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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101970
(43)【公開日】2023-07-24
(54)【発明の名称】財務情報利用型与信分析装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/03 20230101AFI20230714BHJP
   G06Q 50/08 20120101ALI20230714BHJP
【FI】
G06Q40/02 300
G06Q50/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002235
(22)【出願日】2022-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】520368828
【氏名又は名称】株式会社ランドデータバンク
(74)【代理人】
【識別番号】100110858
【弁理士】
【氏名又は名称】柳瀬 睦肇
(72)【発明者】
【氏名】池田 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 詢平
(72)【発明者】
【氏名】矢川 昇
【テーマコード(参考)】
5L049
5L055
【Fターム(参考)】
5L049CC07
5L055BB15
(57)【要約】
【課題】精度の高い財務情報利用型与信分析装置を提供する。
【解決手段】本発明は、財務情報提供サービスの企業から取得した、取引開始時点から第1期間前までの法人の財務情報に基づく値及びその値を評価した評価点の下記(1)~(7)を機械学習のモデルアルゴリズムに入力する機能(a)と、機能(a)により入力された値及び評価点から機械学習のモデルアルゴリズムを用いて取引開始時点から第2期間内の法人の倒産確率を出力する機能(b)を実現するプログラムを有する財務情報利用型与信分析装置である。(1)売上科目の情報に基づく値及び評価点,(2)費用科目の情報に基づく値及び評価点,(3)利益科目の情報に基づく値及び評価点,(4)資産科目の情報に基づく値及び評価点,(5)負債科目の情報に基づく値及び評価点,(6)純資産科目の情報に基づく値及び評価点,(7)上記(1)から(6)の情報の2つ以上の値で四則演算や対数計算を行うことで得られる値及び評価点
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
法人の信用力を評価するための財務情報利用型与信分析装置において、
財務情報提供サービスの企業から取得した、取引開始時点から第1期間前までの前記法人の財務情報に基づく値及びその値を評価した評価点の下記の(1)~(7)を機械学習のモデルアルゴリズムに入力する機能(a)と、
前記機能(a)により入力された前記値及び前記評価点から機械学習のモデルアルゴリズムを用いて前記取引開始時点から第2期間内に前記法人が倒産する確率を出力する機能(b)と、
を実現するプログラムを有することを特徴とする財務情報利用型与信分析装置。
(1)売上科目に関する情報に基づく値及び評価点
(2)費用科目に関する情報に基づく値及び評価点
(3)利益科目に関する情報に基づく値及び評価点
(4)資産科目に関する情報に基づく値及び評価点
(5)負債科目に関する情報に基づく値及び評価点
(6)純資産科目に関する情報に基づく値及び評価点
(7)上記(1)から(6)の情報に基づく少なくとも2つの値で四則演算及び対数計算の少なくとも一方を行うことで得られる値及び評価点
【請求項2】
建設業界の法人の信用力を評価するための財務情報利用型与信分析装置において、
取引開始時点から第1期間前までの前記法人の経営事項審査の財務情報に基づく値及びその値を評価した評価点の下記の(1)~(7)を機械学習のモデルアルゴリズムに入力する機能(a)と、
前記機能(a)により入力された前記値及び前記評価点から機械学習のモデルアルゴリズムを用いて前記取引開始時点から第2期間内に前記法人が倒産する確率を出力する機能(b)と、
を実現するプログラムを有することを特徴とする財務情報利用型与信分析装置。
(1)売上科目に関する情報に基づく値及び評価点
(2)費用科目に関する情報に基づく値及び評価点
(3)利益科目に関する情報に基づく値及び評価点
(4)資産科目に関する情報に基づく値及び評価点
(5)負債科目に関する情報に基づく値及び評価点
(6)純資産科目に関する情報に基づく値及び評価点
(7)上記(1)から(6)の情報に基づく少なくとも2つの値で四則演算及び対数計算の少なくとも一方を行うことで得られる情報に基づく値及び評価点
【請求項3】
請求項2において、
前記機能(a)は、前記(1)~(7)に加え、前記取引開始時点から前記第1期間前までの前記法人の経営事項審査全体の情報に基づく値及びその値を評価した評価点の下記の(8)~(22)を機械学習のモデルアルゴリズムに入力する機能であることを特徴とする財務情報利用型与信分析装置。
(8)建設工事の種類に関する情報に基づく値及び評価点
(9)完成工事高に関る情報に基づく値及び評価点
(10)技術職員の数に関する情報に基づく値及び評価点
(11)自己資本額に関する情報に基づく値及び評価点
(12)保険年金共済等への加入の有無に関する情報に基づく値及び評価点
(13)労働福祉の状況に関する情報に基づく値及び評価点
(14)建設業の営業継続の状況に関する情報に基づく値及び評価点
(15)防災活動への貢献の状況に関する情報に基づく値及び評価点
(16)法令遵守の状況に関する情報に基づく値及び評価点
(17)建設業の経理の状況に関する情報に基づく値及び評価点
(18)研究開発の状況に関する情報に基づく値及び評価点
(19)建設機械の保有状況に関する情報に基づく値及び評価点
(20)国際標準化機構が定めた規格による登録の状況に関する情報に基づく値及び評価点
(21)若年の技術者及び技能労働者の育成及び確保の状況に関する情報に基づく値及び評価点
(22)知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況に関する情報に基づく値及び評価点
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項において、
前記第1期間は、3年以内の範囲内の期間であることを特徴とする財務情報利用型与信分析装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項において、
前記第2期間は、3年以内の範囲内の期間であることを特徴とする財務情報利用型与信分析装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項において、
前記機械学習のモデルアルゴリズム精度(AUC)は、0.7以上となるように学習されたものであることを特徴とする財務情報利用型与信分析装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項において、
前記機能(a)及び前記機能(b)を一定期間毎に利用することで、継続的に与信の変化を察知する機能(c)を実現するプログラムを有することを特徴とする財務情報利用型与信分析装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項において、
前記機械学習のモデルアルゴリズムは、ニューラルネットワーク、ランダムフォレスト、ロジスティック回帰、Elastic Net、サポートベクターマシン(SVM)、線形回帰、k近傍法(k-NN)、ナイーブベイズ、パーセプトロン、CART、QUEST、CHAID、C5.0、デシジョンジャングル、ベイズ線形回帰、ブースト 決定木、ポアソン回帰、リッジ回帰、ラッソ回帰、サポートベクター回帰 (SVR)、XGBoost、及びLightGBMのいずれかであることを特徴とする財務情報利用型与信分析装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項において、
前記法人は、建設業界の法人であることを特徴とする財務情報利用型与信分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、財務情報利用型与信分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な業界において比較的規模が小さい法人も多く、そのような法人は運転資金が少なく物的担保が乏しい場合が多い。そのため、事業を拡大する機会が訪れた場合に銀行などの金融機関から運転資金の融資を受けることができれば、その法人が事業を拡大していくことが可能となることがある。
しかし、従来、金融機関は、法人の財務情報や土地などの所有不動産によって融資申込時点の法人の信用力を分析することで、融資の可否を決定することが一般的であった。そのため、上述したような比較的規模が小さい法人では、十分な融資が受けられないことが多いため、たとえ事業を拡大する機会があっても、それを実現することが困難であった。
一例として建設業界について説明する。建設業界では、例えば法人が土木工事や建物の建築を受注した場合、完成するまでに長い期間がかかることがある。また、機械、機械のレンタル、労務及び材料の費用など多くの運転資金が必要となる。
【0003】
ところで、我が国の建設業界の法人は比較的規模が小さい企業も多く、そのような企業は運転資金が少なく物的担保が乏しい場合が多い。上記のように、建物を建築する場合、着工から完成までの期間が長く、この建築を施工する法人に対する支払は、完成後に行われることが多い。つまり、比較的規模が小さい法人が建物を建築する場合、受注件数が多くても、着工から支払いまでの期間が長いので、その運転資金が不足することが多いという問題がある。別言すれば、運転資金に限度があるため、受注件数を増やすことができないという問題がある。また、受注する建物の規模が大きいほど、収益も大きくなるが、運転資金が高額になるため、運転資金不足により受注できないことがある。このような場合、銀行などの金融機関から運転資金の融資を受けることができれば上記の問題を解決することができる。
【0004】
しかし、従来、金融機関は、前述したように、法人の財務情報や土地などの所有不動産によって融資申込時点の法人の信用力を分析することで、融資の可否を決定するため、上述したような建設業界の比較的規模が小さい法人では、十分な融資が受けられないことが多い。そのため、上記の問題を解決できず、受注件数を増やすこと、規模の大きい建物を受注することで、収益を大きくすることが困難であった。
【0005】
また、国土交通省が推進する「i-Construction(アイ・コンストラクション)」施策にて建設業、特に土木分野の生産性向上を後押ししている。この施策のコンセプトは測量から調査、設計、施工、検査、維持管理に至る建設プロジェクトの全プロセスにICTを導入し、「ICT施工」を実現することで建設生産活動の飛躍的な効率化を図るものである。
【0006】
しかしながら、「ICT施工」の実現には、ICT対応機器や対応サービス、ソリューションの導入が必要不可欠であり、そのためには元手となる資金が必要となる。
【0007】
そこで、従来に比べて精度の高い与信分析を行うことで、法人の規模の大小にかかわらず、融資を受けることができる法人の数を増やすことが求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の種々の態様は、精度の高い財務情報利用型与信分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下に本発明の種々の態様について説明する。
[1]法人の信用力を評価するための財務情報利用型与信分析装置において、
財務情報提供サービスの企業から取得した、取引開始時点から第1期間前までの前記法人の財務情報に基づく値及びその値を評価した評価点の下記の(1)~(7)を機械学習のモデルアルゴリズムに入力する機能(a)と、
前記機能(a)により入力された前記値及び前記評価点から機械学習のモデルアルゴリズムを用いて前記取引開始時点から第2期間内に前記法人が倒産する確率を出力する機能(b)と、
を実現するプログラムを有することを特徴とする財務情報利用型与信分析装置。
(1)売上科目に関する情報に基づく値及び評価点
(2)費用科目に関する情報に基づく値及び評価点
(3)利益科目に関する情報に基づく値及び評価点
(4)資産科目に関する情報に基づく値及び評価点
(5)負債科目に関する情報に基づく値及び評価点
(6)純資産科目に関する情報に基づく値及び評価点
(7)上記(1)から(6)の情報に基づく少なくとも2つの値で四則演算及び対数計算の少なくとも一方を行うことで得られる値及び評価点
【0010】
[2]建設業界の法人の信用力を評価するための財務情報利用型与信分析装置において、
取引開始時点から第1期間前までの前記法人の経営事項審査の財務情報に基づく値及びその値を評価した評価点の下記の(1)~(7)を機械学習のモデルアルゴリズムに入力する機能(a)と、
前記機能(a)により入力された前記値及び前記評価点から機械学習のモデルアルゴリズムを用いて前記取引開始時点から第2期間内に前記法人が倒産する確率を出力する機能(b)と、
を実現するプログラムを有することを特徴とする財務情報利用型与信分析装置。
(1)売上科目に関する情報に基づく値及び評価点
(2)費用科目に関する情報に基づく値及び評価点
(3)利益科目に関する情報に基づく値及び評価点
(4)資産科目に関する情報に基づく値及び評価点
(5)負債科目に関する情報に基づく値及び評価点
(6)純資産科目に関する情報に基づく値及び評価点
(7)上記(1)から(6)の情報に基づく少なくとも2つの値で四則演算及び対数計算の少なくとも一方を行うことで得られる情報に基づく値及び評価点
【0011】
[3]上記[2]において、
前記機能(a)は、前記(1)~(7)に加え、前記取引開始時点から前記第1期間前までの前記法人の経営事項審査全体の情報に基づく値及びその値を評価した評価点の下記の(8)~(22)を機械学習のモデルアルゴリズムに入力する機能であることを特徴とする財務情報利用型与信分析装置。
(8)建設工事の種類に関する情報に基づく値及び評価点
(9)完成工事高に関る情報に基づく値及び評価点
(10)技術職員の数に関する情報に基づく値及び評価点
(11)自己資本額に関する情報に基づく値及び評価点
(12)保険年金共済等への加入の有無に関する情報に基づく値及び評価点
(13)労働福祉の状況に関する情報に基づく値及び評価点
(14)建設業の営業継続の状況に関する情報に基づく値及び評価点
(15)防災活動への貢献の状況に関する情報に基づく値及び評価点
(16)法令遵守の状況に関する情報に基づく値及び評価点
(17)建設業の経理の状況に関する情報に基づく値及び評価点
(18)研究開発の状況に関する情報に基づく値及び評価点
(19)建設機械の保有状況に関する情報に基づく値及び評価点
(20)国際標準化機構が定めた規格による登録の状況に関する情報に基づく値及び評価点
(21)若年の技術者及び技能労働者の育成及び確保の状況に関する情報に基づく値及び評価点
(22)知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況に関する情報に基づく値及び評価点
【0012】
[4]上記[1]から[3]のいずれか一項において、
前記第1期間は、3年以内の範囲内の期間であることを特徴とする財務情報利用型与信分析装置。
【0013】
[5]上記[1]から[4]のいずれか一項において、
前記第2期間は、3年以内の範囲内の期間であることを特徴とする財務情報利用型与信分析装置。
【0014】
[6]上記[1]から[5]のいずれか一項において、
前記機械学習のモデルアルゴリズム精度(AUC)は、0.7以上となるように学習されたものであることを特徴とする財務情報利用型与信分析装置。
【0015】
[7]上記[1]から[6]のいずれか一項において、
前記機能(a)及び前記機能(b)を一定期間毎に利用することで、継続的に与信の変化を察知する機能(c)を実現するプログラムを有することを特徴とする財務情報利用型与信分析装置。
【0016】
[8]上記[1]から[7]のいずれか一項において、
前記機械学習のモデルアルゴリズムは、ニューラルネットワーク、ランダムフォレスト、ロジスティック回帰、Elastic Net、サポートベクターマシン(SVM)、線形回帰、k近傍法(k-NN)、ナイーブベイズ、パーセプトロン、CART、QUEST、CHAID、C5.0、デシジョンジャングル、ベイズ線形回帰、ブースト 決定木、ポアソン回帰、リッジ回帰、ラッソ回帰、サポートベクター回帰 (SVR)、XGBoost、及びLightGBMのいずれかであることを特徴とする財務情報利用型与信分析装置。
[9]上記[1]から[8]のいずれか一項において、
前記法人は、建設業界の法人であることを特徴とする財務情報利用型与信分析装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明の種々の態様によれば、精度の高い財務情報利用型与信分析装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一態様に係る財務情報利用型与信分析装置を説明するための模式図である。
図2】本発明の一態様に係る財務情報利用型与信分析装置を説明するための模式図である。
図3】本発明の一態様に係る財務情報利用型与信分析装置を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0020】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の一態様に係る財務情報利用型与信分析装置を説明するための模式図である。
【0021】
<財務情報提供サービスの企業等から取得した財務データ>
図1に示す財務情報利用型与信分析装置は、法人の信用力を評価するための与信分析装置である。
この財務情報利用型与信分析装置は、機能(a)及び機能(b)を実現するプログラムを有する。
【0022】
上記の機能(a)は、取引開始時点から第1期間前までの法人の財務情報に基づく値及びその値を評価した評価点の下記の(1)~(7)を機械学習のモデルアルゴリズムであるニューラルネットワーク(NN)10に入力する機能である。ここでの法人の財務情報は、財務情報提供サービスの企業等から取得した情報(財務データ)であるとよい。
なお、第1期間は、3年以内の範囲内の期間であることが好ましいが、6か月から3年の範囲内の期間であってもよいし、これより長い期間であってもよい。
【0023】
(1)売上科目に関する情報に基づく値及び評価点
(2)費用科目に関する情報に基づく値及び評価点
(3)利益科目に関する情報に基づく値及び評価点
(4)資産科目に関する情報に基づく値及び評価点
(5)負債科目に関する情報に基づく値及び評価点
(6)純資産科目に関する情報に基づく値及び評価点
(7)上記(1)から(6)の情報に基づく少なくとも2つの値で四則演算及び対数計算の少なくとも一方を行うことで得られる値及び評価点
【0024】
上記の(1)から(7)について詳細に説明する。
上記(1)の売上科目に関する情報に基づく値は、法人の例えば売上高等であり、その値を評価した評価点は上記の(1)から(7)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0025】
上記(2)の費用科目に関する情報に基づく値は、法人の例えば売上原価、給与手当等であり、その値を評価した評価点は上記の(1)から(7)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0026】
上記(3)の利益科目に関する情報に基づく値は、法人の例えば売上総利益、経常利益等であり、その値を評価した評価点は上記の(1)から(7)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0027】
上記(4)の資産科目に関する情報に基づく値は、法人の例えば流動資産、固定資産等であり、その値を評価した評価点は上記の(1)から(7)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0028】
上記(5)の負債科目に関する情報に基づく値は、法人の例えば流動負債、固定負債等であり、その値を評価した評価点は上記の(1)から(7)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0029】
上記(6)の純資産科目に関する情報に基づく値は、法人の例えば資本金、資本準備金等であり、その値を評価した評価点は上記の(1)から(7)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0030】
上記(7)の上記(1)から(6)の値に基づく少なくとも2つの値で四則演算及び対数計算の少なくとも一方を行うことで得られる値及び評価点は、法人の例えば負債回転期間、純資本売上総利益率等であり、その値を評価した評価点は上記の(1)から(7)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0031】
なお、上記の(1)から(7)の各々の値及び評価点は、単数であっても複数あってもよい。
【0032】
また、上記(1)から(7)の値及び評価点がインポートされている第1のデータテーブルを準備し、第1のデータテーブルから上記(1)から(7)の値及び評価点がニューラルネットワーク10に入力されるように構成されていてもよい。
【0033】
上記の機能(b)は、上記の機能(a)により入力された値及び評価点からニューラルネットワーク(機械学習のモデルアルゴリズム)10を用いて取引開始時点から第2期間内に法人が倒産する確率を出力する機能である。なお、第2期間は、3年以内の範囲内の期間であることが好ましいが、これより長い期間であってもよい。
【0034】
詳細には、多量の過去の倒産企業及び生存企業(良好な生存企業から倒産しそうな生存企業)の各々の上記(1)から(7)の値及び評価点を、財務情報提供サービスの企業等から取得した財務情報に基づいて収集する。ここでいう倒産企業及び生存企業は、例えば売上高が10億円以下の企業規模である。そして、上記の各々の上記(1)から(7)の値及び評価点を用いてニューラルネットワーク10に学習処理させることで、この学習処理によって倒産する法人を予測するモデルを取得する。この倒産予測モデルは、ニューラルネットワークのモデル(機械学習のモデルアルゴリズム)精度(AUC)が、0.7以上となるように学習処理されたものであるとよい。
また、上記機能(b)で出力される法人の倒産確率は第2のデータテーブルにインポートされるように構成されていてもよい。
【0035】
また、ニューラルネットワーク10に入力する上記の(1)から(7)の項目は、最低限の項目であり、さらに入力項目を追加してもよい。これにより、信用リスクにおけるAUCの値をより高くすることができる場合がある。
【0036】
本実施形態によれば、精度の高い財務情報利用型与信分析装置を提供することができる。その結果、財務情報利用型与信分析装置によって分析された法人と取引を開始するか否かを判定することが可能となる。
【0037】
また、本実施形態では、取引開始時点での法人の信用力を、ニューラルネットワーク10を用いて分析し、その法人が取引開始時点から第2期間内に倒産する確率を出力することができ、取引開始時点での法人の与信分析が可能となる。そのため、低コストで高い精度を実現することが可能となる。これにより、従来技術ではできなかった小規模の法人に対する少額の金銭を伴う取引に対しても取引開始時点での与信判断が可能となる。つまり、従来技術では取引開始できなかった法人に対しても取引を開始することが可能となる。
【0038】
上述したように小規模な法人に対しても取引開始時点での与信判断が可能となるため、建設業界の小規模な法人であっても、ICT対応機器や対応サービス、ソリューションの導入のための金銭を伴う取引が可能となる。従って、国土交通省が推進する建設生産活動の飛躍的な効率化を図るための「ICT施工」を小規模な法人に対して実現する一助となることが期待できる。
【0039】
なお、本実施形態では、ニューラルネットワーク10を用いているが、ニューラルネットワーク以外の機械学習のモデルアルゴリズムを用いることも可能である。
本明細書における「機械学習のモデルアルゴリズム」は、ランダムフォレスト、ロジスティック回帰、Elastic Net、サポートベクターマシン(SVM)、線形回帰、k近傍法(k-NN)、ナイーブベイズ、パーセプトロン、CART、QUEST、CHAID、C5.0、デシジョンジャングル、ベイズ線形回帰、ブースト 決定木、ポアソン回帰、リッジ回帰、ラッソ回帰、サポートベクター回帰 (SVR)、XGBoost、及びLightGBMを含むものとする。
【0040】
(第2の実施形態)
図2は、本発明の一態様に係る財務情報利用型与信分析装置を説明するための模式図である。
【0041】
<経営事項審査(財務)>
図2に示す財務情報利用型与信分析装置は、建設業界の法人の信用力を評価するための与信分析装置である。
この財務情報利用型与信分析装置は、機能(a)及び機能(b)を実現するプログラムを有する。
【0042】
上記の機能(a)は、取引開始時点から第1期間前までの法人の経営事項審査の財務情報に基づく値及びその値を評価した評価点の下記の(1)~(7)を機械学習のモデルアルゴリズムであるニューラルネットワーク(NN)10に入力する機能である。
なお、第1期間は、第1の実施形態と同様である。
【0043】
(1)売上科目に関する情報に基づく値及び評価点
(2)費用科目に関する情報に基づく値及び評価点
(3)利益科目に関する情報に基づく値及び評価点
(4)資産科目に関する情報に基づく値及び評価点
(5)負債科目に関する情報に基づく値及び評価点
(6)純資産科目に関する情報に基づく値及び評価点
(7)上記(1)から(6)の情報に基づく少なくとも2つの値で四則演算及び対数計算の少なくとも一方を行うことで得られる値及び評価点
【0044】
上記の(1)から(7)について詳細に説明する。
上記(1)の売上科目に関する情報に基づく値は、法人の例えば売上高等であり、その値を評価した評価点は上記の(1)から(7)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0045】
上記(2)の費用科目に関する情報に基づく値は、法人の例えば支払利息等であり、その値を評価した評価点は上記の(1)から(7)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0046】
上記(3)の利益科目に関する情報に基づく値は、法人の例えば売上総利益、経常利益等であり、その値を評価した評価点は上記の(1)から(7)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0047】
上記(4)の資産科目に関する情報に基づく値は、法人の例えば固定資産等であり、その値を評価した評価点は上記の(1)から(7)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0048】
上記(5)の負債科目に関する情報に基づく値は、法人の例えば流動負債、固定負債等であり、その値を評価した評価点は上記の(1)から(7)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0049】
上記(6)の純資産科目に関する情報に基づく値は、法人の例えば利益剰余金等であり、その値を評価した評価点は上記の(1)から(7)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0050】
上記(7)の上記(1)から(6)の値に基づく少なくとも2つの値で四則演算及び対数計算の少なくとも一方を行うことで得られる値及び評価点は、法人の例えば負債回転期間、純資本売上総利益率等であり、その値を評価した評価点は上記の(1)から(7)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0051】
なお、上記の(1)から(7)の各々の値及び評価点は、単数であっても複数あってもよい。
【0052】
また、上記(1)から(7)の値及び評価点がインポートされている第1のデータテーブルを準備し、第1のデータテーブルから上記(1)から(7)の値及び評価点がニューラルネットワーク10に入力されるように構成されていてもよい。
【0053】
上記の機能(b)は、上記の機能(a)により入力された値及び評価点からニューラルネットワーク(機械学習のモデルアルゴリズム)10を用いて取引開始時点から第2期間内に法人が倒産する確率を出力する機能である。なお、第2期間は、第1の実施形態と同様である。
【0054】
詳細には、多量の過去の倒産企業及び生存企業(良好な生存企業から倒産しそうな生存企業)の各々の上記(1)から(7)の値及び評価点を、経営事項審査のデータから取得した財務情報に基づいて収集する。ここでいう倒産企業及び生存企業は、建設・土木関連の企業であり、例えば売上高が10億円以下の企業規模、業種が一般土木、土木、舗装、建築、とび・土木・コンクリート等である。そして、上記の各々の上記(1)から(7)の値及び評価点を用いてニューラルネットワーク10に学習処理させることで、この学習処理によって倒産する法人を予測するモデルを取得する。この倒産予測モデルは、ニューラルネットワークのモデル(機械学習のモデルアルゴリズム)精度(AUC)が、0.7以上となるように学習処理されたものであるとよい。
また、上記機能(b)で出力される法人の倒産確率は第2のデータテーブルにインポートされるように構成されていてもよい。
【0055】
また、ニューラルネットワーク10に入力する上記の(1)から(7)の項目は、最低限の項目であり、さらに入力項目を追加してもよい。これにより、信用リスクにおけるAUCの値をより高くすることができる場合がある。
【0056】
本実施形態において第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、本実施形態では、建設業界に特化した精度の高い財務情報利用型与信分析装置を提供することができる。
【0057】
(第3の実施形態)
図3は、本発明の一態様に係る財務情報利用型与信分析装置を説明するための模式図である。
【0058】
<経営事項審査(全体)>
図3に示す財務情報利用型与信分析装置は、建設業界の法人の信用力を評価するための与信分析装置である。
この財務情報利用型与信分析装置は、機能(a)及び機能(b)を実現するプログラムを有する。
【0059】
上記の機能(a)は、第2の実施形態で説明した(1)~(7)に加え、取引開始時点から第1期間前までの法人の経営事項審査全体の情報に基づく値及びその値を評価した評価点の下記の(8)~(22)を機械学習のモデルアルゴリズムであるニューラルネットワーク(NN)10に入力する機能である。
なお、第1期間は、第1の実施形態と同様である。
【0060】
(8)建設工事の種類に関する情報に基づく値及び評価点
(9)完成工事高に関る情報に基づく値及び評価点
(10)技術職員の数に関する情報に基づく値及び評価点
(11)自己資本額に関する情報に基づく値及び評価点
(12)保険年金共済等への加入の有無に関する情報に基づく評価点
(13)労働福祉の状況に関する情報に基づく値及び評価点
(14)建設業の営業継続の状況に関する情報に基づく値及び評価点
(15)防災活動への貢献の状況に関する情報に基づく値及び評価点
(16)法令遵守の状況に関する情報に基づく値及び評価点
(17)建設業の経理の状況に関する情報に基づく値及び評価点
(18)研究開発の状況に関する情報に基づく値及び評価点
(19)建設機械の保有状況に関する情報に基づく値及び評価点
(20)国際標準化機構が定めた規格による登録の状況に関する情報に基づく値及び評価点
(21)若年の技術者及び技能労働者の育成及び確保の状況に関する情報に基づく値及び評価点
(22)知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況に関する情報に基づく値及び評価点
【0061】
上記の(8)から(22)について詳細に説明する。
上記(8)の建設工事の種類に関する情報の値とその値を評価した評価点は上記の(1)から(22)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0062】
上記(9)の完成工事高に関る情報の値とその値を評価した評価点は上記の(1)から(22)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0063】
上記(10)の技術職員の数に関する情報の値とその値を評価した評価点は上記の(1)から(22)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0064】
上記(11)の自己資本額に関する情報の値とその値を評価した評価点は上記の(1)から(22)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0065】
上記(12)の保険年金共済等への加入の有無に関する情報の値とその値を評価した評価点は上記の(1)から(22)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0066】
上記(13)の労働福祉の状況に関する情報の値とその値を評価した評価点は上記の(1)から(22)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0067】
上記(14)の建設業の営業継続の状況に関する情報の値とその値を評価した評価点は上記の(1)から(22)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0068】
上記(15)の防災活動への貢献の状況に関する情報の値とその値を評価した評価点は上記の(1)から(22)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0069】
上記(16)の法令遵守の状況に関する情報の値とその値を評価した評価点は上記の(1)から(22)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0070】
上記(17)の建設業の経理の状況に関する情報の値とその値を評価した評価点は上記の(1)から(22)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0071】
上記(18)の研究開発の状況に関する情報の値とその値を評価した評価点は上記の(1)から(22)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0072】
上記(19)の建設機械の保有状況に関する情報の値とその値を評価した評価点は上記の(1)から(22)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0073】
上記(20)の国際標準化機構が定めた規格による登録の状況に関する情報の値とその値を評価した評価点は上記の(1)から(22)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0074】
上記(21)の若年の技術者及び技能労働者の育成及び確保の状況に関する情報の値とその値を評価した評価点は上記の(1)から(22)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0075】
上記(22)の知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況に関する情報の値とその値を評価した評価点は上記の(1)から(22)の項目の重要度に応じて重み付けをして評価点数を決めるとよい。
【0076】
なお、上記の(1)から(22)の各々の値及び評価点は、単数であっても複数あってもよい。
【0077】
また、上記(1)から(22)の値及び評価点がインポートされている第1のデータテーブルを準備し、第1のデータテーブルから上記(1)から(22)の値及び評価点がニューラルネットワーク10に入力されるように構成されていてもよい。
【0078】
上記の機能(b)は、第2の実施形態と同様に、上記の機能(a)により入力された値及び評価点からニューラルネットワーク(機械学習のモデルアルゴリズム)10を用いて取引開始時点から第2期間内に法人が倒産する確率を出力する機能である。なお、第2期間は、第1の実施形態と同様である。
【0079】
詳細には、多量の過去の倒産企業及び生存企業(良好な生存企業から倒産しそうな生存企業)の各々の上記(1)から(22)の値及び評価点を、経営事項審査のデータから取得した情報に基づいて収集する。ここでいう倒産企業及び生存企業は、第2の実施形態と同様である。そして、上記の各々の上記(1)から(22)の値及び評価点を用いてニューラルネットワーク10に学習処理させることで、この学習処理によって倒産する法人を予測するモデルを取得する。この倒産予測モデルは、ニューラルネットワークのモデル(機械学習のモデルアルゴリズム)精度(AUC)が、0.7以上となるように学習処理されたものであるとよい。
また、上記機能(b)で出力される法人の倒産確率は第2のデータテーブルにインポートされるように構成されていてもよい。
【0080】
また、ニューラルネットワーク10に入力する上記の(1)から(22)の項目は、最低限の項目であり、さらに入力項目を追加してもよい。これにより、信用リスクにおけるAUCの値をより高くすることができる場合がある。
【0081】
本実施形態において第1及び第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0082】
(第4の実施形態)
本実施形態による財務情報利用型与信分析装置は、第1の実施形態、第2の実施形態又は第3の実施形態と同様の機能(a)及び機構(b)に加え、以下の機能(c)を実現するプログラムを有する与信分析装置である。
【0083】
上記の機能(c)は、上記の機能(a)及び機能(b)を一定期間毎に利用することで、継続的に与信の変化を察知する機能である。
【0084】
本実施形態によれば、一定期間毎に継続的に与信の変化を察知できる。そのため、取引開始時以降も一定期間毎に与信を確認することにより、取引先の法人が倒産するリスクを管理することができる。例えば、第1から第3の実施形態それぞれで説明した機能(b)の倒産確率に閾値を設定し、その閾値を下回ったらアラートを通知する機能を設けることで、倒産リスクを管理することができる。
【0085】
なお、上述した第1の実施形態から第4の実施形態を適宜組み合わせて実施することも可能である。
【符号の説明】
【0086】
10 ニューラルネットワーク
図1
図2
図3