチ素子の状態を切り替えるスイッチ切替部を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受電コイルと、
前記受電コイルの両端子に接続され、磁界により前記両端子間に発生する電圧によって給電を受ける受電制御回路と、
前記受電コイルの前記両端子間に並列に接続されるマッチングキャパシタと、
前記マッチングキャパシタに直列に接続され前記受電制御回路に接続されたスイッチ素子と、を有し、
前記受電制御回路は、
前記受電コイルが受ける磁界の強度の変化に応じて前記受電制御回路において生ずる変化を検知する検知部と、
前記検知部が所定以上の変化を検知した場合に前記スイッチ素子の状態を切り替えるスイッチ切替部を有する
ことを特徴とする受電装置。
【請求項2】
前記スイッチ切替部は、前記スイッチ素子の状態を切り替えてから前記検知部が前記所定以上の変化を検知する限り前記スイッチ素子の状態を保持する
ことを特徴とする請求項1に記載の受電装置。
【請求項3】
前記スイッチ切替部は、前記スイッチ素子の状態を切り替えてから前記検知部が所定以下の変化を検知した場合、前記スイッチ素子の状態を再度切り替える
ことを特徴とする請求項2に記載の受電装置。
【請求項4】
前記検知部は、前記受電コイルの両端子間の電圧を検知する電圧計、前記両端子間の電流を検知する電流計、又は、温度計を含み、
前記スイッチ切替部は、前記電圧計、前記電流計又は前記温度計による電圧、電流計、又は、温度の変化を、前記受電コイルが受ける磁界の強度の変化に応じて前記受電制御回路において生ずる変化として検知する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の受電装置。
【請求項5】
前記検知部が前記電圧計であって、前記電圧計の電圧値が所定の振幅以上に振れた際に、前記スイッチ切替部は前記スイッチ素子の状態を切り替える
ことを特徴とする請求項4に記載の受電装置。
【請求項6】
前記検知部が前記電圧計であって、前記電圧計の電圧値が所定の振幅以下に振れた際に、前記スイッチ切替部は前記スイッチ素子の状態を再度切り替える
ことを特徴とする請求項4に記載の受電装置。
【請求項7】
前記スイッチ素子はNMOSトランジスタであり、
前記スイッチ切替部は、前記検知部が前記所定の強度以上の電磁界を検知する際、前記NMOSトランジスタのゲート電圧レベルを変化させ前記NMOSトランジスタのオンオフを切り替え、前記受電コイル及び前記マッチングキャパシタがなす共振回路のインピーダンスマッチングを変化させる
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の受電装置。
【請求項8】
前記スイッチ切替部は、前記検知部が所定以上の変化を検知した場合に前記スイッチ素子の状態をオンに切り替える
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の受電装置。
【請求項9】
非接触の受電装置の受電方法であって、
前記受電装置は、受電コイルと、前記受電コイルの両端子に接続され、磁界により前記両端子間に発生する電圧によって給電を受ける受電制御回路と、前記受電コイルの前記両端子間に並列に接続されるマッチングキャパシタと、前記マッチングキャパシタに直列に接続され前記受電制御回路に接続されたスイッチ素子と、を有し、
前記受電コイルが受ける磁界の強度の変化に応じて前記受電制御回路において生ずる変化を検知する検知ステップと、
前記検知ステップにおいて、所定以上の変化を検知した場合に前記スイッチ素子の状態を一の状態切り替え、所定以下の変化を検知した場合に前記スイッチ素子の状態を前記一の状態と異なる状態に切り替える切替ステップと、
前記スイッチ素子の状態を保持する保持ステップと、
を有することを特徴とする受電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触で送電装置から受電を行う受電装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触給電システムは、電磁界を媒体として送電装置から受電装置へ非接触で電力伝送する技術であり、ケーブルレスでバッテリーの充電や電子機器の常時駆動が可能となる。この技術によってあらゆる電子機器の自由度や利便性が向上する一方で、空間中で電力伝送されることに対する不安定要素がある。例えば送受電の距離が変わることによる電磁界強度の変化などが挙げられ、受電装置を含む電子機器が過大な磁界に晒された場合、受電装置の規格を超えた電圧が装置内に発生することになり電子機器の破壊となる問題があった。
【0003】
この問題に対する従来の保護手段としてヒューズやツェナーダイオードなどがあるが、ヒューズは一度切れてしまうと元に戻らない不可逆性や、保護時に非常に高いインピーダンスとなり高電圧が発生する欠点がある。また、ツェナーダイオードは電流を流すことで余分な電力を捨てることができるが、大きな発熱を伴う欠点があった。
【0004】
また、非接触給電システムにおいて、受電装置として、受電回路が所定以上の電力を受電した場合にトランジスタをオンにして受電コイルから出力部への電力供給を停止する技術が知られている(特許文献1、参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2018/037758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、先行技術では、電力供給があった場合に電力供給が停止してしまうため、機器の動作に必要な電力供給も止まってしまうといった問題が発生していた。
【0007】
本発明は、以上の従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、過大な磁界に受電装置が晒された場合でも電子機器の破壊とならず、無線電力供給の停止もない受電装置を提供することが目的の一つとして挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の受電装置は、受電コイルと、
前記受電コイルの両端子に接続され、磁界により前記両端子間に発生する電圧によって給電を受ける受電制御回路と、
前記受電コイルの前記両端子間に並列に接続されるマッチングキャパシタと、
前記マッチングキャパシタに直列に接続され前記受電制御回路に接続されたスイッチ素子と、を有し、
前記受電制御回路は、
前記受電コイルが受ける磁界の強度の変化に応じて前記受電制御回路において生ずる変化を検知する検知部と、
前記検知部が所定以上の変化を検知した場合に前記スイッチ素子の状態を切り替えるスイッチ切替部を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の受電方法は、非接触の受電装置の受電方法であって、
前記受電装置は、受電コイルと、前記受電コイルの両端子に接続され、磁界により前記両端子間に発生する電圧によって給電を受ける受電制御回路と、前記受電コイルの前記両端子間に並列に接続されるマッチングキャパシタと、前記マッチングキャパシタに直列に接続され前記受電制御回路に接続されたスイッチ素子と、を有し、
前記受電コイルが受ける磁界の強度の変化に応じて前記受電制御回路において生ずる変化を検知する検知ステップと、
前記検知ステップにおいて、所定以上の変化を検知した場合に前記スイッチ素子の状態を一の状態切り替え、所定以下の変化を検知した場合に前記スイッチ素子の状態を前記一の状態と異なる状態に切り替える切替ステップと、
前記スイッチ素子の状態を保持する保持ステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、受電する機器の動作を止めることなく過大な電力供給時に機器の破壊を防止できるという有利な効果が実現可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施例である受電装置を含む非接触給電システムのブロック図である。
図2】第1の実施例である受電装置の動作を説明するタイミングチャートである。
図3】第2の実施例である受電装置を含む非接触給電システムのブロック図である。
図4】第3の実施例である受電装置を含む非接触給電システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明による実施例について詳細に説明する。なお、実施例において、実質的に同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
図1は、送電装置110と実施例の受電装置140を含む非接触給電システムの一例を示すブロック図である。
【0014】
電力の送出側である送電装置110は、例えば、送電制御回路120とアンテナコイルL1、キャパシタC1等を含んで構成される。
【0015】
電力の受取側である電子機器130は受電装置140と受電制御回路150、アンテナコイルL2、キャパシタC2、バッテリー等を含んで構成される。ただし、図1において、受電制御回路150と接続されるバッテリーは省略してあり、さらに、受電制御回路150に含まれる整流回路や、バッテリーのための充電回路も省略してある。
【0016】
送電制御回路120は交流電圧をアンテナコイルL1およびキャパシタC1に印加することでアンテナコイルから交流磁界を発生させる。送電装置110のアンテナコイルL1は交流電磁界を受電装置140の受電用のコイルのアンテナコイルL2に伝える。この交流磁界により受電装置140のアンテナコイルL2と磁界結合することで起電力が発生し、受電制御回路150に対して電力を供給することができる。
【0017】
送電装置110や受電装置140で使用されるキャパシタC1、C2はインピーダンスマッチングを調整するために接続されるものであり、適切な容量値を選択することで、効率よく送電装置110から受電装置140へ電力を供給することが可能である。
【実施例0018】
第1の実施例の受電装置140では、受電制御回路150によって、受電コイルのアンテナコイルL2に並列に接続されたキャパシタC2を保護回路として機能させるために、キャパシタC2に直列接続されたスイッチ素子の例えば半導体スイッチをスイッチ切替部SWKにより動作させて実現する。スイッチ素子の半導体スイッチには、例えば、ドレイン及びソースの端子が共振回路(L2、C2)に接続されるNMOSトランジスタQ1を用いている。
【0019】
実施例の受電装置140の受電制御回路150は、アンテナコイルL2が受ける電磁界を検知する検知部DETを備え、検知部DETが所定の強度以上の電磁界を検知する場合、これに応じてスイッチ切替部SWKがNMOSトランジスタQ1のオンオフを切り替える。
【0020】
スイッチ切替部SWKは、検知部DETが所定の強度以上の電磁界を検知する際、NMOSトランジスタQ1のゲート電圧レベルを変化させNMOSトランジスタQ1のオンオフを切り替え、受電コイルL2及びマッチングキャパシタC2がなす共振回路のインピーダンスマッチングを変化させる。
【0021】
保護回路は、受電装置140内のキャパシタC2とノードN10の間にNMOSトランジスタQ1のドレインとソースを挿入したものである。また、NMOSトランジスタQ1のゲートはノードN30を介して受電制御回路150内のスイッチ切替部SWKに接続される。さらに、アンテナコイルL2と受電制御回路150の間のノードN20に直列に第2のマッチングキャパシタC3が接続されている。
【0022】
検知部DETは、例えばノードN10又はノードN20に接続される電圧計であって、該電圧計が検出するアンテナ端子電圧の変化を検出し、検出結果に応じてスイッチ切替部SWKを駆動する。
【0023】
(動作の説明)
図1に示す非接触給電システムの動作を、図2に示すタイミングチャートを参照しつつ説明する。
【0024】
受電装置のアンテナコイルL2に交流磁界が印加されるとアンテナコイルL2の両端のノードN10およびノードN20に交流電圧が誘起される。交流電圧は受電制御回路150に入力され装置内部で直流変換や信号処理などが行われる。この時、NMOSトランジスタQ1のゲート電圧は低レベルであり、NMOSトランジスタQ1はOFF状態である。従って、キャパシタC2はアンテナコイルL2とは切り離されているとみなすことができ、マッチングには寄与していない状態である(図2に示すタイミングチャートの時間t1までの区間)。
【0025】
次に、印加される磁界が過大となると受電装置のアンテナコイルL2両端に発生する電圧振幅が上昇する。ここで所定の強度以上の電磁界に対応する電圧(Vth)を受電制御回路150の検知部DETが検知すると、これに応じてスイッチ切替部SWKがNMOSトランジスタQ1のゲート電圧を高レベルに切り替える(図2タイミングチャートの時間t2)。これによって、キャパシタC2はアンテナコイルL2と並列に接続された状態となり、インピーダンスマッチングを変化させることができる。インピーダンスマッチングを大きく切り替えることによって受電装置140は過剰な電力を受電することがなくなり、規格値を超えた電圧レベルが入力されることを防ぎ、装置の破壊を防ぐことができる。
【0026】
ただし、この保護動作時で過大に電力を受け付けないようにするが、電子機器130が動作するために最低限必要な電力は受信している状態であり、電子機器130が電源断となることはない(図2タイミングチャートの時間t2以降)。すなわち、この保護動作が働いて受信する電力が低下しても、ただちに保護動作が解除されることはなく、スイッチ切替部SWKによってその低電力供給状態は保持される(図2タイミングチャートの時間t2~t3)。スイッチ切替部SWKは、検知部DETが所定の強度以上の電磁界を検知する限りスイッチ素子のオン状態又はオフ状態を保持する。
【0027】
そして、印加される磁界が減少する(図2タイミングチャートの時間t3~t4)と受電装置のアンテナコイルL2両端に発生する電圧振幅が下降(ΔV)する。この電圧下降を受電制御回路150の検知部DETが検知すると、これに応じてスイッチ切替部SWKがNMOSトランジスタQ1のゲート電圧を低レベルに切り替える(図2タイミングチャートの時間t4)。これによって、よって電力供給状態は復帰される(図2タイミングチャートの時間t4以降)。
【0028】
(効果の説明)
以上のように、本実施例によればNMOSトランジスタQ1をキャパシタC2に接続してマッチング切替制御を行うことで、受電装置140を含む電子機器130が過大な磁界に晒された場合にも、受電する電力を抑え規格を超えた電圧レベルが装置内部に印加されることを防ぎ、電子機器130の破壊を防ぐことが可能となる。
【0029】
本実施例ではマッチングキャパシタを直列に1つ、並列に1つとしたが、この構成は一例に過ぎず、どのようなマッチングキャパシタの組み合わせでもこの制御は適用可能である。
【0030】
また、本実施例では検知部DETがノードN10又はノードN20に接続される電圧計を用いているが、これに代えて第2の実施例として図3に示すように検知部DETとして電流計を用いて電流変化によってアンテナコイルL2への磁界の変化を検出し、検出結果に応じてスイッチ切替部SWKを駆動することもできる。さらに、第3の実施例として図4に示すように検知部DETとして例えば整流回路(図示せず)に近接したサーミスタ等の温度計を用いて、温度変化によってアンテナコイルL2への磁界の変化を検出し、検出結果に応じてスイッチ切替部SWKを駆動することもできる。
【0031】
また、NMOSトランジスタQ1のゲート電圧が通常時には低レベル、保護動作時に高レベルとしてインピーダンスマッチング切替としたが、反対に通常時に高レベル、保護動作時に低レベルとしても良い。
【0032】
本実施例では、以上のように、受電装置140において、マッチングキャパシタC2とノードN10の間にNMOSトランジスタQ1のドレインとソースを接続し、ゲートを受電制御回路150に接続し、過大な磁界に晒された場合にそれを検知する検知部DETとスイッチ切替部SWKとを備えた受電制御回路150を有し、スイッチ切替部SWKが保護動作時にゲート電圧レベルを変化させNMOSトランジスタのON/OFFを切り替え、共振回路のインピーダンスマッチングを変化させることで受電装置140に入力される励起電圧レベルを抑えることで電子機器の破壊を防ぐことができる。また、スイッチ切替部SWKは磁界が過大である限り保護動作の状態を保持する。
【0033】
受電装置140は、アンテナコイルL2を通信用の共用アンテナとして、データの送受信と非接触給電によるバッテリ(図示せず)の充電等が可能なNFC通信装置(図示せず)に搭載できる。
【0034】
受電装置140は、順に接続された、アンテナコイルL2の他に整流回路や、充電回路含んで構成されてもよい。また、受電装置140は通信回路を含んで構成されて、例えばスマートフォンにも利用できる。本実施例では、受電装置140の動作開始時に得られる電圧が低いので、ゲートの閾値電圧が低いNMOSトランジスタをスイッチ素子として選択することが好ましい。
【符号の説明】
【0035】
140 受電装置
150 受電制御回路
C1、C2、C3 キャパシタ
L2 アンテナコイル(受電コイル)
Q1 NMOSトランジスタ
DET 検知部
SWK スイッチ切替部
図1
図2
図3
図4