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  • 特開-建物用煙突 図1
  • 特開-建物用煙突 図2
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  • 特開-建物用煙突 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102085
(43)【公開日】2023-07-24
(54)【発明の名称】建物用煙突
(51)【国際特許分類】
   E04H 12/28 20060101AFI20230714BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20230714BHJP
   E04F 17/02 20060101ALI20230714BHJP
【FI】
E04H12/28 Z
E04H9/02 301
E04F17/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002444
(22)【出願日】2022-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】591029921
【氏名又は名称】フジモリ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003340
【氏名又は名称】弁理士法人湧泉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中澤 元宏
(72)【発明者】
【氏名】江水 友弘
(72)【発明者】
【氏名】栃下 裕也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 芳宣
【テーマコード(参考)】
2E139
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AC19
(57)【要約】
【課題】地震動等の外力によって煙突下端におけるアンカーボルト等の定着構造が破損するのを防止するとともに、設置施工を容易化できる建物用煙突を提供する。
【解決手段】建物1の躯体1aに建物用煙突10の脚部20を定着させる。脚部20上に煙突本体11を立設する。脚部20の外周部には周壁22を形成し、周壁22の内側に受けプレート26を設ける。煙突本体11の下端部12を周壁22の内側に差し込んで受けプレート26に載せる。脚部20と煙突本体11の下端部12とは、煙突本体11の脚部20に対する傾斜及び上方変位が許容されるように、互いに非拘束状態とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の躯体に定着された脚部と、前記脚部上に立設された煙突本体とを備え、
脚部が、周壁と、前記周壁に設けられた受けプレートとを含み、
前記煙突本体の下端部が、前記周壁に差し込まれて前記受けプレートに載せられており、
前記脚部と前記煙突本体の前記下端部とが、前記煙突本体の前記脚部に対する傾斜及び上方変位が許容されるように、互いに非拘束状態であることを特徴とする建物用煙突。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煙突に関し、特に建物に付属される煙突の下端構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ボイラーや発電機等の排ガス発生を伴う設備が有る建物には、排ガスを放出するための煙突が設けられている。通常、この種の煙突は、複数の筒形状の煙突ユニットに分割されている(特許文献1等参照)。これら煙突ユニットが、鉛直に一列に積層されている。各煙突ユニットは、支持アームを介して建物躯体に支持されている。
【0003】
最下段の煙突ユニットの底部は、アンカーボルトによって建物躯体の床スラブないしはベースプレートに定着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-056633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の建物用煙突においては、地震動によって最下段の煙突ユニットが傾斜又は変位しようとしたとき、該最下段の煙突ユニットと建物躯体とを固定するアンカーボルトに過大な応力が働いて、アンカーボルトやベースプレートが破損するおそれがあった。また、建物用煙突の設置施工時、最下段の煙突ユニットの外壁と吹き抜け空間の底部の内壁との間の隙間が狭隘なことが多く、アンカーボルトの締め込み作業がしにくいとの問題もあった。さらに、アンカーボルトの打設位置が少しでもずれると、煙突本体をそのずれた位置に設置せざるを得ないという問題もあった。
本発明は、かかる事情に鑑み、地震動等の外力によって煙突下端におけるアンカーボルト等の定着構造が破損するのを防止するとともに、設置施工を容易化でき、アンカーボルトの位置が多少ずれたとしても煙突本体を正規の位置に設置可能な建物用煙突を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、建物の躯体に定着された脚部と、前記脚部上に立設された煙突本体とを備え、
脚部が、周壁と、前記周壁に設けられた受けプレートとを含み、
前記煙突本体の下端部が、前記周壁に差し込まれて前記受けプレートに載せられており、
前記脚部と前記煙突本体の前記下端部とが、前記煙突本体の前記脚部に対する傾斜及び上方変位が許容されるように、互いに非拘束状態であることを特徴とする。
【0007】
当該建物用煙突においては、建物への設置施工に際して、まず脚部だけを据え付ける。脚部自体は高さが低いから、脚部の上面側からアンカーボルトを建物躯体の煙突基礎に打ち込むことができる。したがって、煙突と吹き抜け空間の内壁との間の隙間が狭隘であっても、脚部の定着作業を容易に行うことができる。
脚部の据え付け後、煙突本体の下端部(例えば最下段の煙突ユニット)を脚部の周壁に差し込んで、受けプレートに載せる。煙突本体の下端部を脚部と連結して固定する必要はない。これによって、建物用煙突の下側部分を建物内に容易に設置施工できる。脚部と煙突本体とが別体であるから、アンカーボルトの位置が多少ずれて脚部の設置位置が多少ずれたとしても、脚部と煙突本体の下端部とのクリアランスの範囲内であれば、煙突本体については正規の位置の設置されるように調整できる。
【0008】
地震動が起きた際は、煙突本体が建物躯体に対して傾斜又は変位するのが許容されることによって、地震動のエネルギーを吸収できる。一方、煙突本体の下端部と脚部とは縁切りされているために、脚部に過大な応力が作用するのを回避でき、脚部ひいてはアンカーボルト等の定着構造が破損するのを防止できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る建物用煙突によれば、地震動等の外力によって煙突下端におけるアンカーボルト等の定着構造が破損するのを防止するとともに、設置施工を容易化できる。また、アンカーボルトの位置が多少ずれたとしても煙突本体を正規の位置に設置可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る建物用煙突の下側部分の正面断面図である。
図2図2は、図1の円部IIの拡大断面図である。
図3図3は、前記建物用煙突の脚部と最下段の煙突ユニットとの分解斜視図である。
図4図4は、地震時における前記建物用煙突の変位状態の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面にしたがって説明する。
図1に示すように、建物1の躯体1a内に吹き抜け空間2が設けられている。吹き抜け空間2は、建物1を鉛直に吹き抜けている。吹き抜け空間2内に建物用煙突10が設置されている。建物用煙突10は、煙突本体11と、脚部20を含む。詳細な図示は省略するが、煙突本体11は、複数の煙突ユニット12に分割されている。これら煙突ユニット12が、上下へ一列に積層されることによって、煙突本体11が構成されている。図1においては、最下段(一段目)の煙突ユニット12Bと、その直上(二段目)の煙突ユニット12Aのみ図示する。各煙突ユニット12は、支持アーム15を介して吹き抜け空間2のまわりの建物躯体1aに支持されている。
【0012】
建物1内におけるボイラーや発電機等のガス排出を伴う設備(図示省略)からの排気ダクト3が、最下段の煙突ユニット12Bの側部に接続されている。図示は省略するが、煙突10の上端部(最上段の煙突ユニット)は、建物1の屋上等に突出されている。
【0013】
図1に示すように、各煙突ユニット12は、軸線を鉛直(上下)に向けた平面視四角形の筒状(角筒形)になっている。煙突ユニット12は、断熱壁13と、外壁14を含む。断熱壁13は、珪酸カルシウム等の硬質の断熱材料にて構成されている。断熱壁13の外面に外壁14が設けられている。外壁14は、鋼板等の金属板によって構成されている。各煙突ユニット12の高さは数メートル程度である。
【0014】
建物用煙突10の底部構造は、次のように構成されている。
図2に示すように、建物1の吹き抜け空間2(煙突シャフト)の底部には、コンクリートスラブからなる煙突基礎4が設けられている。煙突基礎4上に脚部20(煙突底部)が据え付けられている。脚部20は、最下段の煙突ユニット12Bとは別体になっており、煙突ユニット12Bすなわち煙突本体11の下端部から縁切りされている。
【0015】
詳しくは、図2及び図3に示すように、脚部20は、底板21と、周壁22と、受けプレート26を含み、平面視で四角形の箱状ないしは台盤状に形成されている。底板21は、四角形の鋼板によって構成されている。底板21の外周部は、周壁22の4辺から外方へ延び出て、底フランジ21fとなっている。底フランジ21fが、アンカーボルト5によって、煙突基礎4に固定されている。これによって、脚部30が建物躯体1aに定着されている。
【0016】
図3に示すように、底板21から周壁22が立ち上がっている。周壁22は、鋼板によって構成され、四角形の短筒状に形成されている。周壁22の内面の幅寸法は、煙突ユニット12Bの外面の幅寸法より僅かに大きい。周壁22の内部空間の断面は、煙突ユニット12Bの下端部の外形断面より少しだけ大きい。周壁22の高さは、周壁22の幅より小さく、煙突ユニット12Bの高さと比べると十分に低い。例えば底板21から周壁22上端部までの高さHは、H=十数cm~数十cm程度であり、煙突ユニット12Bの高さの10分の1~数十分の1である。周壁22の外面と底フランジ21fとで作る外側隅角部には、鉛直をなす複数の外側縦リブ24が、周壁22の外周に沿って間隔を置いて設けられている。図2に示すように、周壁22の内面と底板21とで作る内側隅角部には、鉛直をなす複数の内側縦リブ25が、周壁22の内周に沿って間隔を置いて設けられている。内側縦リブ25の上端部は、周壁22の中間高さに配置されている。
【0017】
図2に示すように、周壁22の内側における、内側縦リブ25の中間高さには中間板23が水平に設けられている。かつ、周壁22の内側における内側縦リブ25の上端高さ位置には、受けプレート26が設けられている。受けプレート26は、鋼板によって構成され、平らな四角形の枠状に形成されている。受けプレート26の外周が、周壁22の内面に溶接にて接合されている。受けプレート26は、周壁22の内面から内側へ水平に突出されている。受けプレート26の下面には、内側縦リブ25の上端部が突き当てられて溶接されている。これによって、受けプレート26が内側縦リブ25(支持リブ)によって下側から支持されている。
【0018】
図2に示すように、周壁22の上側部分が、受けプレート26より上へ突出されている。受けプレート26から周壁22の上端部までの高さHは、H=数cm~十数cm程度である。
【0019】
図2に示すように、脚部20内における、中間板23と底板21との間の空間には、耐熱グラスフェルト31が充填されている。脚部20内における中間板23の上面には、キャスタブル耐火物32が敷き詰められている。キャスタブル耐火物32上に受けプレート26が露出されている。図1に示すように、周壁22又は底板21の一箇所には排水管38が設けられている。キャスタブル耐火物32の上面には、排水管38へ向かって下がり勾配が付けられている。
【0020】
図1に示すように、脚部20上に煙突ユニット12Bが立設されている。図2に示すように、煙突ユニット12Bの下端部ひいては煙突本体11の下端部(差し込み部)が、周壁22の内側に差し込まれて、受けプレート26に載せられている。煙突ユニット12Bの下端面が受けプレート26に突き当てられている。周壁22の内面と煙突ユニット12Bの下端部の外面との間には、前記差し込みを許容するクリアランスCLが設定されている。煙突ユニット12Bが脚部20に対して正規の位置に配置された状態におけるクリアランスCLの大きさは、好ましくはCL=数mm以下である。煙突ユニット12Bは、周壁22によって四方への水平変位が規制されている。
【0021】
脚部20と煙突ユニット12Bひいては煙突本体11の下端部とは、ボルト、溶接等の接合手段で接合されておらず、互いに非拘束状態(変位許容状態)になっている。すなわち、煙突本体11が、脚部20に対して、前記クリアランスCL分の水平変位のほか、傾斜及び上方変位が許容されている。
【0022】
図2に示すように、煙突ユニット12Bの下端部の外面には、水切りカバー16が設けられている。水切りカバー16は、カバー板16aと、垂下板16bを含む。カバー板16aは、煙突ユニット12Bから外方(図2において左方)へ水平に突出され、周壁22の上方に被さっている。カバー板16aの先端部から下方へ垂下板16bが垂下されている。垂下板16bは、周壁22よりも平面視で外側(図2において左側)に配置されている。垂下板16bの下端部は、周壁22の上端部より下方に位置されている。図3に示すように、水切りカバー16は、煙突本体11の全周にわたる環状に形成されている。
【0023】
建物用煙突10は、次のようにして、建物1に設置される。
まず、脚部20だけを吹き抜け空間2の底部の煙突基礎4に据え付ける。脚部20自体は高さが低いから、脚部20の上面側からアンカーボルト5を煙突基礎4に打ち込むことができる。したがって、脚部20の外周と吹き抜け空間2の内壁との間の隙間2g(図1)が狭隘であっても、アンカーボルト5の打設作業ひいては脚部20の定着作業を容易に行うことができる。
【0024】
脚部20の据え付け後、煙突ユニット12Bを周壁22の内側に差し込んで、受けプレート26に載せる。煙突ユニット12Bを脚部20と連結して固定する必要はない。これによって、建物用煙突10の底部を建物1内に容易に設置施工できる。脚部20と煙突本体11とが別体であるから、アンカーボルト5の打設後も煙突本体11の設置位置をクリアランスCLの範囲内で調節できる。アンカーボルト5の位置が多少ずれ、脚部20の設置位置が多少ずれたとしても、クリアランスCLの範囲内であれば、煙突本体11については正規の位置の設置されるように調整できる。
【0025】
建物用煙突10によれば、水切りカバー16によって、雨水等の水が周壁22と煙突ユニット12Bとの間から脚部20の内部に入り込むのを防止できる。
図4に示すように、地震動が起きた際は、煙突本体11の各煙突ユニット12が建物躯体1aに対して傾斜又は変位(層間変位)を許容されることによって、地震動のエネルギーを吸収できる。最下段の煙突ユニット12Bは、建物躯体1aと一体をなす脚部20に対して傾斜又は変位を許容される。煙突ユニット12Bと脚部20とは構造的に縁切りされているために、煙突ユニット12Bが傾斜又は変位したとしても、脚部20に過大な応力が作用するのを回避できる。これによって、アンカーボルト5ひいては脚部20が破損するのを防止できる。
【0026】
煙突ユニット12Bと脚部20とが縁切りされているために、煙突ユニット12Bの下端部と脚部20との間には微小ながらも空気の通り路ができる。一方、供用時の煙突10内の煙道10bは、煙突効果によって煙突外部より僅かに負圧になっている。このため、煙突外の空気が、前記通り路を通って煙道10b内に流入可能である。逆に言うと、煙道10b内の排ガスが、煙突ユニット12Bと脚部20との間から煙突外部へ漏れ出るのを防止できる。
【0027】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、煙突ユニット12Bひいては煙突10の断面形状は、四角形に限らず、円形であってもよい。
建物用煙突10は、屋内の吹き抜け空間2(煙突シャフト)の内部に設置されるものに限らず、建物1の外壁沿いに屋外に設置されていてもよい。
煙突本体11が、脚部20の周壁22の外面に被さるように、脚部20の外側に差し込まれていてもよい。この場合の受けプレート26は、周壁22から外方へ突出させることで周壁22の外側において煙突本体11の下端部を受けるようにする。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、例えばオフィスビル、工場等の建物に付属の煙突に適用できる。
【符号の説明】
【0029】
1 建物
1a 躯体
2 吹き抜け空間
3 排気ダクト
4 煙突基礎
5 アンカーボルト
10 建物用煙突
10b 煙道
11 煙突本体
12 煙突ユニット
12B 最下段の煙突ユニット(煙突本体の下端部)
13 断熱壁
14 外壁
15 支持アーム
20 脚部
21 底板
21f 底フランジ
22 周壁
25 内側縦リブ(支持リブ)
26 受けプレート
図1
図2
図3
図4