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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101915
(43)【公開日】2023-07-24
(54)【発明の名称】換気框及び建具
(51)【国際特許分類】
   E06B 7/10 20060101AFI20230714BHJP
   E06B 5/16 20060101ALI20230714BHJP
【FI】
E06B7/10
E06B5/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002152
(22)【出願日】2022-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504254770
【氏名又は名称】株式会社佐原
(74)【代理人】
【識別番号】100110319
【弁理士】
【氏名又は名称】根本 恵司
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 純
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 岳宏
(72)【発明者】
【氏名】伊東 輝久
(72)【発明者】
【氏名】若槻 佳範
【テーマコード(参考)】
2E036
2E239
【Fターム(参考)】
2E036JA04
2E036JC02
2E036KA06
2E036LA03
2E036LB06
2E036MA07
2E239CA02
2E239CA12
2E239CA27
2E239CA44
2E239CA62
2E239CA68
(57)【要約】
【課題】建具の障子の横框に用いられる換気框の排水性能を確保しつつ、換気框の防火性能を向上させる。
【解決手段】換気框5は、換気通路6Aを有する第1中空部6と、第1中空部6の下方に位置する第2中空部7と、第1中空部6と第2中空部7の間に位置する隔壁部8と、隔壁部8に設けられて、第1中空部6から第2中空部7に向かって排水する第1排水口71と、第1排水口71よりも下方に位置する第2中空部7の下壁部9に、第1排水口71から室内外方向Sにずらして設けられて、第2中空部7から下方に向かって排水する第2排水口72を備える。
【選択図】 図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建具の障子の横框に用いられる換気框であって、
換気通路を有する第1中空部と、
前記第1中空部の下方に位置する第2中空部と、
前記第1中空部と前記第2中空部の間に位置する隔壁部と、
前記隔壁部に設けられて、前記第1中空部から前記第2中空部に向かって排水する第1排水口と、
前記第1排水口よりも下方に位置する前記第2中空部の下壁部に、前記第1排水口から室内外方向にずらして設けられて、前記第2中空部から下方に向かって排水する第2排水口と、
を備えた換気框。
【請求項2】
請求項1に記載された換気框において、
前記隔壁部は、前記第2排水口から室内外方向にずれた位置に形成されて、上下方向に沿って配置される縦壁部を有し、
前記第1排水口は、前記縦壁部に設けられた換気框。
【請求項3】
請求項2に記載された換気框において、
前記隔壁部は、前記縦壁部の室内外方向の一方側に位置して、前記第2排水口の上方に配置される底面部を有し、
前記縦壁部は、前記第2排水口よりも室内外方向の他方側の位置で前記底面部から上方に向かって突出する換気框。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載された換気框において、
前記第1中空部の内部に設けられて、加熱されて発泡したときに、前記第1排水口を塞ぐ加熱発泡材を備えた換気框。
【請求項5】
請求項4に記載された換気框において、
前記加熱発泡材は、加熱されて発泡したときに、前記換気通路を塞ぐ換気框。
【請求項6】
請求項4又は5に記載された換気框において、
前記第1中空部の内部に固定されたビスホール部材を備え、
前記ビスホール部材は、前記障子の縦框を換気框に取り付けるビスが螺合するビスホールを有し、
前記加熱発泡材は、加熱されて発泡したときに、前記ビスホールを塞ぐ換気框。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載された換気框を有する障子を備えた建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具の障子の横框に用いられる換気框、及び、換気框を有する障子を備えた建具に関する。
【背景技術】
【0002】
建具の障子の横框として、換気框が用いられることがある。換気框は、障子の框体に組み込まれて、障子の室外側の空間と室内側の空間の間で換気を行う。また、従来、換気框として、障子の上框に用いられる換気装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された従来の換気装置では、左右方向に延びる装置本体が換気通路を有しており、換気通路が通気口を介して屋外と屋内とに連なる。ところが、従来の換気装置のように換気通路を有する換気框では、水(例えば、雨水)が通気口を通って換気通路に入ることがある。これに対し、例えば、換気框に排水口を設けることで、換気通路からの排水が可能となる。しかしながら、この場合には、換気框の排水性能に加えて、換気框の防火性能の観点から、排水口への炎の進入についても考慮する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-128104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来の問題に鑑みなされたもので、その目的は、建具の障子の横框に用いられる換気框の排水性能を確保しつつ、換気框の防火性能を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、建具の障子の横框に用いられる換気框であって、
換気通路を有する第1中空部と、
前記第1中空部の下方に位置する第2中空部と、
前記第1中空部と前記第2中空部の間に位置する隔壁部と、
前記隔壁部に設けられて、前記第1中空部から前記第2中空部に向かって排水する第1排水口と、
前記第1排水口よりも下方に位置する前記第2中空部の下壁部に、前記第1排水口から室内外方向にずらして設けられて、前記第2中空部から下方に向かって排水する第2排水口と、
を備えた換気框である。
また、本発明は、本発明の換気框を有する障子を備えた建具である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、建具の障子の横框に用いられる換気框の排水性能を確保しつつ、換気框の防火性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の建具を示す正面図である。
図2】本実施形態の建具を示す縦断面図である。
図3】本実施形態の建具を示す横断面図である。
図4】本実施形態の第1障子の換気框と一対の縦框の横断面図である。
図5】本実施形態の第1障子の上側部分を室外側からみて示す正面図である。
図6】本実施形態の第1障子の上側部分を室内側からみて示す正面図である。
図7図6のX-X線で切断した本実施形態の第1障子の縦断面図である。
図8】本実施形態の第1障子を示す縦断面図である。
図9】本実施形態の換気框を下方からみた底面図である。
図10】本実施形態の第1障子を示す縦断面図である。
図11】本実施形態の換気框の第3加熱発泡材が発泡した状態を示す縦断面図である。
図12】本実施形態の換気框の第3加熱発泡材が発泡した状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の換気框及び建具の一実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態の換気框は、建具の障子の横框に用いられて、換気框及び障子の室外側の空間と室内側の空間の間で換気を行う。また、本実施形態の建具は、本実施形態の換気框を有する障子を備え、建物の壁部に設置される。建物の壁部で、建具及び換気框は、建物の室内(屋内)と室外(屋外)の間に配置される。以下では、換気框が障子の横框である上框として用いられる場合を例にとり、本実施形態の換気框及び建具について説明する。
【0010】
図1は、本実施形態の建具1を示す正面図であり、室内側からみた建具1を示している。図2は、本実施形態の建具1を示す縦断面図であり、図3は、本実施形態の建具1を示す横断面図である。
図示のように、建具1は、建物の開口部に設置される引き違い窓であり、引き違い障子である2つの障子2、3(第1障子2、第2障子3)と、網戸4と、障子2、3及び網戸4を囲む枠体10を備えている。第1障子2は、室内側に位置する室内側障子(内障子)であり、第2障子3は、室外側に位置する室外側障子(外障子)である。網戸4は、障子2、3の室外側で、左右方向Rにスライドして移動する。
【0011】
なお、建物に設置した建具1及び換気框5を正面からみたときに(図1参照)、上下となる方向が上下方向であり、左右となる方向が左右方向Rである。図1では、上下方向は鉛直方向であり、左右方向Rは水平方向である。室内外方向S(図2図3参照)は、建物に設置した建具1及び換気框5における室内外方向(屋内外方向)である。また、室内外方向Sは、建物に設置した建具1及び換気框5を正面からみたときに、前後となる方向(奥行方向)であり、図1では、左右方向Rに直交する水平方向である。このように、建具1及び換気框5に関する方向は、建物に設置した状態での方向で特定する。また、建具1及び換気框5に関して室内側、室外側とは、建物に設置した状態での室内外方向Sにおける室内側、室外側である。
【0012】
枠体10は、方形状の開口枠(窓枠)であり、建物の開口部に設置される。また、枠体10は、互いに組み合わされた4つの枠11~13(上枠11、下枠12、一対の縦枠13)を有し、4つの枠11~13により、方形状の開口部14を形成している。上枠11と下枠12は、枠体10の上下の横枠であり、枠体10の上部と下部で左右方向R(横方向)に延びる。一対の縦枠13は、枠体10の左右の側部に位置する側枠であり、枠体10の側部で上下方向(縦方向)に延びる。上枠11、下枠12、及び、左右の縦枠13の端部同士が接続されて、枠11~13が枠組みされている。
【0013】
障子2、3は、スライドにより移動するスライド式の可動障子(パネル体)であり、枠体10の開口部14に移動可能(スライド可能)に配置されている。また、障子2、3は、それぞれ、方形状の框体20、30と、框体20、30の内側に固定されたパネル2A、3Aを有している。障子2、3は、枠体10の開口部14内で、左右方向Rにスライドして引き違い状に移動する。障子2、3のそれぞれの移動により、枠体10の開口部14が開閉される。障子2、3が閉じた状態で、施錠装置40により、障子2、3が施錠される。施錠装置40は、クレセント錠とクレセント受けを有するクレセントであり、障子2、3のそれぞれの框体20、30に取り付けられている。
【0014】
障子2、3の框体20、30は、それぞれ、互いに組み合わされた4つの框21~23、31~33(上框21、31、下框22、32、一対の縦框23、33)を有し、4つの框21~23、31~33により、方形状の開口部24、34を形成している。障子2、3のパネル2A、3Aは、方形状のガラスパネル(ここでは、複層ガラス)であり、それぞれ框体20、30の開口部24、34に配置されて、框体20、30に嵌め込まれている。框21~23、31~33は、例えば、押出成形により成形された形材からなる。上框21、31と下框22、32は、框体20、30の上下の横框であり、框体20、30の上部と下部で左右方向R(横方向)に延びる。
【0015】
一対の縦框23、33は、框体20、30の左右の側部に位置する側框であり、框体20、30の左右の側部で上下方向(縦方向)に延びる。また、一対の縦框23、33のうち、一方の縦框23、33は、戸先框であり、他方の縦框23、33は、召合せ框である。上框21、31、下框22、32、及び、左右の縦框23、33の端部同士が接続されて、框21~23、31~33が枠組みされている。ここでは、2つの障子2、3のうちの一方の第1障子2に換気框5が設けられている。換気框5は、第1障子2の上框21であり、第1障子2の框体20に設けられて、第1障子2の上縁部に沿って左右方向Rに延びる。
【0016】
図4は、本実施形態の第1障子2の換気框5(上框21)と一対の縦框23の横断面図であり、換気框5と縦框23の内部構造を省略している。図5は、本実施形態の第1障子2の上側部分を室外側からみて示す正面図であり、図6は、本実施形態の第1障子2の上側部分を室内側からみて示す正面図である。
【0017】
図示のように、換気框5は、室外側に位置する室外側見付け部5Aと、室内側に位置する室内側見付け部5Bと、室外側に位置する複数の室外側通気口5Cと、室内側に位置する複数の室内側通気口5Dと、フィルター5Eを備えている。室外側見付け部5Aは、換気框5の室外側の空間に面する室外側の見付け部であり、室内側見付け部5Bは、換気框5の室内側の空間に面する室内側の見付け部である。室外側通気口5Cと室内側通気口5Dは、それぞれ上下方向に長い貫通孔(通気孔)であり、換気框5の内部(内部空間)に向かって開放されている。
【0018】
複数の室外側通気口5Cは、換気框5の長手方向(左右方向R)に間隔をあけて形成されて、換気框5の室外側見付け部5Aから換気框5の室外側の空間に向かって開放されている。複数の室内側通気口5Dは、換気框5の長手方向に間隔をあけて形成されて、換気框5の室内側見付け部5Bから換気框5の室内側の空間に向かって開放されている。室外側通気口5Cと室内側通気口5Dにより、空気が換気框5の内外に通過して流通する。フィルター5Eは、室内側見付け部5Bの室外側(換気框5の内部側)に配置されて、換気框5の長手方向に延び、室内側通気口5Dを通過する空気を濾過する。
【0019】
図7は、図6のX-X線で切断した本実施形態の第1障子2の縦断面図であり、換気框5の内部構造を模式的に示している。
図6図7に示すように、換気框5は、ビス41により内部に固定された2つのビスホール部材42を備えている。ビスホール部材42は、それぞれビスホール43を有し、換気框5の長手方向の両側の端部に固定されている。ビスホール部材42は、ビス44を受けるビス受け部材であり、ビスホール43は、ビス44が螺合するタッピングホールである。ビス44は、取付ビスであり、換気框5の長手方向の両側の端部で、第1障子2の縦框23を換気框5に取り付ける。
【0020】
ビスホール部材42及びビスホール43は、換気框5の長手方向における端面から換気框5の内部に向かって換気框5の長手方向に延びる。ビスホール43は、下方に向けて配置された開放部45を有しており、開放部45により、下方に向かって開放されている。ビス44は、一対の縦框23のそれぞれで、縦框23の取付壁部25に形成された挿通孔(図示せず)を挿通する。また、ビス44は、ビスホール43の内面にねじを刻みながら、ビスホール43に捩じ込まれる。これにより、ビス44は、ビスホール43に螺合して、ビスホール43及びビスホール部材42に固定される。ビス44により、縦框23の取付壁部25が換気框5の端面に密着して、縦框23の端部(ここでは、上端部)がビスホール部材42及び換気框5の端部に取り付けられる。
【0021】
図8は、本実施形態の第1障子2を示す縦断面図であり、図7に示す第1障子2の縦断面図に対してビスホール部材42を含む換気框5の内部構造の一部を省略している。
図示のように、換気框5は、上下に区画された2つの中空部6、7(第1中空部6、第2中空部7)と、第1中空部6と第2中空部7の間に位置する隔壁部8と、第2中空部7と框体20の開口部24の間に位置する下壁部9を備えている。
【0022】
第1中空部6と第2中空部7は、互いの間に隔壁部8を挟んで、上下方向において隣り合う。隔壁部8は、第1中空部6と第2中空部7を区画する区画壁部(仕切り壁部)であり、換気框5の内部を上下に区画して、上下方向において、第1中空部6と第2中空部7を隔てる。第1中空部6は、第2中空部7及び隔壁部8の上方に位置する上中空部であり、隔壁部8の上側に区画されている。第2中空部7は、第1中空部6及び隔壁部8の下方に位置する下中空部であり、隔壁部8の下側に区画されている。
【0023】
隔壁部8は、第1中空部6の下側部であるとともに、第2中空部7の上側部である。隔壁部8は、上下方向において、第1中空部6の内部(内部空間)と第2中空部7の内部(内部空間)を隔てて、第1中空部6と第2中空部7を仕切る。隔壁部8と下壁部9は、上下方向において、互いに離隔して対向して配置されている。下壁部9は、第2中空部7の下側部であり、第1中空部6及び隔壁部8の下方に位置して、室内外方向Sに沿って配置されている。第2中空部7は、隔壁部8と下壁部9の間に区画される。
【0024】
換気框5の第1中空部6は、換気に用いられる換気中空部であり、換気框5の室外側と室内側とに向かって開放可能な換気通路6Aを有している。換気通路6Aは、第1中空部6の内部空間であり、第1中空部6の内部で、室外側通気口5Cと室内側通気口5Dの間に設けられている。室外側通気口5Cと室内側通気口5Dは、第1中空部6の内部及び換気通路6Aに向かって開放されるとともに、換気框5(第1中空部6及び換気通路6A)の室外側の空間と室内側の空間に向かって開放されている。
【0025】
換気框5は、第1中空部6の換気通路6Aにより、換気框5及び第1障子2の室外側の空間と室内側の空間の間で換気を行う。空気は、換気框5の室外側の空間と室内側の空間との間で、室外側通気口5C、換気通路6A、及び、室内側通気口5Dを通過して流通する。また、空気は、室外側通気口5C、換気通路6A、及び、室内側通気口5Dを通って、換気框5の室外側の空間から室内側の空間に向かって流れるとともに、換気框5の室内側の空間から室外側の空間に向かって流れる。
【0026】
換気框5は、換気通路6Aを開閉する開閉機構50を備えている(図7参照)。開閉機構50は、室外側通気口5Cを開閉する開閉部材51と、開閉部材51を操作する操作部材52と、操作部材52を開閉部材51に連結する連結部材53を有している。開閉部材51と連結部材53は、第1中空部6の内部の換気通路6Aに配置され、操作部材52は、換気框5の室内側見付け部5B(図6参照)にスライド可能に配置されている。操作部材52を換気框5の長手方向の一方向と他方向に移動することで、連結部材53及び開閉部材51が換気框5の長手方向の一方向と他方向に移動する。開閉部材51は、換気框5の長手方向に間隔をあけて形成された複数の開放口54を有している。
【0027】
操作部材52により開閉部材51を移動させて、開閉部材51の開放口54が室外側通気口5Cと重なる位置に移動したときに、開放口54により室外側通気口5Cが開放されて、換気通路6Aが開く。また、操作部材52により開閉部材51を移動させて、開閉部材51の開放口54が室外側通気口5Cと重ならない位置に移動したときに、開閉部材51により室外側通気口5Cが閉鎖されて、換気通路6Aが閉じる。このように、開閉機構50は、操作部材52により操作されて、換気通路6Aを開閉する。
【0028】
図9は、本実施形態の換気框5を下方からみた底面図である。
図7図9に示すように、換気框5は、複数の加熱発泡材61~64(第1加熱発泡材61、第2加熱発泡材62、第3加熱発泡材63、第4加熱発泡材64)を備えている。加熱発泡材61~64は、熱膨張耐火材(例えば、膨張黒鉛)であり、火災等の熱により加熱されたときに発泡して膨張する。加熱発泡材61~64は、それぞれ換気框5の長手方向に延び、換気框5の各部に貼り付けられて、換気框5の各部に取り付けられている。また、第1加熱発泡材61、第3加熱発泡材63、及び、第4加熱発泡材64は、換気框5の各部で、換気框5の長手方向の全体にわたって設けられている。
【0029】
第1加熱発泡材61は、換気框5の上溝部5Fに設けられて、上溝部5F内で膨張する。第2加熱発泡材62と第3加熱発泡材63は、第1中空部6の内部に設けられて、第1中空部6の内部で膨張する。また、第2加熱発泡材62は、ビスホール部材42の室外側に位置して、ビスホール部材42に取り付けられ、ビスホール部材42の室外側で膨張する。第3加熱発泡材63は、隔壁部8の上側に設けられて、隔壁部8に取り付けられ、隔壁部8の上側で膨張する。第4加熱発泡材64は、第2中空部7及び下壁部9の下側に設けられて、下壁部9に取り付けられ、換気框5(下壁部9)とパネル2Aの間で膨張する。
【0030】
図10は、本実施形態の第1障子2を示す縦断面図であり、図7に示す第1障子2の縦断面図に対して開閉機構50の主要部を省略している。
図示のように、水(例えば、雨水)が換気框5の室外側通気口5Cを通って第1中空部6の内部の換気通路6Aに入ることがある。この場合には、水は、換気框5の排水経路70を通って、換気框5の下方に向かって換気框5の外部に排水される。換気框5の第2中空部7は、排水に用いられる排水中空部であり、排水経路70に位置している。
【0031】
換気框5は、排水経路70に位置する2つの排水口71、72(第1排水口71、第2排水口72)を備えている。第1排水口71は、第2排水口72及び下壁部9よりも上方に位置する上排水口であり、隔壁部8に設けられている。第2排水口72は、第1排水口71及び隔壁部8よりも下方に位置する下排水口であり、下壁部9に設けられている。第1排水口71は、換気框5の長手方向における隔壁部8の両側の端部(図6参照)に形成され、第2排水口72は、換気框5の長手方向における下壁部9の両側の端部(図9参照)に形成されている。換気框5の長手方向の両側の端部のそれぞれで、第1排水口71と第2排水口72は、換気框5の長手方向における位置を一致させて、換気框5の長手方向における同じ位置に形成されている。
【0032】
隔壁部8は、第2排水口72及び下壁部9よりも上方に位置し、下壁部9は、第1排水口71及び隔壁部8よりも下方に位置している。第1排水口71は、隔壁部8を貫通する貫通孔(排水孔)であり、第1中空部6の内部と第2中空部7の内部に向かって開放されている。第1中空部6と第2中空部7は、第1排水口71により互いに連通している。水が第1中空部6の内部に入ったときに、水は、第1排水口71により、第1中空部6から下方の第2中空部7に向かって排水される。また、水は、第2排水口72により、第2中空部7から第2中空部7及び換気框5の下方に向かって排水される。
【0033】
第1排水口71と第2排水口72は、室内外方向Sの位置が互いに相違しており、室内外方向Sに完全にずらして形成されている。そのため、第2排水口72は、第2中空部7の下壁部9に、第1排水口71から室内外方向Sにずらして設けられている。第2排水口72は、下壁部9を貫通する貫通孔(排水孔)であり、第2中空部7の内部と第2中空部7の下方の空間に向かって開放されている。第2中空部7の下方の空間は、換気框5の外部である框体20の開口部24である。第2排水口72は、下壁部9を上下方向に貫通して、下方の框体20の開口部24に向かって開放されている。第2中空部7は、第2排水口72により框体20の開口部24と連通している。
【0034】
換気框5の排水経路70は、第1中空部6の内部、第1排水口71、第2中空部7の内部、及び、第2排水口72を順に経て、框体20の開口部24まで延びる。水が第1中空部6の内部の換気通路6Aに入ったときに、水は、第1中空部6の内部から第1排水口71を通って第2中空部7の内部に排水される。また、水が第2中空部7の内部に入ったときに、水は、第2中空部7の内部から第2排水口72を通って第2中空部7の下方の換気框5の外部に排水される。これにより、水は、框体20の開口部24に排水される。
【0035】
換気框5の隔壁部8は、隔壁部8の室外側の縁部を含む立ち上がり部80と、隔壁部8の室内側の縁部を含む上段部81と、上段部81の室外側の縁部から下方に突出する縦壁部82と、立ち上がり部80と縦壁部82の間に位置する底面部83を有している。立ち上がり部80は、底面部83の室外側に位置し、底面部83の室外側の縁部から上方に突出して、隔壁部8の室外側の縁部まで形成されている。上段部81と底面部83は、室内外方向Sに沿って配置され、縦壁部82は、上下方向に沿って配置される。
【0036】
上段部81は、縦壁部82の室内側に位置し、縦壁部82の上縁部から隔壁部8の室内側の縁部まで室内側に向かって形成されている。底面部83は、隔壁部8で最も下方の底部に位置し、上段部81と縦壁部82は、底面部83よりも上方に位置する。縦壁部82は、底面部83の室内側の縁部から上方に突出して、底面部83と上段部81の間に位置する。縦壁部82は、第2排水口72から室内外方向S(ここでは、室内側)にずれた位置に形成されており、第1排水口71は、縦壁部82に設けられて、縦壁部82を室内外方向Sに貫通する。
【0037】
第2排水口72は、下壁部9の室内外方向Sの一方側寄りの部分に形成されて、隔壁部8の縦壁部82よりも室内外方向Sの一方側に位置する部分と上下方向において対向している。底面部83は、縦壁部82の室内外方向Sの一方側に位置して、第2排水口72の上方に配置される。縦壁部82は、第2排水口72よりも室内外方向Sの他方側の位置で、底面部83から上方に向かって突出して、上段部81に接続する。ここでは、室内外方向Sの一方側は、室外側であり、室内外方向Sの他方側は、室内側である。また、底面部83と第2排水口72が上下方向において互いに対向する。
【0038】
縦壁部82は、第2排水口72よりも室内側の位置に形成されている。縦壁部82の第2中空部7側の面は、第2中空部7の内部において、室内側(第2排水口72の反対側)に向けて配置される。縦壁部82の第1排水口71は、第1中空部6の内部から第2中空部7の内部に向ってみたときに、室内側に向かって縦壁部82を貫通して、第2中空部7の内部において、室内側に向かって開放されている。
【0039】
ビスホール部材42及び第3加熱発泡材63は、第1中空部6の内部に設けられている。ビスホール部材42は、ビス41により、第1中空部6の内部(ここでは、隔壁部8の上段部81)に固定されて、隔壁部8の上側に配置される。第3加熱発泡材63は、隔壁部8の底面部83に取り付けられて、立ち上がり部80に接するとともに、縦壁部82及び第1排水口71から室外側に離隔して配置される。ビスホール部材42のビスホール43及びビスホール43の開放部45は、隔壁部8の底面部83及び第3加熱発泡材63から離隔して、隔壁部8の底面部83及び第3加熱発泡材63の上方に位置し、上下方向において、隔壁部8の底面部83及び第3加熱発泡材63と対向する。
【0040】
図11図12は、本実施形態の換気框5の第3加熱発泡材63が発泡した状態を示す縦断面図であり、開閉機構50の主要部を省略して、発泡した第3加熱発泡材63を模式的に鎖線で示している。図11は、換気框5の長手方向の端部を示し、図12は、換気框5の長手方向の中央部を示している。
【0041】
図示のように、第3加熱発泡材63は、火災等の熱により加熱されて発泡したときに、第1中空部6の内部の換気通路6Aで膨張する。第3加熱発泡材63は、隔壁部8の上側で膨張して、第1中空部6側で、第1排水口71及び縦壁部82を覆って、第1排水口71を塞ぐ。また、第3加熱発泡材63は、第1中空部6の内部及び換気通路6Aを塞ぐ。換気框5の長手方向の両側の端部では、第3加熱発泡材63は、ビスホール部材42のビスホール43及びビス44を覆い、ビスホール43の開放部45及びビスホール43を塞ぐ。
【0042】
以上説明したように、本実施形態の換気框5及び建具1では、第1排水口71と第2排水口72により、換気框5の排水性能を確保することができる。また、第1排水口71と第2排水口72を室内外方向Sにずらして設けている。そのため、火災時等に、炎が框体20の開口部24から第2排水口72を通って第2中空部7の内部に入ったとしても、第1排水口71を通って第1中空部6の内部に炎が入るのを抑制することができる。これにより、換気框5の防火性能を向上させることができる。従って、換気框5の排水性能と防火性能を両立させることができる。
【0043】
第1排水口71を隔壁部8の縦壁部82に設けることで、炎が第2排水口72に入ったとしても、炎が第2中空部7の内部から第1排水口71を通って第1中空部6の内部に入り難くなる。これにより、換気框5の防火性能を高めることができる。縦壁部82は、第2排水口72よりも室内側の位置で隔壁部8の底面部83から上方に突出する。そのため、換気框5の排水経路70が第2排水口72から第1中空部6の内部に向って室内外方向Sに折り返して蛇行するようになり、炎が第2排水口72から第1排水口71を通って第1中空部6の内部に入るのを抑制することができる。
【0044】
加熱されて発泡した第3加熱発泡材63により第1排水口71を塞ぐことで、炎が第2中空部7の内部から第1排水口71を通って第1中空部6の内部に入るのを防止して、換気框5の防火性能を向上させることができる。また、第3加熱発泡材63により換気通路6Aを塞ぐことで、炎が換気通路6Aを通過するのを抑制することができる。ビスホール部材42のビスホール43を塞ぐ第3加熱発泡材63により、ビスホール43及びビス44を保護して、ビスホール43及びビス44の損傷を抑制することができる。これにより、縦框23が換気框5から外れるのを抑制することができる。
【0045】
なお、第3加熱発泡材63は、隔壁部8の底面部83の室内外方向Sの全体にわたって設けて、縦壁部82に接するようにしてもよい。この場合でも、縦壁部82に形成した第1排水口71から排水でき、換気框5の排水経路70を確保することができる。
【0046】
上框21以外の横框(例えば、下框22)に換気框5を用いるようにしてもよい。換気框5が下框22であるときには、換気框5は、第1障子2の下縁部に沿って左右方向Rに延び、下方の下枠12に向かって排水する。また、換気框5は、2つの障子2、3のうちのいずれか一方の障子2、3(例えば、第2障子3)に設けてもよく、2つの障子2、3の両方に設けてもよい。建具1は、引き違い窓以外の建具であってもよく、換気框5は、引き違い障子以外の障子の横框に用いてもよい。本発明は、種々の建具の障子の横框に適用することができる。
【0047】
以上のように、換気框は、
建具の障子の横框に用いられる換気框であって、
換気通路を有する第1中空部と、
前記第1中空部の下方に位置する第2中空部と、
前記第1中空部と前記第2中空部の間に位置する隔壁部と、
前記隔壁部に設けられて、前記第1中空部から前記第2中空部に向かって排水する第1排水口と、
前記第1排水口よりも下方に位置する前記第2中空部の下壁部に、前記第1排水口から室内外方向にずらして設けられて、前記第2中空部から下方に向かって排水する第2排水口と、
を備えた換気框である。
従って、建具の障子の横框に用いられる換気框の排水性能を確保しつつ、換気框の防火性能を向上させることができる。
【0048】
前記隔壁部は、前記第2排水口から室内外方向にずれた位置に形成されて、上下方向に沿って配置される縦壁部を有し、
前記第1排水口は、前記縦壁部に設けられる。
従って、炎が第2中空部の内部から第1排水口を通って第1中空部の内部に入り難くなり、換気框の防火性能を高めることができる。
【0049】
前記隔壁部は、前記縦壁部の室内外方向の一方側に位置して、前記第2排水口の上方に配置される底面部を有し、
前記縦壁部は、前記第2排水口よりも室内外方向の他方側の位置で前記底面部から上方に向かって突出する。
従って、換気框の排水経路が第2排水口から第1中空部の内部に向って室内外方向に折り返して蛇行するようになり、炎が第2排水口から第1排水口を通って第1中空部の内部に入るのを抑制することができる。
【0050】
換気框は、前記第1中空部の内部に設けられて、加熱されて発泡したときに、前記第1排水口を塞ぐ加熱発泡材を備える。
従って、加熱発泡材により、炎が第2中空部の内部から第1排水口を通って第1中空部の内部に入るのを防止して、換気框の防火性能を向上させることができる。
【0051】
前記加熱発泡材は、加熱されて発泡したときに、前記換気通路を塞ぐ。
従って、加熱発泡材により、炎が換気框の換気通路を通過するのを抑制することができる。
【0052】
換気框は、前記第1中空部の内部に固定されたビスホール部材を備え、
前記ビスホール部材は、前記障子の縦框を換気框に取り付けるビスが螺合するビスホールを有し、
前記加熱発泡材は、加熱されて発泡したときに、前記ビスホールを塞ぐ。
従って、加熱発泡材により、ビスホール部材のビスホールを保護して、ビスホールの損傷を抑制することができる。これにより、縦框が換気框から外れるのを抑制することができる。
【0053】
建具は、換気框を有する障子を備えた建具である。
従って、建具の障子の横框に用いられる換気框の排水性能を確保しつつ、換気框の防火性能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0054】
1・・・建具、2・・・第1障子、2A・・・パネル、3・・・第2障子、3A・・・パネル、4・・・網戸、5・・・換気框、5A・・・室外側見付け部、5B・・・室内側見付け部、5C・・・室外側通気口、5D・・・室内側通気口、5E・・・フィルター、5F・・・上溝部、6・・・第1中空部、6A・・・換気通路、7・・・第2中空部、8・・・隔壁部、9・・・下壁部、10・・・枠体、11・・・上枠、12・・・下枠、13・・・縦枠、14・・・開口部、20・・・框体、21・・・上框、22・・・下框、23・・・縦框、24・・・開口部、25・・・取付壁部、30・・・框体、31・・・上框、32・・・下框、33・・・縦框、34・・・開口部、40・・・施錠装置、41・・・ビス、42・・・ビスホール部材、43・・・ビスホール、44・・・ビス、45・・・開放部、50・・・開閉機構、51・・・開閉部材、52・・・操作部材、53・・・連結部材、54・・・開放口、61・・・第1加熱発泡材、62・・・第2加熱発泡材、63・・・第3加熱発泡材、64・・・第4加熱発泡材、70・・・排水経路、71・・・第1排水口、72・・・第2排水口、80・・・立ち上がり部、81・・・上段部、82・・・縦壁部、83・・・底面部、R・・・左右方向、S・・・室内外方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12