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特開2023-101941中間基材、繊維強化複合材、及び繊維強化複合材を含む成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101941
(43)【公開日】2023-07-24
(54)【発明の名称】中間基材、繊維強化複合材、及び繊維強化複合材を含む成形体
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/76 20060101AFI20230714BHJP
   B32B 5/10 20060101ALI20230714BHJP
   B32B 27/26 20060101ALI20230714BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20230714BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20230714BHJP
   C08G 18/67 20060101ALI20230714BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20230714BHJP
   C08F 299/06 20060101ALI20230714BHJP
【FI】
C08G18/76 014
B32B5/10
B32B27/26
B32B27/30 A
C08J5/24 CEY
C08G18/67 010
C08G18/32 003
C08F299/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002194
(22)【出願日】2022-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000230364
【氏名又は名称】日本ユピカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】茂木 絵美
(72)【発明者】
【氏名】諸岩 哲治
(72)【発明者】
【氏名】清水(石根) 希望
【テーマコード(参考)】
4F072
4F100
4J034
4J127
【Fターム(参考)】
4F072AA04
4F072AA07
4F072AB10
4F072AB28
4F072AD09
4F072AD43
4F072AE02
4F072AF17
4F072AF24
4F072AF31
4F072AG03
4F072AH04
4F072AH31
4F072AJ22
4F072AK14
4F072AL02
4F072AL07
4F072AL16
4F072AL17
4F100AD11A
4F100AK25A
4F100AK51A
4F100BA01
4F100CA02A
4F100DG01A
4F100DH01A
4F100DH02A
4F100EH46A
4F100EJ17
4F100GB07
4F100GB16A
4F100GB31
4F100GB66
4F100JD02A
4J034BA02
4J034BA06
4J034CA02
4J034CA03
4J034CB01
4J034CB02
4J034CB07
4J034CC03
4J034CC26
4J034CC37
4J034CC45
4J034CC52
4J034CC54
4J034CC55
4J034CC61
4J034CC67
4J034DA01
4J034FA02
4J034FA04
4J034FB01
4J034FC01
4J034FD01
4J034FE02
4J034HA01
4J034HA07
4J034HA11
4J034HC12
4J034HC61
4J034HC73
4J034JA01
4J034JA22
4J034KA01
4J034KA02
4J034KB02
4J034KC17
4J034KD02
4J034KE02
4J034QB14
4J034QB19
4J034QC03
4J034RA05
4J034RA06
4J034RA19
4J127AA03
4J127BB031
4J127BB111
4J127BB221
4J127BC021
4J127BC131
4J127BD451
4J127BE241
4J127BE24Y
4J127BF151
4J127BF15Y
4J127BF631
4J127BF63Y
4J127BG271
4J127BG27Z
4J127DA02
4J127DA16
4J127FA02
4J127FA03
(57)【要約】
【課題】FRP単独でもガスバリア性に優れ、繊維強化複合材とした際の力学物性に優れる中間基材を提供すること。
【解決手段】メタキシリレンジイソシアネート(A)と、不飽和二重結合を含むアルコール成分(B)と、を含む硬化性液状組成物を強化材に含浸させた中間基材。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタキシリレンジイソシアネート(A)と、
不飽和二重結合を含むアルコール成分(B)と、
を含む硬化性液状組成物を強化材に含浸させた中間基材。
【請求項2】
メタキシリレンジイソシアネート(A)と、
不飽和二重結合を含むアルコール成分(B)と、
を含む硬化性液状組成物の部分重合物と、
強化材とを含む中間基材。
【請求項3】
メタキシリレンジイソシアネート(A)と、
不飽和二重結合を含むアルコール成分(B)と、
を含む硬化性液状組成物の部分重合物と、
重合性単量体(C)と、
を含む部分重合組成物を強化材に含浸させた中間基材。
【請求項4】
メタキシリレンジイソシアネート残基を有するウレタン(メタ)アクリレートを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の中間基材。
【請求項5】
前記不飽和二重結合を含むアルコール成分(B)が、多価アルコールを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の中間基材。
【請求項6】
前記強化材が、繊維である、請求項1~5のいずれか1項に記載の中間基材。
【請求項7】
前記繊維が、炭素繊維である、請求項6に記載の中間基材。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の中間基材の硬化物である繊維強化複合材。
【請求項9】
請求項8に記載の繊維強化複合材を含む成形体。
【請求項10】
フィルム、塗料、複合材料、FRP容器、圧力容器、車載用部材、車両用部材、船舶用部材、建築部材、医療用部材、又はシェルターである請求項9に記載の成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素ガスバリア性に優れる繊維強化複合材及びその中間基材並びに繊維強化複合材を含む成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境低負荷の観点から水素を燃料として発電する燃料電池の開発及び利用が進んでいる。従来高圧ガスの圧力容器には鋼製の容器が用いられてきたが、軽量化を目的として樹脂材料を用いた圧力容器、いわゆるFRP容器を用いた高圧水素タンクの開発が進められている。
樹脂材料を使用した高圧水素タンクの構成としては、内層にガスバリア性を有する熱可塑性樹脂の中空容器(ライナー)を備え、外層に補強材として熱硬化性樹脂をマトリックスとした繊維強化プラスチック(FRP)を備えている。特に軽量化の観点から強化材としては炭素繊維が用いられている(例えば、特許文献1、2参照)。
前記熱硬化性のマトリックス樹脂としては一般にエポキシ樹脂が用いられている。エポキシ樹脂は接着性及び靭性に優れ炭素繊維との密着性も良く、機械的物性に優れた複合材料が得られるという利点がある。一方で、エポキシ樹脂は伸びが悪く耐衝撃性に劣る。
加えて汎用のエポキシ樹脂はそれ単独ではガスバリア性が期待できないため、高圧水素タンクのようなガスバリア性の求められる圧力容器においては、熱可塑性樹脂材料等ガスバリア性に優れるライナーの併用が必須であり、ライナーレス化による軽量化が難しい。
また、あらかじめ連続繊維束に樹脂を含浸させプリプレグ化させた中間基材を用いる場合、エポキシ樹脂マトリックスでは低温保管が必要である。さらに硬化工程においてエポキシ樹脂は長時間を要し、全体的にエネルギーコストが大きくなる懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1-113227号公報
【特許文献2】特開平8-285189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記問題点に鑑み、FRP単独でもガスバリア性に優れ、繊維強化複合材とした際の力学物性に優れる中間基材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者らは検討の結果、メタキシリレンジイソシアネート(A)と、不飽和二重結合を含むアルコール成分(B)と、を含む硬化性液状組成物を強化材に含浸させることで前記課題を解決できることを見いだした。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、FRP単独でもガスバリア性に優れる成形体を製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、何ら以下の説明に限定されるものではない。
本発明の中間基材は、メタキシリレンジイソシアネート(A)と、不飽和二重結合を含むアルコール成分(B)とを含む硬化性液状組成物を強化材に含浸させたものである。
【0008】
アルコール成分(B)は、不飽和二重結合を含むアルコールを含む。ここで、不飽和二重結合を含むアルコールとは、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有するアルコールを意味する。不飽和二重結合を含むアルコールは、モノアルコールであってもよいし、多価アルコールであってもよい。
不飽和二重結合を含むモノアルコールとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジアクリル化イソシアヌレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸などが挙げられる。これらのモノアルコールは、単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、不飽和二重結合を含む多価アルコールとしては、例えば、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルエチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,7-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのアルカンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートや、モノペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ポリペンタエリスリトール(メタ)アクリレートなどのペンタエリスリトール構造と(メタ)アクリレート構造を有するペンタエリスリトールアクリレート系化合物などが挙げられる。これらの多価アルコールは、単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0009】
不飽和二重結合を含むアルコール成分がモノアルコールである場合、アルコール成分(B)は、さらに多価アルコールを含むことが好ましい。この場合の多価アルコールは、前述の不飽和二重結合を含む多価アルコールであってもよいし、前述の不飽和二重結合を含む多価アルコール以外の多価アルコールであってもよい。このような多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブテンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-2-メチルプロパン-1,3-ジオール、2-ブチル-2-エチルプロパン-1,3-ジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,7-へプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、水添ビスフェノールA、トリシクロデカンジメタノール、スピログリコール、不飽和及び又は飽和酸と多価アルコールとを重縮合させたものなどが挙げられる。
これらの多価アルコールは、単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0010】
また、不飽和二重結合を含むアルコール成分が多価アルコールである場合、アルコール成分(B)は、前述の不飽和二重結合を含む多価アルコール以外の多価アルコールを含んでもよいし、モノアルコールを含んでもよい。モノアルコールとしては、前述の不飽和二重結合を含むモノアルコールであってもよいし、前述の不飽和二重結合を含むモノアルコール以外のモノアルコールであってもよい。
【0011】
強化材は、特に限定されることはなく、用途に応じて適宜選択することができる。強化材は、好ましくは繊維である。前記繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、ボロン繊維、セラミック繊維、アラミド繊維、ザイロン繊維、バサルト繊維、セルロース繊維、ポリオキシメチレン繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、超高分子量ポリエチレン繊維などが挙げられる。本発明においては、強化材として、炭素繊維を用いることが好ましい。炭素繊維を用いることで、軽量かつ高強度の繊維強化複合材を得ることができる。
【0012】
本発明の中間基材を製造するにあたり、硬化性液状組成物を強化材に含浸させる方法は特に限定されることはなく、強化材の形態等に応じて適宜選択して、公知の方法を用いることができる。
【0013】
硬化性液状組成物を強化材に含浸させて得られた中間基材は、熟成することで、硬化性液状組成物の一部分を重合させて、硬化性液状組成物の部分重合物と、強化材とを含む中間基材とすることができる。
熟成に際しては、ウレタン化反応触媒を含むことが好ましい。ウレタン化触媒には酸性触媒、塩基性触媒が使用できるが、中性触媒、例えば活性の高いジブチル錫ジラウレートやジブチル錫ジアセテートなどのスズ化合物などが好ましい。触媒の添加量は選択する他の原料によって異なるが、熟成時の発熱及びウレタンアクリレート形成の速度、中間材料の貯蔵安定性、硬化物の機械物性の観点から、硬化性液状組成物重量に対して、800ppm以下とすることが好ましい。
熟成の条件は、使用する触媒の種類及び添加量、並びに他の原料によって異なるが、一般的には30~80℃で1~10日であり、好ましくは40~60℃で2~6日である。
こうして得られた硬化性液状組成物の部分重合物には、メタキシリレンジイソシアネート残基を有するウレタン(メタ)アクリレートが含まれる。
【0014】
また、硬化性液状組成物の一部分を予め重合させてから強化材に含浸させて、硬化性液状組成物の部分重合物と、強化材とを含む中間基材を得ることもできる。硬化性液状組成物の一部分を予め重合させてから強化材に含浸させる場合、硬化性液状組成物には、さらに重合性単量体を含有させることが好ましい。前記重合性単量体としては、ビニルモノマーや単官能(メタ)アクリル酸エステル、多官能(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。イソシアネート基と反応する重合性単量体を配合すると保管時に反応して粘度が上昇し作業性が悪くなる虞や十分な機械物性を得ることができない虞がある。前記ビニルモノマーとしては、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、酢酸ビニルなどが挙げられる。また、単官能(メタ)アクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、ベンジル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。また、多官能(メタ)アクリル酸エステルとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレンジ(メタ)アクリレート、ノルボルネンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートなどが挙げられる。これらの重合性単量体(E)は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。中間基材としてのタック性や臭気、その硬化物の機械物性の点からジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレンジ(メタ)アクリレート、ベンジルメタクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートなどを含むことが好ましい。
重合に際しては、ウレタン化反応触媒を含むことが好ましい。ウレタン化触媒には酸性触媒、塩基性触媒が使用できるが、中性触媒、例えば活性の高いジブチル錫ジラウレートやジブチル錫ジアセテートなどのスズ化合物などが好ましい。触媒の添加量は選択する他の原料によって異なるが、熟成時の発熱及びウレタンアクリレート形成の速度、中間材料の貯蔵安定性、硬化物の機械物性の観点から、硬化性液状組成物重量に対して、800ppm以下とすることが好ましい。
重合の条件は、使用する触媒の種類及び添加量、並びに他の原料によって異なるが、一般的には60~130℃の温度範囲であり、好ましくは80~110℃の温度範囲である。なお、重合時間は、使用する原料で反応性が大きく異なるが、例えば30分~12時間の範囲とすることができる。
こうして得られた硬化性液状組成物の部分重合物には、メタキシリレンジイソシアネート残基を有するウレタン(メタ)アクリレートが含まれる。
【0015】
硬化性液状組成物はさらに、重合禁止剤を含むことが好ましい。重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、パラベンゾキノン、メチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、トルハイドロキノン等の公知の多価フェノール系重合禁止剤が使用できる。
重合禁止剤の添加量は選択する他の原料によって異なるが、硬化性液状組成物重量に対して、5000ppm以下とすることが好ましい。
【0016】
硬化性液状組成物はさらに、ラジカル重合開始剤を含むことが好ましい。ラジカル重合開始剤としては有機過酸化物系が挙げられ、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド系、ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド系、t-ブチルパーオキシベンゾエートなどのパーオキシエステル系、クメンハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド系、ジクミルパーオキサイドなどジアルキルパーオキサイド系、ビス(4-ターシャリーブチロイルヘキシル)パーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート系などが挙げられる。これらは中間基材の熟成温度、成形温度、保管温度などから適宜に選択することができ、単独又は2種以上混合して使用することができる。ラジカル重合開始剤の添加量は、硬化性液状組成物100質量部に対して、5質量部以下、例えば0.05~5質量部とすることができる。
【0017】
また、中間基材に光硬化性を付与する場合は、光硬化用のラジカル重合開始剤を使用することが可能である。例えばアセトフェノン、p-ジメチルアミノアセトフェノン、p-ジメチルアミノプロピオフェノンなどのアセトフェノン系、α-アルキルアミノベンゾフェノンなどのアミノベンゾフェノン系、ベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系、ベンゾインメチルエーテルなどのベンゾインエ-テル系、ベンジルジメチルケタールなどのベンジルケタール系、2-エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノンなどのアントラキノン系、クメンパーオキシドなどの有機過酸化物、2-メルカプトベンゾイミダールなどのチオール化合物、アセトフェノンo-ベンゾイルオキシムなどのo-アシルオキシム系などが挙げられる。これらは中間基材の熟成温度、成形温度、保管温度などから適宜に選択することができ、単独又は2種以上混合して使用することができる。光硬化用のラジカル重合開始剤の添加量は、硬化性液状組成物100質量部に対して、5質量部以下、例えば0.05~5質量部とすることができる。
【0018】
前述通りにして得られた中間基材は、ラジカル重合により硬化して硬化物である繊維強化複合材の成形体とすることができる。
成形方法としては、プレス成形法、オートクレーブ成形法、バッギング成形法、ラッピングテープ法、内圧成形法、シートラップ成形法や、強化繊維のフィラメントやプリフォームに硬化性樹脂組成物を含浸させて硬化し成形品を得るRTM、VaRTM、フィラメントワインディング、RFI等が挙げられるが、これらの成形方法に限られるものではない。
硬化性液状組成物中のラジカル重合開始剤の種類および成形体の形状にもよるが、成形温度は好ましくは70~180℃であり、より好ましくは100~150℃であり、成形時間は2~60分であることが好ましく、成形圧力は0.1~10MPaが好ましい。
本発明の繊維強化複合材は、水素ガスバリア性能が必要とされる用途において、例えばフィルム、塗料、複合材料、FRP容器、圧力容器、車載用部材、車両用部材、船舶用部材、建築部材、医療用部材、又はシェルターとして使用することができる。例えば、本発明の繊維強化複合材を用いたFRPの優れたガスバリア性能により、ライナーによるガスバリア性能に頼ることなく外層のFRP単独でガスバリア性に優れる複合材料を製造できる。
【実施例0019】
次に実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0020】
(実施例1)
容器にメタキシリレンジイソシアネート(三井化学社製)586.8部、エチレングリコール(三菱ケミカル社製)124.2部、ヒドロキシプロピルメタクリレート(共栄社製 ライトエステルHOP(N))288.1部、トルハイドロキノン0.1部、4-メチル-2,6-ジターシャリーブチルフェノール0.3部、ジブチル錫ジラウレート0.6部、及びパーブチルE(日油社製モノオキシカーボネート系有機過酸化物)9.9部を加えて均一になるまで撹拌混合した。得られた硬化性液状組成物をE-1とした。
【0021】
(実施例2)
容器にメタキシリレンジイソシアネート(三井化学社製)587.9部、グリセリン(日油社製)123.1部、ヒドロキシプロピルメタクリレート(共栄社製 ライトエステルHOP(N))288.1部、トルハイドロキノン0.1部、4-メチル-2,6-ジターシャリーブチルフェノール0.3部、ジブチル錫ジラウレート0.06部、及びパーブチルE(日油社製モノオキシカーボネート系有機過酸化物)9.9部を加えて均一になるまで撹拌混合した。得られた硬化性液状組成物をE-2とした。
【0022】
(比較例1)
容器にイソホロンジイソシアネート(エボニック社製 ベスタナートIPDI)593.0部、1,3-プロパンジオール117.9部、ヒドロキシプロピルメタクリレート(共栄社製 ライトエステルHOP(N))288.1部、トルハイドロキノン0.1部、4-メチル-2,6-ジターシャリーブチルフェノール0.3部、ジブチル錫ジラウレート0.6部、及びパーブチルE(日油社製モノオキシカーボネート系有機過酸化物)9.9部を加えて均一になるまで撹拌混合した。得られた硬化性液状組成物をC-1とした。
【0023】
(比較例2)
容器にビスフェノールA型エポキシ樹脂(日本ユピカ社製 ネオポール8250L)871.3部、パーブチルE(日油社製モノオキシカーボネート系有機過酸化物)8.7部、及びイソホロンジイソシアネート(エボニック社製 ベスタナートIPDI)120gを加えて均一になるまで撹拌混合した。得られた硬化性液状組成物をC-2とした。
【0024】
〔中間基材の作製〕
実施例1及び2、並びに比較例1及び2にて調製した硬化性液状組成物を繊維重量が60wt%となるように炭素繊維(三菱ケミカル社製 3K綾織 TR3523M)に含浸させた。50℃にて48時間熟成させ、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)の中間基材を得た。なお、硬化性液状組成物E-1及びE-2を用いた実施例1及び2においては、50℃48時間の熟成により、メタキシリレンジイソシアネートとヒドロキシプロピルメタクリレートとの間でウレタン結合が形成されることが赤外線吸収スペクトルにおけるイソシアネート基の吸収(2250cm-1付近)の追跡により確認された。
【0025】
〔複合材料試験片の作成〕
作製した中間基材を、100トンプレス機(東邦プレス製作所社製)にて130℃、4Barで10分間プレス成形を行い、複合材料の試験片を得た。
【0026】
<水素ガス透過係数の測定>
前記プレス成形にて得られた試験片を用い、JIS K 7126-1に準じて水素ガス透過係数を測定した。得られた結果を表1に示す。
<力学物性の測定>
前記プレス成形にて得られた試験片を用い、JIS K 7171に準じて曲げ試験を行った。得られた結果を表1に示す。
前記プレス成形にて得られた試験片を用い、JIS K 7078に準じて層間せん断試験を行った。得られた結果を表1に示す。
【0027】
【表1】
表1より、本発明の中間基材を用いて製造された複合材料は力学物性に優れ、水素ガス透過係数が低く、ガスバリア性が良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の中間基材の硬化物である繊維強化複合材料は、水素ガス等のガスバリア性に優れ、力学物性に優れることから、機械的強度とガスバリア性を両立する用途、例えば高圧ガス貯蔵タンクを構成する材料としてFRP容器に好適である。