(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102056
(43)【公開日】2023-07-24
(54)【発明の名称】電力量演算装置、電力量演算方法、および、電力量演算プログラム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/47 20180101AFI20230714BHJP
F24F 11/64 20180101ALI20230714BHJP
【FI】
F24F11/47
F24F11/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002393
(22)【出願日】2022-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大森 健次
(72)【発明者】
【氏名】原田 浩司
(72)【発明者】
【氏名】西谷 早百合
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AA04
3L260AA09
3L260AB01
3L260BA43
3L260CA22
3L260CA26
3L260CA29
3L260CA32
3L260CA33
3L260CA39
3L260CB63
3L260CB78
3L260FA09
3L260GA16
3L260GA17
(57)【要約】
【課題】簡便かつ高精度にデマンドレスポンスによって生じる削減電力量を演算できるようにする。
【解決手段】デマンドレスポンスの対象となる電力需要家の需要家情報341および気象情報342を取得する通信部31と、需要家情報341および気象情報342を記憶する記憶部34と、需要家情報341に含まれるヒートポンプ機器の定格能力および設定温度、気象情報に含まれる外気温度および湿度に加えて、デマンドレスポンスを実施する際の影響因子である外皮負荷、外気負荷、および、内部発熱を用いて、デマンドレスポンスを実施するときに想定される削減電力量343を演算する削減電力量演算部37とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力需要家の需要家情報および気象情報を取得する通信部と、
前記需要家情報および前記気象情報を記憶する記憶部と、
前記需要家情報に含まれるヒートポンプ機器の定格能力および設定温度、前記気象情報に含まれる外気温度および湿度に加え、デマンドレスポンスを実施する際の影響因子である外皮負荷、外気負荷、および、内部発熱を用いて、前記デマンドレスポンスを実施したときに変化する電力量を演算する電力量演算部と
を備えることを特徴とする電力量演算装置。
【請求項2】
前記電力量演算部は、前記外皮負荷、前記外気負荷および前記内部発熱に加えて、建物内部における照明負荷、人体負荷、機器負荷、冷温水負荷、給湯負荷、蒸気負荷を考慮して前記電力量を演算する
ことを特徴とする請求項1に記載の電力量演算装置。
【請求項3】
前記電力量演算部は、前記電力量を演算する際、前記影響因子として更に実効温度差(ETD)について用いる
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電力量演算装置。
【請求項4】
前記電力量演算装置は、
前記デマンドレスポンスを実行する実施対象の需要家およびデマンドレスポンス実施内容を決定するデマンドレスポンス実施対象決定部
を備えることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の電力量演算装置。
【請求項5】
前記電力量演算装置は、
前記電力量および所定の単価情報に対応した係数に基づいて前記デマンドレスポンスを実行した電力需要家に対して付与するインセンティブを算出するインセンティブ算出部
を備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の電力量演算装置。
【請求項6】
前記電力量演算装置は、
前記電力量が所定の閾値を超えている場合、前記外皮負荷、外気負荷、および、内部発熱等の割合を補正係数として調整する補正係数演算部
を備える請求項1乃至5の何れか1項に記載の電力量演算装置。
【請求項7】
電力量演算装置を用いて実行する電力量演算方法であって、
電力需要家の需要家情報および気象情報を取得する取得ステップと、
前記需要家情報および前記気象情報を記憶部に記憶する記憶ステップと、
前記需要家情報に含まれるヒートポンプ機器の定格能力および設定温度、前記気象情報に含まれる外気温度および湿度に加え、デマンドレスポンスを実施する際の影響因子である外皮負荷、外気負荷、および、内部発熱を用いて、前記デマンドレスポンスを実施したときに変化する電力量を演算する削減電力量演算ステップと
を有する電力量演算方法。
【請求項8】
電力量演算装置に対して、
電力需要家の需要家情報および気象情報を取得する取得ステップと、
前記需要家情報および前記気象情報を記憶部に記憶する記憶ステップと、
前記需要家情報に含まれるヒートポンプ機器の定格能力および設定温度、前記気象情報に含まれる外気温度および湿度に加え、デマンドレスポンスを実施する際の影響因子である外皮負荷、外気負荷、および、内部発熱を用いて、前記デマンドレスポンスを実施したときに変化する電力量を演算する削減電力量演算ステップと
を実行させることを特徴とする電力量演算プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、デマンドレスポンスの実施により生じる削減電力量を算出する電力量演算装置、電力量演算方法、および、電力量演算プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光発電を中心とした再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、電圧や周波数などの電気の品質を確保することが課題となっている。東日本大震災では、エネルギー供給の制約や集中型エネルギーシステムの脆弱性が明らかになった。
【0003】
エネルギー需給システムについて、従来の省エネルギー対策に追加して、エネルギーの供給状況に応じてスマートに消費パターンを変化させる、所謂デマンドレスポンス(以下、これを「DR」と呼ぶ場合があるものとする。)の重要性が認識されつつある。
【0004】
デマンドレスポンスにおいては、電力需給の安定化やカーボンニュートラルへの貢献に向けて、潜在的なデマンドレスポンス量が大きいと考えられるビル用マルチエアコンなどの空調機器、および、給湯器などのヒートポンプ機器に対象を拡大することにより、一段と大きな調整力の創出を指向する傾向がある。
【0005】
例えば、ヒートポンプ機器を用いたデマンドレスポンスのインセンティブ算出手法としては、各ヒートポンプ機器における個別の電力計量による方法がある。また、電力供給部から電力消費顧客へ電力を供給し、供給した電力に対して一定の規則に従って対価を算出して電力消費顧客へ請求する際、供給期間内に供給した電力に関する対価を、供給期間内の電力消費顧客の電力消費に影響を与える外部要因に関するデータを用いて決定する電力供給サービス方法がある(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、各ヒートポンプ機器における個別の電力計量によってデマンドレスポンスのインセンティブを算出する方法では、計量コストの負担が大きいため普及性に欠けていた。
【0008】
また、特許文献1の電力供給サービス方法では、主に外気温湿度を考慮して電力消費対価を算出しているが、デマンドレスポンスを実施する際の影響因子を考慮しておらず、算出精度の低下が懸念されていた。
【0009】
本発明は上記問題に鑑みなされたものであって、簡便かつ高精度にデマンドレスポンスの実施によって変化する電力量を演算し得る電力量演算装置、電力量演算方法、および、電力量演算プログラムを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電力量演算装置においては、電力需要家の需要家情報および気象情報を取得する通信部と、前記需要家情報および前記気象情報を記憶する記憶部と、前記需要家情報に含まれるヒートポンプ機器の定格能力および設定温度、前記気象情報に含まれる外気温度および湿度に加え、デマンドレスポンスを実施する際の影響因子である外皮負荷、外気負荷、および、内部発熱を用いて、前記デマンドレスポンスを実施したときに変化する電力量を演算する電力量演算部とを備える。
【0011】
前記電力量演算部は、前記外皮負荷、前記外気負荷および前記内部発熱に加えて、建物内部における照明負荷、人体負荷、機器負荷、冷温水負荷、給湯負荷、蒸気負荷を考慮して前記電力量を演算する。
【0012】
前記電力量演算部は、前記電力量を演算する際、前記影響因子として更に実効温度差(ETD)について用いることが好ましい。
【0013】
前記電力量演算装置は、前記デマンドレスポンスを実行する実施対象の需要家およびデマンドレスポンス実施内容を決定するデマンドレスポンス実施対象決定部とを備えることが好ましい。
【0014】
前記電力量演算装置は、前記電力量および所定の単価情報に基づいて前記デマンドレスポンスを実行した電力需要家に対して付与するインセンティブを算出するインセンティブ算出部とを備えることが好ましい。
【0015】
前記電力量演算装置は、前記電力量が所定の閾値を超えている場合、前記外皮負荷、外気負荷、および、内部発熱等の割合を補正係数として調整する補正係数演算部とを備えることが好ましい。
【0016】
電力量演算装置を用いて実行する電力量演算方法であって、電力需要家の需要家情報および気象情報を取得する取得ステップと、前記需要家情報および前記気象情報を記憶部に記憶する記憶ステップと、前記需要家情報に含まれるヒートポンプ機器の定格能力および設定温度、前記気象情報に含まれる外気温度および湿度に加え、デマンドレスポンスを実施する際の影響因子である外皮負荷、外気負荷、および、内部発熱を用いて、前記デマンドレスポンスを実施したときに変化する電力量を演算する削減電力量演算ステップとを有する。
【0017】
電力量演算装置に対して、電力需要家の需要家情報および気象情報を取得する取得ステップと、前記需要家情報および前記気象情報を記憶部に記憶する記憶ステップと、前記需要家情報に含まれるヒートポンプ機器の定格能力および設定温度、前記気象情報に含まれる外気温度および湿度に加え、デマンドレスポンスを実施する際の影響因子である外皮負荷、外気負荷、および、内部発熱を用いて、前記デマンドレスポンスを実施したときに変化する電力量を演算する削減電力量演算ステップとを実行させる電力量演算プログラム。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、簡便かつ高精度にデマンドレスポンスに応じて変化する消費電力量を演算し得る電力量演算装置、電力量演算方法、および、電力量演算プログラムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態に係る電力量演算システムの全体構成を示す略線図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る事業者サーバの構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る事業者サーバの削減電力量演算部において用いられる割合テーブルの一例を示す表である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る事業者サーバの削減電力量演算部によって行われる削減電力量演算処理手順を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の実施の形態に係る事業者サーバのDRポートフォリオ演算部によって行われるデマンドレスポンスの実行命令生成処理手順を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の実施の形態に係る事業者サーバのDRインセンティブ算出部によって行われるDRインセンティブ算出処理手順を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の実施の形態に係る事業者サーバのDR補正係数演算部によって行われるDR補正係数演算処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔1〕本発明における実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0021】
<1> 代表的な実施の形態における電力量演算装置(3)は、電力需要家の需要家情報(341)および気象情報(342)を取得する通信部(31)と、需要家情報(341)および気象情報(342)を記憶する記憶部(34)と、需要家情報(341)に含まれるヒートポンプ機器(6)の定格能力および設定温度、気象情報(342)に含まれる外気温度および湿度に加え、デマンドレスポンスを実施する際の影響因子である外皮負荷、外気負荷、および、内部発熱を用いて、デマンドレスポンスを実施したときに変化する電力量(343)を演算する電力量演算部(37)とを備える。
【0022】
<2>電力量演算部(37)は、外皮負荷、外気負荷および内部発熱に加えて、建物内部における照明負荷、人体負荷、機器負荷、冷温水負荷、給湯負荷、蒸気負荷を考慮して電力量(343)を演算する。
【0023】
<3>電力量演算部(37)は、電力量(343)を演算する際、影響因子として更に実効温度差(ETD)について用いる。
【0024】
<4>電力量演算装置(3)は、デマンドレスポンスを実行する実施対象の需要家(5)およびデマンドレスポンス実施内容を決定するデマンドレスポンス実施対象決定部(36)とを備える。
【0025】
<5>電力量演算装置(3)は、電力量(343)および所定の単価情報(344)に基づいてデマンドレスポンスを実行した電力需要家(5)に対して付与するインセンティブ(DRインセンティブ)を算出するインセンティブ算出部(38)とを備える。
【0026】
<6>電力量演算装置(3)は、電力量(343)が所定の閾値を超えている場合、外皮負荷、外気負荷、および、内部発熱等の割合を調整する補正係数演算部(39)とを備える。
【0027】
<7>電力量演算装置(3)を用いて実行する電力量演算方法であって、電力需要家の需要家情報(341)および気象情報(342)を取得する取得ステップと、需要家情報(341)および気象情報(342)を記憶部(34)に記憶する記憶ステップと、需要家情報(341)に含まれるヒートポンプ機器(6)の定格能力および設定温度、気象情報(342)に含まれる外気温度および湿度に加え、デマンドレスポンスを実施する際の影響因子である外皮負荷、外気負荷、および、内部発熱を用いて、デマンドレスポンスを実施したときに変化する電力量(343)を演算する削減電力量演算ステップとを有する。
【0028】
<8>電力量演算装置(3)に対して、電力需要家の需要家情報(341)および気象情報(342)を取得する取得ステップと、需要家情報(341)および気象情報(342)を記憶部(34)に記憶する記憶ステップと、需要家情報(341)に含まれるヒートポンプ機器(6)の定格能力および設定温度、気象情報(342)に含まれる外気温度および湿度に加え、デマンドレスポンスを実施する際の影響因子である外皮負荷、外気負荷、および、内部発熱を用いて、デマンドレスポンスを実施したときに変化する電力量(343)を演算する削減電力量演算ステップとを実行させる電力量演算プログラム。
【0029】
〔2〕実施の形態
以下、実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。また、図面は模式的なものであり、各要素の配置、データの形式、通信方法などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。
【0030】
以下、本発明の実施の形態にかかる電力量演算システム1の構成について、
図1乃至
図7を参照しながら詳細に説明する。
【0031】
ここで、
図1は、本発明の実施の形態に係る電力量演算システムの全体構成を示す略線図である。
図2は、本発明の実施の形態に係る事業者サーバの構成を示すブロック図である。
図3は、本発明の実施の形態に係る事業者サーバの削減電力量演算部において用いられる割合テーブルの一例を示す表である。
図4は、本発明の実施の形態に係る事業者サーバの削減電力量演算部によって行われる削減電力量演算処理手順を示すフローチャートである。
図5は、本発明の実施の形態に係る事業者サーバのDRポートフォリオ演算部によって行われるデマンドレスポンスの実行命令生成処理手順を示すフローチャートである。
図6は、本発明の実施の形態に係る事業者サーバのDRインセンティブ算出部によって行われるDRインセンティブ算出処理手順を示すフローチャートである。
図7は、本発明の実施の形態に係る事業者サーバのDR補正係数演算部によって行われるDR補正係数演算処理手順を示すフローチャートである。
【0032】
<電力量演算システムの全体構成>
図1に示すように、電力量演算システム1は、電気事業者が所有する電力量演算装置としての事業者サーバ3と、その事業者サーバ3とインターネット等の図示しない広域ネットワーク(WAN:Wide Area Network)を介して接続された複数の需要家端末5とを有している。
【0033】
事業者サーバ3は、図示しないリソースアグリゲータから電力需要家(以下、これを単に「需要家」と呼ぶ場合があるものとする。)の電力使用量をデマンドレスポンスにより削減するための調整量(以下、これを「DR調整量」と言う場合があるものとする。)の指令を受け、その指令に基づいて、需要家に対してデマンドレスポンスを実行させる需要家端末5の上位装置である。ただし、これに限るものではなく、事業者サーバ3がリソースアグリゲータを兼ねていてもよい。
【0034】
ここで、リソースアグリゲータとは、電力需要家(以下、これを単に「需要家」とも言う。)の需要バランスをとりまとめ、効果的かつ安定的に電力エネルギーを提供するように司るものである。
【0035】
特に、事業者サーバ3は、DR調整量を設定し、需要家に対してデマンドレスポンスを実施させた場合の削減電力量を予め演算し、その後、需要家に対してデマンドレスポンスを実行させるための命令(以下、これを「DR実行命令」と言う。)を出力するサーバ(情報処理装置)である。
【0036】
実際、事業者サーバ3は、DR実行命令を出力する前に、需要家に対してデマンドレスポンスを実施させた場合の削減電力量を予め演算しておくことができ、その削減電力量を高精度に演算することができる。
【0037】
なお、その演算手法については後述する。なお、事業者サーバ3が削減電力量を演算するのではなく、当該事業者サーバ3の上位に設けられた専用の電力量演算装置(図示せず)を設け、その電力量演算装置で削減電力量を演算してもよい。
【0038】
需要家端末5は、各電力需要家が有するコンピュータ等からなる情報処理装置であって、ヒートポンプ機器6(例えば空調機器)と接続されている。需要家端末5としては、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、またはスマートフォン等の各種情報処理装置(コンピュータ)を例示することができる。ここでは、ヒートポンプ機器6(例えば空調機器)に接続されている場合について述べたが、ヒートポンプ機器6として例えば給湯器に接続されている場合を含むものとする。
【0039】
需要家端末5は、ヒートポンプ機器6の電流値などの運転情報を事業者サーバ3へ送信する通信機能を備えた情報処理装置である。すなわち、需要家端末5は、その内部に演算処理機能および外部との通信を行う通信機能を有している。
【0040】
<事業者サーバの構成>
図2に示すように、事業者サーバ3は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、インタフェースを含むコンピュータ等によって構成される。事業者サーバ3は、機能ブロックとして、データ通信部31、入力部32、表示部33、記憶部34、制御部35、DRポートフォリオ演算部36、DR削減電力量演算部37、DRインセンティブ算出部38、および、DR補正係数演算部39を有している。
【0041】
データ通信部31は、外部の需要家端末5およびその他の端末といわゆるデータの入出力を行うインタフェース部であり、制御部35からのDR実行命令を出力する等、需要家端末5との間でデータを授受する機能部である。また、データ通信部31は、外部のサーバ(図示せず)から気象情報(外気温等)を受信し、その気象情報342を記憶部34に記憶させておく。
【0042】
入力部32は、いわゆるキーボードやマウス等のデータ入力手段である。表示部33は情報を表示するためのディスプレイである。記憶部34はハードディスクドライブやフラッシュメモリ等の記憶装置である。制御部35は、全体を統括制御すると共に各種処理を実行するCPU(Central Processing Unit)である。DRポートフォリオ演算部36、DR削減電力量演算部37、DRインセンティブ算出部38、および、DR補正係数演算39は、後述する削減電力量等を演算するために用いられる機能部であり、例えばDSP(Digital Signal Processor)である。
【0043】
これらDRポートフォリオ演算部36、DR削減電力量演算部37、DRインセンティブ算出部38、および、DR補正係数演算39の各機能ブロックは、事業者サーバ3を構成するハードウェア資源が、当該事業者サーバ3に予めインストールされたアプリケーションプログラムである基本プログラムや各種ソフトウエア(例えば、削減電力量演算プログラム)と協働することによって実現される。
【0044】
実際上、事業者サーバ3を構成するハードウェア資源としては、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブ、キーボード、モニタ等である。
【0045】
記憶部34には、事業者サーバ3を統括的に制御する基本プログラムの他、その他各種のアプリケーションプログラムが予めインストールされている。また、記憶部34には、後述する需要家情報341、気象情報342、DR削減電力量343、DR単価情報344およびDR実績情報345等が記憶される。
【0046】
ここで、需要家情報341とは、需要家に関する基本的な情報であり、需要家の「名前」、「住所」、「電話番号」等の個人情報に加え、その需要家が使用している例えばヒートポンプ機器のうち例えば空調機器については、「設定温度」、「運転情報(冷房または暖房)」、機器固有の設備機器特性情報(例えば、機器がどれ位の電力を使用するかの総容量である設備容量)、機器台数、空調対象室の物理情報(室温)、および、断熱性能(外皮条件、外気条件)等である。さらに、需要家情報341には、建物方位、建物の壁タイプ、デマンドレスポンスを実施するときの設定温度情報、実行温度差(ETD)、負荷割合等の様々な情報が含まれている。
【0047】
気象情報342は、地域、外気温度、湿度等の気象庁等の外部のサーバから得られる気象に関するあらゆる情報が含まれる。DR削減電力量343は、後述する事業者サーバ3のDR削減電力量演算部37において、需要家がデマンドレスポンスを実行する前に比べてデマンドレスポンスを実行した場合に削減されると予想される消費電力量のことである。
【0048】
DR単価情報344は、デマンドレスポンスを実行した需要家に対して与えるインセンティブを算出する際に用いられる単価である。この単価は、事業者によって異なる値である。DR実績情報345は、需要家が実際にデマンドレスポンスを実行した場合に消費した消費電力の実績値、実施日、実施時間帯、およびDR実施時の設定温度変更履歴(ユーザID、変更温度を含む)である。
【0049】
事業者サーバ3では、DSPがDRポートフォリオ演算部36、DR削減電力量演算部37、DRインセンティブ算出部38、および、DR補正係数演算39の内部メモリに記憶されたアプリケーションプログラムと協同することにより各機能部を形成する。
【0050】
DRポートフォリオ演算部36は、デマンドレスポンスを実行する際に必要なDR調整量(削減電力量として例えば10kW等の数値)を設定する機能部である。DR調整量は、図示しないリソースアグリゲータからの指令値であることが一般的である。
【0051】
ここで、DR調整量とは、デマンドレスポンスによって削減できることが可能な電力使用量のことであり、例えば冬場であればヒートポンプ機器(例えば空調機器)の室温設定を22度から20度に2度下げることにより削減電力量を例えば10kW削減したり、夏場であればヒートポンプ機器(例えば空調機器)の室温設定を26度から28度に2度上げることにより削減電力量を例えば5kW削減したりする電力使用量のことである。
【0052】
DRポートフォリオ演算部36は、DR調整量に基づいてデマンドレスポンス実施対象となる需要家を決定すると共にデマンドレスポンス実施内容についても決定する。その後、DRポートフォリオ演算部36は、制御部35からデータ通信部31を介して、デマンドレスポンス実施対象として決定した需要家端末5へデマンドレスポンス実行命令およびデマンドレスポンス実施内容を送信させる。
【0053】
実際上、DRポートフォリオ演算部36は、予め記憶部34に記憶されている需要家情報341から、需要家毎に例えば設定温度を1℃下げたら消費電力を何kWだけ下げられるかのDR削減電力量343を取得し、そのDR削減電力量343に基づいてデマンドレスポンスを実施してもらう需要家、および、DR実施内容(例えば、「設定温度を1℃下げてください」)を決定する。
【0054】
これにより、需要家はデマンドレスポンス実施内容にしたがってデマンドレスポンスを実行し、デマンドレスポンスを実行した後の実行結果である消費電力をDR実績情報345として事業者サーバ3へ送信する。事業者サーバ3は、DR実績情報345を記憶部34に記憶する。
【0055】
このデマンドレスポンス実行命令およびデマンドレスポンス実施内容の送信対象としては、リソースアグリゲータから1つの需要家に向けた場合だけではなく、複数の需要家を含む所定のグループ単位に向けた場合もある。
【0056】
例えば、所定の地域を1つのグループ単位とする場合や、所定の業態(例えば、コンビニエンスストア、建物用途等)を1つのグループ単位とする場合がある。なお、グループ単位は、これらに限らず、業種、建物の大きさ、その他種々のグルーピングの方法によって決定することができる。
【0057】
DR削減電力量演算部37は、DR実施内容にしたがってデマンドレスポンスを実行した場合に削減すると予想されるDR削減電力量を演算する機能部である。DR削減電力量演算部37は、予め内部メモリにインストールされたDR削減電力量演算プログラム371にしたがってDR削減電力量343を演算し、これを記憶部34に記憶する。
【0058】
DR削減電力量演算プログラム371は、CD、DVD、USBメモリ等の記録媒体やダウンロード等によって後からインストールしてもよい。なお、DR削減電力量演算部37におけるDR削減電力量343の演算手法については後述する。
【0059】
DRインセンティブ算出部38は、予め内部メモリにインストールされたDRインセンティブ算出プログラム381にしたがって、デマンドレスポンスの実施対象となる需要家に与えるインセンティブの値(以下、これを「DRインセンティブ」と言う。)を算出する機能部である。
【0060】
具体的には、DRインセンティブ算出部38は、需要家端末5から需要家が実際にデマンドレスポンスを実行した後の消費電力であるDR実績情報345に対して、予め記憶部34に記憶したDR単価情報344を表す単価を乗算することにより、DRインセンティブ382を算出する。なお、DRインセンティブ算出プログラム381は、CD、DVD、USBメモリ等の記録媒体やダウンロード等によって後から内部メモリにインストールしてもよい。
【0061】
DRインセンティブ算出部38は、DRインセンティブ382を算出した後、そのDRインセンティブ382を内部メモリ(図示せず)に記憶する。因みにDRインセンティブ算出部38は、DRインセンティブ382を記憶部34に記憶してもよい。
【0062】
DRインセンティブ算出部38は、DRインセンティブ382に基づいて、需要家に対してどのようなインセンティブを与えるかを決定する。例えば、DRインセンティブ算出部38は、DRインセンティブ382の値に応じた金額を電気料金から差し引くインセンティブが考えられる。
【0063】
DR補正係数演算部39は、需要家がDR実行命令に基づいて、同じ時間帯においてデマンドレスポンスを実行した後の消費電力量の実績値と、デマンドレスポンスを実行する前の消費電力量の実績値とを比較する。
【0064】
そしてDR補正係数演算部39は、デマンドレスポンスを実行する前後の実績値の差分(比較結果)がDR削減電力量演算部37により演算したDR削減電力量343と大きく乖離している場合、具体的には、差分(比較結果)が所定の閾値を超えている場合、DR削減電力量演算部37に対してその旨を通知し、DR削減電力量343を演算する際の補正係数(後述する)を調整させる機能部である。
【0065】
<DR削減電力量の演算手法>
次に、DR削減電力量演算部37におけるDR削減電力量343の演算手法について説明する。デマンドレスポンスによるDR削減電力量343の演算手法を説明する前に、一般的な電力量を算出する際に用いられる標準電力量δの定義について説明する。標準電力量δは、次の(1)式乃至(3)式によって定義される。
【0066】
標準電力量δ=負荷(t0)/COP(t0)……………………………………(1)
負荷(t0)=機器定格能力[kW]×0.8………………………………………(2)
COP(t0)=機器定格COP……………………………………………………(3)
【0067】
この(1)式において、COP(Coefficient Of Performance)とは、エネルギー消費効率(成長係数または成績係数)のことであり、消費電力1[kW]あたりの冷却加熱能力を表した値である。なお、COPは、外気温度やその他種々の条件により変動する。
【0068】
(2)式において、「0.8」は、設計上の安全率を考慮した係数であり、負荷(t0)は安全率を考慮したピーク負荷である。DR削減電力量343と、デマンドレスポンスにより実際に電力量を削減したときのDR実績情報345との乖離が大きい場合はそのDR実績情報345に基づいて後述する例えば補正係数X(t)を修正する。
【0069】
負荷(t0)は、予め設定された標準的な負荷であり、条件としては、一例として、外気乾球温度35℃、外気湿球温度24℃、室内乾球温度27℃、室内湿球温度19℃、室外空気のエンタルピー71.4kJ/kgの場合の負荷である。
【0070】
(3)式に示すように、COP(t0)は機器定格COPと同じである。ここで、機器定格COPとは、一例として、外気乾球温度35℃、外気湿球温度24℃、室内乾球温度27℃、室内湿球温度19℃、室外空気のエンタルピー71.4kJ/kgの場合におけるエネルギー消費効率を示したものである。
【0071】
このような前提において、デマンドレスポンスの実施により削減されると考えられるDR削減電力量343は、次の(4)式、(5)式によって定義される。
予測削減電力量343=負荷(t1)/COP(t1)-負荷(t2)/COP(t2)…………………………………………………………………………………………(4)
COP(t)=COP(負荷(t),外気温度(t)) ……………………(5)
【0072】
(4)式において、負荷(t1)は、デマンドレスポンスを実行する前の負荷を表しており、負荷(t2)は、デマンドレスポンスを実行した後の負荷を表している。したがって、(4)式において、負荷(t1)/COP(t1)は、デマンドレスポンスを実行する前の消費電力量を意味し、負荷(t2)/COP(t2)はデマンドレスポンスを実行した後の消費電力量を意味している。
【0073】
なお、(5)式において、COP(t)は、時刻(t)における負荷(t)、外気温度(t)の条件において算出される機器のエネルギー消費効率を示している。また、(5)式における負荷(t)については、次の(6)式によって表される。
【0074】
負荷(t)=負荷(t0)×X(t)………………………………………………(6)
ここで、X(t)は、ある条件下において時刻(t)における負荷(t)の特性を示しており、建物用途や地域、建物の条件等を考慮した補正係数である。そして、X(t)については、次の(7)式によって表される。
【0075】
X(t)=外皮負荷の割合(t)×{ETD(t、方位)/{ETD(t0、方位)}+外気負荷の割合(t)×{ho(t)-hr}/{ho(t0)-hr}+内部発熱等の割合(t)×W(t)/W(t0) ………………………………………………………(7)
【0076】
(7)式における外皮負荷とは、ビル等の建物の構造体における外皮から外部の熱が伝わることにより発生する熱負荷である。また、(7)式における外気負荷とは、外気を取り込むことにより生じる熱負荷である。さらに、(7)式における内部発熱等とは、建物内部の人体や照明機器その他室内の発熱体から生じる熱負荷、さらに、冷温水負荷、給湯負荷、蒸気負荷である。
【0077】
(7)式における外皮負荷の割合(t)、外気負荷の割合(t)、内部発熱等の割合(t)は、建物用途、建物の方位、室内温度等に応じて按分される値であり、予めDR削減電力量演算部37の内部メモリに記憶された負荷テーブルT1に基づいて決定することができる。
【0078】
図3に示すように、負荷テーブルT1は、実際の外皮負荷、外気負荷、および、内部発熱等の統計データに基づいて予め生成されたものであり、建物用途、方位、室内温度、月日、時間帯によって変わり得る。
【0079】
この負荷テーブルT1は、例えば、建物用途:オフィス、方位:西、室内温度27℃の場合の一例であり、8月某日の15時から16時までの間であれば、外皮負荷の割合(t)が19%、外気負荷の割合(t)が45%、内部発熱等の割合(t)が36%となる。
【0080】
外皮負荷、外気負荷、および、内部発熱等は、それぞれ次の(8)式乃至(10)式によって定義される。
外皮負荷=A×K×ETD(t,方位)……………………………………………(8)
外気負荷=0.33×Q×(ho(t)-hr)…………………………………(9)
内部発熱等=W(t)………………………………………………………………(10)
【0081】
(8)式において、Aは外皮の面積(m2)であり、Kは外皮の熱通過率(W/m2・K(kelvin))である。ETDは、実効温度差(K(kelvin))である。実効温度差(ETD)とは、相当外気温度(日射を考慮した外気温度)と室内設定温度の差であり、時間的変化や外皮の熱容量などから非定常計算により求めるもので、各地域の各種の壁構造・方位に対して時刻別に設定されるものである。
【0082】
したがって、(8)式におけるETD(t,方位)は、時刻(t)の時点における気象情報342を用いて時刻毎および方位毎に変わる値(変数)である。気象情報342に基づくETD(実効温度差)は、気象庁等の外部のサーバからの情報により、時刻毎および方位毎に予め設定して記憶部34に記憶しておくことが可能である。
【0083】
(9)式において、0.33は定数であり、空気の低圧比熱や比容積から求められる値である。Qは、外気量(m3)であり、外気量(m3)=単位外気量(m3/m2・h)×床面積である。ho(t)は、室外空気のエンタルピー(kj/kg)、hrは室内空気のエンタルピー(kj/kg)である。ho(t)は、時刻(t)によって変化する変数である。なおエンタルピーは、温度および湿度によって算出される値である。
【0084】
(10)式における内部発熱等については、建物内部における照明負荷、人体負荷、機器負荷等があり、建物用途に応じて標準化される値(変数)である。なお、内部発熱等W(t)においては、受電点の電力量に基づいて建物用途を推定し、その推定した建物用途に応じた値を設定することも可能である。
【0085】
したがって、デマンドレスポンスによるDR削減電力量343は、上述した(4)式に基づいて、デマンドレスポンスを実行する前の消費電力量(負荷(t1)/COP(t1))と、デマンドレスポンスを実行した後の消費電力量((t2)/COP(t2))とを求め、その差分を算出すればよい。
【0086】
特に、エネルギー消費効率を表すCOP(t)は、上述した(5)式に示したように、COP(t)=COP(負荷(t),外気温度(t))であり、外気温度(t)やその他の負荷条件により変動する機器の効率を意味する。
【0087】
したがって、デマンドレスポンスによるDR削減電力量343の演算においては、地域に応じた気象条件、建物用途や建物特性に応じた負荷割合(負荷テーブルT1)、実効温度差(ETD)、および、建物用途に応じた内部発熱等に応じて補正することができるので、DR削減電力量343の精度を向上することが可能となる。
【0088】
<具体的なDR削減電力量の演算例>
次に、DR削減電力量343の演算例について具体的に説明する。具体的には、ヒートポンプ機器としてビル用マルチエアコン(例えば空調機器)を用いてオフィスビルの1室(空調対象室)を冷房する場合を一例として説明する。
【0089】
共通条件としては、建物用途:オフィス、方位:西(この場合、窓が西向きに設置されている)、面積:延床面積80m2とする。また、室内条件としては、デマンドレスポンス実施前::室内温度26℃、湿度50%、室内空気のエンタルピー52.9kj/kg、絶対湿度10.5g/kg´であり、デマンドレスポンス実施後::室内温度27℃、湿度47.2%、室内空気のエンタルピー53.9kj/kg、絶対湿度10.5g/kg´である。
【0090】
また、この建物室内(建物用途:オフィス)における人員密度:0.2人/m2、照明密度:17W/m2、機器密度:13W/m2、取入外気量:6m3/m2・h、空調機器の必要能力/台数については、室内機:2.8kW×5台、および、室外機:14.0kW×1台である。
【0091】
デマンドレスポンス実施日:8月某日、デマンドレスポンス開始時刻:15時00分から30分間、デマンドレスポンス実施内容:設定温度の緩和26℃→27℃へ1℃上げる。デマンドレスポンス実施時の外気条件:室外温度32.8℃、湿度53%、室外空気のエンタルピー75.5kj/kgである。
【0092】
このような条件の下、標準時の負荷(t0)とエネルギー消費効率COP(t0)を求める。その際の条件としては、一例として、外気乾球温度35℃、外気湿球温度24℃、室内乾球温度27℃、室内湿球温度19℃、室外空気のエンタルピー71.4kJ/kgのとき、負荷(t0)およびCOP(t0)は、上述の(2)式および(3)式に基づいて、次の(11)式および(12)式によって表される。
【0093】
負荷(t0)=機器定格能力kW×0.8=14.0kW×0.8=11.2kW………………………………………………………………………………………………(11)
COP(t0)=機器定格COP(kW)=14.0/3.71=3.77………………………………………………………………………………………………………(12)
【0094】
(11)式における機器定格能力kW=14.0kWは、空調機器の室外機の必要能力の値である。(12)式において、14.0kWおよび3.71kWという数字は、外気温度35℃の場合の空調機器の室内吸込空気湿度19℃の場合の冷房性能特性が示す機器定格能力14.0kW、消費電力3.71kWの値である。なお、これらの値は一例に過ぎず、空調機器ごとに当然に異なる。
【0095】
<デマンドレスポンスを実施する前の消費電力>
続いて、デマンドレスポンスを実行する前の消費電力量(負荷(t1)/COP(t1))を求める。負荷(t1)については、上述した(6)式の負荷(t)=負荷(t0)× X(t)を用いて求めることができる。その際、上述した(7)式に基づいて、負荷(t)の特性を示すX(t)(=補正係数)を求める必要がある。
【0096】
X(t)においては、外皮負荷、外気負荷、内部発熱等を考慮する必要がある。外皮負荷については、上述した(8)式に基づいて、外皮負荷=A×K×ETD(t、方位)で求めることができる。
【0097】
ここで、東京、8月某日における15時、方位:西の場合の実効温度差(ETD)は、室内設定温度の基準を26℃とし、DR削減電力量演算部37の内部メモリに予め記憶されたETDテーブル(図示せず)に基づいて15℃を取得する。したがって、外皮負荷=A×K×15℃となる。
【0098】
内部発熱等については、照明負荷、人体負荷、機器負荷があり、次の(13)式から(15)式によって表される。
照明負荷=照明単位負荷×A(床面積)(W)……………………………………(13)
人体負荷=人体単位負荷×A(床面積)(W)……………………………………(14)
機器負荷=機器単位負荷×A(床面積)(W)……………………………………(15)
【0099】
(13)式において、照明単位負荷は、オフィス用途の場合、例えば事務室のゾーン(ペリメータ、インテリア、通路その他など)毎に照明単位負荷が定められた照明負荷テーブル(図示せず)がDR削減電力量演算部37の内部メモリに予め記憶されている。したがって、この場合、その照明負荷テーブルから読み取った値として例えば17[W/m2]を用いる。なお、照明負荷テーブルは予め記憶されていなくてもよく、その都度計算により求めることも可能である。
【0100】
(14)式において、人体負荷は、オフィス用途の場合、例えば事務室のゾーン(ペリメータ、インテリア、通路その他など)毎に人体単位負荷(単位面積当たりの在室人数)が定められた人体負荷テーブル(図示せず)がDR削減電力量演算部37の内部メモリに記憶されている。したがって、この場合、その人体負荷テーブルから読み取った値として例えば0.2[人/m2]を用いる。なお、人体負荷テーブルは予め記憶されていなくてもよく、その都度計算により求めることも可能である。
【0101】
(15)式において、機器負荷は、オフィス用途の場合、例えば事務室のゾーン(ペリメータ、インテリア、通路その他)毎に機器単位負荷(単位面積当たりの機器負荷)が定められた機器負荷テーブル(図示せず)がDR削減電力量演算部37の内部メモリに記憶されている。したがって、この場合、その機器負荷テーブルから読み取った値として例えば13[W/m2]を用いる。なお、機器負荷テーブルについても予め記憶されていなくてもよく、その都度計算により求めることも可能である。
【0102】
また、外皮負荷、外気負荷、内部発熱以外のその他の負荷としては、冷温水負荷、給湯負荷、蒸気負荷が含まれる。建物用途毎に定められたその他負荷テーブル(図示せず)がDR削減電力量演算部37の内部メモリに記憶されている。なお、その他負荷テーブルについても予め記憶されていなくてもよく、その都度計算により求めることも可能である。
【0103】
外気負荷については、上述した(9)式に基づいて、外気負荷=0.33×Q×(ho(t)-hr)で求めることができる。ここで、Qすなわち外気量は、オフィス用途の場合、例えば事務室のゾーン(ペリメータ、インテリア)毎に必要外気量(m3/m2・h)が定められた外気量テーブル(図示せず)がDR削減電力量演算部37の内部メモリに記憶されている。したがって、この場合、この外気量テーブルから読み取った値として例えば6(m3/m2・h)を用いる。なお、外気量テーブルについても予め記憶されていなくてもよく、その都度計算により求めることも可能である。
【0104】
また、この場合、ho(t)は、室外空気のエンタルピー(kj/kg)を表しており、hrは室内空気のエンタルピー(kJ/kg)を表している。したがって、デマンドレスポンス実施日の8月某日における室外空気のエンタルピー75.5kj/kgと、デマンドレスポンス開始前の室内空気のエンタルピー52.9kj/kgとを用いる。
【0105】
かくして、外気負荷=0.33×6m3/m2・h×(75.5kj/kg-52.9kj/kg)となる。これを整理すると、外気負荷=0.33×6m3/m2・h×22.6kj/kgとなる。
【0106】
負荷(t1)は、上述した(6)式により、次の(16)式で表される。
負荷(t1)=負荷(t0)× X(t1)…………………………………………(16)
ここでX(t1)は、上述した(7)式により、次の(17)式で表される。
X(t1)=外皮負荷の割合(t1)×{ETD(t1、方位)/{ETD(t0、方位)}+外気負荷の割合(t1)×{ho(t1)-hr}/{ho(t0)-hr}+内部発熱等の割合(t1)×W(t1)/W(t0)…………………………………(17)
【0107】
(17)式において、外皮負荷の割合(t1)、外気負荷の割合(t1)、内部発熱等の割合(t1)については、上述したように負荷割合テーブルT1(
図3)から取得する。この場合、例えば、外皮負荷の割合(t1)=19%、外気負荷の割合(t1)=45%、内部発熱等の割合(t1)=36%である。
【0108】
したがって、(16)式に基づいて、負荷(t1)=11.2kW×(19%×{15℃/14℃})+45%×(75.5kj/kg-52.9kj/kg)/(71.4kj/kg-52.9kJ/kg)+36%×2,416/2,416=11.2kW×(0.204+0.55+0.36)=12.48kWとなる。
【0109】
ここで、11.2kWは、(11)式で既に求めた負荷(t0)の値である。(19%×{15℃/14℃})は、外皮負荷の割合(t1)×{ETD(t1、方位)/{ETD(t0、方位)}に相当する。ETD(t1、方位)は、東京、8月某日における15時、方位:西の場合のETDテーブル(図示せず)に基づいて15℃である。
【0110】
これに対して、ETD(t0、方位)は、室内乾球温度27℃のときの実効温度差である。ETD(実効温度差)については、相当外気温度と室内設定温度の差を示したものであり、ETD(t0、方位)では室内乾球温度27℃であって、今回の室内設定温度の基準の26℃ではないため、室内乾球温度27℃の場合は、以下のように補正を行う。ETD(t0、方位)+(26-27)=ETD(t0、方位)-1℃。したがって、ETD(t0、方位)は14℃となる。
【0111】
続いて、外気負荷の割合(t1)×{ho(t1)-hr}/{ho(t0)-hr}において、{ho(t1)-hr}のho(t1)は、デマンドレスポンス実施時の室外空気のエンタルピー75.5kj/kgであり、hrはデマンドレスポンス開始前の室内空気のエンタルピー52.9kj/kgである。
【0112】
{ho(t0)-hr}においてho(t0)は、室外空気のエンタルピー71.4kJ/kgであり、hrは上述したようにデマンドレスポンス開始前の室内空気のエンタルピー52.9kj/kgである。
【0113】
さらに、内部発熱等の割合(t1)×W(t1)/W(t0)において、W(t0)は、照明負荷=17(W/m2)×80m2(床面積)、人体負荷=0.2人/m2×80m2(床面積)、機器負荷=13(W/m2)×80m2(床面積)で、2,416Wである。W(t1)も同様である。照明負荷テーブル、人体負荷テーブル、および、機器負荷テーブルについては、上述したように、その都度計算により求めることも可能であるため、W(t1)とW(t0)の値が同じにならない場合もある。
【0114】
続いて、エネルギー消費効率を意味するCOP(t1)については、ヒートポンプ機器の負荷率と外気温度により決まる値である。ここで、負荷率とは、ヒートポンプ機器に対する負荷の割合であり、例えば、非常に暑い日に空調機器をフル稼働する場合の負荷率が例えば90%である場合、暑くない日にヒートポンプ機器を稼働する場合の負荷率は例えば30%となる。この場合、デマンドレスポンス実施時の外気条件が外気温度32.8℃であり、ここでは仮にCOP(t1)=3.5とする。なお、COP(t1)の値については、負荷率に応じて変わり得るものとする。
【0115】
したがって、デマンドレスポンスを実施する前の消費電力は、負荷(t1)/COP(t1)=12.48kW/3.5=3.57kWとなる。
【0116】
<デマンドレスポンスを実施した後の消費電力>
次に、デマンドレスポンスを実施した後の消費電力量(負荷(t2)/COP(t2))を求める。負荷(t2)=外皮負荷+外気負荷+内部発熱等、である。
【0117】
上述した(8)式にしたがって、外皮負荷=A×K×ETD(t2)=A×K×14℃となる。ここでETD(t2)は、ETDテーブル(図示せず)に基づいてデマンドレスポンス実施日の8月某日の15時~16時では15℃であるが、デマンドレスポンスを実施した後に設定温度が基準の26(℃)から27(℃)に1℃上がっているので、ETD-1℃とした14℃となる。
【0118】
外気負荷については、上述した(9)式に基づいて、外気負荷=0.33×Q×(ho(t2)-hr)で求めることができる。ここで、Qすなわち外気量は、オフィス用途の場合、上述したように、事務室のゾーン(ペリメータ、インテリア)毎に必要外気量(m3/m2・h)が定められた外気量テーブル(図示せず)がDR削減電力量演算部37の内部メモリに記憶されている。したがって、この場合、その外気量テーブルから読み取った値として例えば6(m3/m2・h)を用いる。
【0119】
また、この場合、ho(t2)は、室外空気のエンタルピー(kj/kg)を表しており、hrは室内空気のエンタルピー(kJ/kg)を表している。したがって、デマンドレスポンス開始後の8月某日における室外空気のエンタルピー75.5kj/kgと、デマンドレスポンス開始後の室内空気のエンタルピー53.9kj/kgとを用いる。
【0120】
かくして、デマンドレスポンスを実施した後の外気負荷=0.33×6m3/m2・h×(75.5kj/kg-53.9kj/kg)となる。これを整理すると、外気負荷=0.33×6m3/m2・h×21.6kj/kgとなる。
【0121】
内部発熱等については、デマンドレスポンスを実施する前と、実施した後との間で変化はなく、W(t2)は、照明負荷=17(W/m2)×80m2(床面積)、人体負荷=0.2人/m2×80m2(床面積)、機器負荷=13(W/m2)×80m2(床面積)で、2,416Wである。
【0122】
負荷(t2)は、上述した(6)式により、次の(18)式で表される。
負荷(t2)=負荷(t0)×X(t2)…………………………………………(18)
ここでX(t2)は、上述した(7)式により、次の(19)式で表される。
X(t2)=外皮負荷の割合(t2)×{ETD(t2、方位}/{ETD(t0、方位}+外気負荷の割合(t2)×{ho(t2)-hr}/{ho(t0)-hr}+内部発熱等の割合(t2)×W(t2)/W(t0) ………………………………(19)
【0123】
(19)式において、外皮負荷の割合(t2)、外気負荷の割合(t2)、内部発熱等の割合(t2)については、デマンドレスポンスを実施する前と同じであり、外皮負荷の割合(t1)=19%、外気負荷の割合(t1)=45%、内部発熱等の割合(t1)=36%である。
【0124】
したがって、(19)式に基づいて、負荷(t2)=11.2kW×(19%×{14℃/14℃})+45%×(75.5kj/kg-53.9kj/kg)/(71.4kj/kg-53.9kj/kg)+36%×2,416/2,416=11.2kW×(0.19+0.56+0.36)=12.43kWとなる。
【0125】
続いて、エネルギー消費効率を意味するCOP(t2)についても、上述したように、ヒートポンプ機器の負荷率と外気温度により決まる値であり、ここでも仮にCOP(t2)=3.5とする。
【0126】
したがって、デマンドレスポンスを実施した後の消費電力は、負荷(t2)/COP(t2)=12.43kW/3.5=3.55kWとなる。
【0127】
デマンドレスポンスを実施する前の消費電力と、デマンドレスポンスを実施した後の消費電力との差であるDR削減電力量343は、上述した(4)式に基づいて求めることができる。
DR削減電力量343=負荷(t1)/COP(t1)-負荷(t2)/COP(t2)=3.57-3.55=0.02kWとなる。
【0128】
<DR削減電力量の演算処理手順>
続いて、事業者サーバ3によるDR削減電力量343の演算処理手順を
図4のフローチャートにより説明する。
図4に示すように、事業者サーバ3のDR削減電力量演算部37は、ルーチンRT1の開始ステップから入り、次のステップSP11に移る。
【0129】
ステップSP11においてDR削減電力量演算部37は、記憶部34から需要家情報341、気象情報342等のDR削減電力量343の演算に必要な情報を取得し、次のステップSP12へ移る。
【0130】
ステップSP12においてDR削減電力量演算部37は、上述したDR削減電力量演算手法に基づいて、それぞれの需要家ごとにDR削減電力量343を演算し、次のステップSP13へ移る。
【0131】
ここで、DR削減電力量演算部37は、例えば設定温度を26(℃)から1(℃)上げた場合、2(℃)上げた場合、3(℃)上げた場合等、設定温度だけではなく、月日、時間帯、冷房または暖房の場合のようにあらゆるパターンにおける複数のDR削減電力量343を演算しておく。
【0132】
ステップSP13においてDR削減電力量演算部37は、それぞれの需要家ごとの様々な状況下における複数のDR削減電力量343を記憶部34に記憶し、DR削減電力量343の演算処理を終了する。
【0133】
<DR実施対象決定処理手順>
続いて、デマンドレスポンス実施対象となる需要家の決定処理手順について説明する。
図5に示すように、事業者サーバ3のDRポートフォリオ演算部36は、ルーチンRT2の開始ステップから入り、次のステップSP21へ移る。
【0134】
ステップSP21においてDRポートフォリオ演算部36は、リソースアグリゲータからの指令に応じてデマンドレスポンスを実行する際に必要なDR調整量(削減電力量として例えば10kW)を設定し、次のステップSP22へ移る。
【0135】
ステップSP22においてDRポートフォリオ演算部36は、DR調整量を満足するためにデマンドレスポンスを実行させる需要家を決定する必要があり、記憶部34から需要家ごとにDR削減電力量343を取得し、次のステップSP23へ移る。
【0136】
ステップSP23においてDRポートフォリオ演算部36は、需要家ごとのDR削減電力量343に基づいてDR調整量を満たすのに必要なデマンドレスポンス実施対象となる複数の需要家、および、DR実施内容(例えば、「設定温度を1℃下げてください」)を決定し、次のステップSP24へ移る。
【0137】
この場合、DRポートフォリオ演算部36は、複数の需要家を決定する際、建物用途、業態に応じてデマンドレスポンスによる消費電力の削減効果の高い需要家を決定することができる。例えば、DRポートフォリオ演算部36は、建物用途をオフィスとしている需要家に絞って決定したり、特定の地域に存在する需要家に絞って決定する等、種々の基準によってデマンドレスポンス実施対象の需要家をグルーピングすることが可能である。
【0138】
ステップSP24においてDRポートフォリオ演算部36は、決定した需要家およびDR実施内容を制御部35に伝え、当該制御部35からデータ通信部31を介して需要家端末5へDR実施内容と共にDR実行命令を出力し、処理を終了する。
【0139】
<デマンドレスポンスの実施者に対するDRインセンティブ算出処理手順>
次に、デマンドレスポンスの実施者に対して付与するDRインセンティブの算出処理手順について説明する。
図6に示すように、事業者サーバ3のDRインセンティブ算出部38は、ルーチンRT3の開始ステップから入り、次のステップSP31へ移る。
【0140】
次のステップSP31においてDRインセンティブ算出部38は、記憶部34に格納されたDR実績情報345およびDR単価情報344を取得し、次のステップSP32へ移る。ここで、DR実績情報345は、需要家がDR実施内容にしたがって実際にデマンドレスポンスを実行した場合の消費電力の実績値、実施日、実施時間帯、およびDR実施時の設定温度変更履歴(ユーザID、変更温度を含む)である。
【0141】
ステップSP32においてDRインセンティブ算出部38は、DR実績情報345に対してDR単価情報344の単価を乗算することによりDRインセンティブを算出し、そのDRインセンティブを内部メモリに記憶した後、処理を終了する。なお、DRインセンティブ算出部38は、算出したDRインセンティブを記憶部34に記憶してもよい。
【0142】
<DR補正係数の修正処理手順>
最後に、DR削減電力量演算部37においてDR削減電力量343を演算する際に用いた補正係数X(t)の修正処理手順について説明する。
図7に示すように、DR補正係数演算部39は、ルーチンRT4の開始ステップから入り、次のステップSP41へ移る。
【0143】
ステップSP41においてDR補正係数演算部39は、データ通信部31を介して需要家端末5からデマンドレスポンスを実施した際の消費電力であるDR実績情報345を取得して記憶部34に記憶し、次のステップSP42へ移る。ステップSP42においてDR補正係数演算部39は、記憶部34からDR削減電力量343を取得し、次のステップSP43へ移る。
【0144】
ステップSP43においてDR補正係数演算部39は、DR削減電力量演算部37によって演算されたDR削減電力量343(演算値)とDR実績情報345とを照合し、両者の差分を算出した後、次のステップSP44へ移る。
【0145】
ステップSP44においてDR補正係数演算部39は、DR削減電力量343(演算値)とDR実績情報345との差分が所定の閾値よりも大きいか、或いは閾値以下であるかを判定し、次のステップSP45へ移る。
【0146】
ステップSP45においてDR補正係数演算部39は、差分が閾値よりも大きい場合、DR実績情報345の値がDR削減電力量343(演算値)から大きく乖離しており、DR削減電力量343の演算精度が高くないと認識した後、補正係数X(t)を修正し、次のステップSP46へ移る。
【0147】
ここでDR補正係数演算部39は、上述した(7)式に基づいて補正係数X(t)を構成する外皮負荷の割合(t)、外気負荷の割合(t)、および、内部発熱等の割合(t)を修正したり、実効温度差であるETD(t、方位)の値を修正することにより、DR削減電力量343(演算値)とDR実績情報345との差分が所定の閾値以下となるように調整する。
【0148】
ステップSP46においてDR補正係数演算部39は、修正した補正係数X(t)を需要家情報341の一部として記憶部34に保存し、次のDR削減電力量343の演算に用いることを可能とした後、補正係数の修正処理手順を終了する。
【0149】
このように本発明の実施の形態によれば、事業者サーバ3は、DR削減電力量演算部37において、補正係数X(t)のうち、デマンドレスポンスを実施する際の影響因子である外皮負荷の割合(t)、外気負荷の割合(t)、および、内部発熱等の割合(t)を用いると共に、実効温度差であるETD(t、方位)についても用いて、DR削減電力量343を求めるようにした。これにより事業者サーバ3は、従来よりもDR削減電力量343の演算精度を大幅に向上することができる。
【0150】
また事業者サーバ3は、DR補正係数演算部39において、DR削減電 力量343(演算値)とDR実績情報345とが大きく乖離している場合、デマンドレスポンスを実施する際の影響因子である外皮負荷の割合(t)、外気負荷の割合(t)、内部発熱等の割合(t)、および、実効温度差であるETD(t、方位)の値を修正する。これにより事業者サーバ3は、DR削減電力量343(演算値)とDR実績情報345との差分を小さくすることができる。
【0151】
さらに、事業者サーバ3は、補正係数X(t)の修正を繰り返すことによりDR削減電力量343(演算値)とDR実績情報345との差分を減少させることができるので、一段と高精度にDR削減電力量343を求めることができる。
【0152】
〔3〕他の実施の形態
以上の実施の形態においては、冷房の場合にデマンドレスポンスによって設定温度を上げた場合の削減電力量を演算するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限定されず、冷房の場合にデマンドレスポンスによって設定温度を下げた場合に増える電力量を演算するようにしてもよい。なお、暖房の場合にデマンドレスポンスによって設定温度を下げた場合の削減電力量を演算してもよく、また、暖房の場合にデマンドレスポンスによって設定温度を上げた場合に増える電力量を演算するようにしてもよい。
【0153】
さらに、上述のフローチャートは、事業者サーバ3において
図4乃至
図7の処理の流れを説明するための一例を示すものであって、これに限定されない。すなわち、事業者サーバ3による各フローチャートの各ステップは具体例であって、このフローに限定されるものではない。例えば、一部のステップの順番が変更されてもよいし、各ステップの処理間に他の処理が挿入されてもよいし、場合によっては一部のステップの処理が並列に行われてもよい。
【符号の説明】
【0154】
1…電力量演算システム、3…事業者サーバ、5…需要家端末、6…ヒートポンプ機器、31…データ通信部、32…入力部、33…表示部、34…記憶部、35…制御部、36…DRポートフォリオ演算部、37…DR削減電力量演算部、38…DRインセンティブ算出部、39…DR補正係数演算部。