(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101913
(43)【公開日】2023-07-24
(54)【発明の名称】メッキ用ハンガー
(51)【国際特許分類】
C25D 17/08 20060101AFI20230714BHJP
C25D 21/00 20060101ALI20230714BHJP
C25D 17/10 20060101ALI20230714BHJP
【FI】
C25D17/08 A
C25D17/08 R
C25D21/00 C
C25D17/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002149
(22)【出願日】2022-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】392032085
【氏名又は名称】睦技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】弁理士法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒田 睦
(57)【要約】
【課題】単純な構造で、導電フックの補修交換が容易に行え、導電フックの姿勢や位置を調整可能で、能率よくメッキ処理する。
【解決手段】メッキ用ハンガー100は、メッキ用の電極41に脱着自在に電気接続される接続部1Bを上部に有する導電ロッド1と、導電ロッド1に連結されて被メッキ物50を脱着自在に引っ掛ける複数の導電フック10と、導電ロッド1に連結されて、導電フック10を所定の位置及び姿勢で導電ロッド1に連結するフック連結部20と、導電フック10をフック連結部20に所定の位置及び姿勢で固定する第1固定具22とを備え、導電フック10が、フック連結部20から脱着自在であって、かつ、第1固定具22でフック連結部20に固定された状態で、導電ロッド1に電気接続されてなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メッキ用の電極に脱着自在に電気接続される接続部を有する導電ロッドと、
前記導電ロッドに連結されて被メッキ物を脱着自在に引っ掛ける複数の導電フックと、
前記導電ロッドに連結されて、前記導電フックを前記導電ロッドに連結するフック連結部と、
前記導電フックを前記フック連結部に所定の位置及び姿勢で固定する第1固定具とを備え、
前記導電フックが、
前記フック連結部から脱着自在であって、
かつ、前記第1固定具で前記フック連結部に固定された状態で、前記導電ロッドに電気接続されてなることを特徴とするメッキ用ハンガー。
【請求項2】
請求項1に記載するメッキ用ハンガーであって、
前記フック連結部が、
前記導電フックを挿入してなる筒状であり、または筒状部を有し、かつ、筒状または筒状部から液を流出する流出孔を有し、
前記導電フックが、前記フック連結部に回転自在に挿入されて、所定の位置及び姿勢で前記フック連結部に連結されることを特徴とするメッキ用ハンガー。
【請求項3】
請求項2に記載するメッキ用ハンガーであって、
前記導電フックが、前記フック連結部の筒状内または筒状部内に隙間を空けて前記フック連結部の所定の位置に固定され、前記隙間が前記流出孔に連通されることを特徴とするメッキ用ハンガー。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載するメッキ用ハンガーであって、
前記第1固定具が前記フック連結部を貫通して前記導電フックを押圧する止ネジであることを特徴とするメッキ用ハンガー。
【請求項5】
請求項4に記載するメッキ用ハンガーであって、
前記フック連結部が、前記導電フックを挿入してなる筒状であり、または筒状部を有し、
前記止ネジが筒状の前記フック連結部に設けてなる雌ネジ孔にねじ込まれて前記導電フックを押圧して、前記導電フックを前記フック連結部の所定の位置及び姿勢に固定することを特徴とするメッキ用ハンガー。
【請求項6】
請求項5に記載するメッキ用ハンガーであって、
さらに、前記フック連結部に連結されたネジ受け部を有し、
前記止ネジが、前記ネジ受け部及び前記フック連結部に設けてなる前記雌ネジ孔にねじ込まれて前記導電フックを押圧して、前記導電フックを前記フック連結部の所定の位置に固定することを特徴とするメッキ用ハンガー。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載するメッキ用ハンガーであって、
前記導電フックが可撓性の金属線であることを特徴とするメッキ用ハンガー。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載するメッキ用ハンガーであって、
さらに、前記導電フックを前記導電ロッドの軸方向に移動自在で、かつ水平面内で回転自在に連結してなる連結台と、
前記連結台を前記導電ロッドの所定の位置に固定する第2固定具とを備え、
前記導電フックが、
前記連結台を介して、前記導電ロッドの上下位置と水平面内における回転位置とが調整され、前記第2固定具を介して所定の位置及び姿勢に固定され、
なおかつ、前記導電フックが前記導電ロッドに固定される状態において、前記導電フックが前記導電ロッドに電気接続されてなることを特徴とするメッキ用ハンガー。
【請求項9】
請求項8に記載するメッキ用ハンガーであって、
前記連結台が前記導電ロッドを挿通してなる筒状で、
前記第2固定具が止ネジであって、
前記止ネジが筒状の前記連結台に設けてなる雌ネジ孔にねじ込まれて前記導電ロッドを押圧して、前記連結台を前記導電ロッドの定位置に固定することを特徴とするメッキ用ハンガー。
【請求項10】
請求項9に記載するメッキ用ハンガーであって、
さらに、前記連結台に連結されたネジ受け部を有し、
前記止ネジが、前記ネジ受け部及び前記連結台に設けてなる前記雌ネジ孔にねじ込まれて前記導電ロッドを押圧して、前記連結台を前記導電ロッドの定位置に固定することを特徴とするメッキ用ハンガー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の被メッキ物を引っ掛けてメッキ液に浸漬してメッキするメッキ用ハンガーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多数の被メッキ物を引っ掛けてメッキ液に浸漬してメッキするメッキ用ハンガーは、導電フック(引っ掛け部材)の導電ロッドへの固着には、溶接、半田付け、カシメなどが施されている。導電フックはメッキ槽に浸されて酸化して劣化し、また、絡み合った様々な形状の導電フックを取り扱う際に、導電フックに折れ、破損、損傷などが生じ得る。このような場合に、溶接などの固着方法では破損した導電フックだけを取り外して、交換できず、また、多数の導電フックが配設された状態では破損部分の補修も容易ではないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
脱着可能な被メッキ物支持用の導電フック(引っ掛け部材)が設けられたメッキ用ハンガー(ラック)は開発されている(特許文献1参照)。
図5に示すように、このメッキ用ハンガー900は、導電フック92にねじ部93を設けて、ねじ締めにより導電ロッド91に固着させ、導電フック92を導電ロッド91から脱着可能とする。しかし、この構造によると、ねじ締めにより導電フック92の姿勢が定まってしまい、被メッキ物96の形状に合わせて導電フック92の位置や姿勢を自由に調整することができない。導電フック92の姿勢を調整するために、ネジ止めを緩めると、接触不良が生じ、メッキの膜厚調整を適切に行えないなどメッキの品質に悪影響を及ぼす。また、導電フック92の抜け落ち、被メッキ物96の落下につながり、回収に手間と時間を要するばかりか未回収物は不純物の混合としてメッキの品質への影響という問題が生じ得る。
【0005】
メッキ用ハンガーは、いかに多くの被メッキ物を互いに非接触状態で引っ掛けてメッキ液に浸漬できるかが重要である。ひとつのメッキ用ハンガーに引っ掛けられる被メッキ物の数が、単位時間内にメッキできる被メッキ物の個数、すなわちメッキ処理の効率を特定するからである。導電ロッド91の定位置に導電フック92を連結する構造では、導電フック92の姿勢や位置を調整、変更できず、被メッキ物96の形状や大きさが同じまたは異なる、もしくはこれらが混在するなど多様な場合に対応して、多数の被メッキ物96を非接触状態に引っ掛けることはできない問題もある。
【0006】
本発明は、さらに以上の欠点を解消することを目的として開発されたもので、その一目的は、単純な構造で、導電フックの交換、補修が容易に行え、導電フックの姿勢や位置を調整可能で、汎用性が高く、かつ能率よくメッキ処理できるメッキ用ハンガーを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
本発明の第1の側面に係るメッキ用ハンガーは、メッキ用の電極に脱着自在に電気接続される接続部を有する導電ロッドと、導電ロッドに連結されて被メッキ物を脱着自在に引っ掛ける複数の導電フックと、導電ロッドに連結されて、導電フックを導電ロッドに連結するフック連結部と、導電フックをフック連結部に所定の位置及び姿勢で固定する第1固定具とを備えている。このメッキ用ハンガーは、導電フックが、フック連結部から脱着自在であって、かつ、第1固定具でフック連結部に固定された状態で、導電ロッドに電気接続されてなる。以上のメッキ用ハンガーは、単純な構造で、導電フックの交換、補修が容易に行え、導電フックの姿勢や位置を調整可能で、汎用性が高く、かつ能率よくメッキ処理できる特長がある。導電フックが、フック連結部から脱着自在であって、破損した導電フックの交換を行え、補修が必要な導電フックだけをフック連結部から外して容易に補修できるからである。また、被メッキ物の形状に合わせて導電フックを選択、交換でき、フック連結部と第1固定具で導電フックを所定の位置及び姿勢で連結固定でき、多様な被メッキ物の形状、個数などに対応できるからである。
【0008】
本発明の第2の側面に係るメッキ用ハンガーは、上記に加え、フック連結部が、導電フックを挿入してなる筒状であり、または筒状部を有し、かつ、筒状または筒状部から液を流出する流出孔を有し、導電フックがフック連結部に挿通されて、所定の位置及び姿勢でフック連結部に連結できる。以上のメッキ用ハンガーは、単純な構造で、被メッキ物を安定的に保持して、姿勢や位置を調整でき、能率よくメッキ処理できる特長がある。導電フックをフック連結部の筒状または筒状部に挿通して保持できるからである。また、筒状または筒状部のフック連結部が液を流出させる流出孔を有し、水洗工程でメッキの品質に影響し得る前処理液、メッキ液を流れ落として残留量を少なくして、メッキ不良を抑制できるからである。
【0009】
本発明の第3の側面に係るメッキ用ハンガーは、上記の第2の側面に加え、導電フックが、フック連結部の筒状内または筒状部内に隙間を空けてフック連結部の所定の位置に固定され、隙間を流出孔に連通できる。以上のメッキ用ハンガーは、フック連結部の内側面と導電フックの外側面との間の隙間が流出孔に連通することで、水洗工程でメッキの品質に影響し得る前処理液、メッキ液を流れ落として残留量を少なくして、メッキ不良を抑制できる。
【0010】
本発明の第4の側面に係るメッキ用ハンガーは、上記のいずれかに加え、第1固定具がフック連結部を貫通して導電フックを押圧する止ネジにできる。以上のメッキ用ハンガーは、被メッキ物を安定して保持できる特長がある。このメッキ用ハンガーは、導電フックを導電ロッドの所定の姿勢や位置に確実に固定しながら、電気的接触不良を防止できる。それは、第1固定具がフック連結部を貫通して押圧する止ネジとすることで、止ネジの先端部で導電ロッドを強く押圧できるからである。
【0011】
本発明の第5の側面に係るメッキ用ハンガーは、上記に加え、フック連結部が、導電フックを挿入してなる筒状であり、または筒状部を有し、止ネジが筒状のフック連結部に設けてなる雌ネジ孔にねじ込まれて導電フックを押圧して、導電フックをフック連結部の所定の位置及び姿勢に固定できる。以上のメッキ用ハンガーは、導電フックをフック連結部に固定しながら、確実に導電ロッドとの導電状態を確保できる。それは、筒状のフック連結部に設けられた雌ネジ孔に止ネジをねじ込んで導電フックを押圧する状態で、導電フックとフック連結部とが締結されるからである。止ネジをフック連結部の雌ネジ孔にねじ込むことで止ネジとフック連結部とが螺合し、この状態で止ネジが導電フックに接する。これにより、止ネジからフック連結部を介して導電フックに導電ロッドから導電される。また、止ネジをフック連結部の雌ネジ孔にねじ込み導電フックを押圧すると、止ネジの対向側において導電フックとフック連結部とが接することで、フック連結部からも導電フックへと導電する。止ネジとフック連結部との各々から導電される導電フックは、確実に被メッキ物を導電状態とすることができる。
【0012】
本発明の第6の側面に係るメッキ用ハンガーは、上記の第5の側面に加え、さらに、フック連結部に連結されたネジ受け部を有し、止ネジが、ネジ受け部及びフック連結部に設けてなる雌ネジ孔にねじ込まれて導電フックを押圧して、導電フックをフック連結部の所定の位置に固定できる。以上のメッキ用ハンガーは、導電フックをフック連結部により安定的に固定しながら、より確実に導電ロッドとの導電状態を確保できる。それは、筒状のフック連結部に設けられた雌ネジ孔に加えてフック連結部に連結されたネジ受け部にも止ネジをねじ込んで導電フックを押圧する状態で、導電フックとフック連結部とが締結されるからである。また、止ネジとネジ受け部が連結されたフック連結部の各々から導電される導電フックは、より確実に導電ロッドとの導電状態を確保できるからである。
【0013】
本発明の第7の側面に係るメッキ用ハンガーは、上記のいずれかに加え、導電フックを可撓性の金属線にできる。以上のメッキ用ハンガーは、導電フックの姿勢や位置を調整可能で、能率よくメッキ処理できる特長がある。被メッキ物の形状に応じた最適な形状の導電フックを使用できる。導電フックに可撓性の金属線を使用することで、導電フックを所定の形状に変形できるからである。複雑な形状や特殊な形状の被メッキ物でも、導電フックを被メッキ物に応じて変形させることができるので、被メッキ物をより最適な状態で保持することができ、さらには導電状態を確保できる。また、導電フックを導電ロッドに固定した状態においても、導電フックの形状を変えることができる。これは、被メッキ物の引っ掛け作業中に、作業者が被メッキ物の形状に合わせて導電フックの形状を適宜調整できる。よって、引っ掛け作業をスムーズに行うことができる。さらにまた、導電フックが変形することで、種々の形状の被メッキ物を一つのメッキ用ハンガーに同時に引っ掛けることができ、能率良くメッキ処理できる。
【0014】
本発明の第8の側面に係るメッキ用ハンガーは、上記のいずれかに加え、さらに、導電フックを導電ロッドの軸方向に移動自在で、かつ水平面内で回転自在に連結してなる連結台と、連結台を導電ロッドの所定の位置に固定する第2固定具とを備えることができる。導電フックが、連結台を介して、導電ロッドの上下位置と水平面内における回転位置とが調整され、第2固定具を介して所定の位置及び姿勢に固定され、なおかつ、導電フックが導電ロッドに固定される状態において、導電フックが導電ロッドに電気接続されてなる。以上のメッキ用ハンガーは、種々の形状の被メッキ物を最大個数で非接触状態に引っ掛けることができ、かつ、導電フックの補修交換が容易に行え、効率よくメッキ処理できる。導電フックが、連結台とフック連結部を介して所定の位置及び姿勢に調整されて、各々第1固定具と第2固定具で導電ロッドに導電状態で固定できるからである。導電フックは、様々な形状、異なる形状の被メッキ物に広く対応でき、特定の被メッキ物の専用としても使用でき、被メッキ物を最大個数で非接触状態に引っ掛けることができる。また、導電フックがフック連結部から脱着自在であって、連結台も導電ロッドから脱着自在であり、交換補修、整理保管など必要に応じた対応を選択できるからである。
【0015】
本発明の第9の側面に係るメッキ用ハンガーは、上記に加え、連結台が導電ロッドを挿通してなる筒状で、第2固定具が止ネジであって、止ネジが筒状の連結台に設けてなる雌ネジ孔にねじ込まれて導電ロッドを押圧して、連結台を導電ロッドの定位置に固定することができる。以上のメッキ用ハンガーは、導電フックを、導電ロッドに固定しながら確実に導電状態とすることができる。それは、筒状の連結台に設けられた雌ネジ孔に止ネジをねじ込んで導電ロッドを押圧する状態で、連結台と導電ロッドとが締結されるからである。止ネジを連結台の雌ネジ孔にねじ込むことで止ネジと連結台とが螺合し、この状態で止ネジが導電ロッドに接する。これにより、止ネジを介して導電ロッドから導電フックへと導電される。また、止ネジを連結台の雌ネジ孔にねじ込み導電ロッドを押圧すると、止ネジの対向側において連結台と導電ロッドとが接するようになり、連結台からも導電フックへと導電する。止ネジと連結台との各々から導電される導電フックは、より確実に被メッキ物を導電状態とすることができる。
【0016】
本発明の第10の側面に係るメッキ用ハンガーは、上記の第9の側面に加え、さらに、連結台に連結されたネジ受け部を有し、止ネジが、ネジ受け部及び連結台に設けてなる雌ネジ孔にねじ込まれて導電ロッドを押圧して、連結台を導電ロッドの定位置に固定できる。以上のメッキ用ハンガーは、連結台を導電ロッドにより安定的に固定しながら、より確実に導電ロッドとの導電状態を確保できる。それは、筒状の連結台に設けられた雌ネジ孔に加えて連結台に連結されたネジ受け部にも止ネジをねじ込んで導電ロッドを押圧する状態で、連結台と導電ロッドとが締結されるからである。また、止ネジとネジ受け部が連結された連結台の各々から導電され、より確実に導電ロッドとの導電状態を確保できるからである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態にかかるメッキ用ハンガーを示す概略斜視図及び要部拡大斜視図である。
【
図2】メッキ用ハンガーの概略要部拡大断面図である。
【
図3】変形例にかかるメッキ用ハンガーを示す部分拡大斜視図である。
【
図4】
図1に示すメッキ用ハンガーを使用したメッキ装置の概略断面図である。
【
図5】従来のメッキ用ハンガーを使用したメッキ装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一もしくは同等の部分又は部材を示す。さらに以下に示す実施形態は、本発明の技術思想の具体例を示すものであって、本発明を以下に限定するものではない。また、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また、一の実施の形態、実施例において説明する内容は、他の実施の形態、実施例にも適用可能である。また、図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。
(実施形態1)
【0019】
本発明のメッキ用ハンガー100は、主として電気メッキ用の治具として利用される。電気メッキには、一般的に引っ掛け式やラック式と呼ばれる静止式メッキやバレル式メッキ等がある。静止式メッキは、被メッキ物を治具で保持した状態で、治具をメッキ用の電極に吊り下げてメッキ液に浸漬して液中で通電させ、被メッキ物をメッキ処理する。本発明のメッキ用ハンガー100は、この静止式メッキの治具として利用される。ただし、本発明のメッキ用ハンガー100は、被メッキ物を保持し、メッキ液中に浸漬してメッキ処理を行う種々のメッキ方法、例えば、無電解メッキ等にも利用できる。以下、本明細書では、メッキ用ハンガー100を静止式メッキの治具として使用する場合について詳述する。
【0020】
図1及び
図2は、本発明の実施形態1にかかるメッキ用ハンガー100を示している。
図1に示すメッキ用ハンガー100は、メッキ用の電極41に電気接続する接続部1Bを上部に有する導電ロッド1と、導電ロッド1に連結されて被メッキ物50を脱着自在に引っ掛ける複数の導電フック10と、導電フック10を所定の位置及び姿勢で導電ロッド1に連結するフック連結部20と、導電フック10をフック連結部20に所定の位置及び姿勢で固定する第1固定具22と、導電フック10を導電ロッド1の軸方向に移動自在で、かつ水平面内で回転自在に導電ロッド1に連結する連結台30と、連結台30を導電ロッド1の定位置に固定する第2固定具32とを有する。導電ロッド1に固定された導電フック10は、導電ロッド1に電気接続される。
(導電ロッド1)
【0021】
導電ロッド1は、メッキ用の電極41に電気接続し、固定される導電フック10に導電する部材である。導電ロッド1は、導電性を有する金属材で形成している。例えば、ステンレスや鉄、銅、銅合金等である。
図1に示す導電ロッド1は、棒状のロッド本体1Aと、ロッド本体1Aの上部に設けたメッキ用の電極41に電気接続される接続部1Bとを有する。ロッド本体1Aは、所定の長さに形成した円柱状または円筒状の棒材である。ただし、ロッド本体は水平断面視において楕円状や多角形状としても良い。導電ロッド1は、後述する連結台30を軸方向に移動でき、かつ水平面内で回転自在にロッド本体1Aに連結できる形状であって、第2固定具32で連結台30を所定の位置に固定でき、導電フック10を導電状態にできる形状であれば良い。
【0022】
また、ロッド本体1Aは、下方または下端側に留め具2を設けている。留め具2は、導電ロッド1に連結された連結台30の脱落を防止する部材である。また、図示しないが、留め具は、ロッド本体を筒状など内部が空洞である場合において、キャップ、蓋などとして、ロッド本体の内部へのメッキ液の侵入を防止することもできる。
図1に示す留め具2は、ロッド本体1Aの外径よりも大きく、さらに、後述する連結台30の内径よりも大きな外径を有するワッシャーをロッド本体1Aの下端付近に固定する。留め具2は、導電ロッド1から連結台30の脱落を防止することができれば固定方法や構造は限定されず、例えば、溝や段差を設けて嵌め込み、ロッド本体の外径や内径に形状・大きさなどを合わせて嵌め込み、ネジ止めなどを使用できる。また、留め具2は省略してもよい。一方で、ロッド本体1Aは、上端側に連結片1Cを固定している。
図1に示す導電ロッド1は、板状の連結片1Cを介してロッド本体1Aと接続部1Bとを連結している。
【0023】
接続部1Bは、メッキ用の電極41に脱着自在に連結されて、メッキ用ハンガー100全体を吊り下げ支持すると共に、導電ロッド1をメッキ用の電極41に電気接続している。
図1に示す接続部1Bは、所定の厚みを有する平板の一方の端部を湾曲し、側面視において逆J字状に形成している。平板の湾曲部が、メッキ用の電極41に連結する取り付け部である。また、接続部1Bは、平板の他方の端部を、ロッド本体1Aに固定された連結片1Cに連結している。これにより、ロッド本体1Aと接続部1Bとが連結される。さらに、図に示す接続部1Bは、板バネ3を設けている。板バネ3は、導電ロッド1をメッキ用の電極41に確実に電気接続する。導電ロッド1は、接続部1Bを介してメッキ用の電極41に懸架され、吊り下げ姿勢に配置される。この時、接続部1Bに設けた板バネ3が、電極を弾性的に押圧するのでより確実に導電ロッド1を導電状態にできる。また、板バネ3は、電極に懸架した導電ロッド1の落下防止機能も有する。ただし、板バネ3は必ずしも設けずとも良い。
【0024】
図1に示す導電ロッド1は、ロッド本体1Aと接続部1Bとを別部材としている。別部材とすることで、経年劣化や落下等で導電ロッド1が損傷した場合、損傷した部分のみを取り替えることができる。導電ロッド1全体を取り替える必要が無いので、導電ロッド1を安価にメンテナンスできる。また、被メッキ物50の仕様等でロッド本体1Aの形状を変更する場合においては、ロッド本体1Aを容易に取り替えられるので便利に使用できる。ただし、導電ロッドは、ロッド本体と接続部とを一体構造としても良い。
【0025】
図に示す導電ロッド1は、ひとつの接続部1Bに対して、1本のロッド本体1Aを直線状とする。ただし、図示しないが、ひとつの接続部に対して複数本のロッド本体としたり、複数の接続部に対して1本のロッド本体としたり、複数の接続部に対して複数本のロッド本体とするなど、接続部とロッド本体が同数でない、もしくは同数として組み合わせにより、メッキ用ハンガーまたはラックとすることもできる。
(導電フック10)
【0026】
導電フック10は、導電ロッド1に連結され、被メッキ物50を脱着自在に引っ掛けて定位置に保持して通電するための部材である。導電フック10が導電ロッド1に電気接続されて、導電フック10に引っ掛けられた被メッキ物50が通電される。
図1及び
図2に示す導電フック10は、導電性を有する金属製で、側面視において略S字状に折曲した棒材とする。図の導電フック10の形状は、一例として略S字状に折曲したものを示す。図の導電フック10は、一方端から折曲片を第一折曲片10A、第二折曲片10B、第三折曲片10Cとする。導電フック10の第一折曲片10Aの先端側が後述するフック連結部20に連結されて、第一折曲片10Aから下斜め方向に折り曲げられ第二折曲片10Bが連結され、さらに第二折曲片10Bから上斜め方向に折り曲げられ第三折曲片10Cが連結される。
図1に示すように、例えば、吊り下げ孔が設けられた被メッキ物50は、第二折曲片10Bと第三折曲片10Cの間に吊り下げ姿勢で保持される。この場合、第三折曲片10Cは被メッキ物50の落下防止用の返しとなり、そのために必要な長さ、角度などとされる。被メッキ物50の形状によっては、第三折曲片10Cの先端部に被メッキ物50を被せるように引っ掛けて、保持することもできる。図は一例であって、導電フック10の形状、長さ、構成、被メッキ物50の引っ掛け保持態様、連結態様などを限定しない。導電フック10は、例えば、第二折曲片10Bを略水平姿勢に配置でき、第三折曲片10Cを傾斜姿勢又は垂直姿勢に配置でき、側面視においてL字状に折曲した棒材にもでき(後述する
図3A)、また1か所で折曲し第一及び第二折曲片にでき、複数か所で折曲でき、様々な方向に折曲でき、さらにまた折曲以外に接合して所定の形状にできる。
【0027】
導電フック10は、引っ掛ける被メッキ物50の形状やサイズなどに応じた種々の形状とすることができる。
図1に示す導電フック10の形成を略S字状にするが、形状、曲げ角度、方向はもちろん、長さ、大きさ、太さ、厚み、直径、構成、折り曲げ、連結態様などを限定するものではない。例えば、導電フック10は、側面視において、L字状、J字状や半円状、コイル状、直線、曲線、またはこれらを組み合わせたものなどを使用してもよい。さらに、1つの導電フック10に1または複数の被メッキ物50を引っ掛けることができる。例えば、複数の第三折曲片10Cを設けることができ(後述する
図3D及び
図3E)、複数の折り返しや凹凸などを設けてもよい。第三折曲片10C、折り返し、凹凸などの高さや形状は適切な範囲内とする。導電フック10は、被メッキ物50を引っ掛けやすい、支持しやすい形状が好ましく、また外れたり、落下したりしにくい形状が好ましい。さらに被メッキ物50の取り外しが容易な形状がなお好ましい。被メッキ物50が軽量物の場合などはより簡易なものにでき、また被メッキ物50が小物の場合、多数引っ掛けられるよう複数の返しを設けた形状などにもできる。さらに、
図1に示す導電フック10は、円柱状の棒材を使用する。図示しないが、金属板、例えば幅狭の平板等を使用しても良い。導電フック10は、被メッキ物50を確実に保持できる種々の形状、長さ、サイズ、厚み、太さ、直径などにできる。
【0028】
導電フック10の形状、大きさ、長さなどは、被メッキ物50の形状のみならず、被メッキ物50の保持態様、さらには後述するフック連結部20や連結台30の形状、導電フック10が連結、固定される方向、角度など連結態様、またさらには使用するメッキ槽、水洗槽など使用態様、工程など外部的要因などに合わせて適切に定める。導電フック10は様々な形状、態様として、被メッキ物50を引っ掛け、吊り下げ、支持でき、後述するように被メッキ物50の形状、サイズなどに合うものに導電フック10を容易に交換できる。また、図示しないが、導電フックは、メッキ用ハンガーの上下動、メッキ液などに浸漬など各工程において、被メッキ物が揺れ、スライド、移動などで位置や姿勢が必要以上に変化、揺れることを制限でき、また落下防止する形状や部位を設けることもできる。その方法は、導電フックの形状や被メッキ物の保持態様などに応じて様々な工夫が可能であり、例えば、導電フックに凹凸やフック、段差、止め具などを設けることができ、また挟んだり、広げたり、また、折り返しなどを設けることもでき、さらにまた略円弧状、略楕円状、略四角形状、略三角形状など様々な形状のリング状、囲み形状として、被メッキ物を差し入れたり、引っ掛けたり、吊り下げたり、様々な態様で保持できる。被メッキ物の形状や保持態様に合わせた形状としたり、複数で支持保持したり、バネやコイル状の弾性力を利用したり、引っ掛ける部分とは別に支持保持する部分を設けることができ、滑り止め用の材質、異なる材質としたり、コーティングを施すなどにより、また、1本の導電フックで複数の被メッキ物を引っ掛け、また保持できる形状にもできる。1本の導電フックの一方向に複数の被メッキ物を引っ掛け、また保持できる複雑な形状、例えば、上方向や片側水平方向に複数の引っ掛けを設けることができ、同様に、二方向、上下方向や水平方向の両側に複数の引っ掛けを設けることができる。また、上下及び両側水平方向以外の斜め方向に複数の引っ掛けを設ける、交互に異なる方向に複数の引っ掛けを設ける、一定の角度や間隔などで異なる方向に複数の引っ掛けを設けるなど、被メッキ物及びその保持態様に応じて様々な形状などにできる。さらに、導電フック10は、被メッキ物の位置や姿勢を保持し、また被メッキ物の揺れや落下を可及的に抑止、防止する形状、部分を設けることもできる。いずれの場合においても、導電フック10は、導電ロッド1に確実に電気接続されて、被メッキ物50を安定的に引っ掛け、保持できる強度、太さ、材質などとする。
【0029】
また、導電フック10は、可撓性の金属線とすることができる。可撓性とは、被メッキ物50の重量に対しては変形せずに吊り下げできる硬さを有しながら、手で変形できる程度の柔軟性を有する性質を示すものとする。可撓性の金属線を使用した導電フック10は、形状を変形することで様々な調整をして便利に使用できる。例えば、導電フック10に被メッキ物50を引っ掛ける前はもちろん、導電フック10に被メッキ物50を引っ掛けた状態でも、被メッキ物50同士が接触する場合に、導電フック10を変形させることで、被メッキ物50同士の接触を回避できる。さらに、一般的なメッキ用ハンガーは、一種類の被メッキ物50を複数引っ掛けて使用する専用品であることが一般的であるが、導電フック10を変形できるとで、当初と異なる形状の被メッキ物50や、異なる形状の数種類の被メッキ物50を一つのメッキ用ハンガー100に引っ掛けることも可能である。このように、導電フック10を導電ロッド1に固定した状態においても、導電フック10の形状を被メッキ物50に応じて変形できるので、多数の被メッキ物50を、互いに接触することなく導電フック10に引っ掛けることができる。ただし、導電フックは、可撓性を有する金属材料としても良い。例えば、銅やアルミニウム等の金属材料で導電フック10を形成して可撓性をもたせても良い。
【0030】
さらにまた、導電フック10は、樹脂製としても良い。例えば、導電フック10の表面を部分的に樹脂で覆う他、樹脂に金属等の無機導体を練り込むことができ、また、樹脂の表面に導体の薄膜を形成して導電性をもたせた導電性樹脂等が使用できる。導電フック10は、被メッキ物50を導電状態にできる、導電性を有する材料とすることができる。
【0031】
本明細書において、連結されるとは、直接的に連結される場合のほか、間接的に連結される場合をも含むものとする。
図1及び
図2に示す導電フック10は、導電ロッド1に連結されてなる。図に示す導電フック10は、フック連結部20及び後述する連結台30を介して、導電ロッド1に連結されてなる。以下においても同様である。
(フック連結部20、第1固定具22)
【0032】
フック連結部20は、導電フック10を導電ロッド1に連結する部材である。導電フック10は、フック連結部20から脱着自在に連結される。フック連結部20があることで、フック連結部20より先端の部分である、導電フック10だけを脱着自在にできる。導電フックの導電ロッドへの固着が、半田付けや溶接、カシメが施された従来のメッキ用ハンガーの場合、導電フックだけを脱着自在にできず、また導電フックの位置を変更、調整できず、または制限されることから、各々の被メッキ物の専用品となり、また異なる形状の被メッキ物に使い回しをしても、多数の被メッキ物を効率よく引っ掛けることができず、多数の被メッキ物を非接触状態で引っ掛けることができず、メッキ処理に非効率、ひいては高コスト化の原因となる。また多数の複雑な形状の導電フックの整理保管に手間がかかり、またそのため保管スペースも必要となる問題も生じる。さらに、一部の導電フックに破損などが生じた場合に、破損した導電フックのみを交換できず、また多数の導電フックが邪魔になり補修に手間と時間がかかるなど様々な問題が生じ得る。
図1及び
図2に示すメッキ用ハンガー100は、導電フック10が、フック連結部20から脱着自在であり、後述するように回動自在にフック連結部20に連結されることから、必要に応じて形状の異なる導電フック10に容易に交換できる。また導電フック10を回動して姿勢や位置を変更、調整して様々な形状の被メッキ物50に対応でき、後述する連結台30を導電ロッド1から外すことなく破損が生じた導電フック10のみを取り外して、交換や補修ができる。さらにまた導電フック10や後述する連結台30を取り外して整理整頓、保管ができる、省スペースで保管できる、使用頻度に応じた形状、態様で保管できるなど、被メッキ物50の形状、大きさ、個数などに応じた多様な対応が可能で、メッキ用ハンガーの汎用性を広げ、また、作業及び整理上の能率性、効率性を向上し、省スペース、低コスト化に資する。
【0033】
フック連結部20は、導電性を有する金属製の筒状形状とする。また、フック連結部20は、筒状形状を有することもできる。筒状とは、細長い棒状で、中心がくり抜かれた形状のもので、外側及び内側の断面形状を限定するものではない。
図1及び
図2に示すフック連結部20は形状を、円筒状とする。ただし、角筒状、楕円などの円筒状以外の形状としてもよい。例えば、筒状の外側面に平面部があることで雌ネジ孔を垂直に設けやすく、垂直に止めネジが導電フックを押圧し易い。また、筒状の内側面が導電フック10の棒状に合った曲面形状であることで接触面積を大きくして、安定して保持固定でき、通電状態を確保できるなどのメリットがある。
【0034】
フック連結部20の筒状形状は、側面が360度円周全部を連続して覆われているものに限定されない。例えば、筒状の側面にスリットや開口、後述する流出孔21などを設けることができ、またC型チャンネルの形状など側面が部分的に不連続な形状を用いてもよい。筒状形状は、少なくとも内部がくり抜かれた空洞部を有し、または対向する側面で両側から挟める形状、もしくは側面が180度以上の範囲で連続して導電フック10を囲む形状であれば足りる。図示しないが、例えば、フック連結部は、筒状の側面が180度以上の範囲で導電フックを囲む形状にすることで、第1固定具が片側から貫通して導電フックを反対側に押圧して固定する構造にできる。筒状のフック連結部20に、導電フック10が挿入されて連結し、第1固定具22により固定される。
図1及び
図2において、フック連結部20は、内形を平面視円形とし、導電フック10の水平断面視における外形と同形状とする。フック連結部20の内径は、導電フック10を挿入し、導電フック10を回転できる程度の大きさとする。フック連結部20の筒状は、導電フック10を挿入して確実に支持し、被メッキ物50の形状に応じた最適な個数を引っ掛けた導電フック10を導電ロッド1に連結できる、例えば5mm~15cmの長さとする。導電フック10をフック連結部20に挿入するとは、導電フック10をフック連結部20の筒状に差し込むことであり、導電フック10の先端が筒状の底面、連結部材25、連結台30などに連結する部分に係止する場合の他、挿通、貫通する場合も含むものとする。
【0035】
筒状のフック連結部20とは、フック連結部20自体を筒状形状(筒状部20A)にできるほか、フック連結部20が筒状に形成された筒状部20Aを有することも含むものとする。つまり、フック連結部20は、部分的に筒状を形成でき、筒状以外の部分、例えば筒状部20Aを連結台30や導電ロッド1に連結する連結部材25を有することができる。後述する
図3Fのフック連結部20は、筒状部20Aと連結部材25とを備え、連結部材25は筒状部20Aを連結台30に連結する。筒状部20Aとそれ以外の部分とは、別部材を連結でき、また一体とすることもできる。
【0036】
筒状のフック連結部20は、導電フック10を差し込むことで容易に連結でき、筒状で安定的に保持でき、導電フック10の姿勢や位置を調整することも容易である。筒状のフック連結部20に、棒状の導電フック10を挿入することで、導電フック10は回転自在にフック連結部20に連結される。被メッキ物50を引っ掛ける様々な突出形状の導電フック10を筒状内で回転させるだけで、回転方向に導電フック10の位置や姿勢を調整して、被メッキ物50を引っ掛ける位置や姿勢を変更、調整できる。フック連結部20の筒状内の導電フック10の回転方向は、フック連結部20の筒状中心軸(内径)の向きにより定まる。導電フック10の位置や姿勢を簡単に調整できることで、従来の特定の被メッキ物用の専用品であるメッキ用ハンガーよりも対応できる範囲を拡大し、汎用性を向上できる。例えば、当初と異なる被メッキ物50に対応でき、異なる形状やサイズの被メッキ物50にひとつのメッキ用ハンガー100で対応でき、また、異なる形状や大きさの被メッキ物50が混在している場合でも、被メッキ物50の形状、大きさなど必要に応じて導電フック10の位置や姿勢を調整して、被メッキ物50同士を非接触状態として、かつ、無駄なスペースや導電フック10を少なくして、多数の被メッキ物50を効率よく引っ掛けて対応でき、ひとつのメッキ用ハンガー100の汎用性を向上できる。
【0037】
導電フック10は、フック連結部20から脱着自在である。差し込まれた導電フック10を筒状のフック連結部20を引き抜くだけで容易に取り外すことができる。止ネジ22aの第1固定具で固定されている場合は止ネジ22aを緩めることで、差し込まれた導電フック10を引き抜くことができる。導電フック10が容易に脱着自在であることで、形状の異なる導電フック10に交換して、被メッキ物50の形状、個数に合わせて引っ掛ける位置を変更、調整できる。また、破損などが生じた導電フック10だけを交換でき、破損などが生じた導電フック10だけを取り外して容易に補修することができる。導電フック10は、フック連結部20から脱着自在で、かつ、回転自在にフック連結部20に連結されることで、より多様な被メッキ物50への対応が可能となって、メッキ用ハンガー100の汎用性を向上できる。
【0038】
筒状のフック連結部20に、導電フック10を挿入することで連結し、第1固定具22で導電状態に固定される。したがって、フック連結部20は、導電フック10の水平断面視における外形と同形状の内形を有するものが好ましい。フック連結部20と導電フック10との接触面積が大きくなり、安定的に固定でき、より確実に電気接続できるからである。円筒状のフック連結部20の内径形状を、導電フック10が円柱状の棒材に合わせることで、導電フック10を筒状内で回転させても、いずれの位置においても同じような接触態様でフック連結部20と導電フック10が接触でき、さらに止ネジ22aで押圧できるので、導電フック10の容易に姿勢及び位置を微調整でき、安定的に固定できるからである。ただし、フック連結部20の内形は、導電フック10の水平断面視における外形と異なる形状にすることもでき、第1固定具22で導電フック10をフック連結部20に固定可能であれば良い。図示しないが、例えば、フック連結部及び導電フックの各々の接触面が合わない異なる形状とし、または合わない部分を設けることで、導電フックが固定された状態で所定の隙間が確保され、流出孔につながる通路として利用することもできる。フック連結部の筒状形状を円筒に、導電フックの形状を棒状に限定するものではなく、図示しないが各々それ以外の異なる形状にできる。例えば、導電フックまたはフック連結部のいずれか又は両方に、凹凸、欠け、突起などお互いにかみ合う、もしくは逆にかみ合わない部分を有する特定の形状にすることで、所定の位置で導電フックの水平姿勢や被メッキ物を掛ける位置や姿勢、角度などを保持でき、また姿勢や位置の調整範囲を規定し、段階的な調整に用いるなどできる。
【0039】
第1固定具22は、導電フック10を所定の位置及び姿勢でフック連結部20に固定する。フック連結部20に挿入された導電フック10は、第1固定具22でフック連結部20に導電状態で固定される。
図1及び
図2に示す第1固定具22は、導電性を有する金属製の止ネジ22aとする。止ネジ22aの先端部が導電フック10を強く押圧し、その対向側で導電フック10の外周面をフック連結部20の内周面に接触させて、導電フック10を安定的に保持固定できる。ただし、図示しないが、第1固定具は、止ネジ以外でも導電フックを所定の位置及び姿勢でフック連結部に固定できるものであればよい。
【0040】
止ネジ22aは、先端部を先細り形状にできる。止ネジ22aは、先端部で導電フック10を押圧するので、先細り形状とすることで、圧力的により強く導電フック10を押圧することができる。これにより止ネジ22aは、導電フック10を確実にフック連結部20に固定できると共に、止ネジ22aと導電フック10を介した導電ロッド1との電気的接触不良を防ぐことができる。また、止ネジ22aは、先端部の先端面を平面状としても良い。先端面を平面状にした止ネジ22aは、導電フック10を押圧した際に先端面と導電フック10との接触面積が大きくなり、とくに、金属製の止ネジ22aにおいては、低抵抗な状態で電気接続できる。ただし、止ネジ22aは、先端部で導電フック10を導電状態に押圧することができれば形状は問わない。止ネジ22aの頭部も回転してねじ込みできれば足り、形状、態様などは限定されない。図示しないが、外形を六角形などの多角形とする角柱状、又は先端面に非円形穴、例えば十文字、一文字、さらにイモネジや、六角レンチに対応した形状などを設けることができる。また、手で締め易いようにツマミなどを設けることもできる。またワッシャ、スプリングワッシャなどを介在させてもよい。
【0041】
導電フック10は第1固定具22とフック連結部20の間に配置されて、第1固定具22が導電フック10をフック連結部20に押圧して固定する。フック連結部20を筒状という単純な構造として導電フック10を挿入することで、導電フック10を第1固定具22とフック連結部20の間に配置できる。フック連結部20を第1固定具22が導電フック10を押圧して接触する部分の形状を、押圧される側の導電フック10の形状に合わせることができ、また、筒状のフック連結部20の内径と導電フック10の外径の差を導電フック10が回動自在で、かつ導電状態で安定的に固定できる適切な範囲に定めることで、導電フック10の姿勢や位置を確認、調整しながら、第1固定具22が導電フック10をフック連結部20に押圧して固定できる。
【0042】
図2に示すフック連結部20は、雌ネジ孔24を設ける。図のフック連結部20は、筒状の側面(断面図において下側の側面)に対して垂直方向に貫通された雌ネジ孔24を設ける。雌ネジ孔24の配置により導電フック10を押圧する位置を特定できる。フック連結部20の押圧面側に設けられた雌ネジ孔24に、止ネジ22aがねじ込まれて、雌ネジ孔24を貫通して、止ネジ22aの先端が筒内に挿入された導電フック10の下側外側面を押圧し、さらに反対側の固定面側において導電フック10の上側の外側面とフック連結部20の上側の内側面が接することで、導電フック10がフック連結部20に所定の姿勢及び位置で導電状態で固定される。図示しないが、雌ネジ孔を複数設けることができ、また異なる方向から止ネジで導電フックを押圧固定することもできる。
【0043】
図に示すフック連結部20は、導電フック10を挿入してなる筒状で、第1固定具22の止ネジ22aが、筒状のフック連結部20の側面に設けてなる雌ネジ孔24にねじ込まれて筒内に挿入された導電フック10を押圧して、導電フック10をフック連結部20の所定の位置及び所定の姿勢で固定する。第1固定具22を止ネジ22aとすることで、導電フック10をフック連結部20に安定的に固定できる。それは、止ネジ22aをねじ込んで導電フック10を強く押圧して、フック連結部20と導電フック10とのガタつきや隙間をなくし、フック連結部20の雌ネジ孔24に止ネジ22aをねじ込んで導電フック10を強く押圧する状態で、導電フック10とフック連結部20とを締結できるからである。図に示すように、円柱状の棒状の導電フック10の外側形状が、フック連結部20の筒状の内側形状に合うことで面的また複数か所で接触し安定的に保持固定できる。
図2の断面図において、筒状部20Aの内側を、止めネジ22aで押圧する押圧面(図において下側)と、導電フック10が接して固定される固定面(図において上側)とする。
【0044】
また、第1固定具22を止ネジ22aとすることで、導電フック10を導電ロッド1に確実に導電状態にできる。金属製の止ネジ22aでフック連結部20に固定された導電フック10は、止ネジ32aを介して導電ロッド1と導電状態となる。止ネジ22aをフック連結部20の雌ネジ孔24にねじ込むことで、止ネジ22aとフック連結部20とが螺合し、この状態で止ネジ22aの先端部が導電フック10に接する。これにより、止ネジ22aを介して導電フック10に導電ロッド1から導電される。また、止ネジ22aをフック連結部20の雌ネジ孔24にねじ込んで導電フック10を押圧すると、フック連結部20の固定面側(
図2において左側内面)において押圧された導電フック10と接するようになり、フック連結部20からも導電フック10へと導電する。したがって、止ネジ32aとフック連結部20との両方で導電ロッド1から通電されるので、フック連結部20に固定した導電フック10をより確実に導電状態に固定することができる。
【0045】
ただし、フック連結部20と第1固定具22(止ネジ22a)は、必ずしも両方を金属製とする必要はない。フック連結部20に固定された導電フック10は、フック連結部20と第1固定具22の何れか又は両方で、導電ロッド1に電気接続できる。フック連結部20と第1固定具22とは、導電フック10が導電ロッド1に電気接続できる範囲内において、樹脂等の絶縁材を使用しても良い。例えば、表面が絶縁材からなるフック連結部20と第1固定具22とは、その表面をメッキ工程においてメッキされるのを防止できる。
【0046】
図2に示すフック連結部20は、流出孔21を設ける。流出孔21は、メッキ槽40のメッキ液からメッキ用ハンガー100が引き上げる際や水洗工程において、フック連結部20に残留する液を流れ落とし、水洗して流出、排出させるため、フック連結部20に設けられる貫通孔、隙間、スリット、開口などである。水洗工程において、前処理液、前位液、メッキ液が流れ落とされるが、これらの液が残留して次位の異なる液中に持ち込まれ、また被メッキ物にかかると、メッキ液の組成や被メッキ物の品質に影響し得るからである。流出孔21が設けられることで、水洗工程などで前処理液、メッキ液がフック連結部20に溜まることなく、液の自重で流れ落ち、また水洗により流出させて残留量を少なくして、次位の異なる液中に搬入されるなど弊害を可及的に抑制できる。特に、フック連結部20が液の残留しやすい形状、連結構造態様の場合、前位液の残留量を減少させることが、次位のメッキ液などへの混入、メッキ不良を抑制、メッキ品質維持に影響し得るものとして重要となる。
【0047】
図2は、流出孔21をフック連結部20の下方、フック連結部20が連結台30に連結された部分の下側に設ける。図の流出孔21は、フック連結部20に導電フック10が固定された状態で、第1固定具22で押圧されて生じる隙間S1と通じる。
図2において、止ネジ22aが下側から導電フック10を押圧してフック連結部20に固定することで、押圧面側(導電フック10の下側)に導電フック20の外側面とフック連結部20の内側面との間に隙間S1が生じ、これが通路となって流出孔21に繋がっている。図において、止ネジ22a側の筒状の内側に隙間S1ができる形状、サイズにして残留液を少なくできる構造の例が示されている。この構造は、フック連結部20の内径に沿って右側底面から左側底面まで隙間S1が生じ、斜めに配置されたフック連結部20の下方の左側底面の流出孔21から液が流れ落ち、水洗されて、流出するものである。ただし、液体が流動する通路の形状、サイズ、配置などに特段の制限はない。
【0048】
流出孔21は、メッキ用ハンガー100をメッキ液から吊り上げ、また水洗工程で前処理液、前位液、メッキ液を流れ落とすことができる形状、大きさ、個数、配置、構造などであれば足り、図示された例に限定されず、また孔、穴、隙間、スリット、開口など名称を問うものでもなく、流出孔21の開口の形状も限定されない。流出孔21は、被メッキ物と共にメッキされて閉口しない、液溜まりが生じない、大きさ、形状などとする。流出孔21は、フック連結部20の配置姿勢に応じて、筒部の下面や下部など下方に設けられることが好ましい。流出孔21は、複数設けてもよい。図示しないが、複数の流出孔を設ける場合は、少なくとも1以上の流出孔をフック連結部の筒部の下面や下部など下方に設けられることが好ましい。ただし、
図2の下側底面以外に、さらに流出孔21を設けることもできる。流出孔21は、例えば、下側底面に限らず、底面付近、側面などに孔、穴、スリット、開口、欠け形状、曲面、溝、凹凸などにより、流出孔21に液を導くようにしたり、角部や先鋭部など設けて流出孔21から液が流れ落ち易い、液切れし易くしたり、流出し易くするなどにより、前位液の残留量を減少できる形状、配置、構造などにできる。
【0049】
流出孔21を設ける方法、態様も限定されない。
図2の概略断面図に示すように、まず、フック連結部20が連結台30に連結する部分において筒状の外周縁を全周溶接することなく、上側を部分的に溶接することで下側に流出孔21を設けている。さらに、フック連結部20を連結台30の外周面に対して垂直ではなく、角度を持たせて斜めに連結配置することで、メッキで塞がることのない十分な開口領域の流出孔21を確保している。このように流出孔21は、溶接部分に隙間を設け、連結角度により設けることができる他、図示しないが、例えば、ドリルで穿孔でき、また連結部分を凹凸形状にする連結態様など様々な方法で流出孔を設けることができる。また、図示しないが、例えば、C型チャンネル、コの字、C字など導電フックの囲みが不連続で一部に開口を設けることができ、また開口を下向きに配置することでも流出孔を設けることができる。
【0050】
また流出孔21とは別に、空気が流入、通気できる通気孔28を設けることもでき、通気孔28を通路、隙間S1や流出孔21に連通するように配設して、流出孔21から液の流出を促し、液の残量を減少することもできる。
図1及び
図2のように、通気孔28は筒状のフック連結部20の上方に設けることが好ましい。通気孔28は、例えば、筒状部20Aの溶接部分に隙間を設けることができ、また通気孔28を複数設け、貫通孔、開口、スリットなどにできる。
【0051】
筒状または筒状部のフック連結部20の内径よりも導電フック10の外径(直径)を小さくすることで、その差によりフック連結部20の内側面と導電フック10の外側面との間に隙間S1が形成される。筒状のフック連結部20の内側面と導電フック10の外側面との間に隙間S1が形成されるように導電フック10が、フック連結部20に連結固定され、その隙間S1が流出孔21に連通され、液体が流通できるように連なっていることで、隙間S1が通路となって流出孔21から前処理液、メッキ液を流出させ、また水洗で残留液を流し出し、流し落とすことができる。
【0052】
図2の概略断面図に示すように、まず、筒状のフック連結部20の内径よりも直径が小さい棒状の導電フック10が筒状のフック連結部20に挿入される。そして、導電フック10を所定の位置及び姿勢に調整した上で、押圧面側(図において下側)から止ネジ22aの先端部で導電フック10を押圧し、反対側の固定面側(図において上側)に寄せて、導電フック10の外側面をフック連結部20の内側面に接触させ導電フック10を固定する。その状態において、フック連結部20の筒状内部の下側に隙間S1が形成される。つまり、止めネジ22aが下方から押圧する押圧面側において、フック連結部20の内側面と導電フック10の外側面との間に隙間S1が形成される。この隙間S1が通路となって左側の流出孔21に連通する。
図2のように、隙間S1と流出孔21は、筒状部20Aの下方の左側に設けられることで、スムーズに残留液を排出できる。また図において、筒状部20Aの上方の右側に設けられた通気孔28から空気が隙間S1、通路、流出孔21に空気を流入、通気することで、残留液などの流出をスムーズにできる。筒状のフック連結部20の内径を導電フック10の外径よりも大きくするだけでなく、それ以外の態様も合わせて隙間を形成できる。図示しないが、例えば、導電フックとフック連結部のいずれか一方または双方の接触面側に凹凸、溝、スリットなどを設けることができ、導電フックとフック連結部の接触面を合わない形状とするなどにより、導電フックが固定された状態で、導電フックとフック連結部との間に所定の隙間を形成できる。止ネジによる押圧と組み合わせることもできる。
【0053】
図2のフック連結部20には、ネジ受け部23が連結固定される。ネジ受け部23は雌ネジ孔24のネジ穴の位置に合わせて配置され、止ネジ22aがネジ受け部23と雌ネジ孔24にねじ込まれて、導電フック10を押圧して固定する。
図2のネジ受け部23は、ナットがフック連結部20に溶接されたものを一例として示す。ただし、ネジ受け部23はフック連結部20に固定されて、雌ネジ孔24と共に止ネジ22aが螺合され得るものであればよく、ネジを受ける構造、態様、形状、サイズ、またフック連結部20への固定方法、態様などは特に限定されない。フック連結部20の筒状側面に設けられたネジ受け部23により、十分なネジ受け領域、範囲とネジ山数を確保して、止ネジ22aによる押圧を支持し、導電フック10を安定的に固定できる。ネジ受け部23を設けることで、フック連結部20の筒状側面の厚みを全体的に増やすことなく、止ネジ22aの押圧強度を向上して導電フック10を安定的に固定できる。ネジ受け部23は筒状側面の厚みに限定されることなく、十分なネジ受け領域を確保できる。被メッキ物50と導電フック10の重量に対応できるサイズ、太さの止ネジ22aの使用により十分な強度での締め付けと安定的な固定が可能となる。
(変形例)
【0054】
図3A~
図3Fに変形例を示す。
図1及び
図2は主としてフック連結部20と導電フック10の一例を示した。ただし、フック連結部20の形状、サイズ、構成をはじめ、フック連結部20が連結台30や導電ロッド1に連結する態様、導電フック10の形状、サイズなどはこれらの図や記載に限定されない。フック連結部20は、被メッキ物50の形状、大きさ、個数などに応じて、また、導電フック10の形状、大きさ、導電フック10が設けられる配置、本数などに応じて適切に定めることができる。また、導電フック10がフック連結部20に連結する角度や方向、フック連結部20が連結台30に連結する角度や方向などに応じて適切な形状、構成、大きさなどを定めることができる。ひとつの連結台30に対して複数のフック連結部20や筒状部20Aを設けることができる。例えば、ひとつの連結台30に対して、1本のフック連結部20(
図3A)、2本のフック連結部20(
図3B)、4本のフック連結部20(
図3C)を設けることができ、また図示しないが、これ以外の複数本のフック連結部を設けることもできる。また、フック連結部20は、連結台30の軸方向に対して垂直に連結でき(
図3A~
図3C)のほか、角度をつけて斜めに連結することもできる。例えば、フック連結部20は、連結台30に対して斜め下方向(
図3D)や、斜め上方向(
図3E、
図1及び
図2)に連結でき、また図示しないが、これ以外の方向にフック連結部を設けることができ、また複数本のフック連結部を異なる方向に設けることもできる。フック連結部20は、筒状部Aを連結台30に連結する連結部材25を有することができる。フック連結部20は、筒状部Aを直接的に連結台30に連結でき(
図3A~
図3E、
図1及び
図2)、また、連結する連結部材25を介して筒状部20Aを間接的に連結台30に連結することもできる(
図3F)。連結部材25は、導電性を有する金属性の棒状とする。連結部材25の形状、長さ、構造、連結態様などは限定されない。図示しないが、連結部材25は、例えば平板状など棒状以外も使用でき、導電フックが適切な位置や姿勢に配置され、または適切な位置や姿勢に調整されやすい範囲で形状、長さ、構造、連結態様などが適切に定められる。
(連結台30、第2固定具32)
【0055】
連結台30は、導電フック10を導電ロッド1に連結する部材である。
図1及び
図2に示す連結台30は、導電性を有する筒状の金属リングとする。連結台30は、導電ロッド1の軸方向に移動自在に、かつ水平面内で回転自在に導電フック10を導電ロッド1に連結する。
図1及び
図2に示すメッキ用ハンガー100は、導電フック10がフック連結部20及び連結台30を介して導電ロッド1に連結される。したがって、導電フック10は、フック連結部20を介してフック連結部20の筒状中心軸に回転自在に、さらに連結台30を介して導電ロッド1の軸方向に上下に移動自在で、かつ、水平面内で回転自在に、異なる三方向に空間的にその位置及び姿勢の変更、調整が可能である。これにより、被メッキ物50の形状、サイズに合わせた細かい調整により、多数の被メッキ物50を非接触状態に引っ掛け、保持できる範囲が拡大し、メッキ用ハンガーとしての汎用性をより向上できる。
【0056】
図1及び
図2に示す連結台30は、導電性を有する筒状の金属リングである。連結台30は、フック連結部20を介して導電フック10を導電ロッド1に連結固定している。図に示す連結台30は、内形を平面視円形とし、ロッド本体1Aの水平断面視における外形と同形状としている。さらに連結台30の内径は、ロッド本体1Aを挿通し、ロッド本体1Aの外周面に沿って回転できる程度の大きさとする。筒状の連結台30は、導電ロッド1を挿通することで導電ロッド1に連結され、第2固定具32で導電状態に固定される。したがって、連結台30は、ロッド本体1Aの水平断面視における外形と同形状の内形を有するものが好ましい。連結台30と導電ロッド1との接触面積が大きくなり、より確実に電気接続できるからである。ただし、連結台30の内形は、導電ロッド1との通電状態を確保でき、かつ、後述する第2固定具32でロッド本体1Aに固定可能であれば、ロッド本体1Aの水平断面視における外形と異なる形状でも構わない。
【0057】
さらに、連結台30は、導電ロッド1を挿通した状態で、筒状の連結台30自身がロッド本体1Aに対して同軸に配置されて、導電ロッド1に最大個数の導電フック10を連結できる長さに形成する。長さの長い筒状の連結台30は、導電ロッド1を挿通した状態で導電ロッド1の軸方向に対して傾倒しにくくできるが、導電ロッド1の長さに対して占有する割合も増す。したがって、連結台30は、導電ロッド1に確実に連結しながらも、被メッキ物50の形状に応じた最適な個数の導電フック10を導電ロッド1に連結できる例えば1cm~20cmの長さとしている。
【0058】
フック連結部20が連結固定された連結台30は、導電ロッド1に挿通されて、導電フック10を導電ロッド1の軸方向に移動自在に、また水平面内において回転自在に連結する。さらに
図1及び
図2に示すように、導電フック10は、筒状のフック連結部20に回動自在に連結されて、姿勢や位置が調整、変更できる。導電フック10は、異なる3方向に移動自在、回転自在で導電ロッド1に連結されて姿勢や位置を調整、変更できることで、様々な形状、異なる形状の被メッキ物50に広く対応できる。これにより、メッキ用ハンガー100を特定の被メッキ物50の専用として使用でき、また被メッキ物50を最大個数で非接触状態に引っ掛けることで、メッキ用ハンガー100の対応性の範囲を拡大して、汎用性を向上できる。
図1及び
図2のメッキ用ハンガー100は、ひとつの連結台30に対して、2本の導電フック10を、導電ロッド1に対し対称の位置、姿勢で配置して連結固定している。ただし、例えば
図3のようにそれ以外の本数、配置、姿勢などで導電フック10を連結固定しても良い。連結台30が導電ロッド1から脱着自在であり、被メッキ物50の形状や大きさに応じて、連結台30に固定する導電フック10の形状、サイズ、個数などを取り替えできる。連結台30とフック連結部20との連結位置や連結態様も限定されない。
図1及び
図2は、連結台30に筒状部20Aを直接連結するが、
図3Fのように、連結台30に筒状部20Aが連結部材25を介して間接的に連結できる。連結台30とフック連結部20を別部材として連結でき、また一体の部材とすることもできる。フック連結部20は、通電性を保持するため、例えば溶接または半田付けで連結台30に固定される。ただし、フック連結部20は、係止構造や嵌合構造、螺合構造等他の方法により連結台30に連結することもできる。またフック連結部20を連結台30から取り外し可能の構造にもできる。
【0059】
導電ロッド1を挿通した連結台30は、第2固定具32で導電ロッド1に固定される。第2固定具32は、連結台30を導電ロッド1に固定することで、導電フック10を導電ロッド1の定位置、所定の姿勢に導電状態で固定する。
図1及び
図2に示す第2固定具32は、導電性を有する金属製の止ネジ32aである。
図2の断面図において、連結台30の内側を、止めネジ32aで押圧する押圧面(図において左側)と、導電ロッド1が固定される固定面(図において右側)とする。連結台30は、押圧面側の側面に雌ネジ孔34を設ける。雌ネジ孔34は、連結台30の側面に対して垂直方向に貫通して設けられている。止ネジ32aは、雌ネジ孔34を貫通して導電ロッド1を押圧する。
図2に示すように、連結台30は、導電ロッド1を挿通した状態の筒状の連結台30の雌ネジ孔34に、止ネジ32aがねじ込まれて、押圧面側から止ネジ32aの先端で導電ロッド1の左側外側面を押圧し、反対側の固定面側で導電ロッド1の右側外側面と連結台30の右側内側面が接触することで、導電ロッド1の定位置に固定される。止ネジ32aは、先端部を先細り形状にできる。止ネジ32aは、先端部で導電ロッド1を押圧するので、先細り形状とすることで、より強く導電ロッド1を押圧することができる。これにより止ネジは、連結台30を確実に導電ロッド1に固定できると共に、止ネジ32aと導電ロッド1との電気的接触不良を防ぐことができる。また、止ネジ32aは、先端部の先端面を平面状としても良い。先端面を平面状にした止ネジ32aは、導電ロッド1を押圧した際に先端面と導電ロッド1との接触面積が大きくなり、とくに、金属製の止ネジ32aにおいては、低抵抗な状態で電気接続できる。ただし、止ネジ32aは、先端部で導電ロッド1を導電状態に押圧することが出来れば形状は問わない。
【0060】
金属製の止ネジ32aで導電ロッド1に固定された連結台30は、止ネジ32aを介して導電ロッド1と導電状態となる。押圧面側において、止ネジ32aの先端部が導電ロッド1に接するからである。また、止ネジ32aで導電ロッド1を押圧すると、連結台30の固定面側において連結台30の内面に導電ロッド1が接触し、連結台30自身も導電ロッド1から通電される。したがって連結台30は、止ネジ32aと連結台30との両方で導電ロッド1から通電されるので、連結台30に固定した導電フック10をより確実に導電状態に固定することができる。以上の連結台30と第2固定具32とは、共に金属製とすることで導電フック10を導電ロッド1に対して確実に導電状態に固定できる。ただし、連結台30と第2固定具32とは、必ずしも両方を金属製とする必要はない。連結台30と第2固定具32とは、導電フック10が導電ロッド1に電気接続できる範囲内において、樹脂等の絶縁材を使用しても良い。例えば、表面が絶縁材からなる連結台30と第2固定具32とは、その表面をメッキ工程においてメッキされるのを防止できる。
【0061】
連結台30は、流出孔31を設けることができる。連結台30の流出孔31は、フック連結部20の流出孔21と同様に、連結台30に付着、残留する前位液などを流れ落とし、流出させ、残留量を可及的に少なくできる。また
図2に示すように、連結台30は、フック連結部20の隙間S1と同様に、止めネジ32aが左側から押圧する押圧側において、連結台30の内側面と導電ロッド1の外側面との間に隙間S2が形成でき、隙間S2が通路となって下方の流出孔31に連通して残留液を少なくできる。さらに
図2の連結台30は、フック連結部20のネジ受け部23と同様に、ネジ受け部33が連結固定される。ネジ受け部33は雌ネジ孔34のネジ穴の位置に合わせて配置され、止ネジ32aがネジ受け部33と雌ネジ孔34にねじ込まれて導電ロッド1を押圧して連結台30を固定する。
【0062】
上記に記載したフック連結部20の各部についての記載は、類似する構成を有する連結台30の各部にも矛盾抵触しない限り妥当し、その逆も妥当する。いずれの場合も対応する各部に読み替えることができる。
【0063】
以上の構造のメッキ用ハンガー100は、導電ロッド1に対して導電フック10を脱着自在に連結している。よって、被メッキ物50の形状に応じた種々の形状の導電フック10を導電ロッド1に連結できるので種々の被メッキ物50に対応可能となりより便利に使用できる。また、導電フック10を導電ロッド1に対して脱着自在としたことで、経年劣化等で導電フック10や導電ロッド1が損傷した場合において、損傷した部分のみを取り替えることができるので、費用を低減できる。
【0064】
また、電気メッキは、複数の被メッキ物50をメッキ用ハンガー100に引っ掛けて、メッキ液に浸漬し、被メッキ物50をメッキ処理する。このため、メッキ用ハンガー100により多くの被メッキ物50を引っ掛られることが、メッキ処理の効率化において重要である。導電フック10の姿勢、向き、位置を変更できるメッキ用ハンガー100は、被メッキ物50を非接触状態としながら、導電フック50を最大限に利用して一つのメッキ用ハンガー100に最大個数の被メッキ物50を引っ掛けられる姿勢と向きと位置とに導電フック10を配置できるので、メッキ処理の能率をより高めることができる。
【0065】
メッキ用ハンガー100は、多数の被メッキ物50を引っ掛け、メッキ用の電極41に吊り下げられてメッキ液43に浸漬される。図示しないが、多数の被メッキ物を連続的にメッキするラインは、異なるメッキ液を充填している複数のメッキ槽をラインに並べている。メッキ用ハンガーは、多数の被メッキ物を引っ掛けて、メッキ用の電極に吊り下げられ、次々とメッキ槽に移動して、被メッキ物をメッキ液に浸漬してメッキする。メッキ用ハンガーは、メッキ用の電極に吊り下げられて隣のメッキ槽に移動し、降下して被メッキ物をメッキ液に浸漬する。
【0066】
図1に示すメッキ用ハンガー100の使用状態を
図4の概略断面図に示す。図に示すメッキ装置は、電気メッキにおける静止式メッキの一例である。電気メッキは、被メッキ物50に皮膜しようとする金属イオンを含むメッキ液43中に、被メッキ物50を浸漬した状態で通電し、被メッキ物50に皮膜層を形成する表面処理方法である。電気メッキ用の装置は、メッキ槽40内に充填したメッキ液43中に、カソード側の電極41Bとして被メッキ物50を、アノード側の電極41Aとして金属板42をそれぞれ浸漬させ、両電極間に通電する。通電すると、カソードではメッキ液43中の金属イオンが還元される。還元された金属は、被メッキ物50の表面に析出され被膜層を形成する。また、アノードでは酸化反応が起こる。被膜しようとする金属板42がメッキ液43中に溶解し、メッキ液43中に金属イオンを補給する。
図4に示す電気メッキ用の装置は、メッキ槽40の上方にアノード側及びカソード側のメッキ用の電極41をそれぞれ配置している。アノード側の電極41Aにはメッキの種類に応じた金属板42、例えば、ニッケルメッキの場合にはニッケル板を連結する。また、カソード側の電極41Bには被メッキ物50をセットしたメッキ用ハンガー100を連結し、それぞれをメッキ液43中に浸漬するように吊り下げる。この状態で通電しメッキ処理する。
【0067】
以下、
図4に示す電気用のメッキ装置において、
図1に示すメッキ用ハンガー100を使用して被メッキ物50にメッキ処理する一例を説明する。
(1)被メッキ物50の形状や大きさに応じた導電フック10を適宜選択し、導電ロッド1に連結する。選択した導電フック10がフック連結部20を介して連結された連結台30を、ロッド本体1Aの下端側から通して導電ロッド1に連結台30を移動自在に連結する。導電ロッド1に連結した連結台30を介して、導電フック10が導電ロッド1に連結される。
(2)導電ロッド1に連結した導電フック10の上下位置及び回転位置を調整する。導電フック10の導電ロッド1に対する位置は、連結台30及びフック連結部20で調整される。導電ロッド1に挿通されている連結台30を導電ロッド1の軸方向に移動させて、導電フック10の上下位置を調整する。また導電フック10を、連結台30を介して水平面内で回転させて、回転位置を調整する。さらに筒状のフック連結部20の回転方向に調整する。
(3)導電ロッド1に対する位置が調整された導電フック10を、導電ロッド1に固定する。導電フック10をフック連結部20に第1固定具22で固定し、連結台30を第2固定具32で導電ロッド1に固定することで、導電フック10は導電ロッド1に固定される。導電フック10が挿入されたフック連結部20の雌ネジ孔24に、第1固定具22である止ネジ22aをねじ込み、止ネジ22aの先端部で導電フック10をしっかり押圧するまで止ネジ22aをねじ込んで、導電フック10をフック連結部20に固定する。導電ロッド1を挿通された連結台30の雌ネジ孔34に、第2固定具32である止ネジ32aをねじ込み、止ネジ32aの先端部で導電ロッド1をしっかり押圧するまで止ネジ32aをねじ込んで、連結台30を導電ロッド1に固定する。
(4)(1)~(3)の工程を繰り返して、複数の導電フック10を、導電ロッド1の定位置に所定の姿勢で固定する。この時、導電フック10に被メッキ物50を引っ掛ける状態で、被メッキ物50が互いに接触しない最小間隔となるように、導電フック10を導電ロッド1に固定する。これにより、被メッキ物50に応じた最大数量の導電フック10を導電ロッド1に固定したメッキ用ハンガー100となる。
(5)全ての導電フック10を導電ロッド1に固定した後、導電ロッド1の下端部の留め具2を固定する。
(6)さらに、導電フック10を導電ロッド1に固定した状態で、被メッキ物50との接点部分を除く導電フック10、ロッド本体1A、連結台30、フック連結部20、第1及び第2固定具22、32を合成樹脂等で絶縁被覆する。ただし、必ずしも絶縁被覆をせずとも良く、また部分的に絶縁被覆することもできる。
(7)導電フック10に被メッキ物50を順次引っ掛ける。
(8)被メッキ物50が引っ掛けられた状態のメッキ用ハンガー100を、メッキ用の電極41に接続する。メッキ用ハンガー100の接続部1Bを、メッキ装置のカソード側の電極41Bに引っ掛けるように吊り下げて、電気接続する。
(9)メッキ用の電極41に吊り下げ支持されたメッキ用ハンガー100を降下させて、メッキ槽40内のメッキ液43に浸漬し、被メッキ物50をメッキ処理する。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明のメッキ用ハンガーは、単純な構造で、導電フックの補修交換が容易に行え、導電フックの姿勢や位置を調整可能で、能率よくメッキ処理できるメッキ用ハンガーとして好適に利用できる。
【符号の説明】
【0069】
100…メッキ用ハンガー
1…導電ロッド
1A…ロッド本体
1B…接続部
1C…連結片
2…留め具
3…板バネ
10…導電フック
10A…第一折曲片
10B…第二折曲片
10C…第三折曲片
20…フック連結部
20A…筒状部
21…流出孔
22…第1固定具
22a…止ネジ
23…ネジ受け部
24…雌ネジ孔
25…連結部材
28…通気孔
30…連結台
32…第2固定具
32a…止ネジ
33…ネジ受け部
34…雌ネジ孔
38…通気孔
40…メッキ槽
41…メッキ用の電極
41A…アノード側の電極
41B…カソード側の電極
42…金属板
43…メッキ液
50…被メッキ物
900…メッキ用ハンガー
91…導電ロッド
92…導電フック
93…ねじ部
96…被メッキ物
S1…隙間
S2…隙間