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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101949
(43)【公開日】2023-07-24
(54)【発明の名称】検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/84 20060101AFI20230714BHJP
   G01M 3/38 20060101ALI20230714BHJP
   G01N 21/90 20060101ALI20230714BHJP
   H04N 23/52 20230101ALI20230714BHJP
   B67C 3/00 20060101ALI20230714BHJP
【FI】
G01N21/84 Z
G01M3/38 H
G01N21/90 D
H04N5/225 430
B67C3/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002207
(22)【出願日】2022-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】森田 慧
【テーマコード(参考)】
2G051
2G067
3E079
5C122
【Fターム(参考)】
2G051AA28
2G051AB15
2G051CA04
2G051CA07
2G051CD10
2G051DA02
2G051DA08
2G051EA14
2G067AA44
2G067BB17
3E079AB02
3E079FF03
3E079FG05
5C122DA12
5C122EA03
5C122EA69
5C122FA16
5C122FA18
5C122GD02
5C122GE01
5C122GE06
5C122GE11
(57)【要約】
【課題】充填装置における視覚的に判断可能な異常の有無を判断しうる検査装置を、高温多湿な環境に置かれうる場合があっても正常に動作させる。
【解決手段】画像データに基づいて検査対象を検査可能な検査装置であって、検査対象を撮影して画像データを生成可能な撮影装置2と、撮影装置2を収容している箱体3と、箱体3に空気を供給可能な空気供給源4と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データに基づいて検査対象を検査可能な検査装置であって、
前記検査対象を撮影して前記画像データを生成可能な撮影装置と、
前記撮影装置を収容している箱体と、
前記箱体に空気を供給可能な空気供給源と、を備える検査装置。
【請求項2】
前記箱体の面のうち、前記撮影装置の撮影範囲に存在する面材が、着脱自在である請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記検査対象が、飲料の充填装置である請求項1または2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記画像データを蓄積可能な記憶装置をさらに備え、
最新の前記画像データと、過去に蓄積された前記画像データの群と、に基づいて、最新の前記画像データが生成されたときの前記検査対象を検査する請求項1~3のいずれか一項に記載の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充填装置を検査可能な検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料などの液体製品を製造する工場では、回転駆動可能な円形の回転体の周に沿って複数の充填機が設けられた充填装置が汎用される。この類の充填装置では、回転体の回転運動に伴って充填機が軌道上を周回するように構成されており、当該周回の間に各充填機が、前工程からの空容器の受取り、空容器への飲料の充填、および、充填後の容器の次工程への受渡し、という三つの動作を繰り返し実施する。
【0003】
複数の充填機のうちのいずれか一つにでも不具合が生じると、当該充填機が、毎周回において不具合のある液体製品を生産し続けるおそれがある。そのため、不具合が生じている充填機を特定し、特定された充填機に対して修理や交換などの措置を行う必要がある。たとえば国際公開第2016/114062号(特許文献1)では、ターレット搬送を利用して、充填後製品の充填量に係る検査結果と、当該製品を充填した充填装置と、を関連付けることによって、充填量に異常が生じる原因となった充填装置を特定できるようにした充填密封装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2016/114062号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の技術では、充填量に異常が生じない態様の不具合を検出することはできなかった。すなわち、充填装置における部品の脱落および変色や、充填装置に対する異物の付着、といった不具合を検出することはできなかった。その一方で、充填装置の部品の一部は、不具合が生じたときに液体製品に混入するおそれがある態様で取り付けられている場合がある。そのような混入を未然に防ぐべく該当する部品の全数を、毎日、作業員が目視で点検する運用が行われている工場もあり、点検工数の削減が求められていた。
【0006】
目視で行われる点検を代替しうる方法として、点検対象の充填装置を撮影して得られた画像データに基づいて不具合の有無を判断する方法が考えられる。しかし、殺菌を目的として充填装置が設置されている室内に高温の蒸気が供給される場合があるところ、蒸気に起因する高温多湿な環境が撮影装置の故障を招くおそれがあるため、画像データに基づく点検の適用が難しかった。
【0007】
そこで、充填装置における視覚的に判断可能な異常の有無を判断しうる検査装置を、高温多湿な環境に置かれうる場合があっても正常に動作させることが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る検査装置は、画像データに基づいて検査対象を検査可能な検査装置であって、前記検査対象を撮影して前記画像データを生成可能な撮影装置と、前記撮影装置を収容している箱体と、前記箱体に空気を供給可能な空気供給源と、を備えることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、撮影装置を箱体に収容し、かつ箱体の中に空気を供給できるので、撮影装置の周囲に蒸気が充満することを防止しうる。これによって、撮影装置が高温多湿な環境に置かれることを避けうるので、検査装置が高温多湿の環境に置かれる場合であっても、検査装置を保護しうる。
【0010】
以下、本発明の好適な態様について説明する。ただし、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定されるわけではない。
【0011】
本発明に係る検査装置は、一態様として、前記箱体の面のうち、前記撮影装置の撮影範囲に存在する面材が、着脱自在であることが好ましい。
【0012】
撮影装置の全面を箱体で覆ってしまうと、仮に箱体を透明な材料で形成したとしても、得られる画像データの品質が損なわれるおそれがある。この構成によれば、撮影を行うときに撮影範囲に存在する面材を撤去できるので、箱体に起因して画像データの品質が低下することを防ぎうる。
【0013】
本発明に係る検査装置は、一態様として、前記検査対象が、飲料の充填装置であることが好ましい。
【0014】
飲料の充填装置は、特に殺菌する必要性が高いことから、高温多湿の環境に置かれる頻度が高い。そのため、撮影装置を併設することが難しい場合があったが、上記の構成によれば、撮影装置の併設が可能である。すなわち、飲料の充填装置は、本発明に係る検査装置を適用する利益が特に大きい装置だと言える。
【0015】
本発明に係る検査装置は、一態様として、前記画像データを蓄積可能な記憶装置をさらに備え、最新の前記画像データと、過去に蓄積された前記画像データの群と、に基づいて、最新の前記画像データが生成されたときの前記検査対象を検査することが好ましい。
【0016】
この構成によれば、検査の履歴を管理しうる。また、画像データの経時変化に基づいて、不具合の兆候を発見しうる。
【0017】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る充填装置の配置図である。
図2】実施形態に係る充填機および検査装置を示す斜視図である。
図3】実施形態に係る充填装置および検査装置のブロック図である。
図4】実施形態に係る画像データの例を示す図である。
図5】実施形態に係る画像データの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る検査装置の実施形態について、図面を参照して説明する。以下では、本発明に係る検査装置を、缶飲料を充填する充填装置100(検査対象の例であり、飲料の充填装置の例である。)の検査に適用される検査装置1を例として説明する。
【0020】
〔充填装置の構成〕
本実施形態に係る検査装置1を説明する前に、検査装置1が適用される充填装置100の構成について説明する。充填装置100は、回転駆動可能な円形の回転体101と、回転体101の駆動を制御可能な充填制御装置102と、回転体101の周に沿って設けられた複数の充填機103と、を備える(図1図3)。
【0021】
充填装置100の運転時において、回転体101は連続的に回転し、それぞれの充填機103は回転体101の回転により連続的に搬送される。充填機103は、軌道を一周する間に、前工程からの空缶の受取り、空缶への飲料の充填、および、充填後の缶の次工程への受渡し、を順に行う。すなわち、受取地点101aにおいて前工程(たとえば空缶洗浄機Cである。)からコンベアB1によって搬送された空缶を受け取り、充填区間101bにおいて空缶に飲料を充填し、受渡地点101cにおいて充填後の缶を次工程(たとえば巻締設備Sである。)に搬送するコンベアB2に受け渡す(図1)。また、検査地点101dが設定されており、検査地点101dにある充填機103を撮影可能な姿勢で検査装置1の撮影装置2が設置されている。
【0022】
回転体101は、円形の部材がモータ(不図示)の駆動により回転されるように構成されており、回転体101の周に沿って複数の充填機103が設けられている。回転体101の動作(モータの駆動および停止)は、充填制御装置102によって制御される。したがって、回転体101と充填制御装置102とは、電気的に接続されている。
【0023】
充填制御装置102は、公知のコンピュータとして実装されている。充填制御装置102は、回転体101に対して回転体101の動作(モータの駆動および停止)を制御可能な電気信号を発信できる。充填制御装置102は、回転体101の回転座標を特定でき、かつ当該回転座標を座標データとして検査装置1の撮影制御装置5に出力できるように構成されている。この構成は、たとえば、回転体101に備えられたエンコーダ(不図示)を使用して実装されうる。
【0024】
充填機103は、回転体101の周に沿って等間隔に整列している(図1)。本実施形態では、充填機103が164台設けられており、1番から164番までの識別番号が順に付されている。なお、各充填機103は、いずれも充填制御装置102と電気的に接続されており、充填制御装置102が発する電気信号によって各充填機103の動作が制御される。
【0025】
充填制御装置102は、回転体101の回転座標に基づいて、複数の充填機103のそれぞれについて回転座標上の地点を特定できる。そして、充填制御装置102は、充填区間101bにある充填機103のバルブを開放させて、充填を実行させる。なお、各充填機103の回転座標に係る座標データも、撮影制御装置5に出力される。
【0026】
充填機103は、高さ方向に移動できるように構成されている。本実施形態に係る充填装置100は大小二種類以上の容量(たとえば330mL、350mL、および500mL)の缶飲料を充填できるように構成されており、各容量の空缶の高さに対応した高さに充填機103を移動させることで、高さが異なる二種類以上の空缶を受容できるようになっている。充填機103の高さ方向の移動は、充填制御装置102から発する電気信号従って動作する。またこのとき充填制御装置102は、充填機103の高さがいずれに設定されているかの情報を取得でき、当該情報を撮影制御装置5に出力できる。
【0027】
製造される缶飲料への異物の混入を防ぐため、充填装置100を構成する部品の一部は、重要管理部品として管理されている。重要管理部品は、缶飲料に混入する危険性が特に大きい部品であり、充填機103では、先端の部材を固定するナット104、筒状の部品を固定するキャップスクリュー105、および、空缶に飲料を充填するときに空缶に当接するガスケット106、が該当する(図2)。ナット104、キャップスクリュー105、およびガスケット106を含む重要管理部品は、毎日、その全数が点検される。
【0028】
〔検査装置の構成〕
本実施形態に係る検査装置1は、充填装置100を検査可能な検査装置である。特に、検査装置1は、ナット104、キャップスクリュー105、およびガスケット106の全数検査を容易にするための装置である。検査装置1は、撮影装置2、箱体3、空気供給源4、撮影制御装置5、演算装置6、および記憶装置7を備える(図2図3)。
【0029】
撮影装置2は、検査地点101dにある充填機103を撮影して画像データを生成できるように構成されている。撮影装置2は、具体的には公知のデジタルカメラとして実装され、生成した画像データを演算装置6に出力できる。また、撮影装置2が画像データを生成する(撮影する)タイミングは、撮影制御装置5から入力される電気信号に従って決定される。また、撮影装置2は、箱体3に収容されている。
【0030】
箱体3の各面を構成する材料は、高温多湿の環境に耐えうる材料である限りにおいて特に限定されないが、硬質塩化ビニル製の透明板からなることが好ましい。ここで、「高温多湿の環境」とは、充填装置の分野における殺菌に一般的に適用される環境をいう。これは、充填装置100を含む全ての機器を殺菌するべく室内に高温の蒸気が供給されて室内が高温多湿になる場合があり、箱体3がこれに耐える必要があるためである。なお、箱体3の形状は、撮影装置2による充填機103の撮影を妨げない限りにおいて任意である。
【0031】
本実施形態では、二台の撮影装置2(2A、2B)が設けられており、これに対応して二つの箱体3(3A、3B)が設けられている。撮影装置2Aは、撮影範囲21Aを斜め上に向ける姿勢で箱体3Aに収容されており、撮影範囲21Aには充填機103のナット104およびガスケット106が含まれる(図4)。一方、撮影装置2Bは、撮影範囲21Bを水平方向に向ける姿勢で箱体3Bに収容されており、撮影範囲21Bには充填機103のキャップスクリュー105が含まれる(図5)。なお、箱体3の面のうち撮影範囲21に存在する面材31は、着脱自在である。充填装置100の検査を行うときには、面材31を取り外して、充填機103と撮影装置2との間に介在物が存在しない状態にする。これによって、面材31による光の反射や面材31に付着した異物などの影響を受けることなく、充填機103(特にナット104、キャップスクリュー105、およびガスケット106)を明瞭に撮影した画像データが得られる。
【0032】
箱体3の底面には空気供給源4に連通する空気供給管32が接続されている。空気供給管32から箱体3の内側に進入した空気は、面材31の周囲の隙間(面材31装着時)または面材31を取り外してできた開口部(面材31離脱時)を通じて、箱体3から流出する。これによって、撮影装置2の周囲を換気できる。
【0033】
撮影装置2および箱体3は、高さ方向に移動できるように設置されている。充填機103の高さが、充填される缶飲料の容量に対応した二種類の高さから選択されることに対応して、当該二種類の高さの充填機103をそれぞれ撮影装置2の撮影範囲に含めることができるように、撮影装置2および箱体3の高さも二種類の高さから選択できるようになっている。撮影装置2および箱体3を高さ方向に移動できるようにする具体的な実装の態様は、空気圧、油圧、電気などを駆動力とする公知の昇降装置33であってよく、かかる昇降装置33は、撮影制御装置5によって制御されうる。
【0034】
より詳細には、上下方向に延びる支持部材22の下側に撮影装置2Aおよび箱体3Aが固定され、上側に撮影装置2Bおよび箱体3Bが固定されている。そして、支持部材22が昇降装置33に接続されており、支持部材22を高さ方向に移動できるようにしてある。したがって、支持部材の上下動にかかわらず、撮影装置2Aと撮影装置2Bとの相対位置関係は不変である。これは、充填機103の高さが変わっても、ナット104、キャップスクリュー105、およびガスケット106の相対位置関係が不変であることに対応しており、いずれの高さが選択される場合であっても、撮影装置2Aの撮影範囲21Aにはナット104およびガスケット106が含まれ、撮影装置2Bの撮影範囲21Bにはキャップスクリュー105が含まれる。
【0035】
空気供給源4としては、工業的に汎用される空気供給源を用いうる。空気供給源4として専用のエアーコンプレッサーやポンプなどを設けてもよいし、充填装置100が設置されている工場のユーティリティとして供給される空気を空気供給源4として使用してもよい。ただし、空気供給源4は、供給する空気の温度および湿度の少なくとも一方を制御可能に構成されていることが好ましく、双方を制御可能に構成されていることがより好ましい。したがって、空気供給源4には、温度調整装置および湿度調整装置の一方または双方
が併設されうる。
【0036】
前述の通り、充填装置100を含む全ての機器を殺菌することを目的として、充填装置100が設置されている室内に高温の蒸気が供給され、室内が高温多湿になる場合がある。このような高温多湿な環境は、撮影装置2を構成する電子機器(デジタルカメラなど)の故障を招くおそれがある。そこで本実施形態では、箱体3および空気供給源4を設けて撮影装置2の周囲を常に換気し、撮影装置2が高温多湿の環境にさらされることを防いでいる。このとき、面材31を装着した状態にしておく。
【0037】
すなわち、箱体3および空気供給源4を設けることによって、箱体3の外部の環境にかかわらず撮影装置2を保護しうる。特に、箱体3の内部を陽圧にできるように構成すれば、箱体の外部から内部への流体の流入を防ぐことができ、好ましい。箱体3の内部を陽圧することは、たとえば空気供給源4の供給圧力を大気圧より高く設定することによって実現されうる。
【0038】
撮影制御装置5は、公知のプログラマブルロジックコントローラ(PLC)として実装されており、撮影装置2を制御できるように構成されている。具体的には、撮影制御装置5は、撮影装置2に画像データを生成させる(撮影させる)タイミングを決定する撮影制御機能と、昇降装置33に対して撮影装置2および箱体3の高さを指示する高さ制御機能と、を実行できる。
【0039】
撮影制御機能は、充填制御装置102から入力される各充填機103の座標データに基づいて、撮影装置2に画像データを生成させるタイミングを決定する機能である。撮影制御機能が実行されているとき、撮影制御装置5は、いずれかの充填機103が検査地点101dにある瞬間に撮影が行われるように、撮影装置2に撮影を実行させる電気信号を発信する。この動作が全ての充填機103について実施され、回転体101が一周する間に、全ての充填機103の画像データが生成される。
【0040】
より詳細には、第一に、識別番号1番の充填機103が検査地点101dにある瞬間に、識別番号1番の充填機103を撮影した画像データを撮影装置2に生成させる。なお、二台の撮影装置2(2A、2B)が設けられていることに対応して、識別番号1番の充填機103に係る画像データが同時に二点生成される。以下の説明では、この二点の画像データの対を画像データ対と称する。
【0041】
続いて、識別番号2番以降の充填機103を撮影した複数の画像データ対を撮影装置2に生成させる。これによって、識別番号1番の充填機103の画像データ対を先頭とし、識別番号2番以降の充填機103の画像データ対が識別番号の順に並ぶ画像データ対の群が生成される。このように、充填機103の識別番号の順に並んだ一連の画像データ対の群が生成されるので、検査結果を管理しやすい。なお、生成された画像データ対の群は、記憶装置7に蓄積される。
【0042】
高さ制御機能は、充填制御装置102から入力される充填機103の高さに係る情報に基づいて昇降装置33を制御して、撮影装置2(および箱体3)を高さ方向に移動させる機能である。より具体的には、充填機103が二種類の高さのうち低い方の高さにあるときは、撮影装置2の高さを低い方の高さとし、充填機103が高い方の高さにあるときは、撮影装置2の高さを高い方の高さとする。これによって、充填機103の高さに関わらず、充填機103と撮影装置2との相対位置を一定にでき、得られる画像データの画角を一定にできる。
【0043】
演算装置6は、公知のコンピュータとして実装されている。また、記憶装置7は、電子データを記憶可能な公知の記憶装置(ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブなど)として実装されている。演算装置6は、撮影装置2が生成した画像データに基づいて充填装置100を検査する検査機能を実行できるように構成されている。具体的には、検査機能は、画像データに基づいて、ナット104、キャップスクリュー105、およびガスケット106の異常の有無を検査する機能である。なお、ここで検査される異常の態様は、たとえば、各部品の脱落またはその兆候(締結の緩みなど)、異物の付着、変色などが例示され、いずれも視覚的に判断可能な異常である。記憶装置7は、生成された画像データ、およびその他の必要な情報を記憶する。
【0044】
〔検査機能の構成〕
検査機能を実行するための準備として、あらかじめ、過去に生成されて記憶装置7に蓄積されている画像データの群に含まれる複数の画像データに、正常状態(ナット104、キャップスクリュー105、およびガスケット106がいずれも正常な状態)または異常状態(ナット104、キャップスクリュー105、およびガスケット106の少なくとも一つが異常である状態)のラベルを付した教師データ群が用意される。ここで、正常状態および異常状態のラベル付けは、演算装置6のユーザーインターフェースを通じて実施されてもよいし、他のコンピュータを用いて実施されてもよい。なお、教師データ群は、正常状態に係る少なくとも一つの教師データと、異常状態に係る少なくとも一つの教示データとを、含むことが好ましい。
【0045】
本実施形態では、一つの充填機103に対して同時に生成される二点の画像データ(画像データ対)を用いて検査を行う。このことに対応して、撮影装置2Aが生成した画像データ(図4)については、ナット104およびガスケット106の異常の有無に基づいてラベル付けを行い、撮影装置2Bが生成した画像データ(図5)については、キャップスクリュー105の異常の有無に基づいてラベル付けを行う。
【0046】
なお、撮影装置2Aが生成した画像データについては、ナット104およびガスケット106の異常の有無をそれぞれ別々にラベリングしてもよい。この場合、撮影装置2Aが生成した画像データは、正常状態(ナット104およびガスケット106のいずれも正常な状態)、第一異常状態(ナット104に異常が見られ、ガスケット106が正常な状態)、第二異常状態(ガスケット106に異常が見られ、ナット104が正常な状態)、および第三異常状態(ナット104およびガスケット106に双方に異常がある状態)、の四通りにラベリングされうる。以下の説明は、この態様を前提とする。
【0047】
検査機能を実行する演算装置6の動作は、学習ステップと、取得ステップと、判定ステップとを含む。
【0048】
学習ステップは、教師データ群に基づいて分類器を構築するステップである。分類器を構築する際に使用されるアルゴリズムとしては、教師データを用いて分類器を構築する公知のアルゴリズムを使用できる。かかるアルゴリズムとしては、決定木、ランダムフォレスト、サポートベクターマシン、ニューラルネットワークなどが例示される。構築された分類器は、記憶装置7に記憶される。なお、本実施形態では、撮影装置2Aが生成した画像データに基づく分類器と、撮影装置2Bが生成した画像データに基づく分類器と、が別々に構築される。
【0049】
取得ステップは、判定ステップで使用する画像データを取得するステップである。具体的には、演算装置6は、撮影装置2が生成した画像データ(すなわち、最新の画像データである。)を取得する。なお、前述の通り、一台の充填機103について二点の画像データ(画像データ対)が生成され、演算装置6はこれらを同時に取得する。
【0050】
判定ステップは、学習ステップで構築した分類器と、取得ステップで取得した画像データと、に基づいて、ナット104、キャップスクリュー105、およびガスケット106の異常の有無を判定するステップである。ここで、撮影装置2Aが生成した画像データ(図4)に基づく判定には、撮影装置2Aが生成した画像データに基づいて構築した分類器を使用し、撮影装置2Bが生成した画像データ(図5)に基づく判定には、撮影装置2Bが生成した画像データに基づいて構築した分類器を使用する。そして、撮影装置2Aが生成した画像データに基づく判定、および、撮影装置2Bが生成した画像データに基づく判定、の少なくとも一方において異常状態であると判定した場合は、判定に使用した画像データ対に係る充填機103が異常状態にあると判定する。また、上記の手順を通じて、当該充填機103のナット104、キャップスクリュー105、およびガスケット106のそれぞれについて、異常の有無が判定される。
【0051】
上記の各ステップのうち、取得ステップおよび判定ステップは画像データ対ごとに行われる。本実実施形態では、識別番号1番の充填機103の画像データ対を先頭とし、識別番号2番以降の充填機103の画像データ対が識別番号の順に並ぶ画像データ対の群が生成されるので、識別番号1番の充填機103の画像データ対から順次、取得ステップと判定ステップとが繰り返される。すなわち、各充填機103について、二点の画像データの取得およびこれを用いた判定が行われる。これによって、全ての充填機103についてナット104、キャップスクリュー105、およびガスケット106のそれぞれについて、異常の有無が判定される。そして、全ての充填機103が正常状態にあると判定した場合は、充填装置100が正常状態にあると判定し、少なくとも一つの充填機103が異常状態にあると判定した場合は、充填装置100が異常状態にあると判定する。
【0052】
一方、学習ステップは、必ずしも画像データごとに行われなくてもよい。すなわち、学習ステップは、本実施形態に係る検査装置を実際に運用に供する前に実施されていてもよいし、定期的に実施されてもよい。後者の例としては、一日一回、毎日の検査に先立って学習ステップを行ってもよく、この場合、その前日に生成された画像データを用いて、前々日までに生成された画像データに基づいて構築された分類器が更新される。そのため、検査装置を実際に運用に供する間に、検査精度が次第に向上していく。また、分類器を更新する頻度は、週一回、月に一回、年に一回などであってもよい。なお、画像データの全数について学習ステップを実施して分類器を都度更新することは妨げられないが、演算処理量が著しく増加しうる。
【0053】
なお、取得ステップと判定ステップとの間に、判定ステップにおける使用に適した態様に画像データを加工する加工ステップを設けてもよい。この場合、たとえば、画像データの色調、コントラスト、解像度などが調整されうる。なお、加工ステップを設ける場合は、教師データ群に同様の加工が施されたのちに、各アルゴリズムが適用される。また、判定ステップの精度を向上しうる加工方法を選択することも、学習ステップで実施されうる。すなわち、この場合の学習ステップは、教師データ群に基づいて画像データの適切な加工方法を特定するとともに、当該加工方法を適用した教師データ群に基づいて分類器を構築するステップである。
【0054】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係る検査装置のその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0055】
上記の実施形態では、検査装置1が二台の撮影装置2(2A、2B)を備える構成を例として説明した。しかし、本発明に係る検査装置において、撮影装置は一つであっても複数であってもよい。撮影装置の数は、撮影対象の位置や数などに応じて適宜選択される。
【0056】
上記の実施形態では、箱体3の面材31が着脱自在である構成を例として説明したが、本発明において箱体が設けられる場合、当該箱体が着脱自在な面材を有さない構成であってもよい。ただしこの場合は、箱体に透視面を設けておき、撮影装置による撮影が妨げられないようにする必要がある。
【0057】
上記の実施形態では、撮影装置2が高さ方向に移動できるように設置されている構成を例として説明した。しかし、本発明に係る撮影装置は、高さ方向に移動できなくてもよい。
【0058】
上記の実施形態では、識別番号1番の充填機103の画像データ対を先頭とし、識別番号2番以降の充填機103の画像データ対が識別番号の順に並ぶ画像データ対の群が生成される構成を例として説明した。しかし、本発明に係る検査装置において、画像データが生成される順序は限定されない。また、生成される複数の画像データと、複数の充填機のそれぞれと、を対応付けない構成であってもよい。
【0059】
上記の実施形態では、撮影装置2が画像データを生成する(撮影する)タイミングが、撮影制御装置5から入力される電気信号に従って決定される構成を例として説明した。しかし、撮影装置が画像データを生成するタイミングは、必ずしも制御されていなくてもよい。たとえば、撮影装置が、検査対象の動作とは無関係に、一定の時間間隔で画像データを生成するように構成されていてもよい。
【0060】
上記の実施形態では、コンピュータまたはこれに類する装置として、充填装置100に充填制御装置102が設けられ、検査装置1に撮影制御装置5および演算装置6が設けられている構成を例として説明した。しかし、本発明において、演算処理を伴う機能や他の機器を制御する機能を実行する主体は、単数であっても複数であってもよい。たとえば、上記の実施形態の変形例として、撮影装置2に演算処理機能を持たせて、上記の実施形態において撮影制御装置5および演算装置6が担う機能の一部を撮影装置2に担わせてもよい。
【0061】
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、たとえば缶飲料を充填する充填装置の検査に利用できる。
【符号の説明】
【0063】
1 :検査装置
2 :撮影装置
3 :箱体
4 :空気供給源
5 :撮影制御装置
6 :演算装置
7 :記憶装置
21 :撮影範囲
22 :支持部材
31 :面材
32 :空気供給管
33 :昇降装置
100 :充填装置
101 :回転体
101a :受取地点
101b :充填区間
101c :受渡地点
101d :検査地点
102 :充填制御装置
103 :充填機
104 :ナット
105 :キャップスクリュー
106 :ガスケット

図1
図2
図3
図4
図5