(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101969
(43)【公開日】2023-07-24
(54)【発明の名称】与信システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/04 20230101AFI20230714BHJP
【FI】
G06Q10/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002234
(22)【出願日】2022-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】520368828
【氏名又は名称】株式会社ランドデータバンク
(74)【代理人】
【識別番号】100110858
【弁理士】
【氏名又は名称】柳瀬 睦肇
(72)【発明者】
【氏名】池田 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 詢平
(72)【発明者】
【氏名】徳永 順二
(72)【発明者】
【氏名】矢川 昇
(72)【発明者】
【氏名】川口 英利
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA04
(57)【要約】
【課題】精度の高い与信システムを提供する。
【解決手段】本発明は、法人の信用力を評価するデータ、法人の将来の倒産確率を予測したデータを蓄積するデータ基盤1000と、財務情報利用型与信分析装置101と、口座情報利用型与信分析装置102を有し、データ基盤1000は、法人の財務データ11aがインポートされる財務テーブル11と、財務データに基づく法人の将来の倒産確率がインポートされる第1の倒産確率テーブル12と、法人の銀行口座情報データ15aがインポートされる口座テーブル15と、銀行口座情報データ15aに基づく法人の将来の倒産確率がインポートされる第3の倒産確率テーブル16を有する与信システムである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取引開始時点及びそれ以降の法人の信用力を評価するためのデータ、及び前記法人の将来の倒産確率を予測したデータを蓄積するデータ基盤と、
前記データ基盤に接続された財務情報利用型与信分析装置と、
を有する与信システムであり、
前記データ基盤は、
前記法人の財務データがインポートされる財務テーブルと、
前記財務データに基づく前記法人の将来の倒産確率がインポートされる第1の倒産確率テーブルと、
を有し、
前記財務情報利用型与信分析装置は、前記財務テーブルから出力された前記財務データが第1の機械学習のモデルアルゴリズムに入力され、その入力された前記財務データから前記第1の機械学習のモデルアルゴリズムを用いて前記法人の将来の倒産確率が前記第1の倒産確率テーブルに出力される機能を実現するプログラムを有することを特徴とする与信システム。
【請求項2】
取引開始時点及びそれ以降の法人の信用力を評価するためのデータ、及び前記法人の将来の倒産確率を予測したデータを蓄積するデータ基盤と、
前記データ基盤に接続された口座情報利用型与信分析装置と、
を有する与信システムであり、
前記データ基盤は、
前記法人の銀行口座情報データがインポートされる口座テーブルと、
前記銀行口座情報データに基づく前記法人の将来の倒産確率がインポートされる第3の倒産確率テーブルと、
を有し、
前記口座情報利用型与信分析装置は、前記口座テーブルから出力された前記銀行口座情報データが第2の機械学習のモデルアルゴリズムに入力され、その入力された前記銀行口座情報データから前記第2の機械学習のモデルアルゴリズムを用いて前記法人の将来の倒産確率が前記第3の倒産確率テーブルに出力される機能を実現するプログラムを有することを特徴とする与信システム。
【請求項3】
取引開始時点及びそれ以降の法人の信用力を評価するためのデータ、及び前記法人の将来の倒産確率を予測したデータを蓄積するデータ基盤と、
前記データ基盤に接続された入札落札情報利用型与信分析装置と、
を有する与信システムであり、
前記データ基盤は、
前記法人の公示案件の入札落札情報データがインポートされる入札落札テーブルと、
前記入札落札情報データに基づく前記法人の将来の倒産確率がインポートされる第4の倒産確率テーブルと、
を有し、
前記入札落札情報利用型与信分析装置は、前記入札落札テーブルから出力された前記入札落札情報データが第3の機械学習のモデルアルゴリズムに入力され、その入力された前記入札落札情報データから前記第3の機械学習のモデルアルゴリズムを用いて前記法人の将来の倒産確率が前記第4の倒産確率テーブルに出力される機能を実現するプログラムを有することを特徴とする与信システム。
【請求項4】
請求項1において、
前記与信システムは、前記データ基盤に接続された口座情報利用型与信分析装置を有し、
前記データ基盤は、
前記法人の銀行口座情報データがインポートされる口座テーブルと、
前記銀行口座情報データに基づく前記法人の将来の倒産確率がインポートされる第3の倒産確率テーブルと、
を有し、
前記口座情報利用型与信分析装置は、前記口座テーブルから出力された前記銀行口座情報データが第2の機械学習のモデルアルゴリズムに入力され、その入力された前記銀行口座情報データから前記第2の機械学習のモデルアルゴリズムを用いて前記法人の将来の倒産確率が前記第3の倒産確率テーブルに出力される機能を実現するプログラムを有することを特徴とする与信システム。
【請求項5】
請求項1又は4において、
前記与信システムは、前記データ基盤に接続された入札落札情報利用型与信分析装置を有し、
前記データ基盤は、
前記法人の公示案件の入札落札情報データがインポートされる入札落札テーブルと、
前記入札落札情報データに基づく前記法人の将来の倒産確率がインポートされる第4の倒産確率テーブルと、
を有し、
前記入札落札情報利用型与信分析装置は、前記入札落札テーブルから出力された前記入札落札情報データが第3の機械学習のモデルアルゴリズムに入力され、その入力された前記入札落札情報データから前記第3の機械学習のモデルアルゴリズムを用いて前記法人の将来の倒産確率が前記第4の倒産確率テーブルに出力される機能を実現するプログラムを有することを特徴とする与信システム。
【請求項6】
請求項1、4及び5のいずれか一項において、
前記財務情報利用型与信分析装置は、前記法人の信用力を評価するための装置であり、
前記財務テーブルから出力された前記財務データは、財務情報提供サービスの企業から取得した、前記取引開始時点から第1期間前までの前記法人の財務情報に基づく値及びその値を評価した評価点の下記の(1)~(7)のデータであり、
前記法人の将来の倒産確率は、前記取引開始時点から第2期間内に前記法人が倒産する確率であることを特徴とする与信システム。
(1)売上科目に関する情報に基づく値及び評価点
(2)費用科目に関する情報に基づく値及び評価点
(3)利益科目に関する情報に基づく値及び評価点
(4)資産科目に関する情報に基づく値及び評価点
(5)負債科目に関する情報に基づく値及び評価点
(6)純資産科目に関する情報に基づく値及び評価点
(7)上記(1)から(6)の情報に基づく少なくとも2つの値で四則演算及び対数計算の少なくとも一方を行うことで得られる値及び評価点
【請求項7】
請求項2から5のいずれか一項において、
前記口座情報利用型与信分析装置は、前記法人の信用力を評価するための装置であり、
前記口座テーブルから出力された前記銀行口座情報データは、前記銀行口座の預金残高の最新月の所定日から第1期間前までの各月の所定日の預金残高、前記最新月の所定日から前記第1期間前までの入金回数及び出金回数、前記最新月の所定日から前記第1期間前までに出金した合計金額を前記第1期間の月数で割った平均金額、前記各月の預金残高を前記平均金額で割った各月の割合、前記各月の割合の標準偏差のデータであり、
前記法人の将来の倒産確率は、前記最新月の所定日の前記第2期間後の前記法人の倒産確率であることを特徴とする与信システム。
【請求項8】
請求項3又は5において、
前記入札落札情報利用型与信分析装置は、前記法人の信用力を評価するための装置であり、
前記入札落札テーブルから出力された前記入札落札情報データは、下記の数値(c)~(j)のデータであり、
前記法人の将来の倒産確率は、第1期間内に法人が公示案件に入札し、その法人の入札落札結果をもとに、前記第1期間終了時から第2期間後に前記法人が倒産する確率であり、
前記入札落札情報は、前記法人が前記公示案件を入札から落札まで行った時の前記公示案件自体の情報と前記公示案件の入札落札結果の情報であることを特徴とする与信システム。
数値(c):前記第1期間内の前記法人の前記公示案件の入札回数の加重平均
数値(d):前記第1期間内の前記法人の前記公示案件の落札率の加重平均
数値(e):前記第1期間内の前記法人の辞退率の加重平均
数値(f):前記第1期間内の前記法人の失格率の加重平均
数値(g):前記第1期間内の前記法人の無効率の加重平均
数値(h):前記第1期間内の前記法人の入札金額の平均の加重平均
数値(i):前記第1期間内の前記法人の落札金額の平均の加重平均
数値(j):前記第1期間内の前記法人の落札金額の総和の加重平均
【請求項9】
請求項2、3、7及び8のいずれか一項において、
前記法人は、建設業界の法人であることを特徴とする与信システム。
【請求項10】
請求項1及び4から6のいずれか一項において、
前記財務情報利用型与信分析装置は、前記法人の信用力を評価する機能を実現するプログラムを有する装置であり、
前記法人は建設業界の法人であり、
前記データ基盤は、
前記法人の経営事項審査データがインポートされる経営事項審査テーブルと、
前記経営事項審査データに基づく前記法人の将来の倒産確率がインポートされる第2の倒産確率テーブルと、
を有し、
前記財務情報利用型与信分析装置は、前記経営事項審査データが存在する場合、前記経営事項審査テーブルから出力された前記経営事項審査データが前記第1の機械学習のモデルアルゴリズムに入力され、その入力された前記経営事項審査データから前記第1の機械学習のモデルアルゴリズムを用いて前記法人の将来の倒産確率が前記第2の倒産確率テーブルに出力される機能を実現するプログラムを有し、
前記経営事項審査テーブルから出力された前記経営事項審査データは、前記取引開始時点から第1期間前までの前記法人の経営事項審査の財務情報に基づく値及びその値を評価した評価点の下記の(1)~(7)のデータであり、
前記法人の将来の倒産確率は、前記取引開始時点から第2期間内に前記法人が倒産する確率であることを特徴とする与信システム。
(1)売上科目に関する情報に基づく値及び評価点
(2)費用科目に関する情報に基づく値及び評価点
(3)利益科目に関する情報に基づく値及び評価点
(4)資産科目に関する情報に基づく値及び評価点
(5)負債科目に関する情報に基づく値及び評価点
(6)純資産科目に関する情報に基づく値及び評価点
(7)上記(1)から(6)の情報に基づく少なくとも2つの値で四則演算及び対数計算の少なくとも一方を行うことで得られる情報に基づく値及び評価点
【請求項11】
請求項10において、
前記経営事項審査テーブルから出力された前記経営事項審査データは、前記(1)~(7)に加え、前記取引開始時点から前記第1期間前までの前記法人の経営事項審査全体の情報に基づく値及びその値を評価した評価点の下記の(8)~(22)のデータであることを特徴とする与信システム。
(8)建設工事の種類に関する情報に基づく値及び評価点
(9)完成工事高に関る情報に基づく値及び評価点
(10)技術職員の数に関する情報に基づく値及び評価点
(11)自己資本額に関する情報に基づく値及び評価点
(12)保険年金共済等への加入の有無に関する情報に基づく値及び評価点
(13)労働福祉の状況に関する情報に基づく値及び評価点
(14)建設業の営業継続の状況に関する情報に基づく値及び評価点
(15)防災活動への貢献の状況に関する情報に基づく値及び評価点
(16)法令遵守の状況に関する情報に基づく値及び評価点
(17)建設業の経理の状況に関する情報に基づく値及び評価点
(18)研究開発の状況に関する情報に基づく値及び評価点
(19)建設機械の保有状況に関する情報に基づく値及び評価点
(20)国際標準化機構が定めた規格による登録の状況に関する情報に基づく値及び評価点
(21)若年の技術者及び技能労働者の育成及び確保の状況に関する情報に基づく値及び評価点
(22)知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況に関する情報に基づく値及び評価点
【請求項12】
請求項10又は11において、
前記データ基盤は、
前記工事の現場作業員にGPSを有する端末を保持させ、前記端末に前記GPSによって前記現場作業員が工事現場で働いている日又は時間の作業員位置情報データを取得させ、その取得した作業員位置情報データがインポートされる作業員位置情報テーブルを有し、
前記作業員位置情報テーブルの作業員位置情報データを解析することで、工事の進行状況を監視するモニタリング機能を実現するプログラムを有する作業員位置情報監視装置を有することを特徴とする与信システム。
【請求項13】
請求項10から12のいずれか一項において、
前記データ基盤は、
前記工事の現場作業員に写真又は動画の撮影機能を有する端末を保持させ、前記撮影機能によって前記現場作業員に工事現場を撮影させ、その撮影した写真又は動画のデータがインポートされる工事現場写真・動画テーブルを有し、
前記工事現場写真・動画テーブルの写真又は動画のデータを解析し、前記取引開始時点まで及び前記取引開始時点以降に前記法人が受注又は発注した工事の完成又は未完成を判定することで工事の進捗状況を監視するモニタリング機能を実現するプログラムを有する写真・動画情報利用型監視装置を有することを特徴とする与信システム。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項において、
前記第1の機械学習のモデルアルゴリズム、前記第2の機械学習のモデルアルゴリズム及び前記第3の機械学習のモデルアルゴリズムの各々は、ニューラルネットワーク、ランダムフォレスト、ロジスティック回帰、Elastic Net、サポートベクターマシン(SVM)、線形回帰、k近傍法(k-NN)、ナイーブベイズ、パーセプトロン、CART、QUEST、CHAID、C5.0、デシジョンジャングル、ベイズ線形回帰、ブースト 決定木、ポアソン回帰、リッジ回帰、ラッソ回帰、サポートベクター回帰 (SVR)、XGBoost、及びLightGBMのいずれかであることを特徴とする与信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、与信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な業界において比較的規模が小さい法人も多く、そのような法人は運転資金が少なく物的担保が乏しい場合が多い。そのため、事業を拡大する機会が訪れた場合に銀行などの金融機関から運転資金の融資を受けることができれば、その法人が事業を拡大していくことが可能となることがある。
しかし、従来、金融機関は、法人の財務情報や土地などの所有不動産によって融資申込時点の法人の信用力を分析することで、融資の可否を決定することが一般的であった。そのため、上述したような比較的規模が小さい法人では、十分な融資が受けられないことが多いため、たとえ事業を拡大する機会があっても、それを実現することが困難であった。
一例として建設業界について説明する。建設業界では、例えば法人が土木工事や建物の建築を受注した場合、完成するまでに長い期間がかかることがある。また、機械、機械のレンタル、労務及び材料の費用など多くの運転資金が必要となる。
【0003】
ところで、我が国の建設業界の法人は比較的規模が小さい企業も多く、そのような企業は運転資金が少なく物的担保が乏しい場合が多い。上記のように、建物を建築する場合、着工から完成までの期間が長く、この建築を施工する法人に対する支払は、完成後に行われることが多い。つまり、比較的規模が小さい法人が建物を建築する場合、受注件数が多くても、着工から支払いまでの期間が長いので、その運転資金が不足することが多いという問題がある。別言すれば、運転資金に限度があるため、受注件数を増やすことができないという問題がある。また、受注する建物の規模が大きいほど、収益も大きくなるが、運転資金が高額になるため、運転資金不足により受注できないことがある。このような場合、銀行などの金融機関から運転資金の融資を受けることができれば上記の問題を解決することができる。
【0004】
しかし、従来、金融機関は、前述したように、法人の財務情報や土地などの所有不動産によって融資申込時点の法人の信用力を分析することで、融資の可否を決定するため、上述したような建設業界の比較的規模が小さい法人では、十分な融資が受けられないことが多い。そのため、上記の問題を解決できず、受注件数を増やすこと、規模の大きい建物を受注することで、収益を大きくすることが困難であった。
【0005】
また、国土交通省が推進する「I-Construction(アイ・コンストラクション)」施策にて建設業、特に土木分野の生産性向上を後押ししている。この施策のコンセプトは測量から調査、設計、施工、検査、維持管理に至る建設プロジェクトの全プロセスにICTを導入し、「ICT施工」を実現することで建設生産活動の飛躍的な効率化を図るものである。
【0006】
しかしながら、「ICT施工」の実現には、ICT対応機器や対応サービス、ソリューションの導入が必要不可欠であり、そのためには元手となる資金が必要となる。
【0007】
そこで、従来に比べて精度の高い与信分析を行うことで、法人の規模の大小にかかわらず、融資を受けることができる法人の数を増やすことが求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の種々の態様は、精度の高い与信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下に本発明の種々の態様について説明する。
[1]取引開始時点及びそれ以降の法人の信用力を評価するためのデータ、及び前記法人の将来の倒産確率を予測したデータを蓄積するデータ基盤と、
前記データ基盤に接続された財務情報利用型与信分析装置と、
を有する与信システムであり、
前記データ基盤は、
前記法人の財務データがインポートされる財務テーブルと、
前記財務データに基づく前記法人の将来の倒産確率がインポートされる第1の倒産確率テーブルと、
を有し、
前記財務情報利用型与信分析装置は、前記財務テーブルから出力された前記財務データが第1の機械学習のモデルアルゴリズムに入力され、その入力された前記財務データから前記第1の機械学習のモデルアルゴリズムを用いて前記法人の将来の倒産確率が前記第1の倒産確率テーブルに出力される機能を実現するプログラムを有することを特徴とする与信システム。
【0010】
[2]取引開始時点及びそれ以降の法人の信用力を評価するためのデータ、及び前記法人の将来の倒産確率を予測したデータを蓄積するデータ基盤と、
前記データ基盤に接続された口座情報利用型与信分析装置と、
を有する与信システムであり、
前記データ基盤は、
前記法人の銀行口座情報データがインポートされる口座テーブルと、
前記銀行口座情報データに基づく前記法人の将来の倒産確率がインポートされる第3の倒産確率テーブルと、
を有し、
前記口座情報利用型与信分析装置は、前記口座テーブルから出力された前記銀行口座情報データが第2の機械学習のモデルアルゴリズムに入力され、その入力された前記銀行口座情報データから前記第2の機械学習のモデルアルゴリズムを用いて前記法人の将来の倒産確率が前記第3の倒産確率テーブルに出力される機能を実現するプログラムを有することを特徴とする与信システム。
[3]取引開始時点及びそれ以降の法人の信用力を評価するためのデータ、及び前記法人の将来の倒産確率を予測したデータを蓄積するデータ基盤と、
前記データ基盤に接続された入札落札情報利用型与信分析装置と、
を有する与信システムであり、
前記データ基盤は、
前記法人の公示案件の入札落札情報データがインポートされる入札落札テーブルと、
前記入札落札情報データに基づく前記法人の将来の倒産確率がインポートされる第4の倒産確率テーブルと、
を有し、
前記入札落札情報利用型与信分析装置は、前記入札落札テーブルから出力された前記入札落札情報データが第3の機械学習のモデルアルゴリズムに入力され、その入力された前記入札落札情報データから前記第3の機械学習のモデルアルゴリズムを用いて前記法人の将来の倒産確率が前記第4の倒産確率テーブルに出力される機能を実現するプログラムを有することを特徴とする与信システム。
【0011】
[4]上記[1]において、
前記与信システムは、前記データ基盤に接続された口座情報利用型与信分析装置を有し、
前記データ基盤は、
前記法人の銀行口座情報データがインポートされる口座テーブルと、
前記銀行口座情報データに基づく前記法人の将来の倒産確率がインポートされる第3の倒産確率テーブルと、
を有し、
前記口座情報利用型与信分析装置は、前記口座テーブルから出力された前記銀行口座情報データが第2の機械学習のモデルアルゴリズムに入力され、その入力された前記銀行口座情報データから前記第2の機械学習のモデルアルゴリズムを用いて前記法人の将来の倒産確率が前記第3の倒産確率テーブルに出力される機能を実現するプログラムを有することを特徴とする与信システム。
[5]上記[1]又は[4]において、
前記与信システムは、前記データ基盤に接続された入札落札情報利用型与信分析装置を有し、
前記データ基盤は、
前記法人の公示案件の入札落札情報データがインポートされる入札落札テーブルと、
前記入札落札情報データに基づく前記法人の将来の倒産確率がインポートされる第4の倒産確率テーブルと、
を有し、
前記入札落札情報利用型与信分析装置は、前記入札落札テーブルから出力された前記入札落札情報データが第3の機械学習のモデルアルゴリズムに入力され、その入力された前記入札落札情報データから前記第3の機械学習のモデルアルゴリズムを用いて前記法人の将来の倒産確率が前記第4の倒産確率テーブルに出力される機能を実現するプログラムを有することを特徴とする与信システム。
【0012】
[6]上記[1]、[4]及び[5]のいずれか一項において、
前記財務情報利用型与信分析装置は、前記法人の信用力を評価するための装置であり、
前記財務テーブルから出力された前記財務データは、財務情報提供サービスの企業から取得した、前記取引開始時点から第1期間前までの前記法人の財務情報に基づく値及びその値を評価した評価点の下記の(1)~(7)のデータであり、
前記法人の将来の倒産確率は、前記取引開始時点から第2期間内に前記法人が倒産する確率であることを特徴とする与信システム。
(1)売上科目に関する情報に基づく値及び評価点
(2)費用科目に関する情報に基づく値及び評価点
(3)利益科目に関する情報に基づく値及び評価点
(4)資産科目に関する情報に基づく値及び評価点
(5)負債科目に関する情報に基づく値及び評価点
(6)純資産科目に関する情報に基づく値及び評価点
(7)上記(1)から(6)の情報に基づく少なくとも2つの値で四則演算及び対数計算の少なくとも一方を行うことで得られる値及び評価点
【0013】
[7]上記[2]から[5]のいずれか一項において、
前記口座情報利用型与信分析装置は、前記法人の信用力を評価するための装置であり、
前記口座テーブルから出力された前記銀行口座情報データは、前記銀行口座の預金残高の最新月の所定日から第1期間前までの各月の所定日の預金残高、前記最新月の所定日から前記第1期間前までの入金回数及び出金回数、前記最新月の所定日から前記第1期間前までに出金した合計金額を前記第1期間の月数で割った平均金額、前記各月の預金残高を前記平均金額で割った各月の割合、前記各月の割合の標準偏差のデータであり、
前記法人の将来の倒産確率は、前記最新月の所定日の前記第2期間後の前記法人の倒産確率であることを特徴とする与信システム。
[8]上記[3]又は[5]において、
前記入札落札情報利用型与信分析装置は、前記法人の信用力を評価するための装置であり、
前記入札落札テーブルから出力された前記入札落札情報データは、下記の数値(c)~(j)のデータであり、
前記法人の将来の倒産確率は、第1期間内に法人が公示案件に入札し、その法人の入札落札結果をもとに、前記第1期間終了時から第2期間後に前記法人が倒産する確率であり、
前記入札落札情報は、前記法人が前記公示案件を入札から落札まで行った時の前記公示案件自体の情報と前記公示案件の入札落札結果の情報であることを特徴とする与信システム。
数値(c):前記第1期間内の前記法人の前記公示案件の入札回数の加重平均
数値(d):前記第1期間内の前記法人の前記公示案件の落札率の加重平均
数値(e):前記第1期間内の前記法人の辞退率の加重平均
数値(f):前記第1期間内の前記法人の失格率の加重平均
数値(g):前記第1期間内の前記法人の無効率の加重平均
数値(h):前記第1期間内の前記法人の入札金額の平均の加重平均
数値(i):前記第1期間内の前記法人の落札金額の平均の加重平均
数値(j):前記第1期間内の前記法人の落札金額の総和の加重平均
[9]上記[2]、[3]、[7]及び[8]のいずれか一項において、
前記法人は、建設業界の法人であることを特徴とする与信システム。
【0014】
[10]上記[1]及び[4]から[6]のいずれか一項において、
前記財務情報利用型与信分析装置は、前記法人の信用力を評価する機能を実現するプログラムを有する装置であり、
前記法人は建設業界の法人であり、
前記データ基盤は、
前記法人の経営事項審査データがインポートされる経営事項審査テーブルと、
前記経営事項審査データに基づく前記法人の将来の倒産確率がインポートされる第2の倒産確率テーブルと、
を有し、
前記財務情報利用型与信分析装置は、前記経営事項審査データが存在する場合、前記経営事項審査テーブルから出力された前記経営事項審査データが前記第1の機械学習のモデルアルゴリズムに入力され、その入力された前記経営事項審査データから前記第1の機械学習のモデルアルゴリズムを用いて前記法人の将来の倒産確率が前記第2の倒産確率テーブルに出力される機能を実現するプログラムを有し、
前記経営事項審査テーブルから出力された前記経営事項審査データは、前記取引開始時点から第1期間前までの前記法人の経営事項審査の財務情報に基づく値及びその値を評価した評価点の下記の(1)~(7)のデータであり、
前記法人の将来の倒産確率は、前記取引開始時点から第2期間内に前記法人が倒産する確率であることを特徴とする与信システム。
(1)売上科目に関する情報に基づく値及び評価点
(2)費用科目に関する情報に基づく値及び評価点
(3)利益科目に関する情報に基づく値及び評価点
(4)資産科目に関する情報に基づく値及び評価点
(5)負債科目に関する情報に基づく値及び評価点
(6)純資産科目に関する情報に基づく値及び評価点
(7)上記(1)から(6)の情報に基づく少なくとも2つの値で四則演算及び対数計算の少なくとも一方を行うことで得られる情報に基づく値及び評価点
【0015】
[11]上記[10]において、
前記経営事項審査テーブルから出力された前記経営事項審査データは、前記(1)~(7)に加え、前記取引開始時点から前記第1期間前までの前記法人の経営事項審査全体の情報に基づく値及びその値を評価した評価点の下記の(8)~(22)のデータであることを特徴とする与信システム。
(8)建設工事の種類に関する情報に基づく値及び評価点
(9)完成工事高に関る情報に基づく値及び評価点
(10)技術職員の数に関する情報に基づく値及び評価点
(11)自己資本額に関する情報に基づく値及び評価点
(12)保険年金共済等への加入の有無に関する情報に基づく値及び評価点
(13)労働福祉の状況に関する情報に基づく値及び評価点
(14)建設業の営業継続の状況に関する情報に基づく値及び評価点
(15)防災活動への貢献の状況に関する情報に基づく値及び評価点
(16)法令遵守の状況に関する情報に基づく値及び評価点
(17)建設業の経理の状況に関する情報に基づく値及び評価点
(18)研究開発の状況に関する情報に基づく値及び評価点
(19)建設機械の保有状況に関する情報に基づく値及び評価点
(20)国際標準化機構が定めた規格による登録の状況に関する情報に基づく値及び評価点
(21)若年の技術者及び技能労働者の育成及び確保の状況に関する情報に基づく値及び評価点
(22)知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況に関する情報に基づく値及び評価点
【0016】
[12]上記[10]又は[11]において、
前記データ基盤は、
前記工事の現場作業員にGPSを有する端末を保持させ、前記端末に前記GPSによって前記現場作業員が工事現場で働いている日又は時間の作業員位置情報データを取得させ、その取得した作業員位置情報データがインポートされる作業員位置情報テーブルを有し、
前記作業員位置情報テーブルの作業員位置情報データを解析することで、工事の進行状況を監視するモニタリング機能を実現するプログラムを有する作業員位置情報監視装置を有することを特徴とする与信システム。
【0017】
[13]上記[10]から[12]のいずれか一項において、
前記データ基盤は、
前記工事の現場作業員に写真又は動画の撮影機能を有する端末を保持させ、前記撮影機能によって前記現場作業員に工事現場を撮影させ、その撮影した写真又は動画のデータがインポートされる工事現場写真・動画テーブルを有し、
前記工事現場写真・動画テーブルの写真又は動画のデータを解析し、前記取引開始時点まで及び前記取引開始時点以降に前記法人が受注又は発注した工事の完成又は未完成を判定することで工事の進捗状況を監視するモニタリング機能を実現するプログラムを有する写真・動画情報利用型監視装置を有することを特徴とする与信システム。
[14]上記[1]から[13]のいずれか一項において、
前記第1の機械学習のモデルアルゴリズム、前記第2の機械学習のモデルアルゴリズム及び前記第3の機械学習のモデルアルゴリズムの各々は、ニューラルネットワーク、ランダムフォレスト、ロジスティック回帰、Elastic Net、サポートベクターマシン(SVM)、線形回帰、k近傍法(k-NN)、ナイーブベイズ、パーセプトロン、CART、QUEST、CHAID、C5.0、デシジョンジャングル、ベイズ線形回帰、ブースト 決定木、ポアソン回帰、リッジ回帰、ラッソ回帰、サポートベクター回帰 (SVR)、XGBoost、及びLightGBMのいずれかであることを特徴とする与信システム。
【発明の効果】
【0018】
本発明の種々の態様によれば、精度の高い与信システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一態様に係る与信システムを説明するための模式図である。
【
図2】本発明の一態様に係る与信システムを説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0021】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の一態様に係る与信システムを説明するための模式図である。
図1の与信システムは、データ基盤1000と、財務情報利用型与信分析装置101と、口座情報利用型与信分析装置102を有している。
【0022】
データ基盤1000は、取引開始時点及びそれ以降の法人(例えば、建設業界の法人)の信用力を評価するためのデータ、及びその法人の将来の倒産確率を予測したデータを蓄積する基盤である。このデータ基盤1000には財務情報利用型与信分析装置101及び口座情報利用型与信分析装置102の各々が接続されている。
なお、本実施形態では、データ基盤1000に財務情報利用型与信分析装置101及び口座情報利用型与信分析装置102の両方が接続された構成を示しているが、いずれか一方が接続されたものであってもよい。
【0023】
また、データ基盤1000は、財務テーブル11、第1の倒産確率テーブル12、口座テーブル15及び第3の倒産確率テーブル16を有している。
なお、本実施形態では、データ基盤1000が、財務テーブル11、第1の倒産確率テーブル12、口座テーブル15及び第3の倒産確率テーブル16の4つのテーブルを有する構成を示しているが、財務テーブル11及び第1の倒産確率テーブル12の2つのテーブルを有する構成であってもよいし、口座テーブル15及び第3の倒産確率テーブル16の2つのテーブルを有する構成であってもよい。
【0024】
財務テーブル11は法人の財務データ11aがインポートされるテーブルであり、財務データ11aについては後述する。また、第1の倒産確率テーブル12は財務データ11aに基づく法人の将来の倒産確率がインポートされるテーブルである。
【0025】
また、口座テーブル15は法人の銀行口座情報データ15aがインポートされるテーブルである。また、第3の倒産確率テーブル16は銀行口座情報データ15aに基づく法人の将来の倒産確率がインポートされるテーブルである。
【0026】
上記の財務情報利用型与信分析装置101は、財務テーブル11から出力された財務データ11aが第1の機械学習のモデルアルゴリズムに入力され、その入力された財務データ11aから第1の機械学習のモデルアルゴリズムを用いて法人の将来の倒産確率が第1の倒産確率テーブル12に出力されるものである。この財務情報利用型与信分析装置の詳細については後述する。
【0027】
上記の口座情報利用型与信分析装置102は、口座テーブル15から出力された銀行口座情報データ15aが第2の機械学習のモデルアルゴリズムに入力され、その入力された銀行口座情報データ15aから第2の機械学習のモデルアルゴリズムを用いて法人の将来の倒産確率が第3の倒産確率テーブル16に出力されるものである。この口座情報利用型与信分析装置102の詳細については後述する。
【0028】
<財務情報利用型与信分析装置101の財務情報提供サービスの企業等から取得した財務データ>
財務情報利用型与信分析装置101は、法人の信用力を評価するための装置である。
図1に示す財務テーブル11から出力された財務データ11aは、財務情報提供サービスの企業から取得した、取引開始時点から第1期間前までの法人の財務情報に基づく値及びその値を評価した評価点の下記の(1)~(7)のデータであるとよい。
(1)売上科目に関する情報に基づく値及び評価点
(2)費用科目に関する情報に基づく値及び評価点
(3)利益科目に関する情報に基づく値及び評価点
(4)資産科目に関する情報に基づく値及び評価点
(5)負債科目に関する情報に基づく値及び評価点
(6)純資産科目に関する情報に基づく値及び評価点
(7)上記(1)から(6)の情報に基づく少なくとも2つの値で四則演算及び対数計算の少なくとも一方を行うことで得られる値及び評価点
【0029】
以下に、財務情報利用型与信分析装置101の詳細について説明する。
この財務情報利用型与信分析装置101は、機能(a)及び機能(b)を実現するプログラムを有する。
【0030】
上記の機能(a)は、取引開始時点から第1期間前までの法人の財務情報に基づく値及びその値を評価した評価点の上記の(1)~(7)を機械学習のモデルアルゴリズムであるニューラルネットワーク(NN)に入力する機能である。ここでの法人の財務情報は、財務情報提供サービスの企業等から取得した情報(財務データ11a)であるとよい。
なお、第1期間は、3年以内の範囲内の期間であることが好ましいが、6か月から3年の範囲内の期間であってもよく、これより長い期間であってもよい。
【0031】
上記の(1)から(7)について詳細に説明する。
上記(1)の売上科目に関する情報に基づく値は、法人の例えば売上高等であり、その値を評価した評価点は上記の(1)から(7)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0032】
上記(2)の費用科目に関する情報に基づく値は、法人の例えば売上原価、給与手当等であり、その値を評価した評価点は上記の(1)から(7)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0033】
上記(3)の利益科目に関する情報に基づく値は、法人の例えば売上総利益、経常利益等であり、その値を評価した評価点は上記の(1)から(7)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0034】
上記(4)の資産科目に関する情報に基づく値は、法人の例えば流動資産、固定資産等であり、その値を評価した評価点は上記の(1)から(7)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0035】
上記(5)の負債科目に関する情報に基づく値は、法人の例えば流動負債、固定負債等であり、その値を評価した評価点は上記の(1)から(7)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0036】
上記(6)の純資産科目に関する情報に基づく値は、法人の例えば資本金、資本準備金等であり、その値を評価した評価点は上記の(1)から(7)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0037】
上記(7)の上記(1)から(6)の値に基づく少なくとも2つの値で四則演算及び対数計算の少なくとも一方を行うことで得られる値及び評価点は、法人の例えば負債回転期間、純資本売上総利益率等であり、その値を評価した評価点は上記の(1)から(7)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0038】
なお、上記の(1)から(7)の各々の値及び評価点は、単数であっても複数あってもよい。
【0039】
また、上記(1)から(7)の値及び評価点がインポートされている
図1に示す財務データテーブル11から上記(1)から(7)の値及び評価点がニューラルネットワークに入力されるように構成されている。
【0040】
上記の機能(b)は、上記の機能(a)により入力された値及び評価点からニューラルネットワーク(機械学習のモデルアルゴリズム)を用いて取引開始時点から第2期間内に法人が倒産する確率を出力する機能である。なお、第2期間は、3年以内の範囲内の期間であることが好ましいが、これより長い期間であってもよい。
【0041】
詳細には、多量の過去の倒産企業及び生存企業(良好な生存企業から倒産しそうな生存企業)の各々の上記(1)から(7)の値及び評価点を、財務情報提供サービスの企業等から取得した財務情報に基づいて収集する。ここでいう倒産企業及び生存企業は、例えば売上高が10億円以下の企業規模である。そして、上記の各々の上記(1)から(7)の値及び評価点を用いてニューラルネットワークに学習処理させることで、この学習処理によって倒産する法人を予測するモデルを取得する。この倒産予測モデルは、ニューラルネットワークのモデル(機械学習のモデルアルゴリズム)精度(AUC)が、0.7以上となるように学習処理されたものであるとよい。
また、上記機能(b)で出力される法人の倒産確率は第1の倒産確率テーブル12にインポートされるように構成されている。
【0042】
また、ニューラルネットワークに入力する上記の(1)から(7)の項目は、最低限の項目であり、さらに入力項目を追加してもよい。これにより、信用リスクにおけるAUCの値をより高くすることができる場合がある。
【0043】
上記の財務情報利用型与信分析装置によれば、精度の高い与信分析が可能となる。その結果、財務情報利用型与信分析装置によって分析された法人と取引を開始するか否かを判定することが可能となる。
【0044】
また、本実施形態では、取引開始時点での法人の信用力を、ニューラルネットワークを用いて分析し、その法人が取引開始時点から第2期間内に倒産する確率を出力することができ、取引開始時点での法人の与信分析が可能となる。そのため、低コストで高い精度を実現することが可能となる。これにより、従来技術ではできなかった小規模の法人に対する少額の金銭を伴う取引に対しても取引開始時点での与信判断が可能となる。つまり、従来技術では取引開始できなかった法人に対しても取引を開始することが可能となる。
【0045】
上述したように小規模な法人に対しても取引開始時点での与信判断が可能となるため、建設業界の小規模な法人であっても、ICT対応機器や対応サービス、ソリューションの導入のための金銭を伴う取引が可能となる。従って、国土交通省が推進する建設生産活動の飛躍的な効率化を図るための「ICT施工」を小規模な法人に対して実現する一助となることが期待できる。
【0046】
なお、上記の財務情報利用型与信分析装置では、ニューラルネットワークを用いているが、ニューラルネットワーク以外の機械学習のモデルアルゴリズムを用いることも可能である。
本明細書における「第1から第3の機械学習のモデルアルゴリズム」は、ランダムフォレスト、ロジスティック回帰、Elastic Net、サポートベクターマシン(SVM)、線形回帰、k近傍法(k-NN)、ナイーブベイズ、パーセプトロン、CART、QUEST、CHAID、C5.0、デシジョンジャングル、ベイズ線形回帰、ブースト 決定木、ポアソン回帰、リッジ回帰、ラッソ回帰、サポートベクター回帰 (SVR)、XGBoost、及びLightGBMを含むものとする。
【0047】
<口座情報利用型与信分析装置102>
図1に示す口座情報利用型与信分析装置102は、法人の銀行口座の情報に基づいて取引開始時点以降の与信状況をモニタリングする機能を実現するプログラムを有する装置である。
【0048】
図1に示す口座テーブル15から出力された銀行口座情報データ15aは、銀行口座の預金残高の最新月の所定日から第1期間前までの各月の所定日の預金残高、前記最新月の所定日から前記第1期間前までの入金回数及び出金回数、前記最新月の所定日から前記第1期間前までに出金した合計金額を前記第1期間の月数で割った平均金額、前記各月の預金残高を前記平均金額で割った各月の割合、前記各月の割合の標準偏差のデータである。
法人の将来の倒産確率は、上記の最新月の所定日の第2期間後の法人の倒産確率である。
【0049】
以下に、上記の口座情報利用型与信分析装置102の詳細について説明する。
図1の口座情報用与信分析装置102は、法人(例えば建設業界の法人)の銀行口座の預金残高の最新月の所定日の第2期間後に、その法人が倒産する確率を予測し、与信状況を監視するモニタリング与信機能を実現するプログラムを有する与信分析装置である。つまり、この口座情報用与信分析装置を用いれば、与信状況を監視するモニタリング与信機能によって法人の銀行口座の預金残高の最新月の所定日の第2期間後に、その法人が倒産する確率を予測することが可能となる。なお、第2期間は、6か月以内の範囲内の期間であることが好ましいが、1か月から6か月の範囲内の期間であってもよい。
【0050】
上記のモニタリング与信機能について以下に詳細に説明する。
モニタリング与信機能は、下記の機能(a)及び機能(b)を有する。
【0051】
機能(a)は、以下の(1)から(5)の項目を機械学習のモデルアルゴリズムであるニューラルネットワーク(NN)に入力する機能である。
(1)各月の預金残高。詳細には、上記の最新月の所定日から第1期間前までの各月の所定日の預金残高である。ここでいう最新月の所定日は、月末でもよいし、月末以外の日付でもよい。また第1期間は、2年以内の範囲内の期間であることが好ましいが、6か月から2年の範囲内の期間であってもよく、2年より長い期間であってもよい。また、法人が複数の銀行口座を有する場合は、複数の銀行口座の各々の預金残高を合算した金額を各月の預金残高とする。
【0052】
(2)入金回数及び出金回数。詳細には、最新月の所定日から第1期間前までの入金回数及び出金回数である。ここでいう入金回数は、法人が複数の銀行口座を有する場合、複数の銀行口座の各々の入金回数の合計回数とする。また出金回数は、法人が複数の銀行口座を有する場合、複数の銀行口座の各々の出金回数の合計回数とする。
【0053】
(3)第1期間内の出金金額の月平均。詳細には、最新月の所定日から第1期間前までに出金した合計金額を第1期間の月数で割った平均金額である。ここでいう合計金額は、法人が複数の銀行口座を有する場合、複数の銀行口座の各々から出金した合計金額とする。また、上記の最新月の所定日から第1期間前までの出金の使途は、建設業界であれば、施工費用を構成する機械、機械のレンタル、労務及び材料(建築材料等)の費用を含み、販売費、一般管理費及び支払い利息割引料等を含むが、建設業界以外の他の業界であれば、その他の費用を含んでもよい。
【0054】
(4)各月の預金残高/月平均金額。詳細には、上記(1)の各月の預金残高を上記(3)の平均金額で割った各月の割合である。
(5)標準偏差。詳細には、上記(4)の各月の割合の標準偏差である。
【0055】
上記(1)から(3)の銀行口座の情報は、取引の申込をする法人から取得することができる。
【0056】
また、上記(1)から(5)の項目がインポートされている第1のデータテーブルを準備し、第1のデータテーブルから上記(1)から(5)の項目がニューラルネットワーク10に入力されるように構成されていてもよい。
【0057】
機能(b)は、上記の機能(a)により入力された値からニューラルネットワーク(機械学習のモデルアルゴリズム)を用いて最新月の所定日の第2期間後の法人の倒産確率を出力する機能である。ここでいう法人の倒産確率は、最新月の所定日の第2期間後の預金残高を上記(3)の平均金額で割った割合が第1の値を下回る確率である。この第1の値は、複数(多数)の法人のうち、倒産した法人の水準値以下であるとよい。
詳細には、多量の過去の倒産企業及び生存企業(良好な生存企業から倒産しそうな生存企業)の各々の上記(1)から(3)の銀行口座の情報を収集する。ここでいう倒産企業及び生存企業は、例えば建設・土木関連の企業であってもよく、例えば売上高が10億円以下の企業規模、業種が例えば一般土木、土木、舗装、建築、とび・土木・コンクリート等であってもよいが、勿論建設業界に限るものではない。そして、上記の各々の上記(1)から(3)の銀行口座の情報を用いてニューラルネットワークに学習処理させることで、この学習処理によって倒産する法人は上記の第1の値を下回る倒産予測モデルを取得する。この倒産予測モデルは、ニューラルネットワークのモデル(機械学習のモデルアルゴリズム)精度(AUC)が、0.7以上となるように学習処理されたものであるとよい。
また、上記機能(b)で出力される法人の倒産確率は第2のデータテーブルにインポートされるように構成されていてもよい。
【0058】
また、ニューラルネットワークに入力する上記の(1)から(5)の項目は、最低限の項目であり、さらに入力項目を追加してもよい。これにより、信用リスクにおけるAUCの値をより高くすることができる場合がある。
【0059】
上記の口座情報利用型与信分析装置では、精度の高い与信分析が可能となる。
【0060】
また、法人の銀行口座の情報とニューラルネットワークを利用することで、法人の与信の分析が可能となるため、低コストで高い精度を実現することが可能となる。これにより、従来技術ではできなかった小規模の法人に対する少額の金銭を伴う取引に対しても取引開始時点での与信判断が可能となる。
【0061】
上述したように小規模な法人に対しても取引開始時点での与信判断が可能となるため、建設業界の小規模な法人であっても、ICT対応機器や対応サービス、ソリューションの導入のための金銭を伴う取引が可能となる。従って、国土交通省が推進する建設生産活動の飛躍的な効率化を図るための「ICT施工」を小規模な法人に対して実現する一助となることが期待できる。
【0062】
(第2の実施形態)
図2は、本発明の一態様に係る与信システムを説明するための模式図であり、
図1と同一部分には同一符号を付し、異なる部分について説明する。
図2に示す与信システムは、
図1に示す与信システムを建設業界に特化したシステムであり、
図1に示す与信システムに構成を追加したものである。
【0063】
図2に示すデータ基盤100は、経営事項審査テーブル13、第2の倒産確率テーブル14、入札落札テーブル17及び第4の倒産確率テーブル18を有している。
【0064】
経営事項審査テーブル13は法人の経営事項審査データ13aがインポートされるテーブルである。また、第2の倒産確率テーブル14は経営事項審査データ13aに基づく法人の将来の倒産確率がインポートされるテーブルである。
【0065】
上記の財務情報利用型与信分析装置101は、経営事項審査データ13aが存在する場合、経営事項審査テーブル13から出力された経営事項審査データ13aが第1の機械学習のモデルアルゴリズムに入力され、その入力された経営事項審査データ13aから第1の機械学習のモデルアルゴリズムを用いて法人の将来の倒産確率が第2の倒産確率テーブル14に出力されるものである。この財務情報利用型与信分析装置の詳細については後述する。
【0066】
図2の与信システムは、入札落札情報利用型与信分析装置103を有している。
【0067】
データ基盤100は入札落札情報利用型与信分析装置103を有している。
【0068】
入札落札テーブル17は法人の公示案件の入札落札情報データ17aがインポートされるテーブルである。また、第4の倒産確率テーブル18は入札落札情報データ17aに基づく法人の将来の倒産確率がインポートされるテーブルである。
【0069】
上記の入札落札情報利用型与信分析装置103は、入札落札テーブル17から出力された入札落札情報データ17aが第3の機械学習のモデルアルゴリズムに入力され、その入力された入札落札情報データ17aから第3の機械学習のモデルアルゴリズムを用いて法人の将来の倒産確率が第4の倒産確率テーブル18に出力されるものである。この入札落札情報利用型与信分析装置103の詳細については後述する。
【0070】
図2の与信システムは、作業員位置情報監視装置104を有している。
データ基盤100は作業員位置情報監視装置104を有している。
また、データ基盤100は、作業員位置情報テーブル19を有している。
作業員位置情報テーブル19は、現場作業員にGPS(Global Positioning System)を有する端末を保持させ、その端末にGPSによって現場作業員が工事現場で働いている日又は時間の作業員位置情報データ19aを取得させ、その取得した作業員位置情報データ19aがインポートされるテーブルである。
【0071】
上記の作業員位置情報監視装置104は、作業員位置情報テーブル19の作業員位置情報データ19aを解析することで、工事の進行状況を監視するモニタリング機能を実現するプログラムを有する。
【0072】
上記の作業員位置情報監視装置104では、作業員位置情報テーブル19を参照することで、現場作業員が工事現場で働いている日又は時間を監視することができる。工事の規模等から現場作業員の必要人数を把握することができるため、現場作業員が工事現場で働く日数や合計時間を監視することで、その工事の進行が停止しているか否かを判定できる。その工事が停止していると判定した場合は、アラートが通知されるようにしておくとよい。
【0073】
図2に示すデータ基盤100は、工事現場写真・動画テーブル20を有している。
工事現場写真・動画テーブル20は、工事の現場作業員に写真又は動画の撮影機能を有する端末を保持させ、その撮影機能によって現場作業員に一定作業時間中1回以上工事現場を撮影させ、その撮影した写真又は動画のデータ20aがインポートされるテーブルである。
【0074】
図2の与信システムは写真・動画情報利用型監視装置105を備え、この写真・動画情報利用型監視装置105は、工事現場写真・動画テーブル20の写真又は動画のデータ20aを解析し、取引開始時点まで及び取引開始時点以降に法人が受注又は発注した工事の完成又は未完成を判定することで工事の進捗状況を監視するモニタリング機能を実現するプログラムを有する。
【0075】
上記の写真・動画情報利用型監視装置105では、工事現場の進捗を写真の画像データ又は動画データから解析し、工事が進行していることや工事が完成したことを、AIを用いることで自動的に把握することができる。
また、工事現場の写真又は動画のデータを基に所定期間内に建設機械が稼働した延べ台数、作業員の延べ人数、気象、及び、使用された資材の量などをAIによって計測することで、上記の受注工事又は発注工事の進捗状況を評価することが可能となる。
【0076】
第1の実施形態の<財務情報利用型与信分析装置101の財務情報提供サービスの企業等から取得した財務データ>の項目で説明した事項は本実施形態においても同様である。
【0077】
<財務情報利用型与信分析装置101の経営事項審査(財務)>
財務情報利用型与信分析装置101は、建設業界の法人の信用力を評価する機能を実現するプログラムを有する装置である。
図2に示す経営事項審査テーブル13から出力された経営事項審査データ13aは、取引開始時点から第1期間前までの法人の経営事項審査の財務情報に基づく値及びその値を評価した評価点の下記の(1)~(7)のデータである。
【0078】
法人の将来の倒産確率は、取引開始時点から第2期間内に前記法人が倒産する確率である。
(1)売上科目に関する情報に基づく値及び評価点
(2)費用科目に関する情報に基づく値及び評価点
(3)利益科目に関する情報に基づく値及び評価点
(4)資産科目に関する情報に基づく値及び評価点
(5)負債科目に関する情報に基づく値及び評価点
(6)純資産科目に関する情報に基づく値及び評価点
(7)上記(1)から(6)の情報に基づく少なくとも2つの値で四則演算及び対数計算の少なくとも一方を行うことで得られる情報に基づく値及び評価点
【0079】
以下に、上記の財務情報利用型与信分析装置101の詳細について説明する。
この財務情報利用型与信分析装置101は、機能(a)及び機能(b)を実現するプログラムを有する。
【0080】
上記の機能(a)は、取引開始時点から第1期間前までの法人の経営事項審査の財務情報に基づく値及びその値を評価した評価点の上記の(1)~(7)を機械学習のモデルアルゴリズムであるニューラルネットワーク(NN)に入力する機能である。
なお、第1期間は、前記の<財務情報利用型与信分析装置101の財務情報提供サービスの企業等から取得した財務データ>の欄で説明した期間と同様である。
【0081】
上記の(1)から(7)について詳細に説明する。
上記(1)の売上科目に関する情報に基づく値は、法人の例えば売上高等であり、その値を評価した評価点は上記の(1)から(7)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0082】
上記(2)の費用科目に関する情報に基づく値は、法人の例えば支払利息等であり、その値を評価した評価点は上記の(1)から(7)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0083】
上記(3)の利益科目に関する情報に基づく値は、法人の例えば売上総利益、経常利益等であり、その値を評価した評価点は上記の(1)から(7)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0084】
上記(4)の資産科目に関する情報に基づく値は、法人の例えば固定資産等であり、その値を評価した評価点は上記の(1)から(7)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0085】
上記(5)の負債科目に関する情報に基づく値は、法人の例えば流動負債、固定負債等であり、その値を評価した評価点は上記の(1)から(7)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0086】
上記(6)の純資産科目に関する情報に基づく値は、法人の例えば利益剰余金等であり、その値を評価した評価点は上記の(1)から(7)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0087】
上記(7)の上記(1)から(6)の値に基づく少なくとも2つの値で四則演算及び対数計算の少なくとも一方を行うことで得られる値及び評価点は、法人の例えば負債回転期間、純資本売上総利益率等であり、その値を評価した評価点は上記の(1)から(7)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0088】
なお、上記の(1)から(7)の各々の値及び評価点は、単数であっても複数あってもよい。
【0089】
また、上記(1)から(7)の値及び評価点がインポートされている経営事項審査テーブル13から経営事項審査データ13としての上記(1)から(7)の値及び評価点がニューラルネットワーク10に入力されるように構成されている。
【0090】
上記の機能(b)は、上記の機能(a)により入力された値及び評価点からニューラルネットワーク(機械学習のモデルアルゴリズム)10を用いて取引開始時点から第2期間内に法人が倒産する確率を出力する機能である。なお、第2期間は、前記の<財務情報利用型与信分析装置101の財務情報提供サービスの企業等から取得した財務データ>の欄で説明した期間と同様である。
【0091】
詳細には、多量の過去の倒産企業及び生存企業(良好な生存企業から倒産しそうな生存企業)の各々の上記(1)から(7)の値及び評価点を、経営事項審査のデータから取得した財務情報に基づいて収集する。ここでいう倒産企業及び生存企業は、建設・土木関連の企業であり、例えば売上高が10億円以下の企業規模、業種が一般土木、土木、舗装、建築、とび・土木・コンクリート等である。そして、上記の各々の上記(1)から(7)の値及び評価点を用いてニューラルネットワーク10に学習処理させることで、この学習処理によって倒産する法人を予測するモデルを取得する。この倒産予測モデルは、ニューラルネットワークのモデル(機械学習のモデルアルゴリズム)精度(AUC)が、0.7以上となるように学習処理されたものであるとよい。
また、上記機能(b)で出力される法人の倒産確率は第2の倒産確率テーブル14にインポートされるように構成されている。
【0092】
また、ニューラルネットワークに入力する上記の(1)から(7)の項目は、最低限の項目であり、さらに入力項目を追加してもよい。これにより、信用リスクにおけるAUCの値をより高くすることができる場合がある。
【0093】
<財務情報利用型与信分析装置101の経営事項審査(全体)>
財務情報利用型与信分析装置101は、建設業界の法人の信用力を評価する機能を実現するプログラムを有する装置である。
【0094】
経営事項審査テーブル13から出力された前記経営事項審査データ13aは、前記(1)~(7)に加え、取引開始時点から第1期間前までの法人の経営事項審査全体の情報に基づく値及びその値を評価した評価点の下記の(8)~(22)のデータであってもよい。
(8)建設工事の種類に関する情報に基づく値及び評価点
(9)完成工事高に関る情報に基づく値及び評価点
(10)技術職員の数に関する情報に基づく値及び評価点
(11)自己資本額に関する情報に基づく値及び評価点
(12)保険年金共済等への加入の有無に関する情報に基づく値及び評価点
(13)労働福祉の状況に関する情報に基づく値及び評価点
(14)建設業の営業継続の状況に関する情報に基づく値及び評価点
(15)防災活動への貢献の状況に関する情報に基づく値及び評価点
(16)法令遵守の状況に関する情報に基づく値及び評価点
(17)建設業の経理の状況に関する情報に基づく値及び評価点
(18)研究開発の状況に関する情報に基づく値及び評価点
(19)建設機械の保有状況に関する情報に基づく値及び評価点
(20)国際標準化機構が定めた規格による登録の状況に関する情報に基づく値及び評価点
(21)若年の技術者及び技能労働者の育成及び確保の状況に関する情報に基づく値及び評価点
(22)知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況に関する情報に基づく値及び評価点
【0095】
以下に、上記の財務情報利用型与信分析装置101の詳細について説明する。
この財務情報利用型与信分析装置101は、機能(a)及び機能(b)を実現するプログラムを有する。
【0096】
上記の機能(a)は、<財務情報利用型与信分析装置101の経営事項審査(財務)>の欄で説明した(1)~(7)に加え、取引開始時点から第1期間前までの法人の経営事項審査全体の情報に基づく値及びその値を評価した評価点の上記の(8)~(22)を機械学習のモデルアルゴリズムであるニューラルネットワーク(NN)に入力する機能である。
【0097】
上記の(8)から(22)について詳細に説明する。
上記(8)の建設工事の種類に関する情報の値とその値を評価した評価点は上記の(1)から(22)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0098】
上記(9)の完成工事高に関る情報の値とその値を評価した評価点は上記の(1)から(22)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0099】
上記(10)の技術職員の数に関する情報の値とその値を評価した評価点は上記の(1)から(22)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0100】
上記(11)の自己資本額に関する情報の値とその値を評価した評価点は上記の(1)から(22)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0101】
上記(12)の保険年金共済等への加入の有無に関する情報の値とその値を評価した評価点は上記の(1)から(22)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0102】
上記(13)の労働福祉の状況に関する情報の値とその値を評価した評価点は上記の(1)から(22)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0103】
上記(14)の建設業の営業継続の状況に関する情報の値とその値を評価した評価点は上記の(1)から(22)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0104】
上記(15)の防災活動への貢献の状況に関する情報の値とその値を評価した評価点は上記の(1)から(22)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0105】
上記(16)の法令遵守の状況に関する情報の値とその値を評価した評価点は上記の(1)から(22)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0106】
上記(17)の建設業の経理の状況に関する情報の値とその値を評価した評価点は上記の(1)から(22)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0107】
上記(18)の研究開発の状況に関する情報の値とその値を評価した評価点は上記の(1)から(22)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0108】
上記(19)の建設機械の保有状況に関する情報の値とその値を評価した評価点は上記の(1)から(22)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0109】
上記(20)の国際標準化機構が定めた規格による登録の状況に関する情報の値とその値を評価した評価点は上記の(1)から(22)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0110】
上記(21)の若年の技術者及び技能労働者の育成及び確保の状況に関する情報の値とその値を評価した評価点は上記の(1)から(22)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0111】
上記(22)の知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況に関する情報の値とその値を評価した評価点は上記の(1)から(22)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0112】
なお、上記の(1)から(22)の各々の値及び評価点は、単数であっても複数あってもよい。
【0113】
また、上記(1)から(22)の値及び評価点がインポートされている経営事項審査テーブル13から経営事項審査データ13としての上記(1)から(22)の値及び評価点がニューラルネットワークに入力されるように構成されている。
【0114】
上記の機能(b)は、第2の実施形態と同様に、上記の機能(a)により入力された値及び評価点からニューラルネットワーク(機械学習のモデルアルゴリズム)10を用いて取引開始時点から第2期間内に法人が倒産する確率を出力する機能である。
【0115】
詳細には、多量の過去の倒産企業及び生存企業(良好な生存企業から倒産しそうな生存企業)の各々の上記(1)から(22)の値及び評価点を、経営事項審査のデータから取得した情報に基づいて収集する。ここでいう倒産企業及び生存企業は、前述したものである。そして、上記の各々の上記(1)から(22)の値及び評価点を用いてニューラルネットワーク10に学習処理させることで、この学習処理によって倒産する法人を予測するモデルを取得する。この倒産予測モデルは、ニューラルネットワークのモデル(機械学習のモデルアルゴリズム)精度(AUC)が、0.7以上となるように学習処理されたものであるとよい。
また、上記機能(b)で出力される法人の倒産確率は第2のデータテーブルにインポートされるように構成されていてもよい。
【0116】
また、ニューラルネットワーク10に入力する上記の(1)から(22)の項目は、最低限の項目であり、さらに入力項目を追加してもよい。これにより、信用リスクにおけるAUCの値をより高くすることができる場合がある。
【0117】
(変形例)
上述した財務情報利用型与信分析装置101は、機能(a)及び機構(b)に加え、以下の機能(c)を実現するプログラムを有する与信分析装置であってもよい。
【0118】
上記の機能(c)は、上記の機能(a)及び機能(b)を一定期間毎に利用することで、継続的に与信の変化を察知する機能である。
【0119】
この財務情報利用型与信分析装置101では、一定期間毎に継続的に与信の変化を察知できる。そのため、取引開始時以降も一定期間毎に与信を確認することにより、取引先の法人が倒産するリスクを管理することができる。例えば、前述した機能(b)の倒産確率に閾値を設定し、その閾値を下回ったらアラートを通知する機能を設けることで、倒産リスクを管理することができる。
【0120】
<入札落札情報利用型与信分析装置103>
図2に示す入札落札情報利用型与信分析装置103は、第1期間内に法人(例えば建設業界の法人)が公示案件に入札し、その法人の入札落札結果をもとに、前記第1期間終了時から第2期間後に、前記法人が倒産する確率を予測するために、与信状況をモニタリングする機能を実現するプログラムを有する装置である。公示案件には、公共工事の他、学校給食の提供等、公共性の高い案件を含む。
【0121】
図2に示す入札落札テーブル17から出力された前記入札落札情報データ17aは、下記の数値(c)~(j)のデータである。
法人の将来の倒産確率は、第1期間終了時から第2期間後に法人が倒産する確率である。
【0122】
数値(c):前記第1期間内の前記法人の前記公示案件の入札回数の加重平均
数値(d):前記第1期間内の前記法人の前記公示案件の落札率の加重平均
数値(e):前記第1期間内の前記法人の辞退率の加重平均
数値(f):前記第1期間内の前記法人の失格率の加重平均
数値(g):前記第1期間内の前記法人の無効率の加重平均
数値(h):前記第1期間内の前記法人の入札金額の平均の加重平均
数値(i):前記第1期間内の前記法人の落札金額の平均の加重平均
数値(j):前記第1期間内の前記法人の落札金額の総和の加重平均
【0123】
以下に、上記の入札落札情報利用型与信分析装置103の詳細について説明する。
図2に示す入札落札情報利用型与信分析装置103は、第1期間内に法人(例えば建設業界の法人)が公示案件に入札し、その法人の入札落札結果をもとに、第1期間終了時から第2期間後に、その法人が倒産する確率を予測するために、与信状況を監視するモニタリング与信機能を実現するプログラムを有する与信分析装置である。つまり、この入札落札情報利用型与信分析装置を用いれば、与信状況を監視するモニタリング与信機能によって第1期間終了時から第2期間内に、その法人が倒産する確率を予測することが可能となる。
【0124】
入札落札情報は、法人が公示案件を入札から落札まで行った時の公示案件自体の情報と公示案件の入札落札結果の情報である。
【0125】
上記の第1期間は、3年以内の範囲内の期間であることが好ましいが、1年から3年の範囲内の期間であってもよい。また、上記の第2期間は、3年以内の範囲内の期間であることが好ましいが、6か月から3年の範囲内の期間であってもよい。
【0126】
上記のモニタリング与信機能について以下に詳細に説明する(
図2参照)。
モニタリング与信機能は、下記の機能(a)及び機能(b)を有する。
【0127】
機能(a)は、上記の数値(c)から数値(j)を機械学習のモデルアルゴリズムであるニューラルネットワークに入力する機能である。
【0128】
上記の入札回数、落札率、辞退率、失格率、無効率、入札金額、落札金額は、公共機関である国や自治体及びそれに準ずる公共性の高い組織等が公開する入札落札結果を取得し、その入札落札結果から得ることができる。例えば、落札率は、上記の法人の落札回数を入札回数で割ることにより得られる。また辞退率は、上記の法人の辞退回数を入札回数で割ることにより得られる。また失格率は、上記の法人の失格回数を入札回数で割ることにより得られる。また無効率は、上記の法人の無効回数を入札回数で割ることにより得られる。なお、入札落札情報利用型与信分析装置は上記の演算を行う手段を有していてもよい。
【0129】
上記の加重平均は、第1期間を複数の期間に分割し、複数の期間の各々の期間の数値(a)から数値(h)と重要度との積を使って算出する平均である。例えば、第1期間を分割した複数の期間のうち現在に近い期間の重要度を高くし、現在から遠ざかるにつれてその期間の重要度を徐々に下げるようにしてもよい。
【0130】
また、上記の数値(c)から(j)がインポートされている入札落札テーブル17から公示案件の入札落札情報データ17aとしての上記の数値(c)から(j)がニューラルネットワークに入力されるように構成されている。
【0131】
機能(b)は、上記の機能(a)により入力された値からニューラルネットワークを用いて第1期間終了時から第2期間後に法人が倒産する確率を出力する機能である。
詳細には、多量の過去の倒産企業及び生存企業(良好な生存企業から倒産しそうな生存企業)の各々の上記の数値(c)から(j)の情報を収集する。ここでいう倒産企業及び生存企業は、例えば建設・土木関連の企業であってもよく、例えば売上高が10億円以下の企業規模、業種が例えば一般土木、土木、舗装、建築、とび・土木・コンクリート等であってもよいが、勿論建設業界に限るものではない。そして、上記の各々の上記数値(c)から(j)の情報を用いてニューラルネットワークに学習処理させることで、この学習処理によって法人が倒産する確率を出力する倒産予測モデルを取得する。この倒産予測モデルは、ニューラルネットワークのモデル(機械学習のモデルアルゴリズム)精度(AUC)が、0.6以上となるように学習処理されたものであるとよい。
また、上記機能(b)で出力される法人の倒産確率は第4の倒産確率テーブル18にインポートされるように構成されている。
【0132】
また、ニューラルネットワークに入力する上記の数値(c)から(j)は、最低限の項目であり、さらに入力項目を追加してもよい。これにより、信用リスクにおけるAUCの値をより高くすることができる場合がある。
【0133】
上記の入札落札情報利用型与信分析装置では、精度の高い与信分析が可能となる。
【0134】
また、公示案件の入札落札情報は、公共機関及びそれに準ずる公共性の高い組織等が行う入札制度であること、その公共機関等が入札落札結果を公開していることから、信頼性の高い情報である。そのため、法人の過去の財務情報の粉飾を検知することが可能となる。また、落札金額によって未来のキャッシュフローの予測が可能となる。それにより、法人の倒産確率の精度を高めることが可能となる。
【0135】
また、法人の入札落札情報とニューラルネットワークを利用することで、法人に対する与信の分析が可能となるため、低コストで高い精度を実現することが可能となる。これにより、従来技術ではできなかった小規模の法人に対する少額の金銭を伴う取引に対しても与信判断が可能となる。
【0136】
上述したように小規模な法人に対しても与信判断が可能となるため、建設業界の小規模な法人であっても、ICT対応機器や対応サービス、ソリューションの導入のための資金の金銭を伴う取引が可能となる。従って、国土交通省が推進する建設生産活動の飛躍的な効率化を図るための「ICT施工」を小規模な法人に対して実現する一助となることが期待できる。
【0137】
なお、第1及び第2の実施形態を互いに組み合わせて実施することも可能である。
【符号の説明】
【0138】
11 財務テーブル
11a 財務データ
12 第1の倒産確率テーブル
13 経営事項審査テーブル
13a 経営事項審査データ
14 第2の倒産確率テーブルと、
15 口座テーブル
15a 銀行口座情報データ
16 第3の倒産確率テーブル
17 入札落札テーブル
17a 公示案件の入札落札情報データ
18 第4の倒産確率テーブル
19 作業員位置情報テーブル
19a 作業員位置情報データ
20 工事現場写真・動画テーブル
20a 写真又は動画のデータ
100 データ基盤
101 財務情報利用型与信分析装置
102 口座情報利用型与信分析装置
103 入札落札情報利用型与信分析装置
104 作業員位置情報監視装置
105 写真・動画情報利用型監視装置
1000 データ基盤