IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソフトバンクモバイル株式会社の特許一覧

特開2023-102041水位推定システム、水位推定方法および情報処理装置
<>
  • 特開-水位推定システム、水位推定方法および情報処理装置 図1
  • 特開-水位推定システム、水位推定方法および情報処理装置 図2
  • 特開-水位推定システム、水位推定方法および情報処理装置 図3
  • 特開-水位推定システム、水位推定方法および情報処理装置 図4
  • 特開-水位推定システム、水位推定方法および情報処理装置 図5
  • 特開-水位推定システム、水位推定方法および情報処理装置 図6
  • 特開-水位推定システム、水位推定方法および情報処理装置 図7
  • 特開-水位推定システム、水位推定方法および情報処理装置 図8
  • 特開-水位推定システム、水位推定方法および情報処理装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102041
(43)【公開日】2023-07-24
(54)【発明の名称】水位推定システム、水位推定方法および情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 13/00 20060101AFI20230714BHJP
   G01F 23/64 20060101ALI20230714BHJP
   G01F 23/284 20060101ALI20230714BHJP
【FI】
G01C13/00 D
G01F23/64 Z
G01F23/284
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002366
(22)【出願日】2022-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 樹
(72)【発明者】
【氏名】川西 庸平
(72)【発明者】
【氏名】アグラワール ヴィナムラ
【テーマコード(参考)】
2F013
2F014
【Fターム(参考)】
2F013AA02
2F013BF00
2F013CB10
2F014FC10
2F014GA01
(57)【要約】
【課題】高精度に水位を測定すること。
【解決手段】本願に係る水位推定システムは、水位測定対象の水面上に設置された第1の受信機と、所定の場所に設置された第2の受信機と、情報処理装置とを含む。また、情報処理装置は、取得部と、算出部と、推定部とを有する。取得部は、第1の受信機が受信した衛星信号から得られた高度データである第1の高度データと、第2の受信機が受信した衛星信号から得られた高度データである第2の高度データとを取得する。算出部は、受信機が設置された状況に応じた所定の情報に基づいて、補正係数を算出する。推定部は、補正係数を用いて第1の高度データおよび第2の高度データが補正された補正後のデータに基づいて、水位測定対象の水位を推定する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水位測定対象の水面上に設置された第1の受信機と、所定の場所に設置された第2の受信機と、情報処理装置とを含む水位推定システムであって、
前記情報処理装置は、
前記第1の受信機が受信した衛星信号から得られた高度データである第1の高度データと、前記第2の受信機が受信した衛星信号から得られた高度データである第2の高度データとを取得する取得部と、
前記受信機が設置された状況に応じた所定の情報に基づいて、補正係数を算出する算出部と、
前記補正係数を用いて前記第1の高度データおよび前記第2の高度データが補正された補正後のデータに基づいて、前記水位測定対象の水位を推定する推定部と
を有する
ことを特徴とする水位推定システム。
【請求項2】
前記算出部は、所定の受信機から取得された高度データに応じて決定される正解の係数と前記所定の受信機が設置された状況に応じた特徴情報との関係性を学習したモデルと、前記所定の情報とに基づいて、前記補正係数を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の水位推定システム。
【請求項3】
前記情報処理装置は、
前記モデルとして、前記所定の情報が特徴情報として入力された場合に、前記補正係数の算出に用いられる情報を出力する予測モデルを生成する生成部をさらに有する
ことを特徴とする請求項2に記載の水位推定システム。
【請求項4】
前記生成部は、前記所定の受信機として、前記第1の受信機および前記第2の受信機の組に対応する複数の受信機それぞれから得られた高度データの組、および、前記複数の受信機が設置された設置環境での水位に基づき決定される正解の係数と、前記複数の受信機の少なくともいずれか一方が設置された状況に応じた特徴情報との組を教師データとして、前記モデルに学習させることにより、前記予測モデルを生成する
ことを特徴とする請求項3に記載の水位推定システム。
【請求項5】
前記算出部は、前記第1の受信機が設置された状況に応じた所定の情報、または、前記第2の受信機が設置された状況に応じた所定の情報のうちの少なくともいずれか一方を特徴情報として、前記モデルに入力することで、出力された情報に基づいて、前記補正係数を算出する
ことを特徴とする請求項2~4のいずれか1つに記載の水位推定システム。
【請求項6】
前記特徴情報は、前記受信機が高度データを観測した日時、前記受信機が設置された位置を示す位置情報、前記衛星信号の発信元となる人工衛星と前記受信機との位置関係に応じた情報、前記受信機が有するセンサによって検知されたセンサ情報、または、前記受信機に対応する通信回線の品質状況のいずれかである
ことを特徴とする請求項2~5のいずれか1つに記載の水位推定システム。
【請求項7】
前記第2の受信機のいずれか1つは前記第1の受信機との距離関係が所定条件を満たすエリア内の陸地に設置され、
前記取得部は、前記第2の高度データとして、陸地に設置される前記第2の受信機が受信した衛星信号から得られた高度データを取得する
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1つに記載の水位推定システム。
【請求項8】
前記第2の受信機のいずれか1つは前記水位測定対象の水面上であって、前記第1の受信機との距離関係が所定条件を満たすエリア内の水面上に設置され、
前記取得部は、前記第2の高度データとして、水面上に設置される前記第2の受信機が受信した衛星信号から得られた高度データを取得する
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1つに記載の水位推定システム。
【請求項9】
前記情報処理装置は、
陸地に設置される前記第2の受信機が受信した衛星信号から得られた高度データを、高度データの不均一を補正するための補正データとして取得し、取得した補正データを用いて、前記第1の高度データおよび前記第2の高度データを調整する調整部をさらに有する
ことを特徴とする請求項7または8に記載の水位推定システム。
【請求項10】
前記調整部は、前記陸地の高度を基準位置として、前記基準位置に対する前記補正データの変動成分を抽出し、抽出した変動成分に基づいて、前記高度データを調整する
ことを特徴とする請求項9に記載の水位推定システム。
【請求項11】
前記調整部は、前記補正データが観測されたタイミングと同一のタイミングに観測された高度データを、前記変動成分を用いて調整する
ことを特徴とする請求項10に記載の水位推定システム。
【請求項12】
前記推定部は、前記調整部によって調整された高度データが前記補正係数を用いて補正された後の補正後のデータに基づいて、前記水位測定対象の水位を推定する
ことを特徴とする請求項9~11のいずれか1つに記載の水位推定システム。
【請求項13】
水位測定対象の水面上に設置された第1の受信機と、所定の場所に設置された第2の受信機と、情報処理装置とを含む水位推定システムが実行する水位推定方法であって、
前記情報処理装置が、
前記第1の受信機が受信した衛星信号から得られた高度データである第1の高度データと、前記第2の受信機が受信した衛星信号から得られた高度データである第2の高度データとを取得する取得工程と、
前記受信機が設置された状況に応じた所定の情報に基づいて、補正係数を算出する算出工程と、
前記補正係数を用いて前記第1の高度データおよび前記第2の高度データが補正された補正後のデータに基づいて、前記水位測定対象の水位を推定する推定工程と
を含む
ことを特徴とする水位推定方法。
【請求項14】
水位測定対象の水面上に設置された第1の受信機が受信した衛星信号から得られた高度データである第1の高度データと、所定の場所に設置された第2の受信機が受信した衛星信号から得られた高度データである第2の高度データとを取得する取得部と、
前記受信機が設置された状況に応じた所定の情報に基づいて、補正係数を算出する算出部と、
前記補正係数を用いて前記第1の高度データおよび前記第2の高度データが補正された補正後のデータに基づいて、前記水位測定対象の水位を推定する推定部と
を有することを特徴とする情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水位推定システム、水位推定方法および情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衛星測位を利用した水位測定手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-58052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来技術では、必ずしも高精度に水位を測定することができるとは限らない。
【0005】
例えば、上記の従来技術では、水面に設けられる浮子が衛星信号に基づき測位した高度データから水位を測定している。しかしながら、衛星測位では、衛星信号が受ける対流圏効果が誤差要因となることが知られており、浮子が測位した高度データが精度よいものとは言えない場合がある。
【0006】
また、浮子は、水面に発生している波や、その他周辺環境(例えば、風)の影響を受けて常に振動していることが考えられるため、この振動が衛星測位の誤差要因となっていることも考えられる。
【0007】
以上のことから、上記の従来技術では、高精度な水位測定を実現するうえで改善の余地がある。
【0008】
本願は、上記に鑑みてなされたものであって、高精度に水位を測定することができる水位推定システム、水位推定方法および情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願に係る水位測定システムは、水位測定対象の水面上に設置された第1の受信機と、所定の場所に設置された第2の受信機と、情報処理装置とを含む水位推定システムであって、前記情報処理装置は、前記第1の受信機が受信した衛星信号から得られた高度データである第1の高度データと、前記第2の受信機が受信した衛星信号から得られた高度データである第2の高度データとを取得する取得部と、前記受信機が設置された状況に応じた所定の情報に基づいて、補正係数を算出する算出部と、前記補正係数を用いて前記第1の高度データおよび前記第2の高度データが補正された補正後のデータに基づいて、前記水位測定対象の水位を推定する推定部とを有する。
【0010】
また、本願に係る水位測定システムにおける前記算出部は、所定の受信機から取得された高度データに応じて決定される正解の係数と前記所定の受信機が設置された状況に応じた特徴情報との関係性を学習したモデルと、前記所定の情報とに基づいて、前記補正係数を算出する。
【0011】
実施形態の一態様によれば、例えば、高精度に水位を測定することができる。また、実施形態の別の一態様によれば、例えば、いわゆる機械学習や教師あり学習を用いた学習モデルにより補正係数を算出し、高精度に水位を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態に係る水位推定ロジックを説明する説明図である。
図2図2は、実施形態に係るシステム構成の一例を示す図である。
図3図3は、実施形態に係る水位推定処理が行われるシチュエーションの一例を示す図である。
図4図4は、実施形態に係る水位推定処理の全体像の一例を示す図である。
図5図5は、実施形態に係る情報処理装置の構成例を示す図である。
図6図6は、実施形態に係る学習データ記憶部の一例を示す図である。
図7図7は、実施形態に係る学習処理手順を示すフローチャートである。
図8図8は、実施形態に係る水位推定システムで実行される水位推定処理を示すシーケンス図である。
図9図9は、情報処理装置の機能を実現するコンピュータの一例を示すハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本願に係る水位推定システム、水位推定方法および情報処理装置を実施するための形態(以下、「実施形態」と呼ぶ)について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態により本願に係る水位推定システム、水位推定方法および情報処理装置が限定されるものではない。また、以下の各実施形態において同一の部位には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
〔1.はじめに〕
例えば、ダムのような防災操作を必要とする施設においては、水位の測位誤差として±1cm以内、リアルタイム性(例えば、1分以内での測位)といった条件が求められる。しかしながら、衛星測位を利用した従来の水位測定手法では、これらの条件を満たすことができるとは限らない。
【0015】
また、衛星測位では、様々な要因によって測位結果に誤差が生じることが知られている。例えば、GNSS衛星からの信号(GNSS信号)を用いた衛星測位として、GPS測位よりも高精度なRTK(Real Time Kinematic)測位が注目されてきているが、以下のような各種要因によって測位結果に誤差が生じてしまうことが知られている。
【0016】
例えば、誤差の要因としては、電離層遅延、対流圏遅延、マルチパス誤差が挙げられる。また、RTK測位では、GNSS信号を受信する専用の受信機(移動局)と、基地局(固定局)との間での情報のやり取りによりズレを補正することで、GPS測位のような単独測位よりも高い精度が実現されが、受信機と基準局との間での相対距離に基づく誤差が生じてしまう場合がある。
【0017】
また、従来の水位測定手法では、受信機が水面に浮かべるように設置されているが、受信機は、水面に発生する波や風その他の気候条件からの影響を受けて、水面上で振動してしまう場合がある。このように振動してしまうと、安定した測位結果が得られない。よって、水位測定において、受信機が水面に設置される場合には、受信機の振動も誤差の要因となる。
【0018】
以上のことから、受信機を用いた水位測定では、RTK測位(GPS測位でもよい)由来の誤差要因(例えば、電離層遅延、対流圏遅延、マルチパス誤差、相対距離誤差)、受信機由来による誤差要因(例えば、受信機の振動)によって、測位結果として得られる高度データが真の高度データからずれてしまう場合がある。また、このように、高度データに誤差が生じてしまうと、高度データに基づき推定される水位も真の水位からはずれてしまうことになる。
【0019】
そこで、本発明では、受信機を用いた水位測定において、誤差の要因、具体的には、RTK測位由来の誤差要因、および、受信機由来による誤差要因を除外するように補正する補正ロジックを提案する。この結果、本発明では、従来の水位測定手法では実現されなかった高精度な水位測定を実現することができるようになる。
【0020】
また、従来の水位測定手法では、受信機が水面上に設置されているに過ぎなかったが、本発明では、複数の受信機を用い、また、各受信機を設置する設置場所にバリエーションをもたせた。そして、本発明では、各受信機による測位結果を組み合わせる際の補正係数の算出に機械学習を用いることで、上記の誤差要因をリアルタイムで補正できることに着目した。この結果、本発明では、リアルタイム性も実現することができるようになる。なお、本発明に係る水位測定手法は、必ずしも機械学習に限定されず、その他の統計的手法を用いて実現可能なものである。
【0021】
〔2.実施形態の概要〕
続いて、図1を用いて、実施形態に係る水位推定ロジックの概要について説明する。図1は、実施形態に係る水位推定ロジックを説明する説明図である。受信機を用いた水位測定において、本実施形態では、図1に示すように、水位測定対象(例えば、ダム湖、湖沼、河川、その他水が滞留する各種エリア)の水面上に2台の受信機を設置(浮かべる)し、また、水位測定対象付近の地上には1台の受信機を設置するという構成を採用した。
【0022】
この点について、図1には、水位測定対象に受信機D1およびD2が浮かべて設置され、付近の地面には受信機D3が固定して設置されている様子が示されている。
【0023】
まず、RTK測位由来の誤差要因を軽減することを目的として、受信機D1、D2およびD3という3つのデバイスのうち、1つの受信機D3が地面に設置される。例えば、水面の受信機D1(受信機D2)と、地面の受信機D3との距離が比較的近い場合、双方のデバイスにおいて、RTK測位由来の誤差要因による変動成分は類似していると考えられる。そこで、本実施形態では、受信機D3は設置が安定している(地面に固定されている)ことを利用して、この地面の高度を基準位置として、基準位置に対する受信機D3の高度の変動成分を抽出し、抽出した変動成分を用いて受信機D1(受信機D2)の高度を補正する処理を行っている。
【0024】
例えば、地面の高度に対して、受信機D3の高度が「+2m」であるなら、変動成分「+2m」を受信機D1(受信機D2)の高度から差し引くというのが、地面に固定の受信機D3を用いた補正の一例である。
【0025】
また、RTK測位由来の誤差要因を軽減するには、上記の通り、変動成分が類似していることが求められるため、図1に示すように、受信機D1と受信機D3とは、互いの距離関係が500m圏内に収まるように設置されることが好ましい。同様に、受信機D2と受信機D3とも、互いの距離関係が500m圏内に収まるように設置されることが好ましい。
【0026】
また、受信機D1、D2およびD3の間で利用される基準局30が異なってしまうと、適切に誤差を軽減できない可能性があるため、図1に示すように、10km圏内に受信機D1、D2およびD3が設置されることが好ましい。
【0027】
次に、受信機由来による誤差要因を軽減することを目的として、受信機D1、D2およびD3という3つのデバイスのうち、受信機D1およびD2が水面上に設置される。ここで、地面に固定の受信機D3を用いた上記の補正は、変動成分が類似していることを利用したものであった。一方、受信機D1およびD2は、水面上に設置されており互いに変動成分がランダムであるといえる。このような場合、受信機D1の高度と、受信機D2の高度とを統合することで、ランダムな変動成分を抑制できると考えられる。そこで、本実施形態では、受信機D1およびD2それぞれの高度について、統計的手法を用いて、双方の間でランダムな変動成分を抑制するという補正も行っている。
【0028】
この点について、本実施形態では、受信機D1またはD2の設置環境に依存する特定の情報を特徴情報として、この特徴情報と、教師データを用いた機械学習モデルとに基づき補正係数を算出し、算出した補正係数を用いて双方の高度に重み付けするという補正処理を行っている。係る補正処理は、補正係数による重み付けによって受信機D1およびD2それぞれの高度をバランス調整することで、受信機D1およびD2それぞれの高度を組み合わせるといった処理である。
【0029】
なお、上述した各補正処理は、高度のバラつきを抑えるための一種の平準化処理とも解せるものである。
【0030】
また、受信機由来による誤差要因を軽減する場合も、図1に示すように、受信機D1と受信機D3とは、互いの距離関係が500m圏内に収まるように設置されることが好ましい。同様に、受信機D2と受信機D3とも、互いの距離関係が500m圏内に収まるように設置されることが好ましい。さらに、受信機D1と受信機D2とは、互いの距離関係が50m圏内に収まるように設置されることが好ましい。
【0031】
なお、実施形態に係る水位推定ロジックを実現するうえで、利用する受信機の数、受信機が設置される場所のバリーション、受信機間での距離関係それぞれに求められる条件(設置条件)は、図1に示すものがベストであると考えられる。一方で、図1に示す条件は必須条件ではない。例えば、受信機の数は、2台であってもよく、この場合、一方の受信機D1(あるいは受信機D2)は水面上に設置され、他方の受信機D3は地面に設置されればよい。また、他の例として、地面に設置される受信機の数は1台でなくてもよく、複数台であってもよい。
【0032】
〔3.システム構成〕
次に、図2を用いて、実施形態に係る水位推定ロジックを実現するためのシステム構成について説明する。図2は、実施形態に係るシステム構成の一例を示す図である。図2には、実施形態に係る水位推定システムの一例として、水位推定システム1が示される。
【0033】
図2の例では、水位推定システム1には、受信機10と、情報処理装置100とが含まれる。また、受信機10と、情報処理装置100とは、ネットワークNを介して、有線または無線により通信可能に接続される。なお、情報処理装置100の数は複数であってもよい。
【0034】
また、以下の実施形態では、図2に示すように、受信機10を第1の受信機10-1のように区別して説明する場合がある。また、受信機10を第2の受信機10-21~10-2Nのように区別して説明する場合がある。また、このように区別して説明する場合、第1の受信機10-1は、水面上に設置される受信機10であるものとする。また、第2の受信機10-21~10-2Nのうちの、少なくともいずれか1つは水面上に設置される受信機10であるものとし、さらに別の少なくとも1つは地面に設置される受信機10であるものとする。
【0035】
また、水位推定システム1において、受信機10は、エッジ側に存在する。このようなことから、水位を知りたいと考える利用者(例えば、ダムの関係者)は、図1に示す設置条件を満たすように、各地に受信機10を設置することができる。すなわち、実施形態に係る受信機10は、任意の場所に設置され得るポータブルな情報処理端末であってよい。一方、情報処理装置100は、クラウド側に存在するサーバ装置であってよい。
【0036】
また、図2では不図示であるが、実施形態に係る水位推定システム1には、利用者の端末装置Tがさらに含まれてよい。端末装置Tは、例えば、スマートフォンや、タブレット型端末や、ノート型PC(Personal Computer)や、デスクトップPCや、携帯電話機や、PDA(Personal Digital Assistant)などであってよい。
【0037】
〔4.水位測定の現場シチュエーション〕
以下の説明では、図2に示す水位推定システム1に含まれる受信機10のうち、第1の受信機10-1、第2の受信機10-21、第2の受信機10-22という3台の受信機10が設置された状態において、情報処理装置100によって水推定処理が実行される例を示す。このようなシチュエーションの一場面を図3に示す。図3は、実施形態に係る水位推定処理が行われるシチュエーションの一例を示す図である。
【0038】
図3の例によれば、第1の受信機10-1、第2の受信機10-21、第2の受信機10-22を用いて、ダム湖DL1の現在の水位が推定される。また、図3の例によれば、第1の受信機10-1が図1の受信機D1に対応し、第2の受信機10-21が図1の受信機D2に対応し、第2の受信機10-22が図1の受信機D3に対応する。
【0039】
すなわち、図3には、第1の受信機10-1、および、第2の受信機10-21は、ダム湖DL1の水面に設置され、第2の受信機10-22が、ダム湖DL1に存在するダム施設DAM1(地面)に設置されている例が示される。また、第1の受信機10-1と第2の受信機10-21との距離は「45m」であり、第2の受信機10-21と第2の受信機10-22との距離は「450m」であり図1で説明した設置条件が満たされた状態で、これら3台の受信機10が設置されている。
【0040】
〔5.水位測定処理の全体像〕
次に、図4を用いて、実施形態に係る水位測定処理の全体像を説明する。図4は、実施形態に係る水位測定処理の全体像の一例を示す図である。また、実施形態に係る水位測定処理は、情報処理装置100によって行われる。例えば、情報処理装置100は、水位測定ロジックで定められる手法に従って、水位測定処理を行う。また、水位測定ロジックは、情報処理装置100に導入されている水位測定プログラムで実現されてよい。
【0041】
また、図4の例は、図3に対応する。具体的には、図4には、第1の受信機10-1および第2の受信機10-21がダム湖DL1の水面上に設置され、第2の受信機10-22がダム施設DAM1という地面に固定された状態で、ダム湖DL1の現在の水位がリアルタイムに推定される一場面が示される。
【0042】
このような状態において、第1の受信機10-1は、GNSS信号に基づく位置測位により自装置の高度を算出し、算出した高度を示す高度データを情報処理装置100に送信する。図4には、第1の受信機10-1が、GNSS信号に基づき高度X1を算出した結果、これを示す第1の高度データAD1を情報処理装置100に送信した例が示される。
【0043】
また、第2の受信機10-21は、GNSS信号に基づく位置測位により自装置の高度を算出し、算出した高度を示す高度データを情報処理装置100に送信する。図4には、第2の受信機10-21が、GNSS信号に基づき高度N21を算出した結果、これを示す第2の高度データAD21を情報処理装置100に送信した例が示される。
【0044】
また、第2の受信機10-22は、GNSS信号に基づく位置測位により自装置の高度を算出し、算出した高度を示す高度データを情報処理装置100に送信する。図4には、第2の受信機10-22が、GNSS信号に基づき高度N22を算出した結果、これを示す第2の高度データAD22を情報処理装置100に送信した例が示される。
【0045】
情報処理装置100は、各受信機10から受信した高度データのうち、水面の受信機10である第1の受信機10-1の高度データAD1、水面の受信機10である第2の受信機10-21の高度データAD21については、水面からアンテナの先端までの距離をオフセット値として除外してよい。
【0046】
ここから、情報処理装置100は、実際に水位推定処理を行う。まず、情報処理装置100は、地面(ダム施設DAM1)に固定の第2の受信機10-22を用いた高度データの調整を行う(ステップS1)。
【0047】
具体的には、情報処理装置100は、第2の受信機10-22による位置測位で得られた第2の高度データAD22を、第1の高度データAD1および第2の高度データAD21の不均一を補正するための補正データとして取得する。そして、情報処理装置100は、地面の高度を基準位置として、基準位置に対する第2の高度データAD22の変動成分を抽出し、抽出した変動成分に基づいて、第1の高度データAD1および第2の高度データAD21を調整するという補正処理を行う。
【0048】
図4の例によれば、情報処理装置100は、基準位置に対する高度N22の差分を変動成分として抽出し、抽出した変動成分に基づき高度X1および高度N21を調整する。例えば、変動成分がプラスの値であれば、情報処理装置100は、このプラスの値分だけ高度X1および高度N21から差し引く。また、変動成分がマイナスの値であれば、情報処理装置100は、このマイナスの値分を高度X1および高度N21に加算する。
【0049】
図4には、ステップS1での補正処理の結果、高度X1が高度X11へと調整されたことで、情報処理装置100が、高度X11を示す高度データを調整後の第1の高度データAD11として取得した例が示される。同様に、図4には、平準化処理の結果、高度N21が高度N211へと調整されたことで、情報処理装置100が、高度N211を示す高度データを調整後の第2の高度データAD211として取得した例が示される。
【0050】
次に、情報処理装置100は、水面上に設置される第1の受信機10-1および第2の受信機10-21を用いて、高度データを調整するという補正処理を行う(ステップS2)。ここでの補正処理では、ステップS1で得られた調整後の第1の高度データAD11と、調整後の第2の高度データAD211とが補正係数による重み付けによってバランス調整される。
【0051】
後述するが、この時点で情報処理装置100は、特徴情報に応じた補正係数を算出する予測モデルを有している。このようなことから、情報処理装置100は、第1の受信機10-1および第2の受信機10-21それぞれの設置状況に応じた所定の情報を特徴情報として係るモデルに入力することで、出力された情報から補正処理に用いる補正係数αを算出する。
【0052】
なお、ここでいう所定の情報とは、受信機10が高度データを観測した日時、受信機10が設置された位置を示す位置情報、受信機10と人工衛星との位置関係、受信機10が有するセンサによって検知されたセンサ情報、または、受信機10に対応する通信回線の品質状況のいずれかであってよい。もちろん、特徴情報として用いられる情報は、係る例に限定されず、受信機10の設置状況に応じて得られるオリジナルな情報であれば、いかなる情報であってよい。
【0053】
説明を戻すと、情報処理装置100は、補正係数αを用いた重み付けにより、第1の高度データAD11の値である高度X11を補正する。また、情報処理装置100は、補正係数αを用いた重み付けにより、第2の高度データAD211の値である高度N211を補正する。
【0054】
最後に、情報処理装置100は、ステップS2の補正処理で得られた補正後の高度データに基づいて、ダム湖DL1の水位を推定する(ステップS3)。例えば、情報処理装置100は、補正係数αを重み値とする線形結合によって、補正後の第1の高度データAD11と、補正後の第2の高度データAD211とを組み合わせる計算を行い、計算結果をダム湖DL1の水位として推定する。
【0055】
〔6.情報処理装置の構成〕
ここからは、図5を用いて、実施形態に係る情報処理装置100について説明する。図5は、実施形態に係る情報処理装置100の構成例を示す図である。図5に示すように、情報処理装置100は、通信部110と、記憶部120と、制御部130とを有する。
【0056】
(通信部110について)
通信部110は、例えば、NIC(Network Interface Card)等によって実現される。そして、通信部110は、ネットワークNと有線または無線で接続され、例えば、受信機10との間で情報の送受信を行う。
【0057】
(記憶部120について)
記憶部120は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子またはハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。記憶部120は、学習データ記憶部121と、高度データ記憶部122と、推定結果記憶部123とを有する。
【0058】
(学習データ記憶部121について)
学習データ記憶部121は、モデルの学習に用いられる学習データに関する情報を記憶する。ここで、図6に、実施形態に係る学習データ記憶部121の一例を示す。図6の例では、学習データ記憶部121は、「日時」、「signal-1」、「signal-2」、「水位」、「正解係数」、「特徴情報」といった項目を有する。
【0059】
「日時」は、「signal-1」および「signal-2」が観測された日時を示す情報である。
【0060】
「signal-1」は、教師データの要素の1つであり、教師データを収集する際に用いられた受信機10による位置測位で得られた高度データを示す。なお、係る受信機10は、例えば、ダム湖DL1における任意の場所(例えば、水面や地面など)に設置された1つの受信機10であってよく、今回の水位測定に用いるものとしてこれまで説明してきた第1の受信機10-1と見做すことのできるものであってよい。学習時におけるこのような受信機10を便宜上以下では受信機10x1と表記する。
【0061】
「signal-2」は、教師データの要素の1つであり、教師データを収集する際に用いられた受信機10による位置測位で得られた高度データを示す。なお、係る受信機10は、例えば、ダム湖DL1における任意の場所(例えば、水面や地面など)に設置された1つの受信機10であってよく、今回の水位測定に用いるものとしてこれまで説明してきた第2の受信機10-21(あるいは、第2の受信機10-22)と見做すことのできるものであってよい。学習時におけるこのような受信機10を便宜上以下では受信機10x2と表記する。
【0062】
「水位」は、「signal-1」および「signal-2」が観測された「日時」でのダム湖DL1の真の水位を示す情報である。なお、ここでいう「水位」には、ダム湖DL1に設けられる水位計の値が採用されてよい。
【0063】
「正解係数」は、水位推定に用いられる式(1)に対して、「signal-1」および「signal-2」、そして、「水位」を入力することで算出される係数である。
【0064】
「特徴情報」は、受信機10x1が「signal-1」を観測した日時、受信機10x1が設置された位置を示す位置情報、受信機10x1と受信機10x1が受信したGNSS信号の発信元となるGNSS衛星との位置関係、受信機10x1が有するセンサによって検知されたセンサ情報、または、受信機10x1機に対応する通信回線の品質状況のいずれかであってよい。
【0065】
また、「特徴情報」は、受信機10x2が「signal-2」を観測した日時、受信機10x2が設置された位置を示す位置情報、受信機10x2と受信機10x2が受信したGNSS信号の発信元となるGNSS衛星との位置関係、受信機10x2が有するセンサによって検知されたセンサ情報、または、受信機10x2に対応する通信回線の品質状況のいずれかであってもよい。
【0066】
ここで、図6には、日時「TM1」と、signal-1「sg11」と、signal-2「sg21」と、水位「WL1」と、正解係数「sα1」と、特徴情報「x11,x12,x23」とが対応付けられる例が示される。
【0067】
係る例は、ダム湖DL1に設置された受信機10x1が、日時「TM1」において、signal-1「sg11」という高度を算出した例を示す。また、ダム湖DL1に設置された受信機10x2が、日時「TM1」において、signal-1「sg21」という高度を算出した例を示す。
【0068】
また、係る例は、位置測位によってsignal-1「sg11」、signal-2「sg21」が算出された日時「TM1」では、ダム湖DL1の水位計は水位「WL1」を指し示していたことにより、この値が日時「TM1」での真の水位として採用された例を示す。
【0069】
また、係る例は、日時「TM1」では、受信機10x1に対応する特徴情報(受信機10x1が設置された状況に応じた情報)が、特徴x11および特徴x12であった例を示す。また、日時「TM1」では、受信機10x2に対応する特徴情報(受信機10x2が設置された状況に応じた情報)が、特徴x23であった例を示す。
【0070】
また、係る例は、水位「WL1」と、特徴情報「x11,x12,x23」とを式(1)に当てはめることにより、係数「sα1」が算出され、これが正解の係数として定められた例を示す。
【0071】
また、上記例によれば、正解係数「sα1」と特徴情報「x11,x12,x23」との組が1つの教師データとなる。
【0072】
なお、「特徴情報」は、上記例に限定されない。例えば、「特徴情報」は、受信機10x1(受信機10x2)が受信したGNSS信号のS/N比、あるいは、受信機10x1(受信機10x2)が測位に使用した衛星の数であってもよい。
【0073】
(高度データ記憶部122について)
高度データ記憶部122は、受信機10による位置測位で得られた高度を示す高度データに関する情報を記憶する。図6には、実施形態に係る高度データ記憶部122の一例も示される。図6の例では、高度データ記憶部122は、「日時」、「signal-1」、「signal-2」、「水位」、「補正係数」、「特徴情報」といった項目を有する。
【0074】
「日時」は、水位を推定したい現時点での日時を示す情報である。
【0075】
「signal-1」は、第1の受信機10-1による位置測位で得られた第1の高度データAD1を示す。より具体的には、「signal-1」は、第1の高度データAD1が、第2の受信機10-22を用いた補正処理で調整された後の第1の高度データAD11であってよい。すなわち、図4の例によれば、「signal-1」は「高度X11」に対応する。
【0076】
「signal-2」は、第2の受信機10-21による位置測位で得られた第2の高度データAD21を示す。より具体的には、「signal-2」は、第2の高度データAD21が、第2の受信機10-22を用いた補正処理で調整された後の第2の高度データAD211であってよい。すなわち、図4の例によれば、「signal-2」は「高度N211」に対応する。
【0077】
「水位」は、今回の水位推定処理で推定され得る水位を示し、図6には、「水位」が推定される前の未知の状態が示される。
【0078】
「補正係数」は、第1の受信機10-1および第2の受信機10-21それぞれの設置状況に応じた所定の情報を特徴情報としてモデルに入力した場合に、出力情報に基づき算出された係数であって、第1の高度データAD11、および、第2の高度データAD211に対する重み付け係数に相当する。図6には、「補正係数」が算出される前の未知の状態が示される。
【0079】
「特徴情報」は、第1の受信機10-1が設置された状況に応じた所定の情報であって、対応する「日時」において取得された情報である。また、「特徴情報」は、第2の受信機10-21が設置された状況に応じた所定の情報であって、対応する「日時」において取得された情報であってもよい。すなわち「特徴情報」は、第1の受信機10-1および第2の受信機10-21双方の情報を含んでいてもよいし、いずれか一方の情報だけでもよい。
【0080】
また、ここでいう「特徴情報」は、具体的には、第1の受信機10-1が「signal-1」を観測した日時、第1の受信機10-1が設置された位置を示す位置情報、第1の受信機10-1と第1の受信機10-1が受信したGNSS信号の発信元となるGNSS衛星との位置関係、第1の受信機10-1が有するセンサによって検知されたセンサ情報、または、第1の受信機10-1に対応する通信回線の品質状況のいずれかであってよい。
【0081】
また、「特徴情報」は、具体的には、第2の受信機10-21が「signal-2」を観測した日時、第2の受信機10-21が設置された位置を示す位置情報、第2の受信機10-21と第2の受信機10-21が受信したGNSS信号の発信元となるGNSS衛星との位置関係、第2の受信機10-21が有するセンサによって検知されたセンサ情報、または、第2の受信機10-21に対応する通信回線の品質状況のいずれかであってもよい。
【0082】
(推定結果記憶部123について)
推定結果記憶部123は、水位推定処理によって推定された水位に関する情報を記憶してよい。
【0083】
(制御部130について)
図5に戻り、制御部130は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等によって、情報処理装置100内部の記憶装置に記憶されている各種プログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部130は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現される。
【0084】
図5に示すように、制御部130は、収集部131は、生成部132と、取得部133と、調整部134と、算出部135と、推定部136とを有し、以下に説明する情報処理の機能や作用を実現または実行する。なお、制御部130の内部構成は、図5に示した構成に限られず、後述する情報処理を行う構成であれば他の構成であってもよい。また、制御部130が有する各処理部の接続関係は、図5に示した接続関係に限られず、他の接続関係であってもよい。
【0085】
(収集部131について)
収集部131は、補正係数を予測する予測モデルを生成するために、モデルに学習させる教師データを収集する。
【0086】
(生成部132について)
生成部132は、補正係数の算出に用いられる予測モデルを生成する。例えば、生成部132は、特徴情報が入力された場合に、補正係数の算出に用いられる情報を出力する予測モデルを生成する。
【0087】
例えば、生成部132は、第1の受信機10-1および第2の受信機10-21の組に対応する複数の受信機(受信機10x1、受信機10x2)それぞれから得られた高度データの組、および、複数の受信機が設置された設置環境での水位(真の水位)に基づき決定される正解の係数と、複数の受信機の少なくともいずれか一方が設置された状況に応じた特徴情報との組を教師データとして、正解の係数と特徴情報との関係性をモデルに学習させることで、予測モデルを生成する。
【0088】
例えば、生成部132は、教師データを用いた教師あり(教師つき)の学習(トレーニングもしくは訓練ともいえる)により、予測モデルを生成する。ここで、学習モデルは、回帰モデルで実現されるとすると、回帰モデルは、入力層と出力層とを有する単純パーセプトロンと見做すことができる。
【0089】
また、予測モデルは、モデルにおける出力と入力との誤差が少なくなるようにパラメータ(接続係数)を補正するバックプロパゲーション(誤差逆伝播法)等の処理により生成される。例えば、予測モデルは、誤差関数等、所定の損失(ロス)関数を最小化するようにバックプロパゲーション等の処理を行うことにより生成される。
【0090】
(取得部133について)
取得部133は、第1の受信機10が受信した衛星信号から得られた高度データである第1の高度データと、第2の受信機10が受信した衛星信号から得られた高度データである第2の高度データとを取得する。
【0091】
図4の例では、取得部133は、第1の受信機10-1による位置測位によって得られた第1の高度データAD1を取得している。また、取得部133は、第2の受信機10-21による位置測位によって得られた第2の高度データAD21を取得している。さらに、取得部133は、第2の受信機10-22による位置測位によって得られた第2の高度データAD22を取得している。
【0092】
(調整部134について)
調整部134は、地面に設置される第2の受信機10が受信した衛星信号から得られた高度データを、高度データの不均一を補正するための補正データとして取得する。そして、調整部134は、取得した補正データを用いて、第1の高度データおよび第2の高度データを調整する。例えば、調整部134は、地面の高度を基準位置として、基準位置に対する補正データの変動成分を抽出し、抽出した変動成分に基づいて、第1の高度データおよび第2の高度データを調整する。また、調整部134は、補正データが観測されたタイミングと同一のタイミングに観測された高度データを、変動成分を用いて調整してよい。
【0093】
図4の例では、調整部134は、第2の受信機10-22による位置測位で得られた第2の高度データAD22を、第1の高度データAD1および第2の高度データAD21の不均一を補正するための補正データとして取得している。そして、調整部134は、地面の高度を基準位置として、基準位置に対する第2の高度データAD22の変動成分を抽出し、抽出した変動成分に基づいて、第1の高度データAD1および第2の高度データAD21を調整するという補正処理を行っている。
【0094】
(算出部135について)
算出部135は、受信機10が設置された状況に応じた所定の情報に基づいて、補正係数を算出する。例えば、算出部135は、所定の受信機10(上記例では、受信機10x1、受信機10x2)から取得された高度データに応じて決定される正解の係数、および、この所定の受信機10が設置された状況に応じた特徴情報との関係性を学習したモデルと、所定の情報とに基づいて、補正係数を算出する。一例として、算出部135は、第1の受信機10が設置された状況に応じた所定の情報、または、第2の受信機10が設置された状況に応じた所定の情報のうちの少なくともいずれか一方を特徴情報として、モデルに入力することで、出力された情報に基づいて、補正係数を算出する。
【0095】
図4の例では、算出部135は、第1の受信機10-1および第2の受信機10-21それぞれの設置状況に応じた所定の情報を特徴情報として係るモデルに入力することで、出力された情報から補正処理に用いる補正係数αを算出している。
【0096】
(推定部136について)
推定部136は、算出部135により算出された補正係数を用いて第1の高度データおよび第2の高度データが補正された補正後のデータに基づいて、水位測定対象(例えば、ダム湖DL1)の水位を推定する。より具体的には、推定部136は、調整部134によって調整された高度データが補正係数を用いて補正された後の補正後のデータに基づいて、水位測定対象の水位を推定する。
【0097】
例えば、推定部136は、後述する式(1)に対して、補正後のデータと補正係数とを適用することで水位を推定することができる。この点について、図4の例によれば、例えば、推定部136は、補正係数αを重み値とする線形結合によって、補正後の第1の高度データAD11と、補正後の第2の高度データAD211とを組み合わせる計算を行い、計算結果をダム湖DL1の水位として推定する。
【0098】
〔7.学習処理手順〕
ここからは、図7を用いて、補正係数を予測する予測モデルを生成するための学習処理の手順を説明する。図7は、実施形態に係る学習処理手順を示すフローチャートである。学習処理は、収集部131と生成部132との間で行われる。
【0099】
また、学習処理手順の説明には、適宜、図6の例を用いることにする。具体的には、教師データの収集にあたってダム湖DL1の水面上に受信機10x1および受信機10x2が設置されたとして、これら複数の受信機10ベースで教師データの収集およびモデル生成が行われる場面を例に挙げて図7を説明する。
【0100】
図7の例では、受信機10x1および受信機10x2は、連続的に位置測位を行うことで自装置の高度を常時算出しているものとする。受信機10x1および受信機10x2は、高度を算出するたびに、算出した高度を示す高度データを情報処理装置100に送信していてよい。
【0101】
このような場合、収集部131は、受信機10x1および受信機10x2から送信された高度データを取得するタイミングになったか否かを判定してよい(ステップS701)。そして、収集部131は、高度データを取得するタイミングになっていないと判定している間は(ステップS701;No)、高度データを取得するタイミングになったと判定できるまで待機する。
【0102】
一方、収集部131は、高度データを取得するタイミングになったと判定した場合には(ステップS701;Yes)、受信機10x1および受信機10x2から送信された高度データのうち所定の高度データを取得してよい(ステップS702)。例えば、収集部131は、受信機10x1から送信されている高度データと、受信機10x2から送信されている高度データとの間で、観測日時(測位日時)が共通する最新の高度データを取得することができる。また、この結果、収集部131は、受信機10x1と受信機10x2との組に対応する1組の高度データを取得することができる。
【0103】
図7の例では、収集部131は、受信機10x1が日時「TM1」に行った位置測位による測位結果であるsignal-1として、高度「sg11」を示す高度データを取得したとする。また、収集部131は、受信機10x2が日時「TM1」に行った位置測位による測位結果であるsignal-2として、高度「sg21」を示す高度データを取得したとする。
【0104】
また、収集部131は、高度データを取得した今回のタイミングでのダム湖DL1の水位を示す水位情報を、このタイミングでのダム湖DL1の真の水位を示す水位情報として取得する(ステップS703)。例えば、収集部131は、ダム湖DL1に備えられる水位計を制御するシステムにアクセスすることで水位情報を取得してよい。また、水位情報は、人手によって入力されてもよい。
【0105】
図7の例では、収集部131は、日時「TM1」において水位計が指し示していた水位として水位「WL1」を示す水位情報を取得したとする。
【0106】
また、収集部131は、受信機10x1および受信機10x2それぞれに対応する特徴情報を取得する(ステップS704)。具体的には、収集部131は、受信機10x1が設置された設置状況に応じた特定の情報を特徴情報として取得してよい。同様に、収集部131は、受信機10x2が設置された設置状況に応じた特定の情報を特徴情報として取得してよい。なお、特徴情報は、高度データとともに情報処理装置100へと送信されてよく、係る場合には、収集部131は、これまでに送信されてきている特長情報の中から今回のタイミングに対応する特徴情報を取得してよい。
【0107】
図7の例では、収集部131は、受信機10x1に対応する特徴情報として、受信機10x1が日時「TM1」に送信した特徴情報「x11,x12」を取得したとする。また、収集部131は、受信機10x2に対応する特徴情報として、受信機10x2が日時「TM1」に送信した特徴情報「x23」を取得したとする。
【0108】
次に、収集部131は、ステップS702で取得している高度データの組と、ステップS703で取得している水位情報とに基づいて、高度データの組と水位情報とに対応する正解の係数を決定する(ステップS705)。具体的には、収集部131は、以下の式(1)に高度データの組と、水位情報とを入力することで、係数αを算出し、算出した係数αを正解の係数として決定する。
【0109】
水位={α×signal-1}+{(1-α)×signal-2}・・・(1)
【0110】
上記例によると、収集部131は、水位「WL1」={α×「sg11」}+{(1-α)×「sg21」}を計算することで係数αを求める。
【0111】
図7の例では、収集部131は、係数αとして「sα1」を算出したとする。係る場合、収集部131は、係数sα1を、高度データの組(sg11、sg21)と水位情報(WL1)とに対応する正解の係数として決定する。
【0112】
また、収集部131は、これまでに得られたデータを対応付けて学習データ記憶部121に登録してよい(ステップS706)。この結果、図6に示す学習データ記憶部121において、1段目のレコードが得られることになる。また、この1段目のレコードに着目すると、正解の係数「sα1」と、特徴情報「x11,x12,x23」との組が、1つの教師データとなる。
【0113】
ここで、収集部131は、このような教師データが十分に収集できたか否かを判定する(ステップS707)。教師データの量が少ない場合、高精度なモデルが得られない。このため、収集部は、予測モデルを生成するための機械学習において必要十分とされるだけの量の教師データが学習データ記憶部121に蓄積されているか否かを判定してよい。
【0114】
収集部131は、十分な量の教師データを収集できていないと判定した場合には(ステップS707;No)、ステップS701からの処理を再度実行する。
【0115】
一方、収集部131は、十分な量の教師データを収集できたと判定した場合には(ステップS707;Yes)、生成部132へと処理を移行する。
【0116】
これに応じて、生成部132は、教師データを用いた機械学習により、補正係数の算出に用いられる予測モデルを生成する(ステップS708)。具体的には、生成部132は、正解の係数と特徴情報との関係性をモデルに学習させることで、特徴情報が入力された場合に、補正係数の算出に用いられる情報を出力する予測モデルを生成する。
【0117】
なお、これまでの例によれば、予測モデルに入力される情報とは、第1の受信機10-1の設置状況に依存する特定の情報、あるいは、第2の受信機10-21の設置状況に依存する特定の情報である。特徴情報の具体例につては上述した通りであるため、ここでの説明については省略する。
【0118】
また、予測モデルを用いて算出される補正係数は、式(1)に示される係数αに相当する。例えば、情報処理装置100は、第1の受信機10-1に対応する環境依存情報(所定の情報の一例)、または、第2の受信機10-21に対応する環境依存情報(所定の情報の一例)のうちの少なくともいずれか一方を特徴情報として予測モデルに入力することで、補正係数αを得ることができる。
【0119】
また、図6に示す高度データ記憶部122の例を用いると、情報処理装置100は、第1の高度データAD11が示す「高度X11」を「signal-1」として式(1)に入力し、第2の高度データAD211が示す「高度N211」を「signal-2」として式(1)に入力する。さらに、情報処理装置100は、今回算出した補正係数αも式(1)に入力する。そうすると、情報処理装置100は、式(1)を解くことで、ダム湖DL1の水位に関する情報を求めることができるようになる。この点については、図8でも再度説明する。
【0120】
〔8.水位処理手順〕
ここからは、図8を用いて、受信機を用いた水位推定処理の手順を説明する。図8は、実施形態に係る水位推定システム1で実行される水位推定処理を示すシーケンス図である。図8の例では、図3で説明したシチュエーションを例に挙げて、ダム湖DL1の水位が推定される処理手順を説明する。また、図8に示す水位推定処理は、図7で生成された予測モデルが利用される。したがって、実施形態に係る水位推定処理は、学習処理とは別フェーズで行われてよいものである。
【0121】
図8の例では、第1の受信機10-1は、GNSS信号に基づく位置測位により自装置の高度を算出し、算出した高度を示す第1の高度データを情報処理装置100に送信している。また、第1の受信機10-1は、設置状況に応じた特定の情報(特徴情報としてモデルに入力される情報)も第1の高度データとともに送信してよい。例えば、第1の受信機10-1は、第1の高度データを算出するたびに、算出した第1の高度データと、この時点での特定の情報とを対応付けて情報処理装置100に送信してよい。
【0122】
また、第1の受信機10-1によって送信される特定の情報とは、第1の受信機10-1が位置測位した日時、第1の受信機10-1が設置された位置を示す位置情報(測位日時での位置)、GNSS信号の発信元となるGNSS衛星と第1の受信機10-1との位置関係(測位日時での位置関係)、第1の受信機10-1が有するセンサによって検知されたセンサ情報(測位日時でのセンサ情報)、または、第1の受信機10-1に対応する通信回線の品質状況(測位日時での品質状況)のいずれかであってもよい。なお、特定の情報は、係る例に限定されず、例えば、第1の受信機10-1が受信したGNSS信号のS/N比、あるいは、第1の受信機10-1が測位に使用した衛星の数であってもよい。
【0123】
また、図8の例では、第2の受信機10-21は、GNSS信号に基づく位置測位により自装置の高度を算出し、算出した高度を示す第2の高度データを情報処理装置100に送信している。第2の受信機10-21も同様に、設置状況に応じた特定の情報(特徴情報としてモデルに入力される情報)を第2の高度データとともに送信してよい。例えば、第2の受信機10-21は、第2の高度データを算出するたびに、算出した第2の高度データと、この時点での特定の情報とを対応付けて情報処理装置100に送信してよい。
【0124】
第2の受信機10-21によって送信される特定の情報とは、第2の受信機10-21が位置測位した日時、第2の受信機10-21が設置された位置を示す位置情報(測位日時での位置)、GNSS信号の発信元となるGNSS衛星と第2の受信機10-21との位置関係(測位日時での位置関係)、第2の受信機10-21が有するセンサによって検知されたセンサ情報(測位日時でのセンサ情報)、または、第2の受信機10-21に対応する通信回線の品質状況(測位日時での品質状況)のいずれかであってもよい。同様に、特定の情報は、第2の受信機10-21が受信したGNSS信号のS/N比、あるいは、第2の受信機10-21が測位に使用した衛星の数であってもよい。
【0125】
また、図8の例では、第2の受信機10-22は、GNSS信号に基づく位置測位により自装置の高度を算出し、算出した高度を示す第2の高度データを情報処理装置100に送信している。第2の受信機10-22も同様に、設置状況に応じた特定の情報(特徴情報としてモデルに入力される情報)を第2の高度データとともに送信してよい。例えば、第2の受信機10-22は、第2の高度データを算出するたびに、算出した第2の高度データと、この時点での特定の情報とを対応付けて情報処理装置100に送信してよい。
【0126】
第2の受信機10-22によって送信される特定の情報とは、第2の受信機10-22が位置測位した日時、第2の受信機10-22が設置された位置を示す位置情報(測位日時での位置)、GNSS信号の発信元となるGNSS衛星と第2の受信機10-22との位置関係(測位日時での位置関係)、第2の受信機10-22が有するセンサによって検知されたセンサ情報(測位日時でのセンサ情報)、または、第2の受信機10-22に対応する通信回線の品質状況(測位日時での品質状況)のいずれかであってもよい。同様に、特定の情報は、第2の受信機10-22が受信したGNSS信号のS/N比、あるいは、第2の受信機10-22が測位に使用した衛星の数であってもよい。
【0127】
上記のように各受信機から高度データおよび特定の情報が送信されることで、情報処理装置100は、各受信機10から高度データおよび特定の情報を随時受信している(ステップS801)。
【0128】
このような状態において、取得部133は、第1の受信機10-1、第2の受信機10-21、および、第2の受信機10-22それぞれから送信されてきている高度データの間において、測位日時(観測日時)が共通する最新の高度データをそれぞれ取得してよい(ステップS802)。
【0129】
図8には、取得部133が、第1の受信機10-1による第1の高度データのうち、高度X1を示す第1の高度データAD1を取得した例が示される。また、図8には、取得部133が、第2の受信機10-21による第2の高度データのうち、高度N21を示す第2の高度データAD21を取得した例が示される。また、図8には、取得部133が、第2の受信機10-22による第2の高度データのうち、高度N22を示す第2の高度データAD22を取得した例が示される。
【0130】
なお、取得部133は、各受信機10から受信した高度データのうち、水面の受信機10である第1の受信機10-1の高度データAD1、水面の受信機10である第2の受信機10-21の高度データAD21については、水面からアンテナの先端までの距離をオフセット値として除外してよい。
【0131】
また、取得部133は、第1の受信機10-1、第2の受信機10-21、および、第2の受信機10-22それぞれから送信されてきている特定の情報のうち、ステップS802で取得した高度データが測位された日時に対応する情報を特徴情報として取得する(ステップS803)。
【0132】
図8には、取得部133が、第1の受信機10-1に対応する特定の情報のうち、測位日時での設置状況に応じた特徴x41を示す特徴情報を取得した例が示される。また、図8には、取得部133が、第2の受信機10-21に対応する特定の情報のうち、測位日時での設置状況に応じた特徴x42を示す特徴情報を取得した例が示される。また、図8には、取得部133が、第2の受信機10-22に対応する特定の情報のうち、測位日時での設置状況に応じた特徴x43を示す特徴情報を取得した例が示される。
【0133】
次に、調整部134は、地面(ダム施設DAM1)に固定の第2の受信機10-22を用いた高度データの調整(補正)を行う。図8の例では、調整部134は、第2の受信機10-22による第2の高度データAD22を、第1の高度データAD1および第2の高度データAD21の不均一を補正するための補正データとして取得している。
【0134】
このような状態において、調整部134は、地面の高度を基準位置として、基準位置に対する第2の高度データAD22の変動成分を抽出する(ステップS804)。例えば、調整部134は、基準位置に対する高度N22(第2の高度データAD22が示す高度)の差分を変動成分として抽出する。
【0135】
そして、調整部134は、抽出した変動成分を用いて、第1の高度データAD1および第2の高度データAD21を調整する補正処理を行う(ステップS805)。例えば、調整部134は、抽出した変動成分がプラスの値であれば、このプラスの値分だけ高度X1(第1の高度データAD1が示す高度)、および、高度N21(第2の高度データAD21が示す高度)から差し引く。一方、調整部134は、抽出した変動成分がマイナスの値であれば、このマイナスの値分を高度X1および高度N21に加算する。
【0136】
算出部135は、調整後の高度データの組を取得する(ステップS806)。
【0137】
図8には、高度X1が高度X11へと調整されたことで、算出部135が、高度X11を示す高度データを調整後の第1の高度データAD11として取得した例が示される。また、図8には高度N21が高度N211へと調整されたことで、算出部135が、高度N211を示す高度データを調整後の第2の高度データAD211として取得した例が示される。
【0138】
また、係る例では、情報処理装置100は、図6に示す高度データ記憶部122を得ることができるようになる。例えば、算出部135は、図6に示すように、第1の高度データAD11が示す「高度X11」を「signal-1」とし、第2の高度データAD211が示す「高度N211」を「signal-2」として、高度データ記憶部122に登録することができる。また、算出部135は、図6に示すように、第1の受信機10-1に対応する特徴x41を示す特徴情報と、第2の受信機10-21に対応する特徴x42を示す特徴情報とを高度データ記憶部122に登録することができる。
【0139】
そして、係る例では、算出部135は、高度データ記憶部122に登録される特徴情報と、図7で説明した手順で生成されている予測モデルとに基づいて、補正係数αを算出する(ステップS807)。具体的には、算出部135は、特徴x41を示す特徴情報と、特徴x42を示す特徴情報とを予測モデルに入力することで、予測モデルによって出力された情報に基づいて、補正係数αを算出する。
【0140】
そして、推定部136は、調整後の第1の高度データAD11および調整後の第2の高度データAD211と、補正係数αとを、式(1)に適用することで、ダム湖DL1の水位を推定する(ステップS808)。
【0141】
例えば、推定部136は、第1の高度データAD11が示す「高度X11」を「signal-1」として式(1)に入力し、第2の高度データAD211が示す「高度N211」を「signal-2」として式(1)に入力する。また、推定部136は、補正係数αも式(1)に入力する。そして、推定部136は、式(1)を解くことで、得られた値をダム湖DL1の水位として見積る。
【0142】
また、推定部136は、ダム湖DL1の水位を推定するよう要求した利用者U1に対して、推定結果を提供する処理も行ってよい。例えば、推定部136は、利用者U1が有する端末装置Tへと推定結果を送信してよい(ステップS809)。
【0143】
〔9.変形例〕
上記実施形態に係る水位推定システム1は、上記実施形態以外にも種々の異なる形態にて実施されてよい。そこで、以下では、水位推定システム1の他の実施形態について説明する。
【0144】
〔9-1.変形例(1)〕
上記実施形態では、情報処理装置100が、地面に固定される第2の受信機10-22による高度データを補正データとして、水面の第1の受信機10-1による高度データと、水面の第2の受信機10-21による高度データとを補正し、係る補正処理で調整した後の高度データを用いて、水位を推定する例を示した。
【0145】
しかし、情報処理装置100は、水面の第1の受信機10-1による高度データと、地面に固定される第2の受信機10-22による高度データとを補正し、係る補正処理で調整した後の高度データを用いて、水位を推定してよい。係る例では、第1の受信機10-1に対応する特徴情報、または、第2の受信機10-22に対応する特徴情報のうち、少なくともいずれか一方が予測モデルに入力されることで、補正係数αが算出される。そして、情報処理装置100は、調整後の高度データの組と、補正係数αとを式(1)に入力することで、ダム湖DL1における1つの水位を推定する。
【0146】
また、情報処理装置100は、水面の第2の受信機10-21による高度データと、地面に固定される第2の受信機10-22による高度データとを補正し、係る補正処理で調整した後の高度データを用いて、水位を推定してよい。係る例では、第2の受信機10-21に対応する特徴情報、または、第2の受信機10-22に対応する特徴情報のうち、少なくともいずれか一方が予測モデルに入力されることで、補正係数αが算出される。そして、情報処理装置100は、調整後の高度データの組と、補正係数αとを式(1)に入力することで、ダム湖DL1における別の1つの水位を推定する。
【0147】
また、情報処理装置100は、これまでの例のように、水面の第1の受信機10-1による高度データと、水面の第2の受信機10-21による高度データとを補正し、係る補正処理で調整した後の高度データを用いて、さらに水位を推定してよい。係る例では、第1の受信機10-1に対応する特徴情報、または、第2の受信機10-21に対応する特徴情報のうち、少なくともいずれか一方が予測モデルに入力されることで、補正係数αが算出される。そして、情報処理装置100は、調整後の高度データの組と、補正係数αとを式(1)に入力することで、ダム湖DL1におけるさらに別の1つの水位を推定する。
【0148】
上記例によると、情報処理装置100は、ダム湖DL1においてリアルタイムに3つの水位を得ることになる。係る場合、情報処理装置100は、この3つの水位を用いたデータクリーニングにより、3つの水位を統合し、最終的な1つの水位を取得してよい。
【0149】
〔9-2.変形例(2)〕
上記実施形態では、情報処理装置100が、収集部131および生成部132を有することで、水位推定だけでなく、水位推定に用いられる予測モデルを生成する学習処理も行ってよい例を示した。
【0150】
しかしながら、収集部131および生成部132の間で行われる学習処理は、情報処理装置100とは異なる外部装置によって行われてもよい。係る場合、外部装置は、収集部131および生成部132に対応する処理部を有してよい。また、係る場合、情報処理装置100は、学習処理を行うことなく、外部装置によって生成された予測モデルを取得するだけでよい。
【0151】
〔10.ハードウェア構成〕
また、上記実施形態に係る情報処理装置100は、例えば図9に示すような構成のコンピュータ1000によって実現される。図9は、情報処理装置100の機能を実現するコンピュータ1000の一例を示すハードウェア構成図である。コンピュータ1000は、CPU1100、RAM1200、ROM1300、HDD1400、通信インターフェイス(I/F)1500、入出力インターフェイス(I/F)1600、及びメディアインターフェイス(I/F)1700を有する。
【0152】
CPU1100は、ROM1300又はHDD1400に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。ROM1300は、コンピュータ1000の起動時にCPU1100によって実行されるブートプログラムや、コンピュータ1000のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。
【0153】
HDD1400は、CPU1100によって実行されるプログラム、および、係るプログラムによって使用されるデータ等を格納する。通信インターフェイス1500は、通信網50を介して他の機器からデータを受信してCPU1100へ送り、CPU1100が生成したデータを、通信網50を介して他の機器へ送信する。
【0154】
CPU1100は、入出力インターフェイス1600を介して、ディスプレイやプリンタ等の出力装置、及び、キーボードやマウス等の入力装置を制御する。CPU1100は、入出力インターフェイス1600を介して、入力装置からデータを取得する。また、CPU1100は、生成したデータを、入出力インターフェイス1600を介して出力装置へ出力する。
【0155】
メディアインターフェイス1700は、記録媒体1800に格納されたプログラム又はデータを読み取り、RAM1200を介してCPU1100に提供する。CPU1100は、係るプログラムを、メディアインターフェイス1700を介して記録媒体1800からRAM1200上にロードし、ロードしたプログラムを実行する。記録媒体1800は、例えばDVD(Digital Versatile Disc)、PD(Phase change rewritable Disk)等の光学記録媒体、MO(Magneto-Optical disk)等の光磁気記録媒体、テープ媒体、磁気記録媒体、または半導体メモリ等である。
【0156】
例えば、コンピュータ1000が実施形態に係る情報処理装置100として機能する場合、コンピュータ1000のCPU1100は、RAM1200上にロードされたプログラムを実行することにより、制御部130の機能を実現する。また、HDD1400には、記憶部120内のデータが格納される。コンピュータ1000のCPU1100は、これらのプログラムを、記録媒体1800から読み取って実行するが、他の例として、他の装置から、通信網50を介してこれらのプログラムを取得してもよい。
【0157】
〔11.その他〕
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【0158】
〔12.まとめ〕
以上、本願の実施形態をいくつかの図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、発明の開示の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【0159】
また、上述してきた「部(section、module、unit)」は、「手段」や「回路」などに読み替えることができる。例えば、取得部は、取得手段や取得回路に読み替えることができる。
【符号の説明】
【0160】
1 水位推定システム
10 受信機
100 情報処理装置
120 記憶部
121 学習データ記憶部
122 高度データ記憶部
123 推定結果記憶部
130 制御部
131 収集部
132 生成部
133 取得部
134 調整部
135 算出部
136 推定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9