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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101921
(43)【公開日】2023-07-24
(54)【発明の名称】鉄道車両及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B61D 17/08 20060101AFI20230714BHJP
   B61D 17/00 20060101ALI20230714BHJP
【FI】
B61D17/08
B61D17/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002160
(22)【出願日】2022-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大橋 健悟
(57)【要約】
【課題】
側出入口枠と側外板の接合において、意匠性を確保しつつ、十分な強度を確保することが可能な鉄道車両を提供すること。
【解決手段】
側出入口(乗客乗降口26,乗務員乗降口28)の周縁を構成する側出入口枠6,11と、側出入口枠6,11と軌道方向に並ぶ側外板7と、軌道方向に沿って延在し、側外板7を内面72から支持する横骨8と、を備え、側外板7は、横骨8から軌道方向に張り出し、側出入口枠6,11に接合される接合部71を備える鉄道車両1において、接合部71は、側出入口枠6,11の、枕木方向外方側の外面62a,11aに直接に接合されること、接合部71に側出入口枠6,11を挟んで対向し、側出入口枠6,11の、枕木方向内方側の内面62b,11bに接合されるとともに、横骨8に接合される補強部材10を備えること。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
側出入口の周縁を構成する側出入口枠と、前記側出入口枠と軌道方向に並ぶ側外板と、軌道方向に沿って延在し、前記側外板を内面から支持する横骨と、を備え、
前記側外板は、前記横骨から軌道方向に張り出し、前記側出入口枠に接合される接合部を備える鉄道車両において、
前記接合部は、前記側出入口枠の、枕木方向外方側の外面に直接に接合されること、
前記接合部に前記側出入口枠を挟んで対向し、前記側出入口枠の、枕木方向内方側の内面に接合されるとともに、前記横骨に接合される補強部材を備えること、
を特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄道車両において、
垂直方向に沿って延在し、前記側外板を内面から支持する縦骨を備えること、
前記補強部材は、前記縦骨に接合される接合部を備えること、
を特徴とする鉄道車両。
【請求項3】
請求項1に記載の鉄道車両において、
前記補強部材は、垂直方向に沿って延在し、前記側外板を内面から支持する縦骨部を備えること、
を特徴とする鉄道車両。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の鉄道車両において、
前記側出入口枠に接合された前記接合部の縁部が、連続溶接により前記側出入口枠に接合されること、
を特徴とする鉄道車両。
【請求項5】
請求項1に記載の鉄道車両の枕木方向の側面を構成する側構体を組み立てるための鉄道車両の製造方法であって、
前記側出入口枠と前記補強部材とを接合した第1ブロックおよび前記側外板と前記横骨とを接合した第2ブロックとを予め組み立てるブロック組立工程と、
前記側構体のキャンバーも考慮して前記第1ブロックと前記第2ブロックとの接合位置を調整する調整工程と、
前記側外板を前記側出入口枠の外面に溶接接合する外板接合工程と、
前記補強部材を前記横骨に溶接接合する補強部材接合工程と、
の順で前記側構体が組み立てられること、
を特徴とする鉄道車両の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の構造に関し、詳しくは側出入口の周縁を構成する側出入口枠の接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
まず、従来技術に係る鉄道車両について、図10を用いて説明する。図10は、従来技術に係る鉄道車両の、側外板と側出入口枠の接合状態を示す図である。図中の左右方向が軌道方向である。また、図中の上下方向が枕木方向であり、上側が鉄道車両の外方側である。
【0003】
従来、鉄道車両の中でもステンレス車両においては、側出入口(例えば、乗客乗降口)の周縁を構成する側出入口枠6に対し、車両の側面を構成する側外板7が軌道方向に並べられており、側外板7は、側出入口枠6の、枕木方向内方側の内面62bに接した状態とされている。また、鉄道車両は、垂直方向に沿って延在し、側外板7を内面72から支持する縦骨15を有している。当該縦骨15の側出入口枠6の側の端部は、L字形に湾曲された接合部151であり、当該接合部151は、側外板7の内面72に接した状態とされている。そして、枕木方向の外方側から、側出入口枠6、側外板7、縦骨15の接合部151、の順に3枚重ねられた状態でスポット溶接されている。
【0004】
そのような中、近年、鉄道車両の意匠性を重視する傾向が強まっていることや、宣伝広告等を印刷したフィルムを側外板の外面に貼ったラッピング車両が増加していることに伴い、例えば図11に示すように、側外板7および縦骨15の接合部151を、側出入口枠6の、枕木方向外方側の外面62aの側に接合し、側外板7の外面の、鉄道車両の外部に露出した部分を可能な限り増やすことが行われている。なお、このように、側外板7を、側出入口枠6の、枕木方向外方側の外面に接合する構成は、特許文献1にも開示されている(特に特許文献1の図2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-20729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
側外板7および縦骨15の接合部151を重ねた場合、側外板7の端部7aと接合部151の端部151aは、製造公差等により位置が揃わず、不要な段差18が生じる。したがって、図11のように、側外板7および縦骨15の接合部151を、側出入口枠6の、枕木方向外方側の外面62aに接合すると、当該段差18が鉄道車両の外部に露出することになる。これは、鉄道車両の機能の面では問題が無いが、意匠性を損ねることになるため、望ましくない。
【0007】
上記した不要な段差18が鉄道車両の外部に露出することを防ぐために、図12(a)に示すように、側出入口枠6の、枕木方向外方側の外面62aに、側外板7のみ接合することも考えられる。しかし、台車で支持される鉄道車両は、垂直荷重により弓なり状に撓むため、この撓みによる荷重が側外板7に負荷される。側外板7のみが側出入口枠6と接合された状態であると、強度が不十分であり、側外板7が荷重に耐えきれずに、図12(b)の変形部19に示すように、側出入口枠6と横骨8の間の部分で変形するおそれがある。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためのものであり、側出入口枠と側外板の接合において、意匠性を確保しつつ、十分な強度を確保することが可能な鉄道車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の鉄道車両及び鉄道車両の製造方法は、次のような構成を有している。
(1)側出入口の周縁を構成する側出入口枠と、前記側出入口枠と軌道方向に並ぶ側外板と、軌道方向に沿って延在し、前記側外板を内面から支持する横骨と、を備え、前記側外板は、前記横骨から軌道方向に張り出し、前記側出入口枠に接合される接合部を備える鉄道車両において、前記接合部は、前記側出入口枠の、枕木方向外方側の外面に直接に接合されること、前記接合部に前記側出入口枠を挟んで対向し、前記側出入口枠の、枕木方向内方側の内面に接合されるとともに、前記横骨に接合される補強部材を備えること、を特徴とする。
【0010】
(5)(1)に記載の鉄道車両の枕木方向の側面を構成する側構体を組み立てるための鉄道車両の製造方法であって、前記側出入口枠と前記補強部材とを接合した第1ブロックおよび前記側外板と前記横骨とを接合した第2ブロックとを予め組み立てるブロック組立工程と、前記側構体のキャンバーも考慮して前記第1ブロックと前記第2ブロックとの接合位置を調整する調整工程と、前記側外板を前記側出入口枠の外面に溶接接合する外板接合工程と、前記補強部材を前記横骨に溶接接合する補強部材接合工程と、の順で前記側構体が組み立てられること、を特徴とする。
【0011】
(1)に記載の鉄道車両または(5)に記載の鉄道車両の製造方法により製造された鉄道車両によれば、側外板が、接合部により、側出入口枠の、枕木方向外方側の外面に直接に接合(例えばスポット溶接)される。つまり、特許文献1や図11に示されるように、側外板7および縦骨15の接合部151を重ねた状態で側出入口枠6に接合するものではないため、図11に示すような、不要な段差18が鉄道車両の外部に露出することがない。よって、意匠性を確保することが可能である。また、補強部材が、側外板の接合部に側出入口枠を挟んで対向し、側出入口枠の、枕木方向内方側の内面に接合されるとともに、横骨に接合されることで、側外板と側出入口枠との接合を補強している。これにより、鉄道車両が垂直荷重により弓なり状に撓んだとしても、側外板が変形してしまうおそれが低減される。
【0012】
(2)(1)に記載の鉄道車両において、垂直方向に沿って延在し、前記側外板を内面から支持する縦骨を備えること、前記補強部材は、前記縦骨に接合される接合部を備えること、を特徴とする。
【0013】
(2)に記載の鉄道車両によれば、補強部材が接合部により、側外板を内面から支持する縦骨にも接合されるため、側外板と側出入口枠との接合に対する補強を、より強固にすることが可能である。
【0014】
(3)(1)に記載の鉄道車両において、前記補強部材は、垂直方向に沿って延在し、前記側外板を内面から支持する縦骨部を備えること、を特徴とする。
【0015】
(3)に記載の鉄道車両によれば、縦骨と補強部材とが一体の部材であるため、補強部材と縦骨とを別個に製造する必要がない。よって、部品点数の削減、鉄道車両の製造工数の削減を図ることができる。
【0016】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載の鉄道車両において、前記側出入口枠に接合された前記接合部の縁部が、連続溶接により前記側出入口枠に接合されること、を特徴とする。
【0017】
(4)に記載の鉄道車両によれば、側出入口枠に接合された接合部の縁部が、連続溶接(水密溶接)により側出入口枠に接合されるため、側出入口枠と側外板の間から、車両構体に水(雨水等)が侵入することを防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の鉄道車両によれば、側出入口枠と側外板の接合において、意匠性を確保しつつ、十分な強度を確保することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態に係る鉄道車両の側面図である。
図2】側構体を構成する側出入口枠を鉄道車両の内側から見た図である。
図3図2のB-B断面図である。
図4】側外板と側出入口枠を接合する工程を説明する図である。
図5図1のA-A断面図である。
図6】本実施形態に係る鉄道車両の第1の変形例について説明する図であり、図3に対応する断面図である。
図7】本実施形態に係る鉄道車両の第2の変形例について説明する図であり、図3に対応する断面図である。
図8】本実施形態に係る鉄道車両の第3の変形例について説明する図であり、図3に対応する断面図である。
図9】本実施形態に係る鉄道車両の第4の変形例について説明する図であり、図3に対応する断面図である。
図10】従来技術に係る鉄道車両の、側外板と側出入口枠の接合状態を示す図であり、図3に対応する断面図である。
図11】従来技術に係る鉄道車両の、側外板と側出入口枠の接合状態を示す図であり、図3に対応する断面図である。
図12】(a)は従来技術に係る鉄道車両の、側外板と側出入口枠の接合状態を示す図であり、(b)はその問題点を説明するための図である。
図13】補強部材の接合部の形状の変形例を示す図である。
図14図13の部分Cの部分拡大図である。
図15図14のD-D断面図である。
図16図14のE-E断面図である。
図17】補強部材の接合部の形状の変形例を示す図である。
図18図17の部分Fの部分拡大図である。
図19図18のG-G断面図である。
図20図18のH-H断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る鉄道車両の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る鉄道車両1の側面図である。なお、図1中の左右方向が軌道方向であり、図1中の上下方向が垂直方向である。図2は、側構体24を構成する側出入口枠6を鉄道車両1の内側から見た図である。なお、図2中の左右方向が軌道方向であり、図2中の上下方向が垂直方向である。図3は、図2のB-B断面図である。なお、図3中の左右方向が軌道方向である。また、図3中の上下方向が枕木方向であり、上側が鉄道車両1の外方側である。
【0021】
鉄道車両1は、通勤車両として用いられるステンレス車両であり、図1に示すように、車両構体2と、車両構体2を支持する台車5と、を有している。
【0022】
車両構体2は、鉄道車両1の床部をなす台枠21と、台枠21の軌道方向の一方の端部(図1中の左端部)に立設されることで車両構体2の先頭部をなす前面妻構体22と、台枠21の軌道方向の他方の端部(図1中の右端部)に立設されることで車両構体2の連結部を形成する連妻構体23と、台枠21の枕木方向の両端部に立設されることで車両構体2の側面部を形成する一対の側構体24と、前面妻構体22の上端部と連妻構体23の上端部と一対の側構体24の上端部に結合されることで車両構体2の屋根部を形成する屋根構体25と、により6面体をなすように構成されている。
【0023】
車両構体2は、内部に客室や乗務員室を有している。また、車両構体2の側面には、客室に通じる乗客乗降口26(側出入口の一例)および窓27A,27B,27C,27D、乗務員室に通じる乗務員乗降口28(側出入口の一例)が設けられている。
【0024】
側構体24は、厚さ約2mmのステンレス鋼板からなる複数枚の側外板7を備える。さらに、複数枚の側外板7のそれぞれの間に位置されるとともに側外板7に接合される側出入口枠6と、側外板7を支持する横骨8および縦骨9と(図3参照)、側外板7と側出入口枠6との接合を補強する補強部材10と、を備えている(図3参照)。
【0025】
側出入口枠6は、乗客乗降口26の周縁を構成する四角枠であり、厚さ約4mmのステンレス鋼板からなる。側出入口枠6は、図2に示すように、乗客乗降口26の軌道方向の縁を構成する一対の入口柱62と、乗客乗降口26の上側の縁を構成する鴨居部63と、乗客乗降口26の下側の縁を構成する敷居部64とを備え、各部が接合されることで、出入口用開口部61が形成されている。
【0026】
入口柱62は、図3に示すように、軌道方向に平行な部分と枕木方向に平行な部分とにより断面略L字状に形成されており、軌道方向に平行な部分の、枕木方向外方側の外面62aには、側外板7が直接に接合されている。
【0027】
横骨8は、材質をステンレス鋼とした、断面ハット形の長尺部材である。横骨8は、軌道方向に沿って延在した状態で側外板7の内面72に接合され、側外板7を支持している。横骨8の軌道方向の長さは、側外板7の軌道方向の長さよりも短くされており、側外板7は、軌道方向の側出入口枠6側の端部が、横骨8から軌道方向に張り出している。そして、その側外板7の張り出した部分が、側出入口枠6(入口柱62)に接合される接合部71である。接合部71は、側出入口枠6(入口柱62)に、スポット溶接により接合される。さらに、接合部71の縁部71aが、連続溶接(水密溶接)により、側出入口枠6(入口柱62)に接合される。縁部71aは、側外板7の垂直方向の長さと同一の長さであり、連続溶接(水密溶接)は、縁部71aの全長において行われる。
【0028】
縦骨9は、材質をステンレス鋼とした、垂直方向に沿って延在する長尺部材である。縦骨9は、枕木方向の内方側(図中下方側)に突出する凸部91と、凸部91の軌道方向の両端から張り出すフランジ部92,93とにより、断面ハット形に形成されている。フランジ部92,93が、横骨8の側外板7とは反対側の端面81に接合されており、これにより、縦骨9は固定され、側外板7を内面72側から支持している。
【0029】
補強部材10は、ステンレス鋼からなり、側出入口枠6(入口柱62)に接合される接合部101と、横骨8に接合される接合部102とが互い違いに位置することで、断面Z形に形成されている。補強部材10の接合部101は、側外板7の接合部71に側出入口枠6(入口柱62)を挟んで対向し、側出入口枠6(入口柱62)の、枕木方向内方側の内面62bに接合されている。具体的には、スポット溶接により接合されている。さらに、補強部材10の接合部102は、横骨8の側外板7とは反対側の端面81に接合される。具体的には、接合部102を枕木方向に貫通する貫通孔103を利用し、リング溶接またはプラグ溶接により接合される。
【0030】
なお、ここまで図2の側出入口枠6の右側端部におけるB-B断面図である図3を用いて説明しているが、図2の側出入口枠6の左側端部においては、図3に示す構成と左右対称の構成となっている。
【0031】
次に、以上のような構成の鉄道車両1における、側外板7と側出入口枠6(入口柱62)を接合する工程について説明する。図4は、側外板7と側出入口枠6(入口柱62)を接合する工程を説明する図である。
【0032】
側出入口枠6(入口柱62)と側外板7の接合を行う前に、予め、図4に示すように、側出入口枠6(入口柱62)と補強部材10をスポット溶接あるいはアーク溶接で接合しておく。なお、この段階では、側出入口枠6(入口柱62)と補強部材10とを完全に接合した状態とせずに、仮止め溶接や拘束具を用いるなどして、仮止め状態としておいても良い。さらに、側外板7には横骨8および縦骨9を接合しておく。ここで、側出入口枠6(入口柱62)と補強部材10とを接合したものを第1ブロック16とし、側外板7に横骨8および縦骨9を接合したものを第2ブロック17とする。
【0033】
そして、第1ブロック16と第2ブロック17とを、側外板7の接合部71が側出入口枠6(入口柱62)の外面62aに接するように、かつ、補強部材10の接合部102が横骨8の端面81に接するように接近させていき、側出入口枠6(入口柱62)と側外板7との接合位置の調整を行う。
【0034】
接合位置の調整を行った後、側外板7の接合部71を、側出入口枠6(入口柱62)の外面62aに、スポット溶接により接合する。側外板7の接合部71と側出入口枠6(入口柱62)と補強部材10の接合部101を同時にスポット溶接しても良い。側出入口枠6(入口柱62)と補強部材10とを仮止め状態とした場合には、側外板7の接合部71と側出入口枠6(入口柱62)と補強部材10の接合部101を同時にスポット溶接することで、側出入口枠6(入口柱62)と補強部材10とが完全に接合された状態となる。よって、先述の拘束具を用いて仮止め状態としていた場合には、この完全に接合された状態になった段階で拘束具を取り除く。
【0035】
接合部71の縁部71aを、連続溶接(水密溶接)により、側出入口枠6(入口柱62)に接合する。連続溶接(水密溶接)は、縁部71aの全長に渡って行われるため、側出入口枠6,11と側外板7の間から、車両構体2に水(雨水等)が侵入することを防止することができる。
【0036】
さらに、補強部材10の接合部102を、横骨8の端面81に、リング溶接またはプラグ溶接により接合する。これにより、側出入口枠6(入口柱62)と側外板7の接合が完了する。
【0037】
なお、側出入口枠6(入口柱62)と側外板7の接合を行う際には、側構体24のキャンバーも考慮される。車両構体2は、車両構体2の自重や乗客の重量によって、軌道方向の中央部が下方にたわみ、車両限界を侵すおそれがある。これを防止するため、予め側構体24にキャンバーを設ける必要がある。よって、側構体24が、軌道方向の中央部が上方(図1中の上方)に反った弓なり状になるよう、側出入口枠6(入口柱62)と側外板7とが接合される。
【0038】
ここまで、側外板7と乗客乗降口26の周縁を構成する側出入口枠6との接合について説明しているが、側外板7と乗務員乗降口28の周縁を構成する側出入口枠11(図1参照)との接合も、同様に行うことが可能である。
【0039】
乗務員乗降口28の周縁を構成する側出入口枠11は、図5に示すように、断面略Z字状に形成されることが一般的であり、側出入口枠の断面形状が異なる点を除いて、図3に示す、側出入口枠6と側外板7の接合と同様の構成である。つまり、側外板7の接合部71が、側出入口枠11の枕木方向外方側の外面11aに直接に接合される点、および、補強部材10が、接合部71に側出入口枠11を挟んで対向し、側出入口枠11の枕木方向内方側の内面11bに接合されるとともに、横骨8に接合されている点は、図3に示す、側出入口枠6と側外板7の接合と同様の構成である。
【0040】
なお、側外板7の接合部71と側出入口枠6(入口柱62)とを接合する部分と、側出入口枠6(入口柱62)と補強部材10の接合部101とを接合する部分を分けるために、補強部材10の接合部101の形状を、例えば図13および図14に示すように、切り欠き部101aを一定間隔に設けることで、櫛歯形状としても良い。ここで、図13は、補強部材10の接合部101の形状の変形例を示す図である。図14は、図13の部分Cの部分拡大図である。図15は、図14のD-D断面図である。図16は、図14のE-E断面図である。なお、図14には、側出入口枠6(入口柱62)と補強部材10とを接合する溶接部105を破線の三角形で示し、側外板7の接合部71と側出入口枠6(入口柱62)とを接合する溶接部106を破線の四角形で示しているが、当該図形はあくまで溶接を行う位置を示すために表示するものであり、溶接痕の形状を示すものではない。
【0041】
補強部材10の接合部101の形状を櫛歯形状とした場合、接合部101と側出入口枠6(入口柱62)が重なる箇所は、図14中の溶接部105に示すように、第1ブロック16(図4参照)を形成する際に、側出入口枠6(入口柱62)と補強部材10の接合部101とをスポット溶接により接合する部分である。図15に示すように、側出入口枠6(入口柱62)と補強部材10の接合部101とを接合した部分の、枕木方向の外方側には、側外板7の接合部71が位置するため、スポット溶接による溶接痕は、側外板7の接合部71により隠される。また、切り欠き部101aが位置する箇所は、図16に示すように、側外板7の接合部71と側出入口枠6(入口柱62)のみが重なる部分であり、図14中の溶接部106に示すように、第1ブロック16(図4参照)と第2ブロック17(図4参照)を接合する際に、側外板7の接合部71と側出入口枠6(入口柱62)とをスポット溶接により接合する部分である。
【0042】
さらに、側外板7の接合部71と側出入口枠6(入口柱62)とを接合する部分と、側出入口枠6(入口柱62)と補強部材10の接合部101とを接合する部分を分けるために、補強部材10の接合部101に、例えば図17および図18に示すように、貫通孔101bを一定間隔に設けても良い。ここで、図17は、補強部材10の接合部101の形状の変形例を示す図である。図18は、図17の部分Fの部分拡大図である。図19は、図18のG-G断面図である。図20は、図18のH-H断面図である。なお、図18には、側出入口枠6(入口柱62)と補強部材10とを接合する溶接部107を破線の三角形で示し、側外板7の接合部71と側出入口枠6(入口柱62)とを接合する溶接部108を破線の四角形で示しているが、当該図形はあくまで溶接を行う位置を示すために表示するものであり、溶接痕の形状を示すものではない。
【0043】
この場合、接合部101と側出入口枠6(入口柱62)が重なる箇所は、図18中の溶接部107に示すように、第1ブロック16(図4参照)を形成する際に、側出入口枠6(入口柱62)と補強部材10の接合部101とをスポット溶接により接合する部分である。図19に示すように、側出入口枠6(入口柱62)と補強部材10の接合部101とを接合した部分の、枕木方向の外方側には、側外板7の接合部71が位置するため、スポット溶接による溶接痕は、側外板7の接合部71により隠される。また、貫通孔101bが位置する箇所は、図20に示すように、側外板7の接合部71と側出入口枠6(入口柱62)のみが重なる部分であり、図18中の溶接部108に示すように、第1ブロック16(図4参照)と第2ブロック17(図4参照)を接合する際に、側外板7の接合部71と側出入口枠6(入口柱62)とをスポット溶接により接合する部分である。
【0044】
(第1の変形例)
本実施形態に係る鉄道車両1の第1の変形例について、図6を用いて説明する。図6は、本実施形態に係る鉄道車両1の第1の変形例について説明する図であり、図3に対応する断面図である。
【0045】
上に説明した実施形態においては、補強部材10を、断面略Z字状に形成するために、直角に曲げられた湾曲部を有しているが、必ずしも直角に曲げる必要はない。例えば、図6に示す補強部材10のように、緩やかに曲げた形状としても良い。緩やかに曲げることで、直角に湾曲するよりも、補強部材10の製造がしやすいというメリットがある。なお、この場合、横骨8の側出入口枠6(入口柱62)側の端部を、斜めにカットしている。これは、横骨8が側外板7を支持する範囲を可能な限り広く取るためである。
【0046】
(第2の変形例)
本実施形態に係る鉄道車両1の第2の変形例について、図7を用いて説明する。図7は、本実施形態に係る鉄道車両1の第2の変形例について説明する図であり、図3に対応する断面図である。
【0047】
上に説明した実施形態においては、補強部材10の横骨8に対する接合は、リング溶接またはプラグ溶接により行うものとしているが、接合の方法はこれに限定されない。例えば、図7に示すように、補強部材10の接合部102の先端において、隅肉溶接を行い、溶接部104を設けることとしても良い。
【0048】
(第3の変形例)
次に、補強部材10の変形例として、図8に示す補強部材12について説明する。図8は、本実施形態に係る鉄道車両1の第3の変形例について説明する図であり、図3に対応する断面図である。
【0049】
補強部材12は、側出入口枠6(入口柱62)に接合される接合部121と、横骨8に接合される接合部122とが互い違いに形成されており、これは、上に説明した補強部材10において接合部101と接合部102とが互い違いに形成されていることと同様である。さらに、補強部材12は、接合部122の縦骨9側の端部から、縦骨9に接合するための接合部124が、縦骨9のフランジ部92の板厚分だけ枕木方向内方側へオフセットした段差部126を介して、縦骨9に向かって延伸されている。
【0050】
接合部124は、縦骨9のフランジ部92に、枕木方向の内方側から重ねられた状態で、フランジ部92に接合されている。この接合は、接合部124を枕木方向に貫通する貫通孔125を利用して、リング溶接またはプラグ溶接により行われる。なお、溶接の方法はこれらに限定されるものでなく、接合部124の先端で隅肉溶接を行っても良い。このように、補強部材12が、縦骨9に接合されることで、側外板7と側出入口枠6(入口柱62)との接合に対する補強を、より強固にすることが可能である。
【0051】
(第4の変形例)
さらに、補強部材10の変形例として、図9に示す補強部材13について説明する。図9は、本実施形態に係る鉄道車両1の第4の変形例について説明する図であり、図3に対応する断面図である。
【0052】
補強部材13は、側出入口枠6(入口柱62)に接合される接合部131と、横骨8に接合される接合部132とが互い違いに形成されており、これは、上に説明した補強部材10において接合部101と接合部102とが互い違いに形成されていることと同様である。
【0053】
補強部材13の接合部132は、側外板7を内面72側から支持するための縦骨部134に接続されている。縦骨部134は、枕木方向の内方側に突出する凸部135と、横骨8の端面81に接合されるフランジ部136とを備えている。この凸部135は、上に説明した実施形態の縦骨9の凸部91に相当し、フランジ部136は、同縦骨9のフランジ部93に相当する。つまり、補強部材13は、図3における補強部材10と縦骨9とが一体とされたひとつの部材である。このように一体の部材とすることで、補強部材10と縦骨9とを別個に製造する必要がないため、部品点数の削減、鉄道車両1の製造工数の削減をすることができる。なお、補強部材13が縦骨9の機能を有する縦骨部134を備えることとして説明しているが、補強部材13が有する、側外板7と側出入口枠6,11との接合を補強する機能(補強機能)および縦骨の機能の、どちらが主であり、どちらが副次的なものであるかを限定するものではない。つまり、名称は補強部材として説明したが、補強機能と縦骨の機能を併せ持つものであれば良いのであり、縦骨が副次的に補強機能を有するような部材であっても良い。
【0054】
以上説明したように、本実施形態に係る鉄道車両1及び鉄道車両1の製造方法は、
(1)側出入口(乗客乗降口26,乗務員乗降口28)の周縁を構成する側出入口枠6,11と、側出入口枠6,11と軌道方向に並ぶ側外板7と、軌道方向に沿って延在し、側外板7を内面72から支持する横骨8と、を備え、側外板7は、横骨8から軌道方向に張り出し、側出入口枠6,11に接合される接合部71を備える鉄道車両1において、接合部71は、側出入口枠6,11の、枕木方向外方側の外面62a,11aに直接に接合されること、接合部71に側出入口枠6,11を挟んで対向し、側出入口枠6,11の、枕木方向内方側の内面62b,11bに接合されるとともに、横骨8に接合される補強部材10を備えること、を特徴とする。
【0055】
(5)(1)に記載の鉄道車両1の枕木方向の側面を構成する側構体24を組み立てるための鉄道車両1の製造方法であって、側出入口枠6,11と補強部材10とを接合した第1ブロック16および側外板7と横骨8とを接合した第2ブロック17とを予め組み立てるブロック組立工程と、側構体24のキャンバーも考慮して第1ブロック16と第2ブロック17との接合位置を調整する調整工程と、側外板7を側出入口枠6,11の外面62aに溶接接合する外板接合工程と、補強部材10を横骨8に溶接接合する補強部材接合工程と、の順で側構体24が組み立てられること、を特徴とする。
【0056】
(1)に記載の鉄道車両1または(5)に記載の鉄道車両1の製造方法により製造された鉄道車両1によれば、側外板7が、接合部71により、側出入口枠6,11の、枕木方向外方側の外面62a,11aに直接に接合(例えばスポット溶接)される。つまり、特許文献1や図11に示されるように、側外板7および縦骨15の接合部151を重ねた状態で側出入口枠6に接合するものではないため、図11に示すような、不要な段差18が鉄道車両1の外部に露出することがない。よって、意匠性を確保することが可能である。また、補強部材10が、側外板7の接合部71に側出入口枠6,11を挟んで対向し、側出入口枠6,11の、枕木方向内方側の内面62b,11bに接合されるとともに、横骨8に接合されることで、側外板7と側出入口枠6,11との接合を補強している。これにより、鉄道車両1が垂直荷重により弓なり状に撓んだとしても、側外板7が変形してしまうおそれが低減される。
【0057】
(2)(1)に記載の鉄道車両1において、垂直方向に沿って延在し、側外板7を内面72から支持する縦骨9を備えること、補強部材12は、縦骨9に接合される接合部124を備えること、を特徴とする。
【0058】
(2)に記載の鉄道車両1によれば、補強部材12が接合部124により、側外板7を内面72から支持する縦骨9にも接合されるため、側外板7と側出入口枠6,11との接合に対する補強を、より強固にすることが可能である。
【0059】
(3)(1)に記載の鉄道車両1において、補強部材13は、垂直方向に沿って延在し、側外板7を内面72から支持する縦骨部134を備えること、を特徴とする。
【0060】
(3)に記載の鉄道車両1によれば、縦骨と補強部材とが一体の部材であるため、補強部材と縦骨とを別個に製造する必要がない。よって、部品点数の削減、鉄道車両1の製造工数の削減を図ることができる。
【0061】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載の鉄道車両1において、側出入口枠6,11に接合された接合部71の縁部71aが、連続溶接により側出入口枠6,11に接合されること、を特徴とする。
【0062】
(4)に記載の鉄道車両によれば、側出入口枠6,11に接合された接合部71の縁部71aが、連続溶接(水密溶接)により側出入口枠6,11に接合されるため、側出入口枠6,11と側外板7の間から、車両構体2に水(雨水等)が侵入することを防止することができる。
【0063】
なお、上記の実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。例えば、鉄道車両1としては、通勤車両に限定されるものではなく、特急車両等でも良い。
【符号の説明】
【0064】
1 鉄道車両
6 側出入口枠
7 側外板
8 横骨
10 補強部材
11 側出入口枠
26 乗客乗降口(側出入口の一例)
28 乗務員乗降口(側出入口の一例)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
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