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  • 特開-入札落札情報利用型与信分析装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101972
(43)【公開日】2023-07-24
(54)【発明の名称】入札落札情報利用型与信分析装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20230714BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002237
(22)【出願日】2022-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】520368828
【氏名又は名称】株式会社ランドデータバンク
(74)【代理人】
【識別番号】100110858
【弁理士】
【氏名又は名称】柳瀬 睦肇
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 詢平
(72)【発明者】
【氏名】池田 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】矢川 昇
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC12
(57)【要約】
【課題】精度の高い入札落札情報利用型与信分析装置を提供する。
【解決手段】本発明は、第1期間内に法人が公示案件に入札し、その法人の入札落札結果をもとに、第1期間終了時から第2期間後に、法人が倒産する確率を予測するために、与信状況を監視するモニタリング与信機能を実現するプログラムを有し、モニタリング与信機能は、数値(c)~(j)を機械学習のモデルアルゴリズムに入力する機能(a)と、機能(a)により入力された値から機械学習のモデルアルゴリズムを用いて第1期間終了時から第2期間後に法人が倒産する確率を出力する機能(b)と、を有する入札落札情報利用型与信分析装置である。数値(c):第1期間内の法人の公示案件の入札回数、数値(d):前記公示案件の落札率、数値(e):前記法人の辞退率、数値(f):前記法人の失格率、数値(g):前記法人の無効率、数値(h):前記入札金額の平均、数値(i):前記落札金額の平均、及び数値(j):前記落札金額の総和の各々の加重平均
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1期間内に法人が公示案件に入札し、その法人の入札落札結果をもとに、前記第1期間終了時から第2期間後に、前記法人が倒産する確率を予測するために、与信状況を監視するモニタリング与信機能を実現するプログラムを有する入札落札情報利用型与信分析装置において、
前記モニタリング与信機能は、
下記の数値(c)~(j)を機械学習のモデルアルゴリズムに入力する機能(a)と、
前記機能(a)により入力された値から機械学習のモデルアルゴリズムを用いて前記第1期間終了時から前記第2期間後に前記法人が倒産する確率を出力する機能(b)と、
を有し、
前記入札落札情報は、前記法人が前記公示案件を入札から落札まで行った時の前記公示案件自体の情報と前記公示案件の入札落札結果の情報であることを特徴とする入札落札情報利用型与信分析装置。
数値(c):前記第1期間内の前記法人の前記公示案件の入札回数の加重平均
数値(d):前記第1期間内の前記法人の前記公示案件の落札率の加重平均
数値(e):前記第1期間内の前記法人の辞退率の加重平均
数値(f):前記第1期間内の前記法人の失格率の加重平均
数値(g):前記第1期間内の前記法人の無効率の加重平均
数値(h):前記第1期間内の前記法人の入札金額の平均の加重平均
数値(i):前記第1期間内の前記法人の落札金額の平均の加重平均
数値(j):前記第1期間内の前記法人の落札金額の総和の加重平均
【請求項2】
請求項1において、
前記第1期間は、3年以内の範囲内の期間であることを特徴とする入札落札情報利用型与信分析装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記第2期間は、3年以内の範囲内の期間であることを特徴とする入札落札情報利用型与信分析装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項において、
前記加重平均は、前記第1期間を複数の期間に分割し、前記複数の期間の各々の期間の数値(a)から数値(h)と重要度との積を使って算出する平均であることを特徴とする入札落札情報利用型与信分析装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項において、
前記機械学習のモデルアルゴリズム精度(AUC)は、0.6以上となるように学習されたものであることを特徴とする入札落札情報利用型与信分析装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項において、
前記モニタリング与信機能の前記機能(a)及び前記機能(b)を日々又は一定期間毎に利用することで、継続的に与信の変化を察知する機能(k)を実現するプログラムを有することを特徴とする入札落札情報利用型与信分析装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項において、
前記機械学習のモデルアルゴリズムは、ニューラルネットワーク、ランダムフォレスト、ロジスティック回帰、Elastic Net、サポートベクターマシン(SVM)、線形回帰、k近傍法(k-NN)、ナイーブベイズ、パーセプトロン、CART、QUEST、CHAID、C5.0、デシジョンジャングル、ベイズ線形回帰、ブースト 決定木、ポアソン回帰、リッジ回帰、ラッソ回帰、サポートベクター回帰 (SVR)、XGBoost、及びLightGBMのいずれかであることを特徴とする入札落札情報利用型与信分析装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項において、
前記法人は、建設業界の法人であることを特徴とする入札落札情報利用型与信分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入札落札情報利用型与信分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な業界において比較的規模が小さい法人も多く、そのような法人は運転資金が少なく物的担保が乏しい場合が多い。そのため、事業を拡大する機会が訪れた場合に銀行などの金融機関から運転資金の融資を受けることができれば、その法人が事業を拡大していくことが可能となることがある。
しかし、従来、金融機関は、法人の財務情報や土地などの所有不動産によって融資申込時点の法人の信用力を分析することで、融資の可否を決定することが一般的であった。そのため、上述したような比較的規模が小さい法人では、十分な融資が受けられないことが多いため、たとえ事業を拡大する機会があっても、それを実現することが困難であった。
一例として建設業界について説明する。建設業界では、例えば法人が土木工事や建物の建築を受注した場合、完成するまでに長い期間がかかることがある。また、機械、機械のレンタル、労務及び材料の費用など多くの運転資金が必要となる。
【0003】
ところで、我が国の建設業界の法人は比較的規模が小さい企業も多く、そのような企業は運転資金が少なく物的担保が乏しい場合が多い。上記のように、建物を建築する場合、着工から完成までの期間が長く、この建築を施工する法人に対する支払は、完成後に行われることが多い。つまり、比較的規模が小さい法人が建物を建築する場合、受注件数が多くても、着工から支払いまでの期間が長いので、その運転資金が不足することが多いという問題がある。別言すれば、運転資金に限度があるため、受注件数を増やすことができないという問題がある。また、受注する建物の規模が大きいほど、収益も大きくなるが、運転資金が高額になるため、運転資金不足により受注できないことがある。このような場合、銀行などの金融機関から運転資金の融資を受けることができれば上記の問題を解決することができる。
【0004】
しかし、従来、金融機関は、前述したように、法人の財務情報や土地などの所有不動産によって融資申込時点の法人の信用力を分析することで、融資の可否を決定するため、上述したような建設業界の比較的規模が小さい法人では、十分な融資が受けられないことが多い。そのため、上記の問題を解決できず、受注件数を増やすこと、規模の大きい建物を受注することで、収益を大きくすることが困難であった。
【0005】
また、国土交通省が推進する「i-Construction(アイ・コンストラクション)」施策にて建設業、特に土木分野の生産性向上を後押ししている。この施策のコンセプトは測量から調査、設計、施工、検査、維持管理に至る建設プロジェクトの全プロセスにICTを導入し、「ICT施工」を実現することで建設生産活動の飛躍的な効率化を図るものである。
【0006】
しかしながら、「ICT施工」の実現には、ICT対応機器や対応サービス、ソリューションの導入が必要不可欠であり、そのためには元手となる資金が必要となる。
【0007】
そこで、従来に比べて精度の高い与信分析を行うことで、法人の規模の大小にかかわらず、融資を受けることができる法人の数を増やすことが求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の種々の態様は、精度の高い入札落札情報利用型与信分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下に本発明の種々の態様について説明する。
[1]第1期間内に法人が公示案件に入札し、その法人の入札落札結果をもとに、前記第1期間終了時から第2期間後に、前記法人が倒産する確率を予測するために、与信状況を監視するモニタリング与信機能を実現するプログラムを有する入札落札情報利用型与信分析装置において、
前記モニタリング与信機能は、
下記の数値(c)~(j)を機械学習のモデルアルゴリズムに入力する機能(a)と、
前記機能(a)により入力された値から機械学習のモデルアルゴリズムを用いて前記第1期間終了時から前記第2期間後に前記法人が倒産する確率を出力する機能(b)と、
を有し、
前記入札落札情報は、前記法人が前記公示案件を入札から落札まで行った時の前記公示案件自体の情報と前記公示案件の入札落札結果の情報であることを特徴とする入札落札情報利用型与信分析装置。
数値(c):前記第1期間内の前記法人の前記公示案件の入札回数の加重平均
数値(d):前記第1期間内の前記法人の前記公示案件の落札率の加重平均
数値(e):前記第1期間内の前記法人の辞退率の加重平均
数値(f):前記第1期間内の前記法人の失格率の加重平均
数値(g):前記第1期間内の前記法人の無効率の加重平均
数値(h):前記第1期間内の前記法人の入札金額の平均の加重平均
数値(i):前記第1期間内の前記法人の落札金額の平均の加重平均
数値(j):前記第1期間内の前記法人の落札金額の総和の加重平均
【0010】
[2]上記[1]において、
前記第1期間は、3年以内の範囲内の期間であることを特徴とする入札落札情報利用型与信分析装置。
【0011】
[3]上記[1]又は[2]において、
前記第2期間は、3年以内の範囲内の期間であることを特徴とする入札落札情報利用型与信分析装置。
【0012】
[4]上記[1]から[3]のいずれか一項において、
前記加重平均は、前記第1期間を複数の期間に分割し、前記複数の期間の各々の期間の数値(a)から数値(h)と重要度との積を使って算出する平均であることを特徴とする入札落札情報利用型与信分析装置。
【0013】
[5]上記[1]から[4]のいずれか一項において、
前記機械学習のモデルアルゴリズム精度(AUC)は、0.6以上となるように学習されたものであることを特徴とする入札落札情報利用型与信分析装置。
【0014】
[6]上記[1]から[5]のいずれか一項において、
前記モニタリング与信機能の前記機能(a)及び前記機能(b)を日々又は一定期間毎に利用することで、継続的に与信の変化を察知する機能(k)を実現するプログラムを有することを特徴とする入札落札情報利用型与信分析装置。
[7]上記[1]から[6]のいずれか一項において、
前記機械学習のモデルアルゴリズムは、ニューラルネットワーク、ランダムフォレスト、ロジスティック回帰、Elastic Net、サポートベクターマシン(SVM)、線形回帰、k近傍法(k-NN)、ナイーブベイズ、パーセプトロン、CART、QUEST、CHAID、C5.0、デシジョンジャングル、ベイズ線形回帰、ブースト 決定木、ポアソン回帰、リッジ回帰、ラッソ回帰、サポートベクター回帰 (SVR)、XGBoost、及びLightGBMのいずれかであることを特徴とする入札落札情報利用型与信分析装置。
[8]上記[1]から[7]のいずれか一項において、
前記法人は、建設業界の法人であることを特徴とする入札落札情報利用型与信分析装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明の種々の態様によれば、精度の高い入札落札情報利用型与信分析装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一態様に係る入札落札情報利用型与信分析装置を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0018】
国や自治体及びそれに準ずる公共性の高い組織等が、公示案件を発注する場合は、入札制度を利用する必要がある。公示案件には、公共工事の他、学校給食の提供等、公共性の高い案件を含む。入札落札情報には、ある公示案件において、どの法人がいくらで入札したのか、その結果どうなったのか(例えば、落札、落札できなかった、辞退、失格、無効など)の情報がある。この結果を分析することで、その法人の公示案件実行能力や、財務状況を入札落札の状況や、時間軸変化から評価することができる。
【0019】
上記の情報を利用する理由は下記の(1),(2)のとおりである。
(1)落札された金額が売上に直結し、その法人に入金される情報となる。別言すれば、入札資格を有する有資格者情報、各種評点(信用評価会社の評価点や自治体や国の評価など)など、当該事業者(法人)を間接的に測るデータと異なり、売上(落札金額)、ひいては現預金入金に近い又は直結している情報である。
(2)法人の情報が改ざんされている可能性が低い。特に公示案件に関し、地方自治体が公開している情報のため、改ざん可能性が低い。
【0020】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の一態様に係る入札落札情報利用型与信分析装置を説明するための模式図である。
【0021】
図1に示す入札落札情報利用型与信分析装置は、取引開始時点での法人の信用力を評価するために分析する初期与信と更に取引期間中に信用力の変化をモニタリングする与信分析装置である。与信のモニタリングを開始する時期は、以下の(x)から(z)が可能である。
【0022】
(x)法人から取引(例えば金銭を伴う取引)申込を受けて取引開始時点での与信を分析し、取引が可能と判断し、取引を実行する時からモニタリングを開始する。
(y)上記(x)の取引開始時点での与信を分析する時に図1の入札落札情報利用型与信分析装置を活用する。その結果を初期与信に加えて与信判断材料とする。
(z)法人から取引(例えば金銭を伴う取引)申込を受けて初期与信を分析する前に図1の入札落札情報利用型与信分析装置を活用してモニタリング与信を一定期間実行し、その一定期間後に初期与信を分析し、その初期与信とモニタリングした与信を合わせてその法人の与信判断を行う。なお、一定期間は、例えば3か月から2年である。
【0023】
図1の入札落札情報利用型与信分析装置は、第1期間内に法人(例えば建設業界の法人)が公示案件に入札し、その法人の入札落札結果をもとに、第1期間終了時から第2期間後に、その法人が倒産する確率を予測するために、与信状況を監視するモニタリング与信機能を実現するプログラムを有する与信分析装置である。つまり、この入札落札情報利用型与信分析装置を用いれば、与信状況を監視するモニタリング与信機能によって第1期間終了時から第2期間内に、その法人が倒産する確率を予測することが可能となる。
【0024】
入札落札情報は、公示案件を法人が入札から落札まで行った時の公示案件自体の情報と公示案件の入札落札結果の情報である。
【0025】
上記の第1期間は、3年以内の範囲内の期間であることが好ましいが、1年から3年の範囲内の期間であってもよい。また、上記の第2期間は、3年以内の範囲内の期間であることが好ましいが、6か月から3年の範囲内であってもよい。
【0026】
上記のモニタリング与信機能について以下に詳細に説明する(図1参照)。
モニタリング与信機能は、下記の機能(a)及び機能(b)を有する。
【0027】
機能(a)は、以下の数値(c)から数値(j)を機械学習のモデルアルゴリズムであるニューラルネットワーク10に入力する機能である。
数値(c):第1期間内の法人の公示案件の入札回数の加重平均
数値(d):第1期間内の法人の公示案件の落札率の加重平均
数値(e):第1期間内の法人の辞退率の加重平均
数値(f):第1期間内の法人の失格率の加重平均
数値(g):第1期間内の法人の無効率の加重平均
数値(h):第1期間内の法人の入札金額の平均の加重平均
数値(i):第1期間内の法人の落札金額の平均の加重平均
数値(j):第1期間内の法人の落札金額の総和の加重平均
【0028】
上記の入札回数、落札率、辞退率、失格率、無効率、入札金額、落札金額は、公共機関である国や自治体及びそれに準ずる公共性の高い組織等が公開する入札落札結果を取得し、その入札落札結果から得ることができる。例えば、落札率は、上記の法人の落札回数を入札回数で割ることにより得られる。また辞退率は、上記の法人の辞退回数を入札回数で割ることにより得られる。また失格率は、上記の法人の失格回数を入札回数で割ることにより得られる。また無効率は、上記の法人の無効回数を入札回数で割ることにより得られる。なお、入札落札情報利用型与信分析装置は上記の演算を行う手段を有していてもよい。
【0029】
上記の加重平均は、第1期間を複数の期間に分割し、複数の期間の各々の期間の数値(a)から数値(h)と重要度との積を使って算出する平均である。例えば、第1期間を分割した複数の期間のうち現在に近い期間の重要度を高くし、現在から遠ざかるにつれてその期間の重要度を徐々に下げるようにしてもよい。
【0030】
また、上記の数値(c)から(j)がインポートされている第1のデータテーブルを準備し、第1のデータテーブルから上記の数値(c)から(j)がニューラルネットワーク10に入力されるように構成されていてもよい。
【0031】
機能(b)は、上記の機能(a)により入力された値からニューラルネットワーク10を用いて第1期間終了時から第2期間後に法人が倒産する確率を出力する機能である。
詳細には、多量の過去の倒産企業及び生存企業(良好な生存企業から倒産しそうな生存企業)の各々の上記の数値(c)から(j)の情報を収集する。ここでいう倒産企業及び生存企業は、例えば建設・土木関連の企業であってもよく、例えば売上高が10億円以下の企業規模、業種が例えば一般土木、土木、舗装、建築、とび・土木・コンクリート等であってもよいが、勿論建設業界に限るものではない。そして、上記の各々の上記数値(c)から(j)の情報を用いてニューラルネットワーク10に学習処理させることで、この学習処理によって法人が倒産する確率を出力する倒産予測モデルを取得する。この倒産予測モデルは、ニューラルネットワークのモデル(機械学習のモデルアルゴリズム)精度(AUC)が、0.6以上となるように学習処理されたものであるとよい。
また、上記機能(b)で出力される法人の倒産確率は第2のデータテーブルにインポートされるように構成されていてもよい。
【0032】
また、ニューラルネットワーク10に入力する上記の数値(c)から(j)は、最低限の項目であり、さらに入力項目を追加してもよい。これにより、信用リスクにおけるAUCの値をより高くすることができる場合がある。
【0033】
本実施形態によれば、精度の高い入札落札情報利用型与信分析装置を提供することができる。
【0034】
また、公示案件の入札落札情報は、公共機関及びそれに準ずる公共性の高い組織等が行う入札制度であること、その公共機関等が入札落札結果を公開していることから、信頼性の高い情報である。そのため、法人の過去の財務情報の粉飾を検知することが可能となる。また、落札金額によって未来のキャッシュフローの予測が可能となる。それにより、法人の倒産確率の精度を高めることが可能となる。
【0035】
また、本実施形態では、法人の入札落札情報とニューラルネットワーク10を利用することで、法人に対する与信の分析が可能となるため、低コストで高い精度を実現することが可能となる。これにより、従来技術ではできなかった小規模の法人に対する少額の金銭を伴う取引に対しても与信判断が可能となる。
【0036】
上述したように小規模な法人に対しても与信判断が可能となるため、建設業界の小規模な法人であっても、ICT対応機器や対応サービス、ソリューションの導入のための資金の金銭を伴う取引が可能となる。従って、国土交通省が推進する建設生産活動の飛躍的な効率化を図るための「ICT施工」を小規模な法人に対して実現する一助となることが期待できる。
【0037】
また、本実施形態では、前述した(y)の取引開始時点での与信を分析する時に図1の入札落札情報利用型与信分析装置を活用し、その結果を取引開始時点での与信に加えて与信判断材料とする場合、法人の財務情報や土地などの所有不動産によって与信を分析する一般的な初期与信判断に、上記の与信判断材料を加えることができる。その結果、一般的な初期与信判断より与信の判定の精度を上げることができる。
【0038】
なお、本実施形態では、ニューラルネットワーク10を用いているが、ニューラルネットワーク以外の機械学習のモデルアルゴリズムを用いることも可能である。
本明細書における「機械学習のモデルアルゴリズム」は、ランダムフォレスト、ロジスティック回帰、Elastic Net、サポートベクターマシン(SVM)、線形回帰、k近傍法(k-NN)、ナイーブベイズ、パーセプトロン、CART、QUEST、CHAID、C5.0、デシジョンジャングル、ベイズ線形回帰、ブースト 決定木、ポアソン回帰、リッジ回帰、ラッソ回帰、サポートベクター回帰 (SVR)、XGBoost、及びLightGBMを含むものとする。
【0039】
(第2の実施形態)
本実施形態による入札落札情報利用型与信分析装置は、第1の実施形態と同様の機能(a)及び機構(b)に加え、以下の機能(k)を有するモニタリング与信機能を実現するプログラムを有する与信分析装置である。
【0040】
機能(k)は、上記の機能(a)及び機能(b)を日々又は一定期間毎に利用することで、継続的に与信の変化を察知する機能である。
【0041】
本実施形態によれば、第1の実施形態で説明した(x)の法人から取引申込を受けて取引開始時点での与信を分析し、取引が可能と判断し、取引を実行する時から入札落札情報利用型与信分析装置による与信のモニタリングを開始した場合、初期与信判断後に常時与信を確認することにより、取引先の法人が倒産するリスクを管理することができる。例えば、第1の実施形態で説明した機能(b)の倒産確率に閾値を設定し、その閾値を下回ったらアラートを通知する機能を設けることで、倒産リスクを管理することができる。
【0042】
また、本実施形態では、第1の実施形態で説明した(z)の法人から取引申込を受けて取引開始時点での与信を分析する前に図1の入札落札情報利用型与信分析装置を活用してモニタリング与信を一定期間実行し、その一定期間後に取引開始時点での与信を分析し、その取引開始時点での与信とモニタリングした与信を合わせてその法人の与信判断を行う場合、上記の一般的な初期与信判断より与信の判定の精度を上げることができる。
【0043】
なお、上述した第1の実施形態と第2の実施形態を適宜組み合わせて実施することも可能である。
【符号の説明】
【0044】
10 ニューラルネットワーク
図1