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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101918
(43)【公開日】2023-07-24
(54)【発明の名称】接合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/52 20060101AFI20230714BHJP
【FI】
H01L21/52 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002157
(22)【出願日】2022-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】林 志桜里
【テーマコード(参考)】
5F047
【Fターム(参考)】
5F047BA15
(57)【要約】
【課題】第一部材と第二部材とが銀の焼結体からなる接合層を介して接合された接合体を、効率良く製造でき、かつ、接合層におけるクラックやボイドの発生を抑制可能な接合体の製造方法を提供する。
【解決手段】第一部材と第二部材とが接合層を介して接合された接合体の製造方法であって、前記第一部材の接合面に、銀粉と溶媒とを含むAgペーストを塗布するAgペースト塗布工程と、塗布した前記Agペーストを乾燥せずに前記第一部材と前記第二部材を積層する積層工程と、前記Agペーストを介して積層した前記第一部材と前記第二部材を加熱処理して、前記Agペーストを焼成し、焼結体からなる前記接合層を形成し、前記第一部材と前記第二部材とを接合する焼成工程と、を有し、前記Agペースト塗布工程においては、前記Agペーストの塗布面積Aと前記第一部材と前記第二部材の接合面積Bとの比A/Bを1.08以上とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一部材と第二部材とが接合層を介して接合された接合体の製造方法であって、
前記第一部材の接合面に、銀粉と溶媒とを含むAgペーストを塗布するAgペースト塗布工程と、塗布した前記Agペーストを乾燥せずに前記第一部材と前記第二部材を積層する積層工程と、前記Agペーストを介して積層した前記第一部材と前記第二部材を加熱処理して、前記Agペーストを焼成し、焼結体からなる前記接合層を形成し、前記第一部材と前記第二部材とを接合する焼成工程と、を有し、
前記Agペースト塗布工程においては、前記Agペーストの塗布面積Aと前記第一部材と前記第二部材の接合面積Bとの比A/Bを1.08以上とすることを特徴とする接合体の製造方法。
【請求項2】
前記第一部材と前記第二部材の接合面積Bが64mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の接合体の製造方法。
【請求項3】
前記焼成工程は、第一保持工程と第二保持工程とを有しており、前記第一保持工程における保持温度が65℃以上90℃以下の範囲内、保持時間が5分以上90分以下の範囲内であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一部材と第二部材とが接合層を介して接合された接合体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、LEDやパワーモジュールといった半導体装置は、金属部材からなる回路層の上に半導体素子が接合された構造とされている。
ここで、半導体素子等の電子部品を回路層上に接合する際には、例えば特許文献1に示すように、はんだ材を用いた方法が広く使用されている。
また、特許文献2には、めっき膜とSn系はんだ層を形成し、熱処理によってこれらを合金化して合金層を形成し、電子部品を基板に実装する技術が提案されている。
【0003】
さらに、特許文献3-6には、銀粉と有機溶媒を含む金属ペーストを用いて、半導体素子等の電子部品を回路上に接合する技術が提案されている。この金属ペーストにおいては、導電性の焼結体からなる接合層が形成され、この接合層を介して半導体素子等の電子部品が回路上に接合されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-271782号公報
【特許文献2】特許第6459656号公報
【特許文献3】特許第6428339号公報
【特許文献4】特許第6712620号公報
【特許文献5】特許第6845385号公報
【特許文献6】特開2020-190015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1,2に記載されたように、はんだ材を用いて、部材同士を接合した場合には、部材同士の間に形成される接合層には、金属間化合物が生成しており、熱伝導率が比較的低くなるおそれがあった。さらに、温度サイクルを負荷した際に接合層にクラックが生じ易く、接合信頼性が低下するおそれがあった。
さらに、はんだ材を介して半導体素子等の電子部品と回路層とを接合した場合には、高温環境下で使用した際にはんだの一部が溶融し、半導体素子等の電子部品と回路層と接合信頼性が低下するおそれがあった。
特に、最近では、半導体素子自体の耐熱性が向上しており、かつ、半導体装置が自動車のエンジンルーム等の高温環境下で使用されることがあり、従来のようにはんだ材で接合した構造では対応が困難となってきている。
【0006】
一方、特許文献3-6に記載された金属ペーストにおいては、接合層が金属の焼結体で構成されていることから、熱伝導率に優れており、接合信頼性にも優れている。
また、金属の焼結体によって接合層を形成した場合には、比較的低温条件で接合層を形成できるとともに接合層自体の融点は高くなるため、高温環境下においても接合強度が大きく低下しない。
【0007】
しかしながら、上述の金属ペーストにおいては、溶媒として有機成分を含んでいるため、焼結体からなる接合層を形成する際に、接合界面に有機成分が残存し、接合層にクラックやボイドが生じるおそれがあった。特に、無加圧で接合した場合には、有機成分が急激に揮発し易く、クラックが発生しやすい状況にある。
また、接合面積が大きい場合には、有機成分が接合界面から外部に排出され難く、接合層にクラックやボイドが生じやすい傾向にある。
ここで、特許文献6においては、焼成時の昇温速度を遅くすることで、接合界面からの有機成分の排出を促進させているが、焼成時間が長くなり、接合体の製造効率が低下してしまうといった問題があった。
【0008】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、第一部材と第二部材とが銀の焼結体からなる接合層を介して接合された接合体を、効率良く製造でき、かつ、接合層におけるクラックやボイドの発生を抑制可能な接合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の接合体の製造方法は、第一部材と第二部材とが接合層を介して接合された接合体の製造方法であって、前記第一部材の接合面に、銀粉と溶媒とを含むAgペーストを塗布するAgペースト塗布工程と、塗布した前記Agペーストを乾燥せずに前記第一部材と前記第二部材を積層する積層工程と、前記Agペーストを介して積層した前記第一部材と前記第二部材を加熱処理して、前記Agペーストを焼成し、焼結体からなる前記接合層を形成し、前記第一部材と前記第二部材とを接合する焼成工程と、を有し、前記Agペースト塗布工程においては、前記Agペーストの塗布面積Aと前記第一部材と前記第二部材の接合面積Bとの比A/Bを1.08以上とすることを特徴としている。
【0010】
この構成の接合体の製造方法によれば、第一部材の接合面にAgペーストを塗布するAgペースト塗布工程において、前記Agペーストの塗布面積Aと前記第一部材と前記第二部材の接合面積Bとの比A/Bを1.08以上としているので、塗布した前記Agペーストを介して第一部材と第二部材とを積層した際に、塗布したAgペーストの一部が接合界面から外部に向けて露出した部分が形成される。このため、焼成工程においてAgペーストを焼成する際に、この露出した部分から有機成分の排出が促進されることになり、焼成工程における焼成時間を短くしても、接合層におけるクラックやボイドの発生を抑制することができる。
【0011】
ここで、本発明の接合体の製造方法においては、前記第一部材と前記第二部材の接合面積Bが64mm以上であることが好ましい。
この場合、前記第一部材と前記第二部材の接合面積Bが64mm以上と大きく、有機成分が接合界面から外部に排出され難く、接合層にクラックやボイドが生じやすい傾向にあるが、前記Agペーストの塗布面積Aと前記第一部材と前記第二部材の接合面積Bとの比A/Bを1.08以上としているので、接合層におけるクラックやボイドの発生を抑制することができる。
【0012】
また、本発明の接合体の製造方法においては、前記焼成工程は、第一保持工程と第二保持工程とを有しており、前記第一保持工程における保持温度が65℃以上90℃以下の範囲内、保持時間が5分以上90分以下の範囲内であることが好ましい。
この場合、前記焼成工程は、第一保持工程と第二保持工程とを有しており、前記第一保持工程における保持温度が65℃以上90℃以下の範囲内、保持時間が5分以上90分以下の範囲内とされているので、焼成工程を比較的短時間で行うことができ、接合体をさらに効率良く製造することができる。また、有機成分の揮発を促進することで、接合体におけるクラックやボイドの発生を十分に抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第一部材と第二部材とが銀の焼結体からなる接合層を介して接合された接合体を、効率良く製造でき、かつ、接合層におけるクラックやボイドの発生を抑制可能な接合体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る接合体の製造方法によって製造される接合体の説明図である。
図2】本発明の一実施形態に係る接合体の製造方法を示すフロー図である。
図3】本発明の一実施形態に係る接合体の製造方法におけるAgペースト塗布工程および積層工程の説明図である。
図4】本発明の一実施形態に係る接合体の製造方法における焼成工程の説明図である。
図5】本発明の他の実施形態に係る接合体の製造方法におけるAgペースト塗布工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態である接合体の製造方法について説明する。
本実施形態である接合体の製造方法は、第一部材11と第二部材12とが接合層13を介して接合された接合体10を製造するものである。
【0016】
本実施形態における接合体10は、図1に示すように、第一部材11と第二部材12とが、銀の焼結体からなる接合層13を介して接合されたものである。本実施形態では、接合体10は、絶縁回路基板の回路層(第一部材11)と半導体素子(第二部材12)とが接合層13を介して接合された半導体装置とされている。
【0017】
ここで、本実施形態である接合体10の製造方法について、図2および図3を参照して説明する。
本実施形態である接合体10の製造方法は、Agペースト塗布工程S01と、積層工程S02と、焼成工程S03と、を備えている。
【0018】
(Agペースト塗布工程S01)
まず、図3に示すように、第一部材11の接合面に、銀粉と溶媒とを含むAgペースト23を塗布する。
そして、本実施形態においては、図3に示すように、Agペースト23の塗布面積Aが第一部材11と第二部材12の接合面積B(第二部材12の接合面の面積)に比べて大きく設定されており、Agペースト23の塗布面積Aと第一部材11と第二部材12の接合面積Bとの比A/Bが1.08以上とされている。
【0019】
ここで、本実施形態においては、第一部材11と第二部材12の接合面積Bが64mm以上であることが好ましい。本実施形態では、第二部材12が半導体素子とされ、絶縁回路基板の回路層が第一部材11とされ、第一部材11に比べて第二部材12が小さく構成されているので、第二部材12である半導体素子の接合面の面積が第一部材11と第二部材12の接合面積Bとなる。本実施形態では、第二部材12は、接合面の面積が64mm以上の大型の半導体素子とされている。
【0020】
また、Agペースト23の塗布方法は、特に限定されないが、例えば、メタルマスク法、スクリーン印刷法、ディスペンス法等を適用することができる。本実施形態では、第一部材11の接合面に、スクリーン印刷によって、Agペースト23を印刷している。
また、Agペースト23の塗布厚さは、20μm以上500μm以下の範囲内とすることが好ましい。
【0021】
ここで、塗布するAgペースト23は、銀粉と溶媒とを含むものである。なお、銀粉および溶媒の他に、必要に応じて、樹脂、分散剤、可塑剤等を含有していてもよい。
銀粉としては、純度が99mass%以上、平均粒径が10nm以上10μm以下の物を用いることが好ましい。また、特定の粒度分布を有する銀粒子群を複数混合したものであってもよい。
【0022】
溶媒としては、アルコール系溶媒、グリコール系溶媒、アセテート系溶媒、炭化水素系溶媒、およびこれらの混合物等が挙げられる。
アルコール系溶媒としては、α-テルピネオール、イソプロピルアルコール、エチルヘキサンジオール、およびこれらの混合物等があり、グリコール系溶媒としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、およびこれらの混合物等があり、アセテート系溶媒としては、ブチルカルビトールアセテート等があり、炭化水素系溶媒としては、デカン、ドデカン、テトラデカン、およびこれらの混合物等がある。
【0023】
また、Agペースト23として、特許第6930578号公報に記載されているAgペーストを用いることもできる。
【0024】
(積層工程S02)
次に、第一部材11の接合面に塗布したAgペースト23を乾燥せずに、塗布したAgペースト23の上に第二部材12を積層する。すなわち、第一部材11にAgペースト23を塗布した後、加熱して乾燥することなく、第二部材12を積層している。
ここで、Agペースト23の塗布面積Aが第一部材11と第二部材12の接合面積B(第二部材12の接合面の面積)に比べて大きく設定されているので、塗布したAgペースト23の一部が、積層した第一部材11および第二部材12の間からはみ出して露出することになる。
【0025】
本実施形態では、図3に示すように、第二部材12の四辺からそれぞれAgペースト23がはみ出して露出するように、第二部材12が積層されている。
なお、本実施形態においては、Agペースト23の露出面積は、0.08mm以上0.30mm以下の範囲内であることが好ましい。
【0026】
(焼成工程S03)
次に、Agペースト23を介して積層された第一部材11および第二部材12を加熱処理し、Agペースト23を焼成し、Agの焼結体からなる接合層13を形成し、第一部材11と第二部材12とを接合する。
ここで、本実施形態においては、積層工程S02において、塗布したAgペースト23を乾燥せずに、第一部材11と第二部材12を積層していることから、焼成工程S03においては、第一部材11と第二部材12の積層方向に荷重を負荷することなく(無加圧)、加熱処理を行うことになる。なお、第二部材12を鉛直方向上方に積層した場合には、第二部材12の自重が作用することになるが、この場合でも「無加圧」となる。
【0027】
そして、焼成工程S03においては、図2および図4に示すように、第一保持工程S31と、第二保持工程S32と、を備えている。
第一保持工程S31における第一保持温度は65℃以上90℃以下の範囲内、第一保持時間は5分以上90分以下の範囲内とすることが好ましい。また、第一保持温度と第一保持時間との積が1200℃・分以上8100℃・分以下の範囲内とすることが好ましい。
また、第二保持工程S32における第二保持温度が200℃以上300℃以下の範囲内、第二保持時間が0分以上120分以下の範囲内とすることが好ましい。
さらに、焼成工程S03における昇温速度は2℃/min以上50℃/min以下の範囲内とすることが望ましい。
【0028】
上述の工程により、本実施形態である接合体10が製造されることになる。
【0029】
以上のような構成とされた本実施形態である接合体の製造方法によれば、第一部材11の接合面にAgペースト23を塗布するAgペースト塗布工程S01において、Agペースト23の塗布面積Aと第一部材11と第二部材12の接合面積Bとの比A/Bを1.08以上としているので、塗布したAgペースト23を介して第一部材11と第二部材12とを積層した際に、塗布したAgペースト23の一部が接合界面から外部に向けて露出した部分が形成される。このため、焼成工程S03において、露出した部分から有機成分の排出が促進され、焼成工程S03における焼成時間を短くしても、接合層13におけるクラックやボイドの発生を抑制することができる。
【0030】
また、Agペースト23の塗布面積Aと第一部材11と第二部材12の接合面積Bとの比A/Bを1.30以下とすることが好ましい。この場合、Agペースト23が大きく接合界面から露出することが抑制され、他の部材との干渉や短絡の発生を抑制することができる。
なお、Agペースト23の塗布面積Aと第一部材11と第二部材12の接合面積Bとの比A/Bの下限は、1.15以上とすることがさらに好ましい。
【0031】
本実施形態において、第一部材11と第二部材12の接合面積B(第二部材12の接合面の面積)が64mm以上である場合には、接合層13にクラックやボイドが生じやすい傾向にあっても、接合層13におけるクラックやボイドの発生を抑制することができ、接合信頼性に優れた接合体10を製造することができる。
なお、第一部材11と第二部材12の接合面積B(第二部材12の接合面の面積)の下限は、100mm以上とすることもでき、この場合であっても接合層13におけるクラックやボイドの発生を抑制することができ、接合信頼性に優れた接合体10を製造することができる。一方、第一部材11と第二部材12の接合面積B(第二部材12の接合面の面積)の上限に特に制限はないが、225mm以下であることが好ましい。
【0032】
また、本実施形態において、焼成工程S03が、第一保持工程S31と第二保持工程S32とを有しており、第一保持工程S31における保持温度が65℃以上90℃以下の範囲内、保持時間が5分以上90分以下の範囲内とされている場合には、焼成工程S03を比較的短時間で行うことができ、接合体10をさらに効率良く製造することができる。また、Agペースト23の有機成分の揮発を促進することで、接合層13におけるクラックやボイドの発生を十分に抑制することができる。
【0033】
なお、第一保持工程S31における保持温度の下限は、70℃以上であることがさらに好ましく、75℃以上であることがより好ましい。一方、第一保持工程S31における保持温度の上限は、85℃以下であることがさらに好ましい。
また、第一保持工程S31における保持時間の下限は、10分以上であることがさらに好ましく、15分以上であることがより好ましい。一方、第一保持工程S31における保持時間の上限は、60分以下であることがさらに好ましく、40分以下であることがより好ましい。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、絶縁回路基板の回路層(第一部材)に、電子部品として半導体素子(第二部材)を接合するものとして説明したが、これに限定されることはなく、第一部材と第二部材とが接合層を介して接合された接合体であればよい。
【0035】
また、本実施形態においては、図3に示すように、第二部材12の四辺からそれぞれAgペースト23がはみ出して露出するように、第二部材12が積層されたものとして説明したが、これに限定されることはなく、図5(a)~(c)に示すように、第一部材11と第二部材12との間に充填されるとともに、その一部が第一部材11と第二部材12の間からはみ出して露出していればよい。
【実施例0036】
以下に、本発明に係る接合体の製造方法の作用効果について評価した評価試験の結果を説明する。
【0037】
第一部材として、35mm×35mm×2mmtの銅基板(無酸素銅製)を準備した。
第二部材として、表1に示す大きさで厚さ0.4mmのSi素子を準備した。なお、Si素子の接合面には、Ti/Ni/Au多層めっきを形成した。
また、Agペーストとして、特許第6930578号公報の本発明例7を準備した。
【0038】
次に、メタルマスクおよびメタルスキージを用いたスクリーン印刷によって、銅基板の表面にAgペーストを塗布した。このとき、Agペーストの塗布厚さを150μmとし、塗布面積を表1に示すものとした。
そして、塗布したAgペーストを乾燥せずにSi素子を積層した。
【0039】
Agペーストを介して積層した銅基板およびSi素子を熱処理炉に装入し、不活性ガス(Nガス)雰囲気(酸素濃度1%以下)で、熱処理することで、Agペーストを焼成し、銀の焼結体からなる接合層を介して銅基板とSi素子とを接合した。
このとき、図4に示すように、第一保持工程と第二保持工程とを有する加熱パターンで熱処理を実施した。第一保持工程の条件を表1に示す。第二保持工程の条件は250℃で10分保持とした。また、室温(25℃)から第一保持工程の保持温度までの昇温速度、および、第一保持工程の保持温度から第二保持工程の保持温度までの昇温速度を10℃/分とした。
【0040】
上述のようにして製造された接合体について、接合層のボイドおよびクラックを以下のようにして評価した。
超音波探傷機(日立パワーソリューションズ社製FSP8V)で接合層全体を観察した。白色で示される未接合部の面積と同じ面積の円とした場合における直径、即ち、円相当径が1mm以上である場合をボイドと判定した。また、白色又は黒色の線が1mm以上である場合をクラックと判定した。
ボイド又はクラックが確認されたものを「×」、ボイド又はクラックが確認されなかったものを「〇」と表記した。
【0041】
【表1】
【0042】
比較例1においては、Agペーストの塗布面積Aと接合面積B(Si素子の面積)との比A/Bを1.00とし、第一保持工程の保持温度を80℃、保持時間を30分としたが、接合層にクラック又はボイドが確認された。
比較例2においては、Agペーストの塗布面積Aと接合面積B(Si素子の面積)との比A/Bを1.00とし、第一保持工程の保持温度を85℃、保持時間を15分としたが、接合層にクラック又はボイドが確認された。
【0043】
比較例3においては、Agペーストの塗布面積Aと接合面積B(Si素子の面積)との比A/Bを1.00とし、第一保持工程の保持温度を75℃、保持時間を40分としたが、接合層にクラック又はボイドが確認された。
比較例4においては、Agペーストの塗布面積Aと接合面積B(Si素子の面積)との比A/Bを1.00とし、第一保持工程の保持温度を70℃、保持時間を40分としたが、接合層にクラック又はボイドが確認された。
【0044】
これに対して、本発明例1-25においては、Agペーストの塗布面積Aと接合面積B(Si素子の面積)との比A/Bを1.082以上とし、第一保持工程の保持温度および保持時間を表1に記載のように変更したが、いずれも接合層にクラック又はボイドが確認されなかった。
【0045】
以上のことから、本発明例によれば、第一部材と第二部材とが銀の焼結体からなる接合層を介して接合された接合体を、効率良く製造でき、かつ、接合層におけるクラックやボイドの発生を抑制可能な接合体の製造方法を提供できることが確認された。
【符号の説明】
【0046】
10 接合体
11 第一部材
12 第二部材
13 接合層
23 Agペースト
図1
図2
図3
図4
図5